説明

シミ検出方法、シミ検出装置およびシミ検出プログラム、並びに、シミ分類方法、シミ分類装置およびシミ分類プログラム

【課題】シミの検出を高速度に行うことができるシミ検出方法を提供する。
【解決手段】被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成し、色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成し、生成された複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、所定の皮膚領域内に存在するシミを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シミ検出方法、シミ検出装置およびシミ検出プログラム、並びに、シミ分類方法、シミ分類装置およびシミ分類プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
シミ(色素班)は、メラニン色素が皮膚に沈着することにより生じるもので、発生する位置や種類は人によって様々である。そこで、化粧品の分野では、各人のシミ状態に応じた化粧品を提供するために、顔の各部位に発生したシミを正確に検出することが試みられている。
例えば、特許文献1に提案された皮膚画像処理装置では、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像に対してエッジ処理を施し、エッジ領域の大きさに基づいたシミの検出が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4485837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、撮影画像にはシミ以外にも毛穴などによるノイズが多数含まれており、これら全てにエッジ処理を施してシミの検出を行うと計算量が膨大になって多大な時間を要するといった問題がある。
【0005】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、シミの検出を高速度に行うことができるシミ検出方法、シミ検出装置およびシミ検出プログラムを提供することを目的とする。
また、この発明は、このようなシミ検出方法で検出されたシミを分類するシミ分類方法、シミ分類装置およびシミ分類プログラムを提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るシミ検出方法は、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成し、前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成し、生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するものである。
【0007】
ここで、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に、前記色空間成分画像として輝度成分画像またはb成分画像を生成し、前記輝度成分画像を多重解像度処理することにより解像度の異なる複数の輝度成分解像度変換画像を生成し、または、前記b成分画像を多重解像度処理することにより解像度の異なる複数のb成分解像度変換画像を生成し、生成された前記複数の輝度成分解像度変換画像または前記複数のb成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するのが好ましい。
また、前記複数の輝度成分解像度変換画像または前記複数のb成分解像度変換画像の解像度は、前記輝度成分画像または前記b成分画像において約2mm未満の大きさを有する画像信号を除去するように予め設定することができる。
また、被験者を撮影して得られた画像から顔領域を認識し、認識された顔領域における画像信号から前記輝度成分画像または前記b成分画像を生成するのが好ましい。
【0008】
この発明に係るシミ分類方法は、上記のいずれかに記載のシミ検出方法で検出されたシミを分類するシミ分類方法であって、前記シミ検出方法で検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出し、算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するものである。
【0009】
ここで、前記形態特徴量は、検出されたシミについて、重心位置座標、近似楕円の主軸、近似楕円の短軸、近似円の半径、周囲長および円形度をそれぞれ示す特徴量を含み、前記色特徴量は、検出されたシミについて、シミの明るさおよびシミの重心位置から外側に向けて広がる色分布をそれぞれ示す特徴量を含むのが好ましい。
また、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の前記色空間成分画像として輝度成分画像を生成すると共にb成分画像を含む色成分画像を生成し、前記輝度成分画像により前記形態特徴量およびシミの明るさを示す特徴量が算出されると共に、前記色成分画像によりシミの色分布を示す特徴量が算出されるのが好ましい。
【0010】
