説明

シャッタユニット、シャッタ装置、及び圧電素子の周波数調整装置

【課題】イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットにおいて、隣り合うシャッタ羽根間の隙間からイオンビームが漏れるのを防止し、かつ、シャッタ同士が干渉せずに動作できる構成を提供する。
【解決手段】本発明のシャッタユニットは、並置された複数のシャッタアームからなり、シャッタアーム各々の長手方向をx軸、並置方向をy軸、x軸とy軸に垂直な方向をz軸として、シャッタアームの各々がx軸方向に摺動可能であり、x軸方向先端にシャッタ羽根を有し、シャッタ羽根の各々について、隣り合うシャッタ羽根同士が、z軸方向にオフセットした形状によってz軸方向の見通し線を遮断するエッジ部を有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャッタユニット、シャッタ装置、及び圧電素子の周波数調整装置に関し、特に、イオンガンからのイオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図6Aは従来のシャッタユニットを備えたシャッタ装置の平面図であり、図6Bは図6Aのシャッタ装置及びそれを含む周波数調整装置の側面図であり、図6Cは図6Aのシャッタユニットの正面図である。図6Aに示すように、シャッタ装置はシャッタユニット6を備え、シャッタユニット6は複数のシャッタ羽根60、60、60、・・・60(以下、任意のシャッタ羽根を「シャッタ羽根60」という)からなる。シャッタ装置はさらに、シャッタ羽根60を取付けて駆動するシャッタアーム61支持するシャッタプレート20、及びシャッタアーム61を駆動するシャッタ駆動部30を備える。なお、各図に示すように、シャッタアーム61の長手方向をx軸、短手方向をy軸、厚み方向をz軸とする。
【0003】
シャッタアーム61はy軸方向に並置され、シャッタアーム61の各々はシャッタ駆動部30によってx軸方向にそれぞれ摺動される。シャッタ駆動部30がシャッタアーム61を選択的にx軸方向に摺動させることにより、シャッタアーム61に取付けたシャッタ羽根60がシャッタプレート20の窓部21を遮蔽及び開放(シャッタ羽根60参照)する。
【0004】
また、図6Bに示すように、上記シャッタ装置、y軸方向に配列された圧電素子51を保持するホルダ50、及びy軸方向に配列されるイオンビームを照射するイオンガン40によって圧電素子の周波数調整装置が構成される。この周波数調整装置では、シャッタ駆動部30がシャッタアーム61を選択的に駆動し、シャッタ羽根60が窓部21を個別的に遮蔽及び開放することによって、イオンガン40からのイオンビームが選択的に圧電素子51に到達する。これにより、y軸方向に配列された複数の圧電素子51が選択的にイオンビームエッチングされる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−34919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のシャッタユニット6においては、シャッタ羽根60のy−z断面が長方形であるため、隣り合うシャッタ羽根60の間に隙間ができてしまう。そのため、シャッタ羽根60が遮蔽位置に配列されていても、イオンガン40からのイオンビームが隙間を介して漏れてしまい、完全な遮蔽状態が得られなかった。このようなシャッタユニット6を周波数調整装置に使用すると、イオンビームの漏れによって周波数調整の精度が悪くなるという問題があった。特に、イオンビームによるシャッタ羽根自体のエッチングが進むと隙間がさらに拡がり、上記の問題が顕在化する。
【0007】
また、この隙間をなくすためにシャッタ羽根60間の距離を狭くすると、シャッタ羽根60同士が干渉し、あるシャッタアームを駆動すると、隣接するシャッタアームも摩擦により連動してしまい、所望のシャッタ開閉動作が得られなくなるという問題もあった。
【0008】
そこで、本発明は、イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットにおいて、隣り合うシャッタ羽根間の隙間からイオンビームが漏れるのを防止し、かつ、隣り合うシャッタアーム及びシャッタ羽根同士が干渉せずに動作できる構成を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の側面は、イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットであって、並置された複数のシャッタアームからなり、シャッタアーム各々の長手方向をx軸、並置方向をy軸、x軸とy軸に垂直な方向をz軸として、シャッタアームの各々がx軸方向に摺動可能であり、x軸方向先端にシャッタ羽根を有し、シャッタ羽根の各々が、x−y面をなして対向するシャッタ表面及びシャッタ裏面、並びにシャッタ表