説明

システインを伴うプロポフォール

本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)を含有する医薬組成物に関する。本発明の組成物は、プロポフォール及びシステイン又はそれらの水性又は非水性組成物を含む。組成物を含むプロポフォールは、好ましくは無菌であり、ヒトを含むいずれかの動物に非経口的に投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、米国仮出願第60/422,196号(2002年10月29日出願)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
化合物2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)は公知の麻酔薬である。麻酔の発現は、血液脳関門を通る薬物の拡散速度によって主として制御される。プロポフォールは、脂肪親和性であり、これは、化合物が迅速な麻酔作用を与えるのを助ける。しかし、この脂肪親和性はプロポフォールを溶解し、それは室温で液体であり、相対的に水不溶性である。その結果、プロポフォールは、脂質成分を含む水中油型エマルジョンとして、一般に(注射又はボーラス注入法のいずれかによって直接的に血流へ)投与される。しかし、脂質は細菌増殖によい基質となる。
【0003】
水中油型エマルジョンの欠点にもかかわらず、プロポフォールは成功した麻酔薬で、ヒトへの投与のために、ディプリバン(Diprivan(登録商標))・インジェクタブル・エマルジョン(アストラゼネカ、ディプリバン(登録商標)はインペリアル・ケミカル・インダストリーズの商標である)として市販されている。また、プロポフォールは、ラピノベット(Rapinovet(商標))・アネステティック・インジェクション (シェーリング・プラウ・アニマル・ヘルス社、ラピノベット(商標)はシェーリング・プラウ・アニマルヘルス社の商標である)として、およびプロポフロ(PropoFlo(商標))・アネステティック・インジェクション(アボット・ラボラトリーズ、プロポフロ(商標)はアボット・ラボラトリーズの商標である)として、獣医用途として市販されている。
【0004】
ディプリバン・インジェクタブル・エマルジョンは、白色で、10ミリグラムのプロポフォール/エマルジョン1ミリリットルに加えて、100mgの大豆油/ml、22.5mgのグリセリン/ml、12mgの卵レシチン/ml、0.005%のエデト酸二ナトリウムおよび水酸化ナトリウムを含有する、水中油型エマルジョンである。ディプリバン・インジェクタブル・エマルジョンは、単用の非経口製品として表示されている。ディプリバンは、外来性の汚染が起こった場合、微生物の成長を抑制するためにエデト酸二ナトリウムを含有している。しかし、ディプリバンは、なおも微生物の成長を維持し得る。製品の差込物で認められるように、エマルジョンを取り扱う場合、防腐技術を使用しなければ、微生物汚染を伴い、内科的合併症を伴うという報告がある。ディプリバンの管に残った未使用の部分は、微生物が成長する可能性があるために12時間の後に廃棄されるべきである。ディプリバンは、4から22℃(ディプリバン・インジェクタブル・エマルジョンの製品差込物、アストラゼネカ(2001))の狭い温度範囲において保存されるべきである。
【0005】
プロポフロ・アネステティック・インジェクションは、10ミリグラムのプロポフォール/エマルジョン1ミリリットルに加えて、100mgの大豆油/ml、22.5mgのグリセリン/ml、12mgの卵レシチン/mlおよび水酸化ナトリウムを含有する水中油型エマルジョンである。ディプリバンのように、プロポフロも微生物の成長を維持し得る。無菌の手順に従わなければ、微生物汚染を招き、内科的合併症を招くかもしれない。プロポフロの未使用の部分は、バイアルへの射入から6時間以内に廃棄されるべきである(プロポフロ・アネステティック・インジェクションの製品差込物、アボット・ラボラトリーズ(1998) )。
【0006】
ラピノベット・アネステティック・インジェクションは、白色で、10ミリグラムのプロポフォール/エマルジョン1ミリリットルに加えて、100mgの大豆油/ml、22.5mgのグリセリン/ml、12mgの卵レシチン/ml、0.25mgのメタ重亜硫酸ナトリウム/mlおよび水酸化ナトリウムを含有する水中油型エマルジョンである。ディプリバンとプロポフロのように、ラピノベットも、微生物の成長を維持し得る (ラピノベット・アネステティック・インジェクションの製品差込物、シェーリング・プラウ・アニマル・ヘルス(2000) )。
細菌増殖を制限する賦形剤を含有する無毒で安定したプロポフォール製剤が求められている。
【発明の開示】
【0007】
発明の要旨
本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノール(つまり、プロポフォール)又はプロポフォールのプロドラッグ及びシステイン又はそれらの塩を含有する医薬組成物に関する。本発明の組成物は、限定されないが、水中油型及び油中水型エマルジョンを含有する水溶性及び非水溶性製剤を含む。組成物を含有するプロポフォールは、無菌であることが好ましく、ヒトを含むいずれかの動物へ非経口で投与される。
【0008】
本発明は、以下に示すようないくつかのプロポフォール含有組成物に指向する。
