説明

シスプラチン及び他の薬剤又はリポソーム中に封入された遺伝子を用いてのヒト癌のための療法

【課題】それらの内部及び外部膜ニ層間に異なった脂質組成を有するリポソーム中にシスプラチン及び他の正に荷電された薬剤を封入するための方法が開示される。
【解決手段】リポソームは、動物及びヒトへの静脈内注入の後、一次腫瘍及びそれらの転移に達することができる。封入されたシスプラチンは、種々のヒト固形癌、例えば乳癌及び前立腺癌(但し、それらだけには限定されない)の根絶において高い治療効力を有する。封入されたシスプラチンと封入されたドキソルビシン又は他の抗腫瘍薬剤との組合せは、治療価値のあるものであることが主張されている。封入されたシスプラチンと多くのリポソーム中に封入された抗癌遺伝子、例えばp53、IL−2、IL−12、アンジオスタチン及びオンコスタチンとの組合せ、又は封入されたシスプラチンとHSV−tk及び封入されたガンシクロルビルとの組合せもまた、癌根絶において治療価値のあるものであることが主張されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リポソーム封入された薬剤及び供給システム、特にリポソーム封入されたシスプラチンに関する。薬剤は、静脈内注入の後、種々のヒト悪性疾患における癌細胞を殺害するのに有用である。
【背景技術】
【0002】
本出願においては、種々の出版物、特許及び公開された特許明細書は、著者及び日付により又は特許番号により言及される。出版物についての十分な引用文献が、この開示又は請求の範囲の直前に提供される。それらの出版物、特許及び公開された特許明細書の開示は、本発明が関与する技術の状態により十分に説明するために、引用により本明細書に組み込まれる。
【0003】
シス−ジアミンジクロロ白金(II)シス−[Pt (NH3)2Cl2]2+、すなわち省略されたシスプラチン又はシス−DDPは、精巣、卵巣癌の処理のための、及び頭及び首の癌に対する最も広く使用されている抗腫瘍薬物の1つである。90%以上の精巣癌がシスプラチンにより治癒される。最も重度の副作用は、腎毒性、骨髄毒性及び胃腸刺激である(Oliver and Mead, 1993)。両眼神経障害が、160mg/m2のシスプラチン及び640mg/m2のカルボプラチンにより処理された卵巣癌により影響された患者において観察された(Caraceniなど., 1997)。シス−又はカルボプラスチン耐性の上皮卵巣癌(最終治療の6日目以内での再発)を有する61人の患者のグループにおける経口ヘキサメチルメラミン処理は、14%の客観的応答割合を示した(Vergote など., 1992)。
【0004】
カチオン性コレステロール誘導体は、治療剤を供給するために使用されて来た。例えば、それらはホスファチジルエタノールアミンと共に混合され、そして音波処理され、DNAと複合体化され、そしてエンドソーム区画からのサントゾル中への侵入を仲介することができる小さな単層小胞が形成される。リポソーム配合物の1つ、すなわちDC−Cholリポソームは、メラノーマに対する遺伝子療法臨床試験に使用されて来た。ヒト免疫欠損ウィルス−1トランス活性タンパク質遺伝子は、HIV-1の制御下でレポーター遺伝子と共に同時供給された。シスプラチン療法に失敗した患者は、カチオン性リポソームにより高くトランスフェクトできた。
それらの結果は、シスプラチンによる一連の治療プロトコール及び悪性疾患のための遺伝子療法を示唆した(Farhoodなど., 1994)。
【0005】
キャリヤーリガンドとして2−アミノ−メチルピロリジン誘導体から調製された種々の白金複合体が、マウスにおける皮下及び/又は腹腔内注入を用いてColon26癌及びP388白血病に対するそれらの抗腫瘍活性について試験された。2−アミノメチルピロリジンは、そのアミン誘導体において最も効果的なキャリヤーリガンドであることがわかっている(Morikawa など、1990)。
最適な方法が、エマルジョン−加熱安定化方法によりシスプラチンアルブミン微小球(Cis−DDP−AMS)(平均サイズは148ミクロンであった)を調製するための直交試験により確立された。白金の分布及び脱離半減時間は、それぞれ、Cis−DDP−AMS対Cis−DDPによる肝動脈化学塞栓形成の後、3.36倍及び1.23倍、延長された(Zhangなど., 1995)。
【0006】
改良された治療性質を有する白金(II)−基材の化合物についての研究は、ウラシル及びウリジンに結合される新規種類の水溶性第三世代シス−ジアミンジクロロ白金(II)複合体を企画し、そして合成を促進した。しかしながら、合成された化合物のどれも、処理された3種の細胞系に対していずれの有意な細胞毒性活性も示さなかった(Kimなど., 1998)。
【0007】
最適開発された生物還元剤4−[3−(2−ニトロイミダゾリル)−プロピルアミノ]−7−クロロキノリン塩酸塩(NLCQ−1)は、骨髄毒性における同時増強を伴なわないで、化学治療剤メルファラン(L−PAM)、シスプラチン(シスDDP)及びシクロホスファミド(CPM)の抗腫瘍効果を増強することが見出された。増強は、厳密には、予定通りであり、そしてNLCQ−1がシスDDPの45分前に与える場合、最適な効果(付加的効果よりも1.5〜2対数倍の殺害効果)が観察された。それらの結果は、臨床学的研究に基づけば、化学感作物質としてのHLCQ−1の分類を支持する(Papudopoulouなど., 1998)。
【0008】
シスプラチンによる第1線級の治療をこれまでに受けている、非−小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者における第2線級処理としてのシスプラチンとパシルタキセルとの組合せは、14人の患者において部分的な応答を達成した(40%)(Stathopoulasなど.,1997)。
Abraなど. (1999年8月31日に発行されたアメリカ特許第5,945,122号)は、ほとんど中性の脂質に閉じ込められた荷電されていないシスプラチンを含むリポソーム組成物を記載する。しかしながら、シスプラチン閉じ込めについての原特許においては。
【0009】
従って、従来の報告は、シスプラチン及び他の治療薬物のリポソーム仲介された供給が可能であることを示しているが、治療効率はシスプラチンの低い水溶解性及び低い安定性により制限されて来た。治療効率はまた、薬物の高い毒性によっても制限される。従って、治療的に使用される場合、シスプラチン含有薬物の加工、及びシスプラチンの高い毒性に関与する困難性を低める必要が存在する。本発明は、この必要性を満たし、そして同様に関連する利点も提供する。
【発明の概要】
【0010】
1つの観点においては、本発明は、それらの内部膜と外部膜との二層間に異なった脂質組成を有し、そして動物及びヒトへの静脈内注入の後、一次腫瘍及びそれらの転移部分に達することができるリポソーム中にシスプラチン及び他の正に荷電された薬物を封入するための方法を提供する。1つの観点においては、前記方法は、正に荷電され、そして抗腫瘍活性を付与された活性形のシスプラスチンであるその水性形に加水分解によりシスプラチンを転換するために、シスプラチンとDPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール)又は他の脂質分子との間での複合体形成を包含する。
【0011】
この段階でフソゲン性質を有する膜融合ペプチド及び他の分子が、複合体の細胞膜を通しての侵入を改良するために添加され得る。水性シスプラチン−DPPGミセルは、小胞形成脂質、例えば予備製造されたリポソーム又は脂質と共に混合し、続いて膜を通して透析し、そして押出し、シスプラチンを非常に高い効率で閉じ込め、そして封入することによってリポソームに転換される。ドキソルビジン又は他の正に荷電された化合物が、それらの配合においてシスプラチンに代わって置換され得る。
【0012】
封入されたシスプラチンは、種々のヒト固形腫瘍、例えば乳癌及び前立腺癌(但し、それらだけは限定されない)を根絶することにおいて高い治療効率を有する。封入されたシスプラチンと封入されたドキソルビシン又は他の抗腫瘍薬物との組み合わせが、治療価値のあるものとして請求されている。また、封入されたシスプラチンと多くの抗癌剤、例えばp53、IL−1、IL−12、アンジオスタチン及びリポソーム中に封入されたオンコスタチンとの組合せ、及び封入されたシスプラチンとHSV−tk及び封入されたガンシクロビルとの組合せも、癌根絶において治療的に価値あるものとして請求されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、シスプラチン封入を示す。
【図2】図2は、封入されたシスプラチンの注入の3〜4後でのSCIDマウスにおけるMCF−7腫瘍の緩解を示す。
【0014】
【図3A】図3Aは、シスプラチンによる処理を伴って又は伴わないでのSCIDマウスの腫瘍の組織学を示す。SCIDマウスにおいて増殖された未処理のMCF−7腫瘍を示す。40倍の倍率。腫瘍組織の構造特徴の相同パターンを注意すること。
【図3B】図3Bは、シスプラチンによる処理を伴って又は伴わないでのSCIDマウスの腫瘍の組織学を示す。シスプラチン−処理されたマウスを示す(4回の注射)。細胞はアポプトシス性であり、構造体中に細胞のグループが存在し、そして核はアポプトシス細胞の特徴であるより大きく且つより濃く染色する。
