説明

シャッター用ガイドレールの防火構造

【課題】既設のシャッター装置の防火性能を容易に向上させることができるシャッター用ガイドレールの防火構造を提供する。
【解決手段】シャッター用ガイドレールの防火構造において、建物躯体31に支持されシャッターカーテン11の操出巻取方向に沿う両側縁35のそれぞれを案内するガイドレール25と、ガイドレール25のシャッターカーテン11と平行な外正面41と、外正面41に直交する外側面43の少なくとも出隅部45を含む一部分とを覆って固定される耐熱・耐火性を備えた耐火材27と、耐火材27の外側を覆って耐火材27とともにガイドレール25に固定される化粧部材29と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター用ガイドレールの防火構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッターカーテンの両側縁をガイドするガイドレールは、アルミ合金等による押出成形品が用いられることが多い。アルミ合金よりなることで、ガイドレールは意匠性を持たせることができ、またその素材により防錆性もあり住宅用には好適である。ところが、アルミ合金等によるガイドレールは、火災発生時に過度の熱を受けると変形を起こし、さらには溶ける可能性があり、シャッター装置の本来の機能を十分に発揮できない虞がある。そこで、防火機能の向上を図ることができる閉鎖体のガイドレールの構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
この閉鎖体のガイドレールの構造は、空間を仕切る閉鎖体の端縁部分を挿入部に挿入してこの閉鎖体の移動を案内する閉鎖体のガイドレールの構造において、挿入部を形成するガイドレール本体と、このガイドレール本体を補強する補強材とを備える。補強材は、ガイドレール本体の長手方向の全長に渡って連続的に設けられていてもよく、或いは断続的に設けられていてもよい。
【0004】
この閉鎖体のガイドレールの構造によれば、補強材を設けてガイドレール本体を補強するので、ガイドレールの強度が全体として向上する。このため、防火や防煙等の防災上の機能や防犯上の機能の向上を図ることが可能となる。ガイドレールが火災発生時に過度の熱を受けて溶けてしまい、本来の機能を十分に発揮できなくなるという不都合を未然に防止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−351082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の防火タイプのシャッター装置は、ガイドレール等の部材そのものを防火専用品にしたり、ガイドレール内部に補強部材を組み込んだりしている。このため、専用の部品点数が増加し、生産効率を低下させた。また、既設のシャッター装置の防火性能を向上させたい場合においても、従来部品をこれらの防火専用部品に交換する必要があり、既設の部品を撤去するなど施工が煩雑となった。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、既設のシャッター装置の防火性能を容易に向上させることができるシャッター用ガイドレールの防火構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のシャッター用ガイドレールの防火構造は、建物躯体31に支持されシャッターカーテン11の操出巻取方向に沿う両側縁35のそれぞれを案内するガイドレール25と、
前記ガイドレール25の前記シャッターカーテン11と平行な外正面41と、該外正面41に直交する外側面43の少なくとも出隅部45を含む一部分とを覆って固定される耐熱・耐火性を備えた耐火材27と、
前記耐火材27の外側を覆って該耐火材27とともに前記ガイドレール25に固定される化粧部材29と、
を具備することを特徴とする。
【0009】
このシャッター用ガイドレールの防火構造では、ガイドレール25の外正面41及び外側面43が耐火材27で覆われることにより、ガイドレール25の防火性能が高まる。ガイドレール25の外正面41及び外側面43から耐火材27が取り付けられるので、既設のシャッター装置15に対し施工が簡単に行える。耐火材27の表面が化粧部材29で覆われるので、意匠性を損ねることがない。また、出荷製品とした場合であっても、既製のガイドレール25に耐火材27及び化粧部材29を取り付ければよいので、専用独立部材が増えることがなく、部品の共通化が図れ、生産効率を低下させることがない。
【0010】
