説明

シミユレーシヨンシステム

【目的】この発明は、比較的少ない記憶情報で、各種の運用模擬を実現し得るようにして、取扱い操作を簡略化することにある。
【構成】宇宙航行体特性データベース11cに数値情報として記憶した特性データと、記号を含む簡易言語で設定した動作設定条件情報とに基づいて運用に必要な実動作変数である環境データを環境生成部12で算出し、この環境データに基づいてシミュレータライブラリ14で運用模擬を実行し得るようにして、動作設定条件情報を可変設定するだけの操作で、システム変更と略同様に機能して各種環境条件における環境データの算出を可能としたものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば複数の人工衛星等の宇宙航行体や航空機等の移動体の運用を模擬するのに好適するシミュレーションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】最近の宇宙開発の分野においては、通信に対する要求の増大等にともなって、複数の通信衛星、例えばランデブー飛行を行う人工衛星と、静止衛星等の複数の宇宙航行体がそれぞれ独立して軌道制御ならびに姿勢制御等の各種の運用が要求されており、宇宙航行体運用の多様化が図られている。
【0003】そこで、今後の宇宙開発にあっては、複数の宇宙航行体の高精度な運用を実現するために、簡単な操作で、複数の宇宙航行体の運用を実験的に模擬するシミュレーションシステムの開発が急がれている。このようなシミュレーションシステムとしては、各宇宙航行体をそれぞれの運用条件を満足させて、同時に独立して運用することが、運用模擬の高度化を実現するのに必要とされる。
【0004】ところが、上記シミュレーションシステムでは、複数の宇宙航行体の運用模擬を独立して同時に行い得るように構成する場合、各宇宙航行体の運用条件(環境、運用情報等)がそれぞれで異なり、各宇宙航行体の運用模擬を時系列的に区分して実行することが困難なために、各宇宙航行体をそれぞれ独立に運用するのに必要な情報として、各宇宙航行体の運用条件に対応した膨大な記憶情報が必要となるという問題を有する。このため、このようなシミュレーションシステムにあっては、膨大な記憶情報を格納する非常に大容量のデータベースを備えなければ実現が困難で、非常に大形となる。
【0005】また、高度な運用模擬を実施する手段として、利用者(操作者)が、システム変更を実施して、高度な運用模擬を実施することも可能であるが、これによると、そのシステム変更を実施するための取扱い操作が非常に面倒であるという問題を有する。
【0006】係る事情は、地上移動体を含む複数の移動体の同時運用、例えば複数の航空機を同時に飛行場に誘導する特殊運用を模擬することの可能なシミュレーションシステムを構成する場合においても、同様である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】以上述べたように、従来のシミュレーションシステムでは、複数の宇宙航行体の高度な運用模擬を実行し得るように構成すると、大容量のデータベースを備える必要が生じて大形となったり、あるいは、その取扱い操作が面倒となるという問題を有していた。
【0008】この発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、構成簡易にして、簡便な取扱い操作を実現し得、且つ、高度な運用模擬を実現し得るようにしたシミュレーションシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明は、移動体の特性データを数値情報として記憶するデータベースと、前記移動体の動作設定条件情報を、記号を含む簡易言語で設定する条件設定手段と、前記データベースの特性データと前記条件設定手段で設定した動作設定条件情報に基づいて前記移動体の実動作変数を算出する実動作変数算出手段と、
【0010】この実動作変数算出手段で求めた実動作変数に基づいて前記移動体の運用を模擬するシミュレータ手段とを備えてシミュレーションシステムを構成したものである。
【0011】
【作用】上記構成によれば、移動体は、データベースの数値情報の特性データと、記号を含む簡易言語で設定される動作設定条件情報とに基づいて算出される実動作変数により運用模擬される。これにより、動作設定条件情報を可変設定するだけの操作で、システム変更と略同様に機能して各種環境条件における実動作変数の算出が可能となり、比較的少ない記憶情報で各種の移動体の各種環境条件における模擬が可能となる。
【0012】
