説明

シモン芋エキスとシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質、及びその製造方法

【課題】BSE等の危険性が無く、人体に安全で日々の摂取が可能な家畜の脳ガングリオシド代替を得るために、シモン芋より糖脂質を含有するシモン芋エキス、又はスフィンゴ糖脂質を製造する方法を提供する。またシモン芋由来の糖脂質、又はスフィンゴ糖脂質を含む神経細胞活性化剤、及びそれらを用いた健康食品を提供する。
【解決手段】
シモン芋を極性溶媒に浸たすことで糖脂質、若しくはスフィンゴ糖脂質を極性溶媒中に抽出し、得られる浸漬液を濃縮することによってシモン芋エキスを得る。また神経細胞の活性化作用は株化された神経芽細胞を用いてその効果を確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス、ならびにシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質の製造方法と、それらを含む神経活性化剤等並びに健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、日本は本格的な高齢化時代に突入しようとしている。老化は人体に様々な影響を与えるが、中でも老人性痴呆や脳血管障害、神経障害等の老化に伴う脳や神経機能の低下や疾患は、今後の大きな問題となることが予想される。このような問題の対策としては、一つに老化に伴う脳や神経機能の低下の予防がある。予防には日々の適度な運動や読書等による脳への刺激のような生活習慣的な予防方法の他に、神経の機能改善や機能低下防止等の作用を有する医薬品の服用のような医学的な予防方法がある。また、医薬品と類似の作用が期待でき、かつ日々の摂取が可能な飲食品の摂取も挙げられる。この神経機能や学習行動を改善する医薬品や飲食品の有効成分として、近年ガングリオシドが注目されている。
【0003】
ガングリオシドは、シアル酸を有するスフィンゴ糖脂質の総称である。その構造はスフィンゴシンと脂肪酸がアミド結合したセラミドと呼ばれる脂質にグルコース、ガラクトース、シアル酸等の糖鎖が結合したものであり、この糖鎖の種類によって多数の分子種が存在する。ガングリオシドは種々の細胞膜上に存在し、細胞分化や増殖、情報伝達、神経機能等において様々な生理機能を果たすことが明らかになっている。
【0004】
ガングリオシドは動物の脳や神経組織に比較的多量に含まれている。したがって、従来のガングリオシドを得る方法は、特許文献4のように牛、豚、羊等の家畜の脳をはじめとする動物組織からエタノール等を用いて抽出する方法が一般的であった。ところが、近年、BSE(牛海綿状脳症)が国際問題化したことによって家畜の脳からのガングリオシドの抽出は、BSEの原因である異常型プリオンタンパク質の混入する危険性が生じてきた。そこで、家畜の脳に代わる人体に安全なガングリオシドの原料が求められていた。
【特許文献1】特開平9−301874
【特許文献2】特開平10−101568
【特許文献3】特開平11−246418
【特許文献4】特開平10−218892
【特許文献5】特開2003−61616
【特許文献6】特開2005−27534
【非特許文献1】Hadjiconstantinou M & Neff N.H.,J.Neurochem.,(1988)51(4),1190−6.
【非特許文献2】Schneider J.S.,J.Neurosci.Res.,(1992) 31(1),112−9.
【非特許文献3】Shibahara S.,et al., Cytotechnology,(2000) 33, 247−51.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、家畜の脳に代わる人体に安全なガングリオシドの代替原料を提供することである。本発明の更なる課題は、前記ガングリオシドの代替原料を提供するために、その製造方法を提供することである。本発明の他の課題は、前記ガングリオシドの代替原料から製造されたガングリオシド代替物を含有する製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するためにガングリオシドの代替原料を人体に安全であり、また入手が比較的容易な植物に求めた。植物組織は通常糖脂質としてグリセロ糖脂質を多量に含有しており、スフィンゴ糖脂質は微量にしか存在しない。また、植物性スフィンゴ糖脂質のほとんどは、前記ガングリオシドからシアル酸残基が欠如した構造をもつアシアロガングリオシドとして存在している。このアシアロガングリオシドが動物細胞に対してガングリオシドと同様の作用を有するという報告はない。そのため、これまで植物組織が、動物性ガングリオシドの代替原料として注目されることはなかった。
【0007】
しかし、本発明者らが鋭意探索した結果、シモン芋が他の植物と比較して多量のスフィンゴ糖脂質を含有することを見出した。シモン芋(Ipomoea batatas sp.)は、サツマ芋に近似するブラジル原産のヒルガオ科の植物で、白甘藷、白サツマ芋、又はカイアポ芋とも呼ばれている。従来からシモン芋の葉や茎にはカリウムやカルシウム等のミネラルの他、各種ビタミンが豊富に含まれていることが知られており、特許文献5又は6のように、シモン芋の葉や茎の乾燥粉末、乾燥物、搾汁液が健康食品として使用されている。ただし、これまでシモン芋の利用法としては、葉や茎を凍結乾燥した後、粉末化したものを単にカプセルに充填する等して利用する方法、搾汁液をそのまま飲用する方法、あるいは茶のように乾燥物を温水に浸漬した後にその抽出液を利用する方法がほとんどであり、特定の成分を抽出する方法は知られていなかった。
【0008】
本発明者らは、さらに鋭意努力した結果、シモン芋由来の糖脂質、及びスフィンゴ糖脂質が動物請ガングリオシドのように動物の神経芽細胞等の神経突起を伸長促進する神経細胞の活性化作用を有することを見出した。前述のように植物性のスフィンゴ糖脂質が神経細胞の活性化する作用を有することはこれまでに報告はない。
【0009】
本発明は、係る事実に基づいて完成された家畜の脳に代わる人体に安全なガングリオシドの代替原料としてのシモン芋由来の糖脂質、及びスフィンゴ糖脂質の提供と、それらをシモン芋から製造する方法等に関する。また、当該糖脂質やスフィンゴ糖脂質を含む健康食品、及び神経細胞活性化剤等に関する。すなわち、以下の発明を提供する。
【0010】
(1)本発明は、シモン芋を極性溶媒中に浸たす浸漬工程と、前記浸漬工程で得られる浸漬液を濃縮する濃縮工程と、からなるシモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキスを製造するシモン芋エキス製造方法を提供する。
【0011】
(2)本発明は、前記浸漬工程にて浸漬する前に、シモン芋を乾燥させる乾燥工程をさらに有するシモン芋エキス製造方法を提供する。
【0012】
(3)本発明は、(1)、又は(2)の最初の工程でシモン芋の塊根を断片化する断片化工程をさらに有するシモン芋エキス製造方法を提供する。
【0013】
(4)本発明は、前記濃縮工程が濃縮することにより得られる液状シモン芋エキスを乾燥させて固体状シモン芋エキスを得る工程であるシモン芋エキス製造方法を提供する。
【0014】
(5)本発明は、前記(1)から(4)のいずれか一に記載のシモン芋エキス製造方法により得られるシモン芋エキスにアルカリ溶液を加えてグリセロ糖脂質を加水分解する加水分解工程と、前記加水分解工程で得られた加水分解溶液にクロロホルムと水を加えて混合した後、クロロホルム溶液を取得するクロロホルム溶液取得工程と、前記クロロホルム溶液取得工程で取得されたクロロホルム溶液からクロロホルムを除去してシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を取得するスフィンゴ糖脂質取得工程とからなるシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法を提供する。
【0015】
(6)本発明は、シモン由来の糖脂質を動物に投与して、神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法を提供する。
【0016】
(7)本発明は、前記(1)から(4)のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスに含まれる糖脂質を動物に投与して神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法を提供する。
【0017】
(8)本発明は、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を動物に投与して神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法を提供する。
【0018】
(9)本発明は、前記(5)に記載の方法で得られるシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を動物に投与して神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法を提供する。
【0019】
(10)本発明は、シモン芋由来の糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤を提供する。
【0020】
(11)本発明は、前記シモン芋由来の糖脂質は前記(1)から(4)のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスに含まれる糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤を提供する。
【0021】
(12)本発明は、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤を提供する。
【0022】
(13)本発明は、前記シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質が前記(5)に記載の方法で得られるスフィンゴ糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤を提供する。