一実施形態では、本発明は、プロポフォール、システイン及び1以上の賦形剤を含有する組成物に指向する。賦形剤は、いずれかのGRAS賦形剤とすることができる。賦形剤の例は、限定されないが、精製ポロキサマー、酢酸アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブリッジ35、ブリッジ97、グルセプトン酸(gluceptate)カルシウム、クロロブタノール、くえん酸、クレモフォールEL、デオキシコール酸塩、ジエラノールアミン、エタノール、ガンマシクロデキストリン、グリセリン、ラクトビオン酸、リジン、塩化マグネシウム、メチルパラベン、PEG1000、PEG300、PEG3350、PEG400、PEG600、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407、ステアリン酸ポリオキシエチレン100、ステアリン酸ポリオキシエチレン40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポピドン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、安息香酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、植物油、大豆油、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ひまし油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸のエステル、パルミチン酸エステル、グリセリンエステル(glyceral ester)、ポリオキシ硬化ヒマシ油、エトキシル化エーテル、ポリプロピレン−ポリエチレン・ブロック・コポリマー、リン脂質、卵リン脂質、大豆リン脂質、グリセリン、アスコルビン酸およびゲンチシン酸ならびにグルタミン酸一ナトリウムを含む。
【0009】
他の実施形態では、組成物は、水中油型エマルジョンであり、そのエマルジョンは、水非混和性溶媒中に溶解した2,6−ジイソプロピルフェノールを含み、水と乳化され、界面活性剤で安定化され、その水中油型エマルジョンは、さらにシステイン又はそれらの塩を含む。
また、本発明は、上述した無菌の医薬組成物の一つを患者に非経口的に与えることからなる、麻酔の必要のある患者に2,6−ジイソプロピルフェノールを投与する方法に関する。
【0010】
発明の詳細な説明
本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノール(プロポフォール)又はプロポフォールのプロドラッグ及びシステインを含む医薬組成物に関する。本発明の組成物は、プロポフォール、システイン及び1、2、3、4又はそれ以上の賦形剤を含む。その組成物は、広範な環境条件にわたって化学的及び物理的に安定である。その組成物は、ディプリバンのように、現在市販されている水中油型プロポフォールエマルジョンに比較的又は良好な溶解性を示す。
【0011】
組成物を含むプロポフォールは、無菌であることが好ましく、ヒトを含むいずれかの動物に非経口的に投与される。
ここで用いられているように、用語「組成物」は、活性成分としてのプロポフォールとシステインとを含む混合物をさす。その組成物は水性又は非水性とすることができる。
【0012】
「賦形剤」は、これらの用語がここで用いられているように、主な活性成分(つまり、プロポフォール)又は水以外の組成物中に含有されている物質をさす。賦形剤又は添加剤は、不活性であってもよいし、化学的又は物理的に他の組成物成分に作用するものであってもよい。また、賦形剤は、それら自体の活性特性を有していてもよい。賦形剤は、限定されないが、表面活性剤(例えば、界面活性剤、乳化剤、洗浄剤、結合剤及び湿潤剤)、塩、ポリマー、溶媒、抗菌薬、防腐剤、充填剤、診断薬、糖、アルコール、酸、塩基及び緩衝材を含んでいてもよい。プロポフォール組成物は、さらに、プロポフォールに加えて、例えば、麻酔薬および/又は抗酸化剤のような活性剤を含有していてもよい。
【0013】
ここで用いられているように「システイン」とは、システイン及びそれらのいずれかの塩をさす。例えば、システインHClがシステインの定義内に含まれる。
ここで用いられているように、用語「実質的に含まない」とは、少量のみ、例えば、他の成分に付随する不純物又は分解過程によって生成する不純物のような少量のみの存在を示す成分を含有する組成物をさす。成分を実質的に含まない組成物とは、最小限の濃度、例えば、約3%未満、約1%未満、好ましくは約0.5%未満、より好ましくは約0.1%未満、さらに好ましくは約0.01%(w/v)未満のような約0.05%(w/v)未満の成分を含有する。
【0014】
本発明は、システインを含有するプロポフォール組成物に指向する。出願人は、なお組成物の安定性を確保しながら、組成物を含むプロポフォールにシステインを添加することができるという予想外の発見を行った。システインは微生物の成長を消失又は阻害する機能を有する。
【0015】
いずれかの実施形態では、本発明の組成物は、プロポフォール、システイン及び少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3又は少なくとも4つの賦形剤を含む。一実施形態では、プロポフォールは約1から約25mg/1ml組成物の濃度で、1mg/mlより大、2mg/mlより大、3mg/mlより大、4mg/mlより大、5mg/mlより大、6mg/mlより大、7mg/mlより大、8mg/mlより大、9mg/mlより大、10mg/mlより大、11mg/mlより大、12mg/mlより大、13mg/mlより大、14mg/mlより大、15mg/mlより大、16mg/mlより大、17mg/mlより大、18mg/mlより大、19mg/mlより大、20mg/mlより大、21mg/mlより大、22mg/mlより大、23mg/mlより大、 24mg/mlより大、 25mg/mlより大、 26mg/mlより大、 27mg/mlより大、 28mg/mlより大、29mg/mlより大、30mg/mlより大、31mg/mlより大、31mg/mlより大、32mg/mlより大、33mg/mlより大、34mg/mlより大、 35mg/mlより大、36mg/mlより大、37mg/mlより大、 38mg/mlより大、39mg/mlより大、40mg/mlより大、41mg/mlより大、 42mg/mlより大、43mg/mlより大、44mg/mlより大、45mg/mlより大、46mg/mlより大、47mg/mlより大、48mg/mlより大、 49mg/mlより大、50mg/mlより大、60mg/mlより大、70mg/mlより大、80mg/mlより大、90mg/mlより大又は100mg/mlより大で存在する。