また、前記色成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像を生成し、生成された前記複数の色成分解像度変換画像をシミの重心位置を同心としてそれぞれ重ねることで、シミの重心位置から外側に向けて複数の領域に分割した分割画像を生成すると共に、前記分割画像の複数の領域にそれぞれ対応した複数のマスクを作成し、前記色分布を示す特徴量は、前記複数のマスクと前記色成分画像とをそれぞれ乗算することにより分割評価値を算出し、前記分割評価値の平均値および標準偏差を算出することで求めることができる。
また、前記色成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像を生成し、生成された前記複数の色成分解像度変換画像をシミの重心位置を同心としてそれぞれ重ねることで、シミの重心位置から外側に向けて複数の領域に分割した分割画像を生成すると共に、前記分割画像の複数の領域にそれぞれ対応した複数のマスクを作成し、前記色分布を示す特徴量は、前記複数のマスクと前記色成分画像とをそれぞれ乗算することにより分割評価値を算出し、シミの重心を含むマスク領域の前記分割評価値とそれ以外のマスク領域の前記分割評価値とのそれぞれの比率から求めることができる。
【0011】
また、前記色空間成分画像の多重解像度処理において、解像度の異なる前記複数の色空間成分解像度変換画像を生成することにより、日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロと、肝班とを大きさに応じて大別し、前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいて日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロをそれぞれ判別することで、シミが分類されるのが好ましい。
【0012】
この発明に係るシミ検出装置は、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成する色空間変換部と、前記色空間変換部により生成された前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成する多重解像度処理部と、前記多重解像度処理部により生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するシミ検出部とを備えたものである。
【0013】
この発明に係るシミ分類装置は、上記のシミ検出装置で検出されたシミを分類するシミ分類装置であって、前記シミ検出装置で検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出する特徴量算出部と、前記特徴量算出部により算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するシミ分類部とを備えたものである。
【0014】
この発明に係るシミ検出プログラムは、被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成するステップと、前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成するステップと、生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【0015】
この発明に係るシミ分類プログラムは、上記のシミ検出プログラムで検出されたシミを分類するためのシミ分類プログラムであって、前記シミ検出プログラムで検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出するステップと、算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するステップとをコンピュータに実行させるためのものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、被験者の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像から輝度成分画像を生成し、この輝度成分画像を多重解像度処理することによりシミの検出を行うので、シミの検出を高速度に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施の形態に係るシミ検出方法およびシミ分類方法を行うシミ検出分類装置の構成を示すブロック図である。
【図2】輝度成分画像の多重解像度処理を模式的に示す図である。
【図3】形態特徴量と色特徴量に対するシミの分類を模式的に示す図である。
【図4】形態特徴量の算出方法を模式的に示す図である。
【図5】色分布を示す色特徴量の算出方法を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、この発明の一実施の形態に係るシミ検出方法およびシミ分類方法を行うシミ検出分類装置の構成を示す。シミ検出分類装置は、シミ検出装置Aと、このシミ検出装置Aで検出されたシミを分類するシミ分類装置Bとを備えている。
シミ検出装置Aは、カメラ1を備え、このカメラ1に色空間変換部2、輝度成分多重解像度処理部3およびシミ検出部4が順次接続されている。
【0019】
カメラ1は、被験者の所定の皮膚領域を撮影するものであり、例えば被験者の顔Fに対して正面に配置することで顔Fに発生したシミを撮影することができる。なお、カメラ1は、被験者の皮膚領域を安全に撮影できる可視光カメラを用いるのが好ましいが、紫外線カメラまたは赤外線カメラを用いて撮影することもできる。