面とシャッタ裏面の間にありx軸方向に延在する第1及び第2のエッジ部を有し、第1のエッジ部が、y軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部を有し、第2のエッジ部が、y軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部を有し、凸部と凹部が相互に対応する形状を有し、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において第1のエッジ部と第2のエッジ部がz軸方向の見通し線を遮断するように複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニットである。
【0010】
ここで、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において第1のエッジ部と第2のエッジ部がz軸方向にオーバーラップするように複数のシャッタ羽根が配置されるようにしてもよい。また、第1のエッジ部と第2のエッジ部が全方向の見通し線を遮断するようにしてもよい。
また、隣り合うシャッタ羽根同士が非接触状態を維持して摺動されるように、隣接部において凸部と凹部の間にギャップが形成された状態で複数のシャッタ羽根が配置されるようにした。
また、複数のシャッタ羽根のシャッタ表面及びシャッタ裏面が全体としてそれぞれ一平面をなすように、複数のシャッタ羽根が配置され、第1のエッジ部の凸部がシャッタ裏面側にあり、第2のエッジ部の凹部が前記シャッタ裏面側にあり、凸部のz軸方向の厚さが凹部のz軸方向の厚さよりも小さくなるようにしてもよい。
【0011】
本発明の第2の側面は、イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットであって、並置された複数のシャッタアームからなり、シャッタアーム各々の長手方向をx軸、並置方向をy軸、x軸とy軸に垂直な方向をz軸として、シャッタアームの各々がx軸方向に摺動可能であり、x軸方向先端にシャッタ羽根を有し、シャッタ羽根の各々について、隣り合うシャッタ羽根同士が、z軸方向にオフセットした形状によってz軸方向の見通し線を遮断するエッジ部を有する、シャッタユニットである。
【0012】
ここで、隣り合うシャッタ羽根同士はz軸方向にオーバーラップするエッジ部を有する。また、シャッタ羽根の形状によって全方向の見通し線が遮断される。
また、隣り合うシャッタ羽根同士が非接触状態を維持して摺動されるように、隣接部においてエッジ部間にギャップが形成された状態で複数のシャッタ羽根が配置されるようにした。
【0013】
本発明の第3の側面は、上記第1又は第2の側面のシャッタユニット、複数のシャッタアームを支持するシャッタプレート、及びシャッタアーム各々をシャッタプレート上で個別に摺動させるシャッタ駆動部を備えたシャッタ装置である。
【0014】
本発明の第4の側面は、配列された圧電素子を保持するホルダ、圧電素子に対してイオンビームを照射するイオンガン、イオンガンから圧電素子を遮蔽及び開放するように配置された上記第3の側面のシャッタ装置を備えた、圧電素子の周波数調整装置である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1A】本発明の第1の実施例によるシャッタユニットを備えたシャッタ装置の平面図である。
【図1B】図1Aのシャッタ装置及びそれを含む周波数調整装置の側面図である。
【図1C】図1Aのシャッタユニットのy−z正面図である。
【図1D】図1Cのシャッタ羽根のy−z正面図である。
【図1E】図1Aのシャッタユニットの変形配置例を示す図である。
【図2A】本発明の第1の実施例の変形例によるシャッタユニットを示す図である。
【図2B】本発明の第1の実施例の変形例によるシャッタユニットを示す図である。
【図2C】本発明の第1の実施例の変形例によるシャッタユニットを示す図である。
【図3A】本発明の第2の実施例によるシャッタユニットを示す図である。
【図3B】本発明の第2の実施例の変形例によるシャッタユニットを示す図である。
【図4A】本発明の第3の実施例によるシャッタユニットを示す図である。
【図4B】図4Aのシャッタ羽根のy−z正面図である。
【図5A】本発明の第1の実施例によるシャッタユニットの遮蔽角度を説明する図である。
【図5B】本発明の第2の実施例の変形例によるシャッタユニットの遮蔽角度を説明する図である。
【図5C】本発明の第3の実施例によるシャッタユニットの遮蔽角度を説明する図である。
【図6A】従来のシャッタユニットを備えたシャッタ装置の平面図である。
【図6B】図6Aのシャッタ装置及びそれを含む周波数調整装置の側面図である。
【図6C】図6Aのシャッタユニットのy−z正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1.