あるいは、約5〜約20、約5から約15又は約8から約12mg/mLのプロポフォール/ml組成物で存在する。好ましくは、プロポフォールは、約9から約11mg/mL組成物、例えば、約10 mg/mL、約15 mg/ml、約20 mg/ml又は約25mg/mlで存在する。あるいは、プロポフォール組成物は、プロポフォール%(w/v)として表してもよい。例えば、本発明の組成物は、プロポフォール組成物を少なくとも0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.25、2.5、2.75、3.0、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24又は25%(w/v)、又は約0.5から約2.4、約0.5から約2、約0.5から約1.5、約0.8から約1.2又は好ましくは約0.9から約1.1%(w/v)含有してもよい。
【0016】
本発明は、いくつかのプロポフォール含有組成物に指向する。一実施形態では、組成物は水性である。本発明の水性組成物は、プロポフォール、システイン及び1、2、3、4又は4以上の賦形剤及び水を含有する。例えば、賦形剤は、酢酸アンモニウム、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー237、ポロキサマー188)、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル(例えば、ブリッジ(登録商標)35、ブリッジ(登録商標)はICIアメイカス・インクの商標である)、ポリオキシエチレン(10)オレイルエーテル(例えば、ブリッジ(登録商標)97)、ベンジルアルコール、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、つまり、ポリエチレングリコールソルビタンモノラウレート(トゥーン(登録商標)20)又はポリソルベート80、つまり、ポリエチレン20ソルビタンモノラウレート(トゥーン(登録商標)80))、D−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000サクシネート(つまり、ビタミンE TPGS)、クロロブタノール、クレモフォール(登録商標)EL(つまり、ポリオキシ35硬化ひまし油、クレモフォール(登録商標)はBASFの商標である)、ポリオキシエチレンステアレート、プロピレングリコール、デオキシコレート(例えば、デオキシコール酸ナトリム)、ジエタノールアミン、エタノール、グリセリン、ラクトビオン酸、リジン酸、塩化マグネシウム、ポリエチレングリコールステアレート(例えば、ポリエチレングリコール40ステアレート、ここでPEG−40ともいう)及びポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール400、ここでPEG−400ともいう)からなる群から選択することができる。Handbook of pharmaceutical Additives compiled by Michael and Irene Ash, Gower Publishing, 1995 (その全体を参照としてここに組み込む)に記載された賦形剤を含むいずれかの公知の賦形剤を、本発明に特に含んでもよい。
【0017】
他の実施形態では、本発明の組成物は、非水性である。非水性組成物は、プロポフォール、システイン及び1、2、3以上の賦形剤を含んでもよい。賦形剤は、1)植物油(例えば、大豆、ベニバナ、綿実、トウモロコシ、ヒマワリ、落花生、ひまし、オリーブ油を含む)、2)中鎖又は長鎖脂肪酸のエステル又は3)パルミチン酸エステル、グリセリンエステル(glyceral ester)又はポリオキシ硬化ヒマシ油のような水非混和性溶媒から選択することができる。また、賦形剤は、非イオン性界面活性剤のような界面活性剤;エトキシル化エーテル類;ポリプロピレン−ポリエチレンブロックコポリマー類;リン脂質類、卵リン脂質及び大豆リン脂質から選択してもよい。賦形剤は、また、グリセリンのような張性調整剤を含んでいてもよい。他の適当な賦形剤は、アスコルビン酸及びゲンチシン酸ならびにそれらの塩、グルタミン酸一ナトリウムを含む。
【0018】
いずれかの実施形態では、賦形剤又は2、3、4又は4以上の賦形剤の組み合わせは、約1〜約50%、約2から30%、約2から20%、約2から15%又は約2から10% (w/v)、例えば、約8%、40%未満、30%未満、29%未満、 28%未満、27%未満、26%未満、25%未満、24%未満、23%未満、22%未満、21%未満、20%未満、19%未満、18%未満、17%未満、16%未満、15%未満、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%又は3% (w/v)未満の総濃度で組成物中に存在することができる。
【0019】
本発明の実施の形態として含まれるものは、特定の賦形剤を排除する組成物又は製剤である。ここに開示される又はHandbook of Pharmaceutical Additives (sic)に開示されるものを含む、いずれかの公知の賦形剤は、本発明から特に排除することができる。いずれか又は1以上の賦形剤の種類を本発明から排除してもよい。例えば、D-α-トロフェリルポリエチレングリコール1000サクシネートを、本発明から排除してもよい。また、特定量を超える特定の賦形剤を含む組成物又は製剤を除外してもよい。例えば、90%以上、80%以上、70%以上、60%以上、50%以上、40%以上、30%以上、29%以上、28%以上、27%以上、26%以上、25%以上、24%以上、23%以上、22%以上、21%以上、20%以上、19%以上、18%以上、17%以上、16%以上、15%以上、14%以上、13%以上、12%以上、11%以上、10%以上、9%以上、8%以上、7%以上、6%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上又は1% (w/v) 以上の濃度の特定の賦形剤を含む組成物又は製剤を、本発明から特別に除外してもよい。