【0015】
【図3C】図3Cは、シスプラチンによる処理を伴って又は伴わないでのSCIDマウスの腫瘍の組織学を示す。筋肉への侵入を示す、未処理の動物からの腫瘍を示す。20倍の倍率。
【図3D】図3Dは、シスプラチンによる処理を伴って又は伴わないでのSCIDマウスの腫瘍の組織学を示す。シスプラチン−処理されたマウスを示す。侵入は明白ではない。20倍の倍率。
【0016】
【図4A】図4Aは、封入されたシスプラチンにより処理された動物(図4A)と未処理の動物(図4B)との間の腫瘍サイズの肉眼で見える(視学的)差異を示す。
【図4B】図4Bは、封入されたシスプラチンにより処理された動物(図4A)と未処理の動物(図4B)との間の腫瘍サイズの肉眼で見える(視学的)差異を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施は、特にことわらない限り、免疫学、分子生物学、微生物学、細胞生物学及び組換えDNAの従来の技法を用いるであろう。それらの方法は、次の出版物に記載されている。例えば、Sambrookなど. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition (1989); Current Protocols in Molecular Biology (F. M. Ausubel など. Eds., (1987); The series Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); “PCR: A Practical Approavh” (M. MacPherson など., IRL Press at Oxford University Press (1991)); PCR2: A Practical Approach (M. J. MacPherson, B.D. Hames and G. R. Taylor eds. (1995)); Antibodies, A Laboratory Manual (Harlow and Lane, eds. (1988)); 及びAnimal Cell Culture (R. I. freshney, ed. (1987))を参照のこと。
【0018】
本明細書及び請求の範囲において使用される場合、単数形“不定冠詞”及び“定冠詞”は、特にことわらない限り、複数の参照も包含する。例えば、用語“細胞”とは、多くの細胞、例えばその混合物も包含する。
用語“含んで成る”とは、組成物及び方法が列挙される要素を包含するが、しかし他の排除するものではない。組成物及び方法を定義するために使用される場合、“〜から実質的に成る”とは、いずれかの必須の重要な他の要素の排除を意味するであろう。従って、要素から実質的に成る組成物は。方法及び医薬的に許容できるキャリヤー、例えばリン酸緩衝溶液、保存剤及び同様のもの。 “〜からなる”とは、他の成分中の微量元素の排除及び本発明の組成物の投与のための実質的な方法段階を意味するのであろう。個々のそれらの推移用語により定義される態様は、本発明の範囲内である。
【0019】
用語“ポリヌクレオチド”及び“核酸分子”とは、いずれかの長さのヌクレオチドのポリマー形を言及するために交換可能的に使用される。ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド及び/又はそれらの類似体を含むことができる。ヌクレオチドは、いずれかの三次元構造を有し、そしていずれかの知られているか又は未知の機能を行うことができる。用語“ポリヌクレオチド”とは、例えば一本鎖、ニ本鎖及び三本鎖ヘリックス分子、遺伝子又は遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、mRNA, tRNA, リボザイム、cDNA, 組換えポリヌクレオチド、枝分かれポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、いずれかの配列の単離されたDNA、いずれかの配列の単離されたRNA、核酸プローブ及びプライマーを包含する。核酸分子はまた、修飾された核酸分子を包含することができる。
【0020】
“遺伝子”とは、転写され、そして翻訳された後、特定のポリペプチド又はタンパク質をコードすることができる少なくとも1つの読み取り枠を含むポリヌクレオチドを言及する。
“組成物”とは、活性剤、及び他の不活性(例えば、検出剤又はラベル、又は医薬的に許容できるキャリヤー)又は活性化合物又は組成物、例えばアジュバントの組合せを意味する。
“医薬組成物”とは、インビトロ、インビボ又はエクスビボでの診断又は治療的使用のために組成物を適切にする不活性又は活性キャリヤーと活性剤との組合せを包含する。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語“医薬的に許容できるキャリヤー”とは、標準の医薬キャリヤー、例えばリン酸緩衝溶液、水及びエマルジョン、例えば油/水又は水/油エマルジョン、及び種々のタイプの湿潤剤のいずれかを包含する。組成物はまた、安定剤及び保存剤も含むことができる。キャリヤー、安定剤及びアジュバントの例に関しては、Martin, Remington’s. sti., 15th Ed. (Mack Pull. Co., Easton (1975)) を参照のこと。
【0022】
“有効量”とは、有益な又は所望の結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1又は複数回の投与、適用又は用量で投与され得る。哺乳類は、ネズミ、サル、ヒト、家畜、スポーツ用動物、及びペットを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
“対照”とは、比較目的のための実験に使用される他の対象又はサンプルである。対照は、“正”又は“負”であり得る。例えば、実験の目的が特定型の癌と遺伝子の変更された発現レベルとの相互関係を決定するためである場合、正の対照(そのような変更を担持し、そしてその疾病の症候特徴を示す対象又は対象からのサンプル)、及び負の対照(変更された発現及びその疾病の臨床学的症候を欠いている対象又は対象からのサンプル)を使用することが一般的に好ましい。
【0023】
“遺伝子供給ビークル”とは、宿主細胞中に挿入されたポリヌクレオチドを担持することができるいずれかの分子として定義される。遺伝子供給ビークルの例は、リポソーム、カチオン性リポソーム、ウィルス、例えばバキュロウィルス、アデノ関連ウィルス、及びレトロウィルス、バクテリオファージ、コスミド、プラスミド、菌類ベクター、及び種々の真核及び原核宿主における発現のために記載された、及び遺伝子療法及び単純なタンパク質発現のために使用され得る、当業界において典型的に使用される他の組換えビークルである。
【0024】
“ウィルスベクター”とは、インビトロ、エクスビボ又はインビボのいずれかで、宿主細胞中に供給されるべきポリヌクレオチドを含んで成る、組換え的に生成されたウィルス又はウィルス粒子として定義される。ウィルスベクターの例は、レトロウィルスベクター、アデノウィルスベクター、アデノ関連ウィルスベクター及び同様のものを包含する。遺伝子移行レトロウィルスベクターにより仲介される観点においては、ベクター構造体は、レトロウィルスゲノム又はその一部を含んで成るポリヌクレオチド、及び挿入されたポリヌクレオチドを言及する。
【0025】
本明細書において使用される場合、“レトロウィルス仲介された遺伝子移行”又は“レトロウィルストランスダクション”は、同じ意味を担持し、そして遺伝子又は核酸配列が細胞に侵入し、そしてそのゲノムを宿主細胞ゲノム中に組み込むウィルスにより宿主細胞中に安定して移行される工程を言及する。ウィルスは、感染のその通常の機構を通して宿主細胞中に侵入し、又はそれが異なった宿主細胞表面受容体又は細胞に侵入するリガンドに結合するよう修飾され得る。本明細書において使用される場合、レトロウィルスベクターとは、ウィルス又はウィルス様侵入機構を通して細胞中に外因性核酸を導入することができるウィルス粒子を言及する。
【0026】
レトロウィルスは、RNAの形でそれらの遺伝子情報を担持するが、しかしながら、ウィルスが細胞を感染すると、そのRNAは、感染された細胞のゲノムDNA中に組み込まれるDNA形に逆転写される。その組み込まれたDNA形は、プロウィルスと呼ばれる。アデノウィル(Ad)又はアデノ関連ウィルス(AAV)おいては、ベクター構造体は、ウィルスゲノム又はその一部、及び挿入されるべきポリヌクレオチドを含んで成るポリヌクレオチドを言及する。
【0027】
デノウィルス(Ads)は、50以上の血清型を包含する、比較的十分に特徴づけられたウィルスの均質グループである(例えば、WO95/27071号を参照のこと)。Adsは、容易に増殖し、そして宿主細胞ゲノム中への組み込みを必要としない。組換えAd−由来のベクター、特に、野生型ウィルスの組換え及び生成のための可能性を低くするそれらのベクターがまた構成されている。(WO95/00655号;WO95/11984号を参照のこと)。野生型AAVは、宿主細胞ゲノム中に組み込む高い感染性及び特異性を有する。(Hermonl and Muzyczka (1984) PNAS USA 81: 6466-6470; Lebkowski など., (1988) Mol. Cell. Biol. 8: 3988-3996 を参照のこと)。
