説明

シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用組成物

シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物、抗ヒスタミン活性を有する局所用組成物、ならびにシトラス・ジャバラ抽出物を含む組成物で皮膚を処置するための方法およびレジメン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、シトラス(Citrus)属、特にシトラス・ジャバラ(Citrus Jabara)に由来する抽出物を含む局所用の化粧用または医薬組成物の分野にある。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
シトラス・ジャバラは、日本ミカン(Japanese tangerine)、またはタナカ(Tanaka)とも呼ばれることがある。特にジャバラ種は、ノビリス(Nobilis)、ウンシュウ(Unshiu)、およびユーノス(Junos)などの他のシトラス種の交配種である。Wikipediaによれば、シトラス・ジャバラは日本の和歌山県東牟婁郡北山村で生まれた。シトラス・ジャバラの果汁は、多くの有益な特性を有すると考えられる。この果汁は花粉症の強力な治療剤であり、シトラス・レティクラタ(Citrus Reticulata)(ミカン)、シトラス・パラディシ(Citrus Paradisi)(グレープフルーツ)、またはシトラス・シネンシス(Citrus Sinensis)(オレンジ)などのより一般的な他のシトラス種の果汁と同様の利益を有すると考えられている。
【0003】
1995年7月18日に公開された日本国特許公報特開平07-179329号は、果実または皮を粉砕し、その湿潤または乾燥粉砕物のいずれかを水またはアルコールで抽出することによって得られたシトラス・ジャバラ抽出物を含む入浴剤組成物を教示している。結果として得られた抽出物は、入浴液やバスオイルの優れた添加剤であると言われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シトラス・ジャバラ抽出物は、化粧用組成物における使用については知られておらず、特にトラブルを起こした皮膚(すなわち刺激された、炎症を起こした、またはそうでなければ最も望ましい健康状態とはいえない皮膚)を処置するためのスキンケア組成物における使用については知られていない。
【0005】
シトラス・ジャバラ抽出物は、スキンケア製品に組み込まれた場合に、皮膚の鎮静および抗ヒスタミン特性を与えることが見出されている。かかる製品は、アレルギーを起こしやすい皮膚、または過度に敏感なまたは刺激された皮膚の処置において有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物に向けられる。
【0007】
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物と、1種以上の抗酸化剤(好ましくは一重項酸素捕捉能を有する抗酸化剤)とを含む局所用スキンケア組成物にも向けられる。
【0008】
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物と、1種以上の皮膚保護軟化剤とを含む局所用スキンケア組成物にも向けられる。
【0009】
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物を含む、皮膚に対する抗ヒスタミン効果を有する局所用スキンケア組成物にも向けられる。
【0010】
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物を含む組成物を皮膚に適用するステップを含んでなる、刺激、炎症、またはアレルギー状態の悪影響を改善するために皮膚を処置する方法にも向けられる。
【0011】
本発明は、洗顔料または化粧水の1種以上と、シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物の1種以上とを含む、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのキットにも向けられる。
【0012】
本発明は、皮膚を洗浄しまたは皮膚の調子を整え、その後シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物を適用するステップを含んでなる、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのレジメンにも向けられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
詳細な説明
本発明の局所用スキンケア組成物は、水性のゲルもしくは溶液、エマルション、または無水の形態で存在してもよいし、クリーム、ローション、ジェル、スティック、ケーキ、粉末などの形態で存在してもよい。「皮膚」という用語は、顔および体の皮膚ならびに唇の両方を意味する。
【0014】
本発明の組成物が水性のゲル、溶液、または懸濁液の形態で存在する場合、好ましくはかかる組成物は、組成物全体の約0.1〜99重量%、好ましくは約0.5〜90重量%、好ましくは約1〜85重量%の水を、本明細書に記載される他の成分の1種以上と組み合わせて含む。本発明の組成物がエマルション形態である場合、かかるエマルションは、組成物全体の約0.01〜99重量%、好ましくは約0.05〜95重量%、好ましくは約0.1〜85重量%の水と、組成物全体の約0.01〜99重量%、好ましくは約0.05〜95重量%、好ましくは約0.1〜85重量%の油とを含み得る。かかるエマルションは、油中水型または水中油型エマルションの形態であってよい。組成物が無水形態である場合、これらは約0.01〜99%の油と、場合により約0.01〜95%の1種以上の構造化剤または約0.01〜95%の1種以上の微粒子とを含み得る。本発明の1つの実施形態において、シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物は、抗ヒスタミン特性を示す。具体的には、シトラス・ジャバラ抽出物自体が抗ヒスタミン特性を有する。本明細書に記載されるパーセントは全て、他に指定のない限り、重量パーセントである。
【0015】
I. シトラス・ジャバラ抽出物
本発明の局所用スキンケア組成物は、1種以上のシトラス・ジャバラ抽出物を含む。シトラス・ジャバラ抽出物は、組成物全体の約0.0001〜55重量%、好ましくは約0.001〜45重量%、より好ましくは約0.005〜40重量%の量で存在し得る。この抽出物は、シトラス・ジャバラの果実、皮または種子の水、アルコール、または水性アルコール抽出によって、または1995年7月18日に公開された日本国特許公報特許第179329号(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に記載のとおりに調製することができる。より具体的には、シトラス・ジャバラ抽出物は、果実、皮、種子、または全ての画分を粉砕し、その後当該粉砕物を、水、有機溶媒(エタノール、プロパノール、ブチレングリコール、プロピレングリコールなど)、または水と有機溶媒との水溶液で抽出することによって調製することができる。1つの好適な実施形態において、シトラス・ジャバラ抽出物は果実から得られる。結果として得られる抽出物は、化粧用組成物における使用に適している。
【0016】
II. 抗酸化剤
本発明の1つの実施形態において、本発明の組成物は、好ましくは一重項酸素捕捉能を有する抗酸化剤を1種以上含み得る。本組成物に含まれる場合、この抗酸化剤は、組成物全体の約0.0001〜25重量%、好ましくは約0.0005〜20重量%、より好ましくは約0.001〜15重量%であり得る。抗酸化剤は、ビタミン、植物抽出物、有機化合物などの形態であってよい。
【0017】
A. ビタミンまたはビタミン誘導体
好適なビタミンとして、A、E、D、C、K、またはそれらの誘導体を挙げることができる。例えば、ビタミンCすなわちアスコルビン酸、ならびにアスコルビン酸の脂肪酸エステル、そのアミン、スルホン酸エステル、またはリン酸エステル誘導体が好適であり得る。好適なアスコルビン酸の脂肪酸エステルとして、パルミチン酸アスコルビル、乳酸アスコルビル、リノール酸アスコルビル、ステアリン酸アスコルビル、テトライソパルミチン酸アスコルビル、ジパルミチン酸アスコルビルが挙げられる。好適なアスコルビン酸のアミノ誘導体は米国特許第5,916,915号に記載されており、この文献は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。特に好適なアミノリン酸エステル誘導体の一例は、アスコルビルリン酸アミノプロピルである。また、アスコルビン酸の糖またはポリオール誘導体(例えばアスコルビルグルコシド)なども好適である。
【0018】
ビタミンE(トコフェロール)およびその誘導体、例えば、限定するものではないが、酢酸トコフェロール、リノール酸トコフェロール、オレイン酸トコフェロール、酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、レチノイン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、ならびにそれらのアルコキシル化誘導体(例えばトコフェレス5、10、12、18、または50、数字はエチレンオキシドの繰り返し単位の数を示す)も好適である。
【0019】
好適な抗酸化剤として、レチノール、レチノールエステル、またはレチノイン酸などのレチノイドも挙げられる。好適なレチノールエステルとして、パルミチン酸レチニル、ステアリン酸レチニルなどが挙げられる。
【0020】
B. 植物抽出物
様々な植物抽出物が抗酸化剤活性を示し、例えば、アカシア・カテキュー(Acacia Catechu)木抽出物、アカシア・ビクトリアエ(Acacia Victoriae)抽出物、アカントパナクス・センティコサス(Acanthopanax Senticosis)根抽出物、アケル・パルマツム(Acer Palmatum)葉抽出物、アキレア・ミレフォリウム(Achillea Millefolium)花抽出物、アエスクルス・ヒッポカスタヌム(Aesculus Hippocastanum)(セイヨウトチノキ)抽出物、アガスタシェ・ルゴサ(Agastache Rugosa)抽出物、アグリモニア・エウパトリア(Agrimonia Eupatoria)根抽出物、アジュガ・レプタンス(Ajuga Reptans)細胞培養抽出物、アジュガ・レプタンス(Ajuga Reptans)細胞培養抽出物、アルケミラ・ブルガリス(Alchemilla Vulgaris)葉抽出物、アリウム・セパ(Allium Cepa)(タマネギ)根抽出物、アリウム・フィスツロスム(Allium Fistulosum)根抽出物、アリウム・オドルム(Allium Odorum)種子抽出物、アルピニア・ウライエンシス(Alpinia Uraiensis)柄/葉水、アンジェリカ・フルキジュガ(Angelica Furcijuga)花/葉/茎抽出物、アンジェリカ・ケイスケイ(Angelica Keiskei)抽出物、アピウム・グラベオレンス(Apium Graveolens)(セロリ)種子抽出物、アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis Thaliana)抽出物、アルブツス・ウネド(Arbutus Unedo)果実抽出物、アルクティウム・ラッパ(Arctium Lappa)果実抽出物、アルテミシア・マリティマ(Artemisia Maritima)抽出物、オクエゾサイシン(Asarum Heterotropoides)抽出物、オクエゾサイシン(Asarum Heterotropoides)根茎抽出物、アヴェナ・サティバ(Avena Sativa)抽出物、米糠抽出物、バンブーサ・ブルガリス(Bambusa Vulgaris)若枝抽出物、ベータ・ブルガリス(Beta Vulgaris)抽出物、ダケカンバ(Betula Ermanii)抽出物、ボラゴ・オフィシナリス(Borago Officinalis)抽出物、ボトリティス・フェルメント(Botrytis Ferment)抽出物、カロフィルム・イノフィルム(Calophyllum Inophyllum)種子油、カッパリス・ムーニー(Capparis Moonii)果実抽出物、カプセラ・ブルサ-パストリス(Capsella Brusa Pastoris)芽水、カプシクム・アヌム(Capsicum Annum)果実抽出物、カルピヌス・ラクシフロラ(Carpinus Laxiflora)茎抽出物、パリヌス・ツコノスキイ(Parinus Tschonoskii)茎抽出物、カスタノプシス・クスピダータ(Castanopsis Cuspidata)茎抽出物、カヤポニア・タユヤ(Cayaponia Tayuya)根抽出物、セロシア・クリスタータ(Celosia Cristata)抽出物、セルシス・シネンシス(Cercis Chinensis)抽出物、セレウス・グラニドフローラ(Cereus Granidflora)抽出物、カエノメレス・シネンシス(Chaenomeles Sinensis)果実抽出物、ガルシニア・マンゴスタナ(Garcinia Mangostana)抽出物(マンゴスチン)、ヘリアンサス・アヌス(Helianthus Annus)抽出物、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum Vulgare)、ククミス・サティブス(Cucumis Sativus)抽出物、フィランサス・エンブリカ(Phyllanthus Emblica)抽出物、イノノタス・オブリクウス(Inonotus Obliquus)抽出物、エクステンシン、グリシルレチン酸、およびC.T.F.A. International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第11版(2006)の2755〜2757ページ(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に記載される植物抽出物が挙げられる。1つの好適な実施形態において、抗酸化剤は、マンゴスチンとも呼ばれるガルシニア・マンゴスタナ(Garcinia Mangostana)抽出物である。
【0021】
III. 皮膚保護軟化剤
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物は、シトラス・ジャバラ抽出物に加えて1種以上の皮膚保護軟化剤も含み得る。本組成物に含まれる場合、この皮膚保護軟化剤は、組成物全体の約0.001〜65重量%、好ましくは約0.005〜60重量%、より好ましくは約0.01〜50重量%である。好適な皮膚保護軟化剤として、シリコーン、エステル、または炭化水素であり得る不揮発性成分が挙げられる。皮膚保護軟化剤は、室温(例えば25℃)で液体、固体、または半固体であり得る。
【0022】
A. シリコーン
好適なシリコーンとして、水溶性または非水溶性の両方の不揮発性シリコーンが挙げられる。かかるシリコーンは、好ましくは25℃で約5〜1,000,000センチストーク(cst)、好ましくは10〜800,000cstの粘度を有する。好適な非水溶性シリコーンとしては、アミン官能性シリコーン(例えばアモジメチコン);フェニル置換シリコーン(例えばビスフェニルヘキサメチコン、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、フェニルトリメチコン、またはポリフェニルメチルシロキサン);ジメチコン、C2-30アルキル基で置換されたジメチコン(例えばセチルジメチコン、ステアリルジメチコン、ベヘニルジメチコン)などが挙げられる。
【0023】
好適な不揮発性シリコーンは下記の一般式:
【化1】