色空間変換部2は、カメラ1で撮影された撮影画像の色空間を変換した色空間変換画像を生成すると共にこの色空間変換画像を輝度成分と色成分に分けることにより、輝度成分画像と色成分画像をそれぞれ生成する。なお、色空間変換画像は、少なくとも輝度成分と色成分から構成されていればよく、例えばL色空間、LCH色空間、またはYCC色空間などに変換した画像を用いることができる。
輝度成分多重解像度処理部3は、色空間変換部2で生成された輝度成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の輝度成分解像度変換画像を生成する。シミ検出部4は、輝度成分多重解像度処理部3で生成された複数の輝度成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、所定の皮膚領域内に存在するシミの検出を行う。
【0020】
一方、シミ分類装置Bは、シミ検出装置Aの色空間変換部2に接続された色成分多重解像度処理部5と、この色成分多重解像度処理部5に接続されると共にシミ検出装置Aのシミ検出部4に接続されたマスク作成部6と、シミ検出部4に接続された輝度成分特徴量算出部7とを有する。さらに、マスク作成部6に色成分特徴量算出部8が接続されると共に輝度成分特徴量算出部7と色成分特徴量算出部8にシミ分類部9が接続され、このシミ分類部9に出力部10が接続されている。
輝度成分特徴量算出部7は、シミ検出部4により検出されたシミについて、輝度成分画像から形態特徴量およびシミの明るさを示す色特徴量をそれぞれ算出する。色成分多重解像度処理部5は、色空間変換部2で生成された色成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像を生成する。マスク作成部6は、色成分多重解像度処理部5で生成された複数の色成分解像度変換画像を用いることにより、シミ検出部4で検出されたシミについて、シミの重心位置から外側に向けて複数の領域に分割した複数のマスクを作成する。色成分特徴量算出部8は、マスク作成部6で作成されたマスクを色成分画像に適用することにより、シミの色分布を示す色特徴量を算出する。
シミ分類部9は、輝度成分特徴量算出部7および色成分特徴量算出部8により算出された形態特徴量および色特徴量に基づいて、例えば機械学習法により統計的にシミの分類を行う。機械学習法としては、分類木、ランダムフォレスト、バンギングまたはAdaboostなどを用いることができる。出力部10は、モニタまたはプリンタなどから構成され、シミ検出部4で検出された被験者の皮膚領域におけるシミの位置情報、およびシミ分類部9により分類されたシミの種別を出力する。
【0021】
次に、輝度成分多重解像度処理部3における輝度成分画像の多重解像度処理について説明する。
被験者の皮膚領域を撮影した撮影画像には、様々な面積を有するシミS(直径2mm〜5cm)が含まれると共に、シミSよりも小さな毛穴(直径2mm未満)などのノイズPも含まれている。このため、図2に示すように、輝度成分画像には、シミSおよびノイズPに由来する様々な大きさの画像部分が含まれる。
そこで、輝度成分画像の解像度を、例えば1/2、1/3、・・・1/nと順次低下させて多重解像度処理を行うことにより、解像度の異なる複数の輝度成分解像度変換画像を生成する。これにより、輝度成分画像に含まれる画像部分は、輝度成分解像度変換画像の解像度の低下に伴い、その解像度に対応する分解能より小さな部分が識別できなくなり、順次消失していく。続いて、複数の輝度成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、複数の輝度成分解像度変換画像にそれぞれ残存する画像部分のみを表示する。このようにして、輝度成分画像に含まれる複数の画像部分をその大きさに応じて区別することができる。
【0022】
次に、輝度成分特徴量算出部7および色成分特徴量算出部8により算出されるシミの形態特徴量および色特徴量について説明する。
シミは、図3に示すように、シミの大きさおよび円形度を含む形態特徴量と、シミの明るさおよび色分布を含む色特徴量とから、肝班、日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班、ホクロなどの6〜7種類に分類される。
具体的には、肝班は、色が薄い褐色(赤味よりも青味が強い)で且つ色分布が均一であり、目元輪郭付近に発生するもので、形状が扇形または楕円など多様で且つ4cm〜5cmの大きさを有し、輪郭形状がいびつで且つ輪郭コントラストが不明瞭といった特徴を有する。また、日光黒子は、色が薄い褐色から濃い褐色まで幅広く且つ色分布がほぼ均一であり、顔全体に発生するもので、楕円から真円に近い形状を有すると共に直径2mm〜10mm程度の大きさを有し、輪郭形状がいびつで且つ輪郭コントラストが明瞭であるといった特徴を有する。脂漏性角化症は、色が褐色から濃い褐色で且つ色分布は中心部が濃く、顔全体に発生するもので、楕円から真円に近い形状を有すると共に直径5mm〜10mm程度の大きさを有し、輪郭形状が比較的滑らかで且つ輪郭コントラストが明瞭であるといった特徴を有する。雀卵班は、色が薄い褐色(青味が強い)で且つ色分布が均一であり、顔全体に点在または多数分布して発生するもので、楕円から真円に近い形状を有すると共に直径が数mm程度の大きさを有し、輪郭形状がいびつで且つ輪郭コントラストが不明瞭から明瞭なものまで幅広いといった特徴を有する。ホクロは、色が濃い茶褐色から黒色であり、顔全体に発生するもので、楕円から真円に近い形状を有すると共に直径2mm〜10mm程度の大きさを有し、輪郭形状が比較的滑らかで且つ輪郭コントラストが明瞭であるといった特徴を有する。