【0028】
プロモーター、及びポリヌクレオチドが操作可能的に結合され得るクローニング部位の両者を含むベクターは、当業界において良く知られている。そのようなベクターは、インビトロ又はインビボでRNAを転写することができ、そして例えばStratagene (La Jolla, CA) 及びPromega Biotech (Madison, WI) から市販されている。発現及び/又はインビトロ転写を最適化するためには、特別の可能性ある不適切な他の翻訳開始コドン、又は転写又は翻訳のレベルで、発現を妨害し、又は低めることができる他の配列を排除するためにクローンの5’及び/又は3’未翻訳部分を除去し、付加し、又は変更することが必要である。他方では、コンセンサンリボソーム結合部位が、発現を増強するために開始コドンの5’側にすぐに挿入され得る。
【0029】
遺伝子供給ビークルはまた、いくつかの非ウィルスベクター、例えばDNA/リポソーム複合体及び標的化されたウィルスタンパク質DNA複合体を包含する。また標的抗体又はそのフラグメントを含んで成るリポソームも本発明の方法に使用され得る。細胞への供給を増強するためには、本発明の核酸又はタンパク質は、細胞表面抗原、例えばTCR、CD3又はCD4を結合する抗体又はその結合フラグメントに結合され得る。
【0030】
ポリヌクレオチドは、当業界において良く知られている方法を用いて、ベクターゲノム中に挿入される。例えば、挿入体及びベクター分子は、お互い対合し、そしてリガーゼにより連結され得る個々の分子上に相補的末端を創造するために制限酵素と、適切な条件下で接触せしめられ得る。他方では、合成核酸リンカーが、制限されたポリヌクレオチドの末端に連結され得る。それらの合成リンカーは、ベクターDNAにおける特定の制限部位に対応する核酸配列を含む。
【0031】
さらに、終結コドン及び適切な制限部位を含むオリゴヌクレオチドは、選択マーカー遺伝子、例えば哺乳類細胞における安定した又は過渡的なトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子;高レベルの転写のためのヒトCMVの即時初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列;mRNA安定性のためのSV46からの転写終結及びRNAプロセッシングシグナル;複製のSV40ポリオーマ起点及び適切なエピソーム複製のためのColEI;種々の多クローニング部位;挿入されたポリヌクレオチドの3’側の安定化要素;及びセンス及びアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーターであり得る。他の手段は当業界において良く知られており、そして入手できる。
【0032】
“宿主細胞”とは、ベクター、又は外因性ポリヌクレオチド、ポリペプチド及び/又はタンパク質の組み込みのための受容体であり得るいずれかの個々の細胞又は細胞培養物を意味する。それはまた、単一の細胞の子孫も包含し、そしてその子孫は、天然、突然又は意図的な突然変異誘発のために、元の親細胞と完全に同一である必要はない(形態学的又はゲノム又は全体のDNA補体において)。細胞は、原核又は真核細胞であり得、そして細菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物細胞及び哺乳類細胞、例えばネズミ、ラット、サル又はヒトを包含するが、但しそれらだけには限定されない。
【0033】
本明細書において使用される場合、用語“新形成細胞”、“新形成”、“腫瘍”、“腫瘍細胞”、“癌”及び“癌細胞”(交換可能的に使用される)とは、比較的自主増殖を示す細胞を言及し、その結果、それらは細胞増殖の制御の有意な損失(すなわち、規則解除された細胞分裂)により特徴づけられる異常増殖表現を示す。新形成細胞は、悪性又は良性であり得る。
“抑制する”腫瘍増殖とは、対照細胞に比較される場合、縮小される増殖状態を示す。腫瘍細胞増殖は、当業界において知られているいずれかの手段、例えば腫瘍サイズの測定、腫瘍細胞が増殖するかどうかの3H−チミジン組み込みアッセイを用いての決定、又は腫瘍細胞の計数により評価され得るが、但しそれらだけには限定されない。“抑制する”腫瘍細胞増殖とは、次の状態のいずれか又はすべてを意味する:遅延及び停止する腫瘍増殖、並びに腫瘍縮小。
【0034】
発明の態様:
ミセル、リポソーム及びそれらを得るための方法:
体積単位当たりシスプラチンの含有率を増強し、その毒性を低め、静脈内注入の後、一次腫瘍及びそれらの転移を標的化することができ、そして腫瘍の縮小及びSCIDマウス担持のヒト腫瘍の完全な治療を示す、シスプラチンを脂質中に閉じ込めるための新規方法が提供される。
【0035】
シスプラチンは、そのニ価形で遷移重金属白金の1つの原子に結合されるシス位置に2個の塩素原子及び2個のアミノ基を含む重金属複合体である。それはニ官能価のアルキル化剤及びDNA合成を阻害するDNAインターカレーターである。1つの形においては、シスプラチンは、300.1の分子量及び水における1mg/mlの制限された溶解性の黄色の粉末である。それは、しばしば、アドリアマイシン、ビンプラスチン、ブレオマイシン、プレドニゾン、ビンクリスチン、タキソール及び他の抗腫瘍薬物、並びに放射線療法と組合して、癌患者、特に精巣癌、リンパ腫、子宮内膜癌、膀胱癌、卵巣癌、頭及び首の鱗状細胞癌、乳癌及び多くの他の悪性腫を有する患者の処理のために広く使用される。本発明者は、その脂質閉じ込めの形でのその溶解性の上昇のために、患者の処理のために必要とされる合計のシスプラチン体積の低下を主張する。
【0036】
静脈内注入のために使用される体積は通常、24時間の注入の場合、多く投与される(成人患者当たり約180ml、又は約20〜120mg/m2)。それは、25〜80分の急速相、続く58〜73時間の遅い二次相における血漿から明らかであり;それは血漿タンパク質により結合され、そして腎臓により排泄される(処理された患者における重度の腎毒性を説明する)。用量関連の腎毒性は、強い水和化、マンニトール、フロセミド及び他の薬剤により一部克服され得る。シスプラチンにより付与される他の毒性は、耳毒性、吐気及び嘔吐、貧血及び軽い骨髄抑制を包含する(The Merck Manual of Diagnosis and Therapy)。本発明は、従来技術の方法及び組成物の限界を克服する。
【0037】
従って、1つの観点においては、本発明は、シスプラチン混合物を形成するために、シスプラチン及びホスファチジルグリセロール脂質誘導体(PGL誘導体)を、1:1〜1:2.1の範囲で組合すことによって、シスプラチンミセルを生成するための方法を提供する。他の態様においては、シスプラチン:PGL誘導体の範囲は、1:1.2;1:1.4;1:1.5;1:1.6;1:1.8;1:1.9;1:2.0又は1:2.1の範囲である。次に、混合物は、シスプラチンミセルを形成するために、有効量の少なくとも20%の有機溶媒、例えばエタノール溶液と組合される。
【0038】
ミセルを形成する能力を有するいずれかの脂質誘導体、及び負に荷電された実効ヘッド基を有する。これは、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール及びジカプリルホスファチジルグリセロールを包含するが、但しそれらだけには限定されない。1つの観点においては、10〜28個の炭素原子を有し、そして不飽和脂肪測鎖を有するホスファチジル誘導体は、本発明の範囲内である。正(1:1)、中性(1:2)又はわずかに負(1:2.1)の実効電荷を粒子に付与するモル比での変動を有する負に荷電されたホスファチジルグリセロール脂質によるシスプラチンの複合体化は、投与の後、身体における異なった組織の標的化を可能にするであろう。
【0039】
しかしながら、負に荷電されたPGLによるシスプラチンの複合体化は、シスプラチンの溶解性を増強することが示されており、従って、効果的な抗腫瘍治療のために必要とされる薬剤の体積を減じる。さらに、シスプラチン及び負に荷電されたPGLの複合体化は、製造工程の間、薬剤損失を最少にする非常に高い封入効率を進行せしめる。それらの複合体は、安定しており、沈殿物を形成せず、そして4℃での少なくとも4ヶ月間の貯蔵の後、治療効能を保持する。
【0040】
本明細書において使用される場合、用語“シスプラチン”とは、類似体を包含する。例としては、次のものを包含する:カルボプラチン、オルマプラチン、オキサプラチン、2−アミノメチルピロリジン(1,1−シクロブタンジカルボキシレート)白金、ロバプラチン、1−シクロブタン−ジカルボキシレート(2)−(2−メチル−1,4−ブタンジアミン−N,N’)白金、ゼニプラチン、エンロプラチン、254−Sネダプラチン及びJM−216(ビス−アセテート−アミン−ジクロロヘキシルアミン−白金(IV))。
【0041】
