説明

シナリオデータ生成装置、シナリオデータ生成方法及びコンピュータプログラム

【課題】実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現すること。
【解決手段】検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部と、記憶部に記憶される通信データの情報に基づいて、ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成部と、他の通信装置において通信装置の動作を実現した際に、通信装置がネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定部と、を備え、シナリオデータ生成部は、送信条件設定部によって設定された条件に基づいて他の通信装置が通信データを送信するタイミングを判定するようにシナリオデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークの通信を検証する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機器が家庭内ネットワーク接続されはじめている。例えば、冷蔵庫やテレビ受像機やゲーム機などの家電機器の中にも、家庭内ネットワークに接続されるものが登場している。また、携帯電話機やスマートフォン等の機器も、基地局装置と無線通信することによって携帯電話網に接続するのみならず、Wi−Fi(ワイファイ:wireless fidelity)等の通信規格に応じて無線LAN(Local Area Network)等の家庭内ネットワークに接続する。これらの装置は、一般的に情報家電と呼ばれている。
【0003】
このような情報家電の増大に伴い、家庭内ネットワークにおけるIP系の特異故障が増大している。特に、上述した情報家電やファイル共有ソフトウェアの動作など、レイヤ3以上の事象が多い。家庭内ネットワークに故障が生じた場合には、故障が発生したと推測される位置で通信データをキャプチャし、再現検証を行うことが対策として有効である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−196705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような情報家電の多様化に伴い、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムを構築して再現検証を実施することが困難になってきている。そのため、再現検証の精度が低下してしまい、障害の原因究明や復旧などの対策に時間を要してしまうという問題があった。
上記事情に鑑み、本発明は、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現することを可能とする技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シナリオデータ生成装置であって、検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成部と、前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定部と、を備え、前記シナリオデータ生成部は、前記送信条件設定部によって設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成する。
【0007】
本発明の一態様は、上記のシナリオデータ生成装置であって、前記ネットワークに設置された通信装置には、第一通信装置と第二通信装置とがあり、前記送信条件設定部は、前記送信条件として前記第一通信装置が前記通信データを送信した後に前記第二通信装置が前記通信データを送信することが設定された場合、前記第一通信装置が前記通信データを送信した後に前記第一通信装置が前記第二通信装置へ送信フラグを送信し、前記第二通信装置は前記送信フラグを受信したのちに前記通信データを送信するように前記条件を設定する。
【0008】
本発明の一態様は、シナリオデータ生成方法であって、検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部を備えるシナリオデータ生成装置が、前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成ステップと、前記シナリオデータ生成装置が、前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定ステップと、を有し、前記シナリオデータ生成ステップにおいて、前記シナリオデータ生成装置は、前記送信条件設定ステップにおいて設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成する。
【0009】