[式中、RおよびR'はそれぞれ独立にC1-30直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和のアルキル、フェニルまたはアリール、トリアルキルシロキシであり、xおよびyはそれぞれ独立に0〜1,000,000であり(但し、xまたはyのいずれか少なくとも1つが存在する)、Aはアルキルシロキシエンドキャップ単位である]
を有し得る。Aがメチルシロキシエンドキャップ単位、特にトリメチルシロキシであり、RおよびR'がそれぞれ独立にC1-30直鎖または分岐鎖のアルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、より好ましくはC1-22アルキル、フェニルまたはトリメチルシロキシ、最も好ましくはメチル、フェニルまたはトリメチルシロキシであり、結果として得られるシリコーンがジメチコン、フェニルジメチコン、ジフェニルジメチコン、フェニルトリメチコンまたはトリメチルシロキシフェニルジメチコンである場合が好ましい。他の例としては、セチルジメチコン、ステアリルジメチコン、ベヘニルジメチコンなどのアルキルジメチコン(式中、少なくとも1つのRは脂肪アルキル(C12、C14、C16、C18、C20またはC22)であり、他のRはメチルであり、Aはトリメチルシロキシエンドキャップ単位である)が挙げられる。フェニルトリメチコンはDow Corning Corporationから商標名556 Fluidとして購入することができる。トリメチルシロキシフェニルジメチコンはWacker-Chemieから商標名PDM-1000として購入することができる。液体シリコーンワックスとも呼ばれるセチルジメチコンは、Dow CorningからFluid 2502として、またはDeGussa Care & Surface Specialtiesから商標名Abil Wax 9801または9814として購入することができる。ステアリルジメチコンとベヘニルジメチコンも、Dow Corning CorporationまたはDeGussa Care & Surface Specialtiesから商標名Abilとして購入することができる。
【0024】
B. エステル
様々なエステルも皮膚保護軟化剤として好適である。好適なエステルは、モノ-、ジ-、およびトリエステルである。本組成物は、この群から選択される1つ以上のエステル、またはそれらの混合物を含み得る。
【0025】
(a) モノエステル
モノエステルは、式R-COOH(式中、Rは2〜45個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和のアルキル、またはフェニルである)を有するモノカルボン酸と、式R-OH(式中、Rは2〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和のアルキル、またはフェニルである)を有するアルコールとの反応により形成されるエステルと定義される。このアルコールと酸は、いずれも1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。この酸またはアルコールのいずれか一方または両方は「脂肪」酸またはアルコールであってよく、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和型の約6〜30個の炭素原子、より好ましくは12、14、16、18または22個の炭素原子を有し得る。本発明の組成物で使用可能なモノエステル油の例としては、限定するものではないが、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸ブチル、イソステアリン酸ヘキサデシル、パルミチン酸セチル、ネオペンタン酸イソステアリル、ヘプタン酸ステアリル、イソノナン酸イソステアリル、乳酸ステアリル、オクタン酸ステアリル、ステアリン酸ステアリルおよびイソノナン酸イソノニルなどが挙げられる。
【0026】
(b). ジエステル
好適なジエステルは、ジカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの反応生成物、または少なくとも2個の置換ヒドロキシル基を有する脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との反応生成物である。ジカルボン酸は2〜30個の炭素原子を含んでよく、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和型であってよい。ジカルボン酸は1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。脂肪族または芳香族アルコールも2〜30個の炭素原子を含んでよく、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和型であってよい。好ましくは、酸またはアルコールの1つ以上が脂肪酸または脂肪アルコールであり、すなわち、12〜22個の炭素原子を含む。ジカルボン酸はαヒドロキシ酸であってもよい。エステルはダイマーまたはトリマー型であってよい。本発明の組成物で使用可能なジエステル油の例としては、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、セバシン酸ジブチル、ダイマージリノール酸ジセテアリル、アジピン酸ジセチル、アジピン酸ジイソセチル、アジピン酸ジイソノニル、ダイマージリノール酸ジイソステアリル、フマル酸ジイソステアリル、リンゴ酸ジイソステアリルおよびリンゴ酸ジオクチルなどが挙げられる。
【0027】
(c). トリエステル
好適なトリエステルは、トリカルボン酸と脂肪族もしくは芳香族アルコールとの反応生成物、あるいはまた、3つ以上の置換ヒドロキシル基を有する脂肪族もしくは芳香族アルコールとモノカルボン酸との反応生成物を含む。上記のモノおよびジエステルの場合と同様に、この酸およびアルコールは2〜30個の炭素原子を含み、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖であってよく、1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてよい。好ましくは、酸またはアルコールの1つ以上が12〜22個の炭素原子を含む脂肪酸またはアルコールである。トリエステルの例としては、アラキドン酸、クエン酸またはベヘン酸のエステル、例えばトリアラキジン、クエン酸トリブチル、クエン酸トリイソステアリル、クエン酸トリC12-13アルキル、トリカプリリン、クエン酸トリカプリリル、ベヘン酸トリデシル、クエン酸トリオクチルドデシル、ベヘン酸トリデシル;またはココア酸トリデシルおよびイソノナン酸トリデシルなどが挙げられる。
【0028】
本組成物で用いるのに好適なエステルは、C.T.F.A. Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook, 第11版(2006)の2679〜2688頁(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)にさらに記載されている。
【0029】
C. 炭化水素
本組成物に、皮膚保護軟化剤として1種以上の炭化水素油を組み込むことが望ましい場合がある。好適な炭化水素油としては、パラフィン系炭化水素およびオレフィン、好ましくは約20個を超える炭素原子を有するものが挙げられる。かかる炭化水素油の例としては、C24-28オレフィン、C30-45オレフィン、C20-40イソパラフィン、水素化ポリイソブテン、ポリイソブテン、ポリデセン、水素化ポリデセン、鉱物油、ペンタヒドロスクアレン、スクアレン、スクアランおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0030】
D. 脂肪酸のグリセリルエステル
脂肪酸の合成もしくは天然グリセリルエステル、またはトリグリセリドも、本組成物で皮膚保護軟化剤として用いるのに好適である。植物源と動物源の両方を使用することができる。このような油の例としては、ヒマシ油、ラノリン油、C10-18トリグリセリド、カプリル酸/カプリン酸/トリグリセリド、スィートアーモンド油、杏仁油、ゴマ油、ナガミノアマナズナ(camelina sativa)油、タマヌ種子油、ココナツ油、トウモロコシ油、綿実油、亜麻仁油、インクオイル、オリーブ油、パーム油、イリーペバター、ナタネ油、ダイズ油、ブドウ種子油、ヒマワリ種子油およびクルミ油などが挙げられる。
【0031】
合成または半合成グリセリルエステル、例えば改質された天然油脂である脂肪酸モノ−、ジ−およびトリグリセリド、例えばグリセリンなどのポリオールのモノ−、ジ−またはトリエステルも好適である。例として、脂肪(C12-22)カルボン酸を1つ以上の繰り返しグリセリル基と反応させる。ステアリン酸グリセリル、ジイソステアリン酸ジグリセリル、イソステアリン酸ポリグリセリル-3、イソステアリン酸ポリグリセリル-4、リシノール酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸グリセリル、ジイソテアリン酸グリセリル、テトライソステアリン酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、ジステアリン酸ジグリセリル、リノール酸グリセリル、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、PEGヒマシ油、オレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリルおよび牛脂脂肪酸PEGグリセリルなど。
【0032】
IV. 他の成分
本発明の組成物は、1種以上のさらなる成分、例えば、限定するものではないが、本明細書に記載されるさらなる成分を含み得る。
【0033】
A. 保湿剤
本発明の組成物は、1種以上の保湿剤も含み得る。本組成物に含まれる場合、推奨範囲は組成物全体の約0.001〜50重量%、好ましくは約0.01〜45重量%、より好ましくは約0.05〜40重量%である。好適な保湿剤の例として、グリコール、糖などが挙げられる。好適なグリコールはモノマー型またはポリマー型であり、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール(例えば、4〜200個のエチレンオキシドの繰り返し単位を有するポリエチレングリコールであるPEG4-200)、ならびにC1-6アルキレングリコール(例えばプロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール)などが挙げられる。適切な糖(その一部は多価アルコールでもある)も好適な保湿剤である。このような糖の例として、グルコース、フルクトース、蜂蜜、水素化蜂蜜、イノシトール、マルトース、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、スクロース、キシリトール、キシロース、トレハロースなどが挙げられる。また、尿素または糖誘導体(例えばエチルヘキシルグリセリン)も好適である。1つの好適な実施形態において、本発明の組成物で用いられる保湿剤は、C1-6、好ましくはC2-4アルキレングリコールであり、最も具体的にはブチレングリコールである。
【0034】
B. 界面活性剤
必要に応じて、本発明の組成物は、1種以上の界面活性剤を含み得る。このことは、本組成物が油中水型または水中油型いずれかの水性のゲル、エマルションの形態である場合に特に望ましい。本組成物に含まれる場合、この界面活性剤は、組成物全体の約0.001〜50重量%、好ましくは約0.005〜40重量%、より好ましくは約0.01〜35重量%であり得る。好適な界面活性剤は、シリコーンまたは有機系、非イオン性、アニオン性、両性または双性イオン性であってよい。本発明の組成物がスキンケア組成物である場合、含まれる界面活性剤は非イオン性であることが好ましい。このような界面活性剤としては、限定するものではないが、本明細書に記載される界面活性剤が挙げられる。
【0035】
1. シリコーン界面活性剤
好適なシリコーン界面活性剤としては、両親媒性の特性を有する(例えば親水基と親油基を含む)ポリオルガノシロキサンポリマーが挙げられる。これらのシリコーン界面活性剤は室温で液体または固体であり得る。
【0036】
(a). ジメチコンコポリオールまたはアルキルジメチコンコポリオール
使用し得るシリコーン界面活性剤の1種は、一般的にジメチコンコポリオールまたはアルキルジメチコンコポリオールと呼ばれる。この界面活性剤は、約2〜18の親水性/親油性バランス(HLB)を有する油中水型または水中油型いずれかの界面活性剤である。好ましくは、シリコーン界面活性剤は、約2〜12、好ましくは約2〜10、最も好ましくは約4〜6のHLBを有する非イオン性界面活性剤である。「親水基」という用語は、オルガノシロキサンポリマー主鎖上で置換した場合に、そのポリマーの置換部分に親水性の特性を与える基を意味する。親水性を与える基の例としては、ヒドロキシ−ポリエチレンオキシ、ヒドロキシル、カルボン酸塩およびそれらの混合物が挙げられる。「親油基」という用語は、オルガノシロキサンポリマー主鎖上で置換した場合に、そのポリマーの置換部分に親油性の特性を与える有機基を意味する。親油性を与える有機基の例としては、C1-40直鎖または分岐鎖のアルキル、フルオロ、アリール、アリールオキシ、C1-40ヒドロカルビルアシル、ヒドロキシ−ポリプロピレンオキシまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0037】
好適なシリコーン界面活性剤の1種は、一般式:
【化2】

