説明

シフト装置

【課題】シフト装置において、シフトレバーの操作範囲を変更することで、正確な操作を可能とすることにある。
【解決手段】ソレノイド34の駆動を通じてシフトパネル14をシフトレバー18に対して相対的に移動させることで、シフトレバー18のホーム位置が第1のホーム位置H1及び第2のホーム位置H2間で変更される。これにより、シフトレバー18の操作範囲、ひいては操作数を変更させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両では、車両の変速比を車速やエンジン回転数等に応じて自動で切り換える自動変速機が搭載されたオートマチック車両が広く普及している。この種のオートマチック車両では、シフト装置のシフトレバーを選択位置に傾動操作することにより自動変速機のレンジを指定する。
【0003】
従来、シフト装置として、例えば、以下のような構成が採用されている。図12に示すように、シフトレバー118は、シフトパネル114に形成されるゲート115に挿通された状態で傾動操作が可能に構成されている。すなわち、ゲート115の形成範囲に応じてシフトレバー118の操作範囲が設定される。ゲート115はT字状に形成されて、同ゲート115の各位置に5つの選択位置が設定されている。例えば、H位置(ホーム位置)、リバース位置(R位置)、ニュートラル位置(N位置)及びドライブ位置(D位置)が設定されている。ユーザはシフトレバー118をH位置から各選択位置に傾動操作することで、自動変速機のレンジを変更する(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記シフト装置では、シフトパネル114のゲート115の形状に応じてシフトレバー118の操作範囲が設定されるところ、シフトレバー118の操作範囲をユーザやその好みに応じて変更することはできない。このように、ユーザの使い方(好み)に応じてシフトレバーの操作方法が変更されていない状況においては、ユーザによるシフトレバー118の正確な操作が困難となる。このような問題は、オートマチック車両のみならずマニュアル車両に搭載されるシフト装置においても同様に生じうる。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シフトレバーの操作範囲を変更することで、正確な操作を可能とするシフト装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、車両の変速機の接続状態を切り替える際に操作されるシフトレバーを備えたシフト装置において、前記シフトレバーに当接することで、同シフトレバーの操作範囲を規制する規制部材と、前記規制部材を前記シフトレバーに対して相対的に移動させるアクチュエータと、を備えたことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、アクチュエータが規制部材をシフトレバーに対して相対的に移動させることで、シフトレバーが規制部材に当接することで形成されるシフトレバーの操作範囲が変更される。従って、ユーザやその好みに応じてシフトレバーの操作範囲を設定できるため、シフトレバーの正確な操作を実現することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のシフト装置において、前記シフトレバーの操作範囲に沿って前記規制部材に形成される前記シフトレバーが挿通されるゲートと、前記シフトレバーを操作後に前記ゲート内に設定されるホーム位置に復帰させる復帰機構と、を備え、前記アクチュエータにより前記規制部材が前記シフトレバーに対して相対的に変位することで、前記シフトレバーの前記ホーム位置を変更させることをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、規制部材が変位することで、シフトレバーとゲートとの位置関係が変わる。これにより、シフトレバーのホーム位置を変更させることができる。また、ホーム位置の変更に伴い、シフトレバーの操作範囲も変更される。このように、シフトレバーの操作範囲に加えて、そのホーム位置が変更されることで、よりユーザやその好みに適した操作を実現することができる。