例えば、以下を本発明から特別に除外してもよい;8%以上又は10%(w/v)以上のD−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000サクシネート;10%以上又は20%(w/v)以上の2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン;5%以上又は30%以上のN−メチルピロリドン又は2−ピロリドン;30%(w/v)以上のプロピレングリコール;N−メチルピロリドン又は2−ピロリドンのいずれかとプロピレングリコールとの組み合わせ(又は全3種の組み合わせ)、ここで組み合わせ濃度は、60%(w/v)%以上;2.5%以上又は5%以上の胆汁酸(例えば、グリココール酸ナトリウム/グリココール酸);4%以上又は7%以上のレシチン(例えば、大豆又は卵);又は5%以上又は7.5%以上又は10%(w/v)以上の胆汁酸及びレシチン双方の組み合わせ;0.5%以上又は1%(w/v)以上のベンジルアルコール;5%以上又は15%(w/v)以上のポリエトキシル化ひまし油;5%以上、7.5%以上又は10%(w/v)以上のシクロデキストリン(スルホアルキルエーテルシクロデキストリン又はスルホブチルエーテルシクロデキストリン等)。また、賦形剤の種類を、本発明の組成物又は製剤の成分として特に含んでもよいし、除外してもよく、任意に濃縮物を含んでもよい。
【0020】
本発明の組成物は、プロポフォール組成物を最も汚染する可能性のあるこれら微生物に対して抗菌活性を示すのに十分な濃度で、システイン又はそれらの塩を含む。本発明の組成物は、特定のpH範囲に限定されないが、本発明の組成物は、生理学的に中性のpH(約5から約9の間のような)を有していることが好ましい。いずれかの実施形態では、組成物は、2から12の間、4から10の間、4から9の間、4から6の間、5から7の間、5から6の間のpH範囲を有していてもよい。組成物を含むプロポフォールのpHは、例えば、塩基又はそれらの塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のようなアルカリ)の添加によって必要に応じて調整することができる。あるいは、塩酸、くえん酸等のような酸又はそれらの塩を、組成物のpHを調整するために使用してもよい。用語「pH調節剤」は、ここで用いられるように、組成物のpHを調整するために使用される酸、塩基又はそれらの塩のような物質をさす。pHの調整のために物質を選択する方法は、当業者に公知である。非水性プロポフォール組成物の一つのタイプは、水中油型エマルジョンである。一般に、水中油型エマルジョン、例えば、ディプリバンを含むプロポフォールは、そこに含有される油の小粒子の安定を確保するために6から9のpHで製剤化されている。出願人は、約5.5から約6のpHを有するシステインを含有する安定な水中油型エマルジョンを見出している。さらに、これらシステイン又はそれらの塩を含有する水中油型エマルジョンは、市販のEDTA含有ディプリバン製剤のそれと同等以上の抗菌活性を示す。
【0021】
エマルジョンの物理的安定性及び臨床上のふるまいは、製剤の粒径分布に決定的に依存する。多くの現在使用されている防腐剤は、静電相互作用によって水中油型エマルジョンの安定を損なう傾向にあり、よって粒径分布の安定性を損なうが、本発明の組成物は、ストレスが加えられた環境条件下でさえ、粒径分布の安定性を示す。さらに、これらのプロポフォール組成物を含むステイン又はシステイン塩は、付随的な、外因性の汚染の直後に少なくとも約24時間、微生物の成長を実質的に防止する。
【0022】
中性からアルカリ性のpHの等張性の環境において、脂質、グリセロール及び大量の水からなるプロポフォールエマルジョンは、多くの微生物の成長にかなり助けとなる媒体を与える。そのようなものとして、これら水中油型エマルジョンは、ストリンジェントな取り扱い、投与及び保存必要条件が要求される。さらに、水中油型プロポフォールエマルジョンは、一般に、少なくとも1つの防腐剤又は抗菌剤の存在が必要とされる。一実施形態では、組成物は、実質的に微生物を含まない医薬組成物、特に無菌の医薬組成物である。好ましくは、その組成物は、無菌で、パイローゲンを含まない。
【0023】
一実施の形態は、プロポフォール及びシステインを含む。さらなる実施形態では、プロポフォール、システイン及び1以上の賦形剤を含む。
他の実施形態では、プロポフォールの水溶液を含み、さらに、システインを含む非経口投与用の無菌の医薬組成物を含み、その水溶性プロポフォール溶液は、少なくとも24時間、Staphylococcus aureus ATCC 6538、Escherichia coli ATCC 8739、Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027及びCandida albicans ATCC 10231のそれぞれについて、10倍以下に、成長における増加を防止するのに十分であり、又は10倍以下の成長における増加で扶養するであろう(各上記微生物の洗浄された懸濁液が、20℃から25℃の範囲の温度で、約50コロニー形成ユニット/mlで組成物の分離アリコートに加えられ、その後、アリコートを20℃から25℃で24時間インキュベートし、その後、微生物の生菌数を分析する試験によって測定した場合)。他の実施形態は、プロポフォールの水溶液を含み、さらにシステインを含む無菌の医薬組成物の麻酔作用に有効量のそれらを必要とする動物に非経口的に投与することを含む温血動物において麻酔作用を発現させる方法を含み、水性プロポフォール溶液は、少なくとも24時間、Staphylococcus aureus ATCC 6538、Escherichia coli ATCC 8739、Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027及びCandida albicans ATCC 10231のそれぞれについて、10倍以下に成長における増加を防止するのに十分であり、又は10倍以下の成長おける増加で扶養するであろう(各上記微生物の洗浄された懸濁液が、20℃から25℃の範囲の温度で、約50コロニー形成ユニット/mlの組成物の分離アリコートに加えられ、その後、アリコートを20℃から25℃で24時間インキュベートし、その後、微生物の生菌数を分析する試験によって測定した場合)。