【0023】
(14)本発明は、前記(1)から(4)のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスを含む健康食品を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のシモン芋エキス製造方法によれば、シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキスをシモン芋から大量に効率よく製造することができる。
【0025】
本発明のシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法によれば、シモン芋エキスからシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を効率よく製造することができる。
【0026】
本発明のシモン芋由来の糖脂質又はスフィンゴ糖脂質は、神経細胞活性化作用を有することから、当該糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を動物に投与することで、脳、及び神経の機能増進や機能改善ができる。
【0027】
本発明によれば、シモン芋由来の糖脂質又はスフィンゴ糖脂質を有効成分とする神経細胞活性化作用剤を提供できる。特に本発明のスフィンゴ糖脂質は、神経細胞活性化作用を効能とする医薬として利用可能にすることができる。これは、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー病、脳卒中後遺症等の脳疾患、又は神経疾患を有する患者達に対して安全性の高い医薬品となり得る。
【0028】
本発明のシモン芋由来の糖脂質を利用すれば、BSEの危険性が無く、日々摂取可能な安全性の高い飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下に、各発明を実施するための最良の形態を説明する。なお、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる様態で実施しうる。
【0030】
実施形態1は、請求項1等について説明する。実施形態2は、請求項2等について説明する。実施形態3は、請求項3等について説明する。実施形態4は、請求項4等について説明する。実施形態5は、請求項5等について説明する。実施形態6は、主に請求項6から13について説明する。実施形態7は、主に請求項14ついて説明する。
【0031】
<<実施形態1>>
【0032】
<実施形態1:概要> 実施形態1について説明する。本実施形態は、シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス製造方法を提供する。本実施形態はシモン芋から糖脂質を溶出させるために極性溶媒中に浸たし、それによって得られる浸漬液を濃縮することで当該糖脂質を含有するシモン芋エキスを得ることを特徴とする。
【0033】
<実施形態1:構成> 以下、本実施形態の各工程の構成について説明する。
【0034】
「浸漬工程」(S0101)は、シモン芋を極性溶媒中に浸たして、シモン芋中に含まれる糖脂質を当該溶媒中に抽出する工程である。
【0035】
「極性溶媒」とは、電荷の偏りを持つ極性分子からなる溶媒である。例えば、アルコール、ベンゼン、若しくはトルエン等の極性有機溶媒、水、又はそれらの組み合わせによる混合液が該当する。当該浸漬工程に使用する極性溶媒の種類や組み合わせは問わない。ただし、抽出に使用した極性溶媒が最終産物のシモン芋エキス中に残存する場合であって、かつ人体に対して使用する場合には人体に対して毒性が非常に低いエタノールか、エタノール濃度が60%以上の水との混合液を使用することが好ましい。糖脂質をより効率よく抽出するためには、100%エタノール(通常は水が僅かに混在し、99.5%となっている。)を使用することがより好ましい。
【0036】
本発明で「糖脂質」とは、特に断りのない限り植物細胞内で生合成された植物性糖脂質を意味する。
【0037】
シモン芋は、極性溶媒中に浸たす前に水等で洗浄し、表面に付着した土やゴミ等を十分に除去しておくことが望ましい。また、本実施形態に用いるシモン芋は塊根に限らない。例えば葉であってもよいし、茎であってもよいし、塊根状でない根であってもよい。
【0038】
極性溶媒の分量は、使用するシモン芋の重量に対する当該極性溶媒の容量(容量/重量:V/W)が2倍から10倍の範囲になるようにことが好ましい。例えば、極性溶媒がエタノールであって、V/Wが3倍の場合には、150mlのエタノールに対してシモン芋50gを用いることになる。ただし、この範囲に限定はされない。
【0039】
シモン芋中に含まれる糖脂質を極性溶媒中に短時間でより効率よく抽出するために、当該極性溶媒を加熱してもよい。このとき当該極性溶媒の温度は、糖脂質が加熱で変性しない範囲、かつ使用する極性溶媒の取扱い上で安全性に問題のない範囲であれば特に問わない。当該糖脂質を抽出する上で効率のよい温度は極性溶媒の種類によって異なるが、例えば、エタノールを極性溶媒とする場合は55℃から65℃の範囲が好ましい。
【0040】
極性溶媒を加熱する方法は、極性溶媒の温度を指定する温度付近まで加熱できる方法であれば特に問わない。例えば、温度調節装置が設置された恒温槽内でヒーター等の熱源によって加熱してもよいし、容器に入れて直火、若しくは湯煎によって火力を調節しながら加熱してもよい。また、シモン芋の浸漬と極性溶媒の加熱の順序は問わない。例えば、指定する温度まで極性溶媒を加熱した後にシモン芋を浸漬してもよいし、室温状態の極性溶媒にシモン芋を浸漬して指定する温度まで加熱してもよい。
【0041】
当該極性溶媒全体の温度、及び濃度を均一化するために、加熱と共に当該極性溶媒の撹拌を行ってもよい。撹拌方法は、例えば、撹拌棒で撹拌してもよいし、撹拌装置を用いて撹拌してもよい。
【0042】
シモン芋由来の糖脂質を十分に抽出するための浸漬の時間は、抽出するシモン芋の状態、極性溶媒の種類、極性溶媒の温度に依存する。例えば、常温のエタノールに生のシモン芋塊根を浸漬する場合は10ヶ月以上を要するが、60℃に加熱したエタノールに乾燥したシモン芋塊根の小片を浸漬する場合には約3時間でよい。また、乾燥したシモン芋の葉であれば60℃のエタノールに約30分浸漬すればよい。
【0043】
「濃縮工程」(S0102)は、前記浸漬工程で得られる浸漬液から浸漬に用いた極性溶媒を減じ、浸漬液中に含まれるシモン芋由来の糖脂質の濃度を高める工程である。当該工程によってシモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキスを得る。
【0044】
「浸漬液」は、前記浸漬工程後に糖脂質や、シモン芋から抽出される糖脂質をはじめとした各種成分を含有する極性溶媒より、シモン芋塊根の小片等の固形物を取り除いて得られる液体である。主だった固形物を取り除いた後に固形物の微小な粒子が当該浸漬液中に残存していても構わない。浸漬液を取り出す方法は、固形物を除去できる方法であれば特に問わない。例えば、前記浸漬工程後に得られるシモン芋と極性溶媒との混合物を濾過して固形物を除去してもよいし、当該混合物を遠心分離して、若しくは静置して固形物を沈殿させた後にその上清を取り出してもよいし、又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
「シモン芋エキス」は、前記浸漬液から浸漬に用いた極性溶媒の大部分を除去して浸漬液中に存在するシモン芋由来の糖脂質の濃度を高めた液体である。糖脂質の濃度が、浸漬液の濃度よりも高ければ当該糖脂質の濃度は問わないが、好ましくは浸漬液の5倍以上の濃度、さらに好ましくは10倍以上の濃度である。
【0046】
当該シモン芋エキスを得る方法は、濃縮過程において糖脂質の性質を変えないで浸漬液から極性溶媒を除去できる方法であれば特に問わない。例えば、エバポレーターを用いた蒸発濃縮法でもよいし、極性溶媒を風乾等で蒸発させる自然蒸発濃縮法でもよいし、浸漬液の冷却による濃縮法でもよい。
【0047】
前記浸漬液の冷却による濃縮法とは、糖脂質が低温化で析出して沈殿する性質を利用した濃縮法である。例えば、極性溶媒がエタノールの場合、0℃以下に冷却することで当該浸漬液中の糖脂質が析出する。これを静置するか、若しくは冷却遠心して上清の全て、あるいは大部分を除去した後、沈殿した糖脂質を残った極性溶媒か、若しくは懸濁用に新たに加える極性溶媒で再懸濁する方法であってもよい。当該浸漬液の冷却による濃縮法で実施形態4に詳述する固体状シモン芋エキスを製造する場合には、沈殿した糖脂質を再懸濁する必要はない。当該工程により、浸漬液中に存在する糖脂質、遊離脂肪酸等の他、浸漬に使用した極性溶媒に抽出可能な成分を濃縮できる。
【0048】
本実施形態で得られるシモン芋エキスは、シモン芋由来の糖脂質を含有する。当該シモン芋エキスに糖脂質が含まれる事実は、当該シモン芋エキスを薄層クロマトグラフィー(Thin−Layer Chromatography:以下TLCとする。)上で展開した後、アンスロン硫酸で糖脂質を呈色する実験によって確認できる。アンスロン硫酸は糖脂質の糖鎖を構成するヘキソースを紫色に発色させることから、糖脂質の検出に広く使用されている試薬である。TLCで展開した物質が紫色に呈色すれば粗精製したサンプル内糖脂質が含まれることを意味する。
【0049】
<実施形態1:方法> 図1は実施形態1の方法の一例を示したものである。この図に示すように、本実施形態の方法は、まず、シモン芋を極性溶媒中に浸たす(浸漬工程:S0101)。次に、前記浸漬工程で得られる浸漬液を濃縮する(濃縮工程:S0102)。以上の製造工程によって、シモン芋由来のシモン芋エキスを得る。
【0050】
<実施形態1:効果> 本実施形態の方法によれば、シモン芋に含まれる糖脂質を極性溶媒中に抽出して濃縮することで、シモン芋エキスとして得ることができる。当該方法で得られたシモン芋エキスは、健康食品や神経細胞活性化剤を製造する上での原料として利用することができる。
【0051】
<<実施形態2>>
【0052】
