説明

システムの作業範囲を選択するための方法およびシステム

【課題】そのシステムの複数の作業範囲を識別するように構成された予測ツール(202)を含む、システムの作業範囲の選択に使用するためのサーバ(100)を提供すること。
【解決手段】各作業範囲はシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する。本サーバはまた、予測ツールに結合された財務モデルツール(204)と、予測ツールおよび財務モデルツールに結合されたアナライザツール(206)とを含む。財務モデルツールは、複数の作業範囲を受信し、複数の将来の保守事象の各作業範囲の保守活動の予期される財務的影響を判定するように構成される。アナライザツールは、予測ツールから複数の作業範囲を受信し、財務モデルツールから保守活動の予期される財務的影響を受信し、それらの将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概して電力システムに関し、より具体的には、システムの作業範囲を選択するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
長期契約合意の市場は、多数のサービス組織についてここ数年高い比率で成長している。サービス組織が彼らの顧客と長期契約合意を結ぶとき、サービス契約の価格設定およびその契約のポートフォリオ管理に関連する予期される費用およびリスクを理解することが重要になる。加えて、サービス組織は修理作業の計画(工場作業計画)および構成要素の保守がいかに彼らのサービス契約の費用に影響を及ぼすことになるかについて理解する必要がある。これらの問題を分析するために、それぞれが最も費用効率の高い形でサービスされ得るように製品またはシステムの基礎的な動きを正しくモデル化することが必要である。
【0003】
少なくともいくつかの知られている分析の実行は、複数の将来のサービス訪問についての複雑な製品またはシステムのサービス要件を正確にモデル化することができない。通常は、これらのモデルが含む費用情報は乏しく、サービス組織がそのサービスポートフォリオに関連するリスクを非効率的に管理するおよび/またはシステム構成要素の保守の実行もしくは不実行に関連する効果を説明できないという結果をもたらし、それらすべてがより低い長期契約収益性につながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7899770号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態では、システムの複数の作業範囲を識別するように構成された予測ツールを含む、システムの作業範囲の選択に使用されるサーバが提供され、その中で各作業範囲は、そのシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する。本サーバはまた、予測ツールに結合された財務モデルツールと、予測ツールおよび財務モデルツールに結合されたアナライザツールとを含む。本財務モデルツールは、複数の作業範囲を受信し、複数の将来の保守事象について各作業範囲の保守活動の予期される財務的影響を判定するように構成される。本アナライザツールは、予測ツールから複数の作業範囲を受信し、財務モデルツールから保守活動の予期される財務的影響を受信し、将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定するように構成される。
【0006】
もう1つの実施形態で、システムの複数の作業範囲を識別するステップを含む、システムの作業範囲を選択する方法が提供され、その中で各作業範囲は、システムの複数の構成要素についての複数の保守活動を定義する。本方法はまた、複数の将来の保守事象についての各作業範囲の保守活動の予期される財務的影響を判定するステップと、その将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定するステップとを含む。
【0007】
さらに別の実施形態では、プロセッサによって実行されるときにプロセッサにそのシステムの複数の作業範囲を識別させる、そこに格納されたコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータ可読媒体が提供され、そこで各作業範囲はシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する。その命令はまた、プロセッサに複数の将来の保守事象についての各作業範囲の保守活動の予期される財務的影響を判定させ、それらの将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】システムの作業範囲を選択するために使用され得る例示的なサーバのブロック図である。
【図2】図1に示すサーバと使用され得る複数のソフトウェアツールのブロック図である。