本発明の一態様は、検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部を備えるコンピュータに対し、前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成ステップと、前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定ステップと、を実行させ、前記シナリオデータ生成ステップにおいて、前記コンピュータに対し、前記送信条件設定ステップにおいて設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成させるためのコンピュータプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】家庭内ネットワークシステムの具体例を表すシステム構成図である。
【図2】検証用システムにおける障害の再現検証の前処理の概略を表す図である。
【図3】検証用システムの具体例を表す図である。
【図4】シナリオデータ生成装置の機能構成を表す概略ブロック図である。
【図5】ノードリストの具体例を表す図である。
【図6】セッションリストの具体例を表す図である。
【図7】ログに記録されているメッセージの送信タイミングを表すシーケンス図である。
【図8】送信条件リストによって示されるメッセージの送信タイミングを表すシーケンス図である。
【図9】シナリオデータ生成装置によるシナリオデータ作成処理を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、家庭内ネットワークシステム1の具体例を表すシステム構成図である。家庭内ネットワークシステム1は、ONU(Optical Network Unit:光回線終端装置)10、ルータ20、第一スイッチングハブ30、第一パーソナルコンピュータ40、電話機50、第二スイッチングハブ60、第二パーソナルコンピュータ70を備える。家庭内ネットワークシステム1は、ONU10及びルータ20を介して事業者通信網に接続される。以下の説明では、第二スイッチングハブ60に接続された電話機50及び第二パーソナルコンピュータ70になんらかの通信障害が生じている場合を想定する。この場合、例えば図1のキャプチャポイント80において、通信路を流れるパケットを取得(キャプチャ)する。そして、取得したパケットに基づいて検証用システム2を実現する。
【0013】
図2は、検証用システム2における障害の再現検証の前処理の概略を表す図である。まず、再現検証の対象となっている家庭内ネットワークシステム1において、パケットのキャプチャが行われる。図1の場合には、キャプチャポイント80においてパケットのキャプチャが行われる。キャプチャされたパケットのデータ(以下、「ログ」という。)は、例えばpcap形式のデータやcap形式のデータとして保存される。
【0014】
次に、ログに基づいてシナリオデータ生成装置100がシナリオデータ120を生成する。シナリオデータ120は、ネットワークエミュレータ130によって実行されるデータである。シナリオデータ120は、検証用システム2において実際には設置されない装置(以下、「非検証装置」という。)の動作を、検証用システム2において模擬的に実現するためのデータである。シナリオデータ120には、非検証装置の動作のうち、通信に関わる動作が定義されている。シナリオデータ120には、例えば各非検証装置によって生成されるパケットの内容及びパケットの送信タイミングが定義されている。ネットワークエミュレータ130は、シナリオデータ120に従って、非検証装置としてパケットを生成して送信する。
【0015】
図3は、検証用システム2の具体例を表す図である。検証用システム2は、通信に関する障害が生じている装置を検証するためのシステムである。図3に示される検証用システム2は、図1の家庭内ネットワークシステム1において、第二スイッチングハブ60に接続された電話機50及び第二パーソナルコンピュータ70に生じている通信障害を検証するためのシステムである。
【0016】
ネットワークエミュレータ130は、ネットワークインタフェースを介して、再現検証の対象となっている装置(DUT:Device Under Test)が接続されたネットワークに物理的に接続される。ネットワークインタフェースとは、例えば物理NIC(Network Interface Card)である。DUTとは、再現検証を行う際に実際の装置として検証用システム2に設置される装置であり、図1〜図3の例では電話機50及びパーソナルコンピュータ70である。
【0017】
ネットワークエミュレータ130は、DUTが接続されたネットワークに対し、シナリオデータ120に応じたパケットをシナリオデータ120に応じたタイミングで送信する。すなわち、ネットワークエミュレータ130は、家庭内ネットワークシステム1における非検証装置(ONU10、ルータ20、第一スイッチングハブ30、第一パーソナルコンピュータ40)が生成するパケットと同等のパケットを生成し、検証用システム2のDUTに送信する。このようにして、家庭内ネットワークシステム1における障害の再現検証を検証用システム2において行うことができる。
【0018】
図4は、シナリオデータ生成装置100の機能構成を表す概略ブロック図である。シナリオデータ生成装置100は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、シナリオデータ生成プログラムを実行する。シナリオデータ生成装置100は、シナリオデータ生成プログラムを実行することによって、ログ記憶部101、ノードリスト記憶部102、ノードリスト生成部103、セッションリスト記憶部104、セッションリスト生成部105、メッセージリスト記憶部106、メッセージリスト生成部107、入力部108、表示部109、送信条件設定部110、シナリオデータ生成部111を備える装置として機能する。