よって、シフトレバーの正確な操作を実現することができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のシフト装置において、前記ゲートは、直線状に形成される第1のゲートと、前記第1のゲートに対して垂直方向に延びる直線状に形成されるとともに、同直線方向における中央部分が前記第1のゲートの中央部分と交わる第2のゲートと、を備え、前記第1及び第2のゲートが交わる位置である第1のホーム位置と、前記第1のホーム位置から前記第1のゲート又は前記第2のゲートに沿った方向に変位した位置である第2のホーム位置と、が設定され、前記アクチュエータによって前記規制部材が前記シフトレバーに対して相対的に前記第1のゲート又は前記第2のゲートに沿った方向に変位されることで、前記シフトレバーのホーム位置が前記第1のホーム位置及び前記第2のホーム位置間で変更されることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、シフトレバーのホーム位置を第1のホーム位置及び第2のホーム位置間で変更させることで、シフトレバーの操作数を変更させることができる。詳しくは、シフトレバーが第1のホーム位置に位置する場合、そのままシフトレバーを第1又は第2のゲートに沿う方向に傾動操作することで、車両の変速機の接続状態を切り替えることができる。一方、シフトレバーが第2のホーム位置に位置する場合であって、例えば、第2のホーム位置が第1のホーム位置から第1のゲートに沿った方向にあるとき、一度、シフトレバーを第1のホーム位置に傾動操作した後に、第2のゲートに沿う方向に傾動操作する必要がある。これにより、ユーザやその好みに応じてシフトレバーの操作範囲並びに操作数を設定できる。例えば、車両のメインユーザ等の乗車機会の多いユーザの場合、シフトレバーの操作数を減らすことで操作性を向上させることができるとともに、乗車機会が少ないメインユーザでないユーザの場合、シフトレバーの操作数を増やすことで正確な操作を実現できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載のシフト装置において、前記シフトレバーを操作後に第1のホーム位置に復帰させる復帰機構を備え、前記規制部材は前記シフトレバーの操作範囲における同シフトレバーの前記第1のホーム位置への復帰を妨げる位置に変位することで、前記シフトレバーを第2のホーム位置に保持することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、規制部材がシフトレバーへの第1のホーム位置への復帰を妨げるか否かで、ホーム位置を第1のホーム位置及び第2のホーム位置間で変更させることができる。これにより、ユーザやその好みに適したホーム位置を実現することができる。よって、ユーザによる正確な操作を実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シフト装置において、シフトレバーの操作範囲を変更することで、正確な操作を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態におけるシフト装置の斜視図。
【図2】本実施形態における図1のA−A線断面図。
【図3】本実施形態における図1のA−A線断面図。
【図4】本実施形態における図1のB−B線断面図。
【図5】本実施形態における図2のC−C線断面図。
【図6】本実施形態における図3のD−D線断面図。
【図7】本実施形態におけるシフト装置のブロック図。
【図8】他の実施形態におけるシフト装置の上面図。
【図9】他の実施形態における規制部材を備えたシフト装置の上面図。
【図10】他の実施形態における図1のB−B線断面図。
【図11】他の実施形態におけるシフト装置の上面図。
【図12】従来におけるシフト装置の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明にかかるシフト装置を具体化した一実施形態について図1〜図7を参照して説明する。なお、本例におけるシフト装置はオートマチック車両に搭載されている。また、本例では、シフト装置と自動変速機との機械的連結が排除されているシフトバイワイヤが採用されている。
【0018】
図1に示すように、シフト装置10は、箱状のケース12を備えてなる。ケース12の上面には四角形状の開口部12aが形成されている。この開口部12aは内側から板状のシフトパネル14にて塞がれている。このシフトパネル14は、ケース12の内部に埃等が進入するのを防ぐ機能とともに、外部から視認されるため意匠的な機能を有している。また、詳しくは後述するが、シフトパネル14は操作範囲を規制する規制部材としての機能も併せ持っている。
【0019】
シフトパネル14には十字状のゲート15が形成されている。このゲート15を通じて棒状のシフトレバー18がケース12の内側から突出した状態で設けられている。シフトレバー18の先端には略円柱状の操作部19が取り付けられている。この操作部19は、シフトレバー18が操作される際に、ユーザによって把持される。また、操作部19には、シフトレバー18の操作を行うユーザの指に関する生体情報(本実施形態では静脈パターン)を検出する静脈センサ20が設けられている。
