説明

シナカルセット塩酸塩およびその多形形態を調製するためのプロセス

本発明は、シナカルセット塩酸塩、シナカルセット塩酸塩の新たな多形結晶性形態、非晶性シナカルセット塩酸塩およびそれらを調製するための合成プロセスに関する。本発明は、シナカルセットを得るための、チタンイソプロポキシドの非存在下での、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III)の(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(化合物II)による還元アミノ化、および、場合により、シナカルセットをその対応する塩および/またはそれらの溶媒和物のうちの1つに変換することを包含するシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年6月8日に出願された米国仮特許出願第60/811,782号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/811,782号は、明示的にその全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、シナカルセット塩酸塩、シナカルセット塩酸塩の新たな多形結晶性形態、非晶性シナカルセット塩酸塩およびそれらを調製するための合成プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連分野の説明)
シナカルセット塩酸塩は、癌に起因する腎不全または高カルシウム血症患者における副甲状腺機能亢進症の治療および骨密度の維持に有用であることが知られている市販の薬学的に活性な物質である。シナカルセット塩酸塩は、下に示す式(I)を有するN−[1−(R)−(−)−(1−ナフチル)エチル]−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−アミノプロパン塩酸塩についての一般的な国際的名称である。
【0004】
【化1】

シナカルセット塩酸塩は、経口カルシウム擬態薬である。シナカルセット塩酸塩は、米国では、Sensipar(登録商標)という名前で市販されており、欧州では、Mimpara(登録商標)およびParareg(登録商標)という名前で市販されている。シナカルセット塩酸塩は、透析を受けている慢性腎臓疾患患者における続発性副甲状腺機能亢進症の治療および副甲状腺癌患者における高カルシウム血症の治療用に認可されている。
【0005】
特許文献1は、一般的に、シナカルセットおよびその薬学的に許容できる酸付加塩について記載しているが、それらを調製するためのいかなる実施例も提供していない。
【0006】
特許文献2は、シナカルセットおよびその薬学的に許容できる酸塩化物付加塩について記載しているが、シナカルセットおよび/またはシナカルセット塩酸塩を調製するためのいかなる実施例も提供していない。
【0007】
非特許文献1は、特許文献2に記載されている一般手順に従ってシナカルセット塩酸塩を調製するための合成スキームを開示している。この開示された合成経路を下のスキーム1に図示する。しかしながら、この合成経路は、チタンイソプロポキシド触媒を使用する。これに関して、金属触媒は、工業的実施にとって不利である。
【0008】
【化2】

上のスキーム1に図示されている合成経路を除けば、シナカルセット塩酸塩を調製するための具体的実施例は文献に報告されていない。したがって、工業的規模のための、触媒としてのTi(OiPr)の使用を回避するシナカルセットおよびその塩を調製するためのプロセスが当技術分野において必要である。
【0009】
特許文献3は、Sensipar(登録商標)として現在市販されている結晶性シナカルセット塩酸塩が、結晶性形態I(形態Iと呼ばれている)として特性決定されることを開示し、それを調製するためのプロセスを包含する。さらに、特許文献4は、非晶性シナカルセット塩酸塩およびそれを調製するためのプロセスに関する。
【0010】
多形性は、医薬物質では極めてよくあることである。多形性は、結晶格子における分子の異なる配列および/または配座を有する2種以上の結晶相で存在する任意の物質の能力として一般に定義される。異なる多形体は、融点、溶解性、化学反応性などのそれらの物理的特性が異なる。これらは、溶解速度および生物学的利用能などの薬学的特性にかなり影響することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第6,011,068号明細書
【特許文献2】米国特許第6,211,244号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/127933号パンフレット
【特許文献4】国際公開第2006/127941号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Drugs 2002年、27巻(9号)、831〜836頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
新たな結晶性形態の発見は、医薬製品の特徴を改善する機会を提供する。したがって、シナカルセット塩酸塩の安定で、明確かつ再現性のある新たな結晶性形態が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスを提供する。特に、本発明は、シナカルセットを得るための、チタンイソプロポキシドの非存在下での、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III)の(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(化合物II)による還元アミノ化、および、場合により、シナカルセットをその対応する塩および/またはそれらの溶媒和物のうちの1つに変換することを包含するシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスを提供する。製造されるシナカルセットは、その塩酸塩に変換されることが好ましい。
【0015】
本発明の別の態様は、高度の化学的および光学的純度を有するシナカルセット、その塩および/または溶媒和物を包含する。
【0016】
驚いたことに、今回、シナカルセット塩酸塩が、少なくとも2種の新規な結晶性形態で存在することがあることが判明した。
【0017】
本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIおよびIIIと本明細書で称するシナカルセット塩酸塩の新たな結晶性形態、それらを製造する方法およびそれらの製剤を包含する。
【0018】
本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iおよび非晶性形態を製造する方法をさらに包含する。
【0019】
本発明の別の態様は、高度な化学的および光学的純度のシナカルセット塩酸塩形態Iである。
【0020】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.溶媒を除去すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、ジクロロメタン、エステル溶媒、エーテル溶媒、非プロトン性溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0021】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.溶媒からの再結晶によりシナカルセット塩酸塩を得ること、および
b.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、非プロトン性溶媒、水またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0022】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒中でシナカルセット塩酸塩を処理すること、
b.沈殿物として結晶性形態を回収すること、および
c.シナカルセット塩酸塩の結晶性形態を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、水、エタノールまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0023】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.第一の有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.得られた溶液を場合により濾過すること、
c.第二の溶媒を加えること、および
d.沈殿物として結晶性形態を回収することを一般的に含み、
第一の有機溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、塩素化溶媒、エーテル溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであり、第二の溶媒が、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、水またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0024】
別の態様において、本発明は、形態IIとして本明細書において記載されるシナカルセット塩酸塩の新規な結晶性形態を提供する。
【0025】
本発明の別の態様は、高度な化学的および光学的純度のシナカルセット塩酸塩形態IIである。