【0024】
一実施形態では、本発明の組成物は、プロポフォール、乳化剤、界面活性剤、張性調整剤及びシステインを含む。
他の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5から10%で、約0.5から5%で、約0.5 〜2%で、約0.5から1.5%で、約1%で、約1.5から3%又は約1〜2%(w/v) でプロポフォールを;約2から25%で、約3〜15%で、約5〜15%で、約8から12%で、約10%(w/v)で大豆油を;約0.5から10%、約0.5から5%で、約1〜4%で、約1.5から3%で、約2%(w/v)でグリセロールを;約0.5から5%で、約0.5から4%で、約1〜4%で、約1.5から3%で、約2から5%で、約1から2%(w/v)で卵レシチンを;及び約0.2から5%で、約0.5から4%で、約0.5から2%で、約1から2%又は約1%(w/v)でシステインを含む。
【0025】
他の実施形態では、本発明の組成物は、1%w/vのプロポフォール、10%w/vの大豆油、2.25%w/vのグリセロール、1.2%w/v卵レシチン及び1%w/vのシステインを含む。
他の実施形態では、プロポフォールと防腐剤とを含む。防腐剤は、システイン、アスコルビン酸ナトリウム、ゲンチシン酸及びグルタミン酸一ナトリウムから選択することができる。
【0026】
他の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5から10%で、約0.5から5%で、約0.5から2%で、約0.5から1.5%で、約1%で、約1.5から3%で又は約1から2% (w/v)でプロポフォールを;約2から25%、約3〜15%で、約5〜15%で、約8から12%で又は約10% (w/v)で大豆油を;約0.5から10%で、約0.5から5%で、約1から4%で、約1.5から3%で又は約2% (w/v)でグリセロールを;0.5から5%で、約0.5から4%で、約1から4%で、約1.5から3%で、約2から5%で又は約1から2% (w/v)で卵レシチンを;及び約1から10%で、約2から8%で、約2から6%で、約3〜5%で又は約4% (w/v)でアスコルビン酸ナトリウムを含む。
【0027】
さらなる実施の形態では、本発明の組成物は、約0.5から10%で、約0.5から5%で、約0.5から2%で、約0.5から1.5%で、約1%で、約1.5から3%で、約1から2% (w/v)でプロポフォールを;約2から25%、約3〜15%で、約5〜15%で、約8から12%で又は約10% (w/v)で大豆油を;約0.5から10%で、約0.5から5%で、約1から4%で、約1.5から3%で又は約2% (w/v)でグリセロールを;0.5から5%で、約0.5から4%で、約1から4%で、約1.5から3%で、約2から5%で又は約1から2% (w/v)で卵レシチンを;及び約0.002から1%で、約0.01から1%で、約0.01から05%で、約0.015から.025%又は約0.02% (w/v)でゲンチシン酸を含む。
【0028】
他の実施形態では、本発明の組成物は、約0.5から10%で、約0.5から5%で、約0.5から2%で、約0.5から1.5%で、約1%で、約1.5から3%で、約1から2% (w/v)でプロポフォールを;約2から25%で、約3〜15%で、約5〜15%で、約8から12%で又は約10% (w/v)で大豆油を;約0.5から10%で、約0.5から5%で、約1から4%で、約1.5から3%で又は約2% (w/v)でグリセロールを、0.5から5%で、約0.5から4%で、約1から4%で、約1.5から3%で、約2から5%で又は約1から2% (w/v)で卵レシチンを;及び約0.02から2%で、約0.05から1%で、約0.05から5%で、約0.05から0.15%又は約0.1% (w/v)でグルタミン酸一ナトリウムを含む。
【0029】
体の繊細な膜に適用することを意図する医薬組成物は、通常、体液のそれとほぼ同じ張性(つまり、等張性)に調整される。等張性組成物は、接触において組織での最小限の浸潤又は収縮を引き起こすものであり、体組織に浸潤した場合、苦痛がほとんどないか、全くない。好ましくは、プロポフォール組成物は実質的に等張である。組成物は、さらに、1以上の張性調整剤を含んでいてもよい。張性調整剤の例は、限定されないが、ラクロース、デキストロース、デキストロース無水物、マニトール、塩化ナトリウム、塩化カリウム、プロピレングリコール及びグリセリンを含む。張性調整剤は、組成物中、約40、30、20又は10未満、又は約8%(w/v)未満、例えば、約0.5から約6、約1
から約3、約2から約2.5又は約2.3%(w/v)の濃度で存在することができる。
【0030】
いずれかの実施形態では、本発明の組成物は、システインのかわり又はシステインに加えて、シスチン又はそれらの塩を含むことができる。システイン及びシスチン双方の左旋性又は右旋性双方の異性体が本発明に含まれる。
また、本発明の組成物は、プロポフォールのプロドラッグを含んでいてもよい。
【0031】
組成物を含むプロポフォールは、好ましくは、無菌医薬組成物として提供又は投与される。例えば、組成物を含むプロポフォールは、微生物を実質的に含まないで投与される。無菌医薬組成物の調製は、当該分野において経験的に公知である。組成物を含む無菌のプロポフォールは、例えば、最終製品の滅菌又は無菌での製造のような従来の技術を使用して製造することができる。好ましい実施形態では、本発明の無菌の組成物は、ディプリバン・インジャクタブル・エマルジョンのような現在利用可能なプロポフォール組成物よりも、開封後により長い期間、微生物を実質的に含まない。