【0020】
シフトパネル14はシフトレバー18の操作範囲を規制する規制部材である。このシフトパネル14に形成されるゲート15の形状に基づきシフトレバー18の操作範囲が決まる。ゲート15は車両の前後方向に沿う第1のゲート部16と、左右方向に沿う第2のゲート部17とからなる。このように、ゲート15は十字状に形成されているところ、シフトレバー18は両ゲート部16,17に沿って十字状に傾動操作可能である。
【0021】
ゲート15の4つの端部には、「H(ホーム)位置」、「N(ニュートラル)位置」、「R(リバース)位置」、及び「D(ドライブ)位置」が対応してそれぞれ設定されている。具体的には、ゲート15の前側端部にはR位置、ゲート15の後側端部にはD位置、ゲート15の右側端部にはN位置、ゲート15の左側端部にはホーム位置が設定されている。なお、詳しくは後述するが、このホーム位置は可変である。
【0022】
図2に示すように、シフトレバー18は、ケース12の内部に設けられた支持機構22により支持されている。具体的には、ケース12の内部には、支持機構22をケース12の底壁から離れた位置に支持する支持板24が設けられている。支持板24には、支持機構22により支持されるシフトレバー18の基端部(図2の下部)が挿通される挿通孔24aが形成されている。
【0023】
シフトレバー18は、支持機構22における互いに直交する2つの回転軸22a,22bを中心に前後左右方向に揺動する。支持機構22は、例えば、公知の構造であるユニバーサルジョイント構造を有している。この支持機構22には、シフトレバー18をホーム位置に復帰させるばね等からなる復帰機構(図示略)が備えられている。例えば、シフトレバー18をホーム位置から各位置に傾動操作した後、操作力が解除されると前記復帰機構のばねの弾性力によりシフトレバー18が自動でホーム位置に戻る。すなわち、本例のシフト装置10では、いわゆるモーメンタリ型が採用されている。なお、図1に示すように、ホーム位置は、両ゲート部16,17が交わる第1のホーム位置H1と、第2のゲート部17の左端部の第2のホーム位置H2との間で変更可能に構成されている。両ホーム位置H1,H2間でホーム位置を変更させる具体的構成については後述する。
【0024】
図2に示すように、挿通孔24aに挿通されたシフトレバー18の基端部(下端部)には、磁石26が設けられている。すなわち、シフトレバー18の揺動に伴って磁石26が揺動する。ケース12の内底面には、磁石26に対向する態様で基板27が設置されている。この基板27には、図2に拡大して示すように、磁石26から発せられる磁気(磁界)を検出する磁気センサ28a〜28eが十字状に配置されている。これらの磁気センサ28a〜28eは、シフトレバー18が各選択位置に存在しているときの磁石26に最も近づく位置にそれぞれ配設されている。
【0025】
図4に示すように、前後方向において対向する開口部12aの内側面には、スライド溝30が形成されている。スライド溝30にはシフトパネル14の前後方向における両端部が嵌合している。この状態において、シフトパネル14に対して左右方向(図4紙面方向)への外力が加わると、シフトパネル14は、その両端部がスライド溝30内を摺接しつつ、左右方向にスライドする。
【0026】
図2に示すように、シフトパネル14の右側縁部には、下側に直角に屈曲される押圧部31が形成されている。押圧部31に対面するケース12の内面には、一対のソレノイド34(図4参照)が設置されている。ソレノイド34は、図4に鎖線で示すように、前後方向に延びる押圧部31に対してバランスよく配されている。
【0027】
図2及び図3に示すように、ソレノイド34は、通電により自身に設けられる棒状のプランジャ35を進退移動させる。このプランジャ35の先端は、押圧部31に固定されている。プランジャ35が左側に突出したり、右側に引き込まれたりすることで、シフトパネル14が左右方向へ移動する。これにより、シフトレバー18は、シフトパネル14に対して、図2に示される第1のホーム位置H1と、図3に示される第2のホーム位置H2との間を相対的に移動する。第1のホーム位置H1は、両ゲート部16,17が交差する位置(中央位置)である。第2のホーム位置H2は、第2のゲート部17の左端部である。すなわち、プランジャ35は両ホーム位置H1,H2間の距離だけ進退移動する。
【0028】