図1Aは本発明の第1の実施例によるシャッタユニットを備えたシャッタ装置のx−y平面図であり、図1Bは図1Aのシャッタ装置及びそれを含む周波数調整装置のx−z側面図である。本実施例のシャッタ装置はシャッタユニット1を備え、シャッタユニット1は並置されたシャッタ羽根10、10、10、・・・10(以下、任意のシャッタ羽根を「シャッタ羽根10」という)からなる。シャッタ装置はさらに、シャッタ羽根10を取付けて駆動するシャッタアーム11を支持するシャッタプレート20、及びシャッタアーム11を駆動するシャッタ駆動部30を備える。以降の説明において、各図に示すように、シャッタアーム11の長手方向をx軸、並置方向(短手方向)をy軸、x軸とy軸に垂直な方向(厚み方向)をz軸とする。なお、シャッタプレート20及びシャッタ駆動部30は図6A及び6Bに示したものと同様の構成であればよい。
【0017】
シャッタアーム11はy軸方向に並置され、各々がシャッタ羽根10を備える。シャッタアーム11の各々はアーム軸部に係合部12を有し、係合部12はシャッタ駆動部30のカム31と係合する。シャッタ駆動部30の駆動源(例えば、ソレノイドコイル)がカム31をx軸方向に移動させ、このカム31の移動により、シャッタアーム11がx軸方向に摺動される。これにより、シャッタ羽根10が選択的かつ個別にx軸方向に摺動されて窓部21が遮蔽及び開放(シャッタ羽根10参照)される。
【0018】
シャッタプレート20は、シャッタアーム11の各々の動きをy軸方向及びz軸方向に規制するシャッタアーム規制部22及び23を備える。シャッタアーム規制部22及び23はそれぞれ、シャッタアーム11の動きをy軸方向に規制するための突起部22a及び23aを有し、各シャッタアーム11が隣接突起部間に配置される。また、シャッタアーム規制部22及び23はそれぞれ、シャッタアーム11の動きをz軸方向に規制するための同軸かつ個別に回転するローラ部22b及び23bを有し、各シャッタアーム11がローラ部22b及び23b上に配置される。
【0019】
また、図1Bに示すように、圧電素子の周波数調整装置は、上記のシャッタ装置、イオンガン40及びホルダ50を備える。ホルダ50は、y軸方向に配列された(水晶振動子等の)圧電素子51を保持し、イオンガン40は、y軸方向に配列される圧電素子51をエッチングするためのイオンビームを照射する。即ち、シャッタ駆動部30がシャッタアーム11を選択的に駆動し、シャッタ羽根10が窓部21を選択的に遮蔽及び開放することによって、イオンガン40からのイオンビームが選択的に圧電素子51に到達する。これにより、y軸方向に配列された複数の圧電素子51が選択的にイオンビームエッチングされる。
【0020】
図1Cは図1Aのシャッタユニット1のy−z正面図であり、図1Dはシャッタ羽根10のy−z断面図である。図1C及び1Dに示すように、本実施例のシャッタアーム11はシャッタ羽根10のy−z断面形状が従来例のシャッタ羽根60と異なる。
図1Dに示すように、シャッタ羽根10は、x−y面をなして対向するシャッタ表面101及びシャッタ裏面102、並びにシャッタ表面101とシャッタ裏面102の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部103(太線部)及び第2のエッジ部104(太線部)を有する。
【0021】
第1のエッジ部103は、シャッタ裏面102側でy軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部105、及びシャッタ表面101側でy軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部106を有する。第2のエッジ部104は、シャッタ表面101側でy軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部107、及びシャッタ裏面102側でy軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部108を有する。第1のエッジ部103と第2のエッジ部104は相互に対応する段差形状となり、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、k番目のシャッタ羽根10の第2のエッジ部104とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第1のエッジ部103がz軸方向にオーバーラップする。
【0022】
なお、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、k番目のシャッタ羽根10の第2のエッジ部104とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第1のエッジ部103は、必ずしもz軸方向にオーバーラップしていなくてもよく、例えば図1Eに示すように、z軸方向の見通し線が遮断される構成であれば、従来技術の隙間の問題を解消できる。
【0023】