【実施例】以下、この発明の実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】図1はこの発明の一実施例に係るシミュレーションシステムを示すもので、図中10は操作自在に設けられる入出力処理部である。入出力処理部10の出力端には統合制御部11が接続される。統合制御部11はSOE(Sequence Of Events)言語等の記号を含む簡易言語の言語シミュレータ11a、言語文解読部11b、宇宙航行体特性データベース11c、言語定義ファイル11d、言語実行文作成部11e及び言語コントローラ11fで構成される。即ち、言語シミュレータ11aはシステム動作を記号を含む簡易言語で定義し、言語文解読部11bで、入出力処理部10を介して入力される動作設定条件情報である簡易言語文を、宇宙航行体運用システムが理解する言語定義ファイル11dに基づいて変換する。また、宇宙航行体特性データベース11cは、入出力処理部10を介して入力される、宇宙航行体の重量や面積等の運用模擬に必要とする特性データを数値情報として記憶する。言語実行文作成部11eは言語実行文を宇宙航行体特性データベース11cの出力及び言語定義ファイル11dの定義ファイルに基づいて生成して言語コントローラ11fに出力する。
【0014】上記統合制御部11の言語コントローラ11fの出力端には環境生成部12が接続される。環境生成部12の出力端には動作変数記憶部13が接続される。環境生成部12は、シミュレーション対象の宇宙航行体の、例えば体軌道、位置・速度等の運用に必要とされる実動作変数である環境部分(環境データ)を、言語コントローラ11fからの設定条件情報及び数値情報に基づいて時系列に算出し、その出力端より動作変数記憶部13に出力する。動作変数記憶部13は環境生成部12で算出した環境データを格納する環境データ記憶部13a及びシミュレータ生成データを格納するシミュレータ生成データ記憶部13bで構成され、上記言語コントローラ11fからの記憶構造指示信号に応動して作動制御される。動作変数記憶部13は、その環境データ記憶部13aの出力端にシミュレータライブラリ14が接続され、そのシミュレータ生成データ記憶部13bの出力端には入出力処理部10の入力端が接続される。
【0015】また、上記言語コントローラ11fの出力端にはシミュレータライブラリ14の入力端が接続される。シミュレータライブラリ14は、その出力端がシミュレータ生成データ記憶部13bに接続されており、言語コントローラ11fからの運用設定条件情報が入力されると、動作変数記憶部13に記憶された環境データに基づいて宇宙航行体の運用を模擬して、動作変数記憶部13のシミュレータ生成データ記憶部13bに出力して該シミュレータ生成データ記憶部13bに格納する。このシミュレータ生成データ記憶部13bは上記入出力処理部10の操作に応じて、シミュレータライブラリ14の模擬出力を、例えばプリンタやディスプレイ等の表示部(図示せず)に表示する。
【0016】上記構成において、宇宙航行体の運用を模擬する場合は、先ず、利用者(操作者)が入出力処理部10を操作して宇宙航行体の特性データを数値情報として入力すると共に、動作設定条件情報を簡易言語で入力する。すると、統合制御部11は入力した特性データ及び簡易言語の動作設定条件情報が言語シミュレータ11aに入力され、入力した簡易言語が言語解読部11bで解読されて言語定義ファイル11dにファイルされると共に、特性データが宇宙航行体特性データベース11cに記憶される。そして、入出力処理部10を介して入力終了信号が入力されると、言語実行文作成部11eが動作して言語定義ファイル11dにファイルされた動作設定条件情報及び特性データをコンパイルし、言語コントローラ11fに出力する。言語コントローラ11fは環境生成部12に動作設定条件情報及び特性データを出力し、動作変数記憶部13に記憶構造指示信号を出力する。同時に、言語コントローラ11fはシミュレータライブラリ14にシミュレータ設定情報を出力する。ここで、環境生成部12は入力した動作設定条件情報及び特性データに基づいて宇宙航行体位置・速度軌道情報等の運用模擬に必要な環境データを算出して動作変数記憶部13の環境データ記憶部13aに格納する。ここで、シミュレータライブラリ14は、環境データ記憶部13aに格納した環境データに基づいて所定の運用を模擬して、そのシミュレート生成データを動作変数記憶部13のシミュレータ生成データ記憶部13bに出力して格納する。このシミュレータ生成データは、例えば簡易言語で形成されており、上述したように入出力処理部10の上記表示部(図示せず)に表示される。
【0017】例えば、シミュレータライブラリ14は、宇宙航行体の発生電力及び内部温度を模擬する場合、先ず、環境生成部13で求めた環境データに基づいて太陽と宇宙航行体の距離情報が入力されると、これらに基づいて発生電力や発熱の計算を行うと共に、統合制御部11を介して入力される宇宙航行体の搭載機器の使用状況信号に基づいて消費電力と内部温度の模擬を実行する。このシミュレータライブラリ14の模擬結果は動作変数記憶部13のシミュレータ生成データ記憶部13bに格納され、入出力処理部10に出力表示される。