図2に示すように、プランジャ35が突出した状態のとき、ホーム位置は第1のホーム位置H1となる。シフトレバー18の操作前においては、シフトレバー18は第1のホーム位置H1に位置する。また、図3に示すように、プランジャ35が引き込まれたとき、ホーム位置は第1のホーム位置H1から第2のホーム位置H2に変更される。なお、本例では、ソレノイド34として、自己保持型のソレノイドが採用されている。自己保持型のソレノイドにおいては、通電によりプランジャ35が進退移動するとともに、通電が解除された後も同プランジャ35が自身の位置を保持する。すなわち、通電が解除された後も図2及び図3に示したように、プランジャ35が突出した状態及びプランジャ35が引き込まれた状態を保持する。
【0029】
また、図2に示すように、ソレノイド34における押圧部31側の面には、プランジャ35に隣り合う態様でマイクロスイッチ13が設けられている。マイクロスイッチ13は、図3に示すように、プランジャ35が引き込まれたとき、シフトパネル14の押圧部31によりその検出部が押圧される。これにより、シフトパネル14、ひいては、シフトレバー18のホーム位置が検出可能となる。
【0030】
図5及び図6に示すように、シフトパネル14の移動に伴い、シフトレバー18がシフトパネル14、すなわちゲート15に対して相対的に移動することにより、ホーム位置が第1及び第2のホーム位置H1,H2間において変更される。具体的には、プランジャ35が突出した状態(図2参照)においては、図5に示すように、シフトレバー18は、ゲート15の中央、すなわち、両ゲート部16,17が交差する第1のホーム位置H1に位置する。この状態においては、シフトレバー18をR位置、N位置及びD位置に傾動操作するだけで、すなわち1操作で自動変速機のレンジを変更することができる。
【0031】
プランジャ35が引き込まれた状態(図3参照)においては、図6に示すように、シフトレバー18は、第2のゲート部17の左端部である第2のホーム位置H2に位置する。この状態においては、シフトレバー18は、一旦ゲート15の中央(第1のホーム位置H1)に傾動操作された後に、R位置、N位置及びD位置に傾動操作される。すなわち、自動変速機38のレンジを変更するために、シフトレバー18を2操作する必要がある。以上のように、ホーム位置の変更に伴い、シフトレバー18の操作数が変更される。
【0032】
次に、シフト装置10の電気的構成について、図7を参照して説明する。
磁気センサ28a〜28eは、シフトレバー18の操作に応じて揺動する磁石26が形成する磁界の大きさに応じた値の電圧を生成する。すなわち、磁気センサ28a〜28eに磁石26が近づくにつれて印加磁界が大きくなるのにつれて生成される電圧値は大きくなる。各磁気センサ28a〜28eにより生成された電圧は、制御装置11に出力される。制御装置11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aにはシフトレバー18が各選択位置に存在するときの磁気センサ28a〜28eにて生成される電圧値が予め記憶されている。
【0033】
ここで、上述のように、ホーム位置が変更されることで、シフトレバー18に対するゲート15の位置が移動する。このため、例えば、シフトレバー18がD位置に操作された場合であっても、ホーム位置が第1及び第2のホーム位置H1,H2の何れであるかによって、シフトレバー18の位置は異なる。このため、ホーム位置が第1及び第2のホーム位置H1,H2の何れであるかで磁気センサ28a〜28eにより生成される電圧値が異なる。よって、メモリ11aには、ホーム位置が第1及び第2のホーム位置H1,H2の両方の場合において、シフトレバー18が各選択位置に存在するときの磁気センサ28a〜28eにて生成される電圧値が記憶されている。ここで、制御装置11は、マイクロスイッチ13の検出結果に基づき、シフトレバー18のホーム位置が第1及び第2のホーム位置H1,H2の何れであるかを判断できる。従って、制御装置11は、何れのホーム位置H1,H2の場合であっても、各磁気センサ28a〜28eからの電圧値に基づき、シフトレバー18が何れの選択位置に存在するかを判断できる。そして、制御装置11は、判断結果に応じて自動変速機38のレンジの切り替えを行う。
【0034】