本実施例では、複数のシャッタ羽根10のシャッタ表面101及びシャッタ裏面102がそれぞれ一平面をなすように複数のシャッタ羽根10が配置される。そして、各シャッタ羽根10において、凸部105及び107のz軸方向の厚さz1が凹部106及び108のz軸方向の厚さz2よりも小さくなるように構成され、隣り合うシャッタ羽根の凸部と凹部の間にギャップが開けられる。即ち、厚さz1はシャッタ羽根10の厚さの1/2よりも小さい。より具体的には、隣り合うシャッタ羽根10k−1、10、及び10k+1の各隣接部において、シャッタ羽根10の凸部105の厚さz1とシャッタ羽根10k−1の凸部107の厚さz1とその間のギャップの合計がシャッタ羽根10k−1及び10の厚さに等しく、シャッタ羽根10の凸部107の厚さz1とシャッタ羽根10k+1の凸部105の厚さz1とその間のギャップの合計がシャッタ羽根10及び10k+1の厚さに等しい。また、y軸方向においても、シャッタ羽根10の凸部105及び凹部106とシャッタ羽根10k−1の凹部108及び凸部107の間にギャップが確保されるとともに、シャッタ羽根10の凸部107及び凹部108とシャッタ羽根10k+1の凹部106及び凸部105の間にギャップが確保される。
【0024】
このように、各エッジ部の凸部と凹部の間にギャップが形成された状態で複数のシャッタアームが配列されることにより、隣り合うシャッタ羽根10同士が非接触状態を維持して摺動可能となる。なお、シャッタプレート20のシャッタアーム規制部22及び23により、開閉動作中もシャッタアーム11の動きはy軸方向及びz軸方向に規制され、シャッタ羽根10同士の離隔が維持される。
【0025】
図2Aに本実施例の変形例のシャッタユニットを示す。同図のシャッタ羽根13はy−z断面形状が上記シャッタ羽根10と異なる。シャッタ羽根13は、x−y面をなして対向するシャッタ表面131及びシャッタ裏面132、並びにシャッタ表面131とシャッタ裏面132の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部133及び第2のエッジ部134を有する。
【0026】
第1のエッジ部133は、y軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部を形成し、第2のエッジ部134は、y軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部を形成している。第1のエッジ部133と第2のエッジ部134は相互に対応する楔形状となり、隣接するシャッタ羽根の隣接部において、k番目のシャッタ羽根10の第2のエッジ部134とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第1のエッジ部133がギャップを介してz軸方向にオーバーラップする。
【0027】
また、図2Bに示すように、第1のエッジ部133´と第2のエッジ部134´は、相互に対応する円弧形状を有していてもよいし、その他相互に対応する多角形状を有していてもよい。但し、シャッタ羽根のz軸方向の厚さは通常0.5〜1.0mm程度であるので、エッジ部はできるだけ単純な形状である方がシャッタユニットの製造上有利である。
【0028】
図2Cに本実施例の変形例によるシャッタユニットを示す。同図のシャッタ羽根14はy−z断面形状が上記シャッタ羽根10と異なり、そのy−z断面形状が平行四辺形となっている。言い換えると、シャッタ羽根14は、x−y面をなして対向するシャッタ表面141及びシャッタ裏面142、並びにシャッタ表面141とシャッタ裏面142の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部143及び第2のエッジ部144を有する。
【0029】
第1のエッジ部143は、y軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部を形成し、第2のエッジ部144は、y軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部を形成している。第1のエッジ部143と第2のエッジ部144は相互に対応する楔形状となり、上記他の例と同様に、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、第1のエッジ部と第2のエッジ部がギャップを介してz軸方向にオーバーラップする。
【0030】
なお、図2A〜2Cにおいても、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、第1のエッジ部と第2のエッジ部は必ずしもz軸方向にオーバーラップしていなくてもよく、z軸方向の見通し線が遮断されるように配置されていればよい。即ち、シャッタ羽根の各々について、隣り合うシャッタ羽根同士が、z軸方向にオフセットした形状によってz軸方向の見通し線を遮断するエッジ部を備えていればよい。これにより、イオンビームの少なくとも垂直入射については、シャッタアーム間の通過を防止することができる。なお、ここでいうオフセットとは、隣接するシャッタ羽根の一方が他方に対して、x−y平面図上で隙間を開けることなくz軸方向に平行移動されてかつ離隔された状態をいうものとする。
【0031】
なお、上述のように、第1のエッジ部が、y軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部を有し、第2のエッジ部が、y軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部を有し、その凸部と凹部が相互に対応する形状を有し、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において第1のエッジ部と第2のエッジ部がz軸方向の見通し線を遮断する構成について、当業者であれば、上記例示に限られず多数の変形例が存在することが分かるはずである。そのような変形例も本発明の範囲に含まれる。
【0032】
実施例2.