[式中、pは0〜40(2、3、4、13、14、15、16、17、18などの間および部分範囲の全ての数字を含む範囲)であり、PEは(-C2H4O)a-(-C3H6O)b-Hであり、ここでaは0〜25であり、bは0〜25であり(但し、aとbはいずれも同時に0となることはできない)、xおよびyはそれぞれ独立に0〜1,000,000の範囲である(但し、それらはいずれも同時に0となることはできない)]
を有する。1つの好ましい実施形態において、x、y、z、aおよびbは、そのポリマーの分子量が約5,000〜約500,000、より好ましくは約10,000〜100,000、最も好ましくはおよそ約50,000となるようなものであり、このポリマーは一般にジメチコンコポリオールと呼ばれる。
【0038】
シリコーン界面活性剤の1種として、pが、長鎖アルキルがセチルまたはラウリルとなるようなものがあり、この界面活性剤は、一般に、それぞれセチルジメチコンコポリオールまたはラウリルジメチコンコポリオールと呼ばれる。
【0039】
ある場合には、ポリマー中のエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの繰り返し単位の数も明示され、例えば、あるジメチコンコポリオールはPEG-15/PPG-10ジメチコンとも呼ばれ、これはシロキサン主鎖に15個のエチレングリコール単位および10個のプロピレングリコール単位を含む置換基を有するジメチコンを指す。また、上記の一般構造中のメチル基の1つ以上がより長鎖のアルキル(例えばエチル、プロピル、ブチルなど)またはエーテル(例えばメチルエーテル、エチルエーテル、プロピルエーテルおよびブチルエーテルなどの)で置換されていてもよい。
【0040】
シリコーン界面活性剤の例としては、Dow Corningにより商標名Dow Corning 3225C Formulation Aid(CTFA名はシクロテトラシロキサン(および)シクロペンタシロキサン(および)PEG/PPG-18ジメチコン);または5225C Formulation Aid(CTFA名はシクロペンタシロキサン(および)PEG/PPG-18/18ジメチコン);またはDow Coming 190 Surfactant(CTFA名はPEG/PPG-18/18ジメチコン);またはDow Corning 193 Fluid、Dow Corning 5200(CTFA名はラウリルPEG/PPG-18/18メチコン)として販売されているもの;またはGoldschmidtにより販売されているAbil EM 90(CTFA名はセチルPEG/PPG-14/14ジメチコン);またはGoldschmidtにより販売されているAbil EM 97(CTFA名はビス−セチルPEG/PPG-14/14ジメチコン);またはAbil WE 09(CTFA名はセチルPEG/PPG-10/1ジメチコン、混合物はイソステアリン酸ポリグリセリル-4およびラウリン酸ヘキシルも含む);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6011(CTFA名はPEG-11メチルエーテルジメチコン);Shin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6012(CTFA名はPEG/PPG-20/22ブチルエーテルジメチコン);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6013(CTFA名はPEG-9ジメチコン);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6015(CTFA名はPEG-3ジメチコン);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6016(CTFA名はPEG-9メチルエーテルジメチコン);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6017(CTFA名はPEG-10ジメチコン);またはShin-Etsu Siliconesにより販売されているKF-6038(CTFA名はラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン)がある。
【0041】
(b). 架橋シリコーン界面活性剤
乳化エラストマーと呼ばれることも多い、様々な種類の架橋シリコーン界面活性剤も好適である。これらは通常、シリコーンエラストマーが、ポリオキシアルキレン化基などの親水性部分を少なくとも1つ含む点を除き、上記の「シリコーンエラストマー」の項に記載のとおりに製造される。典型的には、これらのポリオキシアルキレン化シリコーンエラストマーは、少なくとも1個のケイ素結合水素を含むジオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むポリオキシアルキレンとの架橋付加反応によって得られる架橋オルガノポリシロキサンである。少なくとも1つの実施形態において、ポリオキシアルキレン化架橋オルガノポリシロキサンは、例えば米国特許第5,236,986号および米国特許第5,412,004号、米国特許第5,837,793号ならびに米国特許第5,811,487号(これらの内容は参照により本明細書に組み入れられる)に記載のとおり、所望により白金触媒の存在下で、それぞれが1個のケイ素に結合している少なくとも2個の水素を含むジオルガノポリシロキサンと、少なくとも2個のエチレン性不飽和基を含むポリオキシアルキレンとの架橋付加反応によって得られる。
【0042】
本発明の少なくとも1つの実施形態において使用し得るポリオキシアルキレン化シリコーンエラストマーとしては、Shin-Etsu Siliconesにより、KSG-21、KSG-20、KSG-30、KSG-31、KSG-32、KSG-33;KSG-210(ジメチコン中に分散させたジメチコン/PEG-10/15架橋ポリマー);KSG-310(PEG-15ラウリルジメチコン架橋ポリマー);KSG-320(イソドデカン中に分散させたPEG-15ラウリルジメチコン架橋ポリマー);KSG-330(トリエチルヘキサノイン中に分散させたPEG-15ラウリルジメチコン架橋ポリマー)、KSG-340(PEG-10ラウリルジメチコン架橋ポリマーと、PEG-15ラウリルジメチコン架橋ポリマーとの混合物)の名称で販売されているものが挙げられる。
【0043】
PCT/WO 2004/024798に開示されているようなポリグリセロール化シリコーンエラストマーも好ましく、この文献は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。このようなエラストマーとして、Shin-EtsuのKSGシリーズ、例えば、KSG-710(ジメチコン中に分散させたジメチコン/ポリグリセリン-3架橋ポリマー);または、Shin-Etsuの商標名KSG-810、KSG-820、KSG-830、もしくはKSG-840として販売されている、イソドデカン、ジメチコン、トリエチルヘキサノインなどの多様な溶媒に分散させたラウリルジメチコン/ポリグリセリン-3架橋ポリマーが挙げられる。Dow Corningにより、商標名9010およびDC9011として販売されているシリコーンも好適である。
【0044】
1つの好ましい架橋シリコーンエラストマー乳化剤は、そのエラストマー主鎖に起因して優れた美観を与えるが、界面活性特性も与えるジメチコン/PEG-10/15架橋ポリマーである。
【0045】
2. 有機非イオン性界面活性剤
本組成物は1種以上の非イオン性有機界面活性剤を含み得る。好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコールとアルキレンオキシド(通常はエチレンオキシドまたはプロピレンオキシド)との反応により形成されるアルコキシル化アルコールまたはエーテルが挙げられる。好ましくは、このアルコールは6〜30個の炭素原子を有する脂肪アルコールのいずれかである。このような成分の例としては、ステアレス2-100(ステアリルアルコールとエチレンオキシドの反応により形成され、エチレンオキシド単位の数が2〜100である);ベヘネス5-30(ベヘニルアルコールとエチレンオキシドの反応により形成され、エチレンオキシドの繰り返し単位の数が5〜30である);セテアレス2-100(セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物とエチレンオキシドの反応により形成され、分子中のエチレンオキシドの繰り返し単位の数が2〜100である);セテス1-45(セチルアルコールとエチレンオキシドの反応により形成され、エチレンオキシドの繰り返し単位の数が1〜45である)などが挙げられる。
【0046】
他のアルコキシル化アルコールは、脂肪酸およびモノ−、ジ−または多価アルコールとアルキレンオキシドとの反応により形成される。例えば、C6-30脂肪カルボン酸および多価アルコール(グルコース、ガラクトースおよびメチルグルコースなどの単糖である)と、アルコキシル化アルコールとの反応生成物。例としては、グリセリル脂肪酸エステル(例えばオレイン酸PEGグリセリル、ステアリン酸PEGグリセリル);またはPEGポリヒドロキシアルカノート(例えばエチレングリコールの繰り返し単位の数が3〜1000であるジポリヒドロキシステアリン酸PEG)と反応させたポリマーアルキレングリコールが挙げられる。C6-30飽和または不飽和脂肪酸のエトキシル化プロポキシル化誘導体、例えば、アジピン酸ジ-PPG-2ミレス-10、アジピン酸ジ-PPG-2セテス-4、アジピン酸ジ-PPGミリスチルエーテル)も好適である。
【0047】
非イオン性界面活性剤として、カルボン酸と、アルキレンオキシドまたはポリマーエーテルとの反応により形成されるものも好適である。結果として得られる生成物は、RCOがカルボキシルエステル基であり、Xが水素または低級アルキルであり、nが重合アルコキシ基の数である一般式を有する。ジエステルの場合には、2つのRCO基は同一である必要はない。好ましくは、RはC6-30直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和のアルキルであり、nは1〜100である。
【0048】
モノマー性、ホモポリマー性またはブロックコポリマー性エーテルも非イオン性界面活性剤として好適である。典型的には、このようなエーテルはモノマーアルキレンオキシド、一般にはエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって形成される。このようなポリマーエーテルは、RがHまたは低級アルキルであり、nが繰り返しモノマー単位の数で1〜500である一般式を有する。
【0049】
他の好適な非イオン性界面活性剤としては、アルコキシル化ソルビタンおよびアルコキシル化ソルビタン誘導体が挙げられる。例えば、ソルビタンのアルコキシル化、特にエトキシル化により、ポリアルコキシル化ソルビタン誘導体が得られる。ポリアルコキシル化ソルビタンのエステル化では、ポリソルベートなどのソルビタンエステルが得られる。例えば、ポリアルコキシル化ソルビタンを、C6-30、好ましくはC12-22脂肪酸でエステル化することができる。このような成分の例としては、ポリソルベート20-85、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタンおよびステアリン酸ソルビタンなどが挙げられる。
【0050】
特定の種類の両性、双性イオン性または陽イオン性界面活性剤も本組成物で使用することができる。このような界面活性剤の説明は、米国特許第5,843,193号に記載されており、この文献は参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0051】
C. 構造化剤
時として、本組成物に1種以上の構造化剤を組み込むことが望ましい場合がある。「構造化剤」という用語は、本組成物に構造または粘度を付与し得る1種以上の成分を意味する。本組成物に含まれる場合、この構造化剤は、組成物全体の約0.01〜50重量%、好ましくは約0.5〜45重量%、より好ましくは約0.5〜35重量%である。構造化剤は、水相または油相(本組成物が油相を含む場合)を構造化し、またはその粘度を増加させることができる。構造化剤が油相構造化剤である場合、この用語は油相の粘度を増加させまたは油相を構造化する、油相に可溶なまたは分散可能な成分またはかかる成分の組み合わせを意味する。構造化剤は、粘度が増大した液体組成物、半固体組成物、または場合によっては自立型であってよい固体組成物をもたらすのに十分な量で存在し得る。構造化剤自体は、液体、半固体、または固体形態であってよい。好適な油相構造化剤としては、シリコーンベースまたは有機ベースの油相構造化剤が挙げられる。これらは、ポリマーまたは非ポリマー、合成、天然、またはその両方の組み合わせであってよい。
【0052】
1. 油相構造化剤
(a). シリコーン構造化剤
様々な油相構造化剤はシリコーンベースのものであってよく、例えば、化粧用組成物に組み込まれた場合に油相の粘度を増加させ得るような粘度を有するシリコーンを与える重合度を有するシリコーンエラストマー、シリコーンガム、シリコーンワックス、直鎖シリコーンであってよい。シリコーン構造化剤の例としては、限定するものではないが、以下のものが挙げられる。
【0053】
(i). シリコーンエラストマー
本発明の組成物に使用し得るシリコーンエラストマーとしては、白金金属触媒の存在下、SiH含有ジオルガノシロキサンと、末端オレフィン不飽和を有するオルガノポリシロキサンまたはαωジエン炭化水素とを反応させることによる付加反応硬化によって形成されるものが挙げられる。このようなエラストマーは、オルガノポリシロキサン組成物を、有機スズ化合物の存在下、ヒドロキシル末端ジオルガノポリシロキサンとSiH含有ジオルガノポリシロキサンまたはαωジエンの間の脱水素反応によって縮合硬化すること、で;またはオルガノポリシロキサン組成物を、有機スズ化合物またはチタン酸エステルの存在下で、ヒドロキシル末端ジオルガノポリシロキサンと加水分解性オルガノシロキサンの間の縮合反応を用いて縮合硬化すること;有機過酸化物触媒の存在下で熱硬化するオルガノポリシロキサン組成物の過酸化物硬化など、他の反応方法によって形成することもできる。
【0054】
好適であり得るエラストマーの1種は、各分子につき少なくとも2個の低級アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンまたはαωジエン;および各分子につき少なくとも2個のシリコーン結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン;および白金型触媒を付加反応硬化することにより製造される。ビニルなどの低級アルケニル基は分子内のいずれの位置に存在してもよいが、一方または両方の分子末端が末端オレフィン不飽和であることが好ましい。この成分の分子構造は、直鎖、分岐直鎖、環状または網状であってよい。これらのオルガノポリシロキサンは、メチルビニルシロキサン、メチルビニルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルポリシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−ジフェニルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルフェニルシロキサン−メチルビニルシロキサンコポリマー、ジメチルビニルシロキシ末端メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)ポリシロキサンおよびジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチル(3,3,−トリフルオロプロピル)シロキサンコポリマー、デカジエン、オクタジエン、ヘプタジエン、ヘキサジエン、ペンタジエンまたはテトラジエンまたはトリジエンで例示される。
【0055】
硬化は、ジメチルメチル水素シロキサンのケイ素結合水素原子を、本明細書中に記載される触媒を用いた触媒作用下でシロキサンまたはαωジエンと付加反応させることによって進行する。高度に架橋された構造を形成するには、メチル水素シロキサンは、架橋剤としての機能を最適化するために各分子につき少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含まなければならない。
【0056】
ケイ素結合水素原子とアルケニル基の付加反応に用いられる触媒としては、具体的には、アルコールまたはケトンに場合により溶解させた塩化白金酸(この溶液は所望により熟成させる)、塩化白金酸−オレフィン錯体、塩化白金酸−アルケニルシロキサン錯体、塩化白金酸−ジケトン錯体、白金黒、および担体に支持された白金が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物において用いるのに好適なシリコーンエラストマーは、粉末形態であってよく、あるいは例えば、揮発性もしくは不揮発性シリコーン、またはパラフィン系炭化水素もしくはエステルのようなシリコーン相溶性ビヒクルなどの溶媒中に分散または可溶化させることができる。シリコーンエラストマー粉末の例としては、ビニルジメチコン/メチコンシレスキオキサン架橋ポリマー(Shin-EtsuのKSP-100、KSP-101、KSP-102、KSP-103、KSP-104、KSP-105など)、フルオロアルキル基を含むハイブリッドシリコーン粉末(フルオロ−シリコーンエラストマーであるShin-EtsuのKSP-200など)およびフェニル基を含むハイブリッドシリコーン粉末(フェニル置換シリコーンエラストマーであるShin-EtsuのKSP-300など);およびDow ComingのDC9506が挙げられる。シリコーン相溶性ビヒクル中に分散させたシリコーンエラストマー粉末の例としては、Dow Corning Corporation(商標名9040または9041として)、GE Silicones(商標名SFE839として)またはShin-Etsu Silicones(商標名KSG-15、16、18として)などの様々な供給者により供給されているジメチコン/ビニルジメチコン架橋ポリマーが挙げられる。KSG-15のCTFA名はシクロペンタシロキサン/ジメチコン/ビニルジメチコン架橋ポリマーである。KSG-18のINCI名はフェニルトリメチコン/ジメチコン/フェニルビニルジメチコン架橋ポリマーである。シリコーンエラストマーは、Grant Industriesから商標名Gransilとして購入することもできる。Shin-Etsuにより商標名KSG-31、KSG-32、KSG-41、KSG-42、KSG-43およびKSG-44として供給されるラウリルジメチコン/ビニルジメチコン架橋ポリマーなどの、長鎖アルキル置換を有するシリコーンエラストマーも好適である。本発明において有用な架橋オルガノポリシロキサンエラストマーおよびその製造方法は、1990年11月13日に発行されたSakutaらの米国特許第4,970,252号、1998年6月2日に発行されたKilgourらの米国特許第5,760,116号、1997年8月5日に発行されたSchulz, Jrらの米国特許第5,654,362号およびPola Kasei Kogyo KKに発行された日本国特許出願JP61-18708号にさらに記載されており、これらはそれぞれ参照によりそのまま本明細書に組み入れられる。
【0058】
(ii). シリコーンガム
1種以上のシリコーンガムも、油相構造化剤として使用するために好適である。「ガム」という用語は、ガム様の質感を有するシリコーンを与えるのに十分な重合度を有するシリコーンポリマーを意味する。特定の場合、ガムを形成するシリコーンポリマーは架橋されていてよい。シリコーンガムは、典型的には25℃で約500,000〜100,000,000cst、好ましくは約600,000〜20,000,000、より好ましくは約600,000〜12,000,000cstの粘度を有する。本明細書に記載される全ての範囲は、全ての部分範囲(例えば、550,000;925,000;3,500,000)を含む。
【0059】
本組成物において用いられるシリコーンガムとしては、限定するものではないが、一般式:
【化3】

