説明

シャッタユニットおよびそれを有する撮像装置

【課題】 ヨークのローターマグネットの磁力によって、組み立て時の位置決めが難しく、組み立て性に問題があった。
【解決手段】 本発明に係るシャッタユニットは、開口部(110h、110k)を有するベース部材(110)と、リング形状で、回転軸を中心に動作するロータ部(121,131)と、コイルを有し、ロータ部に対向するステータ部(122,132)と、コイルへの通電を切り替えることでロータ部を駆動させ、少なくともシャッタ羽根を駆動させるシャッタユニットであって、ロータ部は、開口部に挿入して光軸方向に突出し、前記回転軸とは非同軸の腕部(121b、131b)を有し、開口部は、腕部の光軸方向の移動を規制する規制部(110f、110g)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタ羽根を往復運動させるシャッタユニットおよびそれを有する撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシャッタユニットとして、特許文献1のようなシャッタユニットが知られている。特許文献1のような構成とすることで、構成部品全体としての形状を単純化しつつ、ローターマグネットに対するヨークの位置決めを行うことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−097141
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1のような構成のシャッタユニットは、下地板にローターマグネットや磁極部材、コイルボビンを組み込んでいく構成である。そのため、下地板にローターマグネットを組み込んだ後に磁極部材を組み込もうとすると、お互いの磁力によって引きつけ合う力が発生し、ローターマグネットが下地板から外れるなどして、組み立て性に問題があった。
【0005】
また、磁極部材にローターマグネットを組み込んでから、下地板に組み込もうとしてもローターマグネットと磁極部材との間には、やはりお互いの磁力によって引きつけ合う力が発生してしまう。そのため、ローターマグネットの中心は偏芯してしまい、組み立て性に問題があった。
そこで本発明は、単純な形状を維持しつつ、ヨークのローターマグネットに対する位置決めが強固で、組み立て性が良好なシャッタユニットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的に対し、本発明に係るシャッタユニットは、開口部を有するベース部材と、リング形状で、回転軸を中心に動作するロータ部と、コイルを有し、前記ロータ部に対向する複数の磁極歯を有するステータ部と、前記コイルへの通電を切り替えることで前記ロータ部を駆動させ、少なくともシャッタ羽根を駆動させるシャッタユニットであって、前記ロータ部は、前記開口部に挿入して光軸方向に突出し、前記回転軸とは非同軸の腕部を有し、前記開口部は、前記腕部の光軸方向の移動を規制する規制部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
構成部品全体としての形状を単純化しつつ、ヨークのローターマグネットに対する位置決めが強固で、組み立て性が良好なシャッタユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の一実施形態であるシャッタユニット100の分解斜視図である。
【図2】シャッタユニット100のアクチュエータ130(120)の上面図である。
【図3】(a)シャッタユニット100の正面図である。 (b)シャッタユニット100のA−A断面図である。
【図4】(a)シャッタユニット100の正面図であり、ロータ121、131の組み立て位相を示した図である。 (b)ステータ122、132の組み立て時のロータ121、131の位相を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施例を、添付の図1−4に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1(a),(b)は、本発明の実施形態にかかわるシャッタユニット100の分解斜視図である。図2はロータ121,131(ロータ部)とステータ122,132(ステータ部)の詳しい上面図である。図3(a)はシャッタユニット100の正面図、図3(b)は図3(a)におけるA−A断面図である。
図1(a)において、ベース部材110にはマグネット部としてのロータ121、131が組み込まれる、光軸方向に突出した軸部である回転軸110a、110bを有する。この回転軸110a、110bによってロータ121、131は回動可能になり、所定範囲の往復動作を行うことができる。
【0011】
120は後述するシャッタ羽根161、162を駆動する駆動部としてのアクチュエータであり、ロータ121とステータ122に分かれている。130はNDフィルタ羽根180を駆動するアクチュエータであり、アクチュエータ120と同じく、ロータ131とステータ132に分かれている。ロータ121,131は腕部121b、131bをそれぞれ有している。なお、ロータ121,131およびステータ122,132の詳細な構成は後述する。140はアクチュエータカバーであり、アクチュエータ120,130を挟んで、ビス150によってベース部材110に固定される。
【0012】
本実施例におけるシャッタユニットを組む場合、先ず、アクチュエータ120、130のロータ121、131がベース部材110に設けられた回転軸110a、110bに組み込まれる。なお、この組み込みに関しては、詳細を後述する。その後、ステータ122、132がロータにかぶさるようにしてベース部材110に組み込まれる。そして、アクチュエータカバー140がステータ122、132を押さえるようにしてかぶさり、ビス150によってベース部材110に固定される。
【0013】
