説明

シャッター装置およびシャッター装置集合体

【課題】本発明の目的は、小型化を図ることのできるシャッターおよびシャッター集合体を提供すること。
【解決手段】シャッター装置1は、開状態と閉状態とを切り替えることができる。このようなシャッター装置1は、磁性体材料で構成された芯材311、321および芯材311、321に巻き付けられたコイル312、322を備える電磁石31、32と、コイル312、322の外側であって芯材311、321の一端部と対向するように配置され、電磁石31、32から発生する磁力の作用によって、電磁石31、32へ接近する方向または電磁石31、32から離間する方向へ移動する移動体2と、移動体2に支持され、移動体2の移動方向に延在するシャッター部4とを有し、芯材311、321の横断面は、シャッター部4の幅方向に短軸を有する扁平形状をなしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置およびシャッター装置集合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動子の共振周波数を調整(変更)する方法として、振動子の質量を変化(増加または減少)させる方法が知られている。このような方法は、例えば、振動子と、イオンビームを振動子に照射することにより振動子の一部を除去して振動子の質量を減少させるイオンガンと、振動子とイオンガンとの間に設けられたシャッターとを有する装置を用いて行われる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置では、複数のシャッター板が重ねられた状態にて鉄芯に軸支されており、各シャッター板は、鉄芯を中心として回動可動となっている。また、各シャッター板は、対応するソレノイドの駆動により回動するように構成されている。特許文献1に記載の装置では、このようなシャッター板の回動を利用して、シャッターを開状態または閉状態とすることができる。
【0004】
このような装置では、イオンガンからイオンビームが発射されている状態にて、シャッターを開状態とする。これにより、イオンビームがシャッターを通過して振動子に照射され、振動子の一部が除去されることにより、振動子の共振周波数が変化(減少)する。そして、振動子の周波数が所定の周波数となった時点でシャッターを閉状態とすることにより、振動子へのイオンビームの照射を阻止する。このような方法により、振動子の共振周波数を調整する。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のシャッターでは、各シャッター板を駆動する複数のソレノイドがシャッター板から横方向にずれた位置に設けられているとともに、高さ方向に重ねられているため、シャッターの大型化を招いてしまう。シャッターの大型化を招くと、その分、チャンバー等を大きくしなければならず、振動子の周波数調整の効率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−118156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、小型化を図ることのできるシャッター装置およびシャッター装置集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明のシャッター装置は、開状態と閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
磁性体材料で構成された芯材および前記芯材に巻き付けられたコイルを備える電磁石と、
前記コイルの外側であって前記芯材の一端部と対向するように配置され、前記電磁石から発生する磁力の作用によって、前記電磁石へ接近する方向または前記電磁石から離間する方向へ移動する移動体と、
前記移動体に支持され、前記移動体の移動方向に延在するシャッター部と、を有し、
前記芯材の横断面は、前記シャッター部の幅方向に短軸を有する扁平形状をなしていることを特徴とする。
これにより、小型化を図ることのできるシャッター装置を提供することができる。
【0009】
[適用例2]
本発明のシャッター装置では、前記移動体は、軟磁性材料で構成されており、
前記電磁石は、前記移動体を挟んで一対設けられていることが好ましい。
これにより、シャッター装置の開閉を自在に制御することができるとともに、シャッター装置の小型化を図ることができる。
【0010】
[適用例3]
本発明のシャッター装置では、前記芯材は、前記コイルが巻かれた基部と、基部の先端で前記移動体側に延出した延出部を有することが好ましい。
これにより、移動体の移動距離を一定に保つことができる。
[適用例4]
本発明のシャッター装置では、前記芯材と前記移動体は、樹脂材料で構成された絶縁層を備えることが好ましい。
これにより、芯材に残存する磁力によって、移動体が芯材から離間できなくなるのを防止または抑制することができる。すなわち、不本意な移動体の芯材への吸着が防止または抑制され、自在に移動体の移動を制御することができる。
【0011】
[適用例5]
本発明のシャッター装置では、前記絶縁層は、前記芯材の表面に形成されていることが好ましい。
これにより、絶縁層の形成が簡単となる。
[適用例6]
本発明のシャッター装置では、前記扁平形状は、楕円形または長円形であることが好ましい。
これにより、コイルを基部の表面に追従させて巻き付けることができるため、コイルと基部の間に隙間が形成されてしまうのを抑制できる。そのため、電磁石の幅をより短くすることができ、これに伴ってシャッター装置の全幅がより短くなる。これにより、シャッター装置の小型化をより図ることができる。
【0012】
[適用例7]
本発明のシャッター装置集合体では、本発明のシャッター装置を、前記シャッター部の幅方向に複数並設してなることが好ましい。
これにより、小型化を図ることのできるシャッター装置集合体を提供することができる。
【0013】
[適用例8]
本発明のシャッター装置集合体では、隣り合う一対の前記シャッター装置の間には、防磁材が設けられていることが好ましい。
これにより、各シャッター装置が有する移動体は、隣り合うシャッター装置の電磁石から発生する磁界の影響をほとんど受けなくなる。そのため、各シャッター装置の誤作動が防止され、各シャッター装置をより正確かつ確実に駆動することができる。
【0014】
[適用例9]
本発明のシャッター装置集合体では、隣り合う一対の前記シャッター装置が有する前記電磁石は、前記移動体の移動方向にずれて配置されていることが好ましい。