[式中、R1〜R9は、それぞれ独立に1〜30個の炭素原子を有するアルキル、アリール、またはアラルキルであり、XはOHもしくはC1-30アルキル、またはビニルであり、x、y、またはzはゼロであり得る(但しどの時点においてもx、y、またはzの3つ以上がゼロとなることはなく、またさらにx、y、およびzは、シリコーンガムが25℃で少なくとも約500,000cst、約100,000,000センチストークにまで及ぶ粘度を有するような値である)]
で表されるものが挙げられる。RがメチルまたはOHであるものが好ましい。
【0060】
かかるシリコーンガムは、Wacker-ChemieまたはDow Corningなどを含む様々なシリコーン製造業者から純粋形態で購入することができる。このようなシリコーンガムとして、Wacker-Belsilにより商標名CM3092、Wacker-Belsil 1000、またはWacker-Belsil DM 3096として販売されているものが挙げられる。XがOHであるシリコーンガム(ジメチコノールとも呼ばれる)は、Dow Corning Corporationから商標名1401として入手することができる。このシリコーンガムは、揮発性または不揮発性シリコーンなどのシリコーン相溶性ビヒクル中の溶液または分散体の形態で購入することもできる。このような混合物の例は、Barnet Siliconesから商標名HL-88(INCI名はジメチコン)として購入することができる。
【0061】
(iii). ポリアミドまたはシリコーンポリアミド
ポリアミドまたはシリコーンポリアミドなどの様々な種類のポリマー化合物も、油相構造化剤として好適である。
【0062】
「シリコーンポリアミド」という用語は、シリコーンモノマーと、本明細書にさらに記載されるようなアミド基を含むモノマーとからなるポリマーを意味する。このシリコーンポリアミドは、好ましくは一般式:
【化4】