【0026】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.クロロホルムを除去すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含むプロセスを提供する。
【0027】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を懸濁すること、
b.得られた固体を濾過すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
有機溶媒が、塩素化溶媒であるプロセスを提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、形態IIIとして本明細書において記載されるシナカルセット塩酸塩の新規な結晶性形態を提供する。
【0029】
本発明の別の態様は、高度な化学的および光学的純度のシナカルセット塩酸塩形態IIIである。
【0030】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.第二の溶媒を加えること、
c.沈殿物として結晶性形態を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩の結晶性形態を乾燥することを一般的に含み、
第二の溶媒が、エーテル溶媒、炭化水素溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0031】
本発明の別の態様は、高度な化学的および光学的純度の非晶性シナカルセット塩酸塩である。
【0032】
別の態様において、本発明は、非晶性シナカルセット塩酸塩を調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.溶媒を除去すること、
c.沈殿物として非晶性形態を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩の非晶性形態を乾燥することを一般的に含み、
有機溶媒が、アルコール性溶媒、塩素化溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0033】
本発明は、総量の約85〜95%が、約283μm以下の直径を有する粒子からなる、好ましくは、総量の約85〜95%が、約80μm以下の直径を有する粒子からなる、より好ましくは、総量の約85〜95%が、約35μm以下の直径を有する粒子からなる粒径分布を有するシナカルセット塩酸塩をさらに包含する。
【0034】
本発明は、約0.6〜約2.7m/gの表面積を有するシナカルセット塩酸塩をさらに包含する。
【0035】
本発明のさらなる理解を提供するために包含され、本明細書に組み入れられ本明細書の一部分を構成する添付の図面は、本発明の原理を説明する役目を果たす説明と一緒に本発明の実施形態を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1において得られるシナカルセット塩酸塩形態IのX線粉末ディフラクトグラム(XRD)を示す図である。
【図2】実施例1において得られるシナカルセット塩酸塩形態Iの赤外(IR)スペクトルを示す図である。
【図3】実施例7において得られるシナカルセット塩酸塩形態IIのX線粉末ディフラクトグラム(XRD)を示す図である。
【図4】実施例12において得られるシナカルセット塩酸塩形態IIIのX線粉末ディフラクトグラム(XRD)を示す図である。
【図5】実施例13において得られるシナカルセット塩酸塩形態IIIの熱重量分析サーモグラム(TGA)を示す図である。
【図6】実施例13において得られる非晶性シナカルセット塩酸塩のX線粉末ディフラクトグラム(XRD)を示す図である。
【図7】実施例13において得られる非晶性シナカルセット塩酸塩の赤外(IR)スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に言及する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると見なされるべきではない。
【0038】
本発明は、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスを提供する。
【0039】
より詳細には、本発明は、シナカルセットを得るためのチタンイソプロポキシドの非存在下での、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III)の(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(化合物II)による還元アミノ化、および、場合により、シナカルセットをその対応する塩および/またはそれらの溶媒和物のうちの1つに変換することを包含するシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスを提供する。製造されるシナカルセットは、その塩酸塩に変換されることが好ましい。
【0040】
化合物IIは、上述のプロセスにおいて使用される場合、高い光学的純度(例えば、99.5%鏡像体過剰率を超える)であることが好ましい。
【0041】
還元剤は、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムであることが好ましい。
【0042】
上記に記載されているプロセスにより得られる得られたシナカルセットの塩および/または溶媒和物は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば、高度の化学的および光学的純度を有する。本発明の一実施形態において、本発明のシナカルセットの塩および/または溶媒和物は、約99.00%〜約99.95%の範囲の化学的純度および約99.0〜約100%の範囲の光学的純度を有する。本発明の別の実施形態において、本発明のシナカルセットの塩および/または溶媒和物は、約99.60%〜約99.80%の範囲の化学的純度および約99.90%〜約100%の光学的純度を有する。
【0043】
本発明は、シナカルセット塩酸塩の新たな結晶性形態(シナカルセット塩酸塩形態IIおよびIIIと本明細書で称する)、それらを製造する方法およびそれらの製剤を包含する。
【0044】
本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iおよび非晶性形態を製造する方法をさらに包含する。
【0045】
シナカルセット塩酸塩形態Iは、約6.9°、10.4°、13.8°、15.5°、17.8°、19.0°、21.2°、24.2°および25.4°における特徴的なピークを有するそのXRDパターン(2θ)(±0.2°)を特徴とする。図1は、シナカルセット塩酸塩形態IのXRDを図示している。図2は、3051、2966、2864、2796、2750、2712、2642、2513、2430、1587、1518、1450、1402、1379、1327、1252、1167、1128、1072、1018、980、922、899、878、845、799、775、731、704および664cm−1にその主ピークを有するシナカルセット塩酸塩形態Iの赤外スペクトルを図示している。シナカルセット塩酸塩形態Iは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば、高い化学的および光学的純度、低い残留溶媒含有量を有することをさらに特徴とし、不溶性の材料/化合物を一般的に含んでいない。
【0046】
本発明の一実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態Iは、約99.00%〜約99.95%の範囲の化学的純度および約99.0〜約100%の範囲の光学的純度を有する。本発明の別の実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態Iは、約99.60%〜約99.80%の範囲の化学的純度および約99.90%〜約100%の光学的純度を有する。
【0047】
シナカルセット塩酸塩形態IIは、約13.7°、14.3°、16.6°、17.5°、19.4°、20.3°、20.6°、23.3°および31.4°における特徴的なピークを有するそのXRDパターン(2θ)(±0.2°)を特徴とする。図3は、シナカルセット塩酸塩形態IIのXRDを図示している。シナカルセット塩酸塩形態IIは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば、高い化学的および光学的純度、低い残留溶媒含有量を有することをさらに特徴とし、不溶性の材料/化合物を一般的に含んでいない。
【0048】
本発明の一実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態IIは、約99.00%〜約99.95%の範囲の化学的純度および約99.0〜約100%の範囲の光学的純度を有する。本発明の別の実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態IIは、約99.60%〜約99.80%の範囲の化学的純度および約99.90%〜約100%の光学的純度を有する。
【0049】
シナカルセット塩酸塩形態IIIは、約10.0°、10.5°、16.2°、17.0°、17.8°、20.2°、21.5°および23.6°における特徴的なピークを有するそのXRDパターン(2θ)(±0.2°)を特徴とする。図4は、シナカルセット塩酸塩形態IIIのXRDを図示している。シナカルセット塩酸塩形態IIIは、クロロホルム溶媒和物であることをさらに特徴とする。図5は、シナカルセット塩酸塩形態IIIの熱重量分析サーモグラム(TGA)を図示している。シナカルセット塩酸塩形態IIIは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば、高い化学的および光学的純度を有することをさらに特徴とし、不溶性の材料/化合物を一般的に含んでいない。
