説明

シトクロムP450活性を測定するための発光を利用する方法およびプローブ

【課題】本発明は、細胞、組織および動物における代謝活性を分析するために、そしてシトクロムP450活性に及ぼす試験化合物の作用に関してスクリーニングするために有用な方法、組成物、基質およびキットを提供する。
【解決手段】シトクロムP450基質でありかつ生物発光酵素、例えばルシフェラーゼの基質前駆体でもある発光原分子、例えばルシフェリンまたはセレンテラジンを用いた、一段階および二段階の方法が提供される。P450反応にルシフェリン誘導体またはその他の発光原分子を添加すると、P450反応においてP450酵素により該発光原分子が代謝されて生物発光酵素の基質、例えばルシフェリンおよび/またはルシフェリン誘導体代謝産物になる。その結果生じる代謝産物(単数または複数)は、光を生成する二次反応において、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼの基質としての役割を果たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物、細胞、または無細胞反応系における代謝活性を分析するための、そして代謝活性に及ぼす試験化合物の作用に関して同化合物をスクリーニングするための、方法、基質化合物およびキットに関する。具体的には、シトクロムP450の基質またはシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体の二重の基質として、発光原分子(luminogenic molecule)、例えばルシフェリン誘導体またはセレンテラジンを用いることにより、代謝活性を分析することができる。発光原分子がシトクロムP450の基質および生物発光酵素の基質前駆体である場合、一次反応において発光原分子がP450により代謝されて生物発光酵素の基質が生成される。次に生物発光酵素は、光を発生する二次反応において該基質に作用する。次に、反応混合物の発光を対照の反応混合物と比較して測定することにより、P450の活性が確認される。本発明は、無機ピロホスファターゼ酵素(iPPアーゼ)のようなピロホスファターゼを用いる、ルシフェラーゼ阻害剤である無機ピロリン酸塩(iPP)によるルシフェラーゼの阻害を軽減するための方法およびキットにも関する。
【背景技術】
【0002】
酵素の存在および活性は、細胞の健康または代謝状態を決定するために用いられ得る。ある種の酵素の出現および活性はしばしば特定の細胞に特徴的であるため、酵素は細胞の種類に関するマーカーでもある。例えばある種の酵素の活性はしばしば、細菌、植物または動物起源の細胞を識別するために、あるいは該酵素を生じる特定の組織を識別するために用いられ得る。
【0003】
酵素の存在および活性の検出は、当該酵素により変換されて少なくとも1つの測定可能な特性を有する生成物となる基質を用いれば容易になり得る。これらのレポーター分子としては、蛍光基質および発色基質が挙げられる。蛍光基質は、多くの場合、それらが非常に高い感度を有し、そして生きた単一の細胞において空間的かつ時間的に高い解像度での測定を可能にし得るため、よく用いられてきた。発色基質は非常に特異的であり得るが、高度の解像度には欠けることが多い。
【0004】
生きている細胞の活動または細胞抽出物中の活性を測定するために有用な酵素ファミリーの1つは、シトクロムP450ファミリーである。シトクロムP450(CYP450)は、細胞の増殖および発生における内因性の役割のほかに、親油性の生体異物、例えば治療薬、発癌性化学物質および環境毒素の解毒および活性化のための多数の触媒を含む、大きなヘム含有酵素ファミリーである。1または複数の代謝産物が親化合物より有毒である場合もある。しかしながら他の場合には、治療用化合物の代謝により同化合物の生物学的利用能が低減され、効力が低下する。このファミリーの遺伝子およびファミリー内の多型は、薬剤代謝、副作用の発生および重症度、ならびに治療の失敗における個体間変動に重要な役割を果たす。
【0005】
細菌、真菌、植物および動物などの多様な生物において数百のシトクロムP450が同定されている(18:非特許文献1)。CYP450は全て、ヘム補因子を用い、構造上の属性を共有する。ほとんどのCYP450は、400〜530アミノ酸長である。同酵素の二次構造は、約70%のα‐ヘリックスおよび約22%のβ‐シートである。同タンパク質のC末端部分のヘム結合部位周囲の領域は、シトクロムP450間で保存されている。このヘム鉄リガンド領域における10アミノ酸のシグネチャ配列が同定されており、同配列には、第五配位部位におけるヘム鉄の結合に関与する保存システイン残基が含まれる。真核生物CYP450では、一般に約15個の疎水性残基とそれに続く正に荷電した残基とからなる、同タンパク質の最初の15〜20アミノ酸の中に、通常は膜貫通領域が見出される(18:非特許文献1、19:非特許文献2)。
【0006】
CYP450をコードする遺伝子のいくつかは、CYP450が代謝する化合物により転写レベルで誘導可能である(1:非特許文献3、2:非特許文献4)。CYP450をコードする遺伝子は、推定アミノ酸配列の相同性に基づいたファミリーに分けられている(3:非特許文献5)。全ての哺乳類は少なくとも14のCYP450ファミリーを共有するが、ほとんどの薬剤代謝は3つのファミリー:すなわちCYP1、CYP2およびCYP3によってのみ触媒される。ヒトにおけるP450が触媒する薬剤代謝のほとんどが肝臓で起こり、約13の酵素:すなわちCYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C18、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1、CYP3A4、CYP3A5およびCYP3A7によるものとして説明される(4:非特許文献6)。
【0007】
薬剤のクリアランス、毒性および薬剤−薬剤間相互作用においてCYP450が果たす中心的役割ゆえに、CYP450は、薬剤開発プロセスにおいて開発をすすめるべき化合物の領域を狭めるための有用な標的を提供する(5:非特許文献7、8:非特許文献8)。さらにCYP450/薬剤相互作用についての知見は、患者において薬剤が示す傾向を予示し得る。ハイスループット(高処理量)方式で使用可能なスクリーニング・アッセイが必要とされている。CYP450により酸化されると容易に検出可能な方法で変化する特性を有する化合物は、CYP450活性に及ぼす作用を検出するためのハイスループット・アッセイにおけるプローブとして有用である(6:非特許文献9、7:特許文献1)。CYP450アイソザイムに特異的であり、かつ容易に検出可能な生成物を生じる基質を用いて、生理学的条件下で細胞中の代謝活性を分析するための方法も必要とされている。シグナルは、細胞の無細胞の細胞抽出物中ならびに生きている細胞中で検出可能である必要があり、かつアッセイのバックグラウンドシグナルは低くなければならない。
【0008】
最後に、ルシフェラーゼの阻害剤である無機ピロリン酸塩からルシフェラーゼ活性を保護することが必要である。本発明人等にはピロリン酸塩の供給源を限定する意図はないが、ピロリン酸塩は、ルシフェラーゼを用いる反応を含める緩衝液中に用いられるオルトリン酸塩中に夾雑物として存在し得るし、あるいはATP、Oおよびルシフェリンとルシフェラーゼとの反応の生成物として生成され得る。
【特許文献1】米国特許第6143492号
【非特許文献1】グラハム‐ローレンス、エス.(Graham-Lorence, S.)およびジェイ.エイ.ピーターソン(J.A. Peterson )、「P450:構造上の類似性ならびに機能上の相違点(P450s: Structural similarities and functional differences )」、ジ・エフエイエスイービー・ジャーナル誌(FASEB J.)、第10巻、p.206‐214、1996年
【非特許文献2】PrositeのPDOC00081、シトクロムP450システインヘム鉄リガンドシグネチャ、1997年11月
【非特許文献3】ブラック、エス.ディ.(Black, S.D. )およびクーン、エム.ジェイ.(Coon, M.J.)、「P450シトクロム:構造と機能(P450 cytochromes: structure and function)、アドバンシズ・イン・エンザイモロジー・アンド・リレイテッド・エリアズ・オブ・モレキュラー・バイオロジー誌(Adv. Enzymol. Relat. Areas Mol. Biol. )、第60巻、p.35‐87、1987年
【非特許文献4】フィリップス、アイ.アール.(Phillips, I.R.)およびシェファード、イー.エイ.(Shephard, E.A.)編、1998年、「シトクロムP450のプロトコール(Cytochrome P450 protocols )」、第107巻、p.v‐vi
【非特許文献5】ネルソン、ディ.アール.(Ne lson, D.R.)ら、1996年、「P450スーパーファミリー:新規配列、遺伝子マッピング、アクセス番号および命名の最新版(P450 superfamily: update on new sequences, gene mapping, accession numbers and nomenclature )」、ファーマコジェネティクス誌(Pharmacogenetics)、第6巻、p.1‐42
【非特許文献6】ライトン、エス.エイ.(Wrighton, S.A.)およびスティーブンス、ジェイ.シー.(Stevens, J.C. )、1992年、「薬剤代謝に関与するヒト肝臓シトクロムP450(The human hepatic cytochromes P450 involved in drug metabolism)」、クリティカル・レビューズ・イン・トキシコロジー誌(Critical Reviews in Toxicology)、第22巻第1号、p.1‐21
【非特許文献7】フリッキンガー、ビー.(Flickinger, B.)、2001年、「開発初期における代謝データの利用(Using metabolism data in early development)」、ドラッグ・ディスカバリー・アンド・ディベロプメント誌(Drug Disc. Dev. )、第4巻第9号、p.53‐56
【非特許文献8】ハードマン、ジェイ.ジー.(Hardman, J.G. )ら編、「治療の薬理学的基礎(The Pharmacological Basis of Therapeutics )第9版」pp.1‐27、マグローヒル(McGraw-Hill )、1996年
【非特許文献9】ミラー、ブイ.ピー.(Miller, V.P.)ら、2000年、「シトクロムP450阻害剤のハイスループット蛍光スクリーニング(Fluorometrichigh-throughput screening for inhibitors of Cytochrome P450)」、アナルズ・オブ・ザ・ニューヨーク・アカデミー・オブ・サイエンシズ誌(Ann. NY Acad. Sci.)、第919巻、p.26‐32
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ハイスループット(高処理量)方式で使用可能なスクリーニング・アッセイが必要とされている。CYP450アイソザイムに特異的であり、かつ容易に検出可能な生成物を生じる基質を用いて、生理学的条件下で細胞中の代謝活性を分析するための方法も必要とされている。シグナルは、細胞の無細胞の細胞抽出物中ならびに生きている細胞中で検出可能である必要があり、かつアッセイのバックグラウンドシグナルは低くなければならない。ルシフェラーゼの阻害剤である無機ピロリン酸塩からルシフェラーゼ活性を保護することが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[発明の概要]
特異性の高い様式でシトクロムP450酵素に影響を及ぼす化合物、例えば薬剤候補を同定し得る方法、基質化合物およびキットを提供することにより、出願人等は上記の必要を満たした。
【0011】
本発明は、P450の基質またはP450の二重基質および生物発光酵素の基質前駆体として有用な発光原分子を提供する。本発明の一実施形態では、発光原分子は(4S)−4,5−ジヒドロ−2−(6−ヒドロキシ−ベンゾチアゾリル)−4−チアゾールカルボン酸(D−ルシフェリン)または2−(4−ヒドロキシベンジル)−6−(4−ヒドロキシフェニル)−8−ベンジル−3,7−ジヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オン(セレンテラジン)の誘導体であり、同誘導体はP450基質でありルシフェラーゼの基質前駆体である。事前にP450により代謝されない場合、これらのルシフェリン誘導体は単独では発光反応においてルシフェラーゼと相互作用する能力に限界があるか、または相互作用する能力がない。これらの化合物は、CYP450により選択的に変換されてルシフェラーゼ反応のための発光性基質となることにより、発光の読取りを伴うアッセイの基礎を提供する。
【0012】
本発明は、天然セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体(包括してセレンテラジンと呼ぶ)である発光原分子を用いるP450活性の直接的および間接的決定のための方法も提供する。
【0013】
本発明は、候補薬剤(または候補薬剤群)がCYP450酵素の基質もしくはレギュレータ(調節因子)またはCYP450遺伝子のレギュレータであるか否かを決定するための発光原分子の使用方法、ならびに少なくとも1つのCYP450酵素によりそれほど効率的に代謝されない、および/または少なくとも1つのCYP450酵素の阻害剤として作用しないか望ましくない薬剤−薬剤相互作用を発揮しないかのうち少なくともいずれかである候補薬剤を選択するための関連方法も提供する。本発明の候補薬剤(または薬剤候補のライブラリー)のスクリーニング方法は、無細胞の、細胞を用いる、組織を用いる、または動物を用いる環境中での一段階または二段階のCYP450/生物発光酵素の方法により実施されてもよいし、あるいは薬剤候補ライブラリーのハイスループットスクリーニングまたは超ハイスループットスクリーニングの一部であってもよい。
【0014】
本発明は、夾雑物として存在するか、あるいはルシフェラーゼとATP、O2およびルシフェリンとの反応の生成物として生成され得るルシフェラーゼ阻害剤である無機ピロリン酸塩(iPP)によるルシフェラーゼの阻害を軽減するための方法およびキットも提供する。
【0015】
本発明は、ルシフェラーゼを用いる反応において発光シグナルを増強しまたは安定化するための、可逆的ルシフェラーゼ阻害剤を用いる方法およびキットも提供する。
したがって、本発明の一実施形態では、シトクロムP450酵素の活性の測定方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)発光原分子を少なくとも1つのシトクロムP450酵素および少なくとも1つの生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の発光を測定することによりシトクロムP450活性を決定することを包含する方法が提供される。
【0016】
本発明のこの実施形態の一態様では、工程(b)がピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明のこの実施形態の別の態様では、発光原分子、シトクロムP450酵素および生物発光酵素をほぼ同時に接触させる。
【0017】
本発明のこの実施形態の別の態様では、発光原分子を少なくとも1つのシトクロムP450酵素と接触させて一次反応混合物を作製した後、生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する。
【0018】
本発明のこの実施形態の別の態様では、二次反応混合物が界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤をさらに含む。
本発明の別の実施形態では、細胞におけるシトクロムP450酵素の活性の測定方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)細胞を発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の発光を測定することにより細胞のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0019】
本発明のこの実施形態の一態様では、細胞は組換え体であり生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)において細胞をさらに溶解試薬と接触させる。
【0020】
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を工程(b)の前に溶解させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を工程(c)の前に溶解させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を最初に発光原分子と接触させて一次反応混合物を作製した後、生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する。二次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、および/またはピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含んでいてもよい。
【0021】
本発明の別の実施形態では、動物組織におけるシトクロムP450の酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)動物組織を発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより混合物を作製すること、および
(c)混合物の発光を測定することにより組織のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0022】
本発明のこの実施形態の一態様では、組織を最初に発光原分子と第1の所定時間接触させた後、生物発光酵素と接触させて二次混合物を作製する。二次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤および/またはピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含んでいてもよい。
【0023】
本発明の別の実施形態では、動物におけるシトクロムP450の酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)発光原分子を動物に投与すること、
(c)動物から生物学的試料を得ること、および
(d)生物学的試料を生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(e)発光を測定することにより動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0024】
本発明のこの実施形態の一態様では、反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、および/またはピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含む。
【0025】
本発明の別の実施形態では、生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物におけるシトクロムP450の酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に発光原分子を投与すること、および
(c)トランスジェニック動物からの組織の発光を測定することにより動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0026】
本発明のこの実施形態の別の態様では、生物発光酵素の導入遺伝子はルシフェラーゼ導入遺伝子である。
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450活性に及ぼす化合物の作用について化合物をスクリーニングする方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(c)化合物、発光原分子、少なくとも1つのシトクロムP450酵素、および生物発光酵素を接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(d)反応混合物の発光を測定することにより、化合物とシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0027】
本発明のこの実施形態の一態様では、化合物、発光原分子、シトクロムP450酵素、および生物発光酵素をほぼ同時に接触させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、化合物、発光原分子および少なくとも1つのシトクロムP450酵素を最初に接触させて一次反応混合物を作製した後、生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する。二次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、および/またはピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含む。
【0028】
本発明のこの実施形態の別の態様では、化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させて一次反応混合物を作製し、次に一次反応混合物を発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製し、次に二次反応混合物を生物発光酵素と接触させて三次反応混合物を作製する。三次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、および/またはピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含み得る。
【0029】
本発明の別の実施形態では、細胞のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供する工程、
(b)細胞を試験化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させる工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であることを特徴とする工程、および
(c)細胞からの発光を測定し、試験化合物に曝露されていない第2の細胞と比較することにより、試験化合物への細胞の曝露の結果得られる細胞のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0030】
本発明のこの実施形態の一態様では、細胞が組換え体であり、生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を最初に化合物と接触させて一次反応混合物を作製した後、発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製する。二次混合物はさらに、生物発光酵素を含み得る。生物発光酵素は、所定時間を経た後で二次反応混合物に添加されてもよい。二次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤、および/またはピロリン酸塩、例えば無機ピロリン酸塩を含む。
【0031】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)はさらに、ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含む。
本発明の別の実施形態では、動物組織のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、試験化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させる工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であることを特徴とする工程、および
(c)組織からの発光を測定し、試験化合物に曝露されていない対照組織と比較することにより、試験化合物への組織の曝露の結果得られる組織のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0032】
本発明のこの実施形態の一態様では、動物組織が生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、組織を試験化合物と接触させて一次混合物を作製した後、発光原分子と接触させて二次混合物を作製する。二次混合物は生物発光酵素をさらに含む。生物発光酵素は、所定時間を経た後に二次反応混合物に添加されてもよい。二次反応混合物はさらに、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を含み得る。
【0033】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)はさらに、ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含み得る。
本発明の別の実施形態では、動物におけるシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)試験化合物を動物に投与すること、
(c)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を動物に投与すること、
(d)動物から生物学的試料を得ること、
(e)生物学的試料を生物発光酵素と接触させること、および
(f)生物学的試料からの発光を測定し、試験化合物に曝露されていない動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、動物を試験化合物へ曝露した後の該動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0034】
本発明のこの実施形態の一態様では、工程(c)は工程(b)の後に所定時間が経過した後で実施される。
本発明のこの実施形態の別の態様では、試験化合物への曝露の直前に動物から生物学的試料が採取される。
【0035】
本発明のこの実施形態の別の態様では、生物学的試料は血液、血清、胆汁、尿、糞便または組織を含む。
本発明の別の実施形態では、生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物におけるシトクロムP450酵素の活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に試験化合物を投与すること、
(c)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を動物に投与すること、および
(d)トランスジェニック動物からの組織の発光を測定し、試験化合物に曝露されていない別のトランスジェニック動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、動物を試験化合物に曝露した後の該動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0036】
本発明のこの実施形態の一態様では、工程(c)は工程(b)の後に所定時間が経過した後で実施される。
本発明のこの実施形態の別の態様では、生物発光酵素の導入遺伝子はルシフェラーゼ導入遺伝子である。
【0037】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)スクリーニングしようとする化合物を(i)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子;(ii)1つまたは複数のシトクロムP450酵素;および(iii)1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより各々1つまたは複数の化合物を有する反応混合物を作製すること、ならびに
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450の酵素活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0038】
本発明のこの実施形態の一態様では、化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させて一次反応混合物を作製し、次に一次反応混合物を発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製し、そして次に二次反応混合物を生物発光酵素と接触させて三次反応混合物を作製する。三次反応混合物は界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0039】
本発明のこの実施形態の別の態様では、化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素および発光原分子と接触させて一次反応混合物を作製した後、1つまたは複数の生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する。二次反応混合物は界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤をさらに含んでもよい。
【0040】
本発明のこの実施形態の別の態様では、化合物を1つまたは複数のシトクロムP450酵素および発光原分子と同時にまたは同時期に接触させて一次反応混合物を作製した後、1つまたは複数の生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する。
【0041】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)がピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明の別の実施形態では、細胞のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450の酵素活性(もしあれば)を決定する工程を包含する方法が提供される。
【0042】
本発明のこの実施形態の一態様では、細胞は組換え体であり、生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、外来の供給源由来の生物発光酵素が用いられる。
【0043】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)および/または工程(c)がピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させ、次に生物発光酵素と第2の所定時間接触させる。第2の所定時間において、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤が存在していてもよい。
【0044】
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、そして次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる。第3の所定時間において、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤が混合物中に存在していてもよい。
【0045】
本発明の別の実施形態では、細胞を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる。
【0046】
本発明の別の実施形態では、動物組織のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0047】
本発明のこの実施形態の一態様では、組織が少なくとも1つの生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、組織を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させた後、生物発光酵素と接触させる。界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を第1の所定時間の後に添加してもよい。界面活性剤および生物発光酵素を同時に添加してもよい。
【0048】
本発明のこの実施形態の別の態様では、界面活性剤が生物発光酵素の添加の前に添加される。
本発明のこの実施形態の別の態様では、組織を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる。界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤を第2の所定時間の後に添加してもよい。界面活性剤および生物発光酵素を同時に添加してもよい。界面活性剤および生物発光酵素を同時に添加してもよい。
【0049】
本発明のこの実施形態の別の態様では、組織を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、組織、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる。
【0050】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)または工程(c)が(iv)ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明の別の実施形態では、動物のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)生きている硬骨魚を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)試験化合物を含む反応混合物の発光を測定して試験化合物を含まない対照混合物と比較することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0051】
本発明のこの実施形態の一態様では、硬骨魚がトランスジェニック体であり、かつ生物発光酵素を発現する。
本発明のこの実施形態の別の態様では、硬骨魚を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させた後、生物発光酵素と接触させる。
【0052】
本発明のこの実施形態の別の態様では、硬骨魚を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、その次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる。
【0053】
本発明のこの実施形態の別の態様では、硬骨魚を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、硬骨魚、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる。
【0054】
本発明のこの実施形態の別の態様では、工程(b)または工程(c)が(iv)ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明の別の実施形態では、上記方法のいずれかにおいて、発光原分子がルシフェリン誘導体であり、生物発光酵素がルシフェラーゼである。好ましくは、ルシフェリン誘導体が次式:
【0055】
【化1】

(式中、
は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1−20アルコキシ、置換C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、置換C2−20アルケニルオキシ、ハロゲン化C2−20アルコキシ、置換ハロゲン化C2−20アルコキシ、C3−20アルキニルオキシ、置換C3−20アルキニルオキシ、C3−20シクロアルコキシ、置換C3−20シクロアルコキシ、C3−20シクロアルキルアミノ、置換C3−20シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、置換C1−20アルキルアミノ、ジC1−20アルキルアミノ、置換ジC1−20アルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、置換C2−20アルケニルアミノ、ジC2−20アルケニルアミノ、置換ジC2−20アルケニルアミノ、C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、置換C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、置換C3−20アルキニルアミノ、ジC3−20アルキニルアミノ、置換ジアルキルアミノ、C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノまたは置換C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノを表し、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、CHOH、COR11(ここで、R11はH、OH、C1−20アルコキシド、C2−20アルケニルまたはNR1213(ここで、R12およびR13は独立してHまたはC1−20アルキルを表す)を表す)または−OM(ここで、Mはアルカリ金属または製薬上許容可能な塩を表す)を表し、
は、H、C1−6アルキル、C1−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表すが、
ただし、同時にRがOHまたはNHであり、RがHであり、RがCOR11であり、R11がOHであり、RおよびRがともに炭素であり、かつRおよびRがともにSである(ルシフェリンおよびアミノルシフェリン)ということはない)
を有する。
【0056】
本発明の別の実施形態では、上記方法のいずれかにおいて、発光原分子がセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を含み、生物発光酵素がルシフェラーゼである。好ましくは、セレンテラジン誘導体が次式:
【0057】
【化2】