【0018】このように、上記シミュレーションシステムは、宇宙航行体特性データベース11cに数値情報として記憶した特性データと、記号を含む簡易言語で設定した動作設定条件情報とに基づいて運用に必要な実動作変数である環境データを環境生成部12で算出し、この環境データに基づいてシミュレータライブラリ14で運用模擬を実行するように構成した。これによれば、動作設定条件情報を可変設定するだけの操作で、システム変更と略同様に機能して各種環境条件における環境データの算出が可能となり、比較的少ない記憶情報で、宇宙航行体の各種環境における模擬が可能となる。
【0019】例えば、地球、太陽、月、3機の宇宙航行体、及び追跡管制する地上局3基の合計9個の要素が存在するような場合、刻々と位置が変化する各要素の動きに合わせた相対的距離と相対的位置・速度ベクトル、相対方位・仰角の実動作変数は、相対ベクトルの組合わせが、9×8=72個となり、相対距離と位置・速度ベクトル及び相対方位・仰角の変数全体は72×(1+3+3+2)=648個となり、さらに、各要素毎の日照・食、可視・不可視、及び座標系や時刻の計算を入れると、約1000個の変数が必要となる。そこで、これらの各要素の変数をこの発明の如く、数値情報及び簡易言語で定義すると、記憶情報の削減化が図れて、データベースの小形化と共に、取扱い操作の簡便化が図れる。すなわち、太陽・方位・地球という変数を地球からみた太陽の方位と定義して、変数(記号)である太陽,方位,地球を、それぞれ方位を特性データとして数値情報で設定し、地球及び太陽の動作設定条件情報を簡易言語で設定することにより、648個の変数を9+9=18個の変数で定義することが可能となる。
【0020】また、これによれば、利用者(操作者)が入出力処理部を操作して動作設定条件及び特性データを設定するだけで、システムを改造することなく、意図するシステム実動作変数を求めることが可能となることにより、簡便な取扱い操作が確保される。
【0021】さらに、これによれば、変数のうち動作設定条件情報を簡易言語で設定していることにより、動作設定条件情報の追加及び基準のレベルアップ等が容易に可変調整可能となり、継承性を有することより、意志決定系のシーケンスの高度化が容易に図れるという効用も有する。
【0022】なお、上記実施例では、宇宙航行体の運用を模擬するように構成した場合で、説明したが、これに限ることなく、例えば航空機や自動車等の地上移動車等の各種の移動体の運用模擬に適用可能で、略同様の効果が期待される。よって、この発明は上記実施例に限ることなく、その他、この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることは勿論のことである。
【0023】
【発明の効果】以上詳述したように、この発明によれば、構成簡易にして、簡便な取扱い操作を実現し得、且つ、高精度な運用模擬を実現し得るようにしたシミュレーションシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施例に係るシミュレーションシステムを示したブロック図。
【符号の説明】
10…入出力処理部、11…統合制御部、11a…言語シミュレータ、11b…言語文解読部、11c…宇宙航行体特性データベース、11d…言語定義ファイル、11e…言語実行文作成部、11f…言語コントローラ、12…環境生成部、13…動作変数記憶部、13a…環境データ記憶部、13b…シミュレータ生成データ記憶部、14…シミュレータライブラリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 移動体の特性データを数値情報として記憶するデータベースと、前記移動体の動作設定条件情報を、記号を含む簡易言語で設定する条件設定手段と、前記データベースの特性データと前記条件設定手段で設定した動作設定条件情報に基づいて前記移動体の実動作変数を算出する実動作変数算出手段と、この実動作変数算出手段で求めた実動作変数に基づいて前記移動体の運用を模擬するシミュレータ手段とを具備したことを特徴とするシミュレーションシステム。

【図1】
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【公開番号】特開平5−108603
【公開日】平成5年(1993)4月30日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−271310
【出願日】平成3年(1991)10月18日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)