【0050】
本発明の一実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態IIIは、約99.00%〜約99.95%の範囲の化学的純度および約99.0〜約100%の範囲の光学的純度を有する。本発明の別の実施形態において、シナカルセット塩酸塩形態IIIは、約99.60%〜約99.80%の範囲の化学的純度および約99.90%〜約100%の光学的純度を有する。
【0051】
非晶性シナカルセット塩酸塩は、図6に示すそのXRDパターンを特徴とする。図7は、非晶性シナカルセット塩酸塩の赤外スペクトルを図示している。非晶性シナカルセット塩酸塩は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によれば、高い化学的および光学的純度、低い残留溶媒含有量を有することをさらに特徴とし、不溶性の材料/化合物を一般的に含んでいない。
【0052】
本発明の一実施形態において、非晶性シナカルセット塩酸塩は、約99.00%〜約99.95%の範囲の化学的純度および約99.0〜約100%の範囲の光学的純度を有する。本発明の別の実施形態において、非晶性シナカルセット塩酸塩は、約99.60%〜約99.80%の範囲の化学的純度および約99.90%〜約100%の光学的純度を有する。
【0053】
本発明の別の態様は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.溶媒を除去すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、ジクロロメタン、エステル溶媒、エーテル溶媒、非プロトン性溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを包含する。
【0054】
適当なアルコール性溶媒は、C1〜C4の直鎖または分岐鎖アルコール溶媒およびそれらの混合物(メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよびn−ブタノールなど)を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいアルコール性溶媒は、例えば、エタノール、2−プロパノールおよび2−ブタノールを包含する。
【0055】
適当なケトン性溶媒は、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいケトン性溶媒は、例えば、アセトンおよびメチルエチルケトンを包含する。
【0056】
適当なエステル溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピルを包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエステル溶媒は、例えば、酢酸エチルを包含する。
【0057】
適当なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環式エーテルならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエーテル溶媒は、例えば、2−メチルテトラヒドロフランおよび1,4−ジオキサンを包含する。
【0058】
適当な非プロトン性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい非プロトン性溶媒は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびジメチルアセトアミドを包含する。
【0059】
溶媒除去は、室温における蒸発により行われることが好ましい。
【0060】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0061】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.溶媒からの再結晶によりシナカルセット塩酸塩を得ること、および
b.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、非プロトン性溶媒、水またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0062】
適当なアルコール性溶媒は、C1〜C4の直鎖または分岐鎖アルコール溶媒およびそれらの混合物(メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−ブタノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよびn−ブタノールなど)を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいアルコール性溶媒は、例えば、2−プロパノール、2−ブタノールおよびn−ブタノールを包含する。
【0063】
適当なケトン性溶媒は、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいケトン性溶媒は、例えば、メチルエチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンを包含する。
【0064】
適当なエステル溶媒は、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルを包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエステル溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチルおよび酢酸プロピルを包含する。
【0065】
適当なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテルおよびテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環式エーテルならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエーテル溶媒は、例えば、1,3−ジオキソランを包含する。
【0066】
適当な炭化水素溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンならびにそれらの異性体または混合物、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい炭化水素溶媒は、例えば、n−ヘプタンおよびトルエンを包含する。
【0067】
適当な非プロトン性溶媒は、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリルおよびそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい非プロトン性溶媒は、例えば、アセトニトリルを包含する。
【0068】
好ましい溶媒は、酢酸イソブチルとn−ヘプタンの混合物であり、酢酸イソブチルであることがより好ましい。
【0069】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0070】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒中でシナカルセット塩酸塩を処理すること、
b.沈殿物として結晶性形態を回収すること、および
c.シナカルセット塩酸塩の結晶性形態を乾燥することを一般的に含み、
溶媒が、水、エタノールまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0071】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0072】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.第一の有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.得られた溶液を場合により濾過すること、
c.第二の溶媒を加えること、および
d.沈殿物として結晶性形態を回収することを一般的に含み、
第一の有機溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、塩素化溶媒、エーテル溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであり、第二の溶媒が、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、水またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0073】
適当なアルコール性溶媒は、C〜Cの直鎖または分岐鎖アルコール溶媒およびそれらの混合物(メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよびn−ブタノールなど)を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいアルコール性溶媒は、例えば、メタノール、エタノールおよび2−プロパノールを包含する。
【0074】
適当なケトン性溶媒は、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソプロピルケトンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいケトン性溶媒は、例えば、アセトンを包含する。