[式中、Xは約1〜30個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレンであり、R1、R2、R3、およびR4は、それぞれ独立に、1つ以上のヒドロキシルまたはハロゲン基で置換されていてよいC1-30直鎖または分岐鎖のアルキル、1つ以上のC1-30アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシルもしくはアルコキシ基で置換されていてよいフェニル、または一般式:
【化5】

を有するシロキサン鎖
であり、Yは:
(a)約1〜40個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキレンであって、(i)一般式R1CONR1を有する1つ以上のアミド基、または(ii)C5-6環式環、または(iii)1つ以上のC1-10アルキル基で置換されていてよいフェニレン、または(iv)ヒドロキシ、または(v)C3-8シクロアルカン、または(vi)1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてよいC1-20アルキル、または(vii)C1-10アルキルアミンで置換されていてもよいもの;あるいは
(b)TR5R6R7
(式中、R5、R6、およびR7は、それぞれ独立にC1-10直鎖または分岐鎖のアルキレンであり、TはCR8[ここでR8は、水素、三価の原子N、P、もしくはAl、または1つ以上のヒドロキシルもしくはハロゲン基で置換されていてよいC1-30直鎖もしくは分岐鎖のアルキル、1つ以上のC1-30アルキル基、ハロゲン、ヒドロキシル、もしくはアルコキシ基で置換されていてよいフェニル、または一般式:
【化6】

を有するシロキサン鎖である]である)である]
で表される部分を含む。
【0063】
R1、R2、R3、およびR4がC1-10、好ましくはメチルであり、XおよびYが直鎖または分岐鎖のアルキレンである場合が好ましい。一般式:
【化7】

[式中、aおよびbは、それぞれ独立に、約60℃〜120℃の融点および約40,000〜500,000ダルトンの分子量を有するシリコーンポリアミドポリマーを与えるのに十分である]を有するシリコーンポリアミドが好ましい。本発明の組成物において使用し得るシリコーンポリアミドの1種は、Dow Corning Corporationから、商標名Dow Corning2-8178 Gellant(CTFA名は、PPG-3ミリスチルエーテルを含む組成物として販売されているナイロン-611/ジメチコンコポリマー)として購入することができる。
【0064】
Arizona Chemicalから商標名UniclearおよびSylvaclearとして購入されるポリアミドも好適である。かかるポリアミドは、エステル末端化またはアミド末端化されていてよい。エステル末端ポリアミドの例としては、限定するものではないが、
一般式:
【化8】

[式中、nは、エステル基の数が、エステルおよびアミド基の総数の約10%〜50%となるようなアミド単位の数を表し、各R1は独立に、少なくとも4個の炭素原子を含むアルキルまたはアルケニル基であり、各R2は独立に、C4-42炭化水素基であり(但しR2基の少なくとも50%がC30-42炭化水素である)、各R3は独立に、少なくとも2個の炭素原子、水素原子および場合により1つ以上の酸素または窒素原子を含む有機基であり、各R4は独立に、水素原子、C1-10アルキル基、またはR3もしくは別のR4との直接結合であり、それによりR3とR4両方が結合する窒素原子はR4-N-R3によって定義される複素環構造の一部を形成し、このとき基R4の少なくとも50%は水素原子を表す]
を有するものが挙げられる。
【0065】
油相ゲル化剤として使用し得るエステル末端およびアミド末端ポリアミドの一般的な例としては、Arizona Chemicalにより、商標名Sylvaclear A200VまたはA2614V(いずれもCTFA名はエチレンジアミン/水素化ダイマージリノール酸コポリマー/ビス-ジ-C14-18アルキルアミド);Sylvaclear AF1900V;Sylvaclear C75V(CTFA名はビス-ステアリルエチレンジアミン/ネオペンチルグリコール/ステアリル水素化ダイマージリノール酸コポリマー);Sylvaclear PA1200V(CTFA名はポリアミド-3);Sylvaclear PE400V;Sylvaclear WF1500V;またはUniclear、例えばUniclear 100VG(INCI名はエチレンジアミン/ステアリルダイマージリノール酸コポリマー;またはエチレンジアミン/ステアリルダイマージトール油脂肪酸(ditallate)コポリマー)として販売されているものが挙げられる。好適なポリアミドの他の例としては、Henkelにより商標Versamid(例えばVersamid 930、744、1655)として、またはOlin Mathieson Chemical Corp.によりOnamid SもしくはOnamid Cという商品名で販売されているものが挙げられる。
【0066】
(b). 有機油相構造化剤
(i). 天然または合成有機ワックス
動物ワックス、植物ワックス、または鉱物ワックスなどの1種以上の天然または合成ワックスも、油相構造化剤として適し得る。好ましくはかかるワックスは、約60〜150℃、より好ましくは65〜100℃のような高い融点を有する。このようなワックスの例としては、Fischer-Tropsch合成によって製造されたワックス(例えばポリエチレンワックスもしくは合成ワックス)、または様々な植物ワックス(例えばヤマモモ、キャンデリラ、オゾケライト、アカシア、蜜蝋、セレシン、セチルエステル、花蝋、柑橘ワックス、カルナバワックス、ホホバワックス、木蝋、ポリエチレン、微結晶、米糠、ラノリンワックス、ミンク、モンタン、ヤマモモ、オーリクリー、オゾケライト、パーム核ワックス、パラフィン、アボカドワックス、リンゴワックス、セラックワックス、サルビアワックス、粕ワックス、ブドウワックス、およびPEG6〜20蜜蝋もしくはPEG-12カルナウバワックスなどのそれらのポリアルキレングリコール誘導体)、または脂肪酸もしくは脂肪アルコール(それらのエステルを含む)(例えばヒドロキシステアリン酸(例えば12-ヒドロキシステアリン酸)、トリステアリン、トリベヘニン、オレイン酸、ステアリン酸)が挙げられる。
【0067】
(ii). モントモリロナイト鉱物
本組成物に使用し得る構造化剤の1種は、天然または合成モントモリロナイト鉱物、例えばヘクトライト、ベントナイト、およびこれらの鉱物を四級化アンモニウム化合物と反応させることによって得られる四級化誘導体(例えば、ステアラルコニウムベントナイト、ヘクトライト、Quaternium-18ヘクトライトなどの四級化ヘクトライト、アタパルジャイト、プロピレンカーボネートなどのカーボネート、ベントンなど)を含む。
【0068】
(iii). シリカおよびケイ酸塩
本組成物の油相に使用し得る別の種類の構造化剤は、シリカ、ケイ酸塩、またはシリカシリレートおよびそれらのアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属誘導体である。これらのシリカおよびケイ酸塩は一般に微粒子形態で見られ、それにはシリカ、シリル化シリカ、ケイ酸マグネシウムアルミニウムなどが含まれる。
【0069】
2. 水相構造化剤
構造化剤は、組成物の水相の粘度を高める成分または該成分の組み合わせである水相構造化剤であってよい。かかる薬剤の例を含む好適な水相構造化剤としては、様々なアクリル酸系増粘剤、天然または合成ガムなどが挙げられる。
【0070】
(a). アクリレートポリマー
例えば、モノマーAおよびB(Aはアクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物からなる群から選択され、Bはアクリル酸C1-22アルキル、メタクリル酸C1-22アルキルおよびそれらの混合物からなる群から選択される)からなるアクリルポリマー増粘剤が好適である。1つの実施形態において、Aのモノマーは1つ以上のアクリル酸またはメタクリル酸を含み、Bのモノマーは、アクリル酸C1-10アルキル、最も好ましくはアクリル酸C1-4アルキル、メタクリル酸C1-10アルキル、最も好ましくはメタクリル酸C1-4アルキル、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、Bのモノマーは、1つ以上のアクリル酸またはメタクリル酸メチルまたはエチルである。アクリルコポリマーは、ポリマーの重量の約10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%、より好ましくは25〜45重量%の固形分と、残りの水を有する水溶液として供給することができる。アクリルコポリマーの組成物は、約0.1〜99部のAのモノマーと、約0.1〜99部のBのモノマーを含み得る。アクリルポリマー溶液としては、Seppic, Inc.により商標名Capigelとして販売されているものが挙げられる。
【0071】
A、BおよびCモノマーのコポリマーであるアクリルポリマー増粘剤であって、AおよびBが上記に定義される通りであり、Cが一般式
【化9】