【0023】
このようなシミの特徴に基づいて、シミの種別に応じた形態特徴量と色特徴量を、図3に示すように予め設定することができる。形態特徴量としては、例えば重心位置座標、近似楕円の主軸長、近似楕円の短軸長、近似楕円の主軸長と短軸長の軸比率、近似円の半径、周囲長および円形度をそれぞれ示す特徴量を含むことができ、色特徴量としては、例えばシミの明るさおよび色分布をそれぞれ示す特徴量を含むことができる。
輝度成分特徴量算出部7は、シミ検出部4で検出されたシミについて、輝度成分画像から形態特徴量およびシミの明るさを示す色特徴量の算出を行う。また、色成分特徴量算出部8は、シミ検出部4で検出されたシミについて、輝度成分画像からシミの色分布を示す色特徴量の算出を行う。そして、シミ分類部9では、シミの種別に応じて設定された形態特徴量と色特徴量に基づいて機械学習法が予め設計されており、輝度成分特徴量算出部7および色成分特徴量算出部8で算出された形態特徴量と色特徴量を機械学習法により統計的に処理することで、被験者のシミが分類される。
【0024】
次に、シミ検出装置Aおよびシミ分類装置Bにより行われるシミ検出方法およびシミ分類方法について説明する。
まず、図1に示すように、被験者の顔Fを含む所定の領域が正面からカメラ1により撮影され、その撮影画像データがカメラ1から色空間変換部2に出力される。色空間変換部2は、撮影画像の色空間を例えばL色空間に変換すると共に、輝度成分画像としてL成分画像を生成し、色成分画像としてa成分画像およびb成分画像を生成する。ここで、L成分は明度、a成分は赤と緑に対応した補色成分、b成分は黄色と青に対応した補色成分をそれぞれ示している。
【0025】
生成されたL成分画像は色空間変換部2から輝度成分多重解像度処理部3に出力され、輝度成分多重解像度処理部3によりL成分画像の多重解像度処理が行われる。輝度成分多重解像度処理部3は、図2に示すように、L成分画像の解像度を順次低下させることにより解像度の異なる複数の輝度成分解像度変換画像を生成する。L成分画像にはシミSおよびノイズPに由来する大きさの異なる複数の画像部分が含まれているが、解像度を順次低下させることにより画像部分を小さいものから順次消失させた輝度成分解像度変換画像をそれぞれ生成することができ、複数の画像部分を大きさに応じてそれぞれの輝度成分解像度変換画像に大別することができる。
【0026】
複数の輝度成分解像度変換画像は、輝度成分多重解像度処理部3からシミ検出部4に出力され、シミ検出部4によりそれぞれ2値化処理され、シミの検出が行われる。すなわち、L成分画像においてノイズPの大きさ(直径約2mm未満)を有する画像部分が消失するような解像度、例えば図2においてL成分画像の解像度を1/2とするような解像度が予め設定されており、シミ検出部4は、その解像度を有する輝度成分解像度変換画像を2値化処理し、生成された2値化画像に含まれる画像部分をシミSとして検出する。
このように、シミSを検出する際に、その検出領域からノイズPをシミSの大きさに基づいて予め除いておくことで、高精度にシミSを検出することができる。また、シミSが残存する輝度成分解像度変換画像に絞ってシミの検出を行うため演算量を低減することができ、高速度にシミの検出を行うことができる。
さらに、シミ検出部4は、シミSの種別による大きさの違いに基づいて、一部の種別を検出することもできる。例えば、L成分画像において肝班の大きさ(直径4cm〜5cm)を有する画像部分のみが残存するような解像度を予め設定し、その解像度を有する輝度成分解像度変換画像を2値化処理し、生成された2値化画像に含まれる画像部分を肝班として検出する。このように、シミSの種類において日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロと、肝班とを大きさに応じて大別し、肝班のみが残存する輝度成分解像度変換画像に絞って検出を行うため、高速度に肝班を検出することができる。また、この時にシミSを大別しておくことで、シミ分類装置BにおいてシミSの分類を行う際にその計算量を低減することができる。
【0027】
このようにしてシミ検出装置Aにより検出されたシミSの検出結果に基づいて、シミ分類装置BによりシミSの分類が行われる。
シミ検出装置Aで検出されたシミSの検出結果は、シミ検出部4からシミ分類装置Bの輝度成分特徴量算出部7に出力され、輝度成分特徴量算出部7によりシミSの形態特徴量と明るさを示す色特徴量の算出が行われる。
形態特徴量としては、図4に示すように、L成分画像から生成された2値化画像に含まれるシミSについて、例えば重心位置座標、近似楕円の主軸長、近似楕円の短軸長、近似楕円の主軸長と短軸長の比率、近似円の半径、周囲長および円形度がそれぞれ算出される。ここで、重心座標位置は、シミの頂点座標を(Xi,Yi)(ただし、i=1,2・・・n)とすると、下記式(1)で表すことができる。
((1/n)ΣXi,(1/n)ΣYi) ・・・ (1)
また、近似楕円の主軸長と短軸長との軸比率は、軸比率=主軸長/短軸長×100で表すことができる。さらに、円形度は、円形度=(4π×面積)/周囲長で表すことができる。