【0075】
適当な塩素化溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルムおよびそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい塩素化溶媒は、例えば、ジクロロメタンを包含する。
【0076】
適当なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環式エーテルならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエーテル溶媒は、例えば、第一の有機溶媒としての1,4−ジオキサンおよびテトラヒドロフランならびに第二の溶媒としてのメチルtert−ブチルエーテルを包含する。
【0077】
適当な炭化水素溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンならびにそれらの異性体または混合物、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい炭化水素溶媒は、例えば、n−ヘプタンを包含する。
【0078】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0079】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.クロロホルムを除去すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含むプロセスを提供する。
【0080】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0081】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を懸濁すること、
b.得られた固体を濾過すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
有機溶媒が、塩素化溶媒であるプロセスを提供する。
【0082】
適当な塩素化溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルムおよびそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい塩素化溶媒は、例えば、クロロホルムを包含する。
【0083】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0084】
別の態様において、本発明は、シナカルセット塩酸塩形態IIIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.第二の溶媒を加えること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
第二の溶媒が、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0085】
適当なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環式エーテルならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエーテル溶媒は、例えば、メチルtert−ブチルエーテルを包含する。
【0086】
適当な炭化水素溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンならびにそれらの異性体または混合物、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい炭化水素溶媒は、例えば、n−ヘプタンを包含する。
【0087】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0088】
別の態様において、本発明は、非晶性シナカルセット塩酸塩を調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.溶媒を除去すること、
c.シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.シナカルセット塩酸塩を乾燥することを一般的に含み、
有機溶媒が、アルコール性溶媒、塩素化溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセスを提供する。
【0089】
適当なアルコール性溶媒は、C1〜C4の直鎖または分岐鎖アルコール溶媒およびそれらの混合物(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよびn−ブタノール)を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいアルコール性溶媒は、例えば、メタノールを包含する。
【0090】
適当な塩素化溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルムおよびそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい塩素化溶媒は、例えば、ジクロロメタンを包含する。
【0091】
適当なエーテル溶媒は、ジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテルおよびテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソランなどの環式エーテルならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましいエーテル溶媒は、例えば、テトラヒドロフランを包含する。
【0092】
適当な炭化水素溶媒は、n−ペンタン、n−ヘキサンおよびn−ヘプタンならびにそれらの異性体または混合物、シクロヘキサン、トルエンおよびキシレンならびにそれらの混合物を包含するが、これらに限定されるものではない。好ましい炭化水素溶媒は、例えば、トルエンを包含する。
【0093】
溶媒除去は、室温における蒸発および真空下の蒸発のうちの少なくとも1つにより行われることが好ましい。
【0094】
このプロセスにおいて、シナカルセット塩酸塩の結晶性形態のうちのいずれかを使用することができる。
【0095】
本発明は、総量の約85〜95%が、約283μm以下の直径を有する粒子からなる、好ましくは、総量の約85〜95%が、約80μm以下の直径を有する粒子からなる、より好ましくは、総量の約85〜95%が、約35μm以下の直径を有する粒子からなる粒径分布を有するシナカルセット塩酸塩をさらに包含する。
【0096】
本発明は、約0.6〜約2.7m/gの表面積を有するシナカルセット塩酸塩をさらに包含する。
【0097】
ヘプタン−酢酸イソブチルからの再結晶後に得られるシナカルセット塩酸塩は、典型的には、下記の粒径分布:D90(v):200〜283μmを有する。
【0098】
酢酸イソブチルからの再結晶後に得られるシナカルセット塩酸塩は、典型的には、下記の粒径分布:D90(v):40〜80μmを有する。
【0099】
得られるシナカルセット塩酸塩は、容易に微粉砕される。微粉砕後、得られるシナカルセット塩酸塩は、典型的には、下記の粒径分布:D90(v):24〜35μmを有する。
【実施例】
【0100】
具体的実施例
下記の実施例は、例示目的のために過ぎず、本発明の範囲を限定することは意図しておらず、そのように解釈されるべきではない。
【0101】
一般実験条件:
I.X線粉末回折(XRD)
X線ディフラクトグラムは、垂直ゴニオメーター付きのRX SIEMENS D5000回折計および銅陽極管、放射CuKα、λ=1.54056Åを用いて取得した。
【0102】
II.赤外スペクトル
フーリエ変換赤外スペクトルは、Shimadzu FTIR−8300分光計で取得し、多形体は、臭化カリウムペレットにおいて特性決定した。
【0103】
III.熱重量分析(TGA)
TGA測定は、METTLER−TOLEDOから入手できるTG−50で、窒素パージ下、25.0℃から200℃まで10℃/分のスキャンにて通気式パンの中で行った。
【0104】
IV.ガスクロマトグラフィー法
ガスクロマトグラフ分離は、RTX−50、30m×0.32mm×0.25μmカラム、10psiのヘッド圧力およびキャリアガスとしてのヘリウムを用いて行った。
温度プログラム:100℃(0分)〜20℃/分〜300℃。インジェクター温度:200℃;検出器(FID)温度:300℃。
【0105】
V.HPLC法
a.HPLC法A
カラム:Purospher RP18e(55mm×4.6mm×3um)。溶離液:アセトニトリル:リン酸塩緩衝液(pH=2.5)。グラジエント:20:80(2分)〜5分〜80:20(3分)〜1分〜20:80(4分)。検出:UV220nm。
【0106】
b.HPLC法B
カラム:Chiralpak AD。溶離液:2−プロパノール(0.5% TFA):n−ヘキサン(0.5% TFA)。グラジエント:2:98(60分)〜10〜10:90(5分)〜5〜2:98(20分)。検出:UV270nm。
【0107】
c.HPLC法C
カラム:Symmetry C8(4.6×250mm、5μm)。溶離液:水酸化アンモニウムでpH7に調整された、水1000mL中のギ酸アンモニウム1.26g:アセトニトリル。グラジエント:100:0(20分)〜10分〜38:62(30分)〜100:0(10分)〜10分。検出:UV225nm。
【0108】
d.HPLC法D