[式中、Zは-(CH2)mであり、mは1〜10、nは2〜3、oは2〜200であり、RはC10-30直鎖または分岐鎖のアルキルである]
を有するものも好適である。上記の二級増粘剤の例は、AおよびBが上記に定義される通りであり、CがCOであり、n、oおよびRが上記に定義される通りであるコポリマーである。かかる二級増粘剤の例としては、Rohm & Haasにより商標名Acrysol ICS-1として販売されているアクリル酸/メタクリル酸ステアレス-20コポリマーが挙げられる。
【0072】
1つ以上の親水性単位と、脂肪鎖を含有する1つ以上のアリルエーテル単位とを含むアクリレート系アニオン性両親媒性ポリマーも好適である。親水性単位が、エチレン性不飽和アニオン性モノマー、より具体的にはアクリル酸、メタクリル酸またはそれらの混合物などのビニルカルボン酸を含み、脂肪鎖を含有するアリルエーテル単位が、式
CH2=CR'CH2OBnR
[式中、R'はHまたはCH3を示し、Bはエチレンオキシ基を示し、nは0または1〜100の整数であり、Rは、8〜30個の炭素原子、好ましくは10〜24個、さらにより具体的には12〜18個の炭素原子を含むアルキル、アリールアルキル、アリール、アルキルアリールおよびシクロアルキル基から選択される炭化水素基を示す]
で表されるモノマーに相当するものが好ましい。この場合、より好ましいのは、R'がHを示し、nが10に等しく、Rがステアリル(C18)基を示すものである。この種類のアニオン性両親媒性ポリマーは、米国特許第4,677,152号および同第4,702,844号において記載され、また調製されており、両文献はいずれも参照によりそのまま本明細書に組込まれる。これらのアニオン性両親媒性ポリマーの中には、20〜60重量%のアクリル酸および/またはメタクリル酸、5〜60重量%のメタクリル酸低級アルキル、2〜50重量%の上記の脂肪鎖を含有するアリルエーテル、および0〜1重量%の架橋剤(周知の共重合可能なポリエチレン性不飽和モノマー、例えばフタル酸ジアリル、(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸(ポリ)エチレングリコールおよびメチレンビスアクリルアミドである)で形成されるポリマーがある。かかるポリマーの1つの市販例は、メタクリル酸、アクリル酸エチル、ステアリルアルコールまたはステアレス-10のポリエチレングリコール(10EO単位を有する)エーテルの架橋ターポリマー、特にAllied Colloids社からSALCARE SC80およびSALCARE SC90という名称で販売されているものであり、これらは、メタクリル酸、アクリル酸エチルおよびステアレス-10アリルエーテル(40/50/10)の架橋ターポリマーを30%含有する水性エマルションである。
【0073】
ポリアクリレート-3(メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メチルスチレンイソシアン酸イソプロピルおよびベヘン酸PEG-40モノマーのコポリマー);ポリアクリレート-10(アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、アクリルアミドおよびビニルピロリドンモノマーのコポリマー);またはポリアクリレート-11(アクリロイルジメチルアクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ブチルおよびアクリルアミドモノマーのコポリマー)などのアクリレートコポリマーも好適である。
【0074】
1つ以上のアクリル基が置換長鎖アルキル(例えば6〜40個、10〜30個など)基を有し得る架橋アクリレート系ポリマー、例えばアクリレート/アクリル酸C10-30アルキルクロスポリマー(アクリル酸C10-30アルキルと、アクリル酸、メタクリル酸またはスクロースのアリルエーテルもしくはペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋したそれらの単純エステルの1つの1つ以上のモノマーとのコポリマー)も好適である。かかるポリマーは、CarbopolまたはPemulenという商標名で一般に販売されている。
【0075】
水相増粘剤として特に好適なのは、Clariantから商標Aristoflexで販売されているアクリレート系ポリマー増粘剤、例えばAristoflex AVC(アクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/VPコポリマー);Aristoflex AVL(カプリル/カプリントリグリセリド、トリラウレス-4およびセスキイソステアリン酸ポリグリセリル-2を含有する混合物中に分散させたAVC中に見出されたポリマーと同じポリマー);またはAristoflex HMB(アクリロイルジメチルタウリン酸アンモニウム/メタクリル酸べへネス-25クロスポリマー)などである。
【0076】
(b). 高分子量PEGまたはポリグリセリン
水相増粘剤として、重合度が1,000〜200,000である様々なポリエチレングリコール(PEG)誘導体も好適である。かかる成分は、記号「PEG」に続く1000単位の重合度によって示され、例えばPEG-45Mは45,000個のエチレンオキシドの繰り返し単位を有するPEGを意味する。好適なPEG誘導体の例としては、PEG2M、5M、7M、9M、14M、20M、23M、25M、45M、65M、90M、115M、160M、180Mなどが挙げられる。
【0077】
繰返し部分の数が15〜200個、好ましくは約20〜100個であるグリセリンの繰返し部分であるポリグリセリンも好適である。好適なポリグリセリンの例としては、CFTA名ポリグリセリン-20、ポリグリセリン-40を有するものなどが挙げられる。
【0078】
(c). 多糖
水相増粘剤として、キサンタンガム、セルロース、デキストリン、シクロデキストリン、ヒドロキシエチルセルロース、アカシアガムなどの様々な種類の多糖も好適である。
【0079】
D. 揮発性油
本組成物は、乾燥剤として、または当該組成物の美観もしくは展延性を改善するために、1種以上の揮発性油または溶媒を含み得る。本組成物に含まれる場合、かかる揮発性油は、組成物全体の約0.001〜75重量%、好ましくは約0.005〜70重量%、より好ましくは約0.1〜65重量%であり得る。揮発性油は、シリコーンまたはパラフィン系炭化水素を含み得る。かかる揮発性油は、一般に25℃で約0.5〜5センチストークの粘度を有し、直鎖シリコーン、環状シリコーン、分岐状シリコーン、パラフィン系炭化水素またはそれらの混合物が挙げられる。
【0080】
1. 揮発性シリコーン
環状シリコーンは、一般式:
【化10】

[式中、n=3〜6である]
で表される。
【0081】
本発明の直鎖揮発性シリコーンは、一般式:
【化11】

[式中、n=0、1、2、3、4、または5、好ましくは0、1、2、3、または4]
を有する。
【0082】
分岐状揮発性シリコーンは、一般に、式:
【化12】

[式中、RはC1-4アルキル、好ましくはメチルである]
で表される。
【0083】
直鎖および環状揮発性シリコーンは、Dow Corning CorporationおよびGeneral Electricなどの様々な商業的供給源から入手可能である。Dow Corningの揮発性シリコーンは、商標名Dow Corning 244、245、344および200 fluidとして販売されている。これらの流体は、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどを含む。ヘキサメチルジシロキサン(粘度0.65センチストーク(略称cst))、オクタメチルトリシロキサン(1.0cst)、デカメチルテトラシロキサン(1.5cst)、ドデカメチルペンタシロキサン(2cst)およびそれらの混合物などの直鎖揮発性シリコーンも好適である。
【0084】
好適な分岐状揮発性シリコーンとしては、メチルトリメチコン、エチルトリメチコン、プロピルトリメチコン、ブチルトリメチコンなどが挙げられる。メチルトリメチコンは、Shin-Etsu Siliconesから購入することができ、商標名TMF1.5を有し、25℃で1.5センチストークの粘度を有する。
【0085】
2. 揮発性パラフィン系炭化水素
揮発性油として、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子、より好ましくは8〜16個の炭素原子を有する様々な直鎖または分岐鎖パラフィン系炭化水素も好適である。好適な炭化水素としては、米国特許第3,439,088号および同第3,818,105号に開示されるペンタン、ヘキサン、ヘプタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、トリデカンおよびC8-20イソパラフィンが挙げられ、これらの文献はいずれも参照によりその全体を本明細書に組み入れるものとする。
【0086】
好ましい揮発性パラフィン系炭化水素は、70〜225、好ましくは160〜190の分子量および30〜320℃、好ましくは60〜260℃の沸点、25℃で約10cst未満の粘度を有する。かかるパラフィン系炭化水素は、EXXONから商標ISOPARSで、およびPermethyl Corporationから入手可能である。好適なC12イソパラフィンは、Permethyl Corporationにより商標名Permethyl 99Aとして製造されている。イソヘキサデカン(商標名Permethyl Rを有する)などの市販の様々なC16イソパラフィンも好適である。
【0087】
G. 粒状物質
本発明の組成物は、顔料の形態の粒状物質、不活性微粒子またはそれらの混合物を含み得る。本組成物に含まれる場合、推奨範囲は、組成物全体の約0.1〜75重量%、好ましくは約0.5〜70重量%、より好ましくは約0.1〜65重量%である。本組成物が顔料と粉末との混合物を含み得る場合、好適な範囲として、組成物全体の重量に対して約0.01〜75重量%の顔料および0.1〜75重量%の粉末が挙げられる。
【0088】
1. 粉末
粒状物質は、着色されたまたは着色されていない(例えば白色の)非顔料粉末であってよい。好適な非顔料粉末としては、オキシ塩化ビスマス、雲母チタン、ヒュームドシリカ、球状シリカ、メタクリル酸ポリメチル、微粉化テフロン(登録商標)、窒化ホウ素、アクリレートコポリマー、ケイ酸アルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、ベントナイト、ケイ酸カルシウム、セルロース、白亜、トウモロコシデンプン、珪藻土、フラー土、グリセリルデンプン、ヘクトライト、水和シリカ、カオリン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、三ケイ酸マグネシウム、マルトデキストリン、モンモリロナイト、微結晶セルロース、米デンプン、シリカ、タルク、雲母、二酸化チタン、ラウリン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛、ロジン酸亜鉛、アルミナ、アタパルジャイト、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、デキストラン、カオリン、ナイロン、シリル化シリカ、絹粉末、絹雲母、大豆粉、酸化スズ、水酸化チタン、リン酸三マグネシウム、クルミ殻粉末またはそれらの混合物が挙げられる。上記の粉末は、レシチン、アミノ酸、鉱物油、シリコーンまたは様々な他の薬剤の単独もしくは組合せのいずれかで表面処理することが可能であり、これらは粉末表面を被覆し、粒子をより親油性の性質にする。
【0089】
2. 顔料
粒状物質は、様々な有機および/または無機顔料を含み得る。有機顔料は一般に、D&CおよびFD&Cブルー、ブラウン、グリーン、オレンジ、レッド、イエロー等として示されるアゾ、インジゴイド、トリフェニルメタン、アントロキノンおよびキサンチン染料などの様々な芳香族型である。有機顔料は一般に、レーキと呼ばれる認可された着色添加剤の不溶性金属塩からなる。無機顔料としては、酸化鉄、ウルトラマリン、クロム、水酸化クロム染料およびそれらの混合物が挙げられる。レッド、ブルー、イエロー、ブラウン、ブラックおよびそれらの混合物の酸化鉄が好適である。
【0090】
E. 保存剤
本組成物は、組成物全体の0.001〜8重量%、好ましくは0.01〜6重量%、より好ましくは0.05〜5重量%の保存剤を含み得る。様々な保存剤が適しており、例えば、安息香酸、ベンジルアルコール、ベンジルヘミホルマール、ベンジルパラベン、5-ブロモ-5-ニトロ-1,3-ジオキサン、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、ブチルパラベン、フェノキシエタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ジアゾリジニル尿素、安息香酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、カプリリルグリコール、ビグアニド誘導体、フェノキシエタノール、カプタン、二酢酸クロルヘキシジン、二グルコン酸クロルヘキシジン、二塩酸クロルヘキシジン、クロロアセトアミド、クロロブタノール、p-クロロ-m-クレゾール、クロロフェン、クロロチモール、クロロキシレノール、m-クレゾール、o-クレゾール、DEDMヒダントイン、ジラウリン酸DEDMヒダントイン、デヒドロ酢酸、ジアゾリジニル尿素、ジイセチオン酸ジブロモプロパミジン、DMDMヒダントインなどが挙げられる。1つの好適な実施形態において、本組成物はパラベンを含まない。
【0091】
F. 皮膜形成ポリマー
特定の場合、本発明の組成物に皮膜形成ポリマーを含めることが望ましい。これは特に、本組成物が着色された化粧用組成物の形態である場合、または本組成物が皮膚に十分に付着するのを確実にすることが望ましい場合である。
【0092】
本組成物に含まれる場合、上記のポリマーは、組成物全体の約0.01〜85重量%、好ましくは約0.1〜75重量%、好ましくは約0.5〜40重量%であり得る。かかるポリマーは、シリコーン、シリコーンと有機基とのコポリマー、または有機基を全体に含むポリマーもしくはコポリマーであってよい。好適な皮膜形成ポリマーを構築するために使用し得る有機モノマーの例としては、スチレン、ビニルピロリドン、アクリル酸もしくはメタクリル酸またはそのC1-10単純エステル(例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル)などが挙げられる。有機モノマーは、例えばアンモニア、ナトリウム、カリウムなどの塩、(例えば、アクリル酸アンモニウム、メタクリル酸アンモニウム、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸ナトリウムなど)で中和することができる。有機モノマーは、本明細書に記載されるようなグリコール、脂肪酸、エステルなどの他の有機成分と共重合させることができる。好適な皮膜形成ポリマーとして、一般にアクリル酸シリコーンコポリマーと呼ばれる1種のポリマーなどの有機モノマーとシリコーンのコポリマーも挙げられる。かかるポリマーの1例として、3M Companyから商標名VS-70として販売されているポリジメチルシロキサン-g-ポリアクリレートが挙げられる。シリコーン樹脂と呼ばれる一群のシリコーン(トリメチルシロキシシリケートまたはポリメチルシルセスキオキサン)などのシリコーン皮膜形成ポリマーも好適である。所望の目的の利益によって、本発明の組成物では様々な皮膜形成ポリマーを使用することができる。
【0093】
G. 日焼け止め剤
本発明の組成物に1種以上の日焼け止め剤を含めることが望ましい場合もある。かかる日焼け止め剤としては、化学的なUVAもしくはUVB日焼け止め剤または微粒子形態の物理的日焼け止め剤が挙げられる。ニコチンアミドリボシドを含有する本組成物への日焼け止め剤の包含は、日中、皮膚にさらなる保護を与え、また皮膚に対するニコチンアミドリボシドの有効性を促進する。
【0094】
1. UVA化学的日焼け止め剤
必要に応じて、本組成物は1種以上のUVA日焼け止め剤を含み得る。「UVA日焼け止め剤」という用語は、約320〜400nmの波長範囲のUV線を遮断する化学化合物を意味する。好ましいUVA日焼け止め剤は、一般式
【化13】