また、輝度成分特徴量算出部7は、検出されたシミSについて、L成分画像から明るさを示す色特徴量を算出する。
【0028】
一方、シミ分類装置Bは、シミ検出装置Aで検出されたシミSについて、色分布を示す色特徴量の算出を行う。図5に示すように、色空間変換部2により生成されたa成分画像およびb成分画像が、色成分多重解像度処理部5にそれぞれ出力され、色成分多重解像度処理部5により多重解像度処理が行われる。色成分多重解像度処理部5では、上記と同様にして、a成分画像およびb成分画像の解像度をそれぞれ順次低下させることにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像をそれぞれ生成する。
生成された複数の色成分解像度変換画像は、a成分画像およびb成分画像と共に色成分多重解像度処理部5からマスク作成部6に出力され、マスク作成部6により2値化処理された2値化画像がそれぞれ生成される。例えば、1/1の解像度を有するa成分画像の2値化画像に対し、解像度を1/2、1/3および1/4とした色成分解像度変換画像の2値化画像は、シミSが順次縮小された2値化画像として生成される。このようにして縮小して生成された3つの2値化画像とa成分画像の2値化画像をそれぞれ重ねることで、シミSの重心位置から外側に向けて4つの領域D1〜D4に分割された分割画像が生成される。そして、4つの分割領域D1〜D4にそれぞれ対応するマスク2〜5を作成すると共にシミSの外側領域に対応するマスク1を作成する。
【0029】
このようにして作成されたマスク1〜5は、マスク作成部6から色成分特徴量算出部8に出力され、色成分特徴量算出部8によりa成分画像およびb成分画像にそれぞれ乗算される。このマスク処理により、それぞれのマスク領域においてa成分画像およびb成分画像の分割評価値がそれぞれ算出される。そして、マスク2〜5の各領域毎に分割評価値の平均値および標準偏差を算出することで色分布を示す色特徴量を求めることができる。また、マスク2〜5の各領域毎に算出された分割評価値の平均値を用いて、マスク2〜5の領域(シミ全体)にわたる分割評価値の平均値および標準偏差を算出することで色分布を示す色特徴量を求めることもできる。さらに、シミSの重心位置を含むマスク5の領域における分割評価値の平均値と、マスク5以外のマスク1〜4の各領域における分割評価値の平均値とのそれぞれの比率を算出することで色分布を示す色特徴量を求めることもできる。
なお、色分布を示す色特徴量は、シミSの色分布に対して指標となるものであればよく、上記以外にも分割評価値を用いて算出したものを用いることができる。
このようにして、撮影画像から検出されたシミSについて、輝度成分特徴量算出部7および色成分特徴量算出部8により、大きさおよび円形度を含む形態特徴量並びに明るさおよび色分布を含む色特徴量をそれぞれ詳細に算出することができる。
【0030】
続いて、算出されたシミSの形態特徴量と色特徴量は、輝度成分特徴量算出部7および色成分特徴量算出部8からシミ分類部9に出力され、シミ分類部9により機械学習法を用いてシミSの分類が行われる。
例えば、分類木によりシミSを分類する場合には、円形度、a成分画像における分割評価値の標準偏差、近似楕円の軸比率、およびL成分画像における分割評価値の平均値が、シミの種別に応じて予め設定された形態特徴量と色特徴量に基づいて順次判定される。例えば、シミSの円形度が0.55未満で且つa成分画像における分割評価値の標準偏差が1.3以上であれば日光黒子に分類され、シミSの円形度が0.55以上で且つa成分画像における分割評価値の標準偏差が2.35以上であればホクロに分類される。
なお、シミ検出部4により、日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロと、肝班とが予め大別されており、シミ分類装置Bは、肝班を除いた日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロについて、形態特徴量および色特徴量を算出してそれぞれ判別すればよく、演算量を低減して高速度にシミSの分類を行うことができる。また、肝班の形態特徴量および色特徴量を算出してシミSを分類した場合でも、シミ検出装置Aにより大別された結果を参照してシミSを分類することができ、演算量を低減することができる。
シミSが種別毎に分類された分類結果は、シミ分類部9から出力部10に出力され、出力部10によりシミの検出結果およびシミの分類結果がそれぞれ表示される。
【0031】
本実施の形態によれば、多重解像度処理を行うことにより、シミのみが残存する画像に絞ってシミの検出を行うため、演算量を低減して高速度にシミの検出を行うことができる。また、シミの検出を行う際にシミの種別を大別することにより、シミの分類における演算量を低減して高速度にシミの検出を行うことができる。
【0032】
なお、上記のようなシミの分類は、入力手段、CPU、メモリ、出力部などから構成されるコンピュータをシミ分類プログラムにより機能させることで実行することができる。すなわち、シミ検出プログラムがコンピュータを機能させることにより、入力手段が被験者の所定の皮膚領域を撮影した撮影画像を取得し、取得された撮影画像に基づいて、CPUが色空間変換部2、輝度成分多重解像度処理部3およびシミ検出部4を実行させ、シミ検出部4により検出されたシミの検出結果が出力部10から出力される。また、シミ分類プログラムがコンピュータを機能させることにより、CPUが色成分多重解像度処理部5、マスク作成部6、輝度成分特徴量算出部7、色成分特徴量算出部8およびシミ分類部9を実行させ、シミ分類部9により分類されたシミの分類結果が出力部10から出力される。