(式中、
は、C1−20アルキル、分枝鎖C3−20アルキル、C3−20シクロアルキル、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキルであり、かつ
、RおよびRは、独立して水素、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、分枝鎖C3−20アルキル、アリール、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキル、アリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアリールである)
を有する。好ましくは、RがアリールあるいはC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはC1−20ジアルキルアミノで置換されたアリールである。
【0058】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450酵素活性に及ぼす物質の作用を決定するためのキットであって、以下の:
(a)シトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体である1つまたは複数の発光原分子、および
(b)キットを使用するための使用説明書
を含むキットが提供される。
【0059】
本発明のこの実施形態の一態様では、キットはさらに、1つまたは複数の生物発光酵素、例えばルシフェラーゼを含む。ルシフェラーゼの例としては、ホタルルシフェラーゼまたはウミシイタケルシフェラーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
本発明のこの実施形態の別の態様では、キットはATPおよびマグネシウムイオンをさらに含む。
本発明のこの実施形態の別の態様では、キットは、界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤をさらに含む。
【0061】
本発明のこの実施形態の別の態様では、キットは、ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明のこの実施形態の別の態様では、発光原分子がシトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体であるD−ルシフェリン誘導体である。好ましくは、ルシフェリン誘導体が次式:
【0062】
【化3】

(式中、
は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1−20アルコキシ、置換C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、置換C2−20アルケニルオキシ、ハロゲン化C2−20アルコキシ、置換ハロゲン化C2−20アルコキシ、C3−20アルキニルオキシ、置換C3−20アルキニルオキシ、C3−20シクロアルコキシ、置換C3−20シクロアルコキシ、C3−20シクロアルキルアミノ、置換C3−20シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、置換C1−20アルキルアミノ、ジC1−20アルキルアミノ、置換ジC1−20アルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、置換C2−20アルケニルアミノ、ジC2−20アルケニルアミノ、置換ジC2−20アルケニルアミノ、C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、置換C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、置換C3−20アルキニルアミノ、ジC3−20アルキニルアミノ、置換ジC3−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノ、置換C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノまたは置換C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノを表し、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、CHOH、COR11(ここで、R11はH、OH、C1−20アルコキシド、C2−20アルケニルまたはNR1213(ここで、R12およびR13は独立してHまたはC1−20アルキルを表す)を表す)または−OM(ここで、Mはアルカリ金属または製薬上許容可能な塩を表す)を表し、
は、H、C1−6アルキル、C1−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表すが、
ただし、同時にRがOHまたはNHであり、RがHであり、RがCOR11であり、R11がOHであり、RおよびRがともに炭素であり、かつRおよびRがともにSである(ルシフェリンおよびアミノルシフェリン)ということはない)
を有する。
【0063】
本発明のこの実施形態の別の態様では発光原分子がセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を含む。好ましくは、セレンテラジン誘導体が次式:
【0064】
【化4】

(式中、
は、C1−20アルキル、分枝鎖C3−20アルキル、C3−20シクロアルキル、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキルであり、かつ
、RおよびRは、独立して水素、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、分枝鎖C3−20アルキル、アリール、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキル、アリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアリールである)
を有する。好ましくは、RがアリールあるいはアリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはC1−20ジアルキルアミノで置換されたアリールである。
【0065】
本発明のこの実施形態の別の態様では、キットは、可逆的ルシフェラーゼ阻害剤をさらに含む。好ましくは、可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)である。
【0066】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体であるD−ルシフェリン誘導体が提供される。
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体であるD−ルシフェリン誘導体を含む組成物が提供される。
【0067】
本発明のこの実施形態の一態様では、組成物はピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼをさらに含む。
本発明の別の実施形態では、次式:
【0068】
【化5】

(式中、
は、水素、ヒドロキシ、C1−20アルコキシまたはC1−20アルケニルオキシを表し、この場合、アルコキシおよびアルケニルオキシはハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アジド、ヘテロアリール、またはハロアルキルで置換されたアリールで置換されており、あるいは
は、C3−20アルキニルオキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、ジC1−20アルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、ジC2−20アルケニルアミノ、C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、ジC3−20アルキニルアミノ、C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノまたはC3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノを表し、この場合、上記の基は各々任意選択で、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アジド、ヘテロアリール、またはハロアルキルで置換されたアリールで置換されており、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、CHOH、COR11(ここで、R11は水素、ヒドロキシ、C2−20アルケニルまたは−OM(ここで、Mはアルカリ金属または製薬上許容可能な塩である)を表す)を表し、
は、水素、C1−6アルキル、C2−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表すが、
ただし、
がヒドロキシである場合、Rが水素、R11がヒドロキシ、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(ルシフェリン)ということはなく、
が水素である場合、Rが水素、R11がヒドロキシ、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(デヒドロルシフェリン)ということはなく、そして
がヒドロキシである場合、Rが水素、RがCHOH、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(ルシフェロール)ということはない)を有するD−ルシフェリン誘導体が提供される。
【0069】
本発明のこの実施形態の一態様では、化合物が以下の:
ルシフェリン6’2−クロロエチルエーテル、
ルシフェリン6’4−ピコリニルエーテル、
ルシフェリン6’4−トリフルオロメチルベンジルエーテル、
ルシフェリン6’2−ピコリニルエーテル、または
ルシフェリン6’3−ピコリニルエーテル
からなる群から選択される。
【0070】
本発明のこの実施形態の別の態様では、化合物が以下の:
ルシフェリン6’ベンジルエーテル、
ルシフェリン6’4−トリフルオロメチルベンジルエーテル、
ルシフェリン6’フェニルエチルエーテル、
ルシフェリン6’ゲラニルエーテル、または
ルシフェリン6’プレニルエーテル
からなる群から選択される。
【0071】
本発明のこの実施形態の別の態様では、D−ルシフェリン誘導体を含む組成物が提供される。組成物はさらに、ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼを含み得る。
【0072】
本発明の別の実施形態では、P450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を少なくとも1つのシトクロムP450酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の化学発光を測定することによりシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0073】
本発明の別の実施形態では、細胞におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)細胞をセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより細胞のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0074】
本発明のこの実施形態の一態様では、工程(b)の細胞をさらに溶解試薬と接触させる。
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を工程(b)の前に溶解させる。
【0075】
本発明のこの実施形態の別の態様では、細胞を工程(c)の前に溶解させる。
本発明の別の実施形態では、動物組織におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)動物組織をセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体および生物発光酵素と接触させることにより混合物を作製すること、および
(c)混合物の化学発光を測定することにより組織のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0076】
本発明の別の実施形態では、動物におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を動物に投与すること、
(c)動物から生物学的試料を得ること、および
(d)試料の化学発光を測定することにより動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0077】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450活性に及ぼす化合物の作用に関する化合物のスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)シトクロムP450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(c)化合物、セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体およびシトクロムP450酵素を接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(d)反応混合物の化学発光を測定することにより、化合物とシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0078】
本発明の別の実施形態では、細胞のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、試験化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させる工程、ならびに
(c)細胞からの化学発光を測定し、試験化合物に曝露されていない第2の細胞と比較することにより、試験化合物への細胞の曝露の結果得られる細胞のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0079】
本発明の別の実施形態では、動物組織のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、試験化合物、およびシトクロムP450基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させる工程、ならびに
(c)組織からの化学発光を測定し、試験化合物に曝露されていない対照組織と比較することにより、試験化合物への組織の曝露の結果得られる組織のシトクロム活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0080】
本発明の別の実施形態では、動物におけるシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)試験化合物を動物に投与すること、
(c)シトクロムP450基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を投与すること、
(d)動物から生物学的試料を得ること、および
(e)生物学的試料からの化学発光を測定し、試験化合物に曝露されていない動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、試験化合物への動物の曝露後の動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法が提供される。
【0081】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)スクリーニングしようとする化合物を(i)シトクロムP450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体;および(ii)1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させる工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0082】
本発明の別の実施形態では、細胞のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0083】
本発明の別の実施形態では、動物組織のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)CYP450活性を有する動物組織を提供する工程、
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0084】
本発明の別の実施形態では、動物のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)生きている硬骨魚を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)試験化合物を含む反応混合物の化学発光を測定して試験化合物を含まない対照混合物と比較することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法が提供される。
【0085】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体が関与する上記方法のいずれかにおいて、好ましくはセレンテラジン誘導体が次式:
【0086】
【化6】

(式中、
は、C1−20アルキル、分枝鎖C3−20アルキル、C3−20シクロアルキル、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されるC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されるアラルキルであり、かつ
、RおよびRは、独立して水素、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、分枝鎖C3−20アルキル、アリール、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されるC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されるアラルキル、アリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されるアリールである)
を有する。
【0087】
本発明のこの実施形態の一態様では、好ましくは、RがアリールあるいはアリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはC1−20ジアルキルアミノで置換されるアリールである。
【0088】
本発明のこの実施形態の別の態様では、セレンテラジン誘導体がセレンテラジンHH、メトキシセレンテラジンHHまたはセレンテラジンである。
本発明の別の実施形態では、ルシフェラーゼを用いた反応混合物により生じる発光シグナルの安定性を増強する方法であって、ルシフェラーゼを、ルシフェラーゼ阻害剤の非存在下におけるルシフェラーゼを用いた同様の反応混合物中で生じる発光シグナルに比して安定性を増強し、発光シグナルの寿命を延長するのに有効な量の可逆的ルシフェラーゼ阻害剤と接触させることを包含する方法が提供される。
【0089】
本発明のこの実施形態の一態様では、可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が拮抗阻害剤である。
本発明のこの実施形態の別の態様では、可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)を含む。
【0090】
本発明のこの実施形態の別の態様では、阻害剤の有効量が反応混合物中約1μM〜約1mMの範囲である。
本発明のこの実施形態の別の態様では、阻害剤の有効量が反応混合物中約1μM〜約500μMの範囲である。
【0091】
本発明のこの実施形態の別の態様では、阻害剤の有効量が反応混合物中約10μM〜約200μMの範囲である。
本発明のこの実施形態の別の態様では、阻害剤の有効量が反応混合物中約100μMである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0092】
[発明の詳細な説明]
本明細書中で定義する場合、「シトクロムP450」または「CYP450」または「P450酵素」という用語は、別記しない限り、血中を循環する疎水性薬剤、発癌物質ならびにその他の潜在的に毒性を有する化合物および代謝産物の代謝に関与する、ヘムを含むオキシダーゼ酵素のファミリーを指す。周知のことであるが、肝臓は、高レベルの最も重要なCYP450混合機能オキシダーゼを含有する、生体異物代謝のための主要器官である。これらの混合機能オキシダーゼは、CYP1A、2A、2C、2D、2Eおよび3Aを含むサブファミリーに分けられる。これらのサブファミリー内には、しばしば「アイソザイム」または「アイソフォーム」と呼ばれる多数のヒトP450酵素が存在する。ヒトCYP3A、CYP2D6、CYP2CおよびCYP1Aアイソフォームは、薬剤代謝において重要であることが知られている(例えばマレー(Murray, M.)、23 Clin. Pharmacokinetics 132-46 (1992)参照)。CYP3A4は、明らかにヒト肝臓および小腸における主要アイソフォームであり、それらの組織中の総CYP450タンパク質のそれぞれ30%および70%を構成する。主としてin vitro試験に基づいて、ヒトに用いられる全薬剤の40%〜50%の代謝はCYP3A4が触媒する酸化に関連する、と概算されている(スメルおよびウィルキンソン(Thummel, K. E. & Wilkinson, G. R. ))、In Vitro and In Vivo Drug Interactions Involving Human CYP 3A, 38 Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 389-430 (1998)参照)。
【0093】
「発光」という用語は、本明細書中で用いる場合、生物発光(すなわち生きている生物により生成される光)または化学発光(化学反応が進行した場合に生成される光)を含む。発光に関与する酵素が、生物において光を発生する目的で自然淘汰により進化したものである場合、または関与する酵素がそのような酵素の突然変異による誘導体である場合、発光反応は「生物発光反応」とも呼ばれ、関与する酵素は「生物発光酵素」とも呼ばれる。生物発光酵素の例としては、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケルシフェラーゼ、ウミホタルルシフェラーゼ、エクオリン発光タンパク質、オベリン発光タンパク質等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0094】
「発光原分子」という用語は、本明細書中で用いる場合、化学的または生化学的反応により光を生じることができる分子(例えば甲虫ルシフェリン(またはD−ルシフェリン)、セレンテラジン、またはその機能的類似体)を指す。発光原分子を、P450の基質、またはP450の基質/生物発光酵素の基質前駆体とすることができる。一般に、発光原分子は高エネルギー分子種(例えば安定化ジオキセタン)であるか、あるいは化学反応により高エネルギー分子種に変換されるかのいずれかである。化学反応は通常は、酸素、スーパーオキシドまたはペルオキシドによる酸化である。いずれの場合においても、発光原分子内のエネルギーは、化学反応により放出される。このエネルギーの少なくとも一部は光の光子として放出されるが、しかしエネルギーは他の形態、例えば熱としても放出され得る。光を生じない発光原分子は、しばしば「暗経路(dark pathway)」と呼ばれる代替的方式によりそれらのエネルギーを分散する。
【0095】
「ルシフェリン誘導体」という用語は、本明細書中で用いる場合、D−ルシフェリンの実質的構造を有し、かつ1つまたは複数のシトクロムP450酵素の基質でありルシフェラーゼの基質前駆体であり得る、ある種の発光原分子または化合物を指す。シトクロムP450の存在下では、該化合物はルシフェラーゼの基質であるルシフェリンへと代謝される。予めP450による代謝を受けない場合、一部の化合物(単数または複数)はルシフェリンによる反応を抑制する能力により立証されるようにルシフェラーゼと結合し得るが(データは示されていない)、光生成反応における基質としては代謝回転されない。いかなる作用理論にも縛られずに考えると、これらの化合物は、十中八九、ルシフェラーゼの拮抗阻害剤であると考えられる。
【0096】
「セレンテラジン」という用語は、本明細書中で用いる場合、天然セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体を指す。セレンテラジンは、広範な種々の生物発光タンパク質、特に海洋性ルシフェラーゼの作用を受けると発光することが知られている。海洋性ルシフェラーゼの例としては、ウミシイタケルシフェラーゼ、エクオリン、カイアシルシフェラーゼ、発光エビルシフェラーゼおよびウミホタルルシフェラーゼが挙げられる。有用なセレンテラジンは米国特許出願第10/053,482号(2001年2月11日出願)(この記載内容全体は、参照により本明細書に援用される)に開示されているが、これらに限定されない。セレンテラジンは、プロメガ社(PromegaCorporation :米国ウィスコンシン州マディソン所在)から、ならびにモレキュラー・プローブス・インコーポレイテッド(Molecular Probes, Inc.:米国オレゴン州ユージーン所在)から入手可能である。セレンテラジンはまた、例えばシモムラ他(Shimomura et al.)、Biochem. J. 261: 913-20, 1989 ;イノウエ他(Inouye et al. )Biochem. Biophys. Res. Comm. 233: 349-53, 1997;およびテラニシ他(Teranishi et al.)Anal. Biochem. 249: 37-43, 1997 に記載されているようにして合成可能である。
【0097】
「ルシフェラーゼ」という用語は、別記しない限り、天然ルシフェラーゼまたは突然変異体ルシフェラーゼを指す。ルシフェラーゼは、天然のものの場合、生物から熟練者により容易に得られる。ルシフェラーゼが天然のものであるか、または天然ルシフェラーゼのルシフェラーゼ−ルシフェリン反応における活性を維持している突然変異体である場合、ルシフェラーゼをコードするcDNAを発現するよう形質転換された細菌、酵母、哺乳類細胞、昆虫細胞、植物細胞等の培養物から、あるいは同ルシフェラーゼをコードする核酸からルシフェラーゼを作製するためのin vitro無細胞系から、該ルシフェラーゼを容易に得ることができる。ルシフェラーゼは、プロメガ社から入手可能である。
【0098】
「ピロホスファターゼ」という用語は、別記しない限り、反応の進行中に生成されるか、反応混合物中にすでに存在するか、あるいは反応混合物中に導入されるピロリン酸塩を分解または加水分解することができる任意の作用物質、例えば酵素(天然型または突然変異体)を指す。該作用物質は、ピロリン酸塩の蓄積を防止する速度で反応混合物中のピロリン酸塩の加水分解を触媒するか、または任意のその他の方法でピロリン酸塩の蓄積を防止するのに十分な濃度で添加される必要がある。必要とされる作用物質の量は、標準的な手法により容易に決定される。無機ピロホスファターゼ(ヒドロリアーゼ)は、本発明を実施するのに好ましい作用物質であるが、一方、本発明の実施に際して用いられ得る多数の酵素の種類(例えばトランスフェラーゼ、キナーゼおよびシンセターゼ)も存在する(例えば米国特許第6,291,164号(この記載内容全体は、参照により本明細書に援用される)参照)。複数のこのような酵素が組換え宿主中でクローン化され、発現されている(例えばラドール他(Ladror, U.S. et al. )、J. Biol. Chem. 266: 16550-16555 (1991)(ピロリン酸塩:フルクトース−6−ホスフェート1−ホスホトランスフェラーゼ);リー他(Leyh T. S. et al. )、J. Biol. Chem. 263: 2409-2416 (1988)(ATP:スルフェートアデニリルトランスフェラーゼ);リー他(Leyh, T.S. et al. )、J.Biol. Chem. 267: 10405-10410 (1992)(ATP:スルフェートアデニリルトランスフェラーゼ);ウェイスボーン他(Weissborn, A. C., et al.)、J. Bacteriology 176: 2611-2618 (1994)(UTP:グルコース−1−リン酸ウリジリルトランスフェラーゼ);アレン他(Allen, T. et al.)、Mol. Biochem. Parasitol. 74: 99 (1995)(アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ);ボンステイン他(Vonstein, V. et al. )、J.Babteriol. 177: 4540 (1995)(オロテートホスホリボシルトランスフェラーゼ);チャーン他(Charng, Y. Y. et al.)、Plant Mol. Biol. 20: 37 (1992)(グルコース−1−リン酸アデニリルトランスフェラーゼ);キムおよびスミス(Kim, D. J. and Smith, S. M. )、Plant Mol. Biol. 26: 423 (1994)(ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ);ジャン他(Jiang, Y. et al.)、Exp. Parasitol. 82: 73 (1996)(ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ);プラ他(Pla, J. et al.)、Gene 165: 115 (1995)(ATPホスホリボシルトランスフェラーゼ);フェルドマン他(Feldman, R. C. et al. )、Infect. Immun. 60: 166 (19 92)(ウラシルホスホリボシルトランスフェラーゼ);ヴィニスキー(Vinitsky, A.)、J. Bacteriol. 173:536 (1991)(ミコチネートホスホリボシルトランスフェラーゼ);ルディン他(Ludin, K. M. et al. )、Curr. Genet. 25: 465 (1994)(アミドホスホリボシルトランスフェラーゼ);ローズ他(Rose, A. B. et al.)、Plant Physiol. 100: 582 (1992)(アントラニレートホスホリボシルトランスフェラーゼ);ヒュージ他(Hughes, K.T. et al. )、J. Bacteriol. 175: 479 (1993)(キノレートホスホリボシルトランスフェラーゼ);ジャガデスワラン他(Jagadeeswaran, P. et al.)、Gene 31: 309 (1984)(キサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ);ナガカワ(Nakagawa, S.)、Biosci. Biotech. Biochem. 59: 694 (1995)(FMNアデニリルトランスフェラーゼ);マロルダおよびヴァルヴァーノ(Marolda, C. L. and Valvano, M. A. )、J. Bacteriol. 175: 148 (1993)(マンノース−1−ホスフェートグアニリルトランスフェラーゼ);カルマー(Kalmar, G. B. )、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 6029 (1990)(コリンホスフェートシチジリルトランスフェラーゼ);ムラーロバー他(Muller-Rober, B. et al. )、Plant Mol. Biol. 27: 191 (1995)(グルコース−1−リン酸アデニリルトランスフェラーゼ);シャムガム他(Shanmugam, K. et al.)、Plant Mol. Biol. 30: 281 (1996)(tRNAヌクレオチジルトランスフェラーゼ);ザパタ他(Zapata, G. A. et al.)、J. Biol. Chem. 264: 14769 (1989)(アシルノイラミネートシチジリルトランスフェラーゼ);およびヴァキレンコ他(Vakylenko, S. B. et al. )、Antiobiot. Khimioter. 38: 25 (1993)(ゲンタマイシン2’−ヌクレオチジルトランスフェラーゼ)参照)。このような酵素が用いられる場合、それは、ピロリン酸塩からリン酸基を受け取ってリン酸化生成物を生じるか、または酵素の存在下でピロリン酸基を転移させることができる基質を用いることも必要かもしれない。
【0099】
本発明の一実施形態では、CYP450の基質でありかつルシフェラーゼの基質前駆体であるルシフェリン誘導体が提供される。これらのルシフェリン誘導体がある種のCYP450アイソフォームに曝露されると、これらのアイソフォームにより該誘導体が代謝されて、酵素ルシフェラーゼの存在下で光放出反応において容易に検出可能な化合物となる。CYP450の非存在下では、ルシフェリン誘導体はルシフェラーゼと結合し得るが、光生成反応における基質として代謝回転されることはない。本発明の実施に際しては、本発明のルシフェリン誘導体は好ましくは、次式:
【0100】
【化7】