実施例1においては、シャッタ羽根のエッジ部同士の対応構造によってz軸方向の見通し線の遮断部分乃至はオーバーラップ部分を構成する例を示したが、本実施例では、シャッタ羽根のエッジ部自体が隣接シャッタ羽根とのオーバーラップ部分等を構成する例を示す。
【0033】
図3Aに本発明の第2の実施例によるシャッタユニットのy−z断面を示す。同図のシャッタ羽根15はy−z断面における短手方向の向きが従来例のシャッタ羽根60と異なる。シャッタ羽根15は、対向するシャッタ表面151及びシャッタ裏面152、並びにシャッタ表面151とシャッタ裏面152の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部153及び第2のエッジ部154を有する。
【0034】
本実施例では、シャッタ羽根15全体がアーム11に対して所定の角度でツイストされ、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、シャッタ表面とシャッタ裏面の間にギャップが開けられる。これにより、k番目のシャッタ羽根10の第2のエッジ部154とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第1のエッジ部153がギャップを介してz軸方向にオーバーラップする。また、上記ギャップがあることにより、隣り合うシャッタ羽根15同士が非接触状態を維持して摺動可能となる。
【0035】
図3Bに実施例2の変形例によるシャッタユニットを示す。同図のシャッタ羽根16はy−z断面形状が上記シャッタ羽根15と異なる。シャッタ羽根16は、x−y平面をなすとともに互いに対向するシャッタ表面161及びシャッタ裏面162、並びにシャッタ表面161とシャッタ裏面162の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部163及び第2のエッジ部164を有する。
【0036】
本例では、第1のエッジ部161がz軸方向に曲げられて形成され、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、第1のエッジ部163と第2のエッジ部164の間にギャップが開けられる。これにより、図3Aの例と同様に、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、第1のエッジ部と第2のエッジ部がギャップを介してz軸方向にオーバーラップするとともに、隣り合うシャッタ羽根16同士が非接触状態を維持して摺動可能となる。なお、図3Bでは、第1のエッジ部163が隣接するシャッタ羽根の裏面162側に配置されるようにしたが、第1のエッジ部163が隣接するシャッタ羽根の表面161側に配置されるようにしてもよい。
【0037】
なお、図3A及び3Bにおいても、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、第1のエッジ部と第2のエッジ部は必ずしもz軸方向にオーバーラップしていなくてもよく、z軸方向の見通し線が遮断されるように配置されていればよい。これにより、イオンビームの少なくとも垂直入射については、シャッタアーム間の通過を防止することができる。
【0038】
実施例3.