【0033】
また、上記の実施の形態では、色成分特徴量算出部8によるシミSの色分布を示す色特徴量は、シミSの重心位置から外側に向けて広がる色分布を算出したが、シミSの色分布を詳細に算出できればこれに限るものではなく、例えばシミSの最も色の濃い位置を中心としてそこから外側に向けて広がる色分布を算出することもできる。
また、被験者を撮影して得られた画像から顔に発生したシミを検出する際には、撮影された画像から顔領域を認識し、認識された顔領域における画像信号から輝度成分画像を生成することで上記のようなシミの検出を行うことができる。
【0034】
また、上記の実施の形態では、撮影画像の色空間を変換して色空間変換部2により生成された輝度成分画像を用いてシミの検出を行ったが、変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を多重解像度処理することにより解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成してシミを検出できればこれに限るものではない。例えば、色空間変換部2により撮影画像の色空間がL色空間に変換されると共にb成分画像が生成され、このb成分画像を上記と同様にして多重解像度処理を行うことで、解像度の異なる複数のb成分画像解像度変換画像を生成する。生成された複数のb成分画像解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、所定の皮膚領域に存在するシミを検出することができる。
さらに、上記の実施の形態では、輝度成分画像を用いてシミの形態特徴量が算出されたが、上記の色空間成分画像において形態特徴量を算出できればこれに限るものではなく、例えばb成分画像を2値化処理することにより形態特徴量を算出することができる。このように、シミ検出方法で検出されたシミについて、色成分画像から形態特徴量および色特徴量を算出し、算出された形態特徴量および色特徴量に基づいてシミを分類することができる。
【0035】
次に、シミ分類装置を用いて実際にシミを分類した実施例について説明する。
この実施例は、被験者30名の皮膚を撮影した撮影画像からシミ部分を切り出して得られた各種類60枚のシミ画像を用いて、シミの形態特徴量と色特徴量をそれぞれ求め、求められた形態特徴量と色特徴量に基づいて種類の異なる機械学習法によりシミの分類を行ったものである。機械学習法には、分類木、ランダムフォレスト、バギングおよびAdaboostを用いた。
その結果、表1に示すように、シミ分類の正解率は、全ての機械学習法において80%以上を示すと共にその平均値は90%以上となり、高精度にシミを分類できることが分かった。特に、ランダムフォレストを用いた場合には、全ての種類のシミにおいて、シミ分類の正解率が90%以上を示し、ランダムフォレストがシミの分類に適していることが示唆された。
【0036】
【表1】

【符号の説明】
【0037】
1 カメラ、2 色空間変換部、3 輝度成分多重解像度処理部、4 シミ検出部、5 色成分多重解像度処理部、6 マスク作成部、7 輝度成分特徴量算出部、8 色成分特徴量算出部、9 シミ分類部、10 出力部、F 被験者の顔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成し、
前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成し、
生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するシミ検出方法。
【請求項2】
被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に、前記色空間成分画像として輝度成分画像またはb成分画像を生成し、
前記輝度成分画像を多重解像度処理することにより解像度の異なる複数の輝度成分解像度変換画像を生成し、または、前記b成分画像を多重解像度処理することにより解像度の異なる複数のb成分解像度変換画像を生成し、
生成された前記複数の輝度成分解像度変換画像または前記複数のb成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するシミ検出方法。
【請求項3】
前記複数の輝度成分解像度変換画像または前記複数のb成分解像度変換画像の解像度は、前記輝度成分画像または前記b成分画像において約2mm未満の大きさを有する画像信号を除去するように予め設定される請求項2に記載のシミ検出方法。
【請求項4】
被験者を撮影して得られた画像から顔領域を認識し、
認識された顔領域における画像信号から前記輝度成分画像または前記b成分画像を生成する請求項2または3に記載のシミ検出方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のシミ検出方法で検出されたシミを分類するシミ分類方法であって、
前記シミ検出方法で検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出し、