これにより、各シャッター装置が有する移動体は、隣り合うシャッター装置の電磁石から発生する磁界の影響をほとんど受けなくなる。そのため、各シャッター装置の誤作動が防止され、各シャッター装置をより正確かつ確実に駆動することができる。
[適用例10]
本発明のシャッター装置集合体では、前記シャッター装置集合体は、振動デバイスの質量調整用シャッター装置であることが好ましい。
これにより、振動デバイスの周波数調整を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置集合体を適用した周波数調整装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置集合体を示す平面図(上面図)である。
【図3】図2に示すシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図(図2中A−A線断面図)である。
【図4】図3に示すシャッター装置が有する芯材の断面図(斜視図)である。
【図5】図3に示すシャッター装置の動作を説明するための図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図である。
【図8】本発明の第4実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッター装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第5実施形態にかかるシャッター装置集合体の平面図(上面図)である。
【図10】本発明の第6実施形態にかかるシャッター装置集合体が有する支持台の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のシャッター装置を適用したシャッター装置集合体(本発明のシャッター装置集合体)を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置集合体を適用した周波数調整装置の概略図、図2は、本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置集合体を示す平面図(上面図)、図3は、図2に示すシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図(図2中A−A線断面図)、図4は、図3に示すシャッター装置が有する芯材の断面図(斜視図)、図5は、図3に示すシャッター装置の動作を説明するための図である。なお、以下では、説明の都合上、図1〜5中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。また、図1に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。
以下では、本発明のシャッター装置集合体を、振動子(例えば水晶振動子)9の共振周波数を調整するための周波数調整装置100に適用した場合について説明する。ただし、本発明のシャッター装置の用途は、これに限定されない。
【0017】
1.周波数調整装置
図1に示す周波数調整装置100は、内部を所望の環境とすることのできるチャンバー110と、複数のシャッター装置1が並設してなるシャッター装置集合体1’と、イオンガン120と、遮蔽板130とを有している。
イオンガン120は、例えば、Ar、Ne等の不活性ガスに電界を作用させて加速させることにより、イオンビームを発射するものであり、振動子9の質量を変化させる質量変化手段を構成するものである。このようなイオンガン120は、チャンバー110内にてシャッター装置集合体1’よりも下側に位置しており、上方へ向けてイオンビームIBを照射する。
【0018】
また、遮蔽板130は、チャンバー110内にてシャッター装置集合体1’よりも上側に位置しており、隣り合うシャッター装置1の間(隙間)から上方へ漏れるイオンビームIBを遮断する。
複数のシャッター装置1は、それぞれ、独立して駆動が制御されており、イオンビームIBの通過を許容する開状態と、イオンビームIBを遮断する閉状態とを切り替えることができる。
【0019】
このような周波数調整装置100では、1つのシャッター装置1の上方に1つの振動子9を配置し、イオンガン120からイオンビームIBを発射するとともに、シャッター装置1を開状態とすることにより、振動子9にイオンビームIBを照射し、振動子9の一部(例えば、電極の一部)を除去する。これにより、振動子9の質量を減らし、その共振周波数を調整する。イオンビームIBの照射により、振動子9の共振周波数が所定値となったら、速やかにシャッター装置1を閉じ、それ以上イオンビームIBが振動子9に照射されるのを阻止する。周波数調整装置100によれば、このようにして振動子9の共振周波数を調整することができる。なお、周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法については、後に、詳しく説明する。
【0020】
次に、シャッター装置集合体1’について詳しく説明する。
図2に示すように、シャッター装置集合体1’は、支持台8と、支持台8に支持された複数のシャッター装置1とを有している。複数のシャッター装置1を有することにより、一度に複数、すなわち、最大でシャッター装置1の枚数分の振動子9の共振周波数を調整することができる。そのため、所定時間内により多くの振動子9の共振周波数を調節することができ、周波数調整装置100の効率性が向上する。なお、シャッター装置1の枚数は、特に限定されず、例えば、10〜30程度とすることができる。
【0021】
支持台8は、ブロック状または板状をなしている。このような支持台8には、その上面に開放する複数の溝81が形成されている。複数の溝81は、y軸方向に沿って等間隔に並設されている。また、複数の溝81は、それぞれ、x軸方向に延在し、その両端部にて支持台8の側面に開放している。これら複数の溝81は、それぞれ、シャッター装置1を収納する収納部Sとして機能する。
【0022】
ここで、隣り合う一対の溝81の間に位置する複数の突出部82は、それぞれ、防磁性(磁束の透過を遮断する性質)を有しているのが好ましい。言い換えれば、複数の突出部82は、それぞれ、防磁シールド(防磁材)として機能するのが好ましい。
後述するように、各溝内81には、電磁石31、32と、電磁石31、32からの磁場の作用によって移動する移動体2とが配置されている。突出部82が防磁シールドとして機能すると、各シャッター装置1が有する移動体2は、隣り合うシャッター装置1の電磁石31、32から発生する磁界の影響をほとんど受けなくなる。そのため、各シャッター装置1の誤作動が防止され、各シャッター装置1をより正確かつ確実に駆動することができる。