(式中、
は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1−20アルコキシ、置換C1−20置換アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、C2−20置換アルケニルオキシ、C1−20ハロゲン化アルコキシ、C1−20置換ハロゲン化アルコキシ、C3−20アルキニルオキシ、C3−20置換アルキニルオキシ、シクロアルコキシ、置換シクロアルコキシ、シクロアルキルアミノ、置換シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、C1−20置換アルキルアミノ、C1−20置換アルキルアミノC1−20ジアルキルアミノまたはC1−20置換ジアルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、C2−20置換アルケニルアミノ、C2−20ジアルケニルアミノ、C2−20置換ジアルケニルアミノ、C2−20アルケニルアルキルアミノまたはC2−20置換アルケニルアルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、C3−20置換アルキニルアミノ、C3−20ジアルキニルアミノ、C3−20置換ジアルキニルアミノ、C3−20アルキニルアルキルアミノ、C3−20置換アルキニルアルキルアミノ、C3−20アルキニルアルケニルアミノまたはC3−20置換アルキニルアルケニルアミノを表し、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、COR11(ここで、R11はH、OH、C1−20アルコキシド、C2−20アルケニル、CHOHまたはNR1213(ここで、R12およびR13は独立してHまたはC1−20アルキルを表す)を表す)を表し、かつ
は、H、C1−6アルキル、C1−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表す)
を有する。
【0101】
本発明の実施に際しては、特に好ましいルシフェリン誘導体としては、ルシフェリン6’メチルエーテル(Luc ME)、ルシフェリン6’エチルエーテル(Luc EE)、ルシフェリン6’クロロエチルエーテル(Luc CEE)、ルシフェリン6’ベンジルエーテル(Luc BE)、ルシフェリン6’3−ピコリニルエーテル(Luc 3PE)および6’デオキシルシフェリン(H Luc)が挙げられる。
【0102】
本発明の別の実施形態では、シトクロムP450酵素の活性を測定するための方法が提供される。P450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を、1つまたは複数のシトクロムP450酵素および生物発光酵素と、同時にまたは段階的に、所定時間接触させる。P450の存在下では、発光原分子が一次反応で代謝されて生物発光酵素のための基質となる。次に、生物発光酵素が光を生じる二次反応において基質に作用する。シトクロムP450活性は、反応混合物から生成される発光量を測定して対照(例えばP450酵素を含まないもの)と比較することにより決定される。P450反応が起きるためには、P450レダクターゼ、NADPHおよびMg+2が一般に反応系に存在する。同様に、ホタルルシフェラーゼの活性にはATPおよびMg+2の存在が一般に必要であるが、ウミシイタケルシフェラーゼの活性には必要ない。任意の適切な濃度の発光原分子を、反応混合物中に用いればよい。本発明の実施に際しては、発光原分子の濃度は一般に約10nM〜1mMの範囲にあり、好ましくは特定のP450アイソフォームによる基質用量と応答の直線域にあり、最も好ましくは特定の基質/P450アイソフォーム反応についてKm、またはその反応についてVmaxとなる濃度である。
【0103】
本発明は、天然セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体(包括的にセレンテラジンと呼ばれる)である発光原分子を用いた、P450活性を決定するための方法も提供する。P450は、2つのうち一方の様式でこれらの発光原分子に作用する。一反応経路では、発光原分子はP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であるが、特徴的なセレンテラジンの化学発光(生物発光酵素、例えばウミシイタケ型ルシフェラーゼの非存在下での発光)を示さない。一次反応におけるP450による発光原分子の代謝により、ウミシイタケルシフェラーゼのための基質が生成される。次にウミシイタケルシフェラーゼが光を発生する二次反応において基質に作用する。次に、反応混合物の発光を測定して対照反応混合物と比較することにより、P450活性が確認される。第2の反応経路では、セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体は化学発光を示し、かつウミシイタケ型ルシフェラーゼのための基質である。このような発光原分子がP450により代謝されると、化学発光およびウミシイタケ型ルシフェラーゼとの反応性を損失する。いずれのタイプの反応経路においても、P450の活性を、P450単独の作用による化学発光の変化により直接的に、あるいはウミシイタケ型ルシフェラーゼからの生物発光の変化により間接的に検出可能である。有用なセレンテラジンは米国特許出願第10/053,482号(2001年2月11日出願)(この記載内容全体は、参照により本明細書に援用される)に開示されているが、これらに限定されない。
【0104】
ルシフェラーゼ類は、それらがルシフェラーゼ−ルシフェリン反応において活性を有するpH、イオン強度、温度、ATP濃度、マグネシウムイオン濃度、ルシフェリン濃度等の条件の範囲において多少異なっている。同様に、シトクロムP450酵素も、それらが活性を有するpH、イオン強度、温度、補因子の要求性、基質濃度等の条件の範囲において多少異なっている。しかしながら、任意の特定のルシフェラーゼおよび任意の特定のシトクロムP450酵素に関して、このような範囲を、そして最適範囲をさえ、当業者が確認するのは簡単なことである。本発明の実施に際しては、反応混合物中に用いられ得るルシフェラーゼ酵素の量は、一般に約0.1μg/mL〜約200μg/mL、好ましくは約0.5μg/mL〜約100μg/mLの範囲である。反応混合物中に用いられ得るP450酵素の量は、一般に約0.1ピコモル〜約200ピコモル、好ましくは約0.4〜約80.0ピコモルの範囲である。
【0105】
同様に当業者には知られたことであるが、例えば酵素の活性を保持するかまたは増大するために、あるいはアッセイ手法を施す試料のアリコートを得るために用いる手法の結果として、具体的に上記したもの以外の組成物が任意のアッセイ反応混合物中に存在することになるか、または存在してもよい。したがって典型的には、緩衝剤、例えばトリシン、HEPPS、HEPES、MOPS、トリス、グリシルグリシン、リン酸塩等が、pHおよびイオン強度を保持するために存在するであろうし、ルシフェラーゼ−ルシフェリン反応におけるルシフェラーゼの活性を増強するタンパク質様物質、例えば哺乳類の血清アルブミン(好ましくはウシ血清アルブミン)またはラクトアルブミンまたは卵白アルブミンが存在してもよいし、アッセイしようとするルシフェラーゼを抽出する系(例えば細胞)中に存在し得る、そしてルシフェラーゼまたはATPに悪影響を及ぼし得る金属含有プロテアーゼまたはホスファターゼの活性を抑制するために、EDTAまたはCDTA(シクロへキシレンジアミン四酢酸塩)等が存在してもよい。ルシフェラーゼを安定化するグリセロールまたはエチレングリコールが存在することもありうる。同様に、界面活性剤または表面活性剤、特に非イオン性界面活性剤、例えばオクトキシノールの界面活性剤(例えばロム・アンド・ハーズ(Rohm & Haas )の「トリトンX」の商標で販売されているもの、例えばトリトンX−100)が、一般に、アッセイのためにルシフェラーゼを抽出する細胞を溶解するために用いる溶液の残留物として、本発明のアッセイに用いられる溶液中に持ち込まれて、含まれることがありうる。マグネシウムに対する対イオンが、もちろん存在する。熟練者が理解するように、これらの対イオンの化学的同一性および濃度は、マグネシウムイオンを提供するために用いられるマグネシウム塩、用いられる緩衝剤、溶液のpH、pHを調整するために用いられる物質(酸または塩基)、ならびにマグネシウム塩、緩衝剤およびpHを調整するために用いられる酸または塩基以外の供給源から溶液中に存在する陰イオンによって、広範に変わり得る。本発明の実施に際して、MgSOまたはMgClは、マグネシウムイオンの好ましい供給源である。一手法では、マグネシウムイオンは、所望のマグネシウムイオン濃度を提供するために、用いようとする緩衝剤(例えばトリシン)を有する溶液中に炭酸塩として供給され、次に、強酸、例えば硫酸の添加により緩衝溶液のpHを調整することができるが、硫酸の添加により炭酸塩(および重炭酸塩)のほとんどが二酸化炭素として失われ、かつこれらの陰イオンは、硫酸塩、硫酸水素塩、トリシン陰イオンそしておそらくはさらにまた別の種類の陰イオン(陰イオンを提供し、そして溶液中に存在し得るその他の物質(例えばリン酸塩)によって決まる)によって置換される。空気中からアッセイ法が実行される溶液中への酸素の拡散により、P450およびルシフェラーゼ−ルシフェリン反応に必要とされる分子酸素が十分提供される。いずれの場合においても、P450反応におけるP450酵素の活性およびルシフェラーゼ−ルシフェリン反応におけるルシフェラーゼの活性のために有効であるアッセイ反応混合物中の種々の構成成分、例えば本方法の説明において具体的に上記された構成成分の濃度を容易に確認することは、十分に当業者の技術の範囲内である。
【0106】
ルシフェリン−ルシフェラーゼ反応の発光は、市販のルミノメーター、シンチレーション計数器、光電子倍増管光度計または感光乳剤フィルムを用いて測定され得る。本発明の一態様では、P450活性を測定するための一段階の方法が提供される。
【0107】
一段階の方法では、発光原分子をシトクロムP450酵素および生物発光酵素の両方と、同時にまたは同時期に接触させ、そして混合物を所定時間インキュベートする。シトクロムP450は、発光原分子を一次反応における生物発光酵素のための基質へと代謝する。生物発光酵素は次に、光を生じる二次反応において該基質に作用する。シトクロムP450活性は、アッセイ混合物から生成される発光量を測定して対照混合物と比較することにより間接的に決定される。対照には、P450酵素を水またはP450緩衝剤に置き換えたもの、組換えP450膜調製物をP450酵素を欠く同様の調製物により置き換えたもの、NADPHを排除したもの、あるいはルシフェリン基質添加前にP450酵素を熱変性させたものなどが挙げられる。発光は、所定のインキュベーション時間後に、あるいは反応が開始された時点から継続的に測定され得る。例えば図6および7に示されたアッセイ結果は、反応が開始された時間から継続的に読取ったものである。
【0108】
本発明の別の好ましい態様では、P450活性を測定するための二段階の方法が提供される。この二段階の方法では、発光原分子を最初にシトクロムP450酵素とともに第1の所定時間インキュベートする。P450酵素により発光原分子が代謝されて生物発光酵素の基質へと変換される。その後、P450酵素および基質を含有する反応混合物を、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼ酵素と第2の所定時間接触させる。生物発光酵素は、光を発生する二次反応において基質に作用する。次に、反応混合物から生成される発光の量を測定して対照(例えば活性P450酵素を含まないもの)と比較することにより、シトクロムP450活性を間接的に決定する。
【0109】
本発明のこの態様の実施に際して、界面活性剤、好ましくは非イオン性界面活性剤を、二段階の反応系の第二段階において生物発光酵素、例えばルシフェラーゼ酵素と接触させる直前または接触させるのと同時に、P450/発光原分子混合物に添加することが好ましい。界面活性剤は、ルシフェラーゼ酵素を妨げることなくP450酵素を抑制するので、分析者は、活性P450酵素により反応混合物中にルシフェリンが連続的に添加されるという複雑さを伴わず、反応の停止時点でルシフェリン(またはルシフェリン誘導体代謝産物(単数または複数))濃度依存性の発光を測定することができる。さらに非イオン性界面活性剤はルシフェラーゼを刺激するので、多少明るい反応を生じる。試験化合物、例えば薬剤がルシフェラーゼ阻害剤である場合、非イオン性界面活性剤はルシフェラーゼに及ぼす抑制作用を減少させるので、P450活性に及ぼす試験化合物の作用のみに関心を有する分析者にとって有益である。適切な界面活性剤としては、Tergitol(登録商標)(非イオン性);Brij(登録商標)35(非イオン性);Brij58(非イオン性);ポリミキシン(Polymixin)B;Triton(登録商標)X−100(非イオン性);TritonX−305(非イオン性);Triton N101(非イオン性);Chaps(両イオン性);Chapso(両イオン性);Bigchap(非イオン性);Thesit(登録商標)(非イオン性);Pluronic(登録商標)L64(非イオン性);Rhodasurf(登録商標)870;Chemal LA−9;スルホニル(Sulfonyl)465;デオキシコール酸(陰イオン性);およびCTAB(陽イオン性)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に際しては、Tergitol型のNP−9、ポリグリコールエーテル非イオン性界面活性剤が好ましい。アッセイ混合物中に存在する界面活性剤の量は、一般に約0.03%〜約2.0%、好ましくは約0.1%〜約1.0%の範囲である。
【0110】
一段階の系ならびに二段階の反応系の第一段階に関しては、反応混合物に一般に以下の構成成分、すなわちCYP2C9に関してはpH7.4の25mM KPO、CYP1A2に関してはpH7.4の100mM KPO等を含めた。その他の構成成分は、1.3mMのNADP+、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.4ユニット/mLのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.7mMのMgClであった。一段階の系に関しては、200μMのATPも用いられる。二段階の系の第二段階(ルシフェラーゼ反応)に関しては、5mM〜200mMのトリシン緩衝液、好ましくは20mM〜200mMのトリシン緩衝液が用いられるが、しかしHEPES、HEPPS、MOPS、リン酸塩およびBicineの緩衝液も有用である。その他の構成成分としては、0.7mM〜7.1mMのMgSO(またはMgCl)および0.1μM〜1mM、好ましくは10μM〜250μMのATPが挙げられる。一段階の系および二段階の反応系の第一段階に関しては、反応は一般に約20℃〜42℃、好ましくは約22℃〜37℃で実行される。二段階の反応系の第二段階に関しては、反応は一般に約4℃〜60℃、好ましくは約20℃〜42℃の温度で実行される。任意の適切な所定時間が一段階または二段階の反応系のために用いられ得るが、一方、一段階の反応系および二段階の反応系の第一段階に関する所定時間は、一般に約1分間〜約18時間であり、通常は約1分間〜約4時間(一段階の反応系に関して)、あるいは約10分間〜約1時間(二段階の反応系の第一段階に関して)の範囲である。二段階の反応系の第二段階に関しては、発光は、ルシフェラーゼ反応の開始直後〜約18時間後、好ましくは直後〜約3時間後に決定される。
【0111】
本発明の別の態様では、発光に基づく反応を安定化するための試薬、方法およびキットが提供される。ある種のルシフェラーゼ安定化分子、例えばルシフェラーゼの可逆的阻害剤の使用はルシフェラーゼ酵素について周知の自己触媒性自己分解に対する保護作用を提供し、したがって発光シグナルを延長し、反応混合物のバッチ処理を容易にする、ということが発見されている。本明細書中で定義されるように、ルシフェラーゼ安定化剤は、生物発光反応を遅くすることによりルシフェラーゼの自己触媒性自己分解に対してルシフェラーゼを実質的に安定化する任意の分子または分子群である。安定化剤を用いない場合、発光シグナル半減期は数分、例えば約3分という低い値であり得る。安定化剤が用いられる場合は、ルシフェラーゼを用いる反応のシグナル半減期は、選択される安定化剤および用いられる濃度によって、2時間またはそれ以上、例えば一晩という長さで延長され得る。ルシフェラーゼ安定化分子の例としては、ルシフェラーゼの可逆的阻害剤が挙げられるが、これらに限定されない。生物発光シグナルは、特にホタルルシフェラーゼが用いられる場合、急速に減衰し得る。これらの酵素は、発光原反応速度と正の相関を示す速度で不活性化することが知られている。急速なルシフェラーゼ反応速度の結果得られる明るいシグナルは望ましいが、高速での急速な不活性化はアッセイに実際的制限を課する。安定な発光シグナルは、試料間の有意な時間依存的減衰を伴わずに、多数の試料を次々に読取るのを容易にする。安定な発光シグナルを達成するために、反応速度を遅くすることによりシグナル減衰速度を低下させることが可能である。ルシフェラーゼ反応速度を遅くするための一方法は、ルシフェリンと競合的なルシフェラーゼ阻害剤を含めることである。本発明において、ともにホタルルシフェラーゼの拮抗阻害剤である2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)または2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)が、安定な発光シグナルを達成するのに特に有用であることが判明した。一般にルシフェラーゼ安定化剤はP450反応の完了後に導入され、そして二段階のCYP450発光アッセイの第二段階の前または開始時に導入され得る。
【0112】
本発明のこの態様の実施に際しては、ルシフェラーゼを用いる反応混合物中でルシフェラーゼ阻害剤の非存在下で生成される発光シグナルと比較して、発光シグナルの安定性を増強し、シグナルの半減期を延長するのに有効な任意の適量のルシフェラーゼ阻害剤が用いられ得る。好ましくは阻害剤の量は、試料のバッチ処理を可能にするためにシグナル半減期が少なくとも約2時間またはそれ以上となるようにするべきである。一般に阻害量の量は、反応混合物中に約1μM〜約1mM、好ましくは反応混合物中に約1μM〜約500μM、さらに好ましくは反応混合物中に約10μM〜約200μMの範囲であり、最も好ましくは反応混合物中に約100μMである。
【0113】
本発明の別の実施形態では、試験化合物、例えば候補薬剤は、発光原分子、例えば本発明のルシフェリン誘導体を用いることにより、シトクロムP450酵素の基質として、あるいは同酵素の阻害剤または活性化剤のいずれかである調節物質としての活性に関してスクリーニングおよび評価され得る。候補薬剤は、シトクロムP450酵素と候補薬剤とをそれらの間の相互作用に適した条件下で接触させ、シトクロムP450酵素の阻害剤または基質の非存在下で、シトクロムP450酵素との相互作用に適した条件下で少なくとも1つのルシフェリン誘導体を提供し、そしてルシフェラーゼの存在下でルシフェリンおよび/またはルシフェリン誘導体の代謝産物の発光シグナルの存在を検出することにより、シトクロムP450酵素の調節物質であるか基質であるかが決定され得るが、この場合、ルシフェリンおよび/またはルシフェリン誘導体の代謝産物は、シトクロムP450酵素の阻害剤の非存在下では、シトクロムP450酵素とルシフェリン誘導体との間の反応の生成物ということになろう。このような有効なP450基質および調節物質は、当業者により適切であるとみなされるように、候補薬剤に関する残りのスクリーニングにおいてこのような有効なシトクロムP450基質および調節物質が所望されない場合、スクリーニングライブラリーから除去すればよい。
【0114】
本発明の一態様では、シトクロムP450酵素の基質と阻害剤とを区別する方法が提供される。典型的には候補化合物は、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体をシトクロムP450酵素の阻害剤または基質の非存在下で同ルシフェリン誘導体とシトクロムP450酵素との相互作用に適した条件下で提供する前に候補化合物の代謝を可能にする条件下で、少なくとも1つのシトクロムP450酵素とともにインキュベートされる。ルシフェリン誘導体のP450代謝により生成される任意のルシフェリンは次に、光を発生する二次反応においてルシフェラーゼと相互作用する。その結果生じる光放出反応は、シトクロムP450酵素および候補薬剤をそれらの間の相互作用に適した条件下で接触させ、シトクロムP450酵素の阻害剤の非存在下でのルシフェリン誘導体とシトクロムP450酵素との相互作用に適した条件下で少なくとも1つのルシフェリン誘導体を提供することにより得られた光放出反応と比較される。シトクロムP450酵素により候補薬剤が代謝されると、候補薬剤が当該酵素に対する基質であることを示す化合物の代謝を伴わない条件と比較して、アッセイ媒体中の候補薬剤濃度が低下し、シトクロムP450抑制活性の見掛けの損失をもたらし得る。代謝されなかった抑制化合物は、シトクロムP450酵素の光学的基質の添加時間に関係なく、等しい効能を示す。
【0115】
本発明の別の態様では、薬剤候補を最初にP450酵素と第1の所定時間接触させることが好ましい。その後、混合物を発光原分子、例えばルシフェリン誘導体、ならびに生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと、同時にまたは同時期に接触させ、そして混合物を第2の所定時間インキュベートする。シトクロムP450活性は、反応混合物から生成される発光の量を測定して対照(例えばP450酵素を含まないもの)と比較することにより決定される。
【0116】
本発明のさらに別の(そして好ましい)態様では、薬剤候補を最初にP450酵素と第1の所定時間インキュベートして一次混合物を作製することが好ましい。その後、一次混合物を、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体と接触させて二次混合物を作製し、二次混合物を第2の所定時間インキュベートする。次に二次混合物を、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと接触させて三次混合物を作製し、三次混合物を第3の所定時間インキュベートする。その後、第3の所定時間後に発光を測定して対照(例えば薬剤を含まない)反応と比較することにより、P450酵素と薬剤候補との相互作用の結果得られるP450活性を決定する。
【0117】
本発明の実施に際しては、化合物スクリーニングのための任意の適切な濃度範囲を用いることができる。ライブラリーの一次スクリーニングに関しては、用いられる試験化合物の濃度は、一般に約1〜約100μMの範囲であり、通常は約10μMである。一次スクリーニングでヒットした試験化合物の二次およびそれ以上のスクリーニングには一般に、応答の用量依存性を確立するためにより広い範囲が用いられ、そして一部は試験化合物の効力によって決まる。
【0118】
本発明のこの態様の実施に際しては、P450酵素を変性または非活性化するために、ルシフェラーゼの添加前に非イオン性界面活性剤を二次混合物に添加することが好ましい。適切な界面活性剤および量は、上記されている。
【0119】
本発明の別の実施形態では、複数の化合物をスクリーニングして、シトクロムP450活性に及ぼすそれらの作用を決定するために、ハイスループットのアッセイ方法が提供される。試験化合物を、1つまたは複数の種類のP450酵素、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体、ならびに生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと、所定時間接触させる。その後、発光を測定することにより、P450酵素と化合物との相互作用の結果得られるP450活性を決定する。
【0120】
本発明の一態様では、化合物を最初にP450酵素と第1の所定時間接触させることが好ましい。その後、混合物を発光原分子、例えばルシフェリン誘導体、および生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと、同時にまたは同時期に接触させ、そして混合物を第2の所定時間インキュベートする。シトクロムP450活性は、第2の所定時間後に生成される発光の量を測定して対照(例えばP450酵素を含まない)反応と比較することにより決定される。本発明のさらに別の(そして好ましい)態様では、化合物を最初にP450酵素と第1の所定時間接触させて一次混合物を作製することが好ましい。その後、一次混合物をルシフェリン誘導体と接触させて二次混合物を作製し、二次混合物を第2の所定時間インキュベートする。次に二次混合物をルシフェラーゼと接触させて三次混合物を作製し、三次混合物を第3の所定時間インキュベートする。その後、反応混合物の発光を測定して対照(例えばP450酵素を含まない)反応混合物と比較することにより、P450酵素と試験化合物との相互作用の結果得られるP450活性が決定される。本発明のこの態様の実施に際しては、ルシフェラーゼの添加前に、二次混合物に非イオン性界面活性剤を添加することが好ましい。適切な界面活性剤および量は、上記されている。
【0121】
化合物スクリーニングに関しては、P450を最初に試験化合物と所定時間接触させてから、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体を添加する。別の方法には、P450を薬剤およびルシフェリンと同時に接触させることが包含される。さらに別の方法には、P450を最初にルシフェリンと第1の所定時間接触させた後、試験化合物を添加することが包含される。
【0122】
本発明の別の実施形態では、試験化合物をスクリーニングして細胞のシトクロムP450活性に及ぼすその作用を決定するために、細胞を用いる方法が提供される。試験化合物を、細胞、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体、および生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと、所定時間接触させる。その後、反応混合物の発光を測定して対照(試験化合物を含まない)反応混合物と比較することにより、細胞と化合物との相互作用の結果得られるP450活性が決定される。
【0123】
本発明の一態様では、化合物を最初に細胞と所定時間接触させることが好ましい。その後、細胞をルシフェリン誘導体およびルシフェラーゼと、同時にまたは同時期に接触させ、そして細胞をルシフェリン誘導体およびルシフェラーゼとともに第2の所定時間インキュベートする。細胞のシトクロムP450活性は、反応混合物から生成される発光の量を測定して対照反応混合物(例えば試験化合物を含まないもの)と比較することにより決定される。本発明の別の(そして好ましい)態様では、試験化合物を最初に細胞と所定時間接触させることが好ましい。その後、曝露した該細胞を次にルシフェリン誘導体と接触させて、第2の所定時間インキュベートする。次に細胞をルシフェラーゼと接触させて三次混合物を作製し、三次混合物を第3の所定時間インキュベートする。その後、反応混合物の発光を測定して対照反応混合物(例えば試験化合物を含まないもの)と比較することにより、細胞と試験化合物との相互作用の結果得られる細胞のP450活性を決定する。本発明のこの態様の実施に際しては、ルシフェリンまたはルシフェリン誘導体の代謝産物(単数または複数)をより完全に放出させてより強力なシグナルおよびより高感度のアッセイとするために、ルシフェラーゼの添加前または添加と同時に、二次混合物に非イオン性界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は細胞を破裂させ、ルシフェリンを放出させる。しかしながら界面活性剤の非存在下では、ルシフェリンまたはルシフェリン誘導体の代謝産物(単数または複数)は、その細胞透過性によって細胞から漏出し、そしてこのことが媒体中にルシフェラーゼおよびATPを有するリアルタイムの生細胞アッセイのための基礎を形成する。適切な界面活性剤および量は、上記されている。
【0124】
本発明のこの態様の実施に際しては、適切な細胞としては、1つまたは複数のP450酵素および同酵素に必要な補因子、例えばルシフェリン誘導体を利用するP450レダクターゼ、を発現する任意の細胞が挙げられる。このような細胞を用いて、試験化合物が適用される時点で細胞中に存在するCYP450酵素活性に及ぼす試験化合物の作用を検査し得る。この細胞を用いて、内在のCYP450遺伝子または遺伝子調節配列を備えたCYP450をコードする導入遺伝子の発現に及ぼす試験化合物の作用を調べることもできる。この場合、試験化合物により誘導された遺伝子発現の変化を、P450酵素活性のレベルの変化を測定することにより検出することができる。代表例としては、(a)ヒトまたは動物の供給源由来の初代肝細胞(いくつかの供給元から市販されている:ゲンテスト(GenTest )、米国マサチューセッツ州ウォバーン所在;クローンティックス・インコーポレイテッド(Clonetics, Inc. )、米国カリフォルニア州サンディエゴ所在;ゼノテック・エルエルシー(Xenotech, LLC )、米国カンザス州レネクサ(Lenexa)所在;(b)肝細胞株:HepG2、HepG2C3A(アンフィオクサス・セル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(Amphioxus Cell Technologies Inc.)(米国テキサス州ヒューストン所在)およびアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection)(ATCC)から市販)、THLE−3(ATCCから市販)、HepLiuブタ肝細胞株(マルチセル・テクノロジーズ(MultiCellTechnologies)(米国ロードアイランド州ウォービック(Warwick )所在)から市販)、ならびにBC2ヒト肝細胞腫細胞株(ゴメズレコン他(Gomez-Lechon, M.J. et al. )(2001)「高度に分化したヒト肝細胞種細胞株BC2による巨大な一群の薬剤代謝酵素の発現と誘導(Expression and induction of a large set of drug-metabolizing enzymes by the highly differentiated human hepatoma cell line BC2)」、Eur. J. Biochem. 268, 1448-1459 );(c)組換えP450を発現する細胞、例えば:HepG2(ヨシトミ他(Yoshitomi, S. et al )(2001)「HepG2においてヒトシトクロムP450サブタイプを発現する形質転換体の確立、ならびに薬剤代謝および毒性研究への応用(Establishment of the transformants expressing human cytochrome P450 subtypes in HepG2, and their applications on drug metabolism and toxicology )」Toxicol. In Vitro 15 (3 ), 245-256 )、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(ガベロバ他(Gabelova, A. et al)(2002)「シトクロムP450を安定に発現する、遺伝子操作したチャイニーズハムスターV79細胞株における、7H‐ジベンゾ(c,g)カルバゾールの変異原性と組織特異的派生物(Mutagenicity of 7H-dibenzo(c,g )carbazole and its tissue specific derivatives in genetically engineered Chinese hamster V79 cell lines stably expressing cytochrome p450)」、Mutation Research, 517 (1-2 ), 135-145 )、BEAS−2B、SV40で不死化したヒト気管支上皮細胞(コロンベ他(Coulombe, R.A. et al)(2002)「シトクロムP450を発現するヒト肺細胞におけるアフラトキシンB1の代謝と毒性(Metabolism and cytotoxicity of aflatoxin B1 in cytochrome P450-expressing human lung cells)」J. Toxicol. Env. Health Part A, 65 (12), 853-867 )、MCL−5Bリンパ芽球腫細胞株(マサチューセッツ州ウォバーン所在のゲンテスト(Ge nTest )から市販);ならびに(d)P450(単数または複数)を自然に発現する、あるいは発現可能なP450cDNA(単数または複数)およびP450レダクターゼで形質転換された非哺乳類細胞、例えば酵母、細菌、植物、真菌等が挙げられる。
【0125】
細胞を用いる化合物スクリーニングに関しては、試験化合物の効力および毒性に応じて、任意で適量の試験化合物を用いればよい。ライブラリーの一次スクリーニングに関しては、用いる試験化合物の濃度は、典型的には約1〜約1000μM、通常は約10〜100μMの範囲である。任意で適切なインキュベーション時間を用いればよい。一般に細胞とともに試験化合物をインキュベートするための時間は、典型的には約1分間〜約96時間、通常は約24時間〜約72時間の範囲である。
【0126】
細胞を用いる化合物スクリーニング、例えば細胞を用いるハイスループットスクリーニングのために、任意の適切な数の細胞を用いればよい。一個の細胞は、範囲全体の中で最も少ないが、一方、接着細胞の入った細胞培養用容器の表面に関しては、細胞が集密(コンフルエント)な状態または過密な状態は、接着細胞に関する範囲全体の中で最も多いと考えられよう。懸濁培養に関しては、細胞が飽和状態になった懸濁物が範囲全体の中で最も多いと考えられるであろう。本発明の実施に際して、好ましい細胞数は、範囲全体に関して上記した最大数の細胞によるバックグラウンドより上でシグナルを検出可能な、最小限の細胞数である。インキュベーション時間に関しては、適切な温度およびpH範囲は、細胞の要件によって変わることになる。一般にほとんどの細胞はpH7.4かつ37℃で培養されるが、ほとんどの細胞は、少なくとも一時的には、4〜42℃の温度範囲および約6〜9のpH範囲を超えても生存可能である。
【0127】
細胞を用いる発光検出アッセイは、複数の異なる方法で実施可能である。例えば一実施形態では、ルシフェラーゼおよびATPを細胞培地に添加すればよく、細胞からルシフェリンが漏出するのにつれて発光を直接的に検出可能である。この場合、温度、pH、塩濃度およびその他の増殖要件は、細胞の要件によって変わるであろう。ルシフェラーゼは一般に、細胞培養において通常用いられる生理学的な塩、pHおよび温度条件で活性である。
【0128】
細胞を用いる発光検出アッセイの別の実施形態では、培地を培養物から取り出して、ルシフェラーゼ反応に添加する。このための条件は、上記の二段階の反応アッセイの第二段階に関してすでに述べられたものと本質的に同様であろう。
【0129】
本発明の細胞を用いるアッセイのさらに別の実施形態では、ATP、ルシフェラーゼとともに確実に溶解するための界面活性剤(単数または複数)を含有する適切な溶解緩衝液中で細胞を溶解すればよく、次いで直ちに発光を読取る。動物細胞に関しては、0.1〜1.0%の非イオン性界面活性剤、例えばTriton(登録商標)X100またはTergitol(登録商標)を有する緩衝液で通常は十分である。細菌、植物、真菌または酵母細胞は一般に溶解するのがより難しい。界面活性剤、凍結/解凍の反復、低張緩衝液、超音波処理、空洞形成またはこれらの方法の組合せが用いられ得る。溶解の方法は、ルシフェラーゼ活性を損なわない溶解物を生じる方法でなければならない。界面活性剤が用いられる場合、該界面活性剤は活性ルシフェラーゼを損なわないものである。発光は、P450反応により生成された後細胞から放出されるルシフェリンまたはルシフェリン誘導体の代謝産物(単数または複数)に比例するであろう。細胞を用いる発光検出の代表例では、ある容積の溶解緩衝液が等容積の細胞培養後の培地に添加される。本発明のこの実施形態の変法では、細胞溶解物は、ルシフェラーゼおよびATPを含有しない溶解緩衝液を用いて調製され、次に該溶解物のアリコートが、上記のような一段階または二段階のルシフェラーゼを用いるアッセイに添加され得る。
【0130】
本発明の細胞を用いる発光検出アッセイのさらに別の実施形態では、組換え生物発光酵素、例えばルシフェラーゼを一過性にまたは安定的に発現する細胞が用いられ得る。一過性または安定的にトランスフェクションされた細胞を作製するための任意の慣用的方法が用いられ得る。細胞に導入された発現可能なcDNAベクターが、ルシフェラーゼをコードする。次に、細胞中にも存在するP450(単数または複数)が培地中に供給されたルシフェリン誘導体を代謝すると、発光が現れる。そのままの状態で直接的に、または溶解後に、所定時間後に発光を測定することにより、P450活性が決定され得る。一過性または安定的なトランスフェクションにより該細胞を作製するためのベクターは、プロメガ(Promega )(米国ウィスコンシン州マディソン所在)、クロンテック(Clontech)(米国カリフォルニア州パロアルト所在)およびストラタジーン(Stratagene)(米国カリフォルニア州ラ・ホーヤ所在)から入手可能である。
【0131】
本発明の別の実施形態では、試験化合物または化合物のライブラリーをスクリーニングして、細胞のシトクロムP450活性に及ぼすそれらの作用を決定するための組織を用いる方法が提供される。試験化合物を、組織、発光原分子、例えばルシフェリン誘導体、および生物発光酵素、例えばルシフェラーゼと所定時間接触させる。その後、反応混合物の発光を測定して対照(試験化合物を含まない)反応混合物と比較することにより、組織と化合物との相互作用の結果得られるP450活性を決定する。組織の代表例としては、肝臓、小腸および肺が挙げられるが、これらに限定されない。組織は、細かく刻んだものまたは薄片、例えば肝臓薄片の形態で用いられ得る。一般に細胞を用いるアッセイに関して上記したのと同一の考え方が適用可能であろう。
【0132】
本発明の別の実施形態では、試験化合物をスクリーニングして、動物のシトクロムP450活性に及ぼすその作用を決定するための方法が提供される。試験化合物および発光原分子、例えばルシフェリン誘導体を動物に投与する。所定時間後、生物学的検体を動物から取り出す。代表的な生物学的検体としては、血液および血清、尿、糞便、胆汁、脳脊髄液、リンパ、唾液、涙液および粘液(基本的にはCYP450代謝産物が見出され得る任意の体液)が挙げられる。血液/血清、尿、糞便および胆汁は、好ましい生物学的検体である。血液および糞便は、処理する必要があると思われる。例えば血液検体は、血球を除去して、血清を生成するよう処理すればよい。糞便検体は、抽出物を生成するよう処理すればよい。その他の流体はほとんどが、理想的にはルシフェラーゼアッセイに直接添加されてもよいし、あるいは任意選択で希釈してからルシフェラーゼアッセイに添加されてもよい。検体を次に、ルシフェラーゼ、ATPおよびMg2+と接触させる。所定時間後、発光を測定して対照と比較することにより、動物と化合物との相互作用の結果得られるP450活性を決定する。対照の一型としては、試験化合物の投与前に動物から採取した検体が挙げられる。この型の対照には、薬剤への曝露を伴わずにルシフェリン誘導体を投与することが含まれ、試料および測定値を所定の時間に得る。後に、ルシフェリンがその系から取り除かれた後、試験用の実験、ルシフェリン誘導体+薬剤への曝露を、同一の方法で同一の動物に関して実施する。この対照は、試験および対照用に同一の動物を用いるという利点を有する。この原理は、細胞を用いるアッセイおよび組織切片のアッセイにも適用され得る。代替的手法は、別個の試験動物および対照動物を用いることである。試験動物にはルシフェリン誘導体および薬剤を摂取させ、対照動物にはルシフェリン誘導体のみを摂取させる。
【0133】
本発明の一態様では、化合物およびルシフェリン誘導体を、好ましくは動物に同時にまたは同時期に投与する。第1の所定時間後、生物学的検体を動物から採取する。生物学的検体を次に、ルシフェラーゼと第2の所定時間接触させる。動物のシトクロムP450活性に及ぼす試験化合物の作用を、反応混合物から生成される発光を測定して対照反応混合物(例えば上記のような対照動物から採取した検体)と比較することにより決定する。
【0134】
本発明の別の態様では、化合物を最初に動物に投与することが好ましい。第1の所定時間後、次にルシフェリン誘導体を動物に投与する。第2の所定時間後、生物学的検体を動物から採取する。生物学的検体を次に、ルシフェラーゼと所定時間接触させる。動物のシトクロムP450活性に及ぼす試験化合物の作用は、ルシフェラーゼ反応混合物から生成される発光の量を測定して対照(例えば上記のような対照動物から採取した検体に基づくもの)と比較することにより決定される。
【0135】
試験化合物および発光原分子、例えばルシフェリン誘導体は、任意の適切な手段により処方可能であり、そして経口投与のための錠剤、カプセル剤またはエリキシル剤;直腸投与のための座剤;注射投与のための滅菌溶液、懸濁液等として用いられ得る。注射用医薬品は、液状の溶液または懸濁液、注射前に液状の溶液または懸濁液とするのに適した固体形態、あるいは乳濁液として、慣用的形態に調製され得る。適切な賦形剤は、例えば水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システイン等である。さらに、所望により、注射用の薬学的組成物に、少量の非毒性の補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤等を含めてもよい。所望により、吸収を増強する調製物(例えばリポソーム)を利用可能である。
【0136】
in vivo用量として必要とされる試験組成物の量、ならびに用いられるルシフェリン誘導体の量は、投与経路、治療される動物の種類、および対象とする特定の動物の身体的特質によって決まる。用量は所望の効果を達成するよう調整可能であるが、体重、食事、併用医薬品などの要因、ならびに医学界の当業者が認識するその他の要因によって決まる。
【0137】
ヒト以外の動物実験では、潜在的薬剤候補の適用を高い投薬量レベルで開始し、所望の作用がもはや達成されないかまたは副作用が消失するまで投薬量を低減させる。投薬量は、所望の作用および治療指標に応じて広範囲に及ぶ。典型的には投薬量は、体重に対して約10μg/kg〜100mg/kg、好ましくは約100μg/kg〜10mg/kgであり得る。投与は、好ましくは経口である。経口投与が好ましいが、しかし皮膚または粘膜、静脈内、皮下または腹腔内注入経路による吸収を用いてもよい。投薬量の制御は場合によっては問題があるが、経口投与により、化合物が吸収される腸を裏打ちしている細胞中のp450により大いに影響を受ける初回通過代謝を分析者が検査するのが可能となる。注入による投与は、動物における用量を制御するためにはより良好であり得る。
【0138】
本発明のさらに別の態様では、化合物をスクリーニングするための動物を用いたハイスループットのアッセイが提供される。実験動物は、薬剤活性のメカニズムを明確にし、治療計画を検討するために有用である。さらに近年、ゼブラフィッシュおよびその他の硬骨魚が、動物全体を用いるin vivoのハイスループット化合物スクリーニングのために特に有用であることが判明した。本明細書中で定義する場合、「硬骨魚」という用語は、体幹骨および放射状の鰭を有する多数の魚からなる群である真骨類または真口類を意味する、または属することを意味する。硬骨魚としては、例えばゼブラフィッシュ、メダカ、ジャイアントダニオ(Giant rerio )およびフグが挙げられる。例えば米国特許第6,299,858号(譲受人:フィロニックス・インコーポレイテッド(Phylonix, Inc.)(この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。例えば試験化合物およびルシフェリン誘導体を、マルチウエルプレート中に入った生きている硬骨魚胚に投与すればよい。硬骨魚を、適切な媒体、例えば水中に保持する。次に、1つまたは複数の所定時間後、媒体をルシフェラーゼと第2の所定時間接触させる。混合物から生成される発光を測定して試験化合物を含まない対照反応混合物と比較することにより、動物のシトクロムP450活性に及ぼす試験化合物の作用を決定することができる。
【0139】
本発明の別の態様では、化合物を最初に硬骨魚に投与することが好ましい。第1の所定時間の後、動物をルシフェリン誘導体と接触させる。第2の所定時間の後、媒体を次にルシフェラーゼと接触させる。混合物から生成される発光を測定して試験化合物を含まない対照反応混合物と比較することにより、動物のシトクロムP450活性に及ぼす試験化合物の作用を決定することができる。
【0140】
ルシフェラーゼ導入遺伝子を有するトランスジェニック動物も、P450活性を確認するための、そして1つまたは複数の化合物をスクリーニングするための動物を用いるアッセイに有用である。ルシフェラーゼ導入遺伝子は、主としてマウスにおいて、肝臓中で効率的に発現されている。キセノゲン・インコーポレイテッド(Xenogen, Inc. )およびその他の会社により、肝臓のような標的組織中で発現するルシフェラーゼ導入遺伝子を有するマウスおよびラットのようなトランスジェニック動物が開発されている(例えば米国特許第5,650,135号および第6,217,847号参照)(これらの記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)。一般にこのようなトランスジェニック動物にルシフェリンを注入し、次に画像処理技術(in vivoバイオフォトニックイメージング)を用いて、生きている動物全体におけるルシフェラーゼの発現部位での発光を測定する。したがって本発明の別の態様では、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼの導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に、適切なP450酵素が発現している組織中で生物発光酵素に対する基質へと変換される発光原基質を投与すればよい。生物発光酵素、例えばルシフェラーゼの導入遺伝子もその組織中で発現している場合は、光が生成され、このような光を任意の適切な手段により検出すればよい。上記のように、動物を用いるアッセイにおいて、このようなトランスジェニック動物におけるP450の作用に関して、1つまたは複数の薬剤を試験することができる。あるいはこのようなトランスジェニック動物由来の組織を、組織を用いるアッセイに用いることもできる。P450酵素活性を抑制する薬剤はシグナルを減少させ、P450遺伝子発現を誘導する薬剤はシグナルを増強する。
【0141】
本発明はさらに、ホタルルシフェラーゼの阻害剤である無機ピロリン酸塩(iPP)によるホタルルシフェラーゼの阻害を軽減するための方法およびキットを提供する。ルシフェラーゼを用いる反応におけるiPPの存在は、iPPが反応の再現性に影響を及ぼし得るので、望ましくない。ピロリン酸塩は、ルシフェラーゼによるATP、O2およびルシフェリンとの反応の産物である。ある条件下では、iPPが阻害作用を有するレベルに蓄積し得る。さらにルシフェラーゼを用いる反応の構成成分は、iPPが阻害作用を有する量となるのに寄与し得る。例えば反応を緩衝するために用いられるオルトリン酸塩は、夾雑物としてiPPを含有し得る。リン酸緩衝溶液の使用を回避することによりiPPの問題を解決し得るが、このことは、特にリン酸緩衝液が一般に用いられるP450反応においては、不便であるかまたは実際的でないことが多い。ルシフェラーゼを用いる反応中に、ピロホスファターゼ、例えば無機ピロホスファターゼ酵素(iPPアーゼ)を含めることにより、アッセイ混合物中にすでに存在している可能性のあるiPP、あるいはルシフェラーゼ反応の経過中に生成される可能性のあるiPPによるルシフェラーゼ阻害が低減または防止される、ということが発見された。この発見は一般に、iPPによるルシフェラーゼ阻害の可能性が問題となり得る全てのルシフェラーゼを用いる反応に適用可能であるが、しかしシトクロムP450(P450)の発光アッセイにピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを含めることが特に有用であることが判明している。いかなる理論にも縛られずに考えると、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼはiPPの増加を防止するとともにiPPをオルトリン酸塩へと加水分解して溶液からiPPを除去するように作用する。
【0142】
本発明の実施に際しては、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを、ルシフェラーゼを添加する前、添加と同時、または直後に添加すればよい。好ましくはピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを、ルシフェラーゼの添加と同時にアッセイ混合物に添加して、混合物中にすでに存在するiPPおよびルシフェラーゼ反応中に生成されるiPPを全て分解する。反応に用いられるピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼの量は、すでに存在するかまたはその後ルシフェラーゼ反応の経過中に生成され得る全てのiPPを除去または排除するのに十分な量である。一般に、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼの存在下では、反応混合物中のiPPのレベルは、ルシフェラーゼ反応においてルシフェラーゼ活性に有意な作用をほとんどまたは全く及ぼさない量まで排除または低減される。すなわちiPPのレベルは十分低く、ルシフェラーゼ阻害は有意ではないレベルに低減される。iPPは、種々の供給源に由来しうる。供給源の例としては、例えば酵母、原核生物および哺乳類が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の実施に際しては、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のiPPアーゼが好ましい。
【0143】
本発明の一実施形態では、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを、無細胞または細胞を用いる発光P450アッセイに含めることができる。P450酵素は、ホタルルシフェラーゼの基質前駆体であるルシフェリン誘導体をルシフェリン基質に変換し、ルシフェリン基質は次にルシフェラーゼと反応して、光を生じる。例えば、上記の二段階の方法の第一段階では、P450酵素を適切なアッセイ反応条件下でルシフェリン誘導体とともにインキュベートすればよい。第二段階では、ルシフェラーゼおよびATPが第一段階の混合物に添加されると、第一段階で生成されたルシフェリン基質が発光的に検出される。一般に、pHを緩衝するために第一段階においてKPO緩衝液を使用し、その濃度を変えることにより特定のP450アイソフォームに関する最適な塩濃度を提供するのが便利である。しかしながらKPO緩衝液の中には、ルシフェラーゼを阻害し、したがってルシフェリンの検出を妨害し得る十分量のiPP夾雑物を含むものがある。反応混合物にiPPアーゼを添加することにより、あらゆるiPP夾雑物の存在による阻害を低減または防止することができる。
【0144】
本発明の別の実施形態では、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを、任意のルシフェラーゼ反応、例えば無細胞または細胞を用いるルシフェラーゼアッセイに含め得る。反応構成成分としてピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼを添加することにより、ルシフェラーゼのiPPによる阻害に関する問題を伴わずに従来のリン酸緩衝液中でこれらのアッセイが実施可能となる。その他の用途としては、ルシフェラーゼ反応により生成されるiPPが阻害作用を有するレベルに蓄積するルシフェラーゼアッセイにおけるiPPアーゼの使用が挙げられ得る。
【0145】
本発明の別の実施形態では、CYP450の活性、またはシトクロムP450酵素活性に及ぼす物質(例えば薬剤候補)の作用を決定するためのキットが提供される。このようなキットは、1つまたは複数の容器中に、通常はアッセイにおける使用を容易にするために便利に包装された状態で、本発明に従ってアッセイおよび方法を実行するのに不可欠な多量の種々の組成物を含んでいる。したがってキットは、1つまたは複数の種類のシトクロムP450酵素;1つまたは複数の種類のシトクロムP450酵素のための基質でありかつ生物発光酵素、例えばルシフェラーゼ酵素の基質前駆体である1つまたは複数の発光原分子、例えばD−ルシフェリン誘導体;生物発光酵素、例えばルシフェラーゼ酵素;ならびにキットを使用するための使用説明書を含み得る。任意選択で、キットは、ATP、Mgイオンの供給源、非イオン性界面活性剤、ピロホスファターゼ、例えばiPPアーゼ、および/または緩衝剤もしくは適切なpHおよびイオン強度の溶液を提供するための任意のその他の反応構成成分を含む。上述したように、種々の構成成分を合わせて、例えば溶液または凍結乾燥した混合物として単一の容器に入れてもよいし、あるいは種々の組合せとして(1つ1つ別個にする場合も含む)複数の容器中に入れてもよい。好ましいキットは、P450基質(例えばD−ルシフェリン誘導体)の入ったバイアル(単数または複数)、生物発光酵素、例えばルシフェラーゼおよび任意のiPPアーゼ(好ましくは出芽酵母由来)の混合物(好ましくは凍結乾燥調製物)の入ったバイアル(単数または複数);ならびに生物発光酵素、例えばルシフェラーゼを希釈するためのATPを含有する希釈用緩衝液(凍結乾燥したルシフェラーゼ/ATP調製物の場合、この緩衝液は「再構成緩衝液」である)の入ったバイアルを含む。希釈緩衝液または再構成緩衝液は、界面活性剤も含有することになる。
【0146】
キットには、当業者には周知のように、キットを用いて実行するアッセイの信頼性および精度を保証するために、種々の対照物および標準物、例えばP450酵素を含まないもの(陰性対照)も含まれうる。
【実施例】
【0147】
(材料) Sf9細胞で発現させたCYP450調製物(Supersomes(登録商標))、プール化ヒト肝臓ミクロソームおよびNADPH生成系(NADP+、グルコース−6−リン酸およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)を、ゲンテスト(GenTest 、米国マサチューセッツ州ウォバーン所在)から購入した。基質であるルシフェリン6’メチル(Luc ME)、エチル(Luc EE)、クロロエチル(Luc CEE)およびベンジル(Luc BE)エーテルおよびデヒドロキシルシフェリン(H−Luc)は、プロメガバイオサイエンシズ(PromegaBiosciences 、米国カリフォルニア州サンルイスオビスポ所在)により製造された。Luc MEおよびLuc EEは、シグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich 、米国セントルイス所在)からも購入した。ホタル(Photuris pennsylvanica)由来のホタルルシフェラーゼの組換え突然変異体は、プロメガ(Promega )から入手した(17)。本明細書中で言及した化学試薬および溶媒は全て、多数の商業的供給元、例えばアルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)またはフィッシャーサイエンティフィック(Fischer Scientific)から容易に入手可能である。日立60MHz R−1200 NMR分光計またはバリアン(Varian)VX−300 NMR分光計で、NMRスペクトル分析を実施した。ミダック(Midac )MシリーズFT−IR計器を用いてIRスペクトルを得た。フィネガン(Finnegan)MAT90質量分析計を用いて質量スペクトルデータを得た。融点は全て補正される。
【0148】
(実施例1:ルシフェリン誘導体の合成)
(a)2−シアノベンゾチアゾール誘導体の調製
ルシフェロール: THF(15mL)中のD−ルシフェリン遊離酸(0.43g、1.53mmol)の懸濁液を−20℃浴(ドライアイス−イソプロパノール)中で冷却した。懸濁液に、ボラン−THFの溶液(THF中の1M溶液を1.8mL。1.8mmol)をシリンジで滴下した。淡黄色溶液を、窒素下で一晩(約15h)放置して周囲温度に暖めた。追加のボラン−THF(THF中の1M溶液を2.5mL。2.5mmol)を添加し、反応をさらに24h進行させた。10%酢酸水溶液の添加により過剰なボラン−THFをクエンチして、その結果生じた二層を酢酸エチル(3×75mL)で抽出した。抽出物を合わせて乾燥、蒸発させ、橙色固体を得て、同固体を、4:1のジクロロメタン−メタノールを用いてシリカゲル(70g)によるクロマトグラフィーで精製した。この精製操作により、残存しているD−ルシフェリン遊離酸が極性の低い混合生成物から分離された。この極性の低い混合生成物を、メタノール−水勾配を用いた2.54cm(1インチ)のシナジー(Synergi )4μ MAX−RP 80Aカラム(100×21.20mm)上での逆相HPLCにより分離した。適切な画分をプールし、蒸発させて、10mg(収率3%)の所望の物質を淡黄色固体として得た。この生成物は、HPLC分析によると純度95.4%であった。MS(ESI−):m/z264.4(M−H);計算値:265.01。
【0149】
2−シアノベンゾチアゾール: 還流冷却器、加熱マントルおよび内部温度探針を装備した1Lの三首フラスコに、ジメチルスルホキシド(DMSO、100mL)中のシアン化カリウム(1.50g、23.0mmol)の懸濁液を調製した。2−クロロベンゾチアゾール(2.6g、2.0mL、15.3mmol)をピペットで反応フラスコに添加し、反応物を80℃(内部温度)で加熱した。TLC(9:1 ヘプタン−酢酸エチル)により、反応を定期的にモニタリングした。5時間後、反応は約50%完了したように見えた。17時間後、TLC分析により反応は完了と判定された。反応混合物を室温まで冷却させて、次にエーテル(5×100mL)で抽出した。抽出物を硫酸ナトリウムで脱水し、濃縮して、黄色−橙色の固体を得た。この粗製固体を、9:1 ヘプタン−酢酸エチルを用いてシリカゲル(100g)上で精製した。生成物を含有する画分をプールし、濃縮して、1.4g(57%)の所望の物質を黄色−橙色の固体として得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0150】
6−(2−クロロエトキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: 還流冷却器を装備した50mLの二首丸底フラスコ中に、アセトン(5mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(1.0g、5.68mmol)の懸濁液を調製した。無水炭酸カリウム(1.57g、11.3mmol)を反応混合物に添加すると、懸濁液は黄色溶液に変わった。次に1−ブロモ−2−クロロエタン(1.06g、0.56mL、7.38mmol)をシリンジで添加し、反応混合物を加熱撹拌プレートおよび油浴を用いて還流で加熱した。RP HPLCにより定期的に反応をモニタリングした。5時間後、反応は約30%完了したように見えた。さらに1−ブロモ−2−クロロエタン(2.84mmol、0.21mL)を添加し、反応物を一晩還流した。HPLC分析は、反応が約50%完了していることを示した。さらに1−ブロモ−2−クロロエタン(2.84mmol、0.21mL)および炭酸カリウム(0.60g、4.37mmol)を添加し、反応物をその日の残りの時間(約7時間)還流した。反応は約64%完了し、反応物を一晩還流した。翌朝、反応は約84%完了したことが判明した。さらに1−ブロモ−2−クロロエタン(2.84mmol、0.21mL)および炭酸カリウム(0.60g、4.37mmol)を添加し、反応物をその日の残りの時間(約7時間)還流した。この時点で反応は約92%完了であった。反応混合物を室温まで冷却させて、次にガラス繊維紙を通して濾過し、アセトンですすいだ。濾液を濃縮して、黄色−褐色の固体を得た。この粗製固体(1.3g)を、4:1 ヘプタン−酢酸エチルを用いてシリカゲル(100g)上で精製した。生成物を含有する画分をプールし、濃縮して、1.0g(74%)の所望の物質をオフホワイト色の固体として得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0151】
6−(4−トリフルオロメチルベンジルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: 還流冷却器を装備した100mLの二首丸底フラスコ中に、アセトン(5mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(1.0g、5.68mmol)の懸濁液を調製した。無水炭酸カリウム(0.94g、6.82mmol)を反応混合物に添加すると、懸濁液は黄色の溶液に変わった。次に臭化4−(トリフルオロメチル)ベンジル(1.49g、6.25mmol)を添加し、加熱撹拌プレートおよび油浴を用いて15時間還流して反応混合物を加熱した。反応混合物を室温まで冷却させて、次に濾過して無機塩を除去した。濾液を回転蒸発により濃縮して、1.7g(収率89%)のオフホワイト色の固体を得て、これを精製せずに用いた。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0152】
6−(ベンジルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: 還流冷却器を装備した100mLの二首丸底フラスコ中に、アセトン(35mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(0.35g、2.00mmol)の懸濁液を調製した。無水炭酸カリウム(0.33g、2.40mmol)を反応混合物に添加すると、懸濁液は黄色の溶液に変わった。次に臭化ベンジル(0.41g、0.29mL、2.40mmol)を添加し、反応混合物を加熱撹拌プレートおよび油浴を用いて15時間還流して加熱した。反応混合物を室温に冷却させて、次に濾過して無機塩を除去した。濾液を回転蒸発により濃縮して、0.51gの淡黄色固体を得た。この粗製物質を、4:1 ヘプタン−酢酸エチルの混合物から成る移動相を用いたシリカゲル(24g)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、410mg(収率77%)の所望の物質を白色発泡体として得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0153】
6−(2−フェニルエトキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: 還流冷却器を装備した100mLの二首丸底フラスコ中に、アセトン(5mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(1.00g、5.68mmol)の懸濁液を調製した。無水炭酸カリウム(1.18g、8.52mmol)を反応混合物に添加すると、懸濁液は黄色の溶液に変わった。次に(2−ブロモエチル)ベンゼン(1.37g、0.88mL、7.38mmol)を添加し、反応混合物を加熱撹拌プレートおよび油浴を用いて還流して加熱した。反応物のアリコートのHPLC分析により、反応の進行をモニタリングした。15時間の還流後、反応は約40%完了した。さらに(2−ブロモエチル)ベンゼン(0.5当量、2.84mmol)および炭酸カリウム(0.5当量、2.84mmol)を、出発物質が消費されるまで2日間の経過中、定期的に添加した。反応混合物を周囲温度まで冷却させて、次に濾過して無機塩を除去した。回転蒸発により濾液を濃縮して、2.2gの粗製油を得た。この粗生成物を、9:1 ヘプタン−酢酸エチルの混合物から成る初期移動相を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。移動相を5:1のヘプタン−酢酸エチルの混合物に調整し、次に7:3のヘプタン−酢酸エチルの混合物に調整して、800mg(収率50%)の所望の物質をオフホワイト色の発泡体として得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0154】
6−(ゲラニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: アセトン(5mL)、無水炭酸カリウム(1.2g、8.4mmol)および臭化ゲラニル(1.5mL、7.3mmol)を含有する乾燥した25ml丸底フラスコに、6−ヒドロキシ−2−シアノベンゾチアゾール(1g、5.6mmol)を添加した。混合物を撹拌しながらアルゴン下で還流した。2:1のヘプタン−酢酸エチルで展開するTLC分析により、反応の進行をモニタリングした。20時間後、冷却した反応混合物から炭酸カリウムを濾過した。溶液を真空濃縮して、2.1gの固体を得た。この固体を、9:1のヘプタン−酢酸エチルの混合物を用いたフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、0.84gの固体を得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により構造を確認した。
【0155】
6−(プレニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: アセトン(5mL)、無水炭酸カリウム(1.2g、8.4mmol)および臭化プレニル(839μL、7.3mmol)を含有する乾燥した25ml丸底フラスコに、6−ヒドロキシ−2−シアノベンゾチアゾール(1.0g、5.6mmol)を添加した。混合物を撹拌しながらアルゴン下で還流した。2:1のヘプタン−酢酸エチルで展開するTLC分析により、反応の進行をモニタリングした。28時間後、冷却した反応混合物から炭酸カリウムを濾過した。溶液を真空濃縮して、1.7gの固体を得た。この固体を、9:1のヘプタン−酢酸エチルを用いて徐々に4:1のヘプタン−酢酸エチルまで段階的に変化させるフラッシュクロマトグラフィーによりさらに精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、0.8gの固体を得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0156】
6−(2−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: 臭化水素酸(ブロモメチル)ピリジン(1.87g、7.38mmol)および2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(1.00g、5.68mmol)をアセトン(50mL)中に懸濁した。炭酸カリウム(1.96g、14.2mmol)の導入後、懸濁液を窒素下で72時間還流した。混合物を冷却し、固体を濾過した後、濾液を濃縮し、ヘプタン中の50%〜75%酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製した。帯黄色の固体を収率72%で得た。MS(ESI+):m/z 267.90(M+H);計算値:268.05。
【0157】
6−(3−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: アセトン(50mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(0.39g、2.2mmol)の溶液に、3−臭化水素酸(ブロモメチル)ピリジン(0.7g、2.76mmol)、炭酸セシウム(2.15g、6.6mmol)および触媒量のヨウ化ナトリウムを添加した。3Aのモレキュラーシーブを添加し、黄色の懸濁液を窒素下で40時間還流した。混合物を冷却し、固体を濾過した後、濾液を濃縮し、ヘプタン中の50%〜100%酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製した。帯黄色の固体を収率61%で得た。MS(ESI+):m/z 267.64(M+H);計算値:268.05。
【0158】
6−(4−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール: アセトン(50mL)中の2−シアノ−6−ヒドロキシベンゾチアゾール(1.18g、6.71mmol)の溶液に、3Aのモレキュラーシーブおよび炭酸セシウム(3.98g、12.2mmol)を添加した。その結果生じた懸濁液を室温で2時間撹拌した。次に別途等量の炭酸セシウム(1.99g、6.1mmol)を導入し、その後、臭化水素酸4−(ブロモメチル)ピリジン(1.0g、6.1mmol)および触媒量のヨウ化セシウムを添加した。その結果生じた黄色の懸濁液を窒素下で48時間還流した。混合物を冷却し、固体を濾過した後、濾液を濃縮し、ヘプタン中の30%酢酸エチルを用いたシリカゲルクロマトグラフィーにより残渣を精製して、出発物質を除去し、次に酢酸エチル中の25%メタノールを除去した。帯黄色の固体を収率70%で得た。MS(ESI+):m/z 267.74(M+H);計算値:268.05。
【0159】
(b)2−シアノベンゾチアゾール誘導体をD−ルシフェリン誘導体へ変換させるための一般的手法
塩酸システイン一水和物の0.39M水溶液(2−シアノベンゾチアゾール誘導体の量に基づいて、1.3当量)を、等容積の0.39M炭酸カリウム溶液中に滴下し、このとき6M HClの添加によりpHを6〜7に保持した。別個の反応フラスコ中で、0.1M溶液を調製するのに十分なメタノール中に2−シアノベンゾチアゾール誘導体を溶解した。この溶液を窒素でパージして、酸素を除去した。上記のシステイン/炭酸カリウム溶液を、2−シアノベンゾチアゾール誘導体が入っている反応フラスコに滴下し、このとき6M HClの添加によりpHを6〜7に保持した。TLCにより反応をモニタリングし、完了時に、反応混合物を、冷水浴(<30℃)を用いて回転蒸発により濃縮した。
【0160】
6’−デオキシルシフェリン(H−Luc): 一般的手法に従って、2−シアノベンゾチアゾール(100mg、0.62mmol)から調製した。9:1のジクロロメタン−メタノールを用いたシリカゲル(20g)上でのフラッシュクロマトグラフィーにより固体の粗生成物を精製し、163mg(99%)の所望の物質を淡黄色の固体として得た。この物質は、HPLC分析により純度96%であった。MS(ESI−):m/z 263.40(M−H);計算値:262.99。
【0161】
ルシフェリン6’−(2−クロロエチル)エーテル(Luc CEE): 一般的手法に従って、6−(2−クロロエトキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(1.0g、4.19mmol)から調製した。このようにして得られた固体生成物は、HPLC分析による純度が99.5%であり、さらなる精製が必要であるとは思われなかった。この生成物の収量は、1.36g(収率95%)であった。MS(ESI+):m/z 342.94(M+H);計算値:343.00。
【0162】
ルシフェリン6’−ベンジルエーテル(Luc BE): 一般的手法に従って、6−(ベンジルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(0.41g、1.5mmol)から調製した。固体の粗生成物を、最初に100%ジクロロメタンを用いて、徐々に8:2のジクロロメタン−メタノールまで段階的に変化させるシリカゲル(90g)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、所望の生成物190mg(収率34%)を得た。MS(ESI−):m/z 368.67(M−H);計算値:369.04。
【0163】
ルシフェリン6’−(4−トリフルオロメチル)ベンジルエーテル(Luc TFMBE): 一般的手法に従って、6−(4−トリフルオロメチルベンジルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(1.7g、5.08mmol)から調製した。その結果生じた固体を、最初に99:1のジクロロメタン−メタノールを用いて、徐々に9:1のジクロロメタン−メタノールまで段階的に変化させるシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、所望の生成物700mg(31%)を固体として得た。
【0164】
ルシフェリン6’−(2−フェニルエチル)エーテル(Luc PEE): 一般的手法に従って、6−(2−クロロエトキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(0.80g、2.85mmol)から調製した。その結果生じた固体を、最初に6:3:1のヘプタン−酢酸エチル−メタノールの混合物、次に5:3:2のメタノール−ヘプタン−酢酸エチルの混合物を用いるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、所望の生成物145mg(14%)を固体として得た。MS(ESI+):m/z 384.52(M+H);計算値:385.07。
【0165】
ルシフェリン6’−ゲラニルエーテル(Luc GE): 一般的手法に従って、6−ゲラニルオキシ−2−シアノベンゾチアゾール(0.8g)から調製した。その結果生じた固体を、9:1のジクロロメタン−メタノールを用いて、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、101mgの固体を得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により、構造を確認した。
【0166】
ルシフェリン6’−プレニルエーテル(Luc PE): 一般的手法に従って、6−プレニルオキシ−2−シアノベンゾチアゾール(0.8g)から調製した。その結果生じた固体を、最初に、9:1のジクロロメタン−メタノールを徐々に8:2のジクロロメタン:メタノールまで段階的に変化させるフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。次に該固体を2:1のヘプタン−酢酸エチルを用いるフラッシュクロマトグラフィーにより再精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、339mgの帯黄色の固体を得た。DMSO−d6中でのH NMR分析により構造を確認した。蛍光HPLC分析によりバックグラウンドのルシフェリンが示されたので、分離用逆相HPLCにより固体をさらに精製した。
【0167】
ルシフェリン6’−(2−ピコリニル)エーテル(Luc 2PE): 一般的手法に従って、6−(2−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(250mg、0.94mmol)から調製した。このようにして得た固体生成物はHPLC分析の結果純度92.0%であり、この生成物の収率は80%であった。MS(ESI+):m/z 371.55(M+H);計算値:372.04。
【0168】
ルシフェリン6’−(3−ピコリニル)エーテル(Luc 3PE): 一般的手法に従って、6−(3−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(250mg、0.94mmol)から調製した。このようにして得た固体生成物はHPLC分析の結果純度99.8%であり、さらなる精製は不要と思われた。この生成物の収率は60%であった。MS(ESI+):m/z 371.64(M+H);計算値:372.04。
【0169】
ルシフェリン6’−(4−ピコリニル)エーテル(Luc 4PE): 一般的手法に従って、6−(4−ピコリニルオキシ)−2−シアノベンゾチアゾール(267mg、1.0mmol)から調製した(ただし、5mLのDMFを使用して出発物質を溶解した)。このようにして得た固体生成物はHPLC分析の結果純度96.0%であり、さらなる精製は不要と思われた。この生成物の収率は20%であった。MS(ESI+):m/z 371.61(M+H);計算値:372.04。
【0170】
(実施例2:二段階のCYP450/ルシフェラーゼ反応およびルシフェリン誘導体の評価)
この実施例では、二段階のCYP450/ルシフェラーゼアッセイのための手法を提供する。この手法を用いて、ルシフェリン誘導体をP450基質およびルシフェラーゼ基質前駆体として評価した。所与のCYP450アイソフォームに最適なKPO緩衝剤の量(CYP1A1、CYP1A2、CYP2B6、CYP2D6およびCYP2E1に関しては100mM;CYP2C8およびCYP2C19に関しては50mM;2C9ならびにプール化ヒト肝臓ミクロソームに関しては25mM;CYP3A4に関しては200mM)で、CYP450反応物20マイクロリットルをpH7.4で調製した。CYP2A6に関しては、100mMトリス(pH7.5)をKPOの代わりに用いた。反応混合物には、1.3mMのNADP+、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.4U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.3mMのMgClおよびルシフェリン誘導体/CYP450基質も含めた。Sf9細胞ミクロソーム膜でCYP450レダクターゼと同時発現させた0.4pmolの組換えヒトCYP450または4マイクログラムのプール化ヒト肝臓ミクロソームを添加し、37℃でインキュベーションして反応を開始した。37℃での初期インキュベーション期間後、20マイクロリットルのCYP450反応物を80マイクロリットルのルシフェラーゼ反応混合物と混合した。ルシフェラーゼ反応混合物には、250μMのATP、5〜25μg/mLのホタル(Photuris pennsylvanica)由来の熱安定性ルシフェラーゼ(国際公報第9914336号パンフレット(1999年3月25日公開、この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製した)、20mMのトリシン(pH7.8)、0.1mMのEDTA、8mMのMgCl、0.6mMの補酵素Aおよび33mMのDTTを含めた。同様に、50マイクロリットルのCYP450および(例えば図3B、表3の)ルシフェラーゼ反応容積を用いてアッセイを実施した。発生した光を、ターナー社(Turner)のReporter(商標)、ターナーの20/20またはベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで直ちに測定した。異なる製造業者の計器の較正は様々であるため、発生した光の定量は計器特異的であり、そして計器間で直接比較することはできない。
【0171】
O−脱アルキル化およびヒドロキシル化は、CYP450が触媒する一般的な生体異物の変換である(9)。組換えヒトCYP450ミクロソーム調製物パネルを、ルシフェリン6’メチル(Luc ME)、エチル(Luc EE)、クロロエチル(Lluc CEE)、ベンジル(Luc BE)、p−CF3ベンジル(Luc TFMBE)、フェニルエチル(Lluc PEE)、ゲラニル(Luc GE)、2、3、4ピコリニル(Luc 2PE、Luc 3PEおよびLuc 4PE)およびプレニル(Luc PE)エーテルに対するO−脱アルキル化酵素活性に関して、ならびにデヒドロルシフェリン(H−Luc)に対するヒドロキシル化酵素活性に関して試験した(図2)。これらの化合物は、光を生成するルシフェラーゼ反応において、不活性であるか、または真正ルシフェリンと比較するとあまり活性がない。試験したCYP450活性は、NADPH CYP450レダクターゼとの組合せで一種類の組換えヒトCYP450アイソフォームを過剰発現する昆虫細胞に由来するミクロソーム画分中に含まれている。CYP450がルシフェリン誘導体の6’位を脱アルキル化またはヒドロキシル化すると、図1の式で説明されるように、光を生成するホタルルシフェラーゼ反応において酵素的に検出可能な真正ルシフェリンが生成されると考えられる。
【0172】
Luc ME、Luc EE、Luc CEE、Luc BE、H−Luc、Luc TFMBE、Luc PEE、Luc GE、Luc 2PE、Luc 3PEおよびLuc 4PEならびにLuc PEを二段階のアッセイに供したが、同アッセイにおいては、前記化合物を最初に、CYP450が活性を示すことが既知である条件下で、CYP450に富むミクロソームのパネルまたは対照ミクロソーム(検出可能なCYP450活性を示さない)とともにインキュベートした。パネルには、CYP1A1、CYP1A2、CYP2A6、CYP2B6、CYP2C8、CYP2C9、CYP2C19、CYP2D6、CYP2E1およびCYP3A4を含めた。CYP450を用いた初期インキュベーション後、ルシフェラーゼおよび同ルシフェラーゼに必要な補因子を添加し、発生した光をモニタリングした(図3A〜Iおよび図9)。Luc MEとCYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9、Luc BEとCYP2C8、CYP2C9およびCYP3A4、Luc EEとCYP1A1、CYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9、Luc CEEとCYP1A1、CYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9、Luc TFMBEとCYP1A1、CYP2C8およびCYP2C9、Luc PE、Luc PEEとCYP3A4、Luc GEとCYP1A1、ならびにLuc PEとCYP3A4において、発生した光は対照を上回って有意に増大した(図3A〜I)。Luc 2PE、Luc 3PEおよびLuc 4PEに関しては、発生する光の最も明らかな増大はCYP1A1およびCYP3A4を用いた場合であって、作用はいずれのアイソフォームについてもLuc 3PEの場合が最も顕著であった(図9)。これらのアイソフォームは、ルシフェリン6’アルキルエーテルおよび6’置換アルキルエーテルを脱アルキル化してルシフェリンを生成したように思われるが、試験した他のアイソフォームは脱アルキル化しなかった。H−Lucを基質として用いた場合、CYP1A2およびCYP2C9は、対照を上回る光を発生した。H−Lucがヒドロキシル化されてルシフェリンを生成したと考えられ、試験したパネル内では、この反応はCYP2C9アイソフォームを用いた場合に最も顕著であった。示されていないアイソフォーム/基質の組合せに関する値は、対照のSf9細胞膜と同様であった。各パネルスクリーニングについて、バックグラウンドの発光は、少なくとも一部は、未反応のd−ルシフェリン誘導体調製物中に混入しているD−ルシフェリンの存在を反映している。CYP1A1、CYP1A2、CYP2C8、CYP2C9およびCYP3A4の発光反応は、基質に関して用量依存的であった(データは示されていない)。
【0173】
(実施例3:二段階のCYP450の発光反応におけるCYP450/基質インキュベーション時間依存性)
Luc MEとCYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9、H−LucとCYP2C9、そしてLuc BEとCYP3A4のインキュベーションについて、経時変化を調べた(図4)。CYP450反応混合物にルシフェラーゼ反応混合物を添加して12分以内に測定した発光量は、Luc MEまたはH−LucとCYP2C9に関して、ならびにLuc BEとCYP3A4に関しては60分までの間、直線的に増大した。CYP1A2およびCYP2C8に関しては、時間依存的な増大は認められたが、増大率は低下し、60分近くではCYP2C8に関しては控えめに増大しただけで、CYP1A2に関しては全く増大しなかった。これらの経時変化は、それぞれの通常の基質であるフェナセチン、パクリタキセル、ジクロフェナクおよびテストステロンを用いたCYP1A2、CYP2C8、CYP2C9およびCYP3A4の活性を反映している(10、11、12)。
【0174】
(実施例4:二段階のCYP450の発光反応からの光入力の経時変化)
この実施例では、ルシフェラーゼ反応の構成成分をCYP450反応物と組合せた後に発光シグナルを生成させ、該発光を長時間に亘ってモニタリングした(図5)。37℃で60分間、CYP450反応混合物中でD−ルシフェリン誘導体をインキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。−CYP450対照では、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOに置き換えた。反応物を合わせて3分後に開始して、図示したように間をおいて次々と284分間、ターナーのReporter(商標)ルミノメーターで発光を読取った。試験したCYP450および基質に関しては、シグナルは非常に安定しており、5時間より長い半減期で減衰した。
【0175】
(実施例5:室温における一段階のCYP450/ルシフェラーゼ反応)
この実施例では、一段階のCYP450/ルシフェラーゼアッセイのための手法を提供する。この手法を用いて、ルシフェリン誘導体をP450の基質およびルシフェラーゼの基質前駆体として評価した。CYP450アイソフォームに最適なKPO緩衝剤の量(二段階の反応の方法を参照のこと)で、CYP450反応物100マイクロリットルをpH7.4で調製した。反応混合物には、1.3mMのNADP+、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.4U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.7mMのMgSO、0.6mMの補酵素A、ルシフェリン誘導体/CYP450基質、250μMのATPおよび21μg/mLのホタル(Photuris pennsylvanica)由来の熱安定性ルシフェラーゼ(国際公開第9914336号パンフレット(1999年3月25日公開)(この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される))に記載されているように調製したもの)も含めた。Sf9細胞ミクロソーム膜(例えばゲンテスト(GenTest )のSupersomes(商標))中でCYP450レダクターゼと同時発現させた2.0pmolの組換えヒトCYP450を添加し、室温または37℃でインキュベーションして反応を開始した。発生した光を、ターナーのReporterまたはベルソルド・オリオンのルミノメーターで、直ちにかつ継続的に測定した。
【0176】
CYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9ミクロソーム調製物と共にインキュベートしたLuc MEと、ルシフェラーゼおよび同ルシフェラーゼに必要な補因子とを用いて、室温(〜22℃)で一段階アッセイを実施した。初期ベースラインの発光を測定し、次にCYP450の添加により反応が開始された時点から長時間に亘って発生した光をモニタリングした(図6)。各反応に関しては、CYP450が反応混合物中に含まれる場合、発生する光の時間依存的増大が観察された。室温での最も頑健な応答は、CYP1A2を用いた場合に観察された。発光は約40分後に最大レベルに増大し、約3時間安定を保持し、その後、アッセイの残り時間に亘って漸次減少した。CYP2C8およびCYP2C9の室温における反応からの発光は、約3時間漸次増大し、約1時間安定を保持し、その後、アッセイの残り時間に亘って漸次減少した。H−LucおよびCYP2C9を用いて、ならびにLuc EEおよびCYP2C8を用いて、同様の一段階アッセイを実施した(データは示されていない)。
【0177】
(実施例6:37℃における一段階のCYP450/ルシフェラーゼ反応)
本実施例では、実施例5の一段階アッセイを37℃で実施し、CYP450の添加により反応が開始された時点から長時間に亘って光をモニタリングした(図7)。CYP1A2、CYP2C8およびCYP2C9をLuc MEに対して、CYP2C9をH−Lucに対して、CYP3A4をLuc BEに対してアッセイした。CYP1A2およびCYP2C9は同様に、約30分までに発光のピークまで増大し、その後、減少した。CYP2C8の反応では、発生した光は−CYP450対照の発光を超えたが、しかし試験条件および対照条件のいずれにおいても、反応が経過すると初期値から減少した。H−LucとCYP2C9については、Luc MEと同様に、約30分までに最大まで増大し、その後減少した。CYP3A4およびLuc BEと−CYP450対照との間の発光の差は、あまり大きくなかった。各々の場合の−CYP450対照物からの発光は、未反応のD−ルシフェリン誘導体調製物中にルシフェリンが混入している結果であると思われた。
【0178】
(実施例7:二段階のCYP450の発光反応におけるプール化ヒト肝臓ミクロソーム)
基質としてH−Luc、Luc ME、Luc EEおよびLuc BE(図8)を用いる二段階のCYP450の発光アッセイにおいて、CYP450活性の混合物を含有するプール化ヒト肝臓ミクロソーム調製物を用いた。CYP450活性を示さないSf9細胞膜と比較して、有意量のCYP450活性が、各基質を用いた発光方法により検出された。発光全体に対する個々のアイソフォームの寄与は、スルファフェナゾール(CYP2C9阻害剤)、α−ナフトフラボン(CYP1A2阻害剤)およびケトコナゾール(CYP2C8およびCYP3A4阻害剤)を用いた阻害により示唆された(13)。特に注目すべきは、CYP2C9の選択的阻害剤スルファフェナゾールにより、H−Lucを用いた発光がほぼ完全に阻害されたことである。100μMのケトコナゾールによるH−Lucの反応の部分的阻害も、同阻害剤がCYP2C9の活性に有効であることと一致する。このことと、H−LucがCYP2C9に対して選択的であるという実証(図3A〜I)とを合わせると、H−Lucに対するミクロソーム活性が主としてCYP2C9である、ということが示唆される。Luc MEおよびLuc EEの活性に及ぼすスルファフェナゾールおよびケトコナゾールの作用は、CYP2C8活性が存在することと一致する。というのも、CYP2C8はこれらの基質の両方に対して活性を有し、かついずれの阻害剤によっても阻害されるからである。ケトコナゾールによるLuc BE活性の阻害は、CYP3A4および/またはCYP2C8が存在することと一致する。というのも、いずれのアイソフォームもLuc BEに対して活性を有し、かついずれもケトコナゾールにより抑制されるからである。α−ナフトフラボンによる阻害がないということは、ミクロソーム調製物中にCYP1A2活性がほとんどまたは全く存在しない、ということを示す。α−ナフトフラボンによりLuc BEに対する活性がわずかに刺激されるということは、CYP3A4活性の存在を反映している可能性がある。というのも、このアイソフォームはα−ナフトフラボンにより刺激されるからである(16)。
【0179】
(実施例8:既知のP450阻害剤によるCYP450の阻害の検出)
CYP450の発光アッセイの基質としてのルシフェリン誘導体は、薬剤またはその他の生体異物によるCYP450の阻害を検出するためのプローブとして有用であるはずである。この仮説を試験するために、既知のCYP450阻害剤およびある種のルシフェラーゼ誘導体を反応物に添加し、IC50を決定した。試験した阻害剤は、CYP2C9に関してはスルファフェナゾール、CYP1A2に関してはα−ナフトフラボン、ならびにCYP2C8および3A4に関してはケトコナゾールであった。実施例2に記載したように、二段階のアッセイを実施した。これらの薬剤は、用量依存的に反応を抑制した(表1)。多くの場合、IC50は、他の基質を用いたアッセイに関して報告されたIC50(13)に匹敵した。阻害剤はCYP450に作用していた。基質としてルシフェリンを用いた対照アッセイにおいて、ルシフェラーゼの阻害は検出されなかった(データは示されていない)。
【0180】
表1は、通常の基質およびD−ルシフェリン誘導体とのCYP450の反応に対する、ケトコナゾール、α−ナフトフラボンおよびスルファフェナゾールによる阻害を総括したものである。実施例2に記載したのと基本的に同じように二段階で、ルシフェリン誘導体を用いてCYP450アッセイを実施した。この場合、CYP450を約40nM〜10μMの濃度範囲の阻害剤に10分間曝露した後、D−ルシフェリン誘導体に曝露した。グラフパッド・プリズム(GraphPad Prism、商標)ソフトウエアを用いた非線型回帰分析により、IC50を算出した。*印を付けた記載事項は参照文献13から得た。
【0181】
【表1】