【図3】図1に示すサーバと使用され得るシステムの作業範囲を選択する例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、機械もしくはシステム、またはその構成要素の作業範囲を選択するために使用され得る例示的なサーバ100を示す。一実施形態では、その機械またはシステムは、航空機のガスタービンエンジンである。別法として、その機械またはシステムは、航空機のまたは任意の他のシステムの任意の他の部分でもよい。本例示的な実施形態で、サーバ100は、プロセッサ102、メモリデバイス104、ディスプレイ106、ユーザインターフェース108、およびネットワークインターフェース110を含む計算デバイスである。
【0010】
プロセッサ102は、1つまたは複数のシステムおよびマイクロコントローラと、マイクロプロセッサと、縮小命令セット回路(RISC)と、特定用途向け集積回路(ASIC)と、プログラマブルロジック回路(PLC)と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)と、本明細書に記載の機能を実行する能力のある任意の他の回路とを含む任意の適切なプログラマブル回路を含む。前述の例は、単に例示的であり、したがって、「プロセッサ」という用語の定義および/または意味をいかなる方法でも限定するものではない。
【0011】
メモリデバイス104は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、ディスケット、フラッシュドライブ、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、および/または任意の適切なメモリなどの、これらに限定されない、コンピュータ可読媒体を含む。本例示的な実施形態で、メモリデバイス104は、本明細書に記載の機能をプロセッサ102が実行できるようにするためにプロセッサ102によって実行可能なデータおよび/または命令を含む(すなわち、プロセッサ102はそれらの命令によってプログラムされる)。
【0012】
ディスプレイ106は、液晶ディスプレイ(LCD)、真空蛍光ディスプレイ(VFD)、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、1つもしくは複数のLED、および/または、ユーザにグラフィックデータもしくはテキストを表示する能力のある任意の適切な視覚的出力デバイスを含むが、これらに限定されない。
【0013】
ユーザインターフェース108は、キーボード、キーパッド、タッチセンシティブスクリーン、マウス、スクロールホイール、ポインティングデバイス、音声認識ソフトウェアを使用する音声入力デバイス、および/または、ユーザがサーバ100にデータを入力できるようにする任意の適切なデバイスを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、ユーザインターフェース108の態様は、ユーザがディスプレイ106を介してサーバ100にデータを入力することができるように、ディスプレイ106に、たとえば、タッチセンシティブスクリーンに、組み込まれる。
【0014】
ネットワークインターフェース110は、ネットワークインターフェースコントローラ(NIC)、ネットワークアダプタ、送受信機、または、本明細書に記載のようにサーバ100が動作できるようにする任意の他の通信デバイスを含み得るが、これらに限定されない。サーバ100は、ネットワークインターフェース110を使用し、他のサーバ、システム、および/または、デバイスと通信することができる。
【0015】
本例示的な実施形態で、サーバ100は、プロセッサ102によって実行されるコンピュータ実行可能命令としてメモリデバイス104内に少なくとも部分的に格納される1つまたは複数のソフトウェアツール(図1に示さず)を含む。そのソフトウェアツールは、機械、システム、デバイス、および/またはその構成要素で実行されることになる作業範囲をサーバ100が円滑に選択できるようにする。
【0016】
図2は、サーバ100(図1に示す)などの計算デバイスと使用され得る、またはその中に含まれ得る、複数のソフトウェアツール200のブロック図である。さらに具体的には、ツール200は、航空機のガスタービンエンジンなどのための、これに限定されない、機械またはシステムの作業範囲を選択または推奨するために使用され得る。本例示的な実施形態で、各ソフトウェアツール200は別個のサーバ100内に含まれ、ツール200の出力が本明細書に記載するように互いのツール200に提供されるように、各サーバ100が互いのサーバ100に通信で結合される。別法として、1つまたは複数のツール200は、同一サーバ100内に含まれ得る。本例示的な実施形態で、ツール200は、データ通信で各々ともに結合された、予測ツール202、財務モデルツール204、およびアナライザツール206を含む。