【0023】
突出部82に防磁性を付与する場合、突出部82の構成材料としては、上記のような性質を有する材料であれば、特に限定されないが、アルミニウム等の高導電率かつ低透磁率の非磁性体を用いるのが好ましい。これにより、突出部82の誘導加熱が抑えられ、シャッター装置集合体1’の不本意な発熱を防止または抑制することができる。
また、支持台8のx軸方向の両端部には、各溝81を横切るようにして、y軸方向に延在する一対のシャッター支持部83が固定されている。これら一対のシャッター支持部83は、シャッター装置1が有する後述するシャッター部4を摺動可能に支持するための部材である。このようなシャッター支持部83を設けることにより、シャッター装置1の駆動を円滑かつ正確に行うことができる。
【0024】
以下、シャッター装置1について説明するが、複数のシャッター装置1は、それぞれ、同様の構成であるため、以下では、1つのシャッター装置1について説明し、それ以外のシャッター装置1については、その説明を省略する。
図3に示すように、シャッター装置1は、x軸方向に離間して対向配置された一対の電磁石31、32と、電磁石31、32の間に設けられた移動体2と、連結部6を介して移動体2に支持されたシャッター部4と、電磁石31、32に電圧を印加する電圧印加手段5とを有している。シャッター装置1をこのような構成とすることにより、後述するように、シャッター装置1の開閉を自在に制御することができるとともに、シャッター装置1の小型化を図ることができる。
【0025】
一対の電磁石31、32は、溝81内に設けられており、互いにx軸方向に離間している。
電磁石31は、芯材311と、芯材311に巻き付けられたコイル312とで構成されている。芯材311は、x軸方向に延在し、コイル312が巻き付けられた基部311aと、基部311aの移動体2側の端部(図3中左側の端部)からz軸方向両側に向けて延出する延出部(突出部)311bとで構成されている。すなわち、芯材311は、略「T」字状をなしている。
【0026】
また、延出部311bは、コイル312が巻き付けられておらず、コイル312の外側に位置(突出)している。このような延出部311bは、移動体2と当接(接触)することにより、移動体2のそれ以上の移動を規制する移動規制部としても機能する。これにより、一対の電磁石31、32間での移動体2の移動距離を一定に保つことができる。仮に、移動体2の移動距離が変化すると、シャッター装置1を開状態から閉状態となるまでの時間、より具体的には、シャッター装置1を閉状態とするための命令(信号)を出した時刻から、実際にシャッター装置1が完全に閉状態となるまでの時間が変化する。このようにシャッター装置1を閉じる時間が変化すると、それに伴って、振動子9へのイオンビームIBの照射時間が変化し、振動子9の質量が必要以上に減少したり、目的値まで減少していなかったりし、振動子9の共振周波数が所定の周波数からずれてしまう。すなわち、移動体2の移動距離が変化してしまうと、振動子9の共振周波数を高精度に調整することができなくなるおそれがある。
【0027】
また、図4に示すように、芯材311の横断面(x軸に垂直なyz面)は、y軸方向に短軸を有し、z軸方向に長軸を有する扁平形状をなしている。言い換えれば、芯材311は、y軸方向を厚さ方向とする板状をなしている。これにより、電磁石31のy軸方向の幅を短くすることができるため、これに伴ってシャッター装置1の全幅が短くなる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができ、複数のシャッター装置1をより狭いピッチでy軸方向に並設することができる。
【0028】
また、芯材311の基部311aの横断面形状は、特に限定されないが、楕円形または長円形であるのが好ましい。また、例えば、矩形の各角部を丸み付けした形状であってもよい。このような角のない形状とすることにより、コイル312を基部311aの表面に追従させて巻き付けることができるため、コイル312と基部311aの間に隙間が形成されてしまうのを抑制できる。そのため、電磁石31のy軸方向の幅をより短くすることができ、これに伴ってシャッター装置1の全幅がより短くなる。これにより、シャッター装置1の小型化をより図ることができ、複数のシャッター装置1をより狭いピッチでy軸方向に並設することができる。
【0029】
なお、このような芯材311のサイズとしては、特に限定されないが、例えば、基部311aの[x軸方向の長さ]×[y軸方向の長さ]×[z軸方向の長さ]を、30mm×0.7mm×1.5mm程度とし、延出部311bの[x軸方向の長さ]×[y軸方向の長さ]×[z軸方向の長さ]を、2mm×0.7mm×10mm程度とすることができる。このようなサイズとすることにより、芯材311の強度を確保しつつ、上述した効果を十分に発揮することができる。
【0030】
芯材311の構成材料としては、種々の強磁性体材料を用いることができる。特に、強磁性体材料の中でも、保持力(磁化極性を逆転するために加えなければならない逆向きの磁界)が小さい軟磁性体材料であるのが好ましい。具体的には、保持力が5Ga以下程度である材料が好ましく、このような材料としては、例えば、純鉄や、珪素鉄などの不純物が混じった鉄などが挙げられる。このような材料で芯材311を構成することにより、コイル312へ電圧を印加すれば、芯材311が磁石として機能し、コイル312への電圧印加を停止すれば、芯材311が速やかに磁石としての機能を失う電磁石31となる。これにより、後述するように、芯材311に残留する磁力によって、移動体2の移動が阻害されてしまうのを効果的に防止または抑制することができ、シャッター装置1の開閉動作を円滑かつ確実に行うことができる。
【0031】
また、本実施形態では、芯材311の移動体2と対向する面には絶縁層313が形成されている。絶縁層313は、芯材311に残存する磁力によって、移動体2が芯材311から離間できなくなるのを防止する機能を有する。これにより、不本意な、移動体2の芯材311への吸着が防止され、自在に移動体2の移動を制御することができ、シャッター装置1の開閉動作を円滑かつ確実に行うことができる。また、芯材311上に絶縁層313を設けることにより、絶縁層313の形成が容易となる。
【0032】
また、絶縁層313は、芯材311よりも柔らかく(材料のヤング率が低く)、芯材311に移動体2が接触する際の緩衝層としても機能する。これにより、シャッター装置1の破損を効果的に防止または抑制することができる。