<実施形態2:概要> 実施形態2について説明する。本実施形態は、シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス製造方法を提供する。当該方法は、前記実施形態1を基本とし、前記浸漬工程前にシモン芋を乾燥させる乾燥工程をさらに有することを特徴とする。
【0053】
<実施形態2:構成> 実施形態2は、前記実施形態1を基本とする。したがって、本実施形態における方法の各工程の構成に関して、浸漬工程(S0202)と濃縮工程(S0203)については前記実施形態1と同様であることからそれらの説明は省略し、ここでは本実施形態に特徴的な乾燥工程についてその構成について以下で説明をする。
【0054】
「乾燥工程」(S0201)は、シモン芋を乾燥させる工程である。本工程の「乾燥」とは、シモン芋中に含まれる水分を減ずることを言う。当該乾燥により、シモン芋中に含まれる水分を前記浸漬工程前に減じることにより前記極性溶媒がシモン芋組織内に浸透し易くなることから、脂質成分を極性溶媒中に短時間で効率よく抽出することができる。また、前記極性溶媒がエタノールである場合には、当該乾燥により、シモン芋組織内に浸透したエタノールの含水率が高くならない。すなわち、浸透したエタノールが細胞内の水分によって薄まらない。したがって、脂質成分をエタノール中に効率よく抽出することができる。
【0055】
乾燥の方法は、シモン芋中に含まれる水分を減じることができれば特には問わない。例えば、外気に晒して放置するだけの自然乾燥法でもよいし、除湿剤とともに密閉容器内に入れて乾燥する除湿乾燥法でもよいし、晴天の昼間に日光と外気に当てて乾燥させる天日干し法でもよいし、送風装置等を用いて温風や冷風を当てる風乾燥法でもよいし、ヒーター等の熱源を用いた加熱乾燥法でもよいし、容器内で真空ポンプ等を用いて脱気する真空乾燥法でもよいし、シモン芋を凍らせたままの状態で乾燥する凍結乾燥(フリーズドライ)法でもよいし、又はそれらの組み合わせであってもよい。シモン芋中に含まれる糖脂質の性質を維持するためには凍結乾燥法が好ましい。これは、凍結乾燥法が低温で昇華により水分を除去することから、糖脂質の性質がほとんど変化しないためである。
【0056】
シモン芋の乾燥時間は、前記乾燥方法や実施形態3で詳述する断片化工程後のシモン芋の状態によって適宜変えればよい。例えば、スライスした塊根を天日干し法で乾燥する場合は、冬季の晴天日の直射日光下で2週間から3週間程度乾燥することが好ましい。また、小片化した塊根を凍結乾燥法で乾燥する場合には−50℃下で6時間以上乾燥することが好ましく、−50℃下で24時間以上乾燥すればさらに好ましい。
【0057】
当該工程によりシモン芋の含水率を乾燥前よりも90%以下にすればよい。好ましくは、シモン芋の含水率を20%以下にすることである。
【0058】
本実施形態で得られるシモン芋エキスは、シモン芋由来の糖脂質を含有する。この事実は、前記実施形態1で述べた実験方法と同様の方法によって確認できる。実験の詳細な方法、及び実験結果は実施例1及び2と同様であることから、ここではその説明を省略する。
【0059】
<実施形態2:方法> 図2は実施形態2の方法の一例を示したものである。まずシモン芋を乾燥させる(乾燥工程:S0201)。これ以降は実施形態1と同様である。すなわち、次に浸漬工程(S0202)を行い、続いて濃縮工程(S0203)を行う。以上の製造工程によって、シモン芋由来のシモン芋エキスを得る。
【0060】
<実施形態2:効果> 本実施形態によれば、乾燥工程でシモン芋を乾燥して細胞内の水分を除去することによって、次に続く浸漬工程でシモン芋の細胞内部にまで極性溶媒が容易に浸透できる。これにより、極性溶媒中にシモン芋由来の糖脂質を効率よく抽出できる。
【0061】
<<実施形態3>>
【0062】
<実施形態3:概要> 実施形態3について説明する。本実施形態は、シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス製造方法を提供する。本実施形態のシモン芋由来のシモン芋エキス製造方法は、前記実施形態1又は2を基本とし、最初の工程としてシモン芋の塊根を断片化する断片化工程をさらに有することを特徴とする。
【0063】
<実施形態3:構成> 実施形態3は、前記実施形態1又は2を基本とする。したがって、本実施形態において乾燥工程(S0302)と浸漬工程(S0303)と濃縮工程(S0304)については実施形態2と同様であることからそれらの説明は省略し、ここでは本実施形態に特徴的な断片化工程(S0301)の構成について以下で説明をする。
【0064】
本実施形態ではシモン芋の塊根を用いる。「塊根」とは、シモン芋の根部に様々な栄養成分が蓄積されることで芋状となったものである。
【0065】
「断片化工程」(S0301)とは、シモン芋の塊根を断片化する工程である。ここで言う「断片化」とは、シモン芋の塊根を切裁により小片にする意味に留まらず、塊根の内部組織を外部に露出させることを意味する。例えば、シモン芋の塊根表皮を剥離してもよいし、塊根をブロック状に切裁してもよいし、塊根をスライスしてもよいし、塊根を細切りにしてもよいし、塊根をすりおろしてもよいし、塊根を粉砕してもよいし、塊根を潰してもよいし、またそれらの組み合わせであってもよい。なお、塊根表皮を剥離した場合には当該表皮部分も含み、また、塊根を潰した場合には当該処理によって得られる搾汁液も含むものとする。当該断片化工程により塊根の内部組織を外部に露出させて、前記極性溶媒に直接触れる面積を大きくすることで、シモン芋の塊根に含有する糖脂質等の極性溶媒中への抽出効率を高めることができる。
【0066】
本実施形態で得られるシモン芋エキスは、シモン芋由来の糖脂質を含有する。この事実は、前記実施形態1で述べた実験方法と同様の方法によって確認できる。実験の詳細な方法、及び実験結果は実施例1及び2に詳述するため、ここではその説明を省略する。
【0067】
<実施形態3:方法> 図3は実施形態3での方法の一例を示したものである。この図で示す本実施形態の方法は、実施形態2の方法を基本としている。まずシモン芋の塊根を断片化する(断片化工程:S0301)。これ以降は実施形態2と同様である。すなわち、次に乾燥工程(S0302)を行い、続いて浸漬工程(S0303)を行う。そして最後に濃縮工程(S0204)を行う。以上の製造工程によって、シモン芋由来のシモン芋エキスを得る。
【0068】
<実施形態3:効果> 本実施形態によれば、シモン芋を断片化して切断面を露出させることにより、シモン芋由来の糖脂質等をより多量に、より効率よく抽出することが可能となる。したがって、簡便かつ多量にシモン芋由来の糖脂質等を製造する上で有効である。
【0069】
<<実施形態4>>
【0070】
<実施形態4:概要> 実施形態4について説明する。本実施形態は、シモン芋由来の糖脂質を含有する固体状のシモン芋エキス製造方法の提供である。本実施形態のシモン芋エキス製造方法は、前記実施形態1から3のいずれか一の濃縮工程方法で得られる液状シモン芋エキスを乾燥させて固体状シモン芋エキスを得ることを特徴とする。
【0071】
<実施形態4:構成> 実施形態4は、その前処理としてシモン芋由来のシモン芋エキスを得るために前記実施形態1から3のいずれか一を基本とする。本実施形態において断片化工程(S0401)と、乾燥工程(S0402)と、浸漬工程(S0403)と、については実施形態3と同様であることからそれらの説明は省略し、ここでは本実施形態に特徴的な濃縮工程(S0404)の構成について以下で説明をする。
【0072】
「濃縮工程」(S0404)は、実施形態1から3のいずれか一の方法で得られる液状シモン芋エキスを乾燥させて固体状シモン芋エキスを得る工程である。
本工程の「乾燥」は、前記乾燥工程(S0201)の乾燥とは水分以外の液体も減じる点と乾燥させる対象が異なる。すなわち、本工程の「乾燥」では、シモン芋エキス中に溶解している糖脂質を固体として取りだすために、シモン芋エキス中に存在する水分、又は糖脂質の抽出に使用した極性溶媒等の液体を除去することを言う。ただし、液体の完全除去は必要ではなく、固体状になるか、又は含液体率(シモン芋エキスの完全乾燥重量に対する当該液体の割合)が20%以下となればよい。
【0073】
当該工程で液状シモン芋エキスを乾燥する方法は、液状シモン芋エキス中、若しくは実施形態1に記載の浸漬液の冷却よって得られる糖脂質の沈殿中に存在する水分、又は糖脂質の抽出に使用した極性溶媒等を除去することができ、さらにシモン芋エキス中の糖脂質が分解等の性質上の変化を生じない方法であれば特に問わない。例えば、外気に晒して放置するだけの自然乾燥法でもよいし、除湿剤とともに密閉容器内に入れる除湿乾燥法でもよいし、晴天の昼間に外気に晒して乾燥させる天日干し法でもよいし、送風装置等を用いて温風や冷風を送り乾燥させる風乾燥法でもよいし、ヒーター等の熱源を用いた加熱乾燥法でもよいし、容器内で真空ポンプ等を用いて脱気する真空乾燥法でもよいし、シモン芋エキスを凍結後に減圧下で乾燥する凍結乾燥(フリーズドライ)法でもよいし、シモン芋エキスを熱風と共に噴霧し極性溶媒のみを蒸発させる噴霧乾燥法でもよいし、またそれらの組み合わせであってもよい。
【0074】
好ましくは凍結乾燥法がよい。これは、当該方法が低温で昇華により水分を除去することから、シモン芋中に含まれる糖脂質の性質の変化が少ないためである。当該方法で乾燥する場合、例えば、50mlのシモン芋エキスをトレイに流し入れ、凍結乾燥装置にて−50℃で12時間以上、好ましくは−50℃で24時間以上凍結乾燥処理を行うことで、シモン芋エキスの乾燥物を得ることができる。もちろん凍結乾燥の温度や時間はこの条件に限られない。
【0075】
当該糖脂質を実施形態6、又は7で詳述する神経細胞活性化剤、又は健康食品として使用する場合には、賦形剤等を添加して乾燥させてもよい。
【0076】
当該工程で得られた乾燥物は必要に応じて粉砕する。粉砕方法は、目的とする粒子サイズに粉砕できれば特に問わない。例えば回転歯による粉砕機を用いてもよいし、ミル(mill)を用いてもよいし、人が乳鉢等ですりつぶしてもよいし、又はその組み合わせであってもよい。粉砕した乾燥物の粒子形状は問わない。例えば、不定形であってもよいし、球形に近似の形状であってもよい。また、粒子サイズも約5ミリ以下であれば特に問わない。例えば、顆粒サイズであってもよいし、微粉サイズであってもよい。