図4Aは本発明の第3の実施例によるシャッタ羽根17のy−z正面図である。図4Aに示すように、シャッタ羽根17は、x−y面をなして対向するシャッタ表面171及びシャッタ裏面172、並びにシャッタ表面171とシャッタ裏面172の間にありx軸方向に延在する第1のエッジ部173及び第2のエッジ部174を有する。図4Bは第1のエッジ部173及び第2のエッジ部174の拡大図を示す。
【0039】
第1のエッジ部173は、シャッタ表面171側でy軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部175、シャッタ裏面172側でy軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部176、及びシャッタ表面171とシャッタ裏面172の間でy軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部177を有する。第2のエッジ部174は、シャッタ表面171とシャッタ裏面172の間でy軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部178、シャッタ表面171側でy軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部179、及びシャッタ裏面172側でy軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部180を有する。第1のエッジ部173と第2のエッジ部174は相互に対応する段差形状となり、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において、k番目のシャッタ羽根10の第1のエッジ部173の先端とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第2のエッジ部174の先端が同一平面内に配置される。即ち、k番目のシャッタ羽根10の第1のエッジ部173の先端とk+1番目のシャッタ羽根10k+1の第2のエッジ部174の先端がz軸方向の見通し線を遮断する。
【0040】
本実施例では、各シャッタ羽根17において、凸部178のz軸方向の厚さz1が凹部177のz軸方向の厚さz2よりも小さくなるように構成され、隣り合うシャッタ羽根の凸部と凹部の間にギャップが開けられる。より具体的には、隣り合うシャッタ羽根10k−1、10、及び10k+1の各隣接部において、シャッタ羽根10の凸部178の厚さz1とシャッタ羽根10k−1の凸部175及び凸部176の厚さとその間のギャップの合計がシャッタ羽根10k−1及び10の厚さに等しく、シャッタ羽根10の凸部175及び凸部176の厚さとシャッタ羽根10k+1の凸部178の厚さz1とその間のギャップの合計がシャッタ羽根10及び10k+1の厚さに等しい。また、y軸方向においては、シャッタ羽根10の凸部178、凹部179及び凹部180とシャッタ羽根10k−1の凹部177、凸部175及び凸部176の間にギャップが確保されるとともに、シャッタ羽根10の凹部177、凸部175及び凸部176とシャッタ羽根10k+1の凸部178、凹部179及び凹部180の間にギャップが確保される。
【0041】
なお、図4Aでは凸部178の先端と凸部175及び凸部176の先端が同一線上に配置されるが、上記のy軸方向のギャップを保った状態で凸部178、凸部175及び凸部176を面でオーバーラップさせてもよい。
【0042】
シャッタ羽根同士がオーバーラップしない本実施例の構成によると、処理対象となる圧電素子の境界とシャッタ羽根の境界とをほぼ一致させることができる。従って、本実施例の構成は、圧電素子同士のピッチが狭い場合(例えば、音叉型では0.4mm程度)で利点がある。即ち、ある圧電素子が隣のシャッタ羽根の影響を受ける(隣のシャッタ羽根によりビーム照射領域の一部が遮蔽される)という問題を回避することができる。
【0043】
加えて、図4A及び図4Bに示すシャッタは、z軸方向のみでなく全方向の見通し線を遮蔽する効果を奏する。図5A乃至図5Cを参照すると、本実施例では何れの場合も垂直入射の遮断が可能であるが、図5Bの場合、一部の斜め入射が遮断されずに通過する。ここで、図5Aに示すシャッタは図1Cに示すシャッタに同じであり、図5Bに示すシャッタは図3A及び図3Bに示すシャッタの変形例であり、図5Cに示すシャッタは図4A及び図4Bに示すシャッタに同じである。図5Bに示すシャッタではオーバーラップによりz軸方向を含む所定角度(図5Bの角度α)を超えない見通し線を遮蔽するが、所定角度(角度α)以上の見通し線は遮蔽されない。例えば圧電素子にイオンビーム照射する場合、シャッタ閉時であっても一部の斜め入射成分が遮断されずに圧電素子に到達してしまう。一部の斜め入射成分が完全に遮断できないことは、図2C、図3Aも同様である。