このような絶縁層313の構成材料としては、絶縁性を有していれば、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等の樹脂材料を用いることができる。
【0033】
なお、絶縁層313は、芯材311と移動体2とが接触する際に、これらの間に位置していればよいため、例えば、移動体2の芯材311と対向する面に形成されていてもよいし、芯材311の移動体2と対向する面および移動体2の芯材311と対向する面の両方の面に形成されていてもよい。
以上、電磁石31の構成について詳細に説明した。このような電磁石31と同様に、電磁石32は、芯材321と、芯材321に巻き付けられたコイル322とで構成されている。また、芯材321の移動体2と対向する面には、絶縁層323が形成されている。なお、芯材321、コイル322および絶縁層323は、電磁石31の芯材311、コイル312および絶縁層313と同様の構成であるため、その説明を省略する。
【0034】
溝81内であって、これら一対の電磁石31、32の間には、移動体2が設けられている。移動体2は、溝81の底面と摺動しつつ、電磁石31、32の間をx軸方向に移動自在に設けられている。このような移動体2は、y軸方向(すなわち、シャッター部4の幅方向)に扁平した形状をなしている。言い換えれば、移動体2は、y軸方向を厚さ方向とする板状をなしている。これにより、移動体2のy軸方向の幅を短くすることができるため、これに伴ってシャッター装置1の全幅が短くなる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができ、複数のシャッター装置1をより狭いピッチでy軸方向に並設することができる。
【0035】
移動体2の横断面形状としては、特に限定されず、本実施形態では、矩形(z軸方向に伸びる長方形)をなしている。
移動体2の構成材料としては、芯材311と同様に、種々の強磁性体材料を用いることができる。特に、強磁性体材料の中でも、保持力が小さい軟磁性体材料であるのが好ましい。具体的には、保持力が5Ga以下程度である材料が好ましく、このような材料としては、例えば、純鉄や、珪素鉄などの不純物が混じった鉄などが挙げられる。このような材料で移動体2を構成することにより、移動体2は、電磁石31、32からの磁場が作用したときには磁石となり、磁場が消えれば速やかに磁石としての機能を失うこととなる。そのため、移動体2に残留する磁力によって、移動体2の移動が阻害されてしまうのを効果的に防止または抑制することができ、シャッター装置1の開閉動作を円滑かつ確実に行うことができる。
【0036】
本実施形態では、移動体2の溝81との摺動性を向上させるために、溝81の底面に摩擦を低減することのできる被覆層84が形成されている。これにより、移動体2をより円滑に移動させることができる。なお、被覆層84は、例えば、移動体2の下面に形成されていてもよいし、溝81の底面および移動体2の下面の両方の面に形成されていてもよい。
【0037】
このような被覆層84は、例えば、フッ素樹脂を含有する無電解ニッケルメッキに形成することができる。このフッ素樹脂を含有する無電解ニッケルメッキは、摺動性(滑り性)、耐磨耗性に優れている。そのため、このような構成の被覆層84によれば、上記の機能をより効果的に発揮することができる。また、このような構成の被覆層84は、耐摩耗性に優れているため、移動体2の摺動性の経時的な変化を抑制することができ、その結果、移動体2の移動速度の経時的な変化を抑制することができる。
【0038】
仮に、経年劣化によって、被覆層84の摩擦が増大し、移動体2の移動速度が低下すると、シャッター装置1を開状態から閉状態となるまでの時間、より具体的には、シャッター装置1を閉状態とするための命令(信号)を出した時刻から、実際にシャッター装置1が完全に閉状態となるまでの時間が長くなる。このようにシャッター装置1を閉じる時間が長くなると、その分、振動子9へのイオンビームIBの照射時間が長くなり、振動子9の質量が必要以上に低下し、それに伴って振動子9の共振周波数が所定の周波数よりも高くなる。すなわち、移動体2の移動速度が経時的に変化してしまうと、振動子9の共振周波数を高精度に調整することができなくなるおそれがある。
【0039】
なお、被覆層84の構成は、上記の構成に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、シリコーンゴム、その他各種のエラストマー(例えば、ポリアミド系、ポリエステル系等の熱可塑性エラストマー)またはこれらの複合材料などで構成されていてもよい。
【0040】
以上、電磁石31、32および移動体2について説明したが、これらは、シャッター装置1を上方から見た平面視(xy平面視)にて、シャッター部4のy軸方向(幅方向)両側からはみ出ていないのが好ましい。これにより、シャッター装置1の全幅が短くなるため、シャッター装置1の小型化を図ることができ、複数のシャッター装置1をより狭いピッチでy軸方向に並設することができる。
【0041】
シャッター部(シャッター板)4は、連結部6を介して移動体2に支持されている。連結部6は、移動体2に固定されている。また、連結部6は、x軸方向に離間し、z軸方向に突出する一対の突起61、62を有している。
このような連結部6の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等を用いることができる。このうち、合金としては、例えば、ステンレス鋼、インコネル、その他例えばジュラルミン等の各種アルミニウム系合金を用いることができる。
【0042】
シャッター部4は、x軸方向に延在する長尺状をなしている。このようなシャッター部4には、x軸方向に離間した一対の貫通孔41、42が形成されている。そして、貫通孔41、42が連結部6の突起61、62と係合することにより、シャッター部4が連結部6を介して移動体2に支持されている。また、シャッター部4は、連結部6に対して着脱自在となっている。これにより、消耗品であるシャッター部4の交換を簡単に行うことができる。
【0043】
このようなシャッター部4は、例えば、耐スパッタ性に優れる炭素、チタン等を構成材料として構成されている。これにより、イオンビームIBによるシャッター部4の損傷を効果的に抑制することができる。また、このような材料で構成することにより、シャッター部4の軽量化を図ることができ、シャッター部4の反応性や移動速度を向上させることができる。
【0044】
なお、シャッター部4は、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等で構成された本体の表面に、耐スパッタ性に優れるDLC(ダイアモンドライクカーボン)膜を形成した構成とすることもできる。