【0077】
本実施形態で得られる固体状シモン芋エキスは、シモン芋由来の糖脂質を含有する。この事実を証明する実験結果は実施例1とほとんど同様であることから、ここではその説明を省略する。
【0078】
<実施形態4:方法> 図4は実施形態4での方法の一例を示したものである。この図で示す本実施形態の方法は、前記実施形態3の方法を基本としている。すなわち、まず断片化工程(S0401)を行い、次に乾燥工程(S0402)を行い、続いて浸漬工程(S0403)を行い、そして濃縮工程(S0404)を行い、液状シモン芋エキスを得る。ここまでは前記実施形態3と同様である。本実施形態では当該濃縮工程でさらに液状シモン芋エキスを乾燥させて固体状にする点で実施形態3と異なる。以上の工程によって、固体状のシモン芋由来のシモン芋エキスを得る。
【0079】
<実施形態4:効果> 本実施形態によれば、液状シモン芋エキスを乾燥して固体状にすることにより保存性を高めることができる。また、液状に比べて携帯性にも優れている、さらに、実施形態6、又は7で詳述する神経細胞活性化剤、又は健康食品として錠剤や粉末剤に加工する上でも便利である。
【0080】
<<実施形態5>>
【0081】
<実施形態5:概要> 実施形態5について説明する。本実施形態は、実施形態1から4のいずれか一の方法で得られるシモン芋エキスから、さらにスフィンゴ糖脂質を高濃度に精製するシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法の提供を特徴とする。
【0082】
<実施形態5:構成> 本実施形態は、その前処理としてシモン芋由来の糖脂質を含むシモン芋エキスを得るために前記実施形態1から4のいずれか一を基本とする。したがって、本実施形態において断片化工程(S0501)と乾燥工程(S0502)と浸漬工程(S0503)と濃縮工程(S0504)とについては実施形態1から4のいずれか一と同様であることからそれらの説明は省略し、ここでは本実施形態に特徴的な加水分解工程(S0505)とクロロホルム溶液取得工程(S0506)とスフィンゴ糖脂質取得工程(S0507)とについて、それらの構成を以下で説明をする。
【0083】
「加水分解工程」(S0505)は、前記実施形態1から4のいずれか一の方法で得られたシモン芋由来のシモン芋エキスにアルカリ溶液を加え、シモン芋エキス中に含まれるグリセロ糖脂質をアルカリ溶液によって加水分解する工程である。加水分解によってシモン芋エキス中のグリセロ糖脂質は、脂肪酸とグリセリンに分解される。
【0084】
「アルカリ溶液」は、アルカリを極性溶媒で溶解した溶液である。本実施形態におけるアルカリ溶液は、例えば水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液等を用いることができる。また極性溶媒としては、例えば、水、若しくはメタノールやエタノール等の低級アルコールを用いることができる。本実施形態におけるアルカリ溶液のアルカリ濃度、及び加える容量は、溶液中のアルカリの量が前記シモン芋エキス中に含まれるグリセロ糖脂質を完全に加水分解できるケン化価を有していればよい。
【0085】
シモン芋エキスが液状の場合にはアルカリ溶液を加える前に、当該シモン芋エキスがペレット状の残滓になるまでシモン芋エキス中の極性溶媒を除去する処理を行ってもよい。除去する方法は、例えば実施形態4の濃縮工程で用いた乾燥方法と同様の方法であってもよい。
【0086】
加水分解反応を促進するために、当該シモン芋エキスとアルカリ溶液の混合溶液を加熱してもよい。加熱温度は30℃から50℃の範囲が好ましい。加水分解反応の時間は温度に依存する。すなわち、低温ほど長くする。例えば、37℃であれば2時間、50℃であれば1時間のように適宜調整すればよい。
【0087】
「クロロホルム溶液取得工程」(S0506)は、前記加水分解工程後の混合溶液にクロロホルムと水を加えて混合した混合液を、上層の水層と下層のクロロホルム層の2層に分離後、下層のクロロホルム層を回収する工程である。この工程により水層に移行したシモン芋由来のシモン芋エキス中に含まれる水溶性物質は除去される。ここで、脂肪酸とグリセリンは水溶性であることから、前記加水分解工程で加水分解されたグリセロ糖脂質は、当該工程で水層に移行し、除去されることになる。
【0088】
本工程で、加水分解工程後の混合溶液にクロロホルムと水を加える際の容量比は、例えば、前記加水分解工程後の混合溶液の容量:クロロホルムの容量:水の容量は、容量比で4:8:3が好ましいが、これに限られない。混合の方法は、加水分解工程後の混合溶液とクロロホルムと水が十分に撹拌できれば手段は問わない。例えば、撹拌棒やスタラーバーによる撹拌装置を用いてもよいし、溶液を入れた容器に反転、回転、振動等を与える撹拌装置を用いてもよいし、手を用いて撹拌や反転等を与えてもよい
【0089】
水層とクロロホルム層に分離するには、前記工程後に容器を静置するか、遠心機を用いて軽く遠心を行えばよい。分離時の温度は10℃から38℃の範囲であればよい。また、2層に分離した後、クロロホルム層を回収する方法は問わない。例えば、水面から管を通して下層のみを回収してもよいし、容器下部に設けたドレンコックを開いて下層のみを回収してもよい。
【0090】
「スフィンゴ糖脂質取得工程」(S0507)は、前記クロロホルム溶液取得工程で得られたクロロホルム溶液からクロロホルムを除去することでシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を含む粗精製物を得る工程である。
【0091】
クロロホルムを除去する方法は、クロロホルムのみを除去できる方法であれば特には問わない。例えばクロロホルムの蒸発による除去であってもよい。この時、送風や撹拌によってクロロホルムの蒸発を促進するようにしてもよい。除去後に得られる残滓をシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を含む粗精製物とする。当該粗精製物の状態は問わない。例えば、粘性のあるスラッジ状であってもよいし、粉末状であってもよいし、塊になっていてもよい。また、残滓をエタノール等の溶媒に再溶解してもよい。
【0092】
本実施形態の方法で得られる粗精製物は、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を高濃度で含んでいる。本実施形態の方法で得られるスフィンゴ糖脂質は、本実施形態で得られた試料をTLC上で展開した後、アンスロン硫酸で処理して糖脂質の検出することでアシアロガングリオシドとして確認できる。動物のガングリオシドの検出試薬としては、通常レゾルシノールが使用されるが、レゾルシノールはガングリオシドが有するシアル酸を発色させる試薬である。前述のように植物ではスフィンゴ糖脂質のほとんどがシアル酸残基を欠如したアシアロガングリオシドとして存在するため、レゾルシノールではシモン芋のスフィンゴ糖脂質を検出できない。そこで、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質はアシアロガングリオシドとみなして、アンスロン硫酸で検出する。当該実験の結果は実施例2、及び3に詳述するため、ここではその説明を省略する。
【0093】
<実施形態5:方法> 図5は実施形態5の方法の一例を示したものである。図5で示す本実施形態の方法は、実施形態3の方法を基本としている。すなわち、まず断片化工程(S0501)を行い、次に乾燥工程(S0502)を行い、続いて浸漬工程(S0503)を行い、そして濃縮工程と(S0504)を行いシモン芋由来のシモン芋エキスを得る。ここまでは実施形態3と同様である。本実施形態では、さらに以下の工程を有する。まず、前記シモン芋由来のシモン芋エキスにアルカリ溶液を加えてグリセロ糖脂質を加水分解する(加水分解工程:S0505)。次に、クロロホルムと水を加えて混合した後、クロロホルム溶液層を取り出す(クロロホルム溶液取得工程:S0506)。最後に、クロロホルムを除去してシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を得る(スフィンゴ糖脂質取得工程:S0507)。以上の製造工程によって、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を得る。
【0094】
<実施形態5:効果> 本実施形態の方法によれば、シモン芋に含まれるスフィンゴ糖脂質を粗精製できる。また、本実施形態で得られる粗精製物は、シモン芋に含まれるスフィンゴ糖脂質を高濃度に含有することから医薬品や飲食品の原料として産業上様々な利用が可能である。
【0095】
<<実施形態6>>
【0096】
<実施形態6:概要> 実施形態6について説明する。本実施形態は、シモン芋由来の糖脂質、若しくはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を動物に投与して、神経細胞を活性化する神経細胞活性化方法の提供と、シモン芋由来の糖脂質、若しくはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤の提供を特徴とする。
【0097】
<実施形態6:構成> 実施形態6の構成要件について以下で説明する。
【0098】
「動物」とは、神経系を有する生物を意味するが、好ましくは脊椎動物、さらに好ましくは哺乳動物を意味する。したがって、ヒトも当該動物に含まれる。
【0099】
「投与」とは、シモン芋由来の糖脂質、若しくはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を前記動物の体内に導入することを言う。
【0100】
神経細胞活性化方法における「神経細胞」とは、生体内の中枢神経細胞や末梢神経細胞を意味する。これに対して神経細胞活性化剤における「神経細胞」とは、生体内の中枢神経細胞や末梢神経細胞に留まらず、中枢神経や末梢神経を構成する細胞の性質を有する細胞を含む。例えば、NGF等の神経成長因子の作用によって神経細胞に分化する能力を有する細胞であってもよいし、生体より分離された後に培養される神経幹細胞や神経芽細胞等の株化された培養細胞であってもよい。