【0017】
本例示的な実施形態で、1つまたは複数のツール200は、ユーザから入力を受信するためのユーザインターフェース108(図1に示す)などのユーザインターフェースを含む。加えて、1つまたは複数のツール200は、ディスプレイ106(図1に示す)などのディスプレイにデータを出力し、そのデータはユーザに表示され得る。
【0018】
予測ツール202は、事前定義の1つまたは複数の基準に合う作業範囲がそこから選択可能な1つまたは複数の作業範囲を生成または識別する。予測ツール202は、他のツール200から、ユーザから、および/または別のシステムもしくはデバイスから、入力を受信する。本例示的な実施形態で、予測ツール202は、アナライザツール206からエンジン情報を受信し、財務モデルツール204から作業範囲財務情報を受信する。より具体的には、本例示的な実施形態で、アナライザツール206から受信されるエンジン情報は、エンジンが最新の保守事象以後に使用されていた時間の量、1つまたは複数のエンジン構成要素が最新の保守または修理事象以後に使用されていた時間の量、故障した1つまたは複数の構成要素、および/または、本明細書に記載のように予測ツール202が機能できるようにする任意の他のデータを含むが、これらに限定されない。財務モデルツール204から受信された作業範囲財務情報は、1つまたは複数の将来の日付の各構成要素の保守または修理の財務的影響などの各作業範囲内に定義された各保守活動の財務的影響を含む。本明細書に記載のように、本例示的な実施形態で、その財務的影響は、構成要素に保守活動を実行する費用を含む。しかし、その財務的影響は、追加でまたは別法として、その構成要素での保守活動の実行に関連する、価格、収益、および/または任意の他の財務効果を含む。別法としてまたは追加で、予測ツール202は、エンジン状態、診断データ、作業範囲要件、および/または任意の他の入力など、他の入力を受信することができる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「保守事象」という用語は、システム(たとえば、エンジン)またはその構成要素が、システムもしくは構成要素に1つまたは複数の保守活動を実行するために、保守もしくは修理施設または「工場」に持ち込まれる事象を指す。保守事象はまた、「工場訪問」として知られる。これらの保守事象は、システムもしくは構成要素が故障の結果として施設に持ち込まれる、故障誘起の事象を含むことがあり、そしてまた、予防保守のための施設への訪問などの非故障誘起の訪問も含むことがある。本明細書で、「保守活動」という用語は、システムもしくは構成要素に保守を実行すること、および/または、システムもしくは構成要素を修理することを指す。
【0020】
さらに、本明細書で使用される場合、「作業範囲」および「作業の範囲」という用語は、同意語として使用され、システムの構成要素に1つまたは複数の保守活動を実行するための戦略または計画を指す。作業範囲は、そのシステム内の構成要素のリスト、構成要素が修理されるべきもしくはそこに保守を実行させるべき1つまたは複数の日付および/または時間、作業範囲の各ステップまたは保守活動の完了の予期される費用、ならびに/あるいは、各構成要素がその作業範囲の期間中に故障するもしくは実行されるべき保守活動を要求する1つまたは複数の確率を含み得るが、これらに限定されない。別法としてまたは追加で、作業範囲は、その構成要素が経験した使用の量および/または数周期(たとえば、回転機械の構成要素の場合)(以下、その構成要素の「サイクル時間」と称する)、その構成要素を修理する費用、ならびに/あるいはその構成要素を取り替える費用を含み得る。
【0021】
本例示的な実施形態で、予測ツール202は、エンジンで実行されるために使用可能な1つまたは複数の作業範囲(以下「使用可能な作業範囲」と称する)を示す出力を生成する。一実施形態では、各作業範囲は、互いの作業範囲に比べて構成要素に実行されることになる異なるセットの保守活動を定義する。本例示的な実施形態で、予測ツール202は、エンジンに実行するために使用可能な、「基底」作業範囲、「完全な」作業範囲、および/または1つまたは複数の代替作業範囲を識別または生成する。本例示的な実施形態で、基底作業範囲は、エンジンおよび/またはエンジン構成要素に実行されることになる保守活動の最小セットである。別法として、基底作業範囲は、エンジンおよび/またはエンジン構成要素に実行されることになる修理および/または保守活動の所定のまたは「デフォルト」セットでもよい。たとえば、基底作業範囲は、故障したおよび/または、「寿命の限られた」構成要素として識別される構成要素を修理することのみを含み得る。本明細書で使用される場合、「寿命の限られた」という用語は、所定の時間内に置換えおよび/または修理される必要がある構成要素を指す。代替作業範囲は、基底作業範囲で識別される活動と比較して、エンジンおよび/またはエンジン構成要素に実行され得る追加のおよび/または異なる、修理および/または保守活動を含む。完全な作業範囲は、そのシステムの各構成要素に実行されることになる保守活動の完全なセットである。たとえば、完全な作業範囲は、たとえその構成要素が保守または修理を必要とするものとして識別されなくても、そのシステムおよび/または構成要素が保守施設に持ち込まれるときに、そのシステムの各構成要素に保守活動を実行するステップを含み得る。使用可能な作業範囲(たとえば、基底作業範囲、完全な作業範囲、および/または代替作業範囲)は、財務モデルツール204におよび/またはアナライザツール206に送信される。