カラム:Chiralpak AD−H(4.6×250mm、5μm)。移動相:10:90 2−プロパノール(0.5% TFA):n−ヘキサン(0.5% TFA)。検出:UV225nm。
【0109】
VI.粒径分布法
シナカルセット塩酸塩についての粒径は、MS1 Small Volume Sample Dispersion Unit撹拌セル付きのMalvern Mastersizer S粒径分析計を用いて測定した。300mmのRFレンズおよび2.4mmのビーム長を使用した。分析用の試料は、大豆レシチン1.5gをIsopar Gで200mLまで希釈することにより前もって調製した試料分散媒20mLに、一定量のシナカルセット塩酸塩(約60mg)を分散させることにより調製した。懸濁液を、不明瞭化(obscuration)が望ましいレベルに達するまで、分散媒(Isopar G)で前もって満たしたバックグラウンド補正済みの測定セルに1滴ずつ送った。容積分布を3回にわたって取得した。測定を完了した後、試料セルを空にして洗浄し、懸濁媒体で再び満たし、サンプリング手順を再び繰り返した。特性決定のため、1つ1つが、各特性決定パラメーターのために利用できる9個の値の平均値であるD10、D50およびD90(容積で)の値を具体的に列挙した。
【0110】
VII.比表面積法
シナカルセット塩酸塩についてのBET(Brunauer、EmmettおよびTeller)比表面積は、Micromeritics ASAP2010装置を用いて測定した。分析用の試料は、2時間にわたって真空下で140℃にて脱気した。77°KにおけるNの吸着の決定は、一定量の試料約1gについて0.07〜0.20の範囲で相対圧力を測定した。
【0111】
(実施例1)
シナカルセット塩酸塩の調製
アルゴン雰囲気下、(R)−1−ナフチルエチルアミン1.69g(9.89mmol、1.1当量)を、テトラヒドロフラン40mL中の3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール2.0g(8.93mmol、GC純度:90.3%)の溶液に加えた。得られた澄明な溶液を15分にわたって撹拌し、酢酸2mLおよびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム3.18g(15.0mmol)を加えた。反応混合物を2時間にわたって撹拌し、溶媒を真空下で蒸発させた。得られた残渣をジクロロメタン30mLに溶かし、得られた溶液を10%炭酸ナトリウム溶液30mLで洗浄した。無機層をジクロロメタン20mLで抽出し、集めた有機相の溶媒を真空下で蒸発させた。次いで、得られた粗製の塩基(3.17g、89%)を酢酸エチル5mLに溶かし、ジエチルエーテル中の塩酸で酸性化した。次に、蒸発させた粗製の塩を酢酸エチル2〜3mLで処理し、得られた白色の結晶を濾過し、冷たい酢酸エチルで洗浄し、40℃にて真空下で乾燥すると、白色の結晶性粉末としてシナカルセット塩酸塩2.65g(収率:68.5%)が得られた。
【0112】
分析データ:融点(MP):176.4〜177.6℃;純度(GCにより塩基形態で決定):98.9%;XRD(2θ):形態I、図1を参照;IR:図2を参照。
【0113】
(実施例2)
シナカルセット塩酸塩の調製
(R)−1−(1−ナフチル)エチルアミン19.25g(112mmol)の冷却した溶液(10℃)に、酢酸4.5mLおよび酢酸イソブチル500mL、新たに調製したトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム150mLならびに酢酸イソブチル100mL中の3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール25.0g(124.0mmol、96.7%)を、還元剤から始めて、8回にわけて4時間以内に交互に加えた。水素化ホウ素アリコートは一斉に加えたが、アルデヒドアリコートは、10分かけて滴加した。添加が完了したらすぐに、得られた白色の懸濁液を20分にわたって撹拌し、次いで、蒸留水300mLを加えた。次に、10%水性炭酸ナトリウム100mLを滴加した。有機層を分離し、約250mLまで濃縮した。濃縮した溶液に、撹拌しながら、2M塩酸水溶液75mLと、続いてヘプタン150mLを加えた。沈殿した粗生成物を濾過し、ヘプタンで洗浄し、水で洗浄し、40℃にて真空下で乾燥すると、白色の結晶性粉末としてシナカルセット塩酸塩38.7g(79.4%)が得られた。生成物を2−プロパノール200mLから再結晶すると、白色の結晶性粉末としてシナカルセット塩酸塩26.07g(53.5%)が得られた。MP:177.7〜179.5℃;化学的純度(HPLC、方法A):99.60%;光学的純度(HPLC、方法B)鏡像体過剰率:100%。(R)−シナカルセット塩酸塩の(S)−鏡像体は、検出されなかった。
【0114】
トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム懸濁液は、下記の通り調製した。酢酸イソブチル125mL中の水素化ホウ素ナトリウム6.5g(約170mmol)の懸濁液に、温度を0〜5℃に保ちながら酢酸21.55mL(22.6g、376mmol)を滴加した。次いで、得られた白色の懸濁液を、使用する前に約1時間にわたって5℃未満で撹拌した。
【0115】
(実施例3)
蒸発によりシナカルセット塩酸塩形態Iを調製するための一般法
シナカルセット塩酸塩の溶液は、表1に示す濃度で適当な溶媒中で得た。溶液を室温にてゆっくりと蒸発させ、得られた固体を、XRD分析のために滑らかに粉砕した。結果を表1に要約する。
【0116】
【表1−1】

【0117】
【表1−2】

(実施例4)
再結晶によりシナカルセット塩酸塩形態Iを調製するための一般法
シナカルセット塩酸塩は、表2に示す溶媒および濃度で還流温度にて再結晶した。溶液を、撹拌しながら室温まで冷却し、1〜4時間後、固体を濾過し、XRDにより分析した。結果を表2に要約する。
【0118】
【表2】

(実施例5)
室温および還流における処理によりシナカルセット塩酸塩形態Iを調製するための方法
(実施例5A)
シナカルセット塩酸塩(0.1g)を室温にて水10mLに懸濁した。混合物を24時間にわたってかき混ぜ、固体を濾過した。固体をXRDにより分析し、形態Iであることが分かった。
【0119】
分析データ:XRD(2θ):形態I、図1と実質的に一致
(実施例5B)
シナカルセット塩酸塩(0.15g)をエチルアルコール5.8mLに懸濁した。混合物を1時間にわたって加熱還流し、次いで、撹拌しながら室温まで冷却し、固体を濾過した。固体をXRDにより分析し、形態Iであることが分かった。
【0120】
分析データ:XRD(2θ):形態I、図1と実質的に一致。
【0121】
(実施例6)
沈殿によりシナカルセット塩酸塩形態Iを調製するための方法
シナカルセット塩酸塩は、表3に示す温度および濃度にて第一の有機溶媒に溶かした。可能な場合、得られた溶液を濾過した。その後、第二の溶媒を加え、得られた混合物を30分にわたってかき混ぜた。最後に、固体を濾過し、XRDにより分析した。結果を表3に要約する。
【0122】
【表3】

(実施例7)
シナカルセット塩酸塩形態IIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.5g)を室温にてクロロホルム5mLに溶かした。溶液を室温にて蒸発させた。得られた固体を粉砕し、XRDにより分析し、形態IIであることが分かった。
【0123】
分析データ:XRD(2θ):形態II、図3を参照。
【0124】
(実施例8)
シナカルセット塩酸塩形態IIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.5g)を4時間にわたって室温にてクロロホルム1.7mLに懸濁した。次いで、懸濁液を濾過し、得られた固体をXRDにより分析し、形態IIであることが分かった。
【0125】
分析データ:XRD(2θ):形態II、図3と実質的に一致。
【0126】
(実施例9)
シナカルセット塩酸塩形態IIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.2g)を室温にてクロロホルム2mLに溶かした。溶媒を真空下で蒸発させ、得られた固体をXRDにより分析し、形態IIであることが分かった。
【0127】
分析データ:XRD(2θ):形態II、図3と実質的に一致。
【0128】
(実施例10)
シナカルセット塩酸塩形態IIIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.1g)を室温にてクロロホルム1mLに溶かした。次いで、n−ヘプタン2mLを加えた。懸濁液を30分にわたって撹拌し、濾過した。得られた固体をXRDにより分析し、形態IIIであることが分かった。
【0129】
分析データ:XRD(2θ):形態III、図4と実質的に一致;TGA:図5を参照。
【0130】
(実施例11)
シナカルセット塩酸塩形態IIIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.1g)を室温にてクロロホルム1mLに溶かした。次いで、メチルtert−ブチルエーテル2mLを加えた。得られた懸濁液を室温にて30分にわたって撹拌し、濾過した。得られた固体をXRDにより分析し、形態IIIであることが分かった。
【0131】
分析データ:XRD(2θ):形態III、図4と実質的に一致。
【0132】
(実施例12)
シナカルセット塩酸塩形態IIIの調製
シナカルセット塩酸塩(0.2g)を室温にてクロロホルム2mLに溶かした。次いで、メチルtert−ブチルエーテル4mLを加えた。得られた懸濁液を室温にて17時間にわたって撹拌し、濾過した。得られた固体をXRDにより分析し、形態IIIであることが分かった。