必ずしも明白に言及されないが、他の正に荷電された薬剤、例えば抗腫瘍薬物ドキソルビシン(但し、これだけには限定されない)がシスプラチンに変わって置換され得ることは理解されるべきである。他方では、中性である他の型の薬剤は、正に荷電された基による誘導体化による正に荷電された薬剤へのそれらの転換に基づいて使用され得る。中性又は負に荷電された抗癌又は他のタイプの薬剤の正に荷電された分子への修飾は、有機合成において十分に確立されている多くの方法により達成され得る。これは、例えば薬剤におけるヒドロキシル基をアミノ基又はトリメチルアミノ基により置換し、従って化合物に正の電荷を導入することによって達成され得る。アミノ基による環ヒドロキシル基の置換は、1998年11月17日に発行されたアメリカ特許第5,837,868号(Wangなど.)に論じられている。
【0042】
上記方法は、その段階が上記に示される順序で行われることを必要としない。例えば、前記方法は、溶液を形成するために、シスプラチンと有効量の少なくとも20%の有機溶媒溶液とを組合すことによって実施され得る。上記溶液はシスプラチンミセルを形成する。上記のように、シスプラチン:PGL誘導体の範囲は、1:1.2;1:1.4;1:1.5:1:1.6;1:1.8;1:1.9:1:2.0;又は1:2.1の範囲である。
【0043】
いずれかの有機溶媒又はエタノールの配合物、又は二層システムを形成しないいずれか他のアルコール、又は20%アルコールに相溶性である他の有機溶媒(すなわち、クロロホルム)が、本明細書に記載される方法において有用である。例えば、アルコール溶液は、少なくとも30%,35%,40%,45%〜90%(それらの間でのいずれかの増大を包含する)のいずれかであり得る。好ましくは、アルコール溶液は、DPPGに関して、30%エタノールであり、そして他の脂質に関しては、最適な%は異なることができる。
【0044】
1つの態様においては、負の実効電荷を有するペプチドによるDPPG分子の部分置換は、標的物の細胞膜を通過できるフソゲン性質を有するシスプラチン複合体を付与する。フソゲンペプチドはまた、それらの良好な暴露のためにPEGの遊離端で共有結合され得る。最終シスプラチン/DPPG複合体での水性シスプラチンの正の電荷を置換する少量のカチオン性脂質はまた、フソゲン性質を複合体に付与し;カチオン性脂質(例えば、DDAP:ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド;DMRIE:N−[1−(2,3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N, N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド;DMTAP:1,2−ジミリストイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン;DOGS:ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン;DOTAP:N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド;DPTAP:1,2−ジパルミトイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン;DSTAP:1,2−ジステロイル−3−トリメチルアンモニウムプロパン)により置換される正の荷電の%は、カチオン脂質の毒性のために低い。いくつかの配合物は、ミセルにおいて多量のフソゲン両親媒性脂質DOPEを含む。
【0045】
さらなる観点においては、シスプラチンミセルは、例えば薬剤供給への使用のためには、小胞形成脂質中に封入される。
脂質封入されたシスプラチンは、種々のヒト固形腫瘍、例えば乳癌、前立腺癌、多形グリア芽腫、非小肺細胞癌、膵臓癌、頭及び首の鱗状細胞癌及びT−細胞リンパ腫(但し、それらだでには限定されない)の根絶に高い治療効能を有する。従って、もう1つの観点においては、本発明は、それらの内部及び外部膜二層間に異なった脂質組成を有するリポソーム中に封入されたシスプラチン又は他方では、他の正に荷電された抗腫瘍薬剤を用いての種々のヒト悪性疾患の処理方法を提供する。
【0046】
リポソーム封入された薬剤は、動物及びヒトへの静脈内注入の後、一次腫瘍及びそれらの転移部分に達することができる。抗腫瘍薬剤は、シスプラチンのみよりも高い治療効果を有する。また、封入されたシスプラチンと多くの抗癌遺伝子、例えばp53、IL−2,IL−12,アンジオスタチン及び類似するタイプのリポソーム中に封入されるオンコスタチンとの組合せ、及び封入されたシスプラチンとHSV−tk及び封入されたガンシクロビルとの組合せは、癌根絶において高い治療効能を有する。
【0047】
さらなる観点においては、本発明は、封入されたシスプラチンと次の遺伝子との組み合わせを提供する:
(i)CMV、β−アクチン又は他のプロモーターの制御下での野生型(wt)p53 cDNA発現ベクター、及びp53遺伝子の長期発現を維持することができる複製のヒト起点;ウィルス複数イニシエータータンパク質、例えばT抗原を必要とする複製の起点は、p53タンパク質がT抗原と強く相互作用するために、p53遺伝子の移行のためには適切でない。
【0048】
(ii)PAX5 cDNA発現ベクター、すなわちp53遺伝子のイントロン1内の短い(10個のヌクレオチド)調節領域と相互作用する既知のp53遺伝子(wt及び変異体p53遺伝子の両者)の唯一のサプレッサー。p53遺伝子療法における主要欠点は、腫瘍においては、過剰発現され、そしてwt p53タンパク質と四重体化できるp53の内因性突然変異誘発された形によるwt p53タンパク質の不活性化であり;前記内因性p53遺伝子は、Pax5, すなわちp53遺伝子の可能性ある転写リプレッサーの発現により抑制されるであろう。Wt p53 cDNAベクターは、イントロン1及び結果的には、抑制性PAX5結合領域を欠いている。内因性変異体p53遺伝子発現を抑制し、そして癌細胞から変異体p53を排除し、アポプトミス及び腫瘍抑制の誘発を増強することが重要である。
【0049】
(iii)単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV−tk)遺伝子。単純ヘルペスウィルスチミジンキナーゼ(HSV−tk)自殺遺伝子はまた、動物モデル及びヒト患者のガンシクロビル(GCV)処理の後、DNA合成の中断を引き起こすp53及びPax5遺伝子の組合せに包含され;これは、癌細胞における鎖の分裂を高め、そして鎖分裂に結合し、そしてDNA部位に損傷を与えることが知られているp53の腫瘍サプレッサー機能を増強することが予測される。もう1つの態様においては、ガンシクロビルが組合され、そしてリポソーム中に封入される。
【0050】
遺伝子療法は、患者の体細胞中への治療遺伝子の導入を意図する生物医学的研究の新時代である(Boulilas, 1998a; Martin and Boulikas, 1998により再考される)。2種の腫瘍障害が、体細胞遺伝子移行の好結果をもたらす適用を妨げる:(1)インビボ注入から約3〜7日後での治療遺伝子。
【0051】
第1の問題は、(i)遺伝子を担持する供給ビークルの標的細胞表面に達することの無能性から(リポソーム−DNA複合体の大部分が血液循環から急速に排除される):(ii)細胞膜を通過することの困難性から、及び(iii)細胞によるインターナリゼーションの後、エンドゾームからのDNAの開放の困難性から;(iv)核中への無能な取り組みから生じる。他は、数日間、循環に存続し、そして腫瘍において濃縮する秘密リポソーム(Martin and Boulikas, 1998a)を使用して来た。しかしながら、従来の秘密リポソームは、癌細胞により摂取されない。リポソームインターナリゼーション(フソゲンペプチド)を増強することが企画される方法が、本明細書に開示される。
【0052】
第2の問題は、子孫細胞間での細胞増殖の間、それらの希釈を導くヌクレアーゼ分解及び自律的に複製することの失敗による、又は宿主細胞の染色体中への組み込みの後、外来性DNAの不活性化による核におけるプラスミドの損失に起因する。しかしながら、延長された期間、プラスミドの染色体外複製を維持することができるヒト配列の使用(Teni Boulikasによる“Cloning mthod for tropping human origins of replication”と称するアメリカ特許第5,894,060号を参照のこと)は、この制限を克服するであろう。
【0053】
封入されたシスプラチン(Lipoplatin(商標)と称する)又は封入されたドキソルビシン、及びそれらの薬剤と遺伝子、例えばp53、PAX5及びHSV−tk/封入されたガンシクロビル、IL−2,IL−12,GM−CSF,アンジオスタチン、IL−4,IL−7,IFN−γ,TNF−α,RB,BRCA1,E1A,封入された5−フルオロシトシンと組合してのシトシンデアミナーゼ、bcl−2, MDR−1,p21,p16, bax, bcl−xs, E2F, IGF−1 VEGF,TGF−β遺伝子及び同様のものとの組合せの供給の後、動物モデル及びヒトにおける腫瘍の緩和及び乳癌、前立腺癌及び他の癌の腫瘍質量体積の低下がまた、本明細書に請求されている。
【0054】
従って、本発明は、本発明の方法により得られる封入された薬剤又は他の中間体と細胞とを接触することを含んで成る、シスプラチン又は他の治療剤を細胞に供給するための方法をまた提供する。本発明の方法により得られる封入された薬剤の有効量を対象に投与することを含んで成る、対象における腫瘍の増殖を阻害するための方法がまた、本発明により提供される。前記方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボにおいて実施され得る。