【0101】
「活性化」とは、機能を向上する作用、又は機能を維持する作用、又は細胞増殖を促進する作用を意味する。
【0102】
「神経細胞活性化」とは、前記神経細胞を活性化することを意味する。例えば、神経突起の伸長促進、又はシナプス形成の促進、又は有糸分裂の促進、又は神経変性の抑制、等が該当する。
【0103】
「神経細胞活性化剤」とは、前記神経細胞活性化の効果を有する薬剤、飲食品等である。当該活性化剤の状態は問わない。溶媒に溶解した液体状態であってもよいし、ゲル状体であってもよいし、ペースト状態であってもよいし、粉末状態であってもよいし、錠剤又はカプセルであってもよいし、原料として混入された状態であってもよい。
【0104】
本実施形態において「含む」とは、シモン芋由来の糖脂質、又はシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質が前記神経細胞活性化に寄与し得る程度で含有されていることを言う。
【0105】
本実施形態のシモン芋由来の糖脂質は、前記実施形態1から4のいずれか一の方法で得られるシモン芋エキスに含有する糖脂質を用いてもよい。また、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質は、前記実施形態5の方法で得られるシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を用いてもよい。
【0106】
シモン芋由来の糖脂質、若しくはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質は、神経細胞活性化を有する。この事実は株化された培養細胞に、当該糖脂質や当該スフィンゴ糖脂質を添加し、その後の神経突起の伸長を観察する実験によって確認できる。シモン芋由来の糖脂質を用いた当該実験の詳細な方法、及びその結果については実施例5及び6で、またシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を用いた当該実験の詳細な方法、及びその結果については実施例7で詳述する。
【0107】
<実施形態6:方法> 本実施形態においてシモン芋由来の糖脂質、又はシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を動物に投与して、神経細胞を活性化する神経細胞活性化方法について以下で説明する。
【0108】
神経細胞活性化は、当該糖脂質、又はスフィンゴ糖脂質の投与によって達成される。投与の方法は、神経細胞活性化の効果が得られれば特に問わない。例えば、哺乳動物であれば経口投与、経直腸投与、脳室内投与、髄腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、経皮吸収、皮下投与、経鼻・吸入、舌下投与のいずれを用いてもよい。簡便、かつ投与する量を調整しやすいという点では経口投与が好ましい。
【0109】
また、本実施形態のシモン芋由来の糖脂質、又はシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を投与する量は、投与する動物個体の大きさ、投与する方法、及びそれによって得られる神経細胞活性化の効果に依存する。したがって、投与する方法に応じて神経細胞活性化の効果が得られる範囲で増減すればよい。例えば、29週令のマウスで経口投与する場合、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質であれば1日あたり5〜10mgを餌に混ぜる等して与えれば、神経細胞活性化の効果が期待できる(参考:非特許文献1、非特許文献2)。
【0110】
<実施形態6:効果> 本実施形態によれば、シモン芋由来の糖脂質、若しくはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を有効成分として、当該糖脂質や当該スフィンゴ糖脂質が有する神経細胞活性化を利用した脳や神経の機能向上、機能維持を目的とした生体に安全な植物性の薬剤や健康食品等を提供できる。また、当該神経細胞活性化剤を動物に投与することで、神経細胞の増殖促進や神経突起伸長の促進の作用によって老若を問わず記憶力の向上等の効果が期待できる。
【0111】
<<実施形態7>>
【0112】
<実施形態7:概要> 実施形態7について説明する。本実施形態は、実施形態1から4によって得られるシモン芋エキスを用いた健康食品の提供である。
【0113】
<実施形態7:構成> 本実施形態の構成について以下で説明する。
【0114】
「健康食品」は、通常健康の保持増進に資する食品として販売・利用されるもの全般を言う。例えば、栄養補助食品や、栄養強化食品や、機能性食品や、特定保健用食品等が該当する。しかし、本発明における「健康食品」は前記の意味に留まらず、実施形態1から4の方法で得られるシモン芋エキスを混入する食品全般を意味する。
【0115】
健康食品としてシモン芋エキスを使用する場合には、当該シモン芋エキスの状態は経口できれば特に問わない。例えば、未加工状態であってもよいし、未加工状態のままカプセルに充填されたものであってもよいし、圧縮成型により錠剤等に加工されたものでもあってもよい。あるいは、賦形剤を添加して粉状に加工された後に錠剤状に成型されたものであってもよいし、当該粉状に加工された後に植物油等と混合してカプセルに充填されたものであってもよい。賦形剤はデキストリン、又はデンプン、又は乳糖等が該当するが、同様の効果が得られるものであれば、これらに限定されない。また、賦形剤の含有率は40%〜90%の範囲が好ましい。さらに、他の健康食品や甘味料等と混合された状態であってもよいし、加工食品の素材、又は添加物として原料に加えてもよいし、液体であれば飲用前に加えて混合してもよいし、香辛料のように食用前に振り掛けた状態でもよい。
【0116】
<実施形態7:効果> 本実施形態によれば、シモン芋由来のシモン芋エキスを健康食品として使用することで当該シモン芋由来のシモン芋エキスに含まれる糖脂質を安全かつ容易に日々効率よく摂取することができる。
【実施例1】
【0117】
以下の実施例1から7をもって本発明をより具体的に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
<シモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス製造方法>
前記実施形態3によるシモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス製造方法に関する実施例を以下で説明する。
【0118】
(断片化工程)シモン芋の塊根100gを水で洗浄し、表面に付着した泥やゴミ等の異物を除去した。次に、表皮のついた状態で塊根を切裁機に入れ、約1cm平方の小片状に断片化した。
【0119】
(乾燥工程)前記断片化工程で得られたシモン芋の塊根の小片を凍結乾燥装置(EYELA社)に入れ、−50℃で12時間の凍結乾燥処理を行った。
【0120】
(浸漬工程)得られたシモン芋の塊根の乾燥小片50gを測り取り、恒温槽内で60℃にプレヒートしたエタノール(99.5%含有)150mlに浸した後、撹拌をしながら60℃で3時間抽出を行った。なお、実施例3でのコントロールとしてエタノールの代わりにプレヒートした水を用いて、他は同一条件で抽出を行った。
【0121】
(濃縮工程)前記浸漬工程後、シモン芋の塊根の乾燥小片と極性溶媒の混合物を吸引ビンに繋いだ漏斗内に移し、アスピレーターにより吸引した。吸引ビン内の液体を浸漬液として回収し、漏斗内の残渣は廃棄した。当該浸漬液をロータリーエバポレーター(EYELA社)を用いて、40℃で30分間濃縮した。これによって得られるシモン芋エキスは約50mlであり、これを「シモン芋エキス(サンプル)」として以降の実験に使用した。また、コントロールは「水抽出エキス(サンプル)」として実施例3の実験に使用した。
【実施例2】
【0122】
<シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法>
前記実施形態5によるシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法に関する実施例を以下で説明する。
【0123】
(加水分解工程)まず、実施例1で得られたシモン芋エキス50mlをさらに前記ロータリーエバポレーターを用いて、40℃で60分間処理し、シモン芋エキス中のエタノールと水分を完全に除去した。次に、残ったペレット状の濃縮物に0.4N水酸化カリウム/メタノール溶液を40ml加えて再溶解した後、37℃で2時間インキュベートした。
【0124】
(クロロホルム溶液取得工程)前記加水分解工程後に当該再溶解液:クロロホルム:水をそれぞれ4:8:3(容量比)で十分に混合した。続いて、軽く遠心を行った後、下層のクロロホルム層を回収した。
【0125】
(スフィンゴ糖脂質取得工程)前記クロロホルム溶液取得工程で回収したクロロホルム層の溶液からクロロホルムを撹拌しながら風乾燥で蒸発させて完全に除去した。蒸発後の残滓を「シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質」とした。なお、以降の実験に使用するための液状サンプルとして調整するため、当該シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質にクロロホルム:メタノール=2:1(容量比)の混合液5mlに再溶解したものを「シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプル」とした。
【実施例3】
【0126】
<シモン芋由来の糖脂質、及びスフィンゴ糖脂質の分析>
実施例1で得られるシモン芋エキス中にシモン芋由来の糖脂質が含まれること、及び実施例2で得られた産物にシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質が高濃度で含まれることを確認するためにTLCによって分析した。
【0127】