【0133】
分析データ:XRD(2θ):形態III、図4を参照。
【0134】
(実施例13)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.1g)をメタノール0.25mLに溶かした。溶液を室温にてゆっくりと蒸発させた。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0135】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6を参照;IR:図7を参照。
【0136】
(実施例14)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.2g)をジクロロメタン0.67mLに溶かした。溶媒を真空下で蒸発させ、得られた固体を15分にわたって60℃にて乾燥した。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0137】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6と実質的に一致。
【0138】
(実施例15)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.2g)をテトラヒドロフラン1mLに溶かした。溶媒を真空下で蒸発させ、得られた固体を15分にわたって60℃にて乾燥した。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0139】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6と実質的に一致。
【0140】
(実施例16)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.1g)をテトラヒドロフラン0.5mLに溶かした。溶媒を室温にてゆっくりと蒸発させた。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0141】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6と実質的に一致。
【0142】
(実施例17)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.2g)をトルエン14mLに溶かした。溶媒を真空下で蒸発させ、得られた固体を15分にわたって60℃にて乾燥した。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0143】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6と実質的に一致。
【0144】
(実施例18)
非晶性シナカルセット塩酸塩の調製
シナカルセット塩酸塩(0.1g)をトルエン6mLに懸濁し、次いで濾過した。溶媒を室温にてゆっくりと蒸発させた。得られた固体をXRDにより分析し、非晶性シナカルセット塩酸塩であることが分かった。
【0145】
分析データ:XRD(2θ):非晶性、図6と実質的に一致。
【0146】
(実施例19)
シナカルセット塩酸塩の調製
窒素でパージされ、500mLの均圧式(pressure−equalized)添加ロート、温度計およびブレードインペラーを備えた1,000mLの四つ口丸底反応容器に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(27.85g、131.4mmol)および酢酸イソブチル75mLを(順に)加える。得られた白色の懸濁液を撹拌し、0〜5℃まで冷却した。
【0147】
窒素でパージされ、100mLの均圧式添加ロート、温度計およびブレードインペラーを備えた別の500mLの三つ口丸底反応容器に、0〜5℃にて、(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン(15.00g、87.6mmol)、酢酸イソブチル75mL、3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパナール(17.71g、87.6mmol)、および別の部分の酢酸イソブチル75mLを(順に)加えた。得られた淡黄色の混合物を0〜5℃にて15分にわたって撹拌した。
【0148】
次いで、後者の混合物を、0〜5℃範囲の温度を維持しながら、30分かけて均圧式添加ロートを介してトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム懸濁液中に滴加した。添加が終了したらすぐに、反応混合物を0〜5℃にて2時間にわたって撹拌した。次いで、脱イオン水(120g)を、25℃未満に温度を維持しながら、撹拌した混合物に滴加した。混合物を20〜25℃にて合計30分にわたって撹拌し、続いて、有機相を分離した。塩化ナトリウム水溶液(120.00g、5%w/w)を、20〜25℃にて、撹拌した有機相に加えた。次いで、混合物を合計30分にわたって撹拌し、続いて、有機相を分離した。有機相を、30℃の蒸気温度にて真空下で蒸留することにより酢酸イソブチル115mLを除去することにより容積が半分になるまで濃縮した。濃縮した有機相を、撹拌しながら5〜10℃まで冷却した。
【0149】
塩酸水溶液を、36%w/w塩酸11.80g(10.01mL、116.5mmol)または等価物を脱イオン水41.30gで希釈することにより別に調製した。次いで、調製した塩酸水溶液を、5〜10℃に温度を維持しながら、均圧式添加ロートから、撹拌した有機相に滴加した。この添加により、わずかに温度が上昇し、白色の懸濁液が生成した。白色の懸濁液を5〜10℃の温度にて30分にわたって撹拌した。n−ヘプタン(90mL)を、5〜10℃の温度を維持しながら、撹拌した懸濁液に加えた。次いで、得られた混合物を5〜10℃にて1時間にわたって撹拌した。懸濁液を濾過し、集めた固体を脱イオン水20gで洗浄すると、湿った白色の粗生成物39.60gが得られた。次いで、湿った固体を20〜25℃にて1時間にわたって脱イオン水117gと一緒に撹拌した。次いで、懸濁液を5〜10℃まで冷却し、さらに30分にわたってこの温度にて撹拌した。懸濁液を濾過し、集めた固体を脱イオン水20gで洗浄すると、湿った白色の粗生成物36.94gが得られた。次いで、湿った固体を20〜25℃にてエタノール100mLに溶かすと、澄明な淡黄色の液体が得られた。次いで、この溶液を濾過し、不溶性の粒子をすべて除去した。得られた濾液を、28℃の蒸気温度にて真空下で蒸留することによりエタノールの70%を除去することにより濃縮すると、粘稠な白色のペースト状の固体が得られた。酢酸イソブチル(100mL)を、撹拌した懸濁液に加え、次いで、続いて、蒸留により除去した。このプロセスを、酢酸イソブチルの第二の100mLアリコートで2度目を繰り返した。この2度目のケースでは、添加した酢酸イソブチルの70%だけを蒸留により除去した。酢酸イソブチル(148.32mL)を、撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を、懸濁液の溶解が起きるまで加熱した。熱を取り去り、溶液を85℃未満まで冷却した。その後、n−ヘプタン61.80mLを加えた。得られた懸濁液を0〜5℃まで冷却し、1時間にわたってこの温度にて撹拌した。懸濁液を濾過し、集めた白色の固体を酢酸イソブチル20mLで洗浄すると、湿った白色の固体28.79gが得られた。湿った固体を4時間にわたって真空下で60℃にて乾燥すると、乾燥した白色のシナカルセット塩酸塩22.24g(総収率:64.5%)が得られた。化学的純度(HPLC、方法C):99.73%;光学的純度(HPLC、方法D)鏡像体過剰率:99.92%。
【0150】
(実施例20)
シナカルセット塩酸塩の大規模調製
630Lのステンレススチール反応器(清浄で乾燥し不活化された)に、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム40.9Kgおよび酢酸イソブチル96Kgを(順に)加えた。次いで、得られた白色の懸濁液を撹拌し、0〜5℃まで冷却した。
【0151】
清浄で乾燥し不活化された630Lのグラスライニング反応器に、(R)−(+)−1−(1−ナフチル)エチルアミン22Kgおよび酢酸イソブチル96Kgを(順に)加えた。得られた混合物を0〜5℃まで冷却した。ナフチルエチルアミン溶液の上から、3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパナール26.0Kgおよび別の部分の酢酸イソブチル96Kgを加えた。次いで、得られた淡黄色の混合物を0〜5℃の温度にて15分にわたって撹拌した。
【0152】
次に、後者の混合物を、0〜5℃範囲の温度を維持しながら、60分かけて、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム懸濁液中に、ステンレススチール反応器に移送した。添加が完了したらすぐに、反応混合物を0〜5℃の温度にて2時間にわたって撹拌した。
【0153】
次いで、脱イオン水(176Kg)を、撹拌した混合物に加え、温度を20〜25℃に調整した。次いで、混合物を20〜25℃にて合計30分にわたって撹拌し、有機相を分離した。
【0154】
清浄な630Lのグラスライニング反応器中で前もって調製した5%w/w塩化ナトリウム水溶液(塩化ナトリウム8.8Kgおよび脱イオン水167Kg)を、撹拌した有機相に加え、温度を20〜25℃に調整した。混合物を合計30分にわたって撹拌し、有機相を分離した。
【0155】