【0045】
電圧印加手段5は、電磁石31、32のコイル312、322に電圧を印加する機能を有している。このような電圧印加手段5は、DC電源51と、スイッチ素子52を有している。
図3に示すように、スイッチ素子52は、一端がDC電源51の(+)側に接続されたスイッチ521と、スイッチ521が接触可能な2つの接点(端子)522、523とを有している。また、接点522は、コイル312の一端と接続されており、接点523は、コイル322の一端と接続されている。このようなスイッチ素子52では、スイッチ521が接点522と接触する第1状態、スイッチ521が接点523と接触する第2状態、スイッチ521がいずれの接点522、523とも接触しない第3状態とを選択することができる。一方、コイル312、322の他端は、途中で合流した後、DC電源51の(−)側に接続されている。
【0046】
このような電圧印加手段5によれば、スイッチ素子52を第1状態とすれば電磁石31のみを磁石として機能させることができ、反対に、スイッチ素子52を第2状態とすれば電磁石32のみを磁石として機能させることができる。また、スイッチ素子52を第3状態とすれば、電磁石31、32がいずれも磁石として機能していない状態とすることができる。
以上、シャッター装置1の構成について、詳細に説明した。このようなシャッター装置1は、次のようにして駆動する。
【0047】
シャッター装置1では、移動体2が電磁石31側に移動した状態(すなわち、図5(a)に示す状態)がイオンビームIBの振動子9への照射を遮断する閉状態であり、移動体2が電磁石32側に移動した状態(すなわち、図5(b)に示す状態)がイオンビームIBの振動子9への照射を許容する開状態である。
まず、開状態から閉状態とする動作について説明する。シャッター装置1が開状態のときに、スイッチ素子52を第1状態とするとともに、DC電源51によってコイル312に電圧を印加すると、電磁石31が磁石として機能する。これにより、移動体2が電磁石31に吸着されるように、電磁石31側に移動し、当該移動に伴ってシャッター部4も移動する。これにより、シャッター装置1が開状態から閉状態となる。
【0048】
なお、開状態から閉状態となった後は、DC電源51からコイル312への電圧印加を停止するか、スイッチ素子52を第3状態とするのが好ましい。これにより、通電によるコイル312の過度な発熱を防止することができ、チャンバー110内の環境をほぼ一定に保つことができる。ただし、閉状態を確実に維持したい場合等には、開状態から閉状態となった後もコイル312への電圧印加を継続してもよい。
【0049】
次に、閉状態から開状態とする動作について説明する。シャッター装置1が閉状態のときに、スイッチ素子52を第2状態とするとともに、DC電源51によってコイル322に電圧を印加すると、電磁石32が磁石として機能する。これにより、移動体2が電磁石32に吸着されるように、電磁石32側に移動し、当該移動に伴ってシャッター部4も移動する。これにより、シャッター装置1が閉状態から開状態となる。
【0050】
なお、閉状態から開状態となった後は、DC電源51からコイル322への電圧印加を停止するか、スイッチ素子52を第3状態とするのが好ましい。これにより、通電によるコイル322の過度な発熱を防止することができ、チャンバー110内の環境をほぼ一定に保つことができる。ただし、開状態を確実に維持したい場合等には、閉状態から開状態となった後もコイル322への電圧印加を継続してもよい。
【0051】
このように、電磁石31、32から発生する磁力を用いてシャッター装置1の開閉を制御することにより、次のような効果を発揮することができる。
すなわち、電磁石31(電磁石32についても同様)によれば、コイル312に電圧を印加してから、電磁石31が磁石として機能するまでの時間がより短いため、シャッター装置1を閉状態とする命令を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差をより短くすることができる。そのため、振動子9の周波数をより精度よく所定値に合わせ込むことができる。
【0052】
また、電磁石31によれば、コイル312に電圧を印加してから、電磁石31が磁石として機能するまでの時間が毎回ほぼ一定であるため、シャッター装置1を閉状態とする命令を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差を毎回ほぼ一定とすることができる。そのため、前記時間差を補正する場合に、その補正を容易に行うことができる。
【0053】
2.周波数調整方法
次に、周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法について説明する。
周波数調整装置100による振動子9の周波数調整は、1つのシャッター装置1の直上に1つの振動子9が位置するように、複数の振動子9をチャンバー110内に配置し、チャンバー110内を減圧状態(好ましくは、真空状態)とした状態にて行われる。また、振動子9の共振周波数を断続的に検知しながら行われ、この検知結果は、リアルタイムに図示しない制御手段に送られる。
【0054】
なお、複数の振動子9は、それぞれ、板状またはシート状のキャリアに支持されている。そして、この状態にて、以下のようにして、振動子9の周波数を調整する。各振動子9の周波数調整の方法は、互いに同様であるため、以下では、1つの振動子9の周波数を調整する方法について説明し、他の振動子9の周波数を調整する方法については、その説明を省略する。
【0055】
まず、シャッター装置1を閉状態とする。次に、イオンガン120をONとし、イオンビームIBを上方に向けて発射する。そして、イオンビームIBが安定するまで、シャッター装置1を閉状態としたまま放置する。次に、シャッター装置1を開状態とする。シャッター装置1を開状態とすると、イオンビームIBが振動子9に照射され、振動子9の一部、より具体的には電極の一部が除去され、これに伴う振動子9の質量の減少によって、振動子9の共振周波数が徐々に上昇する。次に、振動子9の共振周波数が所定の周波数となったときに、シャッター装置1を閉状態とする。以上の工程により、振動子9の共振周波数の調整が終了する。
【0056】
<第2実施形態>
次に、本発明のシャッター装置集合体の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図である。