本発明の請求項2記載のシャッター用ガイドレールの防火構造は、請求項1記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材27が、断面L字形の硬質な成形部材からなることを特徴とする。
【0011】
このシャッター用ガイドレールの防火構造では、例えば吹き付け耐熱材やシート状の耐熱材等と異なり、ガイドレール25に沿わせて施工が容易に行える。また、取り付けることによって、耐熱性能の向上以外に、ガイドレール25の強度も向上させることができる。
【0012】
本発明の請求項3記載のシャッター用ガイドレールの防火構造は、請求項2記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材27が、鋼板47からなることを特徴とする。
【0013】
このシャッター用ガイドレールの防火構造では、帯状の鋼板47を長手方向に沿う略中央の折り曲げ部で折り曲げることで、出隅部45を覆うL字形の耐火材27が安価且つ容易に製作可能となる。また、ガイドレール25と同等の長さに成形する構成以外に、ガイドレール25の長手方向に複数に分割した耐火材27の製作も容易となる。
【0014】
本発明の請求項4記載のシャッター用ガイドレールの防火構造は、請求項1,2,3のいずれか1つに記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材27の前記外正面41を覆う部位が、前記シャッターカーテン11の両側縁35と重なる掛かり代部51を有することを特徴とする。
【0015】
このシャッター用ガイドレールの防火構造では、左右ガイドレール25間の間隔距離となる間口幅長が、掛かり代部51によってシャッターカーテン11の幅長よりも短く位置することとなり、シャッターカーテン11の両側縁35が掛かり代部51に掛かることとなり、ガイドレール25が火災などで変形を起こしたり溶けてしまうことがあっても、シャッターカーテン11が脱落等を起こさない。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載のシャッター用ガイドレールの防火構造によれば、ガイドレールの外正面及び外側面が耐火材で覆われることで、既設のシャッター装置の防火性能を容易に向上させることができる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載のシャッター用ガイドレールの防火構造によれば、耐火材を取扱性のよい単独部材で製作でき、施工性を高めることができる。
【0018】
本発明に係る請求項3記載のシャッター用ガイドレールの防火構造によれば、耐火材の材料費を安価にできるとともに、板金加工等による容易な製作が可能となる。
【0019】
本発明に係る請求項4記載のシャッター用ガイドレールの防火構造によれば、耐火材の掛かり代部で両側縁の掛かりを担保してシャッターカーテンの脱落を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るシャッター用ガイドレールの防火構造を備えたシャッター装置全体の斜視図である。
【図2】図1に示したシャッター装置におけるガイドレール及びその固定部分の平断面図である。
【図3】図2に示したガイドレール、耐火材、化粧部材の分解斜視図である。
【図4】耐火材の掛かり代部を説明するための図2の要部拡大図である。
【図5】建物躯体に固定される変形例に係る耐火材及び化粧部材の平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明に係るシャッター用ガイドレールの防火構造を備えたシャッター装置全体の斜視図である。
本実施形態に係るシャッター用ガイドレールの防火構造は、例えばシャッターカーテン11を用いて建物開口部13を開閉するシャッター装置15に好適に用いることができる。シャッター装置15は、住宅の外壁17に設けられたサッシ窓19の外側に取り付けられる。建物開口部13の上方にはシャッター装置15の収納部21が取り付けられている。シャッターカーテン11は、アルミ製やスチール製のスラット23を複数連結した一般的なシャッターカーテン11の他、パネル材や樹脂製シート状のシャッターカーテン11とすることもできる。
【0022】
なお、シャッターカーテン11は、他の樹脂にて構成されるシート材や、ゴムシート材、織布や、樹脂製ネットスクリーン、金属製ネットスクリーン、シリカクロス、ガラスクロスなどを素材とする構成や、これら素材を複合や積層させた素材などとしてもよく、このシャッターカーテン11を構成する素材を、耐火性,防火性,防炎性を有する素材とすることができる。
【0023】