静脈センサ20により検出された静脈パターンは制御装置11に出力される。メモリ11aには、メインユーザの静脈パターンデータが記憶されている。制御装置11は、検出された静脈パターンと、メモリ11aに記憶される静脈パターンデータとの照合を行う。この照合が成立するか否かに基づき、何れのホーム位置H1,H2に設定するかが判断される。すなわち、制御装置11は、静脈パターンの照合が成立した場合、メインユーザがシフトレバー18を操作しようとしているとして、ホーム位置を第1のホーム位置H1に維持する。また、制御装置11は、静脈パターンの照合が成立しない場合、メインユーザ以外のユーザ(非メインユーザ)がシフトレバー18を操作しようとしているとして、ソレノイド34への通電を通じて、ホーム位置を第2のホーム位置H2に設定する。なお、制御装置11は、第2のホーム位置H2に設定した後に、エンジン停止や施錠等によりユーザが降車した旨判断したとき、ソレノイド34への通電を通じて、第1のホーム位置H1に戻す。これにより、乗車機会が多いメインユーザがシフトレバー18を操作したときには、第1のホーム位置H1から変更する必要がない。従って、ソレノイド34への通電に係る電力を低減できる。また、メインユーザは、より迅速にシフトレバー18の操作を開始することができる。
【0035】
次に、メインユーザ又は非メインユーザによるシフトレバー18の操作態様及びそのときのシフト装置10の動作態様について説明する。
メインユーザは、シフトレバー18を操作するべく、操作部19を把持する。このとき、静脈パターンの照合を通じて、ユーザがメインユーザであるか否かが判断される。メインユーザである旨判断された場合、ホーム位置を第1のホーム位置H1に維持する。よって、メインユーザは、シフトレバー18をD位置、N位置及びR位置に1操作で操作することができる。ここで、メインユーザは、予め1操作にてシフトレバー18が操作可能であることを認識しているため、誤操作の可能性は低い。よって、シフトレバー18をより簡易に操作できることが望ましい。この点、メインユーザによるシフトレバー18の操作数を1とすることで、シフトレバー18を簡易、かつ迅速に操作することができる。
【0036】
非メインユーザがシフトレバー18を操作する場合も、上記同様に静脈パターンの照合を通じて、ユーザがメインユーザであるか否かが判断される。メインユーザでない旨判断された場合、ソレノイド34の通電を通じて、シフトレバー18をシフトパネル14(ゲート15)に対して相対的に第1のホーム位置H1から第2のホーム位置H2に移動させる。これにより、シフトレバー18をD位置、N位置及びR位置に操作するためには、まず、第2のホーム位置H2から第1のホーム位置H1に操作する1操作と、同第1のホーム位置H1からD位置、N位置及びR位置に操作する1操作との計2操作が必要となる。このように、操作数を変えることで自ずと操作範囲も変わる。ここで、非メインユーザによるシフトレバー18の操作数も上記同様に1とした場合、操作が容易であるあまり、誤ってシフトレバー18をD位置、N位置及びR位置に操作してしまうおそれがある。この点、非メインユーザには2操作を要求することで、シフトレバー18の正確、確実な操作を実現することができる。よって、車両をより安全に運転させることができる。
【0037】
また、上記操作数が1の場合に比べ、非メインユーザに多くのシフトレバー18の操作を要求することで、車両の走行開始までにより多くの時間を要する。これにより、不正な車両の運転開始まで時間がかかるため、車両の盗難防止性を向上させることができる。
【0038】
また、ユーザはシフトレバー18を操作するべく操作部19に触れるだけで、静脈センサ20を通じてメインユーザであるか否かが判断される。よって、スイッチ操作等することなく、自動でメインユーザ及び非メインユーザに適した操作数を実現できるため、シフト装置10の利便性を向上させることができる。
【0039】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ソレノイド34の駆動を通じてシフトパネル14をシフトレバー18に対して相対的に移動させることで、シフトレバー18のホーム位置が第1のホーム位置H1及び第2のホーム位置H2間で変更される。すなわち、シフトレバー18の操作範囲、ひいては操作数を変更させることができる。詳しくは、シフトレバー18が第1のホーム位置H1に位置する場合、そのままシフトレバー18を両ゲート部16,17に沿う方向に傾動操作することで、自動変速機38のレンジを切り替えることができる。一方、シフトレバー18が第2のホーム位置H2に位置する場合、一度、シフトレバー18を第1のホーム位置H1に傾動操作した後に、第1のゲート部16に沿う方向に傾動操作する必要がある。これにより、例えば、乗車機会が多いメインユーザの場合、シフトレバー18の操作数を減らすことで操作性を向上させることができるとともに、乗車機会が少ない非メインユーザの場合、シフトレバー18の操作数を増やすことで正確な操作を実現できる。よって、メインユーザ又は非メインユーザに適した操作を実現することで、シフトレバーの操作性を向上させることができる。