(糖脂質及びスフィンゴ糖脂質の分析)実施例1で得られた「シモン芋エキスサンプル」及び「水抽出エキスサンプル」と、実施例2で得られた「シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプル」とをそれぞれ5μlずつTLCに添付した。TLCの下端が浸る程度の展開液(アセトニトリル:イソプロパノール:50mM塩化カリウム溶液=1:11.7:2.3)が入った容器内にTLCを入れて密封し、展開を行った。溶媒がTLCの上端付近に達した時に展開液からTLCを取り出して展開を止めた。展開後のTLCを十分に乾燥させた後、アンスロン硫酸を当該TLCに噴霧した。TLC上で展開した糖脂質が呈色するまで120℃のホットプレートにて数分間加温した。最後にTLCをデンシトメーター(Bio−Rad社)にて分析した。
【0128】
(結果)図6にTLCの展開結果を示す。レーンAは水抽出サンプルを、レーンBはシモン芋エキスサンプルを、そしてレーンCはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプルをそれぞれ示している。矢印で示すバンド1は、ステロール配糖体である。ステロール配糖体は、ヘキソースを有するため呈色するがスフィンゴ糖脂質ではない。バンド2は、グリコシルセラミドである。グリコシルセラミドは、糖鎖部が単糖のみで構成されたスフィンゴ糖脂質の一つである。当該グリコシルセラミドは、ガングリオシド群、又はアシアロガングリオシド群の基本骨格となる分子であるが、本発明ではガングリオシド群、又はアシアロガングリオシド群のみを対象としていることから対象外物質として扱う。したがって、これらステロール配糖体やグリコシルセラミドは、実施例1、又は2の方法で得られる最終産物において不純物として混在し得る物質である。当該不純物の完全除去は困難であり、また後述の実施例7で示すように、これらの不純物はたとえ混入していてもシモン芋由来の糖脂質、並びにスフィンゴ糖脂質が有する神経細胞活性作用に何ら影響を及ぼすものではない。したがって、当該不純物の混入は無視できるものとして扱う。
【0129】
レーンAでは、バンドはほとんど検出できなかった。これは、シモン芋の糖脂質の水抽出は極めて効率が悪いことを示している。これに対してエタノール抽出を行ったレーンBでは、多数のバンドが検出された。バンド1又は2以外のバンドが、グリセロ糖脂質群とスフィンゴ糖脂質群に相当する。本結果により実施例1の方法によって得られたシモン芋エキスサンプル中には、水抽出サンプルと比較してグリセロ糖脂質群とスフィンゴ糖脂質群からなる糖脂質を多量に含有するが明らかとなった。
【0130】
レーンCのバンド3a、3b、3c、3dはスフィンゴ糖脂質群である。実施例2の方法によってシモン芋エキスサンプル中のグリセロ糖脂質群が除去されたことから、レーンBで見られたグリセロ糖脂質に相当するバンド群4が消失している。また、本発明のスフィンゴ糖脂質製造方法によって3a又は3cのようにレーンBでは検出できなかったスフィンゴ糖脂質のバンドが検出された。さらに、3bのようにレーンBで検出されたスフィンゴ糖脂質も高濃度に濃縮されていた。この結果により、実施例2の方法によって得られたシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプル中には、シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質が高濃度で存在することが明らかとなった。
【実施例4】
【0131】
<シモン芋と他の食用植物におけるスフィンゴ糖脂質含有量の比較>
シモン芋が一般的に知られる食用植物よりもスフィンゴ糖脂質を多量に含有することを確認するために、シモン芋と他の食用植物におけるスフィンゴ糖脂質の含有量を比較検証した。
【0132】
(各食用植物エキスの製造方法)他の食用植物としては、シモン芋に近似の紅芋とサツマ芋、及び世界各地で主食として利用されているジャガイモと米を選択した。シモン芋、紅芋、サツマ芋、ジャガイモ、米をそれぞれ前記実施例1と同様の方法で処理して各食用植物エキスを調製した。ただし、米のみについては塊根ではなく精米を用いたため断片化工程を省いた。詳細な方法は実施例1と同様であることから省略する。
【0133】
(スフィンゴ糖脂質分析用サンプルの調製)前記製造方法で得られた各食用植物エキスを実施例2と同様の方法で処理して、それぞれのスフィンゴ糖脂質分析用サンプルを得た。詳細な方法は実施例2と同様であることから省略する。
【0134】
(スフィンゴ糖脂質の比較)前記スフィンゴ糖脂質分析用サンプルの調製で得られた各食用植物由来のスフィンゴ糖脂質分析用サンプルをそれぞれ5μlずつTLCに添付した。ここで、植物性アシアロガングリオシドは一般に市販されておらず、入手が困難であるため位置マーカーとして利用できるものがなかった。そこで、本実施例では入手の容易な動物性アシアロガングリオシドの一つであるGM1を植物性アシアロガングリオシドの位置マーカーとして代用した。当該マーカーサンプルは、アシアロガングリオシドGM1(SIGMA社)1mgをクロロホルム:メタノール=2:1(容量比)の混合液5mlに溶解した後、溶解液5μlを他のサンプルと同様にTLCに添付したものである。TLCの下端が浸る程度の展開液(アセトニトリル:イソプロパノール:50mM塩化カリウム溶液=1:11.7:2.3)が入った容器内にTLCを入れて密封し、展開を行った。溶媒がTLCの上端付近に達した時に展開液からTLCを取り出して展開を止めた。展開後のTLCを十分に乾燥させた後、アンスロン硫酸を当該TLCに噴霧した。TLC上で展開した糖脂質が呈色するまで120℃のホットプレートにて数分間加温する。最後にTLCをデンシトメーター(Bio−Rad)にて分析した。
【0135】
(結果)図7にその結果を示す。レーンAは位置マーカーである動物性アシアロガングリオシドGM1を、レーンBはシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプルを、レーンCは紅芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプルを、レーンDはサツマ芋由来のスフィンゴ糖脂質サンプルを、レーンEはジャガイモ由来のスフィンゴ糖脂質サンプルを、レーンFは米由来のスフィンゴ糖脂質サンプルを、それぞれ示している。レーンA以外で見られ、矢印で示すバンド1は前記ステロール配糖体である。レーンB、C、Dにおいて見られるバンド2は前記グリコシルセラミドである。またレーンB、C、Dでラダー状に見られるバンド3がスフィンゴ糖脂質群である。レーンAにて4で示すバンドが動物性アシアロガングリオシドGM1である。
【0136】
この図で示すように、スフィンゴ糖脂質はレーンE(ジャガイモ由来)とレーンF(米由来)では検出できず、またレーンD(サツマ芋由来)でもほとんど検出できなかった。スフィンゴ糖脂質が比較的多く検出できたのは、レーンB(シモン芋由来)とレーンC(紅芋由来)のみであった。注目すべき点はレーンBのみでバンド5が検出されたことである。このバンド5のようなレーンAの動物性アシアロガングリオシドGM1に比較的近い展開速度を有するスフィンゴ糖脂質は、食用植物ではこれまでに知られていない。詳細に関しては現在解析中であるが、本発明者らは動物性アシアロガングリオシドGM1の植物性近似物質と推測している。
【0137】
以上の結果から、シモン芋は主食として用いられる他の一般的な食用植物と比較して、非常に多くのスフィンゴ糖脂質を含有し、さらに近似の紅芋やサツマ芋にも見られない特有のスフィンゴ糖脂質(以下、植物性GM1近似物質とする。)を有していることが判明した。
【0138】
なお、植物細胞においてガングリオシドは極めて稀であることから、当該実施例においてアンスロン硫酸によって呈色されたスフィンゴ糖脂質は、そのほとんどが植物性アシアロガングリオシドと考えられる。
【実施例5】
【0139】
<シモン芋由来の糖脂質によるヒト神経芽細胞の活性化>
シモン芋由来の糖脂質がヒト神経芽細胞を活性化できるかについての検証を行った。実験方法と結果を以下で説明する。なお、本実施例以降で培養細胞に用いる器具や試薬、水等は特に断りのない限りは、原則として全て滅菌処理済みのものを使用し、操作はクリーンベンチ、又は無菌室にて行うことを前提とする。
【0140】
(添加サンプルの調製)1.シモン芋由来の糖脂質:前記実施例1で得られたシモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキス5mlを凍結乾燥機で−50℃で12時間処理して凍結乾燥した。次に、乾燥物を乳鉢にて粉末になるまですり潰した。続いて、エタノール(99.5%)で当該乾燥粉末を0.5μg/μlの溶液になるように調整した。最後に、当該溶液を0.22μmフィルターで濾過滅菌して、「シモン芋糖脂質(サンプル)」とした。2.ポジティブコントロール:PBS(−)緩衝液で神経成長因子NGF(SIGMA)を100μg/mlの溶液になるように調製した。当該溶液を0.22μmフィルターで濾過滅菌して、「NGF(サンプル)」とした。
【0141】
(細胞培養方法とサンプルの添加)まず、株化された培養細胞であるヒト神経芽細胞(SK−N−SH細胞)2.0×10 cellsを4mlのDMEM(ナカライテスク社)/10%FCS(GIBCO社)の培地を入れた6cmディッシュA、B、Cの3枚に播いた。続いて、当該ディッシュ3枚を37℃、5%CO2濃度下で24時間培養した。24時間後、ディッシュAはネガティブコントロールとして無添加にし、またディッシュBには200ng/mlのNGFサンプル添加した。ディッシュCは50μl(=25μg)のシモン芋サンプルを添加した。その後、各ディッシュは、再び37℃、5%CO2濃度下で6日間培養した。各ディッシュの培地の交換は、この間特には行っていない。
【0142】
(培養細胞の観察)前記サンプルを添加後、24時間毎に位相差顕微鏡を用いてヒト神経芽細胞の神経突起成長の状態を観察した。
【0143】
(結果)図8に各ディッシュ上のヒト神経芽細胞の状態を示す。0801から0803はディッシュA上の、0804と0805はディッシュB上の、そして0806から088はディッシュC上のヒト神経芽細胞の状態を示す。また、0801と0806はサンプル添加後1日目の細胞を示し、0802、0804、0807は2日目の細胞を示す。さらに0803、0805、0808は5日目の細胞を示す。