【0055】
従って、本発明はまた、封入された薬剤及びポリヌクレオチドを用いての組合せ治療も提供する。本明細書において使用される場合、ポリヌクレオチドは、遺伝子類を包含するが、但しそれらだけには限定されない。組合せ治療は、2種の機構が異なっており、そして相乗性を達成できるので、いずれか1つの処理よりも癌の根絶においてより効果的である。
【0056】
例えば、損傷されたDNA領域及びDNAの遊離端に結合するp53タンパク質の性質は知られており、そして重度に損傷された細胞におけるアポプトシスの機構を開始する性質も知られている(Boulikas, 1998a により再考された)。癌細胞におけるDNAの遊離端は、移行されたwt p53の発現によりそれらの細胞におけるアポプトシス経路の誘発を増強するシスプラチンにより、損傷の後に生成されることが予測される(多くの腫瘍は、突然変異誘発されたp53を有し、そしてこの経路を効果的に誘発することはできない)。治療用ポリヌクレオチドはまた、ミセル中に導入する前、遺伝子移行ベクター中に挿入され得る。
【0057】
野生型p53遺伝子の移行は、多くの研究において、インビボ及び細胞培養において腫瘍細胞増殖を延長するために都合良く使用されて来た。アデノウィルス/p53ベクターを用いての腫瘍内注入は、最近の臨床試験において肺腫瘍に対して(Rothなど., 1996)及び動物モデルにおいて前立腺腫に対して(Boulikas,1998aにより再考される)、効果的であることが示されている。しかしながら、腫瘍内注入方法は、癌の後期段階にしばしば関連する転移に対して適用できない。封入されたシスプラチンによるp53遺伝子の全身性供給及び身体のいずれかの領域における腫瘍の標的化は、癌治癒のための効果的な処理である。
【0058】
本発明者は、動物モデル及び臨床試験において試験される患者における種々のヒト癌への、封入された5−フルオロシトシン、bcl−2,MDR−1, p21, p16, bax, bcl-xs, E2F, IGF−1 VEGF, TGF−β,アンジオスタチン及び他の遺伝子と組合して、wt p53, pax5, HSV−tk,GM−CSF, IL−12,IL−2,IL−4,IL−7,IFN−γ,TMF−α,RB,BRCA1,E1A,シトシンデアミニアーゼ,並びに封入されたシスプラスチン及び他の薬剤のリポゾーム供給を用いて、好都合な体細胞遺伝子移行のための4種の重要障害を緩和するか又は部分的に克服するために手段を提供する。
【0059】
それらは、(i)それらの毒性を低めるリポソーム中への薬剤及び遺伝子小球の濃縮及び封入化;(ii)ポリエチレングリコール(PEG)、ヒアルロン酸又は他のポリマーによる複合体の表面の被覆による固形腫瘍及び転移の標的化;(iii)フソゲンペプチド又は低い%のカチオン性脂質のために、癌細胞による薬剤及びプラスミドの摂取の増強;及び(iv)治療遺伝子のエピソーム複製又は長期発現及び高レベルの発現を維持することができる複製のヒト起点(ORI)を用いての遺伝子の維持された発現を包含する。
【0060】
さらなる態様においては、ポリヌクレオチド又は遺伝子はさらに、数日よりもむしろ数ヶ月間、遺伝子の発現を維持する調節DNA配列を含んで成る。この強い治療効果は、抗癌遺伝子の高レベルの発現のためであり;弱い調節DNAの制御下に配置されるその同じ遺伝子は無効果であろう。
【0061】
癌処理のためのいくつかの実験方法が、p53遺伝子供給を用いて企画されており;本発明の新規性は、ヒト前立腺悪性腫瘍、特に進行した前立腺癌の半分以上で過剰発現される内因性変異体p53形がPAX5発現ベクターを用いて制御されることにある。p53の突然変異誘導された形は主にそれらのDNA結合ドメインにおけるアミノ酸置換を有するが、しかしwt p53形とまだ四量体化することができ;p53はテトラマーとして作用し、そしてヒト癌細胞における高レベルの内因性変異体p53の存在は、供給されるwt p53の腫瘍サプレッサー機能を妨げる。
【0062】
PAX5は、成長の間、身体構造を決定するホモドメインタンパク質であり;PAX5は哺乳類成長の初期段階で、及び造血幹細胞における分化の間、成人において発現され;p53遺伝子発現は成長する胚における細胞の早い増殖を可能にする成長の初期段階でPAX5サプレッサータンパク質により排除される。PAX5は、成人の後期段階でスイッチオフし、p53の発現を可能にし、そしてその腫瘍抑制機能の付与及び特に造血細胞系におけるアポプトシスの調節を可能にする。
【0063】
多くの供給システムが体細胞遺伝子移行に使用され、それらの個々は利点及び欠点に関連している。組換えアデノウィルスは効果的に複製せず;組換えネズミレトロウィルスはランダムに組み込み、そしてクロマチン取り囲み不活性化され;組換えAAVはランダムに組み込み、そして臨床学的有用性のために高い力価を達成することはできない。すべては、パッケージング制限のために、3.5〜7.5kbの外来性DNAの最大能力を有する。裸のDNAは、全身性供給の後、急速に分解される(半減期5分)。カチオン性リポソームは、毒性であり、心博以上には循環において生存せず、そして主に肺、肝臓及び心臓の内皮を標的化する。
【0064】
“秘密(stealth)”リポソームのみが、腫瘍部位(また、肝臓及び脾臓)において濃縮することができ、そして血液循環において延長された期間、生存することが証明されている(例えば、非秘密中性リポソームに関して数分、及びカチオン性リポソームに関して数秒に比較して、1日)。しかしながら、秘密リポソームは、それらが、溶菌の後、数日間にわたってそれらの荷重を開放する細胞外空間に残存する腫瘍細胞により容易に摂取されず(Martin and Boulikas, 1998により再考されている);しかしながら、下記式の本発明の観点は、フソゲンペプチドにより、又はそれらの内部二層で部分的カチオン性の脂質組成物又はDOPEを提供することにより秘密リポソームを変性する。
【0065】
秘密リポソームにより動物における固形腫瘍において薬剤及び遺伝子小球の濃縮及び摂取を達成すると、第2段階は、本発明の薬剤及び遺伝子標的化アプローチの効力である。M.D. Anderson Cancer Center でのヒト臨床試験は、非細胞肺癌を有し、そしてシスプラチンを組合して腫瘍の部位でのAd5/CMV/p53組換えアデノウィルスの局部注入を用いて、それらの腫瘍にp53突然変異を有することが示されている患者における野生型p53遺伝子の移行を使用する。
【0066】
この臨床試験の第1の結果は、p53の腫瘍内注入の後、有望である(Rothなど., 1996; Boulikas, 1998a により再考されている)。しかしながら、局部注入は、進行した段階の悪性腫にしばしば関連する転移には適用できず;特に、前立腺癌は、特に細胞により分泌されるインスリン−様成長因子I(IGF−I)による前立腺腫瘍増殖における刺激に関する機構により骨への転移を付与する。従って、全身性注入の後、腫瘍細胞塊状物中に濃縮することができる、本明細書において提案される供給システムは、たぶん一次腫瘍のみならず、またその転移を処理する。
【0067】
提案されたシスプラチンリポソームは、本発明者の供給システムの性質のために、主に腫瘍を標的化するであろう。組換え治療における遺伝子は、複製DNA中に組み込むHSV−tk及びガンシクロビルの使用のために、分裂細胞を主に標的化し、そして秘密リポソームの使用のために、血管形成腫瘍を主に標的化する。従って、秘密リポソームにより到達される肝臓及び脾臓細胞は、殺害されないであろう。
【0068】
さらなる態様においては、本明細書に記載されるリポソーム封入された薬剤は、有効量のフソゲンペプチドをさらに含んで成る。フソゲンペプチドは、長いヘリックス軸にそって疎水性グラジエンドにより特徴づけられるヘリックス両親媒性ペプチドの種類に属する。この疎水性グラジエントは、膜におけるペプチドの偏向された挿入を引き起こし、従って、脂質コアを不安定化し、そしてそれにより、膜融合を増強する(Decoutなど., 1999)。
【0069】
赤血球凝集素(HA)は、インフルエンザウィルスのホモトリマー表面糖タンパク質である。感染においては、それは低pHで、ウィルス膜とエンドソーム膜との間での膜融合を誘発する。個々のモノマーは、受容体−結合HA1ドメイン及び膜−相互作用HA2ドメインから成る。HA2ドメインのNH2−末端領域(アミノ酸1〜127)、いわゆる“融合ペプチド”は、標的膜中に挿入し、そしてウィルス膜とエンドソーム膜との間での融合の誘発において決定的な役割を演じる。システインによる領域5〜14における8個のアミノ酸の置換及び回転ラベリング電子常磁性共鳴に基づけば、それは、ホスフェート基から15オングストローム(Å)の最大の深さを有する膜の水平面上に存在する(Macoskoなど., 1997)。
【0070】