次に図1(b)において、ベース部材110にはシャッタ羽根161、162の回転軸穴161a、162aが嵌合して組み込まれるための回転軸110c、110dを有する。また、NDフィルタ羽根180の回転軸穴180aが嵌合するための回転軸110eを有する。そして、ベース部材110の開口部110h、110kから、シャッタ羽根、NDフィルタ羽根とはベース部材を挟んで逆側に配設されたロータ121,131の腕部121b,131bを挿入するため、突出している。
【0014】
シャッタ羽根161、162は、それぞれ回転軸穴161a、162aと長穴部161b、162bとを有する。170は仕切りシートであり、シャッタ羽根161、162の開閉運動の際の、光軸方向(スラスト方向)の走行スペースを確保している。NDフィルタ羽根180は、回転軸穴180aと長穴部180bを有する。190はカバー部材であり、仕切りシート170とともに、NDフィルタ羽根180の開閉運動の際の、光軸方向(スラスト方向)の走行スペースを確保している。
【0015】
本実施例におけるシャッタユニットを組む場合、シャッタ羽根161、162の回転軸穴161a、162aがベース部材110に設けられた回転軸110c、110dと嵌合するように組み込まれる。また、シャッタ羽根161、162の長穴部161b、162bとロータ121に設けられた腕部121bが摺動可能に嵌合する。この腕部121bは、ロータ121の回転軸に対して同軸とならないように(非同軸になるように)配設されているため、ロータ121の回転動作によって腕部121bがシャッタ羽根161、162の開閉運動を行う。また、開口部110hは挿入された腕部121bの回転角度の規制を行っている。そして仕切りシート170を組みつける。
【0016】
同様にして、NDフィルタ羽根180は回転軸穴180aとベース部材110に設けられた回転軸110eが嵌合するようにして組み込まれる。また、NDフィルタ羽根180の長穴部180bとロータ131に設けられた腕部131bが摺動可能に嵌合する。この腕部131bは、ロータ131の回転軸に対して同軸とならないように配設されているため、ロータ131の回転動作によって腕部131bがNDフィルタ羽根180の開閉運動を行う。また、開口部110kは挿入された腕部131bの回転角度の規制を行っている。そしてカバー部材190を組みつける。
【0017】
次に、図2、図3を用いてアクチュエータ120、130の構造について説明する。なお、アクチュエータ120、130は同様の構造のためここでは130について説明する。図3(a)はシャッタユニット100の正面図であり、図3(b)はシャッタユニット100のA−A断面図である。
【0018】
ロータ131とステータ132の詳しい上面図を図2に示す。ロータ131は、リング形状で、その中心軸に対して垂直方向の少なくとも1つの面が周方向に分割して異なる極に交互に平面着磁されたマグネット131aとNDフィルタ羽根180を駆動する腕部131bで構成されている。そして腕部131bはベース部材110の裏面側へ延出しており、NDフィルタ羽根180の長穴部180bと摺動可能に嵌合している。
【0019】
一方でステータ132は、マグネット131aの着磁面に対向する複数の磁極歯を有する磁極部132c、132dを有する。詳細には、コイルが巻回されたコイルボビン132a、コイルボビン132aに挿通されたヨーク132b、対向する磁極部132c、132dから成っている。また、ロータ131を光軸方向(スラスト方向)に規制し、マグネット131aとコイルが接触するのを防ぐ目的で設けられた接触防止部132eとで構成されている。なお、コイルはステータ132に固定され、ヨーク132bと磁極部132c、132dを励磁する。
【0020】
図3を用いて、アクチュエータ130について説明する。アクチュエータ130はベース部材の回転軸110bに嵌合されることで位置決めされる。よって、ロータ131とステータ132はともにベース部材110に対して位置決めされているため、マグネット131aと磁極部132c、132dも精度良く位置決めされることになる。
【0021】
次にアクチュエータ130の磁気駆動の動作について説明する。コイルに通電(正通電)が行われると、ヨーク132bがコイルボビン132aに挿通されているため電磁石となり、対向する磁極部132c、132dが磁極となる。そのため、マグネット131aとの間で、引力、斥力が作用し磁気的に安定した位相までマグネット131aが回転する。一方、コイルの通電方向を逆にすると(逆通電)、磁極部132c、132dの磁極は反転し、引力、斥力の方向も逆転するので、正通電の時とは逆方向にマグネット131aが回転する。
【0022】
このマグネット131aの回転動作は、腕部131bを介してNDフィルタ羽根180に伝達される。そして、腕部131bの動作によって、NDフィルタ羽根180は回転軸110eを中心として回転することで開閉動作する。
【0023】
なお、ベース部材110に設けられた規制部110f,110gは、ロータ121,131の腕部121b,131bを組み立てる際の位相から所定の角度回転させた位置に、開口部110f、110gと光軸方向に重なる様に配置される。これにより、規制部110f,110gは、組み込み時には腕部121b,131bを開口部110f、110gに挿入することが可能である。これと同時に、組み込み位相からある一定の角度だけ回転させると、規制部110f、110gにより、腕部121b,131b(ロータ121,131)が光軸方向に移動するのを防いでいる。また、開口部110h、110kから入り込む不要な光線を軽減させることが可能である。
【0024】
また、通電が行われていない時でもディテントトルク(モータのコイルを励磁していない時に作用する静止トルク)によってNDフィルタ羽根180が開閉のどちらかの状態に保持されるように、マグネット131aは着磁位相が決められている。さらには、マグネット131aの回転動作がベース部材110によって、その回転範囲を規制されている。
【0025】