【0144】
無添加のディッシュAでは5日後(0803)も神経突起の伸長は見られない。一方、シモン芋サンプルを添加したディッシュCでは1日後(0806)に矢印で示す神経突起の伸長が多数の細胞で確認できた。ディッシュCの細胞の神経突起は、その後培養によってさらに伸長し、5日目にはNGFを添加したディッシュBの5日目(0805)と同程度に伸長が促進された(0808)。以上の結果から、シモン芋由来の糖脂質は、動物性ガングリオシドと同様に神経細胞の神経突起の伸長を促進できることが明らかとなった。
【実施例6】
【0145】
<シモン芋由来の糖脂質によるPC12の神経突起様突起伸長活性評価>
シモン芋由来の糖脂質がラット副腎褐色細胞腫細胞PC12を神経細胞に分化誘導し、神経突起様突起の伸長を活性するか、また細胞増殖活性を有するかの評価を行った。詳細な実験方法と結果を以下で説明する。
【0146】
(添加サンプルの調製)シモン芋由来の糖脂質としての「シモン芋エキスサンプル」、及びポジティブコントロールとしての「NGFサンプル」の調製は、共に実施例5と同様であることから説明を省略する。
【0147】
(細胞培養方法とサンプルの添加)シモン芋由来の糖脂質が有する神経突起様突起伸長活性をマイクロプレート上で評価できる系を非特許文献3を参考に検討した。まずDMEM(GIBCO社)/10%FBS(GIBCO社)/5%HS(Sigma社)培地中で培養したPC12細胞を、フィブロネクチンコートした96ウェルのマイクロプレート上に2.0×10 cells/mlずつ分注後、前記NGFサンプルを終濃度10ng/μlで、また前記0.5μg/μlシモン芋エキスサンプル(原液)を最終濃度250ng/μl(原液2倍希釈)、125ng/μl(原液4倍希釈)、そして62.5ng/μl(原液8倍希釈)となるようにそれぞれ別個のウェルに添加した。その後、37℃、5%CO2濃度下で3−4日間培養した。
【0148】
(培養細胞の観察と神経突起様突起伸長活性測定)神経突起様突起の状態については位相差顕微鏡で4日間観察した。また、神経突起様突起伸長の活性測定は、神経突起様突起の伸長指標となるアセチルコリンエステラーゼの活性として以下の手順で測定した。まず、培養最終日に培地を除去し、1ウェルあたり180μlの50mM Hepes緩衝液(pH7.5)/0.12M NaCl/0.2%TritonX−100/1mM EDTAと、基質として20μlの5.6mM よう化アセチルチオコリン溶液を加えて室温で2時間処理した。次に、50mM酢酸緩衝液(pH5.0)/0.2% TritonX−100/1mM EDTAを160μlと0.4mM CPMを20μl添加し、蛍光マイクロプレートリーダーを用いて励起光360nmと既定光(測定光)460nmにおける蛍光量をそれぞれ測定した。
【0149】
(細胞増殖活性の測定)シモン芋エキスが有する細胞増殖活性をアラマーブルー法により調べた。アラマーブルー法は細胞の生死を判別する方法である。具体的には培養細胞にアラマーブルー溶液を添加し、37℃、5%CO2濃度下で数時間培養すると、生細胞ではミトコンドリア中のコハク酸デヒドロゲナーゼの活性で色が変化するのに対して、死細胞では当該酵素の失活からそのような変化は生じない。この発色のよる吸光度を測定することで細胞の生存率が算出できる。測定に使用した各細胞の条件は、神経突起様突起伸長活性測定で用いた細胞と同様である。
【0150】
(結果)図9に培養4日目におけるPC12細胞の神経突起様突起の伸長を、また図10に培養4日目におけるPC12細胞のアセチルコリンエステラーゼ活性をそれぞれ図示する。図10の縦軸はアセチルコリンエステラーゼ活性としての460nmにおける蛍光量を示す。横軸は各サンプルであり、添加物はいずれも培地と細胞を含むウェルに加えた。個々での細胞とはPC12細胞であり、希釈液とはシモン芋エキスサンプルを希釈したものである。また、図中の星印が付記された結果はコントロールである水添加(レーン3)と比較したときの有意差がp<0.01であるものを示す。
【0151】
ポジティブコントロールであるNGFサンプルを加えたウェル内のPC12細胞は、神経突起様突起の伸長が確認された(図9のA)。また、NGFサンプルを加えたウェル内のPC12細胞は、アセチルコリンエステラーゼ活性もネガティブコントロールである水のみを添加した細胞(図10 レーン3)と比べて増加していた(図10 レーン4)。一方、シモン芋エキスサンプルを加えたウェル内のPC12細胞についても、NGFサンプルの場合と同様の神経突起様突起の伸長が確認された(図9のB:抽出原液添加)。また、シモン芋エキスサンプルを加えたウェル内のPC12細胞は、アセチルコリンエステラーゼ活性も水のみを添加した細胞(図10 レーン3)と比べて、シモン芋エキスサンプルの2倍希釈(図10 レーン5)、4倍希釈(図10 レーン5)、そして8倍希釈(図10 レーン7)のいずれもが有意な(p<0.01)増加を示した。さらに、それらの増加の程度は、添加したシモン芋エキスサンプルの量依存的であった。
【0152】
上記結果から、水添加のアセチルコリンエステラーゼ活性を1とする時、NGFサンプルは2.5、シモン芋エキスサンプル2倍希釈は1.5、またシモン芋エキスサンプル4倍希釈は1.2であった。これからシモン芋エキスサンプルの2倍希釈溶液(終濃度250ng/μl)は、NGF終濃度6.1ng/mlと同程度の活性を有すると推察できる。
【0153】
図11に培養4日目における細胞増殖活性の結果を示す。シモン芋エキスサンプルの2倍希釈(図11 レーン5)、4倍希釈(図11 レーン5)、そして8倍希釈(図11 レーン7)は、水のみの添加(図11 レーン3)と比較して、いずれの場合も有意な(p<0.01)細胞増殖活性の増加を示した。また、その増加は量依存的であった。以上の結果からシモン芋由来の糖脂質は、PC12に対して細胞増殖促進活性を有することが明らかとなった。
【実施例7】
【0154】
<シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質によるヒト神経芽細胞の活性化の確認>
実施例5、又は6においてシモン芋由来の糖脂質で見られた神経突起若しくは神経突起様突起の伸長活性が、糖脂質の中のスフィンゴ糖脂質によるものかを確認した。また、実施例4で検出されたシモン芋特有のスフィンゴ糖脂質(植物性GM1近似物質)が特に神経突起の伸長活性を有するかを確認した。
【0155】
(添加サンプルの調製)
【0156】
1.シモン芋由来の糖脂質:「シモン芋糖脂質(サンプル)」の調製は前記実施例5と同様であることから説明を省略する。
【0157】
2.水抽出したシモン芋由来の糖脂質:実施例1で調製した水抽出エキスを実施例5のシモン芋エキスと同様の方法で処理したものを「水抽出シモン芋糖脂質(サンプル)」とした。
【0158】
3.スフィンゴ糖脂質分画と除スフィンゴ糖脂質分画:前記シモン芋糖脂質サンプルをシリカゲルカラムクロマトにてスフィンゴ糖脂質と除スフィンゴ糖脂質に分画した。分画の条件は以下の通り。まず、カラムにシリカゲルを10g充填し、15mlヘキサンで平衡化した。次に、前記シモン芋糖脂質サンプルをカラムに加え、10mlヘキサン/5mlアセトン混合液で除スフィンゴ糖脂質分画を溶出した。続いて、ロータリーエバポレーター(EYELA社)を用いて溶出液からヘキサン/アセトンを蒸発除去した。得られた残滓にエタノールを加えて溶解し、最終濃度0.5μg/μlになるように調整した。当該溶液を0.22μmフィルターで濾過滅菌して「除スフィンゴ糖脂質分画(サンプル)」とした。次に、除スフィンゴ糖脂質分画を溶出後のカラムを5mlヘキサン/10mlアセトン混合液で洗浄した後、アセトン15mlでさらに洗浄した。続いて、15mlエタノールでスフィンゴ糖脂質分画を溶出した。その後、ロータリーエバポレーター(EYELA社)を用いて溶出液からエタノールを蒸発除去した。最後に得られた残滓にエタノールを加えて再溶解し、最終濃度0.5μg/μlになるように調整した。当該溶液を0.22μmフィルターで濾過滅菌して「スフィンゴ糖脂質分画(サンプル)」とした。
【0159】
4.シモン芋特有のスフィンゴ糖脂質(植物性GM1近似物質):まず、前記スフィンゴ糖脂質分画を約2〜3μgTLCプレートに添加した。展開条件は実施例4と同様なので説明は省略する。次に、展開後のTLCプレートから目的とする植物性GM1近似物質に相当するバンドのシリカゲルを掻き取った。続いて、当該シリカゲルにエタノールを加え、超音波を1分間照射した後、60℃で1時間加温した。この操作によってシリカゲルに吸着した植物性GM1近似物質を溶出させた。それから軽く遠心してシリカゲルを沈殿させて上清を採取した後、当該上清を0.45μmフィルターで濾過してシリカゲルを完全に除去した。その後、ロータリーエバポレーター(EYELA社)を用いて濾過液からエタノールを蒸発除去した。最後に得られた残滓にエタノールを加えて再溶解し、最終濃度0.5μg/μlになるように調整した。当該溶液を0.22μmフィルターで濾過滅菌して「植物性GM1近似物質(サンプル)」とした。なお、同時に他のスフィンゴ糖脂質のバンドも同様の方法で精製した。
【0160】
5.コントロール:ポジティブコントロールである「NGF(サンプル)」の調製は前記実施例5と同様であることから説明を省略する。また、ネガティブコントロールとして無添加のものを調製した。なお、コントロール以外のサンプルは全て実施例4と同様の方法によって、TLCにて展開し、その存在の確認を行った。
【0161】
(細胞培養方法とサンプルの添加)ヒト神経芽細胞(SK−N−SH細胞)の培養条件、各サンプルの添加条件は全て実施例5と同条件であることから、その説明は省略する。
【0162】
(培養細胞の観察)前記各サンプルを添加後、24時間毎に顕微鏡を用いてヒト神経芽細胞の神経突起成長の状態を毎日観察した。
【0163】