以下、第2実施形態のシャッター装置集合体について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0057】
本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置集合体は、各シャッター装置を閉状態から開状態とするための手段が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図6に示すように、本実施形態のシャッター装置1Aでは、第1実施形態で述べた電磁石32に変えて付勢手段34が設けられている。付勢手段34は、移動体2を電磁石31とは反対側(図6中左側)へ付勢する。このような付勢手段34は、x軸方向に延在する長尺状をなし、その両端部にて、支持台8と移動体2とを連結している。付勢手段34は、上記機能を発揮することができれば、特に限定されず、例えば、ゴムやコイルバネ等の弾性体で構成することができる。ゴム等を用いることにより、付勢手段34を小さく構成することができるため、簡単に、溝81内に配置することができる。
【0058】
付勢手段34の付勢力は、電磁石31による移動体2の吸着力よりも小さく設定されている。これにより、付勢手段34の付勢力に反して、電磁石31を磁石として機能させたときに移動体2を電磁石31側に移動させることができる。
なお、付勢手段34の付勢力は、電磁石31による移動体2の吸着力よりも小さく、かつ、電磁石31が磁石として機能していない状態(コイル312に電圧が印加されていない状態)の時に、移動体2を図6中左側へ移動させることができれば、より小さいのが好ましい。これにより、電磁石31を磁石として機能させたときの、移動体2の電磁石31側への移動速度および反応性がより高くなる。
【0059】
また、電圧印加手段5Aは、コイル312に電圧を印加するDC電源51を有している。
このような構成のシャッター装置1Aは、次のようにして駆動する。
シャッター装置1Aでは、移動体2が電磁石31側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を遮断する閉状態であり、移動体2が電磁石31と反対側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を許容する開状態である。
【0060】
まず、シャッター装置1Aを開状態から閉状態とする動作について説明する。シャッター装置1が開状態のときに、DC電源51によってコイル312に電圧を印加すると、電磁石31が磁石として機能する。これにより、移動体2が電磁石31に吸着されるように、電磁石31側に移動し、当該移動に伴ってシャッター部4も移動する。これにより、シャッター装置1が開状態から閉状態となる。
【0061】
次に、シャッター装置1Aを閉状態から開状態とする動作について説明する。シャッター装置1が閉状態のときに、DC電源51からのコイル312への電圧印加を停止すると、電磁石31が磁石としての機能を失うため、付勢手段34によって、移動体2が図6中左側へ移動する。これにより、シャッター装置1が閉状態から開状態となる。
なお、本実施形態では、シャッター装置1Aを開状態から閉状態とするのに電磁石31の磁力を利用し、閉状態から開状態とするのに付勢手段34の付勢力を利用しているが、逆に、シャッター装置1Aを閉状態から開状態とするのに電磁石31の磁力を利用し、開状態から閉状態とするのに付勢手段34の付勢力を利用してもよい。ただし、以下に述べる理由から、本実施形態の構成であるのが好ましい。
【0062】
すなわち、周波数調整装置100では、前述したように、シャッター装置1Aを素早く閉状態にできるのが好ましく、また、シャッター装置1Aを閉状態とする命令(信号)を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差を毎回ほぼ一定とすることが好ましい。
このような観点からすると、付勢手段34(バネ等)による移動体2の移動は、付勢手段34の経年劣化(バネの変形や、硬質化に伴う弾性の低下)によって、その移動速度が低下したり、反応性が鈍くなったりする。そのため、仮に、シャッター装置1Aを開状態から閉状態とするのに付勢手段34の付勢力を用いた場合には、シャッター装置1Aを閉状態とする命令を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差が経時的に変化するおそれがある。
【0063】
これに対して、前述したように電磁石31の場合には、付勢手段34のような問題がない。したがって、シャッター装置1Aを開状態から閉状態とするのに電磁石31の磁力を利用することにより、振動子9の周波数調整をより高精度に行うことができる。
以上のような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0064】
<第3実施形態>
次に、本発明のシャッター装置集合体の第3実施形態について説明する。
図7は、本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッター装置の断面図である。
以下、第3実施形態のシャッター装置集合体について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0065】
本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置集合体は、シャッター装置を閉状態から開状態とするための手段が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図7に示すように、本実施形態のシャッター装置集合体が有するシャッター装置1Bでは、第1実施形態で述べた電磁石32が省略されている。また、シャッター装置1Bは、シャッター装置1Bの左側の部分が右側の部分よりも下方に位置するように傾斜して設けられている。また、支持台8の溝81内には、移動体2よりも左側に、移動体2の移動を規制するストッパー86が設けられている。
【0066】
また、電圧印加手段5Bは、コイル312に電圧を印加するDC電源51を有している。
このような構成のシャッター装置1Bは、次のようにして駆動する。
シャッター装置1Bでは、移動体2が電磁石31側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を遮断する閉状態であり、移動体2が電磁石31と反対側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を許容する開状態である。
【0067】