【0044】
一方、図5A及び図5Cに示すシャッタであれば全方向の見通し線を遮断できる。斜め入射成分の粒子を遮蔽する効果は、図2A、図2B及び図3Bに示す構成も同様である。図5Aに示すシャッタにおいて、全角度遮断とするにはそれぞれのエッジを結ぶ線の内側に隣接するシャッタ羽根のエッジ端を配置する必要があり、重ねしろ(オーバーラップ)が必要である。重ねしろが必要なことは図2A及び図2Bも同様である。
【0045】
これに対して、図5Cに示すシャッタは、重ねしろ無しでも全角度遮蔽が可能であるため、処理対象となる圧電素子の境界とシャッタ羽根の境界とをほぼ一致にさせながらもイオンビーム遮蔽性を向上させるという効果がある。隣接するシャッタを共に閉状態とすることで、全方向の見通し線を遮蔽し、斜め入射のイオンビームだけでなく斜め入射の電子も遮蔽することができるため、電子衝突によるワーク損傷の課題も解決できる。また、圧電素子をワークとする場合には、ワークに電子が入射すると発振が不安定となるという課題が生じるがこれも同時に解決できる。
【0046】
以上のように、実施例1〜3の構成によると、隣り合うシャッタ羽根のエッジ部がシャッタ羽根間の隙間を覆うように、z軸方向にオフセットした形状によってz軸方向の見通し線を遮断し、乃至はz軸方向にオーバーラップしているので、イオンガン40からのイオンビームがシャッタ羽根の間を漏れることはない。しかも、複数のシャッタ羽根10を同じ形状で構成できるので、シャッタユニット1の生産性が良い。
【0047】
また、隣り合うシャッタ羽根のエッジ部がz軸方向にオーバーラップしている場合、イオンビームによってシャッタ羽根自体が多少エッチングされたとしても、エッジ部のオーバーラップ部分を確保することができる。これにより、シャッタユニット1が周波数調整装置に使用される場合に、長期間に亘って精度の高い周波数調整を行うことができる。
【0048】
さらに、隣り合うシャッタ羽根におけるエッジ部付近のギャップを確保する構成としたので、隣り合うシャッタ羽根同士が干渉することなく、個別のシャッタ開閉動作を確実に達成できる。シャッタアーム11はy方向の幅をシャッタ羽根部より狭くすることができるため干渉の問題はない。
【0049】
また、実施例1及び3のシャッタ羽根10は、従来のシャッタ羽根60とはエッジ部間の対向形状が異なるだけであるので、従来のシャッタユニット6用のシャッタプレート及びシャッタ駆動部にシャッタユニット1をそのまま搭載することができる。従って、本実施例のシャッタユニット1は、従来のシャッタユニット6との互換性を確保でき、代替性及び汎用性に優れる。
【0050】
また、実施例2のシャッタ羽根においては、エッジ部の微細な加工を行う必要がないので、シャッタアームのz軸方向の厚さが薄い場合の加工容易性が期待できる。
【0051】
なお、上記の説明では、同じ実施例においては全てのシャッタ羽根が同一の形状を有するものとして説明したが、例えば、最も外側に配置されるシャッタ羽根は他のシャッタ羽根とは別形状としてもよい。例えば、図1C、2A、2B、2C、3B、及び4Aの例では、最も外側に配置されるシャッタアームの外側エッジ部は加工されていなくてもよい。
【0052】
また、上記各実施例では説明の便宜上、シャッタ羽根について、各図のz軸上方向をシャッタ表面とし、z軸下方向をシャッタ裏面としたが、各図のz軸上方向をシャッタ裏面とし、z軸下方向をシャッタ表面としてもよい。なお、図面は本発明を分かり易く誇張して示したものであり、寸法通りではない。
【0053】
また、図1Bの周波数調整装置では、イオンガンをシャッタユニット下方に、ホルダをシャッタユニット上方に配置したが、イオンガンをシャッタユニット上方に、ホルダをシャッタユニット下方に配置してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1.シャッタユニット
10、13、14、15、16.シャッタ羽根
11.シャッタアーム
12.係合部
20.シャッタプレート
21.窓部
22、23.シャッタアーム規制部
22a、23a.突起部
22b、23b.ローラ部
30.シャッタ駆動部
31.カム
40.イオンガン
50.ホルダ
51.圧電素子
101、131、141、151、161、171.シャッタ表面
102、132、142、152、162、172.シャッタ裏面
103、133、143、153、163、173.第1のエッジ部
104、134、144、154、164、174.第2のエッジ部
105、107、175、176、178.凸部