【0019】
ログ記憶部101は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。ログ記憶部101は、キャプチャポイント80においてキャプチャされたログを記憶する。ログは、キャプチャされたパケットのヘッダ情報及びペイロードを記録したデータである。
ノードリスト記憶部102は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。ノードリスト記憶部102は、ノードリストを記憶する。ノードリストは各ノードに関する情報を表す。ノードとは、家庭内ネットワークシステム1や検証用システム2に配置された通信装置である。例えば、ルータ20、第一パーソナルコンピュータ40、電話機50、第二パーソナルコンピュータ70等がそれぞれノードに相当する。
【0020】
図5は、ノードリストの具体例を表す図である。図5の例では、ノードリストは各ノードに関してノードID、ノード種別、MACアドレス(Media Access Control address)、製造者、IPアドレス(Internet Protocol address)の各情報を対応付けてノード毎に記憶する。ノードIDは、各ノードに割り当てられた識別情報である。ノード種別は、ノードの種別を表す情報である。ノード種別は、例えばそのノードがDUTであるかVMであるかを表す。VMとは、ネットワークエミュレータ130によって模擬的に実現される非検証装置を表す。MACアドレスは、そのノードに付与されているMACアドレスを表す。製造者は、そのノードの製造者を表す。IPアドレスは、そのノードに付与されているIPアドレスを表す。
【0021】
図4に戻って説明を続ける。ノードリスト生成部103は、ログ記憶部101に記憶されているログを読み出し、ログにおいてパケットを送信又は受信したノードに関する情報を取得する。例えば、ログに記録されている各パケットのヘッダに記録された送信元アドレスや送信先アドレスを参照することによって、ノードリスト生成部103は各ノードに関する情報を取得する。そして、ノードリスト生成部103は、取得した各ノードに関する情報に基づいてノードリストを生成する。ノードリスト生成部103は、生成したノードリストをノードリスト記憶部102に書き込む。
【0022】
セッションリスト記憶部104は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。セッションリスト記憶部104は、セッションリストを記憶する。セッションリストは各セッションに関する情報を表す。セッションリストとは、家庭内ネットワークシステム1に配置された通信装置同士の通信におけるセッションの情報である。
【0023】
図6は、セッションリストの具体例を表す図である。図6の例では、セッションリストは各セッションに関してセッションID、From−address、From−port、To−address、To−portの各情報を対応付けてセッション毎に記憶する。セッションIDは、各セッションに割り当てられた識別情報である。From−addressは、そのセッションにおける送信元のノードのIPアドレスを表す。From−portは、そのセッションにおける送信元のポート番号を表す。To−addressは、そのセッションにおける送信先のノードのIPアドレスを表す。To−portは、そのセッションにおける送信先のポート番号を表す。
【0024】
図4に戻って説明を続ける。セッションリスト生成部105は、ログ記憶部101に記憶されているログを読み出し、ログに含まれるTCP(Transmission Control Protocol)セッション及びUDP(User Datagram Protocol)セッションに関する情報を取得する。そして、セッションリスト生成部105は、取得した各セッションに関する情報に基づいてセッションリストを生成する。セッションリスト生成部105は、生成したセッションリストをセッションリスト記憶部104に書き込む。
【0025】
メッセージリスト記憶部106は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。メッセージリスト記憶部106は、メッセージリストを記憶する。メッセージリストとは、家庭内ネットワークシステム1に配置された通信装置同士の通信におけるメッセージのペイロード及びセッションに関する情報を集めたリストである。ただし、メッセージリストは、DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)メッセージ、ペイロードを含まないTCPメッセージ、データ部を含まないUDPメッセージに関する情報を含まない。
【0026】
メッセージリスト生成部107は、ログ記憶部101に記憶されているログを読み出し、ログに含まれるTCPメッセージ及びUDPメッセージに関する情報を取得する。そして、メッセージリスト生成部107は、取得した各メッセージに基づいてメッセージリストを生成する。メッセージリスト生成部107は、生成したメッセージリストをメッセージリスト記憶部106に書き込む。
【0027】