【0022】
財務モデルツール204は、本例示的な実施形態で、予測ツール202およびアナライザツール206から入力を受信する。財務モデルツール204は、各作業範囲に関連する財務情報(たとえば、財務的影響)を示す出力を生成し、予測ツール202およびアナライザツール206にその出力を送信する。その財務情報は、たとえば、各作業範囲の各保守活動の費用、および/または、各保守活動の任意の他の財務的影響を含む。本例示的な実施形態で、財務モデルツール206は、予測ツール202からおよび/またはアナライザツール206から使用可能な作業範囲のリストを受信する。一実施形態では、財務モデルツール204はまた、エンジンおよび/またはエンジン構成要素の修理および/または保守義務を識別するサービス契約または別の手段と、サービス契約が有効である期間とに関するデータを受信する。本例示的な実施形態で、財務モデルツール204は、たとえば各作業範囲で識別される各活動に関連する、修理および/または保守費用および/または価格を計算することによって、各作業範囲の各保守活動の費用および/または価格(あるいは他の財務的影響)を計算する。一実施形態では、財務モデルツール204は、所与のセットの要件について1つまたは複数の作業範囲の承認のための見積もりを生成し、履歴および/または事業計画に基づいて作業範囲の費用および価格を生成する。財務モデルツール204は、予測ツール202におよび/またはアナライザツール206に各使用可能な作業範囲の判定された費用および/または価格、あるいは他の財務的影響(たとえば、その基底作業範囲、完全な作業範囲および/または各代替作業範囲の保守活動の費用)を送信する。
【0023】
本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、予測ツール202および財務モデルツール204から入力を受信する。さらに、アナライザツール206は、本明細書でさらに十分に説明するように、出力を生成し、その出力を予測ツール202および財務モデルツール204に送信する。アナライザツール206は、使用可能な作業範囲のリストと、予測ツール202からおよび/または財務モデルツール204からの財務情報を受信する。アナライザツール206は、受信された入力に基づいて推奨される作業範囲を選択するおよび/またはユーザに提示する。たとえば、アナライザツール206は、各作業範囲内の予期される保守活動の確率分布を計算し、最も低い予期される費用および/または価格を有する作業範囲を選択する。別法として、アナライザツール206は、ユーザによってまたはシステムもしくはデバイスによって識別される任意の他の1つまたは複数の基準を満たす作業範囲を選択する。たとえば、アナライザツール206は、各作業範囲の予期される効果を判定し、1つまたは複数の基準を最もよく満たす予期される効果を有する作業範囲を選択する。その予期される効果は、たとえば、作業範囲の予期される費用、予期される価格、予期される収益、予期されるキャッシュフロー、予期される保守施設負荷、予期される予備エンジン容量もしくは可用性、および/または予期される「タイムオンウイング」間隔のうちの1つまたは複数を含み得る。したがって、本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、事前定義の時間間隔中に実行されると予期される保守活動について最も低い予期される費用を有する作業範囲を選択することができる。しかし、アナライザツール206は、その作業範囲の予期される効果がその時間間隔中に任意の他の1つまたは複数の基準を満たす作業範囲を選択し得ることを認識されたい。
【0024】
一実施形態では、アナライザツール206は、たとえば、各作業範囲の「タイムオンウイング」の確率(たとえば、エンジンの動作中の時間への各作業範囲の効果)および財務出力(たとえば、各作業範囲の結果としてエンジンによって生成されると予期される収入の量の各作業範囲の効果)を計算することによって、受信される作業範囲の利益および費用を数値化する。一実施形態では、各使用可能な作業範囲について、アナライザツール206は、複数の将来の修理および/または保守事象をとおしてエンジンおよび/またはエンジン構成要素に作業範囲を実行する予期される財務および動作の将来の結果を表す一連の確率分布をユーザに提示する。