【0040】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・上記実施形態においては、シフトレバー18が自動でホーム位置に戻るモーメンタリ型が採用されていた。しかし、操作されたシフトレバー18がその位置を維持するステーショナリ型を採用してもよい。
【0041】
・上記実施形態においては、オートマチック車両に搭載されるシフト装置10であったが、マニュアル車両に搭載されるシフト装置であってもよい。
・上記実施形態においては、メインユーザの場合にはホーム位置を第1のホーム位置H1に設定し、非メインユーザの場合にはホーム位置を第2のホーム位置H2に設定していた。しかし、メインユーザの好みに応じて、メインユーザの場合にはホーム位置を第2のホーム位置H2に設定し、非メインユーザの場合にはホーム位置を第1のホーム位置H1に設定してもよい。
【0042】
・上記実施形態においては、メインユーザであるか否かに基づき、シフトレバー18のホーム位置が変更されていた。しかし、メインユーザであるか否かの判断を行わないモードに切り替え可能とされるスイッチを設けてもよい。この場合、同モードに切り替えられることで、メインユーザであるか否かに関わらず、ホーム位置は変更されない。このときのホーム位置は、安全性及び操作性の何れを重視するかに基づき設定される。
【0043】
・上記実施形態においては、ゲート15の形状は十字状であったが、ゲート15の形状はこれに限らない。シフトレバー18の操作数は、ゲート15の形状等に応じて適宜設定される。例えば、図8に示すように、ゲート50を階段状に形成してもよい。具体的には、最後側に左右方向に延びるゲート部50aが形成され、同ゲート部50aの前側には左右方向に延びるゲート部50bが形成される。前後方向からみてゲート部50aの右側端部及びゲート部50bの左端部は重なるとともに、この重なった部分は前後方向に延びるゲート部50cにより連通されている。また、ゲート部50bの右端部には垂直に前側に伸びるゲート部50dが形成される。ゲート部50aの左端部は第1のホーム位置H11に設定され、ゲート部50aの右端部は第2のホーム位置H12に設定される。また、ゲート部50bの左端部はD位置に、ゲート部50bの右端部はN位置に、ゲート部50dの前端部はR位置にそれぞれ設定される。
【0044】
シフトレバー18が第1のホーム位置H11に位置する場合、シフトレバー18をD位置に操作するまで2操作、N位置に操作するまで3操作、R位置に操作するまで4操作、それぞれ必要となる。このような構成であっても、上記実施形態と同様にシフトパネル14を図8の左側に移動させることで、ホーム位置を第1のホーム位置H11から1操作分だけ右側に移動した第2のホーム位置H12とすることができる。これにより、シフトレバー18の操作数をそれぞれ1ずつ減らすことができる。
【0045】
・上記実施形態においては、個人認証システムとして静脈パターンを通じた静脈認証システムが採用されていた。しかし、個人認証システムはこの方式に限らず、例えば、指紋認証、掌形認証、顔認証、光彩認証、網膜認証システム等を採用してもよい。指紋認証システムの場合には、上記実施形態と同様に、シフトレバー18の操作部19に指紋センサを設けて、シフトレバー18を操作するユーザの識別を行うことができる。その他の認証システムについては、例えば、ユーザが運転席に着座したタイミングで認証を開始する。これにより、シフトレバー18の操作時には、ユーザに応じた操作数及び操作範囲に設定されている。また、上記複数種の認証システムを組み合わせてもよい。
【0046】
さらに、上記認証を省略して、スイッチ操作に応じて、操作数が変更される構成としてもよい。この場合には、ユーザはスイッチ操作により好みに応じた操作数に変更することができる。ここで、操作数が変更されることに伴い操作範囲が変更される。
【0047】
・上記実施形態においては、シフトパネル14はシフトレバー18の操作範囲を規制する規制部材としての機能のみならず、外部から視認されるため意匠的な機能や、ケース12の内部に埃が進入するのを防ぐ保護材的な機能を併せ持っていた。しかし、シフトパネル14と規制部材とを別に設けてもよい。
【0048】