[式中、R1はH、ORおよびNRRであり、ここで各Rは独立に、H、C1-20直鎖または分岐鎖アルキルであり、R2はHまたはOHであり、R3はH、C1-20直鎖または分岐鎖アルキルである]
を有するジベンゾイルメタン化合物である。
【0095】
R1がORであり、ここでRがC1-20直鎖または分岐アルキル、好ましくはメチルであり、R2がHであり;またR3がC1-20直鎖または分岐鎖アルキル、より好ましくはブチルである場合が好ましい。
【0096】
この一般式で表される好適なUVA日焼け止め化合物の例としては、4-メチルジベンゾイルメタン、2-メチルジベンゾイルメタン、4-イソプロピルジベンゾイルメタン、4-tert-ブチルジベンゾイルメタン、2,4-ジメチルジベンゾイルメタン、2,5-ジメチルジベンゾイルメタン、4,4'-ジイソプロピルベンゾイルメタン、4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタン、4,4'-ジイソプロピルベンゾイルメタン、2-メチル-5-イソプロピル-4'-メトキシジベンゾイルメタンおよび2-メチル-5-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタンなどが挙げられる。アボベンゾンとも呼ばれる4-tert-ブチル-4'-メトキシジベンゾイルメタンが特に好ましい。アボベンゾンはGivaudan-Roureから商標名Parsol 1789として、また、Merck & Co.から商標名Eusolex 9020として市販されている。
【0097】
他の種類のUVA日焼け止め剤としては、式:
【化14】

を有するテレフタリリデンジカンフルスルホン酸である、商標名MexorylTMとして販売されている日焼け止め剤のエカムスルなどのジカンフルスルホン酸誘導体が挙げられる。
【0098】
本組成物は約0.001〜20重量%、好ましくは0.005〜5重量%、より好ましくは約0.005〜3重量%のUVA日焼け止め組成物を含み得る。本発明の好ましい実施形態において、UVA日焼け止め剤はアボベンゾンであり、組成物全体の約3重量%以下で存在する。
【0099】
2. UVB化学的日焼け止め剤
「UVB日焼け止め剤」という用語は、約290〜320nmの波長範囲のUV線を遮断する化合物を意味する。米国特許第3,215,724号(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に記載されるα-シアノ-β,β-ジフェニルアクリル酸エステルなどの様々なUVB化学的日焼け止め剤が存在する。α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリル酸エステルの1つの特定の例が、2-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートであるオクトクリレンである。特定の場合、本組成物は組成物全体の約110重量%以下のオクトクリレンを含み得る。好適な量は約0.001〜10重量%である。オクトクリレンはBASFから商標名Uvinul N-539として購入することができる。
【0100】
他の好適な日焼け止め剤としては、米国特許第3,781,417号(参照によりそのまま本明細書に組み入れられる)に記載されるベンジリデンカンファー誘導体が挙げられる。かかるベンジリデンカンファー誘導体は、一般式:
【化15】

[式中、Rはp-トリルまたはスチリル、好ましくはスチリルである]
を有する。Merckにより商標名Eusolex 6300として販売されている脂溶性UVB日焼け止め化合物である4-メチルベンジリデンカンファーが特に好ましい。
【0101】
一般式:
【化16】

[式中、RおよびR1は、それぞれ独立にC1-20直鎖または分岐鎖アルキルである]
を有するケイ皮酸エステル誘導体も好適である。Rがメチルであり、R1が分岐鎖C1-10、好ましくはC8アルキルである場合が好ましい。好ましい化合物は、オクトキシネートとも呼ばれるメトキシケイ皮酸エチルヘキシルまたはメトキシケイ皮酸オクチルである。この化合物はGivaudan Corporationから商標名Parsol MCXとして、またはBASFから商標名Uvinul MC80として購入することができる。かかるメトキシケイ皮酸エステルのモノ−、ジ−およびトリエタノールアミン誘導体(メトキシケイ皮酸ジエタノールアミンなど)も好適である。上記の化合物の芳香族エーテル誘導体であるシノキサートも許容される。本組成物に含まれる場合、組成物中に見られるシノキサートは組成物全体の約3重量%以下でなければならない。
【0102】
UVB日焼け止め剤として、一般式:
【化17】

[式中、R〜R9は、それぞれ独立にH、OH、NaO3S、SO3H、SO3Na、Cl、R''、OR''であり、ここでR''はC1-20直鎖または分岐鎖アルキルである]
を有する様々なベンゾフェノン誘導体も好適である。かかる化合物の例としては、ベンゾフェノン1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11および12が挙げられる。ベンゾフェノン誘導体がベンゾフェノン3(オキシベンゾンとも呼ばれる)、ベンゾフェノン4(スリソベンゾンとも呼ばれる)およびベンゾフェノン5(スリソベンゾンナトリウム)などである場合が特に好ましい。最も好ましいのはベンゾフェノン3である。
【0103】
一般式:
【化18】

[式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立に、H、OH、NH2またはC1-20直鎖もしくは分岐鎖アルキルである]
を有する特定のサリチル酸メンチル誘導体も好適である。R1、R2およびR3がメチルであり、R4がヒドロキシルまたはNH2である場合(この化合物の名称はサリチル酸ホモメンチル(ホモサラートとしても知られる)またはアントラニル酸メンチルである)が特に好ましい。ホモサラートはMerckから商標名Eusolex HMSとして市販され、アントラニル酸メンチルはHaarmann & Reimerから商標名Heliopanとして市販されている。本組成物に含まれる場合、組成物中に見られるホモサラートは組成物全体の約15重量%以下でなければならない。
【0104】
様々なアミノ安息香酸誘導体は好適なUVB吸収剤であり、一般式:
【化19】