【0025】
本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、ユーザからまたは遠隔デバイスもしくはシステムからなど、サーバ100(図1に示す)外部のソースから入力(以下「外部入力」と称する)を受信する。その外部入力は、エンジン状態、1つまたは複数のエンジン構成要素の状態、そのエンジンおよび/またはエンジン構成要素が動作していた時間の量またはエンジンサイクル、故障を起こしているまたは故障を起こしたエンジン構成要素の指示、事業制約および/または1つもしくは複数のサービスもしくは他の契約による制約のセットもしくはリスト、1つもしくは複数のサービスもしくは他の契約が有効である時間の量、1つもしくは複数の構成要素が寿命の限られた部分であるもしくはそれを含むという通知もしくは指示、および/または、履歴フィールドデータから計算される故障分布のうちの1つもしくは複数を含む。別法として、任意の外部入力が他のツール200によって受信可能であり、アナライザツール206に送信可能である。
【0026】
本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、状態に基づく解またはモデルを使用して、作業範囲代替の中から選択するためのロジスティック枠組みを提供する(たとえば、使用可能な作業範囲のリストからの最適のまたは推奨される作業範囲の選択を容易にするために)。一実施形態では、アナライザツール206は、指定された時間間隔に(たとえば、そのサービス契約が有効である残りの時間内に)予期される総費用(たとえば、サービス契約内の保守活動の)を最小限にするために、どの作業範囲が、各故障誘起の工場訪問で実行されるべきであるかを判定する。アナライザツール206は、たとえば、以下の方程式1および2などのダイナミックプログラミング解法を使用してサービス契約と関連するシステムの最も低い予期される保守費用を判定する(または、任意の他の1つまたは複数の基準を満たす予期される効果を判定する):
【0027】
【数1】

【0028】
【数2】

本例示的な実施形態で、サービス契約に関連するシステム(たとえば、エンジン)の時間間隔は、複数のステージを含む。そのシステムのステージは、1からMに及び、各ステージは、そのエンジンまたは構成要素が工場に入るときに、開始する。本システムは、そのシステムがM〜kでその時間間隔の最後またはより少ない構成要素故障に至ることになる確率がPよりも大きいときに、ステージkにあると定義される。本例示的な実施形態で、Pは、システムの信頼度のレベルとして定義され、通常は0.90と0.99の間である。本システムは、その確率が、システムが何ら追加の構成要素故障を経験することなしに時間間隔の最後に至ることになる、Pよりも大きいとき、最後のステージにある。
【0029】
特定のステージにあるシステムの状態は、3つの要素によって定義される。第1の要素は、時間間隔の最後、T、までに残された時間である。状態iについて、この時間はTiと称される。第2の要素は、各々のシステム構成要素での時間、si1、si2、…、siN、である。第3の要素は、障害を起こしている構成要素(kiと称される)である。したがって、状態iは、ベクトル{Ti,(si1,si2,…,siN),ki}によって定義される。
【0030】
さらに、方程式1および2を参照すると、VN(i)は、Nステージが残り、システムが状態iにあるときに予期される最小費用であり、C(i,a)は、システムが状態iにあるときに決定「a」を行う現在の費用であり、そして、fij(t|si1,si2,…siN,a)は、決定「a」が行われるときにtサイクル(時間単位)内に状態iから状態jに移るための確率密度または分布関数である。Tiは、状態iにあるときに最後、T、までに残された時間である。Wiは、状態iにあるときのすべての使用可能な作業範囲のセットであり、そして、a0は、基底(または最小)作業範囲に関連する決定である。
【0031】
本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、時間Tに終わる全時間間隔に亘って最も低い予期される費用を有する作業範囲を選択する。その時間間隔は、サービス契約が有効である残りの長さ、エンジンおよび/または構成要素の寿命予想、ならびに/あるいは任意の他の時間周期として定義することができる。別法として、アナライザツール206は、使用可能な各作業範囲の予期される費用をユーザに提示し、ユーザは、その時間間隔に亘って最も低い費用を有するまたはそのユーザの任意の他の基準に合う作業範囲を選択する。
【0032】