具体的には、図9に示すように、ケース12の内部に設けられる板状の規制部材55がソレノイド56のプランジャ57の運動により第1のゲート部16に沿う方向(前後方向)に移動する。詳しくは、規制部材55は、第2のゲート部17の両ホーム位置H1,H2間に進入したり、第2のゲート部17から退出したりする。規制部材55が第2のゲート部17に進入したときには、シフトレバー18が第1のホーム位置H1にある状態で同シフトレバー18は同規制部材55の面に当接することで、第2のホーム位置H2に移動することが規制される。ここで、シフトレバー18を第2のホーム位置H2に自動で復帰する構成とすれば、ホーム位置を両ホーム位置H1,H2間で変更可能となる。すなわち、ホーム位置を第1のホーム位置H1としたいときには規制部材55を第2のゲート部17に進入させて、シフトレバー18の第2のホーム位置H2への自動復帰を規制する。また、ホーム位置を第2のホーム位置H2としたいときには規制部材55を第2のゲート部17から退出させてシフトレバー18の第2のホーム位置H2への自動復帰を許容する。本構成においては、シフトパネル14はケース12に固定されるため、スライド溝30等の構成が不要となる。また、ソレノイド56の設置位置はこれに限定されない。例えば、図9に示すように、ソレノイド66を第2のゲート部17の左側に設置して、プランジャ67を第2のゲート部17に沿う方向に進退させる。プランジャ67の移動に伴い、同プランジャ67に固定される規制部材68が第2のホーム位置H2に位置するシフトレバー18を第1のホーム位置H1まで押圧する。これにより、ホーム位置を変更することができる。
【0049】
さらに、上記両構成によれば、ホーム位置を変更せずに、操作範囲のみ変更することができる。ここでは、ホーム位置が第1のホーム位置H1の場合について説明する。図9に示すように、規制部材55がゲート15内に存在しない場合、操作範囲はゲート15に沿った十字状となる。一方、規制部材55がゲート15内に存在する場合、第1のホーム位置H1から左側へのシフトレバー18の傾動操作が規制される。よって、シフトレバー18の操作範囲はT字状となる。例えば、規制部材55を第1のホーム位置H1の上側(R位置側)に進入可能に構成することで、車両の走行中にシフトレバー18がR位置に傾動操作される誤操作を防止できる。
【0050】
・上記実施形態においては、シフトパネル14がシフトレバー18に対して移動していた。しかし、シフトレバー18が移動してもよい。例えば、支持機構22の外周側における支持板24上には、シフトレバー18を傾動させる機構を設ける。この機構は、図10に示すように、半円環状の可動部60と、同可動部60を回動可能に支持する支持部61と、同可動部60を回動させるモータ62とを備える。可動部60の前後方向における中央には、把持部64が形成されている。この把持部64には前後方向へ延びる長孔60aが形成されている。長孔60aには、シフトレバー18がその軸方向に挿通される。長孔60aは前後方向に大きく形成されることで、シフトレバー18の前後方向への傾動操作を可能としている。また、長孔60aの左右方向における幅はシフトレバー18の外径と同様の大きさに形成されている。
【0051】
可動部60の両端部は、それぞれ支持板24の上面に固定される2つの支持部61にピン65を介して回転可能に連結されている。可動部60は、ピン65の軸を回転中心として左右方向に回動可能である。なお、ピン65は可動部60に固定される。また、モータ62の出力軸は、後側のピン65に連結されている。モータ62の駆動により、可動部60は左右方向に回動する。このため、可動部60を左側に回動させることで、シフトレバー18を第2のホーム位置H2に移動させることができる。
【0052】
なお、シフトレバー18がシフトパネル14に対して移動可能であれば、この構成に限らず、例えば、支持機構22及びシフトレバー18等が搭載される支持板24を、ソレノイド34を通じて移動させてもよい。
【0053】
・上記実施形態においては、ゲート15に予め2つのホーム位置(第1及び第2のホーム位置H1,H2)が設定され、第1及び第2のホーム位置H1,H2間でホーム位置が変更されていた。しかし、予め設定されるホーム位置が1つであっても、ホーム位置を変更することができる。例えば、図11に示すように、シフトパネル74には、前後方向に延びる直線状のゲート70が形成されている。このゲート70には、前側からH位置(ホーム位置)、R位置、N位置、D位置が設定されている。この状態においては、シフトレバー18は、各選択位置に操作された後、H位置に対応する第1のホーム位置H21に復帰する。そして、上記実施形態と同様に、シフトパネル74を前側に移動させることで、ホーム位置を第1のホーム位置H21からR位置に対応する第2のホーム位置H22に変更させることができる。このとき、制御装置11は、磁気センサ28a〜28eにて生成される電圧に基づき判断されるシフトレバー18の位置と、H位置等の選択位置との対応関係を変更する。すなわち、H位置とR位置とを入れ替えることで、第2のホーム位置H22をホーム位置とすることができる。第2のホーム位置H22におけるシフトレバー18を前側に傾動操作することでR位置となり、シフトレバー18を後側に操作することでN位置及びD位置となる。