入力部108は、キーボード、ポインティングデバイス(マウス、タブレット等)、ボタン、タッチパネル等の既存の入力装置を用いて構成される。入力部108は、送信条件を送信条件設定部110に入力する際などに操作者によって操作される。
表示部109は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の画像表示装置を用いて構成され、送信条件設定画面を表示する。
【0028】
送信条件設定部110は、送信条件設定画面を表示部109に表示させる。送信条件設定画面は、検証用システム2においてネットワークエミュレータ130上で動作するVMがメッセージを送信するタイミングを設定するための画面である。操作者は、表示部109に表示された送信条件設定画面の表示内容に応じて入力部108を操作し、VMによるメッセージの送信順序を指定する。送信条件設定部110は、指定されたメッセージの送信順序を示すリスト(以下、「送信条件リスト」という。)を記憶する。送信順序の指定が完了すると、送信条件設定部110は、送信条件リストをシナリオデータ生成部111に出力する。
【0029】
シナリオデータ生成部111は、ノードリスト記憶部102に記憶されたノードリストと、セッションリスト記憶部104に記憶されたセッションリストと、メッセージリスト記憶部106に記憶されたメッセージリストと、送信条件リストとに基づいてシナリオデータ120を生成する。シナリオデータ生成部111は、生成したシナリオデータ120をネットワークエミュレータ130に出力する。例えば、シナリオデータ生成部111は、ノードリストの中からVMとして設定されたノード(通信装置)を検索し、VMが行う通信の内容をセッションリストに基づいて判断する。また、シナリオデータ生成部111は、セッションリストに基づいて判断した各通信において送受信するメッセージの内容を、メッセージリストに基づいて判断する。これらの判断に基づいて、シナリオデータ生成部111はシナリオデータを生成する。
【0030】
図7は、ログに記録されているメッセージの送信タイミングを表すシーケンス図である。ログでは、まず時刻T1に電話機50がルータ20に対してメッセージを送信する(ステップS101)。次に、時刻T2に電話機50が第一パーソナルコンピュータ40に対してメッセージを送信する(ステップS102)。次に、時刻T3に第一パーソナルコンピュータ40が、電話機50に対して応答のメッセージを送信する(ステップS103)。そして、時刻T4にルータ20が、電話機50に対して応答のメッセージを送信する(ステップS104)。操作者は、入力部108を操作し、セッションリストの内容を表示部109に表示させることによって、上記のような各メッセージの順序を把握することができる。このように、ログには各メッセージの送信時刻が記録されており、セッションリストには送信時刻に基づいて各メッセージの送信タイミングが表される。
【0031】
図8は、送信条件リストによって示されるメッセージの送信タイミングを表すシーケンス図である。なお、以下の説明では、第一パーソナルコンピュータ40及びルータ20がそれぞれVM1及びVM2としてネットワークエミュレータ130によって実現される。送信条件リストでは、メッセージの送信タイミングが、送信時刻に加えて送信の順序としても定義される。ただし、全てのメッセージについて順序が定義される必要は無く、操作者によって定義が必要とされたメッセージについてのみ、順序が定義される。例えば、VM2(ルータ20のVM)がステップS104のメッセージを送信するタイミングは、VM1(第一パーソナルコンピュータ40のVM)がステップS103のメッセージを送信し終わった後の必要があるとする。その場合、操作者は、入力部108を操作することによって、VM2がステップS104にかかるメッセージを送信するタイミングは、VM1がステップS103にかかるメッセージを送信し終わった後にすることを指定する。この指定に従って、送信条件設定部110は、VM2がステップS104にかかるメッセージを送信するタイミングを、VM1がステップS103にかかるメッセージを送信し終わった後であることを送信条件リストに記録する。なお、送信し終わったということは、送信されたメッセージが受信側によって受信されたことを示す。
【0032】
次に、送信条件リストの内容の具体例について説明する。送信条件設定部110は、一のVMがメッセージを送信し終わった後に他のVMがメッセージを送信するように指定を受けた場合、以下のように送信条件リストを生成しても良い。まず、一のVM(先にメッセージを送信し終えるVM)がメッセージを送信し終わった後に、他のVM(後にメッセージを送信するVM)に対し送信フラグを送信する。他のVMは、一のVMからの送信フラグの受信に応じて、メッセージを送信する。図8の例では、VM1が一のVMに相当し、VM2が他のVMに相当する。VM1は、時刻T3にステップS103におけるメッセージを送信し終えた後に、VM2に対して送信フラグを送信する(ステップS201)。VM2は、たとえログに送信時刻として記録されていた時刻T4になったとしても、ステップS201における送信フラグを受信するまではメッセージを送信せずに待機する。そして、VM2はステップS201における送信フラグを受信すると、ステップS104におけるメッセージを送信する。このとき、VM2は、送信フラグの受信且つ時刻T4になったことの双方の条件を満たした場合にステップS104のメッセージを送信するように設定されても良い。また、VM2は、送信フラグの受信という条件が満たされた場合にステップS104のメッセージを送信するように設定されても良い。