インフルエンザウィルス赤血球凝集素HA−2からのフソゲンペプチドの使用は、細胞によるトランスフェリン−ポリリシン−DNA複合体摂取の効率を非常に増強し;この場合、ペプチドはポリリシンに結合され、そして複合体はトランスフェリン−介在性エンドサイトーシスにより供給された(Boulikas, 1998aにより再考される)。このペプチドは、配列:GLFEAIAGFIENGWEGMIDGGGYC(配列番号1)を有し、そして酸性pHで高い卵黄ホスファチジルコリンにより調製されたリポソームからの蛍光色素カルセインの開放を誘発することができ;このペプチドはまた、培養におけるCEM−SSリンパ球を用いて、0.1〜1mMの濃度で、アンチセンスオリゴヌクレオチドの抗−HIV能力を10培まで高めることができた。このペプチドは、エンドソーム膜を不安定化し、そして分解するエンドソームのわずかにより酸性の環境下でコンホメーションを変える(Boulikas, 1998aにより再考される)。
【0071】
膜における負に荷電された脂質の存在は、いくつかのペプチドのフソゲン性質の明示のために重要であり;ところが、フェルチリン、すなわち精子−卵融合に関与する精子表面タンパク質の推定上の融合ドメインを表すペプチドのフソゲン作用は、負に荷電された脂質の存在に依存する。しかしながら、HIV2ペプチドのその作用は依存しなかった(Martin and Ruysschaert, 1997)。
【0072】
例えば、インフルエンザウィルス赤血球凝集素HAのフソゲンペプチド上の2種のドメインを分析するために、HAの細胞質末端及び/又はトランスメンブランドメインがセンダイウィルスのフソゲン糖タンパク質Fのその対応するドメインにより置換されたHA−キメラが企画された。細胞質末端がヒトニューロフィブロミンタイプI(残基1441〜1518)又はc−Raf−1(残基51〜131)のペプチドにより置換されたHAの構造体が製造された。
【0073】
この構造体は、ワクシニアウィルス−T7ポリメラーゼ過渡的発現システムを用いることによって、CV−1細胞において発現された。CV−1細胞と、親又はキメラHAタンパク質により仲介される結合されたヒト赤血球(RBC)との間の膜融合は、pHが低められた後、タンパク質−発現CV−1細胞の細胞質中への予備荷動されRBCからの水性蛍光団カルセインの流れが生じたことを示した。これは、膜融合が脂質二層の両葉状器官を包含し、そして水性融合孔の形式を導くことを示した(Schroth−Diezなど.,1998)。
【0074】
注目すべき発現は、HIVのTATタンパク質が細胞膜を通過することができ(Green and Loewenstein, 1988)、そしてTATの36個のアミノ酸ドメインが、異種タンパク質に化学的に架橋される場合、細胞をトランスダクトする能力を付与したことであった。(配列番号2)は、核局在化シグナルである(Boulikas,1998bを参照のこと)。
【0075】
HIVのもう1つのタンパク質、すなわち糖タンパク質gp41は、フソゲンペプチドを含む。gp41エクトドメインの膜近位領域に由来する線状ペプチドは、抗−HIV剤としての可能性ある用途を有し、そしてヘリックスコンホメーションを採用することによって感染性を阻害する(Judiceなど., 1997)。HIV−1gp41の23個のアミノ酸残基N−末端ペプチドは、負に荷電された大きな単層小胞を不安定化する能力を有する。カチオンの不在下で、主要構造は孔形成α−ヘリックスであり、そしてCa2+の存在下で、そのコンホメーションは、卓越して延長されたフソゲンβ−型構造に転換した。HIV(ala)(R22(A置換)を担持する)の融合活性は70%低められ、ところが第2置換(V2(E))が包含される場合、フソゲン性は完全に破壊され、このことは、それがα−ヘリックスではなく、しかしコレステロール含有の電気的に中性の膜を活性的に不安定化するHIV−1融合ペプチドにより採用される延長された構造であることを立証する(Pereira など., 1997)。
【0076】
プリオンタンパク質(PrP)は、ニューロン及びグリア細胞の表面で通常見出される未知の機能の糖タンパク質である。それは、疾病、例えばウシ海綿状脳障害、及びヒトにおけるCreutzfeldt−Jakob病に包含され、ここでPrPは、変更された形(PrPScと称する)に転換される。コンピューターモデリング計算によれば、PrPの120〜133及び118〜135ドメインは、脂質二層中に斜行手段で挿入し、そして封入されたカルセインの漏れを誘発するためにリボソームと相互反応できる傾斜された脂質結合ペプチドである(Pillotなど., 1997b)。
【0077】
アルツハイマーアミロイドペプチドのC−末梢フラグメント(アミノ酸29〜40及び29〜42)は、インビトロでリポソームの融合を誘発するウィルスタンパク質の融合ペプチドの性質に関連する性質を有する。それらの性質は、細胞膜とアミロイドペプヂドとの直接的な相互作用を仲介し、そしてアミロイドペプチドの細胞毒性の一部を説明することができた。アルツハイマー病の病理学とアポリポタンパク質E(apoE) 多彩現象との間の疫学的及び生化学的連鎖の観点においては、アミロイドペプチドの3種の共通するapoEイソ形とC−末端フラグメントとの間の可能性ある相互作用の試験は、apoE2及びapoE3のみが(apoE4ではない)、アミロイドペプチドフソゲン及び凝集性質の可能性あるインヒビターであることを示した。
【0078】
アミロイド凝集体の形成に対するapoEの保護効果は、安定したapoE/アミロイドペプチド複合体の形成により介在されると思われた(Pillotなど., 1997a;Linsなど., 1999)。11個のアミノ酸残基のペプチドは、そのペプチドがリポソーム膜に結合される場合、強く促進され;ペプチドの融合活性はpH及び膜融合に無関係であるように思われ、そして標的膜は、リシン結合されたホスファチジルエタノールアミン(PE−K)を組み込むことによって提供される正の電荷を必要とした。結合されたペプチドはPE−Kとの非特異的静電相互作用を通して小胞の凝集を引き起こすが、その遊離ペプチドはPE−K小胞の凝集を誘発しなかった(Pecheurなど., 1997)。
【0079】
多くの研究は、細胞又はリポソームの膜における脂質二層への挿入の後、ペプチドのα−ヘリックス二次構造の安定化がペプチドの膜融合性質を担当することを示唆し;Zn2+が、α−ヘリックス構造を安定化するので、ペプチドのフソゲン活性を増強する。例えば、ヒスタチン−5、すなわち認識される亜鉛結合モチーフのC−末端の機能的ドメインに位置する唾液抗微生物ペプチドのHEXXHドメインは、らせん形コンホメーション形で存在する(Martinなど., 1999; Melinoなど., 1999; Curtain など., 1999)。
【0080】
融合ペプチドは、ペプチド基材の遺伝子供給システムを創造するために、DNAプラスミドにより配合されて来た。プラスミドを40〜200nmの超微粒子に縮合するために使用されるYKAKnWKペプチドと、エンドソームからのプラスミドの開放を促進するよう企画されたpH−感受性溶解剤であるGLFEALLELLESLWELLLEA(配列番号3)両親媒性ペプチドとの組合せが、β−ガラクトシダーゼレポーター遺伝子を含む発現システムを増強した(Duguidなど., 1998)。
【0081】
DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)はフソゲン脂質であり;N−メトキシ−スクシニル−Ala−Ala−Pro−Val−DOPEのエラスターゼ分解は、封入された蛍光プローブ、すなわちカルセインを細胞質中に供給するために、この誘導体をDOPE(全体的に正の電荷)に転換した(Pakなど., 1999)。β−エンドフィンmRNAの領域に対して相補的な30個の塩基のオリゴデオキシヌクレオチド配列は、それがフソゲン性質を付与されたジパルミトイル−DL−α−ホスファチジル−L−セリンを含む小さな単層小胞(50nm)内に封入された後、細胞培養物におけるβ−エンドフィン生成の濃度−依存性阻害を誘発した(Frestaなど., (1998)。
本発明の方法において有用な追加のフソゲンペプチドが下記表1〜4に記載される。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【表3】

【0085】
【表4】

【0086】
ミセルが形成された後、それらは、薬剤含有リポソームを形成するために、有効量の小胞形成脂質と共に混合される。本発明のための有用な脂質は、予備製造された中性リポソーム、粉末での脂質、PEG−DSPE又は水素化された大豆ホスファチジルコリン(HSPC)を包含する。小胞−形成脂質は、外層の脂質組成物を提供する最終複合体の特定の程度の流動性又は剛性を達成するよう選択される。好ましい脂質は、14〜22個の範囲の炭化水素鎖長を有し、そして1又は複数の二重C=C結合により飽和されたホスファチジル、例えばホスファチジルコリン(PC)又はホスファチジルエタノールアミン(PE)である。
【0087】
本発明に使用するための好ましい脂質は、コレステロール10〜60%、水素化された大豆ホスファチジルコリン(HSPC)40〜90%及び誘導体化された小胞−形成脂質PEG−DSPE1〜7%である。リポソームは、親水性ポリマーPEGにより被覆される外側の脂質ニ層表面を提供する。PEG鎖は、1,000〜5,000ドルトンの分子量を有する。他の親水性ポリマーは、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドン、DSPE、ヒドロキシエチルセルロース及びポリアスパルトアミドを包含する。PEG−DSPC及びPEG−HSPCは、Syngenaから市販されている。
