説明

シャットオフノズル

【課題】使用後、長期に亘り放置しても、液漏れを生じないシャットオフノズルを提供する。
【解決手段】横向き通路に沿って摺動するフランジ140を有し先端131が注出孔Aを封止可能なシャットピン130と、フランジ140と横向き通路との間に介在してピン130を前方に付勢して排出孔Aを封止させるコイル150と、押圧ヘッド120の押し下げによってピン130を後方に移動させて排出孔Aを開放するレバー160とを備え、フランジ140をピン130と別体に形成し、このピン130に沿って摺動可能に保持すると共に、シャットピン130とフランジ140との間に、フランジ140に加わるコイル150からの付勢力を相殺し、ノズル100の内圧上昇に従い、この内圧と共にコイル150からの付勢力に抗してフランジ140を後方に移動させる補助コイル170を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出が容易で液切れが良く、液詰まりの生じにくいシャットオフノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は既に、容器のステムに繋がる基部を有し当該基部から起立する上筒部がステムを通る内容物の通路となるジョイントと、このジョイントの上筒部と摺動可能に嵌合する下筒部を有し当該下筒部に繋がる横向き通路を通ってその前方に形成した注出孔に当該上筒部を通じさせる押圧ヘッドと、この押圧ヘッドの横向き通路に沿って摺動するフランジを有し先端が注出孔を封止可能なシャットピンと、フランジと横向き通路の後壁との間に介在してシャットピンを前方に付勢して排出孔を封止させる弾性部材と、押圧ヘッドの押し下げによってジョイントと接触して当該接触に伴う揺動によりシャットピンを後方に移動させて排出孔を開放するレバーとを備えるシャットオフノズルを提案済みである(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2002−326044号公報(図1等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来のシャットオフノズルは、例えば、エアゾール容器のノズルとして使用する場合、使用後、長期に亘り放置すると、微量ながらも注出孔からノズル内に残留した液が漏れることがあった。
【0004】
そこで、本願発明者は、従来のシャットオフノズルを試験・研究の結果、かかる液洩れがノズル内での内圧の上昇にあることを認識するに至った。
【0005】
本発明は、こうした事実認識に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、使用後、長期に亘り放置しても、液漏れを生じないシャットオフノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器のステムに繋がる基部を有し当該基部から起立する上筒部がステムを通る内容物の通路となるジョイントと、このジョイントの上筒部と摺動可能に嵌合する下筒部を有し当該下筒部に繋がる横向き通路を通ってその前方に形成した注出孔に当該上筒部を通じさせる押圧ヘッドと、この押圧ヘッドの横向き通路に沿って摺動するフランジを有し先端が注出孔を封止可能なシャットピンと、フランジと横向き通路の後壁との間に介在してシャットピンを前方に付勢して排出孔を封止させる弾性部材と、押圧ヘッドの押し下げによってジョイントと接触して当該接触に伴う揺動によりシャットピンを後方に移動させて排出孔を開放するレバーとを備えるシャットオフノズルにおいて、前記フランジをシャットピンと別体に形成し、このシャットピンに沿って摺動可能に保持すると共に、シャットピンとフランジとの間に、フランジに加わる前記弾性部材からの付勢力を相殺し、ノズルの内圧上昇に従い、この内圧と共に弾性部材からの付勢力に抗して当該フランジを後方に移動させる補助弾性部材を介在させたことを特徴とするものである。
【0007】
なお、本発明に係るジョイントは、ステムを直接固定する構成であっても、別途異なる部材を介して繋ぐ構成であってもよい。また、本発明によれば、ジョイントの上筒部と、押圧ヘッドの下筒部との相互間に、ノズルの内圧上昇に従って拡大する空間を形成することが好ましい。更に、本発明に係る容器はエアゾール容器とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明であるシャットオフノズルによれば、フランジと押圧ヘッドの横向き通路の後壁との間に弾性部材を介在させて、シャットピンの先端で注出孔を封止するにあたり、このシャットピンのフランジを別体に形成してシャットピンに沿って摺動可能に保持すると共に、当該フランジとシャットピンとの間に弾性部材からの付勢力を相殺し、ノズルの内圧上昇に従い、この内圧と共に弾性部材からの付勢力に抗して当該フランジを後方に移動させる補助弾性部材を介在させたことで、ノズルの内圧が上昇しても、フランジが後方に移動して横向き通路の前壁とフランジとの間の空間が増大することにより、ノズルの内圧上昇を抑制することができる。
【0009】
従って、本発明によれば、使用後、長期に亘り放置したときにノズルの内圧が上昇しても、ノズル内に残留した液が注出孔から漏れることがない。
【0010】
しかも、本発明によれば、シャットオフピンを後方に移動させて内容物の注出を可能とするための系と、横向き通路の前壁とフランジとの間の空間を増大させてノズルの内圧上昇を抑制するための系とが、互いに独立した系となる。即ち、本発明によれば、押圧ヘッドの押下げ動作に起因する本来の注出動作と、押圧ヘッドの押下げ動作に起因しない液洩れを防止するための動作とを別個独立した機能として確保することができる。
【0011】
更に、本発明において、ジョイントの上筒部と、押圧ヘッドの下筒部との相互間に、ノズルの内圧上昇に従って拡大する空間を形成すれば、ジョイントと押圧ヘッドとの間の摺動によっても、ノズルの内圧上昇が抑制されるため、液漏れの防止を更に確実なものとすることができる。
【0012】