【0032】
本発明の組成物は、所望のプロポフォール濃度を有し、患者への直接投与ができる状態で提供することができる。あるいは、組成物は、投与の前に、例えば、水または注射可能な溶液での希釈を必要とする濃縮された形態で提供することができる。静脈内投与の場合には、その組成物は、当業者に公知の静脈内投与に適した希釈剤と混合することができる。そのような希釈剤は、水および注射可能水溶性塩化ナトリウムおよびデキストロース溶液を含む。
【0033】
本発明の組成物において使用される水は、ヒトを含む動物に適当な注射液であることが好ましい。水は、適切な政府及び/又は医療産業基準に合致すべきである。好ましくは、水は、注入用のPharmaceutical Grade Waterの米国薬局方(USP)23の標準に合致する。通常、水は追加物質を含んでいるべきではない。
エマルジョンの製造は、当該分野で公知の種々の方法のいずれによっても行ってもよい。エマルジョン工程は、バッチ又は連続的であってもよい。成分を混合するための適切な装置の例は、とりわけ、ジェット・ミキサー、インジェクター、混合ノズル、ポンプ、攪拌ライン・ミキサー、パックされた試験管、ガス攪拌ベッセル及び攪拌ベッセルを含む。エマルジョンの製造は、当業者において公知であり、過度の実験なしで行うことができる。任意に、本発明の組成物は、所望の大きさ又は粒度分布の粒子を含む組成物を製造するためにろ過してもよい。さらに、そのような組成物をろ過する方法は、当業者に公知である。
【0034】
本発明の水性組成物の製造は、当該分野で知られている。プロポフォールと賦形剤の単純な混合でしばしば足りる。
本発明の組成物は、治療、予防又は診断用薬、例えば、プロポフォール(それは、粒子を含有する)の化学的安定性によって特徴づけることができる。麻酔剤成分の化学的安定性は、貯蔵寿命、適切な保存条件、投与のために許容される環境、生物学的適合性および剤の有効性を含む医薬組成物の重要な特性に影響を与えるかもしれない。化学安定性は、当該分野において公知の技術を使用して評価することができる。例えば、活性成分及び賦形剤双方のストレス試験(例えば、酸および塩基加水分解反応の生成物、熱分解、光分解又は酸化)から得られた分解情報を検出するアッセイが多数ある。化学安定性を評価するために使用することができる技術の1つの例は、逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)である。
【0035】
本発明の組成物は、例えば、ある試験期間にわたって、室温で、プロポフォール有効性の約5%未満又は約3%未満の損失ように、実質的にプロポフォールの分解を示さない。あるいは、プロポフォールの分解は、例えば、例えば、キノン及び二量体濃縮物のようなプロポフォール分解濃縮物を測定することによって評価することができる。いずれかの実施形態では、組成物は、例えば、ある試験期間にわたって、室温で、約0.05%未満、約0.1%未満又は約0.2%未満のプロポフォール分解濃度の増加のように、実質的にプロポフォール分解の実質的な増加を示さない。好ましい実施形態では、その分解の特別な品質認定(ICH ドキュメントQ3B参照)が行なわれていなければ、いかなる単一の分解も、International Conference on Harmonization (ICH)を超えない。
【0036】
一実施形態では、組成物は、冷却保存された場合、少なくとも約6か月の期間の間実質的なプロポフォール分解を経験しない。組成物は、冷却保存された場合、少なくとも約1年間実質的なプロポフォール分解を経験しないことが好ましい。さらに、組成物は、ほぼ室温で又はほぼ室温以下で保存された場合、少なくとも約6か月、少なくとも約1年、又はより好ましくは、約2年の間実質的なプロポフォール分解を経験しない。
【0037】
組成物は、無菌を維持するために適切ないずれかの容器内で、提供、調製、保存又は輸送することができる。容器は、例えば、貫通可能又は除去可能な密閉のような組成物を分注するための受け入れ手段とすることができる。組成物は、例えば、注射器での抽出又は患者への投与のための装置(例えば、注射器、静脈内(IV)バッグ又は機器)に直接組成物を注入することによって、分注することができる。無菌の医薬組成物を提供、調製、保存、輸送及び分配のためのほかの手段は、当業者に公知である。
【0038】
一実施形態では、本発明の組成物は、2,6−ジイソプロピルフェノールが酸化分解に付されるために、酸素がない雰囲気下で、製造、包装、保存又は投与される。酸素を含まない雰囲気は、とりわけ、窒素、アルゴン又はクリプトンガスを含む。好ましくは、組成物は、窒素ガス雰囲気下で製造、包装及び保存される。
また、本発明は、2,6−ジイソプロピルフェノールを、麻酔の必要な患者に投与する方法に指向し、その方法は、無菌の医薬組成物を患者に対して静脈内に与えることを含む。患者に与えるために許容される無菌の医薬組成物は、ここに記載されている。
【0039】
本発明の組成物は、麻酔の誘導及び/又は維持のために患者に投与することができる。組成物は、ヒトを含む動物に、非経口的に投与することができる。一実施形態では、組成物を含むプロポフォールの投与は、例えば、大量注射で、麻酔薬単独として患者に組成物を与えることを含む。他の観点では、組成物を含むプロポフォールの投与は、麻酔の誘発及びその後他の麻酔薬を伴って麻酔を維持するために患者に組成物を与えることを含む。あるいは、組成物を含むプロポフォールの投与は、例えば、連続的な注入によって、より長期的な麻酔の誘導および維持のために患者に組成物を与えることを含む。また、組成物は、麻酔の誘発及び/又は維持のためにプロポフォールの筋肉内(つまり、IM又は鞘内注入)手段によって、患者に与えることができる。
【0040】