小胞形成脂質との混合の前、エタノール又は他の有機溶媒は、当業界において知られているいずれかの方法、例えば透析膜を通してのミセルの透析により除去され得る。
【0088】
診断及び治療方法
本発明者は、ヒト癌、例えば乳癌、前立腺癌、結腸癌、非小肺癌、膵臓癌、精巣癌、卵巣癌、頸部癌、頭及び首の鱗状細胞癌を有する対象、例えば哺乳類、例えばマウス、ラット、サル及びヒト患者の治療を提供する。1つの観点においては、リポソーム中に封入されたシスプラチンの静脈内注入、及び封入されたシスプラチンと封入されたドキソルビシン、フルオロデオキシウリジン、ブレオマイシン、アドリアマイシン、ビンブラスチン、プレドニソン、ビンクリスチン、タキソール又は放射線療法、封入されたオリゴヌクレオチド、抗癌性質を付与されたリボザイム及び多くの抗癌遺伝子、例えばp53/Pax5/HSV−tk遺伝子との組合せが提供される。1つのアプローチは、次の2種の主要部分から成る:(i)癌細胞を標的化する能力、及び(ii)癌細胞を殺害する本発明者のアプローチの有効性。
【0089】
従って、本発明は、本発明の方法により得られる封入された薬剤と細胞とを接触することを含んで成る、細胞にシスプラチン又は他の治療剤を供給するための方法をまた提供する。本発明の方法により得られる封入された有効量の薬剤を、対象に投与することを含んで成る、対象における腫瘍の増殖を阻害するための方法がまた、本発明により提供される。脂質/ミセル配合の組成に依存して、有効量の封入された薬剤の静脈内投与により対象における固形腫瘍及び転移を標的化するための方法、本発明の方法により得られる有効量のシスプラチンミセル及び封入された薬剤を投与することを含んで成る、対象における腫瘍の細胞膜を侵入するための方法がまた、提供され、ここで前記ミセルは遊離フソゲンペプチド又はフソゲンペプチド−脂質接合体を含む。
【0090】
前記方法は、インビトロ、エクスビボ又はインビボで実施され得る。
本発明の方法のインビトロ実施は、腫瘍生検の除去、又は腫瘍細胞を含む細胞サンプルの培養を包含する。最終リポソーム複合体、又はシスプラチン封入の間に生じるいずれかの中間体生成物(図1Aに示されるミセル)が、薬剤の組み込みのために適切な条件下で細胞培養物と接触せしめられる。インビトロ方法は、個々の患者のための最良の薬剤療法を決定するためのスクリーンとして有用である。細胞成長又は増殖の阻害は、細胞又は腫瘍がこの療法により適切に処理されることを示す。個々の治療のための有効量の薬剤は、処理される腫瘍及び処理される対象により変化する。有効量は、当業者により実験的に決定され得る。
【0091】
動物に投与される場合、前記方法は、個々の腫瘍型のための薬剤又は治療の効能をさらに確かめるために有用である。適切な動物モデルの例として、SCIDマウス又はヌードマウス(Balb/c NCR nu/nu 雌、Simonsen, Gilroy, CA)のグループが、本明細書に定義されるように、約105〜約109個の癌又は標的細胞により皮下接種され得る。腫瘍が確立されると、リポソームが投与される。
【0092】
本明細書において使用される場合、“投与、供給される、又は投与される”とは、究極的には、腫瘍塊状物に薬剤/リポソーム複合体を供給するいずれかの方法を包含する。例としては、次のものを包含するが、但しそれらだけには限定されない:局部適用、静脈内投与、非経口投与、又は腫瘍の周囲への皮下注射。腫瘍サイズの低下を決定するための腫瘍測定は、週2度、カルパスを用いて、2次元的に行われる。
【0093】
インビボ投与に関しては、治療組成物は、非経口、すなわち静脈内、腹腔内、皮下、鞘内、脊髄内、筋肉内、動脈内、門脈内又は腫瘍内投与される。より好ましくは、医薬組成物は、ボーラス注射により静脈内又は腫瘍内投与される。他の方法においては、医薬製剤は、組織へのその製剤の直接的な適用により標的組織と接触せしめられ得る。適用は、“局部”、“開放”又は“閉鎖”方法により行われ得る。“局部”とは、環境、例えば皮膚、鼻咽頭、外耳道、眼、等に暴露される組織への医薬製剤の直接的な適用を意味する。“開放”とは、患者の皮膚の切開を包含し、そして医薬製剤が適用される基礎組織の直接的な可視化を包含する。
【0094】
これは、一般的に、手術方法、例えば肺に接近するための開胸、腹部内臓に接近するための腹部開腹、又は標的組織への他の直接的手術アプローチにより達成される。“閉鎖”方法とは、内部標的組織は直接的に可視化されないが、しかし皮膚における小さな傷を通しての装置の挿入を通して接近される侵襲性方法である。例えば、製剤は、針洗浄により腹膜に投与され得る。同様に、医薬製剤は、腰椎穿刺、続いて、脊髄麻酔又は脊髄のメトラザミド画像化のために通常行われる患者の適切な位置決定の間、注入により髄膜又は脊髄に投与され得る。他方では、製剤は、内視鏡装置を通して投与され得る。
【0095】
インビボ投与は、処理の間、1回の用量で、連続的又は断続的にもたらされ得る。投与の最も効果的な手段及び用量を決定するための方法は、当業者に良く知られており、そして治療のために使用される組成物、治療の目的、処理される標的細胞、及び処理される対象により変化するであろう。1回又は複数回の投与が、処置する医者により選択される用量レベル及びパターンにより行われ得る。剤を投与するための適切な用量配合及び方法は、当業者により実験的に決定され得る。
【0096】
本発明の剤及び組成物は、医薬の製造に、及び従来の方法に従っての投与によるヒト及び他の動物の処理のために使用され得る。
理想的には、薬剤/脂質配合物は、疾病の部位で活性化合物のピーク濃度を達成するよう投与されるべきである。これは、例えば、薬剤/脂質配合物の静脈内注入により達成され得る。薬剤の所望する血液レベルが、疾病組織内に治療量の活性成分を提供するために連続注入により維持され得る。効果的組合せの使用は、個々の治療化合物又は薬剤が単独で使用される場合に必要とされるよりも低い合計用量の個々の成分薬剤を必要とする治療的組合せを提供することが企画され、それにより悪影響を低める。
【0097】
薬剤/脂質配合物は単独で投与されることが可能であるが、少なくとも1つの活性成分及び任意には他の治療剤を含んで成る医薬配合物としてそれを提供することが好ましい。個々のキャリヤーは、配合物中の他の成分と適合でき、そして患者に対して無害であることにおいて、“許容できる”べきである。
本明細書に記載されるように、固形腫瘍への抗癌薬剤及び遺伝子の供給のためのビークルの第3世代の企画は、存在する技法に対する次の5種の主要改良点の結果であった:
【0098】
1)立体的に安定化されたリポソーム中への抗腫瘍薬剤の封入は、多種のそれらの毒性を減じた。これは、化学療法を受ける癌患者の悪夢を終りにすることが予測される。現在使用下のほとんどの抗腫瘍薬剤は、重度の副作用、例えば髪の損失、嘔吐、体重の低下を有し、そして腎臓、脳、肝臓及びすべての他の生存組織に梗塞形成及び損傷を引き起こす。本明細書に記載される抗腫瘍薬剤は、脂質ニ層の内腔内に隠され、ほとんどの組織には見えず、そしてそれらの腫瘍標的中に濃縮するが、しかし身体中のあらゆる組織においては濃縮しない。固形腫瘍によるそれらの摂取に基づいて、それらは正常な細胞を傷つけないで、癌細胞に特定の細胞毒性効果を付与する。
【0099】
2)身体じゅうの固形腫瘍及びそれらの転移の標的化。95%以上の癌患者は、一次腫瘍からではなく、転移に付随する合併症に屈服する。本発明の遺伝子及び薬剤供給システムは、一次腫瘍のみならず、また腫瘍のサイズに関係なく、動物及び身体におけるあらゆる転移に達する遺伝子及び薬剤小球の静脈内投与の後、免疫系を回避するよう企画されている。それは、本発明の薬剤及び遺伝子担持のビークルの長い循環時間、及び形成(増殖する腫瘍における新脈管形成)のその初期段階でのその不完全性及び漏れのために、及び増殖する固形腫瘍と正常な身体組織との間での流体静力学的圧力の差異のために、腫瘍の血管内皮を通してのそれらの管外遊出に基づかれている。本発明のリポソームは、効果的な封入及び腫瘍標的化を可能にする、それらの内部及び外部脂質層の間に異なった組成を有する。
【0100】
3)癌細胞によるリポソーム小球の摂取。リポソーム小球は、細胞膜との融合を促進することができる。他で開発された類似する“秘密”小球は、癌細胞の膜バリヤーを通過することができない。
4)抗癌薬剤、オリゴヌクレオチド及び遺伝子についてのほぼ100%のリポソーム封入効率の達成が、主要な進歩である。これは、薬剤及び遺伝子の最少の損失及び費用効率のより使用を意味する。それはまた、抗癌剤小球の製造において、より単純な段階を付与した。数日よりもむしろ数ヶ月間、抗癌剤小球に遺伝子の発現を維持する配列。これは、癌患者のより少ない処理及び低い苦痛を付与する。それはまた、高いレベルの抗癌遺伝子の発現のために、強い治療効果を付与し;弱い調節のDNAの制御下に配置された同じ遺伝子は無効化でろう。
次の例は、例示的であって、本発明を限定するものではない。
【0101】
実施例
ミセル及び脂質−封入されたシスプラチンの調製:
封入のための1つの処理方法は、(A)約5mg/mlの最終シスプラチン濃度を達成するために、少なくとも30%のエタノール、0.1MのトリスHCl(pH7.5)において、シスプラチン(粉末又は他の形での)とDPPG(ジパルミトイルホスファチジルグリセロール)又は他の負に荷電された脂質分子とを、1:1〜1:2のモル比で混合する段階を包含する。シスプラチンとDPPGとの間のモル比の変動はまた、異なった組織を標的化する治療価値のものである。