算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するシミ分類方法。
【請求項6】
前記形態特徴量は、検出されたシミについて、重心位置座標、近似楕円の主軸、近似楕円の短軸、近似円の半径、周囲長および円形度をそれぞれ示す特徴量を含み、
前記色特徴量は、検出されたシミについて、シミの明るさおよびシミの重心位置から外側に向けて広がる色分布をそれぞれ示す特徴量を含む請求項5に記載のシミ分類方法。
【請求項7】
被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の前記色空間成分画像として輝度成分画像を生成すると共にb成分画像を含む色成分画像を生成し、
前記輝度成分画像により前記形態特徴量およびシミの明るさを示す特徴量が算出されると共に、前記色成分画像によりシミの色分布を示す特徴量が算出される請求項6に記載のシミ分類方法。
【請求項8】
前記色成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像を生成し、
生成された前記複数の色成分解像度変換画像をシミの重心位置を同心としてそれぞれ重ねることで、シミの重心位置から外側に向けて複数の領域に分割した分割画像を生成すると共に、前記分割画像の複数の領域にそれぞれ対応した複数のマスクを作成し、
前記色分布を示す特徴量は、前記複数のマスクと前記色成分画像とをそれぞれ乗算することにより分割評価値を算出し、前記分割評価値の平均値および標準偏差を算出することで求められる請求項7に記載のシミ分類方法。
【請求項9】
前記色成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色成分解像度変換画像を生成し、
生成された前記複数の色成分解像度変換画像をシミの重心位置を同心としてそれぞれ重ねることで、シミの重心位置から外側に向けて複数の領域に分割した分割画像を生成すると共に、前記分割画像の複数の領域にそれぞれ対応した複数のマスクを作成し、
前記色分布を示す特徴量は、前記複数のマスクと前記色成分画像とをそれぞれ乗算することにより分割評価値を算出し、シミの重心を含むマスク領域の前記分割評価値とそれ以外のマスク領域の前記分割評価値とのそれぞれの比率から求められる請求項7または8に記載のシミ分類方法。
【請求項10】
前記色空間成分画像の多重解像度処理において、解像度の異なる前記複数の色空間成分解像度変換画像を生成することにより、日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロと、肝班とを大きさに応じて大別し、
前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいて日光黒子、脂漏性角化症、雀卵班およびホクロをそれぞれ判別することで、シミが分類される請求項5〜9のいずれか一項に記載のシミ分類方法。
【請求項11】
被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成する色空間変換部と、
前記色空間変換部により生成された前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成する多重解像度処理部と、
前記多重解像度処理部により生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するシミ検出部とを備えたシミ検出装置。
【請求項12】
請求項11に記載のシミ検出装置で検出されたシミを分類するシミ分類装置であって、
前記シミ検出装置で検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出する特徴量算出部と、
前記特徴量算出部により算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するシミ分類部とを備えたシミ分類装置。
【請求項13】
被験者の所定の皮膚領域を撮影して得られた撮影画像の色空間を変換すると共に変換された撮影画像の色空間のうち所定の色空間成分からなる色空間成分画像を生成するステップと、
前記色空間成分画像を多重解像度処理することにより、解像度の異なる複数の色空間成分解像度変換画像を生成するステップと、
生成された前記複数の色空間成分解像度変換画像をそれぞれ2値化処理することにより、前記所定の皮膚領域内に存在するシミを検出するステップとをコンピュータに実行させるためのシミ検出プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載のシミ検出プログラムで検出されたシミを分類するためのシミ分類プログラムであって、
前記シミ検出プログラムで検出されたシミについて、形態特徴量および色特徴量を算出するステップと、
算出された前記形態特徴量および前記色特徴量に基づいてシミを分類するステップとをコンピュータに実行させるためのシミ分類プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−90751(P2013−90751A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234243(P2011−234243)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】