(実施例9:CYP450により触媒されるルシフェリン誘導体のルシフェリンへの変換)
この実施例では、シトクロムP450酵素によるLuc ME、H−Luc、Luc CEEおよびLuc 3PEのルシフェリンへの変換を、HPLC分析により確証した(図10)。100μMのLuc ME、H−Luc、Luc CEEおよびLuc 3PEを、150μlの反応容積中、37℃で、それぞれCYP1A2、CYP2C9、CYP1A1およびCYP3A4とともにインキュベートした。種々の時間間隔で、Tergitol(登録商標)を添加して0.1%(v/v)として反応を停止させ、液体窒素中で瞬間凍結した。各反応混合物の95マイクロリットルのアリコートを、HPLCにより分画した。HPLC法:高速液体クロマトグラフィーを、多波長吸収(HP1050 MWD)および蛍光検出器(HP 1046A)を装備したHP1050LCシステムで実施した。0.05MのKHPO/pH6(溶媒A)と80:20のアセトニトリル/水(溶媒B)との溶媒勾配を用いて、5μmのAdsorbosphere(登録商標) HS C18カラム(オールテック・アソシエイツ(Alltech Associates))で分離を達成した。用いた勾配条件は、15%B→95%B(10分間)であった。262または330nmにおける吸光度により基質を検出し、励起波長330nmにおける520nm(発光波長)の蛍光によりルシフェリンを検出した。ゼロ時点は、酵素を含まない対照のデオキシルシフェリンまたはルシフェリン6’メチルエーテルに含まれるルシフェリン含量を表す。
【0182】
(実施例10:既知のCYP450基質によるCYP450阻害の検出)
CYP450発光アッセイの基質としてのルシフェリン誘導体は、他のCYP450基質を検出するためのプローブとして有用であろう。同一のCYP450アイソフォームに対する2つの別個の基質は活性部位に関して競合すると思われるため、既知の基質や新規の基質がルシフェリン誘導体との発光反応を阻害する能力を観察することにより、既知の基質の特性を解析し、新規の基質を同定することができる。この仮説を試験するために、既知のCYP450基質を反応に添加した(タッサニーヤクル他(Tassaneeyakul, W. et al )(1993) 「ヒトシトクロムP450 1A1および1A2の基質と阻害剤プローブの特異性(S pecificity of substrate and inhibitor probes for human cytochromesP450 1A1 and 1A2)」, J. Pharmacol. Exp. Ther., 265, 401-407; マンシー他(Mancy, A. et al )「ヒトシトクロムP450活性部位の研究におけるツールとしてのジクロフェナクおよびその誘導体:P450 2Cの個別の有効性および部位選択性(Diclofenac and its derivatives as tools for studying human cytochromesp450 active sites: particular efficiency and regioselectivityof p450 2Cs)」, Biochemistry, 38, 14264-14270 )。試験した基質は、CYP2C9についてはジクロフェナク、CYP1A1およびCYP1A2についてはフェナセチンであった。これらの薬剤は用量依存的に反応を阻害し、したがってCYP450基質がこれらの発光アッセイにより検出され得るという予測を立証する(以下の表参照)。グラフパッド(GraphPad)PRISM(商標)(米国カリフォルニア州サンディエゴ)プログラムを用いた非線型回帰分析により、IC50を算出した。実施例2に記載したように反応を実施したが、但し、第一段階(CYP450反応)は、1ピコモルのCYP450を有する反応容積50マイクロリットルで実施した。第二段階では、50マイクロリットルのルシフェラーゼ反応物を添加して、最終濃度50μg/mLのプロメガ(Promega )のホタル(Photuris pennsylvanica)由来ホタルルシフェラーゼ組換え突然変異体(17)、200μMのATP、0.1%のtergitol(v/v)、4.0mMのMgSOおよび100mMのトリシン(pH8.4)とした。図11(a)〜(c)は、実際の阻害曲線を示す。
【0183】
【表2】