まず、シャッター装置1Bを開状態から閉状態とする動作について説明する。シャッター装置1Bが開状態のときに、DC電源51によってコイル312に電圧を印加すると、電磁石31が磁石として機能する。これにより、移動体2が電磁石31に吸着されるように、電磁石31側に移動し、当該移動に伴ってシャッター部4も移動する。これにより、シャッター装置1Bが開状態から閉状態となる。
【0068】
次に、シャッター装置1Bを閉状態から開状態とする動作について説明する。シャッター装置1が閉状態のときに、DC電源51からのコイル312への電圧印加を停止すると、電磁石31が磁石としての機能を失うため、移動体2が自重によって図7中左側へ移動し、ストッパー86に当接してその移動が終了する。これにより、シャッター装置1Bが閉状態から開状態となる。
以上のような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
<第4実施形態>
次に、本発明のシャッター装置集合体の第4実施形態について説明する。
図8は、本発明の第4実施形態にかかるシャッター装置集合体が有するシャッターを示す断面図である。
以下、第4実施形態のシャッター装置集合体について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
本発明の第4実施形態にかかるシャッター装置集合体は、シャッター装置を閉状態から開状態とするための手段が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図8に示すように、本実施形態のシャッター装置集合体が有するシャッター装置1Cでは、電磁石31の両側に一対の移動体21、22が設けられている。これら移動体21、22は、連結部6によって連結されている。このような移動体21、22は、それぞれ、ネオジム磁石、フェライト磁石、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石などの永久磁石(硬磁性体を着磁したもの)である。また、移動体21は、図8中左側がS極、右側がN極となるように着磁(磁化)されており、移動体22は、図8中左側がN極、右側がS極となるように着磁されている。
【0071】
これら移動体21、22の間には、電磁石33が設けられている。電磁石33は、芯材331と、芯材331に巻き付けられたコイル332とで構成されている。芯材331は、x軸方向に延在しコイル332が巻き付けられた基部331aと、基部331aの両端部からz軸方向両側に向けて延出する一対の延出部331b、331cとで構成されている。
【0072】
また、電圧印加手段5Cは、DC電源51と、コイル332に印加する電圧の極性を反転させることのできるスイッチ素子53とを有している。スイッチ素子53は、コイル332の一端側(例えば、部位332a)の電位が他端側(例えば、部位332b)の電位よりも高くなる第1状態と、一端側の電位が他端側の電位よりも低くなる第2状態とを切り替えることができる。
このような構成のシャッター装置1Cは、次のようにして駆動する。
【0073】
なお、シャッター装置1Cでは、移動体21が電磁石33側に移動するとともに、移動体22が電磁石33と反対側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を遮断する閉状態であり、移動体21が電磁石33と反対側に移動するとともに、移動体22が電磁石33側に移動した状態がイオンビームIBの振動子9への照射を許容する開状態である。
【0074】
まず、シャッター装置1Cを開状態から閉状態とする動作について説明する。シャッター装置1Cが開状態のときに、スイッチ素子53を第1状態とするとともに、DC電源51によってコイル332に電圧を印加すると、電磁石33が磁石として機能し、電磁石33の左側がS極、右側がN極となる。そのため、移動体21が電磁石33と引き合うとともに、移動体22が電磁石33と反発し合い、移動体21と電磁石33とが当接した状態となる。これにより、シャッター装置1Cが開状態から閉状態となる。
【0075】
次に、シャッター装置1Cを閉状態から開状態とする動作について説明する。シャッター装置1Cが閉状態のときに、スイッチ素子53を第2状態とするとともに、DC電源51によってコイル332に電圧を印加すると、電磁石33が磁石として機能し、電磁石33の左側がN極、右側がS極となる。そのため、移動体21が電磁石33と反発し合うとともに、移動体22が電磁石33と引き合い、移動体22と電磁石33とが当接した状態となる。これにより、シャッター装置1Cが閉状態から開状態となる。
【0076】
このような構成によれば、磁石の吸着力と反発力とを用いているため、より速い速度でシャッター部4を移動させることができる。
以上のような第4実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
なお、本実施形態では、電磁石33を介して対向配置された一対の移動体21、22を用いているが、移動体21、22のいずれか一方を省略してもよい。
【0077】
<第5実施形態>
次に、本発明のシャッター装置集合体の第5実施形態について説明する。
図9は、本発明の第5実施形態にかかるシャッター装置集合体の平面図(上面図)である。なお、図9では、説明の便宜上、シャッター部および連結部の図示を省略している。
以下、第5実施形態のシャッター装置集合体について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0078】
本発明の第5実施形態にかかるシャッター装置集合体は、隣り合うシャッターの配置が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図9に示すように、本実施形態のシャッター装置集合体1D’では、隣り合うシャッター装置1Dの電磁石31、32の位置がx軸方向にずれている。具体的に説明すれば、偶数列目のシャッター装置1Dにおける電磁石31、32の離間方向の中間点Pと交わりy軸方向に延在する線分をLとすると、奇数列目のシャッター装置1Dは、その電磁石32の中央部(基部321aの中央部)が線分L上に位置するように配置されている。このような配置とすることにより、各シャッター装置1Dが有する移動体2は、隣り合うシャッター装置1Dの電磁石31、32から発生する磁界の影響をほとんど受けなくなる。これは、移動体2が電磁石31、32の端から遠ざかるためである。そのため、各シャッター装置1Dの誤作動が防止され、各シャッター装置1Dをより正確かつ確実に駆動することができる。