【0033】
シナリオデータ生成部111は、VMのメッセージ送信のタイミングについて操作者による設定があった場合に、送信条件リストに基づいて上記のようにシナリオデータ120を生成する。すなわち、実際のログには送信フラグの送受信に関する記録はなされていないが、シナリオデータ生成部111は、送信条件リストに基づいて送信フラグの送受信に関する動作をシナリオデータ120に設定する。そのため、シナリオデータ120に基づいて動作するネットワークエミュレータ130では、ログに記録されていない送信フラグの送受信に関する動作が行われ、順序通りにメッセージの送信が行われる。なお、シナリオデータ120の具体的なコードや構造は、ネットワークエミュレータ130で動作するソフトウェア等の規格に準じて決定される。
【0034】
図9は、シナリオデータ生成装置100によるシナリオデータ作成処理を表すフローチャートである。まず、セッションリスト生成部105がセッションリストを生成しセッションリストをセッションリスト記憶部104に書き込む(ステップS301)。同様に、ノードリスト生成部103及びメッセージリスト生成部107がそれぞれノードリスト及びメッセージリストを生成し、それぞれノードリスト記憶部102及びメッセージリスト記憶部106に書き込む。
【0035】
次に、送信条件設定部110が、セッションリスト記憶部104に記憶されているセッションリストに基づいて、送信条件設定画面を表示部109に表示する(ステップS302)。送信条件設定画面には、例えば図7に示されるようなシーケンスを表すチャートが表示される。操作者が入力部108を操作して送信条件の設定又は設定終了の指示を行うまで、送信条件設定部110は待機する(ステップS303−NO、ステップS305−NO)。送信条件の設定があると(ステップS303−YES)、送信条件設定部110は設定された送信条件の内容に応じて送信条件リストを記録する(ステップS304)。その後、送信条件設定部110は、設定終了が指示されるまでステップS303及びステップS304の処理を繰り返し実行する。
【0036】
設定終了が指示されると(ステップS306−YES)、送信条件設定部110は、送信条件リストをシナリオデータ生成部111に出力する。シナリオデータ生成部111は、受信した送信条件リスト、ノードリスト、セッションリスト、メッセージリストに基づいて、シナリオデータ120を生成する(ステップS306)。シナリオデータ生成部111は、生成したシナリオデータ120を、ネットワークエミュレータ130に出力する。このとき、シナリオデータ生成部111は、CD−ROMやDVD−ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体にシナリオデータ120を書き込むことによってシナリオデータ120を出力しても良い。また、シナリオデータ生成部111は、ネットワークを介してネットワークエミュレータ130にシナリオデータ120を送信することによってシナリオデータ120を出力しても良い。このように、シナリオデータ120の出力の方法は問わない。
【0037】
シナリオデータ生成装置100を用いてシナリオデータ120を生成することによって、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現することが可能となる。以下、この効果について詳細に説明する。
一般的に、ログには各メッセージの送信タイミングとして送信時刻が記録されており、シナリオデータでは送信時刻にしたがって各メッセージの送信タイミングが設定されている。そのため、検証用システム2においてメッセージの送信遅延や再送などが生じた場合、ログに記録された順序とは異なる順序でメッセージが送信されてしまう場合がある。図7の例を用いて具体的に説明する。ステップS103において送信されるメッセージに送信遅延や再送などが生じ、送信し終える前に時刻T4になってしまったとする。そうすると、ステップS103におけるメッセージが送信し終える前に、ステップS104におけるメッセージの送信が行われてしまい、ログに記録されたものとメッセージの送信順序が変わってしまうおそれがある。そのため、ログに記録された送信時刻のみに基づいてシナリオデータを作成していた場合には、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現できないことがあった。
【0038】
これに対し、シナリオデータ生成装置100では、送信条件設定部110によって送信条件の入力が受け付けられる。そして、シナリオデータ生成部111は、送信条件リストにおいて設定された順序にしたがってメッセージが送信されるようにシナリオデータ120を生成する。より具体的には、送信順序が守られる必要のあるメッセージに関して、送信フラグの送受信による送信順序の制御が行われる。そのため、実際に障害が発生した状況と同等の検証用システムをより正確に実現することが可能となる。
【0039】
<変形例>