図2は図1に示したシャッター装置15におけるガイドレール25及びその固定部分の平断面図である。
シャッター用ガイドレールの防火構造は、ガイドレール25と、耐火材27と、化粧部材29と、を主要な構成部材として備える。ガイドレール25は、アルミ押出成形材よりなる。ガイドレール25は、建物躯体31に固定手段としての固定ネジ33により支持固定され、シャッターカーテン11の操出巻取方向に沿う両側縁35のそれぞれを案内する。本実施形態では、シャッターカーテン11を構成するスラット23の端部に延設された抜け止め部材39が、ガイドレール25内のスリット37に抜け止め規制され案内される。抜け止め部材39は、断面T字状の樹脂材よりなりスリット37に係合して抜け止めが行われる。
【0024】
図3は図2に示したガイドレール25、耐火材27、化粧部材29の分解斜視図である。
耐火材27は、耐熱・耐火性を備え、ガイドレール25の屋外側のシャッターカーテン11と平行な外正面41の全部又は一部と、外正面41に直交する外側面43の全部又は一部、及び少なくとも出隅部45を含む一部分とを覆って固定される。耐火材27は、断面L字形の硬質な板状の成形部材からなる。例えば塗膜のような吹き付け耐熱材や耐炎繊維からなる織布等と異なり、剛性を有する素材で施工が容易に行える。また、取り付けることによって、耐熱・耐火性能の向上以外に、ガイドレール25の強度も向上させることができ、すなわちガイドレール25の補強材となる。また、耐火材27を取扱性のよい単独部材で製作でき、施工性を高めることができる。
【0025】
本実施形態において、耐火材27は、鋼板47からなる。これにより、耐火材27の材料費を安価にできる。耐火材27は、帯状の鋼板47を長手方向に沿う略中央部分の折り曲げ部で折曲形成することで、出隅部45を覆うL字形の耐火材27が容易に製作可能となる。鋼板47の板厚は0.8〜2mm程度が好適となる。なお、鋼板47は、板厚を大きくすることで耐熱・耐火性能を向上させることが可能であるが、板厚の増加は重量が増すこととなり、取扱性、取付施工性等を鑑み設定するものである。耐火材27は、ガイドレール25に沿う方向が、全通して連続であってもよいし、断続で複数で構成されてもよい。ガイドレール25と略同等の長さとなる全通しの耐火材27とすれば、補強として、より効果的である。また、図3に示すように、ガイドレール25の長手方向に複数に分割して製作する構成とすれば、製作性が容易となり、また施工を容易にできる。
【0026】
化粧部材29は、耐火材27の外側を覆って耐火材27とともにガイドレール25に固定される。化粧部材29は、アルミ押出成形材よりなり、連続形成することにより意匠性を保てるようにする。つまり、化粧部材29は、耐火材27の表面を覆うカバーとなる。それぞれの働きを考慮すると、耐火材27は略短冊状の成形品とし、化粧部材29は連続の一体成形品とすることが現実的となる。つまり、シャッター用ガイドレールの防火構造は、耐火性を有する耐火材27と、意匠性及び防錆性を有する化粧部材29との2層構造となる。
【0027】
これら耐火材27及び化粧部材29は、例えばリベット49による固定手段で外側からガイドレール25に容易に固定される。すなわち、本発明の防火構造は、現場施行にて寸法切りして穴開けを行い、外側からリベット49で取り付けるという容易な施行手順のみで済む。これにより、部品を追加するのみで、既設のシャッター装置15であっても、防火性能を容易に向上させることができるものである。
【0028】
図4は耐火材27の掛かり代部51を説明するための図2の要部拡大図である。
また、耐火材27は、ガイドレール25の外正面41を覆う部位が、シャッターカーテン11の両側縁35と重なる掛かり代部51を有する。アルミ合金製のガイドレール25は火災による熱で変形を起こし、さらには溶ける虞がある。また、抜け止め部材39は、樹脂製であり、耐風機能としては有効であるが、火災による熱で溶けて無くなってしまう虞がある。本実施形態の耐火材27は、掛かり代部51が設けられていることで、シャッターカーテン11の両側縁35の抜け止め部材39が溶けても、シャッターカーテン11の両側縁35に重なる掛かり代部51を残すことができる。すなわち、左右のガイドレール25の間隔距離とシャッターカーテン11の幅長とが、シャッターカーテン11の幅長よりも耐火材27での間隔距離が、掛かり代部51によって短くなり、これにより、アルミ合金製のガイドレール25が熱で変形したり溶けるなどを起こしても、掛かり代部51が、シャッターカーテン11の両側縁35に掛かり、シャッターカーテン11がガイドレール25から外れなくなる。このようにして、耐火材27の掛かり代部51で両側縁35の掛かりを担保してシャッターカーテン11の脱落を防ぐことができる。