動作中、ユーザおよび/または遠隔デバイスもしくはシステムは、アナライザツール206および/または財務モデルツール204などの1つまたは複数のツール200に外部入力を入力する。本例示的な実施形態で、財務モデルツール204は、予測ツール202を「呼び出す」、または予測ツール202に実行させる。予測ツール202は、使用可能な作業範囲のリストを生成または識別し、財務ツールにおよびアナライザツール206に作業範囲のリストを送信する。財務モデルツール204はまた、使用可能な作業範囲を分析するために、および作業範囲の確率分布ならびに各作業範囲の価格および/または費用見積もりを生成するために、アナライザツール206を呼び出す。アナライザツール206は、その確率分布を使用して、ユーザに推奨される作業範囲を選択するまたは提示する。さらに、アナライザツール206は、ディスプレイ106上に作業範囲の時系列ビューおよび/または推奨される作業範囲を提示して、そのエンジンおよび/またはエンジン構成要素の次の保守活動の推定費用および/または価格を表示する。したがって、アナライザツール206は、エンジンおよび/またはエンジン構成要素の生涯費用を推定することができる。加えて、アナライザツール206は、エンジンの1つまたは複数の構成要素の将来の保守活動の予期される確率を計算することによって、サービス契約を実行する費用を計算するために使用され得る。
【0033】
図3は、航空機のエンジンなどのシステムの作業範囲を選択する例示的な方法300の流れ図である。本例示的な実施形態で、方法300は、1つまたは複数のサーバ100(図1に示す)のメモリデバイス104(図1に示す)内に記憶された複数の命令内で実施される。さらに、本例示的な実施形態で、1つまたは複数のサーバ100のプロセッサ102は、命令を実行して、本明細書に記載の機能を実行する、および/または本明細書に記載の機能を実行させる。
【0034】
本例示的な実施形態で、方法300は、システムの状況を判定するステップ302を含む。たとえば、ツール200は、システムの各構成要素が最後の保守訪問以降に使用された時間の量を示すデータ、1つもしくは複数の構成要素が障害を起こしたもしくは保守を必要とするかどうかを示すデータ、および/または、方法300が本明細書に記載のように機能することを可能にする任意の他のデータを受信する。
【0035】
システムで実行するために使用可能な複数の作業範囲(すなわち、「使用可能な作業範囲」)は、たとえば、予測ツール202(図2に示す)によって、識別される304。たとえば、予測ツール202は、ある時間間隔中の多種多様なエンジン(または他のシステム)構成および/または状態に適合された作業範囲を生成する能力をもつ作業範囲決定モデルを使用することができる。各作業範囲は、そのシステムの各構成要素について定義された複数の保守活動を含む。たとえば、保守活動は、そのシステムの送風機、バッフル、または他の構成要素に補修を行うまたは修理することを含み得る。さらに、各作業範囲は、複数の保守事象を含む。本例示的な実施形態で、保守事象は、システム(たとえば、エンジン)が、そのシステムの1つまたは複数の構成要素に1つまたは複数の保守活動を実行するために保守施設に持ち込まれる(「工場訪問」としても知られる)事象である。
【0036】
本例示的な実施形態で、財務モデルツール204は、各作業範囲に定義された各保守活動の費用を判定する306。たとえば、財務モデルツール204は、各構成要素の履歴データに基づいて各構成要素に各保守活動を実行する標準的な費用を表すデータを受信する。アナライザツール206は、予測ツール202から使用可能な作業範囲を、および財務モデルツール204から各作業範囲内の各保守活動の費用を受信する。アナライザツール206は、保守活動の確率分布を使用するダイナミックプログラミング解法を実行して308、各作業範囲の予期される費用を判定する。より具体的には、本例示的な実施形態で、アナライザツール206は、方程式1および2を実行308または解いて、ユーザによってまたはデバイスもしくはシステムによって識別される時間間隔中に各作業範囲の予期される費用を判定する。一実施形態では、その時間間隔は、そのシステムに関連するサービス契約が有効である残りの時間の量である。
【0037】
アナライザツール206は、ユーザが所望の作業範囲を選択することができるように、たとえば、ディスプレイ106(図1に示す)を介して、ユーザに各作業範囲の予期される費用を提示する310。たとえば、ユーザは、その時間間隔に亘って最も低い総費用を有する作業範囲を選択することができる。別法としてまたは追加で、アナライザツール206は、その時間間隔に亘って最も低い総費用を有する作業範囲を選択し、選択された作業範囲、残りの使用可能な作業範囲、および/または、各作業範囲の費用をユーザに提示する。
【0038】