プロポフォール組成物は、プロポフォールに加えて活性成分を含むか、あるいは、プロポフォール組成物は、さらなる活性生物を含む組成物を伴って共投与することができる。例えば、組成物を含むプロポフォールは、注入の疼痛を低減又はなくすために1以上の局所麻酔薬を含んでいてもよいし、共投与してもよい。投与する場合、局所麻酔剤は、注入の疼痛を低減するか、なくすために十分な濃度で投与することが好ましい。リドカインは、即時の組成物で使用するのに適した局所麻酔薬の一例である。当業者の一人は、過度の事件なしで、所望の効果を達成する局所麻酔剤の濃度を選択し、投与することができる。
【0041】
組成物を含むプロポフォールは、当該分野で公知の技術を用いて患者に投与することができる。例えば、組成物は、大量注入又は点滴によって患者の静脈内に与えることができる。組成物を含むプロポフォールの点滴は、直接組成物を点滴するか、あるいは組成物を含むプロポフォールに適当な点滴溶液(0.9%塩化ナトリウム注入液、5%デキストロース注入液又は他の適合性のある注入溶液のような)を加えることによって行うことができる。
投与中、患者へ与えられるプロポフォールの量は、投与を監督する内科医によって、適切であると決定されるとおりに変化させることができる。
【0042】
本発明は、麻酔を必要とする患者にプロポフォールを与える方法を含み、その方法は、上述した無菌の水溶性医薬組成物をヒト又は獣医の患者に投与することを含む。
さらに、本発明は、以下の限定されない実施例によって例証される。この出願の全体にわたって引用されたすべての参照の内容を、参照として明確にここに組み込む。
【実施例】
【0043】
実施例1
この実施例では、プロポフォールの無菌プラセボエマルジョン製剤を製造するために用いられる方法を説明する。無菌フードにおいて、100mlの無菌イントラリピッド(Intralipid)(登録商標)・エマルジョンを、pHメータを用いて測定し(pH〜8.0)、1NのNaOHを用いて表1に示したpHに調整した(イントラリピッドは、防腐剤及びプロポフォールを含まない以外、ディプリバンと同一の水中油型の栄養性注入可能エマルジョン組成物である)。磁気攪拌機で攪拌しながら、表1の防腐剤の質量をイントラリピッド・エマルジョンに加えた(例えば、システイン化HClの場合、0.15gのシステイン化HCl粉末をpH10のイントラリピッド・エマルジョンに加えた)。得られたエマルジョンのpHを、次いで測定し、1NのNaOH又は1NのHC1を用いて、pH5.5に滴定した。エマルジョンを次いで、0.45mシリンジフィルターを通して、2回、30mlの無菌バイアル(ホリスター−スタイア・ラボラトリーズ、スポカン、WA)にろ過した。
【0044】
表1:プロポフォールの無菌プラセボエマルジョン製剤に含有される防腐剤
【0045】
【表1】

【0046】
このように形成したエマルジョンを、次いで、動揺及び凍結融解サイクルを含むストレスをかけた環境条件に付した。pH4.5、5.5及び6.5の組成物をこれらの試験のために調製した。これらのエマルジョン製剤のそれぞれは、対照のイントラリピッド・エマルジョンのそれと比較して安定した粒径分布を示した。
【0047】
実施例2
プロポフォールの無菌プラセボエマルジョン製剤を実施例1のように調製した。これらの4つのプラセボ注射可能エマルジョン(各エマルジョンは、アスコルビン酸ナトリウム、システイン/システインHCl、ゲンチシン酸およびグルタミン酸ナトリウムの1種を含有する)の成長抑制能を、薄膜ろ過技術およびブイヨン培地を使用して評価した。防腐効果試験のために米国薬局方 (USP)によって推奨された4種の標準微生物約200コロニー形成単位(CFU)/mlを、各製剤に接種した。これら4種の微生物は、Staphylococcus aureus (ATCC 6538)、Escherichia coli (ATCC 8739)、Pseudomonas aeruginosa (ATCC 9027)及びCandida albicans (ATCC 10231)として同定された。調製された組成物の微生物試験を、ランカスター・ラボラトリーズ(タンカスター、PA)によって行った。
【0048】
4種の異なる防腐剤を含むイントラリピッド・エマルジョンの抗菌活性を2種の市販のプロポフォール組成物、ディプリバン(アストラゼネカ)(0.005%のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウムを含有するプロポフォール製剤である)及び一般的なプロポフォール製剤(ジェンシア・シンカー)(0.025%メタビフルファイト(metabifulfite)ナトリウムを含有する)、ならびに陽性コントロール(つまり、防腐剤を欠いた対照のイントラリピッド製剤)とともに比較した。試験微生物の接種の後、試験製剤を30℃でインキュベートした。試験微生物の生菌数を、インキュベーションの直後、30℃でのインキュベーションの後24時間及び48時間で、測定した。4種の防腐剤含有イントラリピッド製剤のサンプルは、2つの新たに準備した30mLの無菌バイアルが提供した。ディプリバンサンプルは、2つの新たな50mLシリンジが提供した。一般的なプロポフォールサンプルは、2つの新たな25mLバイアルが提供した。保存されていないイントラリピッド製剤サンプルは、それらが防腐剤を含んでいなかった以外は、4つの試験製剤と同成分を含んでいた。微生物の成長が抑えられたか、又は試験微生物のそれぞれの0時間生菌数(つまり、インキュベーション直後の微生物の数)に比較して10倍以下の成長増加であった場合、防腐剤は有効であると考えた。
【0049】
表2から表5において、ディプリバン及び一般的なプロポフォール製剤ならびに保存されていないイントラリピッドのそれと、システイン化HCl製剤との抗菌有効性を比較する。これらの結果は、システイン/システイン化HClが、外来の、外因性の汚染後少なくとも24時間微生物の顕著な成長防止に十分な能力を有している。
【0050】
表2:S. aureus (ATCC 6538)に対する種々の製剤の微生物成長阻止活性の比較
【0051】
【表2】

【0052】
表3:P. aeruginosa (ATCC 9027)に対する種々の製剤の微生物成長阻止活性の比較
【0053】
【表3】

【0054】