【0029】
次に、上記構成を有するシャッター用ガイドレールの防火構造の作用を説明する。
シャッター用ガイドレールの防火構造では、ガイドレール25の外正面41及び外側面43が耐火材27で覆われることにより、ガイドレール25の防火性能が高まる。ガイドレール25の外正面41及び外側面43から耐火材27が取り付けられるので、既設のシャッター装置15に対し施工が簡単に行える。
【0030】
さらに、耐火材27の表面が化粧部材29で覆われるので、シャッター装置15としての意匠性を損ねることがない。また、出荷製品とした場合であっても、既製のガイドレール25に耐火材27及び化粧部材29を取り付ければよいので、専用独立部材が増えることがなく、部品の共通化が図れ、生産効率を低下させることがない。
【0031】
ガイドレール25の外側に構成させるのみで、既設のシャッター構造を変更しないので、シャッター装置15としての部品構成に変更がない。なお、ガイドレール25の形状が異なるものでも、対応可能となる。
【0032】
図5は建物躯体31に固定される変形例に係る耐火材27及び化粧部材29の平断面図である。
なお、上記の例では耐火材27及び化粧部材29が、ガイドレール25の外側面43における一部分である出隅部45を覆ったが、耐火材27及び化粧部材29は、建物開口側と反対側の基端側縁部53を、ガイドレール25の基端鍔部55まで延長してもよい。この構成によれば、耐火材27及び化粧部材29の基端側縁部53を、ガイドレール25の基端鍔部55とともに建物躯体31に固定でき、基端鍔部55をも覆うことが可能となって耐火強度を一層高めることができる。
【0033】
従って、このシャッター用ガイドレールの防火構造によれば、ガイドレール25の外正面41及び外側面43を覆い隠し、既設のシャッター装置15の防火性能を容易に向上させることができる。また、建物躯体31に固定され、耐火材27が強固に固定することができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、耐火材27として鋼板47が使用される例を説明したが、耐火材27はこの他、セラミック等その他の素材を用いることもできる。例えば脱落などを起こさず補強することが可能なように、セラミックを吹き付けた他の素材との複合構造とすることもできる。また、化粧部材29は、不燃材料であれば良く、アルミ合金以外のその他の素材であってもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…シャッターカーテン
25…ガイドレール
27…耐火材
29…化粧部材
31…建物躯体
35…両側縁
37…スリット
41…外正面
43…外側面
45…出隅部
47…鋼板
51…掛かり代部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物躯体に支持されシャッターカーテンの操出巻取方向に沿う両側縁のそれぞれを案内するガイドレールと、
前記ガイドレールの前記シャッターカーテンと平行な外正面と、該外正面に直交する外側面の少なくとも出隅部を含む一部分とを覆って固定される耐熱・耐火性を備えた耐火材と、
前記耐火材の外側を覆って該耐火材とともに前記ガイドレールに固定される化粧部材と、
を具備することを特徴とするシャッター用ガイドレールの防火構造。
【請求項2】
請求項1記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材が、断面L字形の硬質な成形部材からなることを特徴とするシャッター用ガイドレールの防火構造。
【請求項3】
請求項2記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材が、鋼板からなることを特徴とするシャッター用ガイドレールの防火構造。
【請求項4】
請求項1,2,3のいずれか1つに記載のシャッター用ガイドレールの防火構造であって、
前記耐火材の前記外正面を覆う部位が、前記シャッターカーテンの両側縁と重なる掛かり代部を有することを特徴とするシャッター用ガイドレールの防火構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−53418(P2013−53418A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190848(P2011−190848)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】