(実施例11:Cyp450/ウミシイタケの二段階の反応およびセレンテラジン誘導体の評価)
この実施例では、二段階の反応系で、セレンテラジンおよびセレンテラジン誘導体、メトキシ−セレンテラジンHHおよびセレンテラジンHHを用いて、P450活性を決定した。これらのアッセイでは、P450は2つの方式のうちの一方式で、セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体に作用する。第一の方式の反応では、ウミシイタケ型ルシフェラーゼの基質ではなくセレンテラジンの特徴的化学発光(ルシフェラーゼの非存在下での発光)も示さないセレンテラジン誘導体が、P450により変化してウミシイタケ型ルシフェラーゼの基質となり、化学発光を示す。この種類のセレンテラジン誘導体の一例は、メトキシセレンテラジンHHである。第二の方式の反応では、化学発光を示し、ウミシイタケ型ルシフェラーゼの拮抗基質であるセレンテラジンまたはセレンテラジンHHが、P450により変化してウミシイタケ型ルシフェラーゼによる化学発光および活性を失う。いずれの方式のアッセイにおいても、化学発光の変化により直接的に、またはウミシイタケ型ルシフェラーゼによる生物発光の変化により間接的に、P450活性を検出することができる。
【0184】
(I)セレンテラジン誘導体の合成
2−オキソ−3−フェニル−プロピオンアルデヒド: フェニルピルビン酸(25.0g、152.0mmol)を、乾燥ピリジンとともに2回蒸発させ、次に乾燥ピリジン(250mL)中に再溶解させた。この溶液に、無水酢酸(170mL、1.8mol)を添加し、溶液を周囲温度で15h撹拌した。TLCにより反応の進行をモニタリングした。反応が完了したら、溶液を蒸発させて粘性を有するシロップとした。このシロップをジクロロメタン(700mL)中に溶解し、次に0.1MのHCl水溶液で3回洗浄した(3×200mL)。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過して、蒸発させて、琥珀色のシロップとした。この生成物を、移動相としてジクロロメタンを用いてシリカゲル(250g)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、24gの乾燥固体を得た。この物質をTHF(150mL)中に溶解し、溶液を氷水浴中で冷却した。この溶液に、塩化オキサリル(51mL,580mmol)を滴下した。10分後、DMF(7.5mL)を反応混合物に添加し、反応物を0℃で4時間撹拌した。トルエン(100mL)を添加し、反応混合物を蒸発させて、濃厚な油状物を得た。この物質をトルエンとともに2回蒸発させて、粗生成物を真空下で5時間乾燥させた。乾燥物質をTHF−ジクロロメタンの1:1混合物(200mL)中に溶解し、溶液をアルゴン下で−78℃に冷却した(ドライアイス−イソプロパノール浴)。次に水素化トリ−tert−ブトキシアルミニウムリチウム(THF中の1.0M溶液を152mL、152mmol)を、反応物の内部温度が−60℃より低い状態であるような速度で添加した。添加完了後、反応物を−60℃より低い温度で10時間撹拌した。2MのHCl水溶液(100mL)を徐々に添加することにより反応をクエンチし、混合物を周囲温度まで加温させた。反応混合物をジクロロメタン(500mL)で希釈し、次に0.1MのHCl水溶液で2回洗浄した(2×100mL)。有機相を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過して、蒸発させて、琥珀色のシロップを得た。この物質を、移動相として95:5のヘプタン−酢酸エチルで出発して、次に9:1のヘプタン−酢酸エチルを用いて、シリカゲル(250g)上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、13.5g(80%)の所望の化合物を得た。
【0185】
2,8−ジベンジル−6−フェニル−7H−イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オン(セレンテラジンHH): エタノール(125mL)中の2−アミノ−3−ベンジル−5−フェニルピラジン20(2.0g、8.0mmol)および2−オキソ−3−フェニル−プロピオンアルデヒド(3.0g、16mmol)の溶液を、アルゴンガスで20分間、脱酸素化した。この溶液に濃塩酸(4.0mL)を添加し、反応混合物を18時間還流加熱した。反応物を周囲温度まで冷却し、次に蒸発させて、褐色固体とした。この粗生成物をエタノール(40mL)とともに粉砕して、その結果生じた固体物質を遠心分離で収集し、次に真空炉中で乾燥させて、1.28g(41%)の所望の化合物を得た。この物質は、HPLC分析の結果純度80%であった。
【0186】
2,8−ジベンジル−3−メトキシ−6−フェニル−イミダゾ[1,2−a]ピラジン(セレンテラジンHHメチルエーテル): アルゴン下で周囲温度の乾燥DMF(10mL)中の2,8−ジベンジル−6−フェニル−7H−イミダゾ[1,2−a]ピラジン−3−オン(0.25g、0.6mmol)の撹拌溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(1.1mL、6.0mmol)を全て一度に添加し、その後ヨウ化メチル(0.4mL、6.0mmol)を滴下した。1時間撹拌した後、TLC分析により反応が完了した。反応混合物をジクロロメタン(75mL)で希釈し、水で2回洗浄した。有機抽出物を無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過して、蒸発させて、褐色の油状物を得た。この粗製油を、移動相としてジクロロメタンを用いて、シリカゲル(30g)上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分をプールし、蒸発させて、200mg(77%)の所望の化合物を得た。
【0187】
(II)P450アッセイ
200mMのKPO、pH7.4(CYP3A4に関して)または100mMのKPO、pH7.4(CYP1A1、1A2、2B6、2D6、2E1に関して)または50mMのKPO、pH7.4(CYP2C8、2C19に関して)または25mMのKPO、pH7.4(CYP2C9に関して)または100mMのトリス、pH7.5(CYP2A6に関して)を含有するP450反応物(20マイクロリットル);バキュロウイルスで発現させたP450(1pmol)およびP450レダクターゼを含有する昆虫細胞ミクロソーム、あるいはP450を含まない対照反応物用の、野生型バキュロウイルスを感染させた昆虫細胞ミクロソーム;1.3mMのNADP;3.3mMのグルコース−6−リン酸;3.3mMのMgCl;0.4ユニット/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ;ならびに基質(3μMのセレンテラジン、3μMのセレンテラジンHHおよび10μMのメトキシ−セレンテラジンHH)を、37℃で60分間インキュベートした。
【0188】
80マイクロリットルの37.5mMのHepes、pH7.4;625mMのKCl;0.125mMのEDTA、pH8.0;0.25%のTriton(登録商標)X−100;0.125%のMazu(登録商標);1.25%グリセロール;0.25mg/mLゼラチンをP450反応物へ添加した直後に、P450により変化したセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体の化学発光を決定した。P450により変化したセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体の生物発光の検出のために、ウミシイタケルシフェラーゼ(1.2ng/mL)(ケミコン(Chemicon)から購入)を添加した。
【0189】
図12A〜Lに示したように、メチル−セレンテラジンHHをCYP1A1とともにインキュベーションした後、化学発光(パネルCおよびD)および生物発光(図12Aおよび図12B)のいずれにおいても大きな増大が認められた。CYP1A2、2B6および2C19に関しては化学発光および生物発光のわずかな増大が認められた(2〜5×)。セレンテラジンHHをCYP1A2および2E1とともにインキュベーションした後の化学発光(パネルGおよびH)および生物発光(図12Eおよび図12F)の両方において大きな低減が認められた。最後に、2C9および2A6以外の試験した全てのP450アイソザイムとともにセレンテラジンをインキュベーションした後、化学発光(図12Kおよび図12L)および生物発光(図12Iおよび図12J)の両いずれにおいても非常に大きい低減が認められた。
【0190】
(実施例12:酵母iPPアーゼの添加による、阻害作用を有する緩衝剤からのルシフェラーゼの保護)
本実施例は、阻害作用を有する緩衝剤の存在下における、ルシフェラーゼを用いるP450反応の阻害をiPPアーゼにより解除することについて例示する。本明細書中で定義する場合、「阻害作用を有する」とは、ルシフェラーゼ反応を阻害するのに十分な量のiPPを含む試薬(例えば緩衝剤)を指す。「阻害作用のない試薬」とは、ルシフェラーゼ反応に及ぼすiPPの作用によって測定した場合、iPPを実質的に含まない試薬である。iPP含量は、ホタルルシフェラーゼがiPPにより阻害され、阻害がiPPアーゼの添加により軽減され、そして阻害がPPiの添加により回復可能であるという知見により実験的に決定される。
【0191】
P450反応物(50マイクロリットル)には、1pmolのCYP1 A2(対照反応物にはSF9膜)、1.3mMのNADP、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.2U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.3mMのMgCl、0.01mMのLuc−ME、ならびに100mMのKPO、pH7.4(阻害作用を有する緩衝剤)または100mMのKPO、pH7.4(阻害作用のない緩衝剤)を含めた。反応物を37℃で1時間インキュベートした。国際公開第9914336号パンフレット(1999年3月25日公開)(この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)に記載されているように調製したホタル(Photuris pennsylvanica)由来の熱安定性ルシフェラーゼ(100mg/mL);400μMのATP、0.4%のPrionex(登録商標)、40mMのトリシン(pH7.8)、8mMのMgSO、0.2%のTergitol(登録商標)を含有する等容積の試薬を添加することにより、P450反応により生成されたルシフェリンの検出を実行した。iPPアーゼ(シグマ社(Sigma Company )、カタログ番号I1891)を一部の反応物に添加した。ベルソルド・オリオンのマイクロプレートルミノメーターを用いて、発光を検出した。
【0192】
図13および図15に示したように、酵母の無機ピロホスファターゼは、阻害作用を有する緩衝剤が用いられる場合、ルシフェラーゼのiPPによる阻害を解除するのに有効であった。
【0193】
(実施例13:無機ピロホスファターゼはピロホスファターゼの混入からルシフェラーゼを保護する)
本実施例では、3つの供給元からの慣用的方法により単離された熱安定性無機ピロホスファターゼ、すなわちニューイングランド・バイオラブス・インコーポレイテッド(New England Biolabs, Inc. 、米国マサチューセッツ州ビバリー所在、カタログ番号M0296)の熱安定性無機ピロホスファターゼ、シグマ(Sigma )からの市販の酵母無機ピロホスファターゼ(カタログ番号I1891)、ならびに高度好熱菌(Tth)から単離されたピロホスファターゼについて、ルシフェラーゼを用いたP450反応におけるiPP混入緩衝剤の作用を解除する際の効率に関して評価した。
【0194】
この実験において、P450反応混合物(50マイクロリットル)を調製した。反応物には、1pmolのCYP1A2(対照反応物ではSf9膜)、1.3mMのNADP、3.3mMのグルコース−6−リン酸、0.2U/mlのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ、3.3mMのMgCl、0.01mMのLuc−ME、ならびに100mMのKPO、pH7.4(阻害作用を有する緩衝剤)または100mMのKPO、pH7.4(阻害作用のない緩衝剤)を含めた。反応物を37℃で1時間インキュベートした。国際公開第9914336号パンフレット(1999年3月25日公開、この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)に記載されたように調製したホタル(Photuris pennsylvanica)由来の熱安定性ルシフェラーゼ100mg/mL、400mMのATP、0.6%のPrionex(登録商標)、40mMのトリシン(pH7.8)、8mMのMgSO、0.2%のTergitol(登録商標)、0.02%のMazu(登録商標)を含有する等容積の試薬の添加により、P450反応により生成されたルシフェリンの検出を実行した。慣用的方法で単離された、ニューイングランド・バイオラブス・インコーポレイテッドのiPPアーゼ(米国マサチューセッツ州ビバリー所在、カタログ番号M0296)、シグマのiPPアーゼ(カタログ番号I1891)、または高度好熱菌(Tth)のiPPアーゼを、一部の反応物に添加した。室温で30分間インキュベーションした後、ベルソルド・オリオンのマイクロプレートルミノメーターを用いて、発光を検出した。
【0195】
図14に示したように、様々な供給源からの無機ピロホスファターゼが、阻害作用を有するKPO緩衝剤がP450反応に用いられるときのルシフェラーゼの阻害を解除した。反応条件、温度および酵素濃度は、種々のiPPアーゼ酵素がiPP阻害を解除する際の効率に影響を及ぼすことが判明した(データは示されていない)。
【0196】
(実施例14:酵母iPPアーゼを用いた添加iPPからのルシフェラーゼの保護)
本実施例は、添加されたiPPの存在下におけるルシフェラーゼ反応阻害のiPPアーゼによる解除を例示し、阻害作用のない200mMのKPO緩衝剤に3mMのNaPPiを含めた場合の阻害能が、阻害作用を有する200mMのKPO緩衝剤の阻害能と同様であり、かつiPPアーゼが添加されたNaPPiの作用を解除することを示す。
【0197】
反応物には、100mMのトリシン(pH8.4)、10mMのMgSO、0.1%のTergitol(登録商標)、0.01%のMazu(登録商標)、50mg/mLの熱安定性ルシフェラーゼ(国際公開第9914336号パンフレット(1999年3月25日公開、この記載内容全体は、参照により本明細書中で援用される)に記載されたように調製したホタル(Photuris pennsylvanica)由来)、200mMのATP、0.2%のPrionex(登録商標)、0.5mMのルシフェリンを含めた。全ての反応物に、阻害作用のない200mMのKPO、pH7.4または阻害作用を有する200mMのKPO、pH7.4のいずれかを含めた。iPPアーゼ(シグマ(Sigma )、I1891)を一部の反応物に添加して最終濃度を2ユニット/mLとした。ピロリン酸ナトリウム(NaPPi)を一部の反応物に添加して、最終濃度を3mMとした。反応は室温で実施した。ベルソルド・オリオンのマイクロプレートルミノメーターを用いて、発光を検出した。
【0198】
図15に示したように、無機ピロホスファターゼは、阻害作用を有するKPO緩衝剤が用いられる場合のルシフェラーゼの阻害を解除するのに有効であった。メカニズムと結びつけなくとも、iPPを添加しなければ有効な緩衝剤にiPPを添加すると阻害作用を有する緩衝剤を再生し得ること、そしてその阻害はiPPアーゼの添加により解除可能であることを、本発明人等は観察した。これらの知見は、阻害剤がiPPであることを意味している。
【0199】
(実施例15:細胞を用いるCYP450発光アッセイ)
本実施例では、細胞を用いるCYP450発光アッセイについて説明する。CYP450遺伝子発現の誘導物質を、CYP450活性に及ぼす該誘導物質の作用に関して評価した。性的に成熟した雄のスプレーグ・ドーリー(Sprague Dawley)ラット由来の初代肝細胞を、ゼノテック・エルエルシー(Xenotech, LLC 、米国カンザス州カンザスシティ所在)から凍結保存状態で入手した。1日目に、細胞を供給元が推奨するとおりに解凍して、トリパンブルー排除法により、生細胞の割合(%)を概算した。約1.5×10個/cmの細胞を、コラーゲンでコーティングされた24ウエル組織培養プレートに播種した。2mMのL−グルタミンおよび1×ペニシリン−ストレプトマイシン(ライフ・テクノロジーズ・インコーポレイテッド(Life Technologies, Inc. )、米国メリーランド州ロックビル所在)を補充した0.3mL/ウエルのHepatoZyme‐SFM(製品名)培地中で、37℃、相対湿度95%、5%COで細胞を培養した。最初に細胞をプレートに6時間付着させてから、培地を、Matrigel(商標)(ビーディー・バイオサイエンシーズ(BD Biosciences)、米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在)を0.25mg/mlとなるように添加した新鮮な培地と交換した。培地は毎日交換した。
【0200】
細胞の播種後3日目に、培地を除去し、CYP450遺伝子の誘導物質または誘導物質のビヒクル対照を含有する培地0.3mlに交換した。4日目に培地を除去し、新鮮な誘導物質含有培地またはビヒクル対照培地に交換し、細胞が2日間曝露されるようにした。
【0201】
5日目に、誘導物質含有培地およびビヒクル対照培地を、発光原となるCYP450基質を含有する新鮮な培地に交換した。発光原基質とともにインキュベーションした期間の終了時に、2種類の発光アッセイを実施した。発光原基質は、おそらく受動的拡散により細胞に進入するので、いずれのアッセイ方式も可能であった。第一の種類のアッセイは、おそらくこれもまた受動的拡散によりCYP450反応のルシフェリン産物が細胞から出るので、可能である。第一の種類のアッセイに関しては、培地の試料を取り出して、等容積のルシフェリン検出試薬(200mMトリシン、pH8.4、ホタル(Photuris pennsylvanica)由来ホタルルシフェラーゼ熱安定性突然変異体100μg/mL(Ultra Glow(商標)ルシフェラーゼ、プロメガ社(Promega, Corp.)から入手可能)、400μMのATP、20mMのMgSOおよび2%のTergitol)と合わせて発光反応を開始する。第一の種類のアッセイについてブランクを決定するために、一部のウエルには発光原基質を入れず、ルシフェリン検出試薬とまず合わせてから培地のアリコートと合わせた。第二の種類のアッセイに関しては、等容積のルシフェリン検出試薬を細胞培地に直接添加して、CYP450活性を停止させ、細胞溶解物を生成して、発光反応を開始した。第二の種類の反応についてブランクを決定するために、一部のウエルには発光原基質を入れず、ルシフェリン検出試薬をまず添加してから、これらのウエルに発光原基質を添加した。いずれの種類の反応物のアリコートも、白色不透明の96ウエルプレートに移して、フルオスターオプティマ(Fluostar Optima 、製品名)ルミノメーター(ビーエムジー社(BMG, Inc. ))で発光を読取った。ブランクウエルの発光値を対応するウエルの値から差し引いた。結果を図16に示す。
【0202】
(実施例16:ルシフェラーゼ阻害剤を用いた発光シグナルの安定化)
本実施例では、2つのルシフェラーゼ競合阻害剤、2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)または2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)を評価して、発光シグナルの安定化に及ぼす作用を決定した。
【0203】
50マイクロリットルのCYP1A1反応物(0.5pmolの組換えCYP1A1酵素、30μMのルシフェリンクロロエチルエーテル、100mMのKPO、1.3mMのNADP、3.3mMのグルコース−6−リン酸、3.3mMのMgCl、0.02ユニットのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)を、37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、50マイクロリットルのルシフェリン検出試薬(100μg/mLの熱安定性ルシフェラーゼ(ホタル(Photuris pennsylvanica)由来)、400μMのATP、0.6%のPrionex、2ユニット/mLのiPPアーゼ、200mMのトリシン(pH8.4)、20mMのMgSO、2%のTergitol)を、100μMのAPMBTもしくは100μMのAMBTを含めるか、あるいは阻害剤を含めずに、各CYP1A1反応物に添加した。直後およびその後5分間隔で1時間、発光を読取った。結果を図17に示す。
【0204】
図17に示したように、阻害剤、例えば2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)によるルシフェラーゼの阻害により、CYP450発光アッセイにおける発光シグナルを安定化する。
【0205】
本発明をここに説明し、いくつかの具体例を用いて例示してきたが、当業者には、本発明の精神を逸脱することなく、種々の修正、例えば変更、追加および省略を本明細書中に開示されたものについてなし得ることが理解できよう。したがってこれらの修正も本発明に含まれること、そして本発明の範囲は添付の特許請求の範囲と合法的に一致し得る最も広い解釈によってのみ限定されることを意味している。
【0206】
【表3】