表4:E. coli (ATCC 8739)に対する種々の製剤の微生物成長阻止活性の比較
【0055】
【表4】

【0056】
表5:C. albicans (ATCC 10231)に対する種々の製剤の微生物成長阻止活性の比較
【0057】
【表5】

【0058】
本発明は、その好ましい実施形態への言及で特に示され、記述された一方、形態および詳細の種々の変更が、添付されたクレームによって包含された発明の範囲を逸脱せずに、そこに行なわれるかもしれないことは当業者によって理解されるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロポフォールとシステインとを含む医薬組成物。
【請求項2】
さらに、1以上の賦形剤を含む請求項1の医薬組成物。
【請求項3】
さらに、GRAS賦形剤を含む請求項1の医薬組成物。
【請求項4】
さらに、精製ポロキサマー、酢酸アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブリッジ35、ブリッジ97、グルセプトン酸カルシウム、クロロブタノール、くえん酸、クレモフォールEL、デオキシコレート、ジエタノールアミン、エタノール、ガンマシクロデキストリン、グリセリン、ラクトビオン酸、リジン、塩化マグネシウム、メチルパラベン、PEG1000、PEG300、PEG3350、PEG400、PEG600、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、ポロキサマー407、ステアリン酸ポリオキシエチレン100、ステアリン酸ポリオキシエチレン40、ステアリン酸ポリオキシエチレン50、ポリソルベート20、ポリソルベート80、ポピドン、プロピレングリコール、酢酸ナトリウム、ビタミンE TPGS、安息香酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、植物油、大豆油、ベニバナ油、綿実油、トウモロコシ油、ヒマワリ油、落花生油、ひまし油、オリーブ油、中鎖又は長鎖脂肪酸のエステル、パルミチン酸エステル、グリセリンエステル(glyceral ester)、ポリオキシ硬化ヒマシ油、エトキシル化エーテル、ポリプロピレン−ポリエチレン・ブロック・コポリマー、リン脂質、卵リン脂質、大豆リン脂質、グリセリン、アスコルビン酸およびゲンチシン酸又はグルタミン酸一ナトリウムを含む請求項1の医薬組成物。
【請求項5】
組成物が水溶液又は非水溶液である請求項1の医薬組成物。
【請求項6】
システインは、少なくとも24時間、Staphylococcus aureus ATCC 6538、Escherichia coli ATCC 8739、Pseudomonas aeruginosa ATCC 9027及びCandida albicans ATCC 10231のそれぞれにおいて、各微生物の洗浄された懸濁液が、20から25℃の範囲の温度で、約50コロニー形成ユニット/mlの組成物の分離アリコートに加えられ、その後、アリコートを20から25℃で24時間インキュベートし、その後、微生物の生菌数を試験する試験によって測定した場合、10倍以下に成長増加を防止するのに十分な濃度である請求項1の医薬組成物。
【請求項7】
組成物が、静脈内、筋肉内又は鞘内に投与される請求項1の医薬組成物。
【請求項8】
組成物のpHが、約4.5から約9、約5から約7、約5から約6又は約5.5から約6である請求項1の医薬組成物。
【請求項9】
請求項1の医薬組成物を投与することによる患者の治療方法。
【請求項10】
さらに局所麻酔剤を含む請求項1の医薬組成物。
【請求項11】
(a) プロポフォール、(b)水非混和性溶媒、(c)界面活性剤及び(d)システイン又はそれらの塩を含む医薬組成物。
【請求項12】
さらに、張性調整剤、グリセロール又はpH調整剤を含む請求項11の医薬組成物。
【請求項13】
プロポフォールは、約0.5から2.5%w/v、約0.5から1.5%w/v、約0.9から1.1%w/v又は約1%w/vの濃度である請求項11の医薬組成物。
【請求項14】
水非混和性溶媒が、i)大豆油、ii)植物油及びiii)中鎖−長鎖脂肪酸からなる群から選択され、i)約5から約15%w/v、ii)約8から約12%w/v、iii)約9から約11%w/v又はiv)約10%w/vの濃度で存在する請求項11の医薬組成物。
【請求項15】
界面活性剤が、i)ポリプロピレン−ポリエチレン・ブロック・共重合体、ii)卵リン脂質及びiii)大豆リン脂質からなる群から選択され、i)約0.5から約5%w/v、ii)約0.5から約2%w/v、iii)約1から約1.5%w/v又はiv)約1.2%w/vの濃度で存在する請求項11の医薬組成物。
【請求項16】
システインが、システイン又はそれらの塩であり、i)約0.5から約1.5%w/v、 ii)約0.5から約2%w/v、iii)約0.9から約1.5%w/v又はiv)約1%w/vの濃度で存在する請求項11の医薬組成物。
【請求項17】
プロポフォール、1以上の賦形剤及びアスコルビン酸ナトリウム、ゲンチシン酸及びグルタミン酸一ナトリウムからなる群から選択される防腐剤を含む医薬組成物。

【公表番号】特表2006−504771(P2006−504771A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548525(P2004−548525)
【出願日】平成15年10月28日(2003.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2003/034171
【国際公開番号】WO2004/039326
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(505036065)トランスフォーム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】TRANSFORM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】