次いで、有機相を630Lのグラスライニング反応器に移送し、移送ラインを酢酸イソブチル5Kgで洗浄した。次いで、有機相を、45℃の生成物温度を超えることなく真空下で蒸留することにより酢酸イソブチル159±10Kgを除去することにより容積が半分になるまで濃縮した。白色の懸濁液が、蒸留の最終段階の間に観察された。次いで、濃縮した有機相を、撹拌しながら5〜10℃まで冷却した。
【0156】
別に、塩酸水溶液を、100%当量w/w塩酸6.2Kgを脱イオン水61Kgで希釈することにより100Lのグラスライニング反応器中で調製した。溶液を5〜10℃まで冷却した。次いで、調製した塩酸水溶液を、温度を5〜10℃に維持しながら、撹拌した有機相に移送した。次いで、白色の懸濁液を5〜10℃の温度にて30分にわたって撹拌した。n−ヘプタン(90Kg)を、5〜10℃の温度を維持しながら、撹拌した懸濁液に加えた。得られた混合物を5〜10℃の温度にて1時間にわたって撹拌した。
【0157】
次に、懸濁液を、ポリプロピレン袋を備えた800mmのステンレススチール遠心分離機に通して濾過した。固体を脱イオン水25Kgで洗浄すると、湿った白色の粗生成物45.94Kgが得られた。
【0158】
次いで、湿った固体を脱イオン水172Kgと一緒に630Lのグラスライニング反応器中に装填し、20〜25℃にて1時間にわたって撹拌した。次いで、懸濁液を5〜10℃まで冷却し、さらに30分にわたってこの温度にて撹拌した。次いで、懸濁液を、ポリプロピレン袋を備えた800mmのステンレススチール遠心分離機に通して濾過した。固体を脱イオン水25Kgで洗浄すると、湿った白色の粗生成物42.27Kgが得られた。
【0159】
湿った固体を630Lのグラスライニング反応器中に装填し、20〜25℃にてエタノール115Kgに溶かすと、澄明な淡黄色の液体が得られた。次いで、この溶液をプレートフィルターに通して濾過し、不溶性の粒子をすべて除去し、630Lの清浄なステンレススチール反応器に移送した。次いで、移送ラインをエタノール8Kgで洗浄した。
【0160】
得られた濾液を、40℃の生成物温度を超えることなく真空下で蒸留することによりエタノール90Kgを除去することにより濃縮した。次いで、濾過した酢酸イソブチル(126Kg)を、撹拌した懸濁液に加え、次いで、続いて、40℃の生成物温度を超えることなく真空下で蒸留することにより除去した。このプロセスを、別の濾過した酢酸イソブチル126Kgで2度目を繰り返した。この2度目のケースでは、添加した酢酸イソブチルの94±5Kgだけを蒸留により除去した。
【0161】
次に、濾過した酢酸イソブチル189Kgを、撹拌した懸濁液に加え、得られた混合物を加熱還流した。懸濁液を、完全な溶解が起きるまで撹拌した。溶液を75〜85℃まで冷却し、濾過したn−ヘプタン62Kgを加えた。得られた懸濁液を0〜5℃まで冷却し、1時間にわたってこの温度にて撹拌した。次いで、懸濁液を、ポリプロピレン袋を備えた800mmのステンレススチール遠心分離機に通して濾過した。固体を、濾過した酢酸イソブチル20Kgで洗浄すると、湿った白色の粗生成物38.47Kgが得られた。得られたシナカルセット塩酸塩は、下記の粒径分布:D90(v):263μmを有していた。
【0162】
次いで、固体を、濾過した酢酸イソブチル215Kgで630Lのステンレススチール反応器中で再結晶した。次いで、得られた混合物を加熱還流し、懸濁液を、完全な溶解が起きるまで撹拌した。溶液を0〜5℃まで冷却し、1時間にわたってこの温度にて撹拌した。次に、懸濁液を、ポリプロピレン袋を備えた800mmのステンレススチール遠心分離機に通して濾過した。固体を、濾過した酢酸イソブチル20Kgで洗浄すると、湿った白色の粗生成物35.98Kgが得られた。次いで、湿った固体を6時間にわたって真空下で60±5℃にて100Lの真空パドル乾燥機中で乾燥すると、乾燥した、白色のシナカルセット塩酸塩31.23Kgが得られた。得られたシナカルセット塩酸塩は、下記の粒径分布:D90(v):47μmを有していた。
【0163】
次いで、乾燥した固体を、14,000rpmにてステンレススチールピンミルに通して微粉砕し、500μmのふるいに通してふるいにかけると、微粉砕された固体29.29Kgが得られた。固体を、100Lのドラムブレンダー中で2時間にわたってブレンドすると、乾燥した白色のシナカルセット塩酸塩29.20Kg(総収率:57.6%)が得られた。得られたシナカルセット塩酸塩は、下記の粒径分布:D90(v):24μmを有していた。
【0164】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく本発明および本明細書において提供される具体的実施例において様々な変更形態および変形形態を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、任意の特許請求の範囲およびそれらの等価体の範囲に入る本発明の変更形態および変形形態を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シナカルセット、その塩およびそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスであって、チタンイソプロポキシドの非存在下で、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III)の(R)−(1−ナフチル)エチルアミン(化合物II)による還元アミノ化を行ってシナカルセットを得ることを含むプロセス。
【請求項2】
前記還元アミノ化が、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムの使用を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記シナカルセットを、その対応する塩および/またはそれらの溶媒和物のうちの1つに変換することをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
シナカルセットの前記塩が、シナカルセット塩酸塩である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記シナカルセット塩酸塩が、形態Iシナカルセット塩酸塩、形態IIシナカルセット塩酸塩、形態IIIシナカルセット塩酸塩および非晶性シナカルセット塩酸塩のうちの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
化合物IIIが、その重亜硫酸塩付加形態で使用される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
化合物IIが、高い光学的純度のものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
化合物IIが、少なくとも99.5%の鏡像体過剰率を有している、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のプロセスにより調製されるシナカルセットならびに対応する薬学的に許容できるその塩および/または溶媒和物。
【請求項10】
前記シナカルセットおよび対応する薬学的に許容できるその塩が、高速液体クロマトグラフィーにより測定して、約99%〜約99.95%の純度を有している、請求項9に記載のシナカルセットならびに対応する薬学的に許容できるその塩および/または溶媒和物。
【請求項11】
前記シナカルセットおよび対応する薬学的に許容できるその塩が、高速液体クロマトグラフィーにより測定して、約99.6%〜約99.8%の純度を有している、請求項10に記載のシナカルセットならびに対応する薬学的に許容できるその塩および/または溶媒和物。
【請求項12】
前記シナカルセットおよび対応する薬学的に許容できるその塩が、高速液体クロマトグラフィーにより測定して、約99%〜約100%の光学的純度を有している、請求項9に記載のシナカルセットならびに対応する薬学的に許容できるその塩および/または溶媒和物。
【請求項13】
前記シナカルセットおよび対応する薬学的に許容できるその塩が、高速液体クロマトグラフィーにより測定して、約99.9%〜約100%の純度を有している、請求項12に記載のシナカルセットならびに対応する薬学的に許容できるその塩および/または溶媒和物。
【請求項14】
前記シナカルセット、その塩および/または溶媒和物が、形態Iシナカルセット塩酸塩、形態IIシナカルセット塩酸塩、形態IIIシナカルセット塩酸塩および非晶性シナカルセット塩酸塩のうちの少なくとも1つである、請求項9に記載のシナカルセット、その塩および/または溶媒和物。
【請求項15】
前記シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物が、少なくとも99.5%の鏡像体過剰率を有している、請求項9に記載のシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか1項に記載のシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を含有する製剤。
【請求項17】
シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.前記有機溶媒を除去すること、
c.前記シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含み、
前記溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、ジクロロメタン、エステル溶媒、エーテル溶媒、非プロトン性溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセス。
【請求項18】