【0054】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4の何れか一項に記載のシフト装置において、前記規制部材は車室側に露出する意匠パネルであるシフト装置。
【0055】
同構成によれば、規制部材は意匠パネルである。よって、規制部材を別に設ける必要がなく、シフト装置をより簡易な構成とすることができる。
(ロ)請求項1〜4、上記項(イ)の何れか一項に記載のシフト装置において、ユーザの生体情報を取得するセンサと、前記センサの取得した情報に基づきユーザを識別するとともに、識別されたユーザに応じて、前記アクチュエータを通じて前記規制部材を前記シフトレバーに対して相対的に移動させる制御装置と、を備えたシフト装置。
【0056】
同構成によれば、識別されたユーザに応じて規制部材の変位を通じてシフトレバーの操作範囲が変更される。よって、例えば、スイッチ操作等することなく、自動でユーザやその好みに応じた操作範囲を実現できるため、シフト装置の利便性を向上させることができる。
【0057】
(ハ)上記項(ロ)に記載のシフト装置において、前記センサは、指紋又は静脈のパターンを読み取るものであって、前記シフトレバーの操作時に接触する操作部に設けられるシフト装置。
【0058】
同構成によれば、ユーザはシフトレバーの操作部に触れれば、指紋又は静脈が検出され、同検出結果に基づきユーザの識別が行われる。よって、ユーザはシフトレバーを操作するべく操作部に触れるだけで、ユーザやその好みに応じた操作範囲が実現される。よって、シフト装置の利便性をいっそう向上させることができる。
【符号の説明】
【0059】
10…シフト装置、11…制御装置、12…ケース、14…シフトパネル、15…ゲート、16…第1のゲート部、17…第2のゲート部、18…シフトレバー、19…操作部、20…静脈センサ、22…支持機構、26…磁石、28a〜28e…磁気センサ、34…ソレノイド、35…プランジャ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の変速機の接続状態を切り替える際に操作されるシフトレバーを備えたシフト装置において、
前記シフトレバーに当接することで、同シフトレバーの操作範囲を規制する規制部材と、
前記規制部材を前記シフトレバーに対して相対的に移動させるアクチュエータと、を備えたシフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記シフトレバーの操作範囲に沿って前記規制部材に形成される前記シフトレバーが挿通されるゲートと、
前記シフトレバーを操作後に前記ゲート内に設定されるホーム位置に復帰させる復帰機構と、を備え、
前記アクチュエータにより前記規制部材が前記シフトレバーに対して相対的に変位することで、前記シフトレバーの前記ホーム位置を変更させるシフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシフト装置において、
前記ゲートは、直線状に形成される第1のゲートと、前記第1のゲートに対して垂直方向に延びる直線状に形成されるとともに、同直線方向における中央部分が前記第1のゲートの中央部分と交わる第2のゲートと、を備え、
前記第1及び第2のゲートが交わる位置である第1のホーム位置と、
前記第1のホーム位置から前記第1のゲート又は前記第2のゲートに沿った方向に変位した位置である第2のホーム位置と、が設定され、
前記アクチュエータによって前記規制部材が前記シフトレバーに対して相対的に前記第1のゲート又は前記第2のゲートに沿った方向に変位されることで、前記シフトレバーのホーム位置が前記第1のホーム位置及び前記第2のホーム位置間で変更されるシフト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のシフト装置において、
前記シフトレバーを操作後に第1のホーム位置に復帰させる復帰機構を備え、
前記規制部材は前記シフトレバーの操作範囲における同シフトレバーの前記第1のホーム位置への復帰を妨げる位置に変位することで、前記シフトレバーを第2のホーム位置に保持するシフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−219002(P2011−219002A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91536(P2010−91536)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】