【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】CYP450の発光反応スキームを示す図。
【図2】D−ルシフェリン((4S)−4,5−ジヒドロ−2−(6−ヒドロキシ−ベンゾチアゾリル)−4−チアゾールカルボン酸)およびD−ルシフェリン誘導体の構造を示す図。
【図3A】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナー社(Turner)のReporter(商標)で発光を読取った。
【図3B】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜と置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナー社(Turner)のReporter(商標)で発光を読取った。
【図3C】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜と置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナー社(Turner)のReporter(商標)で発光を読取った。
【図3D】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜と置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで発光を読取った。
【図3E】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜と置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナー社(Turner)のReporter(商標)で発光を読取った。
【図3F】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜またはHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで発光を読取った。
【図3G】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜またはHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで発光を読取った。
【図3H】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜またはHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで発光を読取った。
【図3I】D−ルシフェリン誘導体を用いた二段階のCYP450発光反応を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体をCYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照においては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜またはHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナー社(Turner)のReporter(商標)またはベルソルド・オリオン(Berthold Orion)のルミノメーターで発光を読取った。
【図4】二段階のCYP450発光反応におけるCYP450/基質インキュベーション時間依存性を示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体を37℃でCYP450反応混合物中でグラフに示した時間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450を含まない対照に関しては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOと置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ターナーのReporter(パネルAおよびC)またはベルソルド・オリオン(パネルB)のルミノメーターで発光を読取った。
【図5】二段階のCYP450発光反応から発生する光の時間経過を示すグラフ。 Luc MEを、CYP450反応混合物中で37℃で60分間インキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。CYP450の対照については、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOと置き換えた。ターナーのReporterルミノメーターで、反応物を合わせた後3分で発光の読取りを開始し、284分間、グラフに示したように間をおいて次々と読取りを実施した。
【図6】室温での一段階のCYP450発光アッセイを示すグラフ。 Luc MEを、CYP450およびルシフェラーゼ反応混合物を合わせた中で室温(〜22℃)でインキュベートした。CYP450を含まない対照に関しては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOと置き換えた。CYP450およびルシフェラーゼ反応混合物を同時にCYP450反応混合物に添加し、発生した光を直ちに読取った(時間=0)。次にターナーのReporterルミノメーターで15.5時間、4.25分毎に読み取りを実行した。
【図7】37℃での一段階のCYP450発光アッセイを示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体を、CYP450およびルシフェラーゼ反応混合物を合わせた中で37℃でインキュベートした。CYP450を含まない対照に関しては、CYP450 Sf9細胞ミクロソームをHOと置き換えた。CYP450およびルシフェラーゼ反応混合物を同時にCYP450反応混合物に添加し、発生した光を直ちに読取った(時間=0)。次にターナーの20/20ルミノメーターで3時間、10分毎に読み取りを実行した。
【図8】二段階のCYP450発光反応におけるプール化ヒト肝臓ミクロソームについて示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体を、37℃で60分間、プール化ヒト肝臓ミクロソームとともにCYP450反応混合物中でインキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。対照に関しては、肝臓ミクロソームを対照の(CYP450を含まない)Sf9細胞膜と置き換えた。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオンのルミノメーターで発光を読取った。スルファフェナゾール、ケトコナゾールおよびα−ナフトフラボンのビヒクルは、HO中の1%アセトニトリルおよび1mg/mlウシ血清アルブミンとした。「nt」の値は、ビヒクル対照である。反応物中のスルファフェナゾール、ケトコナゾールおよびα−ナフトフラボンの濃度は、それぞれ100μM、100μMおよび10μMであった。
【図9】CYP450デピコリニラーゼ活性の二段階の検出について示すグラフ。 D−ルシフェリン誘導体luc2PE、luc3PEおよびluc4PEを、37℃で60分間、CYP450反応混合物中でインキュベートした後、ルシフェラーゼ反応混合物と合わせた。この図において、「Sf9」と表示されたバーは、対照である。これらはCYP450発現を伴わないSf9細胞膜である。反応物を合わせて12分以内に、ベルソルド・オリオンのルミノメーターで発光を読取った。
【図10】CYP450により触媒されるルシフェリン誘導体のルシフェリンへの変換について示すグラフ。 ルシフェリン誘導体(100μM)を、CYP450反応混合物中でグラフに示した時間インキュベートした。各インキュベーション時間の終了時に、反応混合物を終濃度0.1%(v/v)のTergitolでクエンチして、次に液体窒素中で凍結させた。反応混合物の95μlアリコートをHPLCにより分析し、330nmでの励起および520nmでの放出を示す蛍光によりルシフェリンを検出した。ゼロ時間は、対照(酵素を含まない)についてのルシフェリン誘導体中のルシフェリン含量を表す。
【図11】既知のCYP450基質によるCYP450阻害の検出について示すグラフ。 CYP450発光アッセイの基質としてのルシフェリン誘導体を、他のCYP450基質を検出するためのプローブとして評価した。試験したCYP450基質は、CYP2C9についてはジクロフェナク、CYP1A1およびCYP1A2についてはフェナセチンであった。反応は実施例1に記載されているように実施したが、但し、第一段階(CYP450反応)は、1ピコモルのCYP450を含有する50マイクロリットルの反応容積中で実施した。第二段階では、50マイクロリットルのルシフェラーゼ反応物を添加して、最終濃度50μg/mLのUltra Glo(商標)ルシフェラーゼ、200μMのATP、0.1%のTergitol(v/v)、4.0mMのMgSOおよび100mMのトリシン、pH8.4とした。パネルAは、基質としてLuc MEを用いたフェナセチンによるCYP1A2の阻害を示す。パネルBは、基質としてLuc CEEを用いたフェナセチンによるCYP1A1の阻害を示す。パネルCは、基質としてHLucを用いたジクロフェナクによるCYP2C9の阻害を示す。
【図12A】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、メトキシ−セレンテラジンHHをインキュベーションした後の、ウミシイタケルシフェラーゼ含有反応物中に生成されるメトキシ−セレンテラジンHHからの生物発光(相対光単位:RLU)を示す。
【図12B】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。メトキシ−セレンテラジンHHおよびP450を含有する反応物における生物発光の増加倍率(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図12C】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、メトキシ−セレンテラジンHHをインキュベーションした後に生成されるメトキシ−セレンテラジンHHからの化学発光(RLU)を示す。
【図12D】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。メトキシ−セレンテラジンHHおよびP450を含有する反応物における化学発光の増加倍率(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図12E】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、セレンテラジンHHをインキュベーションした後の、ウミシイタケルシフェラーゼ含有反応物中に生成されるセレンテラジン−HHからの生物発光(RLU)を示す。
【図12F】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。セレンテラジンHHおよびP450を含有する反応物における生物発光の減少倍率(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図12G】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、セレンテラジンHHをインキュベーションした後に生成されるセレンテラジン−HHからの化学発光(RLU)を示す。
【図12H】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。セレンテラジンHHおよびP450を含有する反応物における化学発光の減少(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図12I】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、セレンテラジンをインキュベーションした後の、ウミシイタケルシフェラーゼ含有反応物中に生成されるセレンテラジンからの生物発光(RLU)を示す。
【図12J】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。セレンテラジンおよびP450を含有する反応物における生物発光の減少(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図12K】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。種々のP450アイソザイムとともに(+)またはP450アイソザイムを含めずに(−)、セレンテラジンをインキュベーションした後に生成されるセレンテラジンからの化学発光(RLU)を示す。
【図12L】化学発光および生物発光の検出による、メトキシ−セレンテラジンHH、セレンテラジンHHおよびセレンテラジンに及ぼすP450の作用について示すグラフ。セレンテラジンおよびP450を含有する反応物における化学発光の減少(+P450 RLU/−P450 RLU)を示す。
【図13】酵母iPPアーゼを用いた、阻害作用を有する緩衝液からのルシフェラーゼの保護について示すグラフ。 酵母の無機ピロホスファターゼは、阻害作用を有するKPO緩衝液が用いられる場合、ルシフェラーゼのiPPによる阻害を解除するのに有効であることが判明した。
【図14】無機ピロホスファターゼがピロホスファターゼの混入からルシフェラーゼを保護することについて示すグラフ。 種々の供給源由来の無機ピロホスファターゼが、阻害作用を有するKPO緩衝液が用いられる場合、ルシフェラーゼのiPPによる阻害を解除することが判明した。
【図15】iPPアーゼを用いた、添加iPPからのルシフェラーゼの保護について示すグラフ。 無機ピロホスファターゼは、ルシフェラーゼを用いる反応にiPPが添加される場合、該反応のiPPによる阻害を解除するのに有効であることが判明した。
【図16】細胞を用いるCYP450発光アッセイを示すグラフ。 初代ラット肝細胞を、CYP450遺伝子発現の誘導物質:5μMの3−メチルコラントレン(MC)、50μMのデキサメタゾン(Dex)または50μMのリファンピシン(Rif)およびそれらのビヒクル対照としてそれぞれ0.05、0.1および0.1%のDMSO(誘導されない);ならびにCYP450の阻害剤:100μMのトロレアンドマイシン(Tro)で2日間処理した。この誘導培地を、次に、肝細胞培地中に溶解した100μMのルシフェリン−CEE(パネルAおよびB)、200μMのルシフェリン−BE、または200μMのルシフェリン−BE+Tro各300マイクロリットルに置き換えて、4時間インキュベートさせた。次に100マイクロリットルの培地をウエルから取り出してルシフェリン検出試薬と合わせ(実施例15参照)、かつ200マイクロリットルのルシフェリン検出試薬を細胞上の残りの培地200マイクロリットルに添加した。200マイクロリットルの培地反応物(パネルA&C)および細胞溶解物反応物(パネルB&D)からの発光を定量した。
【図17】ルシフェラーゼ阻害剤を用いた発光シグナルの安定化を示すグラフ。 阻害剤2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)によるルシフェラーゼの阻害は、CYP450発光アッセイにおける発光シグナルを安定化する。50マイクロリットルのCYP1A1反応物(0.5pmolの組換えCYP1A1酵素、30μMのルシフェリンクロロエチルエーテル、100mMのKPO、1.3mMのNADP、3.3mMのグルコース−6−リン酸、3.3mMのMgCl、0.02ユニットのグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)を、37℃で20分間インキュベートした。インキュベーション後、50マイクロリットルのルシフェリン検出試薬(100μg/mLの熱安定性ルシフェラーゼ(ホタル類(photuris pennsylvanica)由来)、400μMのATP、0.6%のPrionex(登録商標)、2ユニット/mLのiPPアーゼ、200mMのトリシン、pH8.4、20mMのMgSO、2%のTergitol)に100μMのAPMBT、100μMのAMBTを含めて、または阻害剤を含めずに、CYP1A1反応物の各アリコートに添加した。直ちに、そしてその後5分間隔で1時間、発光を読取った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞におけるシトクロムP450酵素の活性を測定する方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)細胞を発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより混合物を作製すること、ならびに
(c)前記混合物の発光を測定することにより細胞のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項2】
前記細胞が生物発光酵素を発現する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程(b)において細胞をさらに溶解試薬と接触させる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細胞を前記工程(b)の前に溶解させる請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞を前記工程(c)の前に溶解させる請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞を最初に前記発光原分子と接触させて一次反応混合物を作製した後、前記生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記二次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記二次反応混合物がピロホスファターゼをさらに含む請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
動物組織におけるシトクロムP450酵素の活性を測定する方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)動物組織を発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより混合物を作製すること、ならびに
(c)前記混合物の発光を測定することにより前記組織のシトクロムP450の活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項12】
前記組織を最初に前記発光原分子と第1の所定時間接触させた後、前記生物発光酵素と接触させて二次混合物を提供する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二次反応混合物が界面活性剤を含む請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記界面活性剤が非イオン性である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記二次反応混合物がピロホスファターゼをさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
動物におけるシトクロムP450酵素の活性を測定する方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)前記発光原分子を動物に投与すること、
(c)前記動物から生物学的試料を得ること、
(d)前記生物学的試料を生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(e)発光を測定することにより前記動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項18】
前記反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記界面活性剤が非イオン性である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記反応混合物がピロホスファターゼをさらに含む請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
生物発光酵素導入遺伝子を有するトランスジェニック動物におけるシトクロムP450酵素の活性を測定する方法であって、以下の:
(a)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(b)生物発光酵素導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に前記発光原分子を投与すること、および
(c)前記トランスジェニック動物由来の組織の発光を測定することにより前記動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項23】
前記生物発光酵素導入遺伝子がルシフェラーゼ導入遺伝子である請求項22に記載の方法。
【請求項24】
シトクロムP450活性に及ぼす化合物の作用について化合物をスクリーニングする方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を提供すること、
(c)化合物、発光原分子、少なくとも1つのシトクロムP450酵素、および生物発光酵素を接触させることにより反応混合物を作製すること、ならびに
(d)前記反応混合物の発光を測定することにより前記化合物と前記シトクロムP450酵素との相互作用に起因するシトクロムP450活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法。
【請求項25】
前記化合物、前記発光原分子、前記シトクロムP450酵素および前記生物発光酵素をほぼ同時に接触させることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記化合物、前記発光原分子および前記少なくとも1つのシトクロムP450酵素を接触させて一次反応混合物を作製した後、前記生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記二次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記工程(c)がピロホスファターゼをさらに含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させて一次反応混合物を作製し、次に前記一次反応混合物を前記発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製し、そして次に前記二次反応混合物を生物発光酵素と接触させて三次反応混合物を作製する請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記三次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項32に記載の方法。
【請求項34】
細胞のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供する工程、
(b)細胞を試験化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させる工程であって、前記発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であることを特徴とする工程、ならびに
(c)前記細胞からの発光を測定し、前記試験化合物に曝露されていない第2の細胞と比較することにより、前記試験化合物への前記細胞の曝露に起因する前記細胞のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項35】
前記細胞が前記生物発光酵素を発現する請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記細胞を最初に前記化合物と接触させて一次反応混合物を作製した後、前記発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製する請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記二次反応混合物が生物発光酵素をさらに含む請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記生物発光酵素が所定時間後に前記二次反応混合物に添加される請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記二次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記工程(b)がピロホスファターゼをさらに含む請求項34に記載の方法。
【請求項42】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項41に記載の方法。
【請求項43】
動物組織のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験化合物を提供する工程、
(b)動物組織を前記試験化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させる工程であって、前記発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であることを特徴とする工程、ならびに
(c)前記組織からの発光を測定し、前記試験化合物に曝露されていない対照組織と比較することにより、前記試験化合物への前記組織の曝露に起因する組織のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項44】
前記動物組織が前記生物発光酵素を発現する請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組織を前記試験化合物と接触させて一次混合物を作製した後、前記発光原分子と接触させて二次混合物を作製する請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記二次混合物が生物発光酵素をさらに含む請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記生物発光酵素が所定時間後に前記二次反応混合物に添加される請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記二次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記工程(b)がピロホスファターゼをさらに含む請求項43に記載の方法。
【請求項51】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項50に記載の方法。
【請求項52】
動物におけるシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)試験化合物を動物に投与すること、
(c)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を前記動物に投与すること、
(d)前記動物から生物学的試料を得ること、
(e)前記生物学的試料を生物発光酵素と接触させること、および
(f)前記生物学的試料からの発光を測定し、前記試験化合物に曝露されていない動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、前記試験化合物への前記動物の曝露後の前記動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項53】
前記工程(c)は前記工程(b)の後に所定時間が経過した後で実施される請求項52に記載の方法。
【請求項54】
試験化合物への曝露の直前に動物から生物学的試料が採取される請求項52に記載の方法。
【請求項55】
生物学的試料が血液、血清、胆汁、尿、糞便または組織を含む請求項52に記載の方法。
【請求項56】
生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物におけるシトクロムP450酵素の活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)生物発光酵素の導入遺伝子を有するトランスジェニック動物に試験化合物を投与すること、
(c)シトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子を動物に投与すること、および
(d)トランスジェニック動物からの組織の発光を測定し、試験化合物に曝露されていない別のトランスジェニック動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、動物を試験化合物に曝露した後の該動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項57】
前記工程(c)は前記工程(b)の後に所定時間が経過した後で実施される請求項56に記載の方法。
【請求項58】
生物発光酵素の導入遺伝子がルシフェラーゼ導入遺伝子である請求項56に記載の方法。
【請求項59】
シトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)スクリーニングしようとする化合物を(i)シトクロムP450基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体である発光原分子;(ii)1つまたは複数のシトクロムP450酵素;および(iii)1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより各々1つまたは複数の化合物を有する反応混合物を作製すること、ならびに
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450の酵素活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法。
【請求項60】
化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させて一次反応混合物を作製し、次に一次反応混合物を発光原分子と接触させて二次反応混合物を作製し、そして次に二次反応混合物を生物発光酵素と接触させて三次反応混合物を作製する請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記三次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項61に記載の方法。
【請求項63】
化合物を最初に1つまたは複数のシトクロムP450酵素および発光原分子と接触させて一次反応混合物を作製した後、1つまたは複数の生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記二次反応混合物が界面活性剤をさらに含む請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記界面活性剤が非イオン性である請求項63に記載の方法。
【請求項66】
化合物を1つまたは複数のシトクロムP450酵素および発光原分子と同時にまたは同時期に接触させて一次反応混合物を作製した後、1つまたは複数の生物発光酵素と接触させて二次反応混合物を作製する請求項59に記載の方法。
【請求項67】
前記工程(b)がピロホスファターゼをさらに含む請求項59に記載の方法。
【請求項68】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項67に記載の方法。
【請求項69】
細胞のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、および
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450の酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項70】
前記細胞が生物発光酵素を発現する請求項69に記載の方法。
【請求項71】
外来の供給源由来の生物発光酵素が用いられる請求項69に記載の方法。
【請求項72】
工程(b)および前記工程(c)のうち少なくともいずれかがピロホスファターゼをさらに含む請求項69に記載の方法。
【請求項73】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項72に記載の方法。
【請求項74】
細胞を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させ、次に生物発光酵素と第2の所定時間接触させる請求項69に記載の方法。
【請求項75】
第2の所定時間において界面活性剤が存在する請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項75に記載の方法。
【請求項77】
細胞を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、そして次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる請求項75に記載の方法。
【請求項78】
第3の所定時間において界面活性剤が存在する請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤である請求項78に記載の方法。
【請求項80】
細胞を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる請求項69に記載の方法。
【請求項81】
細胞、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる請求項69に記載の方法。
【請求項82】
動物組織のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および1つまたは複数の生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項83】
組織が少なくとも1つの生物発光酵素を発現する請求項82に記載の方法。
【請求項84】
組織を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させた後、生物発光酵素と接触させる請求項82に記載の方法。
【請求項85】
第1の所定時間の後に界面活性剤を添加する請求項84に記載の方法。
【請求項86】
界面活性剤および生物発光酵素を同時に添加する請求項85に記載の方法。
【請求項87】
界面活性剤を生物発光酵素の添加の前に添加する請求項85に記載の方法。
【請求項88】
組織を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、そして次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる請求項82に記載の方法。
【請求項89】
第2の所定時間の後に界面活性剤を添加する請求項88に記載の方法。
【請求項90】
界面活性剤および生物発光酵素を同時に添加する請求項89に記載の方法。
【請求項91】
界面活性剤を生物発光酵素の添加の前に添加する請求項89に記載の方法。
【請求項92】
組織を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる請求項82に記載の方法。
【請求項93】
組織、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる請求項82に記載の方法。
【請求項94】
前記工程(b)または前記工程(c)が(iv)ピロホスファターゼをさらに含む請求項82に記載の方法。
【請求項95】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項94に記載の方法。
【請求項96】
動物のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)生きている硬骨魚を、スクリーニングしようとする化合物、発光原分子および生物発光酵素と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、発光原分子はシトクロムP450の基質でありかつ生物発光酵素の基質前駆体であり、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)試験化合物を含む反応混合物の発光を測定して試験化合物を含まない対照混合物と比較することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項97】
前記硬骨魚がトランスジェニック体であり、かつ生物発光酵素を発現する請求項96に記載の方法。
【請求項98】
硬骨魚を最初に化合物および発光原分子と第1の所定時間接触させた後、生物発光酵素と接触させる請求項96に記載の方法。
【請求項99】
硬骨魚を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子と第2の所定時間接触させ、その次に生物発光酵素と第3の所定時間接触させる請求項96に記載の方法。
【請求項100】
硬骨魚を最初に化合物と第1の所定時間接触させ、次に発光原分子および生物発光酵素と第2の所定時間接触させる請求項96に記載の方法。
【請求項101】
硬骨魚、化合物、発光原分子および生物発光酵素を同時に接触させる請求項96に記載の方法。
【請求項102】
前記工程(b)または前記工程(c)が(iv)ピロホスファターゼをさらに含む請求項96に記載の方法。
【請求項103】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項102に記載の方法。
【請求項104】
シトクロムP450酵素活性に及ぼす物質の作用を決定するためのキットであって、以下の:
(a)シトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体である1つまたは複数の発光原分子、および
(b)キットを使用するための使用説明書
を含むキット。
【請求項105】
1つまたは複数の生物発光酵素をさらに含む請求項104に記載のキット。
【請求項106】
前記生物発光酵素がルシフェラーゼである請求項103に記載のキット。
【請求項107】
前記生物発光酵素がホタルルシフェラーゼまたはウミシイタケルシフェラーゼである請求項105に記載のキット。
【請求項108】
ATPおよびマグネシウムイオンをさらに含む請求項104に記載のキット。
【請求項109】
界面活性剤をさらに含む請求項108に記載のキット。
【請求項110】
前記界面活性剤が非イオン性である請求項109に記載のキット。
【請求項111】
ピロホスファターゼをさらに含む請求項109に記載のキット。
【請求項112】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項111に記載のキット。
【請求項113】
前記発光原分子がシトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体であるD−ルシフェリン誘導体である、請求項104に記載のキット。
【請求項114】
前記ルシフェリン誘導体が次式:
【化1】