以上のような第5実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0079】
<第6実施形態>
次に、本発明のシャッター装置集合体の第6実施形態について説明する。
図10は、本発明の第6実施形態にかかるシャッター装置集合体が有する支持台の分解図である。
以下、第6実施形態のシャッター装置集合体について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0080】
本発明の第6実施形態にかかるシャッター装置集合体は、支持台の構成が異なる以外は、シャッター装置を閉状態から開状態とするための手段が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図10に示すように、本実施形態のシャッター装置集合体が有する支持台8Eは、複数の個片部8E’をy軸方向に並べて固定したものである。また、複数の個片部8E’は、それぞれ、x軸方向に延在し、y軸方向を厚さ方向とする2枚の板部材81E’、82E’を接合してなるものである。また、板部材82E’は、板部材81E’よりも上方に突出している。
【0081】
このような支持台8Eでは、所定の個片部8E’が有する板部材82E’と、その隣の個片部8E’が有する板部材82E’との間の空間が、シャッター装置1の移動体2および電磁石31、32を収納する収納部Sを構成する。また、板部材82E’の板部材81E’から突出した部分が突出部82を構成する。支持台8Eを、このような構成とすれば、個片部8E’の設置数を変更することにより、配置したいシャッター装置1の個数に対応した数の収納部Sを有する支持台8Eを簡単に得ることができる。
以上のような第6実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0082】
以上、本発明のシャッターおよびシャッター集合体について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、イオンビームによって振動子の質量を減少させることにより振動子の共振周波数を変更する方法について説明したが、これに限定されず、例えば蒸着によって金属粒子を振動子に付着させ、振動子の質量を増加させることにより、振動子の共振周波数を変更してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…シャッター装置 1’…シャッター装置集合体 100…周波数調整装置 110…チャンバー 120…イオンガン 130…遮蔽板 1A…シャッター装置 1B…シャッター装置 1C…シャッター装置 1D…シャッター装置 1D’…シャッター装置集合体 2…移動体 21…移動体 22…移動体 31…電磁石 311…芯材 311a…基部 311b…延出部 312…コイル 313…絶縁層 32…電磁石 321…芯材 321a…基部 322…コイル 323…絶縁層 33…電磁石 331…芯材 331a…基部 331b…延出部 331c…延出部 332…コイル 332a…部位 332b…部位 34…付勢手段 4…シャッター部 41…貫通孔 42…貫通孔 5…電圧印加手段 51…DC電源 52…スイッチ素子 521…スイッチ 522…接点 523…接点 53…スイッチ素子 5A…電圧印加手段 5B…電圧印加手段 5C…電圧印加手段 6…連結部 61…突起 62…突起 8…支持台 81…溝 81E’…板部材 82…突出部 82E’…板部材 83…シャッター支持部 84…被覆層 86…ストッパー 8E’…個片部 8E…支持台 9…振動子 IB…イオンビーム L…線分 P…中間点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開状態と閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
磁性体材料で構成された芯材および前記芯材に巻き付けられたコイルを備える電磁石と、
前記コイルの外側であって前記芯材の一端部と対向するように配置され、前記電磁石から発生する磁力の作用によって、前記電磁石へ接近する方向または前記電磁石から離間する方向へ移動する移動体と、
前記移動体に支持され、前記移動体の移動方向に延在するシャッター部と、を有し、
前記芯材の横断面は、前記シャッター部の幅方向に短軸を有する扁平形状をなしていることを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記移動体は、軟磁性材料で構成されており、
前記電磁石は、前記移動体を挟んで一対設けられている請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記芯材は、前記コイルが巻かれた基部と、基部の先端で前記移動体側に延出した延出部を有する請求項1または2に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記芯材と前記移動体は、樹脂材料で構成された絶縁層を備える請求項3に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記絶縁層は、前記芯材の表面に形成されている請求項4に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記扁平形状は、楕円形または長円形である請求項1ないし5のいずれかに記載のシャッター装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のシャッター装置を、前記シャッター部の幅方向に複数並設してなることを特徴とするシャッター装置集合体。
【請求項8】
隣り合う一対の前記シャッター装置の間には、防磁材が設けられている請求項7に記載のシャッター装置集合体。
【請求項9】
隣り合う一対の前記シャッター装置が有する前記電磁石は、前記移動体の移動方向にずれて配置されている請求項7または8に記載のシャッター装置集合体。
【請求項10】
前記シャッター装置集合体は、振動デバイスの質量調整用シャッター装置である請求項7ないし9のいずれかに記載のシャッター装置集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−58694(P2013−58694A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197444(P2011−197444)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】