送信条件設定部110は、入力部108を介して入力される操作者の指定に関わらず、予め設定された内容に基づいて各メッセージにおける送信条件を設定するように構成されても良い。この場合、送信条件設定部110には、予め送信条件として設定すべき項目(以下、「条件項目」という。)が設定される。例えば、図7に示す例の場合には、同一の通信装置に対して連続してメッセージが送信される場合には、その順序を変動させないように送信フラグを用いた制御を行うように条件項目が設定される。送信条件設定部110は、同一の通信装置に対して連続してメッセージが送信されるか否かをセッションリストやメッセージリストに基づいて検索し、そのようなメッセージが存在した場合には、その順序を変動させないように送信フラグを送信条件リストに記録する。このように構成された場合、送信条件設定部110は、送信条件設定画面を表示部109に表示する必要が無い。したがって、シナリオデータ生成装置100は、入力部108及び表示部109を備えないように構成されても良い。
【0040】
検証の対象となるネットワークの具体例として、家庭内ネットワークシステム1を示したが、検証の対象となるネットワークはこれに限定されない。検証の対象となるネットワークは、バックボーン等の基幹システムであっても良いし、企業や学校などで敷設されたネットワークであっても良いし、他のネットワークであっても良い。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0041】
1…家庭内ネットワークシステム, 2…検証用システム2, 10…ONU, 20…ルータ, 30…第一スイッチングハブ, 40…第一パーソナルコンピュータ, 50…電話機, 60…第二スイッチングハブ, 70…第二パーソナルコンピュータ, 80…キャプチャポイント, 101…ログ記憶部(記憶部), 102…ノードリスト記憶部, 103…ノードリスト生成部, 104…セッションリスト記憶部, 105…セッションリスト生成部, 106…メッセージリスト記憶部, 107…メッセージリスト生成部, 108…入力部, 109…表示部, 110…送信条件設定部, 111…シナリオデータ生成部, 120…シナリオデータ, 130…ネットワークエミュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成部と、
前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定部と、を備え、
前記シナリオデータ生成部は、前記送信条件設定部によって設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成する、シナリオデータ生成装置。
【請求項2】
前記ネットワークに設置された通信装置には、第一通信装置と第二通信装置とがあり、
前記送信条件設定部は、前記送信条件として前記第一通信装置が前記通信データを送信した後に前記第二通信装置が前記通信データを送信することが設定された場合、前記第一通信装置が前記通信データを送信した後に前記第一通信装置が前記第二通信装置へ送信フラグを送信し、前記第二通信装置は前記送信フラグを受信したのちに前記通信データを送信するように前記条件を設定する、請求項1に記載のシナリオデータ生成装置。
【請求項3】
検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部を備えるシナリオデータ生成装置が、前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成ステップと、
前記シナリオデータ生成装置が、前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定ステップと、を有し、
前記シナリオデータ生成ステップにおいて、前記シナリオデータ生成装置は、前記送信条件設定ステップにおいて設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成する、シナリオデータ生成方法。
【請求項4】
検証の対象となるネットワークにおいて取得された通信データの情報を記憶する記憶部を備えるコンピュータに対し、
前記記憶部に記憶される前記通信データの情報に基づいて、前記ネットワークに設置された通信装置の動作を他の通信装置において実現するためのシナリオデータを生成するシナリオデータ生成ステップと、
前記他の通信装置において前記通信装置の動作を実現した際に、前記通信装置が前記ネットワークにおいて送信した通信データの送信タイミングを、前記シナリオデータにおいて実現するための条件を設定する送信条件設定ステップと、を実行させ、
前記シナリオデータ生成ステップにおいて、前記コンピュータに対し、前記送信条件設定ステップにおいて設定された前記条件に基づいて前記他の通信装置が前記通信データを送信するタイミングを判定するように前記シナリオデータを生成させるためのコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−205189(P2012−205189A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69572(P2011−69572)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【出願人】(000000572)アンリツ株式会社 (838)
【Fターム(参考)】