(式中、
は、水素、ヒドロキシル、アミノ、C1−20アルコキシ、置換C1−20アルコキシ、C2−20アルケニルオキシ、置換C2−20アルケニルオキシ、ハロゲン化C2−20アルコキシ、置換ハロゲン化C2−20アルコキシ、C3−20アルキニルオキシ、置換C3−20アルキニルオキシ、C3−20シクロアルコキシ、置換C3−20シクロアルコキシ、C3−20シクロアルキルアミノ、置換C3−20シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、置換C1−20アルキルアミノ、ジC1−20アルキルアミノ、置換ジC1−20アルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、置換C2−20アルケニルアミノ、ジC2−20アルケニルアミノ、置換ジC2−20アルケニルアミノ、C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、置換C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、置換C3−20アルキニルアミノ、ジC3−20アルキニルアミノ、置換ジC3−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノ、置換C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノまたは置換C3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノを表し、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、CHOH、COR11(ここで、R11はH、OH、C1−20アルコキシド、C2−20アルケニルまたはNR1213(ここで、R12およびR13は独立してHまたはC1−20アルキルを表す)を表す)または−OM(ここで、Mはアルカリ金属またはその製薬上許容可能な塩を表す)を表し、
は、H、C1−6アルキル、C1−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表すが、
ただし、同時にRがOHまたはNHであり、RがHではあり、RがCOR11であり、R11がOHであり、RおよびRがともに炭素であり、かつRおよびRがともにSである(ルシフェリンおよびアミノルシフェリン)ということはない)
を有する請求項113に記載のキット。
【請求項115】
前記発光原分子がセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を含む請求項114に記載のキット。
【請求項116】
前記セレンテラジン誘導体が次式:
【化2】