106、108、177、179、180.凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットであって、
並置された複数のシャッタアームからなり、
前記シャッタアーム各々の長手方向をx軸、並置方向をy軸、x軸とy軸に垂直な方向をz軸として、前記シャッタアームの各々がx軸方向に摺動可能であり、x軸方向先端にシャッタ羽根を有し、
前記シャッタ羽根の各々が、x−y面をなして対向するシャッタ表面及びシャッタ裏面、並びに前記シャッタ表面と前記シャッタ裏面の間にありx軸方向に延在する第1及び第2のエッジ部を有し、
前記第1のエッジ部が、y軸方向に張り出してx軸方向に延在する凸部を有し、前記第2のエッジ部が、y軸方向に欠けてx軸方向に延在する凹部を有し、該凸部と該凹部が相互に対応する形状を有し、隣り合うシャッタ羽根の隣接部において第1のエッジ部と第2のエッジ部がz軸方向の見通し線を遮断するように前記複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のシャッタユニットにおいて、前記隣り合うシャッタ羽根の隣接部において前記第1のエッジ部と前記第2のエッジ部がz軸方向にオーバーラップするように前記複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニット。
【請求項3】
請求項1に記載のシャッタユニットにおいて、前記第1のエッジ部と前記第2のエッジ部が全方向の見通し線を遮断するように前記複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニット。
【請求項4】
請求項1に記載のシャッタユニットにおいて、隣り合う前記シャッタ羽根同士が非接触状態を維持して摺動されるように、隣接部において前記凸部と前記凹部の間にギャップが形成された状態で前記複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニット。
【請求項5】
請求項1に記載のシャッタユニットにおいて、前記複数のシャッタ羽根の前記シャッタ表面及び前記シャッタ裏面が全体としてそれぞれ一平面をなすように、該複数のシャッタ羽根が配置され、前記第1のエッジ部の前記凸部が前記シャッタ裏面側にあり、前記第2のエッジ部の前記凹部が前記シャッタ裏面側にあり、前記凸部のz軸方向の厚さが前記凹部のz軸方向の厚さよりも小さい、シャッタユニット。
【請求項6】
イオンビームを選択的に通過させるためのシャッタ装置に使用されるシャッタユニットであって、
並置された複数のシャッタアームからなり、
前記シャッタアーム各々の長手方向をx軸、並置方向をy軸、x軸とy軸に垂直な方向をz軸として、前記シャッタアームの各々がx軸方向に摺動可能であり、x軸方向先端にシャッタ羽根を有し、
前記シャッタ羽根の各々について、隣り合うシャッタ羽根同士が、z軸方向にオフセットした形状によってz軸方向の見通し線を遮断するエッジ部を有する、シャッタユニット。
【請求項7】
請求項6に記載のシャッタユニットにおいて、前記隣り合うシャッタ羽根同士はz軸方向にオーバーラップするエッジ部を有する、シャッタユニット。
【請求項8】
請求項6に記載のシャッタユニットにおいて、前記シャッタ羽根の形状によって全方向の見通し線が遮断されるシャッタユニット。
【請求項9】
請求項6に記載のシャッタユニットにおいて、隣り合う前記シャッタ羽根同士が非接触状態を維持して摺動されるように、隣接部において前記エッジ部間にギャップが形成された状態で前記複数のシャッタ羽根が配置されたシャッタユニット。
【請求項10】
請求項1から9いずれか一項に記載のシャッタユニット、前記複数のシャッタアームを支持するシャッタプレート、及び前記シャッタアーム各々を該シャッタプレート上で個別に摺動させるシャッタ駆動部を備えたシャッタ装置。
【請求項11】
配列された圧電素子を保持するホルダ、該圧電素子に対してイオンビームを照射するイオンガン、該イオンガンから該圧電素子を遮蔽及び開放するように配置された請求項10に記載のシャッタ装置を備えた、圧電素子の周波数調整装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【公開番号】特開2013−98307(P2013−98307A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238907(P2011−238907)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000146009)株式会社昭和真空 (72)
【Fターム(参考)】