本明細書に記載する場合、サーバは、航空機のエンジンなどのシステムの作業範囲の選択を容易にする複数のソフトウェアツールを含む。予測ツールは、システムの複数の作業範囲を生成または識別し、各作業範囲はシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する。財務モデルツールは、識別される作業範囲を受信し、複数の将来の保守事象の各作業範囲の保守活動の予期される費用を判定する。アナライザツールは、予測ツールから複数の作業範囲を受信し、財務モデルツールから保守活動の予期される財務的影響を受信し、事前定義の時間間隔中に各作業範囲の予期される効果を判定する。各作業範囲の予期される効果は、ユーザに提示されて、ユーザが所望の作業範囲を選択することを可能にする。別法として、アナライザツールは、その時間間隔に亘って事前定義の1つまたは複数の基準を満たす予期される効果を有する作業範囲を選択することができ、選択された作業範囲をユーザに提示することができる。アナライザツールは、保守活動の確率分布を使用してダイナミックプログラミング解法を実行して、各作業範囲の予期される効果を判定し、それによって先行技術の解よりも多くの確実性を提供する。したがって、ユーザは、システムで実行されることになる作業範囲を選択するときにより情報に基づく選択を行うことができ、システムの全費用への異なる保守活動の予期される影響を定量化することができ得る。
【0039】
本明細書に記載のシステムおよび方法の技術的効果は、a)各作業範囲がシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する、システムの複数の作業範囲を識別することと、b)複数の将来の保守事象について複数の作業範囲の保守活動の予期される財務的影響を判定することと、c)将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の複数の作業範囲のうちの各々の作業範囲の予期される効果を判定することとのうちの少なくとも1つを含む。
【0040】
システムの作業範囲を選択するのに使用するための方法およびシステムの例示的実施形態が、前記で詳しく説明されている。本方法およびシステムは、本明細書に記載の特定の実施形態に限定されず、そうではなくて、本システムの構成要素および/または本方法のステップは、本明細書に記載の他の構成要素および/またはステップと独立しておよび別個に使用可能である。たとえば、そのサーバはまた、他の電力システムおよび方法と組み合わせて使用可能であり、本明細書に記載するような航空機エンジンのみでの実施に限定されない。そうではなくて、例示的な実施形態は、多数の他のシステムアプリケーションに関連して実装および使用可能である。
【0041】
本発明の様々な実施形態の具体的な特徴がいくつかの図面には示され、他には示されないことがあるが、これは単に便宜上である。本発明の原理にしたがって、図面の任意の特徴が、任意の他の図面の任意の特徴と組み合わせて参照および/または請求され得る。
【0042】
本明細書は、最良の形態を含めて、本発明を開示するために、そしてまた、任意のデバイスまたはシステムを作成および使用することと任意の組み込まれた方法を実行することを含めて、当業者が本発明を実施することができるようにするために、例を使用する。本発明の特許性のある範囲は、本特許請求の範囲によって定義され、当業者が思い付く他の例を含み得る。そのような他の例は、それらが本特許請求の範囲の文字通りの言語と異ならない構造的要素を有する場合、または、それらが本特許請求の範囲の文字通りの言語と実質のない差異を有する同等の構成要素を含む場合、本特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0043】
100 サーバ
102 プロセッサ
104 メモリデバイス
106 ディスプレイ
108 ユーザインターフェース
110 ネットワークインターフェース
200 ソフトウェアツール
202 予測ツール
204 財務モデルツール
206 アナライザツール
300 方法
302 システムの状況を判定する
304 システムの複数の作業範囲を識別する
306 各作業範囲の各保守活動の費用を判定する
308 ダイナミックプログラミング解法を実行して、各作業範囲の予期される費用を判定する
310 ユーザに各作業範囲の予期される費用を提示する

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムの作業範囲を選択するのに使用されるサーバ(100)であって、
前記システムの複数の作業範囲を識別するように構成された予測ツールであって、各作業範囲が前記システムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する、予測ツール(202)と、
前記複数の作業範囲を受信し、複数の将来の保守事象についての各作業範囲の前記保守活動の予期される財務的影響を判定するように構成された財務モデルツールであって、前記予測ツールに結合された財務モデルツール(204)と、