(式中、
は、C1−20アルキル、分枝鎖C3−20アルキル、C3−20シクロアルキル、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキルであり、かつ
、RおよびRは、独立して水素、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、分枝鎖C3−20アルキル、アリール、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキル、アリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアリールである)
を有する請求項115に記載のキット。
【請求項117】
前記RがアリールあるいはC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはC1−20ジアルキルアミノで置換されたアリールである請求項116に記載のキット。
【請求項118】
可逆的ルシフェラーゼ阻害剤をさらに含む請求項104に記載のキット。
【請求項119】
前記可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−46−メチルベンゾチアゾール(AMBT)である請求項118に記載のキット。
【請求項120】
シトクロムP450酵素の基質でありかつルシフェラーゼ酵素の基質前駆体であるD−ルシフェリン誘導体。
【請求項121】
請求項120に記載のD−ルシフェリン誘導体を含む組成物。
【請求項122】
ピロホスファターゼをさらに含む請求項121に記載の組成物。
【請求項123】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項122に記載の組成物。
【請求項124】
次式:
【化3】

(式中、
は、水素、ヒドロキシ、C1−20アルコキシまたはC1−20アルケニルオキシを表し、この場合、アルコキシおよびアルケニルオキシはハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アジド、ヘテロアリール、またはハロアルキルで置換されたアリールで置換されており、あるいは
は、C3−20アルキニルオキシ、シクロアルコキシ、シクロアルキルアミノ、C1−20アルキルアミノ、ジC1−20アルキルアミノ、C2−20アルケニルアミノ、ジC2−20アルケニルアミノ、C2−20アルケニルC1−20アルキルアミノ、C3−20アルキニルアミノ、ジC3−20アルキニルアミノ、C3−20アルキニルC1−20アルキルアミノまたはC3−20アルキニルC2−20アルケニルアミノを表し、この場合、上記の基は各々任意選択で、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、アジド、ヘテロアリール、またはハロアルキルで置換されたアリールで置換されており、
およびRは、独立してCまたはNを表し、
およびRは、独立してS、O、NR(ここでRは水素またはC1−20アルキルを表す)、CR10(ここで、RおよびR10は独立してH、C1−20アルキルまたはフッ素を表す)を表し、
は、CHOH、COR11(ここで、R11は水素、ヒドロキシ、C2−20アルケニルを表す)または−OM(ここで、Mはアルカリ金属またはその製薬上許容可能な塩を表す)を表し、
は、水素、C1−6アルキル、C2−20アルケニル、ハロゲンまたはC1−6アルコキシドを表すが、
ただし、
がヒドロキシである場合、Rが水素、R11がヒドロキシ、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(ルシフェリン)ということはなく、
が水素である場合、Rが水素、R11がヒドロキシ、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(デヒドロルシフェリン)ということはなく、そして
がヒドロキシである場合、Rが水素、RがCHOH、RおよびRがともに炭素、かつRおよびRがともにSである(ルシフェロール)ということはない)を有するD−ルシフェリン誘導体。
【請求項125】
以下の:
ルシフェリン6’2−クロロエチルエーテル、
ルシフェリン6’4−ピコリニルエーテル、
ルシフェリン6’4−トリフルオロメチルベンジルエーテル、
ルシフェリン6’2−ピコリニルエーテル、または
ルシフェリン6’3−ピコリニルエーテル
である請求項124に記載の化合物。
【請求項126】
以下の:
ルシフェリン6’2−クロロエチルエーテル、
ルシフェリン6’ベンジルエーテル、
ルシフェリン6’4−ピコリニルエーテル、
ルシフェリン6’4−トリフルオロメチルベンジルエーテル、
ルシフェリン6’フェニルエチルエーテル、
ルシフェリン6’ゲラニルエーテル、
ルシフェリン6’プレニルエーテル、
ルシフェリン6’2−ピコリニルエーテル、および
ルシフェリン6’3−ピコリニルエーテル
からなる群から選択される化合物。
【請求項127】
以下の:
ルシフェリン6’ベンジルエーテル、
ルシフェリン6’フェニルエチルエーテル、
ルシフェリン6’ゲラニルエーテル、および
ルシフェリン6’プレニルエーテル、
からなる群から選択される請求項126に記載の化合物。
【請求項128】
以下の:
ルシフェリン6’2−クロロエチルエーテル、
ルシフェリン6’4−ピコリニルエーテル、
ルシフェリン6’4−トリフルオロメチルベンジルエーテル、
ルシフェリン6’2−ピコリニルエーテル、および
ルシフェリン6’3−ピコリニルエーテル
からなる群から選択される請求項125に記載の化合物。
【請求項129】
請求項124に記載のD−ルシフェリン誘導体を含む組成物。
【請求項130】
ピロホスファターゼをさらに含む請求項129に記載の組成物。
【請求項131】
前記ピロホスファターゼが無機ピロホスファターゼである請求項130に記載の組成物。
【請求項132】
P450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450の基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)前記セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を少なくとも1つのシトクロムP450酵素と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の化学発光を測定することによりシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項133】
細胞におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)細胞を前記セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製すること、および
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより前記細胞のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項134】
前記工程(b)の細胞をさらに溶解試薬と接触させる請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記細胞を工程(b)の前に溶解させる請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記細胞を工程(c)の前に溶解させる請求項133に記載の方法。
【請求項137】
動物組織におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)動物組織を前記セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体および生物発光酵素と接触させることにより混合物を作製すること、ならびに
(c)混合物の発光を測定することにより組織のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項138】
動物におけるシトクロムP450酵素活性の測定方法であって、以下の:
(a)P450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(b)前記セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を動物に投与すること、
(c)前記動物から生物学的試料を得ること、および
(d)前記試料の化学発光を測定することにより前記動物のシトクロムP450活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項139】
シトクロムP450活性に及ぼす化合物の作用に関する化合物のスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供すること、
(b)シトクロムP450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を提供すること、
(c)前記化合物、前記セレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体およびシトクロムP450酵素を接触させることにより反応混合物を作製すること、ならびに
(d)反応混合物の化学発光を測定することにより、化合物とシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450活性(もしあれば)を決定すること
を包含する方法。
【請求項140】
細胞のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、試験化合物、およびシトクロムP450基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させる工程、ならびに
(c)細胞からの化学発光を測定し、試験化合物に曝露されていない第2の細胞と比較することにより、試験化合物への細胞の曝露の結果得られる細胞のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項141】
動物組織のシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、試験化合物、およびシトクロムP450基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させる工程、ならびに
(c)組織からの化学発光を測定し、前記試験化合物に曝露されていない対照組織と比較することにより、試験化合物への組織の曝露の結果得られる組織のシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項142】
動物におけるシトクロムP450酵素活性に及ぼす化合物の作用を決定する方法であって、以下の:
(a)試験するための化合物を提供すること、
(b)試験化合物を動物に投与すること、
(c)シトクロムP450基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体を投与すること、
(d)前記動物から生物学的試料を得ること、および
(e)前記生物学的試料からの化学発光を測定し、試験化合物に曝露されていない動物から採取された第2の生物学的試料と比較することにより、試験化合物への動物の曝露後の動物のシトクロムP450酵素活性を決定すること
を包含する方法。
【請求項143】
シトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)スクリーニングしようとする化合物を(i)シトクロムP450基質であり、かつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体;および(ii)1つまたは複数のシトクロムP450酵素と接触させることであって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項144】
細胞のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)細胞を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項145】
動物組織のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)CYP450活性を有する動物組織を提供する工程、
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)動物組織を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)反応混合物の化学発光を測定することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項146】
動物のシトクロムP450活性に及ぼす複数の化合物の作用を決定するために複数の化合物を迅速にスクリーニングするためのハイスループットのスクリーニング方法であって、以下の:
(a)スクリーニングするための化合物を提供する工程、
(b)生きている硬骨魚を、スクリーニングしようとする化合物、およびシトクロムP450の基質でありかつ化学発光性であるセレンテラジンまたはセレンテラジン誘導体と接触させることにより反応混合物を作製する工程であって、反応混合物は各々1つまたは複数の化合物を有することを特徴とする工程、ならびに
(c)試験化合物を含む反応混合物の化学発光を測定して試験化合物を含まない対照混合物と比較することにより、1つまたは複数の化合物と1つまたは複数のシトクロムP450酵素との相互作用の結果得られるシトクロムP450酵素活性(もしあれば)を決定する工程
を包含する方法。
【請求項147】
前記セレンテラジン誘導体が次式:
【化4】

(式中、
は、C1−20アルキル、分枝鎖C3−20アルキル、C3−20シクロアルキル、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキルであり、そして
、RおよびRは、独立して水素、C1−20アルキル、C3−20シクロアルキル、分枝鎖C3−20アルキル、アリール、アラルキル、C1−20アルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたC1−20アルキル、アラルキルであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアラルキル、アリールであってC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはジC1−20アルキルアミノで置換されたアリールである)
を有する請求項132〜146のいずれか一項に記載の方法。
【請求項148】
がアリール、あるいはC1−20アルコキシ、ヒドロキシ、ハロゲン、C1−20アルキルアミノまたはC1−20ジアルキルアミノで置換されたアリールである請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記セレンテラジン誘導体がセレンテラジンHH、メトキシセレンテラジンHHまたはセレンテラジンである請求項147に記載の方法。
【請求項150】
ルシフェラーゼを用いた反応混合物により生じる発光シグナルの安定性を増強する方法であって、ルシフェラーゼを、ルシフェラーゼ阻害剤の非存在下におけるルシフェラーゼを用いた同様の反応混合物中で生じる発光シグナルに比して安定性を増強し、発光シグナルの寿命を延長するのに有効な量の可逆的ルシフェラーゼ阻害剤と接触させることを包含する方法。
【請求項151】
前記可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が拮抗阻害剤である請求項150に記載の方法。
【請求項152】
前記可逆的ルシフェラーゼ阻害剤が2−(4−アミノフェニル)−6−メチルベンゾチアゾール(APMBT)または2−アミノ−6−メチルベンゾチアゾール(AMBT)を含む請求項150に記載の方法。
【請求項153】
阻害剤の有効量が反応混合物中約1μM〜約1mMの範囲である請求項150に記載の方法。
【請求項154】
阻害剤の有効量が反応混合物中約1μM〜約500μMの範囲である請求項150に記載の方法。
【請求項155】
阻害剤の有効量が反応混合物中約10μM〜約200μMの範囲である請求項150に記載の方法。
【請求項156】
阻害剤の有効量が反応混合物中約100μMである請求項150に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図3F】
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【図3G】
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【図3H】
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【図3I】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図12C】
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【図12D】
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【図12E】
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【図12F】
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【図12G】
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【図12H】
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【図12I】
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【図12J】
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【図12K】
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【図12L】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−281575(P2008−281575A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−146920(P2008−146920)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【分割の表示】特願2004−537859(P2004−537859)の分割
【原出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願人】(593089149)プロメガ コーポレイション (57)
【氏名又は名称原語表記】Promega Corporation
【Fターム(参考)】