(結果)図12に各サンプルを添加したときのSK−N−SH細胞と、添加した各サンプルのTLC結果を図示する。細胞は各サンプル添加後1日(24時間)後、及び2日(48時間)後のものを図示した。ただし、NGF添加(ポジティブコントロール)は2日後のみを図示した。また、各サンプル添加直後(0日)の細胞図は、無添加(ネガティブコントロール)の1日後と、いずれもほとんど変わらないため省略した。なお、無添加(1201、1202)、NGF添加(1203)、そしてエタノール抽出シモン芋エキス添加(1204、1205)は、全条件を実施例5と同一の条件で行ったことから、同一の結果を図示した。各添加サンプルのTLC展開は実施例3と同様の方法で行った。TLC展開のAの各バンドは、グリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群である。Bはスフィンゴ糖脂質をシリカゲルカラムクロマトにて精製したサンプルに混入しているグリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群の一部である。これらを完全に除去することは困難であり、また後述の理由によりこれらの物質には神経細胞活性化作用がないことが明らかであることから、無視できるものとした。Cの各バンドはスフィンゴ糖脂質群である。Dのバンドは植物性GM1近似物質を示す。
【0164】
まず、水抽出物シモン芋糖脂質を添加した細胞は、細胞形態も無添加と同じく神経突起伸長促進の活性はみられなかった。TLC展開図(1214)でも糖脂質が抽出されていないことが示されている。
【0165】
次に、エタノール抽出したシモン芋糖脂質を添加した細胞は、実施例5と同一の結果であり、1日後には多数の細胞で神経突起の伸長が観察された。
【0166】
続いて、除スフィンゴ糖脂質分画を添加した細胞は、水抽出シモン芋糖脂質や無添加と同じく神経突起伸長促進の活性の効果は1日目(1208)、2日目(1209)とも確認できなかった。展開図(1216)は、スフィンゴ糖脂質群が完全に除去されていることを示している。この結果から、シモン芋エキスに含まれるグリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群はSK−N−SH細胞の神経突起伸長を促進させる活性を有しないことが示された。
【0167】
また、スフィンゴ糖脂質分画を添加した細胞は、1日目(1210)、2日目(1211)とも、NGF添加した細胞(1203)と同様に神経突起伸長促進の活性が観察された。展開図(1217)は、当該分画におけるスフィンゴ糖脂質群、並びに除去しきれずに混入したグリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群の一部の存在を示している。ここで、1208、1209の結果からグリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群はSK−N−SH細胞の神経突起伸長を促進させる活性を有しないことから、当該分画における神経突起伸長促進の活性は当該分画におけるスフィンゴ糖脂質群によるものである。これは同時にエタノール抽出したシモン芋エキスにおいても実質的な神経突起伸長促進の活性はシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質によるものであると解することができる。
【0168】
さらに、スフィンゴ糖脂質群の各バンドをそれぞれ個別にSK−N−SH細胞に添加したが、植物性GM1近似物質Dを添加した細胞が、特に強くその作用があることが確認できた(1212、1213、また、他の各バンドのスフィンゴ糖脂質のデータは図示せず。)。展開図(1218)は、スフィンゴ糖脂質の中で植物性GM1近似物質のみが精製されていることを示している。これにより、シモン芋のスフィンゴ糖脂質の中でも、シモン芋に特有に見られた植物性GM1近似物質が強い神経突起伸長作用を有することが示された。
【0169】
以上の結果から、シモン芋由来の糖脂質の中でもスフィンゴ糖脂質が神経突起伸長作用に影響を与えていることが明らかとなった。また、その中でも植物性GM1近似物質に神経突起の伸長活性を有することが明らかとなった。
【図面の簡単な説明】
【0170】
【図1】実施形態1の方法を説明するための図。
【図2】実施形態2の方法を説明するための図。
【図3】実施形態3の方法を説明するための図。
【図4】実施形態4の方法を説明するための図。
【図5】実施形態5の方法を説明するための図。
【図6】実施例3のシモン芋由来の糖脂質、及びスフィンゴ糖脂質の分析結果。
【図7】実施例4のシモン芋と他の食用植物におけるスフィンゴ糖脂質含有量の比較結果。
【図8】実施例5のシモン芋由来の糖脂質による神経芽細胞の神経突起の伸長活性。
【図9】実施例6のシモン芋由来の糖脂質によるPC12の神経突起様突起の伸長活性。
【図10】実施例6のシモン芋由来の糖脂質によるPC12細胞のアセチルコリンエステラーゼ活性。
【図11】実施例6のシモン芋由来の糖脂質によるPC12細胞の細胞増殖活性。
【図12】実施例7の各サンプルの添加による神経芽細胞の神経突起の伸長活性と、各サンプルのTLC展開図。
【符号の説明】
【0171】
1201:無添加1日目のSK−N−SH細胞
1202:無添加2日目のSK−N−SH細胞
1203:NGF添加後2日目のSK−N−SH細胞
1204:水抽出シモン芋エキス添加後1日目のSK−N−SH細胞
1205:水抽出シモン芋エキス添加後2日目のSK−N−SH細胞
1206:エタノール抽出シモン芋エキス添加後1日目のSK−N−SH細胞
1207:エタノール抽出シモン芋エキス添加後2日目のSK−N−SH細胞
1208:除スフィンゴ糖脂質分画添加後1日目のSK−N−SH細胞
1209:除スフィンゴ糖脂質分画添加後2日目のSK−N−SH細胞
1210:スフィンゴ糖脂質分画添加後1日目のSK−N−SH細胞
1211:スフィンゴ糖脂質分画添加後2日目のSK−N−SH細胞
1212:精製した植物性GM1近似物質添加後1日目のSK−N−SH細胞
1213:精製した植物性GM1近似物質添加後2日目のSK−N−SH細胞
1214:水抽出シモン芋エキスのTLC展開図
1215:エタノール抽出シモン芋エキスのTLC展開図
1216:除スフィンゴ糖脂質分画のTLC展開図
1217:スフィンゴ糖脂質分画のTLC展開図
1218:精製した植物性GM1近似物質のTLC展開図
A:グリコシルセラミド、ステロール配糖体、及びグリセロ糖脂質群
B:除去しきれなかったAの各物質
C:スフィンゴ糖脂質群
D:植物性GM1近似物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シモン芋を極性溶媒中に浸たす浸漬工程と、
前記浸漬工程で得られる浸漬液を濃縮する濃縮工程と、
からなるシモン芋由来の糖脂質を含有するシモン芋エキスを製造するシモン芋エキス製造方法。
【請求項2】
前記浸漬工程にて浸漬する前に、シモン芋を乾燥させる乾燥工程をさらに有する請求項1に記載のシモン芋エキス製造方法。
【請求項3】
最初にシモン芋の塊根を断片化する断片化工程をさらに有する請求項1又は2に記載のシモン芋エキス製造方法。
【請求項4】
前記濃縮工程は、濃縮することにより得られる液状シモン芋エキスを乾燥させて固体状シモン芋エキスを得る工程である請求項1から3のいずれか一に記載のシモン芋エキス製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一に記載のシモン芋エキス製造方法により得られるシモン芋エキスにアルカリ溶液を加えてグリセロ糖脂質を加水分解する加水分解工程と、
前記加水分解工程で得られた加水分解溶液にクロロホルムと水を加えて混合した後、クロロホルム溶液を取得するクロロホルム溶液取得工程と、
前記クロロホルム溶液取得工程で取得されたクロロホルム溶液からクロロホルムを除去してシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を取得するスフィンゴ糖脂質取得工程と、
からなるシモン芋由来のスフィンゴ糖脂質製造方法。
【請求項6】
シモン由来の糖脂質を動物に投与して神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法。
【請求項7】
前記シモン芋由来の糖脂質は、請求項1から4のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスに含まれる糖脂質である神経細胞活性化方法。
【請求項8】
シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を動物に投与して神経細胞を活性化させる神経細胞活性化方法。
【請求項9】
前記シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質は請求項5に記載の方法で得られるスフィンゴ糖脂質である神経細胞活性化方法。
【請求項10】
シモン芋由来の糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤。
【請求項11】
前記シモン芋由来の糖脂質は、請求項1から4のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスに含まれる糖脂質である請求項10に記載の神経細胞活性化剤。
【請求項12】
シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質を有効成分として含む神経細胞を活性化する神経細胞活性化剤。
【請求項13】
前記シモン芋由来のスフィンゴ糖脂質は、請求項5に記載の方法で得られるスフィンゴ糖脂質である請求項12に記載の神経細胞活性化剤。
【請求項14】
請求項1から4のいずれか一に記載の方法で得られるシモン芋エキスを含む健康食品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−31338(P2007−31338A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−216813(P2005−216813)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(501060518)株式会社ディーエヌエーバンク (3)
【出願人】(595102178)沖縄県 (36)
【Fターム(参考)】