前記予測ツールにおよび前記財務モデルツールに結合されたアナライザツール(206)であって、
前記予測ツールから前記複数の作業範囲を受信し、
前記財務モデルツールから前記保守活動の予期される財務的影響を受信し、
前記将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定するように構成された、アナライザツール(206)と
を備える、サーバ(100)。
【請求項2】
前記予期される効果が、前記作業範囲の予期される費用、予期される価格、予期される収益、予期されるキャッシュフロー、予期される保守施設負荷、予期される予備エンジン容量、および予期されるタイムオンウイング間隔のうちの少なくとも1つを含み、前記アナライザツール(206)が、前記事前定義の時間間隔中に少なくとも1つの事前定義の基準を満たす作業範囲を選択するように構成された、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項3】
前記アナライザツール(206)が、ユーザに各作業範囲の前記予期される効果を提示するように構成された、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項4】
前記事前定義の時間間隔が、前記システムに関連するサービス契約が有効である残りの時間の長さである、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項5】
前記複数の作業範囲が、基底作業範囲および完全な作業範囲を含み、前記基底作業範囲が、前記複数の構成要素のうちの故障した少なくとも1つの構成要素に保守活動を実行することを含み、前記完全な作業範囲が、前記複数の構成要素のうちの各構成要素に保守活動を実行することを含む、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項6】
前記アナライザツール(206)が、各作業範囲の前記予期される効果を判定するために、前記保守活動の確率分布を使用するダイナミックプログラミング解法を実行するように構成された、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項7】
前記ダイナミックプログラミング解法が
【数1】

を備え、ここで、
Mが前記システムの時間間隔内のステージの数であり、
Nが前記時間間隔内の残りのステージの数であり、
N(i)が、Nステージが残り、前記システムが状態iにあるときの予期される最小費用であり、
C(i,a)が、前記システムが状態iにあるときに決定「a」を行う現在の費用であり、
ij(t|si1,si2,…siN,a)が、前記決定「a」が行われるときにtサイクルで状態iから状態jに移るための確率密度関数であり、
iが、状態iにあるときに前記時間間隔の最後Tまでに残された時間であり、
iが、状態iにあるときのすべての使用可能な作業範囲のセットである、
請求項6記載のサーバ(100)。
【請求項8】
前記予測ツール(202)が、前記複数の作業範囲のうちの各作業範囲を識別するように構成され、各作業範囲が、互いの作業範囲に比べて異なる複数の保守活動が前記構成要素に実行されるように定義する、請求項1記載のサーバ(100)。
【請求項9】
そこに記憶されたコンピュータ実行可能命令を含む、コンピュータ可読媒体(104)であって、前記コンピュータ実行可能命令は、プロセッサ(102)によって実行されるときに、前記プロセッサに、
各々の作業範囲がそのシステムの複数の構成要素の複数の保守活動を定義する、システムの複数の作業範囲を識別させ、
複数の将来の保守事象についての各作業範囲の前記保守活動の予期される財務的影響を判定させ、および、
前記将来の保守事象を含む事前定義の時間間隔中の各作業範囲の予期される効果を判定させる、
コンピュータ可読媒体(104)。
【請求項10】
前記予期される効果が、前記作業範囲の予期される費用、予期される価格、予期される収益、予期されるキャッシュフロー、予期される保守施設負荷、予期される予備エンジン容量、および予期されるタイムオンウイング間隔のうちの少なくとも1つを含み、前記コンピュータ実行可能命令が、前記プロセッサ(102)によって実行されるときに、前記プロセッサに、前記事前定義の時間間隔中に少なくとも1つの事前定義の基準を満たす作業範囲を選択させる、請求項9記載のコンピュータ可読媒体(104)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−97793(P2013−97793A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−233355(P2012−233355)
【出願日】平成24年10月23日(2012.10.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)