[式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、H、1つ以上のヒドロキシ基で置換されていてよいC1-20直鎖または分岐鎖アルキルである]
を有するものが挙げられる。R1がHまたはC1-8直鎖もしくは分岐鎖アルキルであり、R2およびR3がHまたはC1-8直鎖もしくは分岐鎖アルキルである場合が特に好ましい。PABA、エチルヘキシルジメチルPABA(パディメートO)およびエチルジヒドロキシプロピルPABAなどが特に好ましい。本組成物に含まれる場合、組成物中に見られるパディメートOは組成物全体の約8重量%以下でなければならない。
【0105】
サリチル酸エステル誘導体も許容されるUVB吸収剤である。かかる化合物はRが直鎖または分岐鎖アルキルである一般式を有し、例えば、モノ−、ジ−またはトリエタノールアミンから形成される上記化合物の誘導体が挙げられる。サリチル酸オクチル、サリチル酸TEA、サリチル酸DEAおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0106】
通常、本組成物中に含まれるUVB化学的日焼け止め剤の量は、組成物全体の約0.001〜45重量%、好ましくは0.005〜40重量%、より好ましくは約0.01〜35重量%であり得る。
【0107】
必要に応じて、本発明の組成物は、約1〜100、好ましくは約10〜75の特定のSPF(日光防止指数)値を有し、UVAとUVBの比が1〜3:1であるように製剤化することができる。
【0108】
V. 組成物の形態
本組成物は、クリーム、ローション、美容液、ジェル、溶液、スティック、ケーキ、粉末などの形態であってよい。この組成物は、洗顔料、化粧水、頬紅、スキンクリームまたはローション、ファンデーションメークアップ、コンシーラー、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、頬紅、口紅、リップグロスなどであり得る。
【0109】
例えば、スキンクリームまたはローションは、水中油型または油中水型エマルション形態であってよく、本明細書に記載される範囲の量の本明細書で言及される水および油に加えて、本明細書で言及される成分のいずれか1種以上を本明細書に記載される量で含む。
【0110】
典型的な洗顔料は、本明細書に記載される範囲の本明細書で言及される他の成分に加えて、約0.01〜99%の水と、約0.1〜95%の1種以上の界面活性剤とを含み得る。
【0111】
化粧水は、典型的には水性または水性アルコール性であり、本明細書に記載される範囲の本明細書で言及される成分のいずれかに加えて、約0.1〜99%の水または水と保湿剤もしくは溶媒(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリコールなど)との混合物を含む。
【0112】
本発明の組成物は、ファンデーションメークアップまたはコンシーラーの形態であってよい。典型的には、このような種類の組成物は、約0.1〜95%の水、約0.1〜80%の油、および約0.01〜65%の顔料を含む。ファンデーションまたはコンシーラーは無水形態であってもよく、その場合は、約0.1〜95%の油と、約0.1〜90%の微粒子とを含み得る。
【0113】
本組成物が口紅またはリップグロスの形態である場合、典型的には、これらは約0.1〜95%の油、約0.1〜85%の構造化剤、および約0.1〜85%の微粒子を含む。
【0114】
本発明の組成物は、UVAもしくはUVB日焼け止め剤またはそれらの混合物を含む日焼け止め剤の形態であってよい。かかる日焼け止め剤は、油中水型もしくは水中油型エマルションまたは無水組成物の形態であり得る。
【0115】
本発明の組成物は、マスカラまたはアイライナーの形態であってもよい。マスカラは、無水またはエマルションのいずれかの形態である。マスカラ形態である場合、このマスカラは、約0.1〜80%の範囲の1種以上の皮膜形成ポリマーと約0.1〜70%の量の微粒子に加えて、約0.1〜95%の水と約0.5〜80%の油を含む油中水型または水中油型エマルション形態として存在し得る。
【0116】
本発明の範囲内の組成物の他の実施形態としては、限定するものではないが、シトラス・ジャバラ抽出物に加えて、約0.001〜95%の水、約0.01〜90%の皮膚保護軟化剤、約0.01〜25%の非イオン性有機界面活性剤、約0.001〜10%の1種以上の抗酸化剤、約0.01〜25%の1種以上の保湿剤を含むスキンクリームまたはローションが挙げられる。皮膚保護軟化剤がエステルまたはシリコーンであり、界面活性剤がアルコキシル化アルコールまたはそれらの誘導体であり、抗酸化剤がガルシニア・マンゴスタナ抽出物を含み、保湿剤がグリセリンまたはエチルへキシルグリセリンを含む場合が好ましい。
【0117】
シトラス・ジャバラ抽出物に加えて、化粧水は約0.001〜99%の水、約0.001〜95%の保湿剤(例えばグリセリンまたはアルキレングリコール)、および場合により約0.001〜30%の1種以上の抗酸化剤を含む。
【0118】
洗顔料は、シトラス・ジャバラ抽出物に加えて、約0.001〜99%の水、約0.001〜60%の界面活性剤、および場合により約0.001〜95%の保湿剤、および場合により約0.001〜30%の1種以上の抗酸化剤を含む。
【0119】
VI. 方法、キット、およびレジメン
本発明は、シトラス・ジャバラ抽出物を含む組成物を皮膚に適用するステップを含んでなる、刺激、炎症、またはアレルギー状態の悪影響を改善するために皮膚を処置する方法も包含する。
【0120】
本組成物は、好ましくはスキンクリームまたはローションの形態である。本組成物は、1日1回以上(朝および就寝前の夜など)皮膚に適用することができる。
【0121】
本発明は、洗顔料または化粧水の1種以上とシトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物の1種以上とを含む、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのキットにも向けられる。
【0122】
本発明は、皮膚を洗浄しまたは皮膚の調子を整え、その後シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物を適用するステップを含んでなる、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのレジメンにも向けられる。
【0123】
本発明を、例示の目的のためにのみ記載される下記の実施例に関連してさらに説明する。
【実施例】
【0124】
実施例1
シトラス・ジャバラ抽出物を、ヒスタミン放出の遮断における有効性を測定するために試験した。ヒスタミンは、免疫攻撃に応答して皮膚および組織から放出される。ヒスタミンの放出を遮断する成分は、それらが組み込まれるスキンケア製品の鎮静特性を改善する。この試験を行うため、ラット好塩基性白血病細胞(株RBL-2H3)を、10%熱不活性化ウシ胎仔血清を含むダルベッコ変法イーグル培地(Dulbecco's Modified Eagle Medium(DMEM))中で成長させ、24ウェルプレートに2.5x105細胞/ウェルで播種した。これらの細胞を一晩成長させ、ウェルから培地を除去して、1mlのPIPES緩衝液(100mM NaCl、5mM KCl、0.4mM MgCl2、1mM CaCl2、および5.6mM D-グルコース)(pH7.2)と置換した。この緩衝液は、ヒスタミンの自然放出を低下させることが知られている。原液を調製した:(1)陽性対照:DMSO中のジオスメチン(diosmetin)の10mM原液;(2)活性成分:シトラス・ジャバラ粉末(DMSO中で100mg/ml);(3)カルシウムイオノフォア:DMSO中で2mM(Sigma Calcium Ionophore A23187)。対照は、各ウェルにおける該対照の最終濃度が1、3、10、および30μMまで異なるように、4つの別々のウェルに添加した。活性成分は、各プレートにおいて、0.01%、0.05%、0.1%、および0.5%w/vの様々なパーセント濃度で4つの他のウェルに添加した。1つのウェルには、細胞のみを入れて未処理のままとした。別の単一のウェルは、DMSOを1%v/v未満の最終濃度で含んでいた。活性成分と対照のウェルを、37℃で25〜30分間インキュベートさせた。カルシウムイオノフォアを、活性成分と対照のウェルに添加し、当該ウェルにおいて2μMの最終濃度を与えた。カルシウムイオノフォアを、細胞のみを含む別の単一のウェルにも添加し、1%未満のDMSO中またはDMSOなしで最終濃度2μMを与えた。これらのウェルを、37℃でさらに25〜30分間インキュベートした。IBL Transatlantic companyから販売されているヒスタミンELISAキット(カタログ番号RE59221)を用いて、ウェル中の細胞上清をヒスタミン放出について試験した。キットの使用説明書に従って、4パラメータ方程式および相関係数R2=1を用いて曲線をプロットした。手短に言えば、陽性対照ジオスメチンは、濃度30μMでヒスタミン放出の85%阻害を示し、シトラス・ジャバラ抽出物サンプルは0.5%濃度で84%のヒスタミン放出を示し、これによりこの抽出物が抗ヒスタミン活性を有することを明らかにしていた。
【0125】
実施例2
皮膚処置組成物を下記のとおりに調製した:
【表1】


【0126】
上記の成分を組み合わせて十分に混合することによって本組成物を調製し、刺激されたまたは炎症を起こした皮膚を処置するのに有用なスキンクリームを形成した。
【0127】
本発明は好適な実施形態に関連して記載されているが、本発明の範囲を記載される特定の形態に限定することを意図するものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の精神および範囲に包含され得る代替、改変、および均等物に及ぶことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトラス・ジャバラ(Citrus Jabara)抽出物を含む局所用スキンケア組成物。
【請求項2】
スキンクリーム、ローション、ファンデーションメークアップ、化粧水、洗顔料、または美容液である、請求項1の組成物。
【請求項3】
1種以上の抗酸化剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
抗酸化剤が、一重項酸素捕捉特性を有する植物抽出物である、請求項3の組成物。
【請求項5】
1種以上の皮膚保護軟化剤をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項6】
シトラス・ジャバラ抽出物を含む、皮膚に対する抗ヒスタミン効果を有する局所用スキンケア組成物。
【請求項7】
一重項酸素捕捉能を有する抗酸化剤をさらに含む、請求項6の組成物。
【請求項8】
抗酸化剤がビタミンまたは植物抽出物である、請求項7の組成物。
【請求項9】
シトラス・ジャバラ抽出物を含む組成物を皮膚に適用するステップを含んでなる、刺激、炎症、またはアレルギー状態の悪影響を改善するために皮膚を処置する方法。
【請求項10】
組成物を1日2回適用する、請求項9の方法。
【請求項11】
組成物をスキンクリームまたはローションの形態で適用する、請求項9の方法。
【請求項12】
皮膚を、組成物の適用の前に洗顔料または化粧水で処置する、請求項9の方法。
【請求項13】
組成物が水中油型エマルションの形態である、請求項9の方法。
【請求項14】
洗顔料または化粧水の1種以上と、シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物の1種以上とを含む、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのキット。
【請求項15】
洗顔料と化粧水を含む、請求項14のキット。
【請求項16】
洗顔料または化粧水がシトラス・ジャバラ抽出物も含む、請求項14のキット。
【請求項17】
組成物が油中水型エマルションである、請求項14のキット。
【請求項18】
皮膚を洗浄しまたは皮膚の調子を整え、その後シトラス・ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物を適用するステップを含んでなる、刺激された、炎症を起こした、またはアレルギーを起こした皮膚状態を処置するためのレジメン。
【請求項19】
シトラス・ジャバラ抽出物を含む洗顔料で皮膚を洗浄する、請求項18のレジメン。
【請求項20】
シトラス・ジャバラ抽出物を含む化粧水で皮膚の調子を整える、請求項18のレジメン。

【公表番号】特表2011−510980(P2011−510980A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544952(P2010−544952)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/052922
【国際公開番号】WO2009/096988
【国際公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(598100128)イーエルシー マネージメント エルエルシー (112)
【Fターム(参考)】