同様にして、マグネット121aの回転動作は、腕部121bを介してシャッタ羽根161、162に伝達される。そして、腕部121bの動作によってシャッタ羽根161、162もそれぞれ回転軸110c、110dを中心にして回転する。ここで、シャッタ羽根161、162が逆方向に回転することにより、シャッタの開閉動作を行うことが可能となっている。
【0026】
次に図4を用いてアクチュエータ120、130の組み立てについて説明する。図4(a)は、ロータ121、131が組み込まれる時点での位相を示した図であり、図4(b)はステータ122、132を組み立てる時のロータ121、131の位相を示した図である。
【0027】
図1で説明した通り、ベース部材110にはロータ121、131がベース部材110上の回転軸110a、110bに組み込まれている。この組み込む際に、ロータ121、131の腕部121b、131bをベース部材110の開口部110h、110kに入れ、ロータ121、131をベース部材110上の回転軸110a、110bに組み込む。
【0028】
その後、図4(b)の位相までロータ121、131を回転させる。この時、ロータ121、131の腕部121b、131bが、ベース部材110の規制部110f、110gの下に潜り込む。図3で説明した通り、ベース部材110に設けられた規制部110f,110gはロータ131の腕部131bと光軸方向に重なる様に配置され、これによって腕部131bが光軸方向に移動するのを防いでいる。このロータ121,131の回転による位相の変更によって、ロータ121、131の腕部121b,131bが規制部110f,110gとベース部材110によって、光軸方向(スラスト方向、図4では紙面奥行き方向)に規制される。
【0029】
続いて、ステータ122、132がロータ121、131に組み込まれる。その際に、ステータの磁極部122c、122d、132c、132dとロータのマグネット121a、131aの間で引力が発生する。しかしながら、ロータ121,131はベース部材110に設けられた規制部110gによって光軸方向(スラスト方向)に規制されているので、ロータ121,131がベース部材110から外れることなく組み込むことができる。
【0030】
また、本実施例においては、マグネット121aと131aは図4のように着磁されているとする。即ち、図4(a)のように、ベース部材110にロータ121、131を組み込む際には、マグネット121a、131aの同じ極同士が対向する位置にあり、互いに斥力が働くように配置されている。そして、この斥力は、それぞれの腕部121bと131bが規制部110f、110gの方向に、ロータ121、131が回転するように働いている。すると、ロータ121,131の位相を変更した後に、腕部121bと131を規制部110f、110gに潜り込んだ状態に留まるように磁力(斥力)が働くことになるので、図4(b)の位相に安定的に留まることが可能となる。
【0031】
以上のように、ロータ121,131の位相とマグネット121a、131aの着磁位相、並びにベース部材110の規制部110f、110gの位置を、図4(b)の状態でロータが安定するように設定した。これにより、ロータ121,131とステータ122,132を組みつけるときに、磁力によってロータ121,131の光軸方向の動きを規制するため、組み立て性の良いシャッタユニットを提供することができる。
さらには規制部110f、110gを設けることによって、開口部110h、110kから入り込む不要な光線を軽減させることが可能である。
【0032】
以上により、構成部品全体としての形状を単純化しつつ、ヨークのローターマグネットに対する位置決めが強固で、組み立て性が良好なシャッタユニットを提供することができる。なお、本発明のシャッタユニットを有するデジタルカメラ、デジタルビデオカメラのような撮像装置、レンズ交換式のデジタルカメラ、デジタルビデオカメラの交換レンズのような光学機器に用いられる場合も、適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
120、130 アクチュエータ
121、131 ロータ
122、132 ステータ
161、162 シャッタ羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有するベース部材と、
リング形状で、回転軸を中心に動作するロータ部と、
コイルを有し、前記ロータ部に対向する磁極部を有するステータ部とを有し、
前記コイルへの通電を切り替えることで前記ロータ部を駆動させ、少なくともシャッタ羽根を駆動させるシャッタユニットであって、
前記ロータ部は、前記開口部に挿入して光軸方向に突出し、前記回転軸とは非同軸の腕部を有し、
前記開口部は、前記腕部の光軸方向の移動を規制する規制部を有することを特徴としたシャッタユニット。
【請求項2】
前記規制部は、前記ロータ部を前記開口部に組み込む際の位相から、前記回転軸を中心にある一定の角度回転させた位置に配設されたことを特徴とする請求項1に記載のシャッタユニット。
【請求項3】
前記ロータ部と前記ステータ部は2つずつ有しており、
前記ロータ部は、リング形状でその中心軸に対して垂直方向の少なくとも1つの面が周方向に分割して異なる極に交互に平面着磁されたマグネットをそれぞれ有し、
前記開口部に前記ロータ部を組み込む際の位相において、前記マグネットの同じ極同士が向かい合うように、前記2つのマグネットが配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のシャッタユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項のシャッタユニットを有する撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−154966(P2012−154966A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11202(P2011−11202)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】