【0102】
(B)50℃での加熱段階。段階A及びB間、黄色のシスプラチン粉末の沈殿物を付与する傾向がある初期の粉末懸濁液を、ゲル(コロイド)形に転換し;段階A及びBの間、正に荷電され、そして抗腫瘍活性を付与されたシスプラチンの活性形である水性形(クロライド原子の加水分解及びプラスチンに結合される水分子によるそれらの置換による)へのシスプラチンの転換が存在し;水性シスプラチンを、30%エタノールにおいてミセル中に、負に荷電された脂質により同時に複合体化する。このシスプラチン−DPPG静電複合体は、腫瘍根絶においては、遊離シスプラチンよりも、すでに改良された性質を有する。
【0103】
(C)その標的に達した後、腫瘍細胞膜を通過することにおける複合体(及び段階Dの後の最終配合物の;下記参照のこと)の性質を、複合体にこの性質を付与するペプチド及び他の分子の添加により改良する。(D)シスプラチン−DPPGミセル複合体を、予備製造されたリポソームの直接的な添加、続いて、塩溶液に対する透析及びそれらを100〜160nmの直径に小さくするための膜を通しての押し出しにより、シスプラチン−DPPG単層を封入するリポソーム又は他のタイプの複合体に転換する(図1の下部)。それは、本発明の最終シスプラチン配合物の外面の組成を決定する添加されたリポソームの脂質組成である。
中性又は負に荷電された化合物への正に荷電されたグループの添加は、同様に、リポソーム中へのそれらの封入を可能にする。
【0104】
治療用途:
90日−開放エストロゲンペレットを、SCID雌マウスに皮下移植した。0.1mlのPBS中7.5百万のMCF−7(ATCCから入手できるヒト乳癌)を、乳脂肪パッドで、マウスに皮下注射した。腫瘍の確立の後、0.1mlのシスプラチンリボソームを、試験静脈でマウスに静脈内注射した。結果は図2〜4に示される。
本発明は詳細且つ特定の態様で記載されて来たが、種々の変更及び修飾が本発明の範囲内で行われ得ることは、当業者に明らかであろう。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
シスプラチンミセルの生成方法であって、
a)シスプラチン混合物を形成するために、シスプラチン及びホスファチジルグリセロール脂質誘導体を、1:1〜1:2の範囲で組合し;そして
b)シスプラチンミセルを形成するために、前記段階a)の混合物と、少なくとも30%濃度のエタノール溶液のシスプラチンミセルを形成するために有効な量とを一緒にする;
ことを含んで成る方法。
【請求項2】
シスプラチンミセルの生成方法であって、
a)シスプラチンと、少なくとも30%濃度のエタノール溶液のシスプラチン/エタノール溶液を形成するために有効な量とを一緒にし:そして
b)シスプラチンミセルを形成するために、前記溶液と、ホスファチジルグリセロール脂質誘導体とを、1:1〜1:2の範囲で一緒にする;
ことを含んで成る方法。
【請求項3】
前記ホスファチジルグリセロール脂質誘導体が、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)、ジカプロイルホスファチジルグリセロール(DCPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)及びジオレイルホスファチジルグリセロール(DOPG)から成る群から選択される請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記モル比が1:1である請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
有効量の遊離フソゲンペプチド、フソゲンペプチド−脂質接合体又はフソゲンペプチド−PEG−HSPC接合体を、前記段階a)の混合物と一緒にすることを含んで成り、ここで前記フソゲンペプチドは、N又はC−末端で一連の1〜6個の負に荷電されたアミノ酸により誘導体化され、そして従って、静電的にアクアプラチンに結合できる請求項1又は2記載の方法。
【請求項6】
前記フソゲンペプチド又はフソゲンペプチド脂質接合体が、DOPE又はDOPE/カチオン性脂質を含んで成る請求項5記載の方法。
【請求項7】
請求項1又は2記載の方法により得られるシスプラチンミセル。
【請求項8】
請求項5記載の方法により得られるシスプラチンミセル。
【請求項9】
シスプラチンミセルを封入するための方法であって、有効量の小胞形成脂質と請求項1又は2記載のシスプラチンミセルを混合することを含んで成る方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法により得ることができる封入されたシスプラチン。
【請求項11】
前記脂質が、コレステロール10〜60%、水素された大豆ホスファチジルコリン(HSPC)40〜90%及びポリエチレンリコール (PEG)−HSPC 1〜7%から構成される予備製造された中性リポソーム、又は溶液での脂質、粉末での脂質及びPEG−DSPEから選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記脂質が、10〜60%のコレステロールを含んで成る請求項10記載の方法。
【請求項13】
対象に投与される場合、その免疫系のマクロファージ及び細胞を回避できるシスプラチン/脂質複合体を得るための方法であって、有効量の請求項9記載のシスプラチンミセルと、有効量のPEG−DSPE、PEG−DSPC又はヒアルロン酸−DSPEとを混合することを含んで成る方法。
【請求項14】
前記シスプラチンミセルからのエタノールの除去をさらに含んで成る請求項1又は2記載の方法。
【請求項15】
前記エタノールの除去が、エタノールを除去するための透析膜を通してのミセルの透析による請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項11記載の方法により得られる封入されたシスプラチン。
【請求項17】
請求項13記載の方法により得られる封入されたシスプラチン。
【請求項18】
細胞にシスプラチンを供給するための方法であって、前記細胞と、請求項15記載の封入されたシスプラチンとを接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項19】
細胞にシスプラチンを供給するための方法であって、前記細胞と、請求項17記載の封入されたシスプラチンとを接触せしめることを含んで成る方法。
【請求項20】
対象における腫瘍の増殖を阻害するための方法であって、有効量の請求項16記載の封入されたシスプラチンを前記対象に投与することを含んで成る方法。
【請求項21】
対象における腫瘍の増殖を阻害するための方法であって、有効量の請求項17記載の封入されたシスプラチンを前記対象に投与することを含んで成る方法。
【請求項22】
対象における固形腫瘍及び転移を標的化するための方法であって、有効量の請求項16又は17記載の封入されたシスプラチンの静脈内投与を含んで成る方法。
【請求項23】
対象における腫瘍の細胞膜を侵入するための方法であって、請求項7記載の方法により得られる有効量のシスプラチンミセルを投与することを含んで成る方法。
【請求項24】
対象における腫瘍増殖を阻害するための方法であって、有効量の請求項10記載の封入されたシスプラチン、及びp53、pax5及びHSV−tk遺伝子から成る群から選択された遺伝子を前記対象に投与することを含んで成る方法。
【請求項25】
有効量の封入されたガンシクロビルを投与することをさらに含んで成る請求項24記載の方法。
【請求項26】
シスプラチンと組合されるべき遺伝子が、封入されたIL−2、IL−4、IL−7、IL−12、GM−CSF,IFN−γ、TNF−α、RB、BRCA1、E1A、シトシンデアミナーゼ、並びに封入された5−フルオロシトシン、bcl−2、MDR−1、p21、p16、bcl−xs, E2F, IGFI, VEGF, TGF−β及び同様のもののいずれか又はそれらの組合せである請求項24記載の方法。
【請求項27】
請求項10記載の封入されたシスプラチン、及び封入されたオリゴヌクレオチド、リボザイム、三重体(triplex)又はPNAを含んで成る組成物。
【請求項28】
請求項10記載の封入されたシスプラチン、及びドキソルビシン、フルオロデオキシウリジン、ブレオマイシン、アドリアマイシン、ビンブラスチン、プレドニゾン、ビンクリスチン及びタキソールから成る群から選択された薬剤を含んで成る組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【公開番号】特開2012−41364(P2012−41364A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−247471(P2011−247471)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【分割の表示】特願2001−536130(P2001−536130)の分割
【原出願日】平成12年10月27日(2000.10.27)
【出願人】(506031982)レギュロン,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】