前記アルコール性溶媒が、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノールおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ケトン性溶媒が、アセトン、メチルエチルケトンおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項20】
前記エステル溶媒が、酢酸エチルである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項21】
前記エーテル溶媒が、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項22】
前記非プロトン性溶媒が、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミドおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項17に記載のプロセス。
【請求項23】
前記有機溶媒を除去する前記ステップが、室温にて前記有機溶媒を蒸発させることを含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項24】
シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.溶媒からの再結晶によりシナカルセット塩酸塩を得ること、および
b.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含み、
前記溶媒が、アルコール性溶媒、ケトン性溶媒、エステル溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒、非プロトン性溶媒、水およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセス。
【請求項25】
前記アルコール性溶媒が、2−プロパノール、2−ブタノール、n−ブタノールおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ケトン性溶媒が、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項27】
前記エステル溶媒が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸プロピル、酢酸イソブチルおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項28】
前記エーテル溶媒が、1,3−ジオキソランである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項29】
前記炭化水素溶媒が、n−ヘプタン、トルエンおよびそれらの組合せのうちの少なくとも1つである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項30】
前記非プロトン性溶媒が、アセトニトリルである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項31】
前記溶媒が、酢酸イソブチルとn−ヘプタンの混合物である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項32】
前記溶媒が、酢酸イソブチルである、請求項24に記載のプロセス。
【請求項33】
シナカルセット塩酸塩形態Iを調製するためのプロセスであって、
a.溶媒中でシナカルセット塩酸塩を処理すること、
b.沈殿物として前記結晶性シナカルセット塩酸塩形態Iを回収すること、および
c.前記結晶性シナカルセット塩酸塩形態Iを乾燥することを含み、
前記溶媒が、水、エタノールまたはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセス。
【請求項34】
図3のものと実質的に同様のX線回折パターン(2θ)(±0.2°)を有している、形態IIと命名されたシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態。
【請求項35】
シナカルセット塩酸塩の前記結晶性多形形態が、約13.7°、14.3°、16.6°、17.5°、19.4°、20.3°、20.6°、23.3°および31.4°における特徴的なピークを有するX線回折パターン(2θ)(±0.2°)を有している、請求項34に記載のシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態。
【請求項36】
シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.前記クロロホルムを除去すること、
c.前記シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含むプロセス。
【請求項37】
シナカルセット塩酸塩形態IIを調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を懸濁すること、
b.前記懸濁液を濾過すること、
c.前記シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含み、
前記有機溶媒が、少なくとも1つの塩素化溶媒であるプロセス。
【請求項38】
前記少なくとも1つの塩素化溶媒が、クロロホルムである、請求項37に記載のプロセス。
【請求項39】
図4のものと実質的に同様のX線回折パターン(2θ)(±0.2°)を有している、形態IIIと命名されたシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態。
【請求項40】
前記シナカルセット塩酸塩の前記結晶性多形形態が、約10.0°、10.5°、16.2°、17.0°、17.8°、20.2°、21.5°および23.6°における特徴的なピークを有するX線回折パターン(2θ)(±0.2°)を有している、請求項39に記載のシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態。
【請求項41】
シナカルセット塩酸塩の前記結晶性多形形態が、図5のものと実質的に同様の熱重量分析サーモグラムを有している、請求項39に記載のシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態。
【請求項42】
請求項39に記載のシナカルセット塩酸塩の結晶性多形形態のクロロホルム溶媒和物。
【請求項43】
シナカルセット塩酸塩形態IIIを調製するためのプロセスであって、
a.クロロホルムにシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.第二の溶媒を加えること、
c.沈殿物として前記シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含み、
前記第二の溶媒が、エーテル溶媒、炭化水素溶媒およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセス。
【請求項44】
前記エーテル溶媒が、メチルtert−ブチルエーテルである、請求項43に記載のプロセス。
【請求項45】
前記炭化水素溶媒が、n−ヘプタンである、請求項43に記載のプロセス。
【請求項46】
非晶性シナカルセット塩酸塩を調製するためのプロセスであって、
a.有機溶媒にシナカルセット塩酸塩を溶かすこと、
b.前記有機溶媒を除去すること、
c.沈殿物として前記シナカルセット塩酸塩を回収すること、および
d.前記シナカルセット塩酸塩を乾燥することを含み、
前記有機溶媒が、アルコール性溶媒、塩素化溶媒、エーテル溶媒、炭化水素溶媒またはそれらの混合物のうちの少なくとも1つであるプロセス。
【請求項47】
前記アルコール性溶媒が、メタノールである、請求項46に記載のプロセス。
【請求項48】
前記塩素化溶媒が、ジクロロメタンである、請求項46に記載のプロセス。
【請求項49】
前記エーテル溶媒が、テトラヒドロフランである、請求項46に記載のプロセス。
【請求項50】
前記炭化水素溶媒が、トルエンである、請求項46に記載のプロセス。
【請求項51】
前記有機溶媒を除去する前記ステップが、室温にて前記有機溶媒を蒸発させることおよび真空下で前記有機溶媒を蒸発させることのうちの少なくとも1つを含む、請求項46に記載のプロセス。
【請求項52】
総量の約85〜95%が、約283μm以下の直径を有する粒子からなる粒径分布を有するシナカルセット塩酸塩。
【請求項53】
総量の約85〜95%が、約80μm以下の直径を有する粒子からなる粒径分布を有するシナカルセット塩酸塩。
【請求項54】
総量の約85〜95%が、約35μm以下の直径を有する粒子からなる粒径分布を有するシナカルセット塩酸塩。
【請求項55】
約0.6〜約2.7m/gの表面積を有するシナカルセット塩酸塩。
【請求項56】
酢酸イソブチルを含む少なくとも1つの溶媒中でシナカルセット塩酸塩を再結晶することから得られるシナカルセット塩酸塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−539824(P2009−539824A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513800(P2009−513800)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004309
【国際公開番号】WO2008/068625
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(508145230)
【Fターム(参考)】