また、本発明に係る容器として、エアゾール容器を採用すれば、液漏れの防止に特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0014】
図1〜3はそれぞれ、本発明の一形態であるシャットオフノズル100の初期状態、注出状態及び注出完了後の内圧上昇状態を側面から示す縦断面図である。
【0015】
符号110は、エアゾール容器CのステムSに固定される基部111を有するジョイントである。この基部111は、ステムSを固定する装着筒を構成し、この装着筒111には、環状の天壁112と介して外装筒113が一体に設けられている。
【0016】
更に装着筒111には、この装着筒111から起立する上筒部114が一体に設けられている。上筒部114は、装着筒111と同軸に配置され、その内側がステムSを通る内容物の通路となる。
【0017】
符号120は、ジョイント110の上部に配置される押圧ヘッドである。詳細には、押圧ヘッド120は、ジョイント110を上下動可能に収納して使用者が実際に押圧するヘッド本体121を有する。
【0018】
ヘッド本体121は、ジョイント110の上筒部114と摺動可能に嵌合する下筒部121aを有し、更にその内側には、開口部121bを経て下筒部121aに繋がり横向きに延びる空洞部hが形成されている。この空洞部hは、その前方が開口すると共に、その後方が後壁121cにより仕切られた円筒形をなしている。
【0019】
空洞部hは、その前方が開口するため、注出孔Aが形成されたノズル本体122が取り付けられている。これにより、ヘッド本体121内の空洞部hには、ノズル本体122と後壁121cとの間に下筒部121aに繋がる横向き通路121dが形成される。即ち、押圧ヘッド120は、下筒部121aに繋がる横向き通路121dを通って注出孔Aに当該上筒部121aを通じさせる。
【0020】
符号130は、先端131が注出孔Aを封止可能なほぼ円筒形のシャットピンである。本形態において、シャットピン130の先端131は、変形及び復元の可能な弾性材料からなり、注出孔Aの封止を確実なものとする。
【0021】
符号140は、横向き通路121dに沿って摺動するフランジである。詳細には、フランジ140は、シャットピン130を同軸状に取り囲む円筒部141を有し、この円筒部141の後端には、前方に向かって折り返した環状の舌片を構成し、横向き通路121d(空洞部h)の内周部に摺動可能に保持される外周縁142が一体に形成されている。
【0022】
加えて、円筒部141の前端には、シャットピン130の外周部に摺動可能に保持される環状の内周縁143が一体に形成されている。これにより、フランジ140は、シャットピン130の軸線方向に沿って一定の力が付勢されない限り、シャットピン130に対して固定保持され、一定以上の力が付勢されることで始めて、シャットピン130に対して摺動する。
【0023】
符号150は、横向き通路121dの後壁121cとフランジ140との間に介在する弾性部材たるコイルスプリングである。コイルスプリング150は、フランジ140を介してシャットピン130を前方に付勢し、これにより、シャットピン130は、その先端131で注出孔Aを封止する。
【0024】
符号160は、押圧ヘッド120の押し下げによってシャットピン130を後方に移動させて排出孔Aを開放するためのレバーである。
【0025】
詳細には、レバー160は、2つの端部161及び162を有し、互いのなす角度が鈍角をなす略L字形の部材であり、ヘッド本体121の下部に取り付けられた軸受部材Mにより、ピンPを介して揺動可能に保持されている。
【0026】
レバー160の一方の端部(上端部)161には、切欠き161aが形成されている。これにより、レバー160は、切欠き161aにシャットピン130の後端に設けた括れ部130cを挟み込むことで、シャットピン130に連結される。
【0027】
これに対し、レバー160の他方の端部(下端部)162は、図2に示すように、押圧ヘッド120の押し下げによって、ジョイント110の天壁112に接触しつつ、この天壁112を押圧することで、その反力として、当該レバー150をピンPの周りに、その上端部161が後方に倒れ込むように揺動させる。
【0028】
これにより、レバー160は、押圧ヘッド120の押し下げによって、図2に示すように、ジョイント110と接触して当該接触に伴う揺動によりシャットピン130を後方に移動させて注出孔Aを開放する。
【0029】
符号170は、シャットピン130とフランジ140との間に介在するコイルスプリングである。
【0030】
詳細には、コイルスプリング170は、その前端がシャットピン130の前側に設けたリブ132に保持されると共に、その後端がフランジ140の円筒部141と外周縁142とを一体に繋ぐ環状の座部144に保持される。
【0031】
これにより、コイルスプリング170は、フランジ140に加わるコイルスプリング150からの付勢力を相殺し、ノズル100の内圧上昇に従い、この内圧と共にコイルスプリング150からの付勢力に抗して当該フランジ140を後方に移動させる補助弾性部材として機能する。
【0032】
即ち、本発明に従うシャットオフノズル100によれば、シャットピン130のフランジ140と押圧ヘッド120の横向き通路121dの後壁121cとの間にコイルスプリング150を介在させて、シャットピン130の先端部131で注出孔Aを封止するにあたり、このシャットピン130のフランジ140を別体に形成してシャットピン130に沿って摺動可能に保持すると共に、当該フランジ140とシャットピン130との間にコイルスプリング150からの付勢力を相殺し、ノズル100の内圧上昇に従い、この内圧と共にコイルスプリング150からの付勢力に抗して当該フランジ140を後方に移動させるコイルスプリング170を介在させたことで、ノズル100の内圧が上昇しても、図3に示すように、フランジ140が後方に移動してノズル本体122とフランジ140との間の空間R1(横向き通路121d)が増大することにより、ノズル100の内圧上昇を抑制することができる。
【0033】
従って、本発明に従うシャットオフノズル100によれば、使用後、長期に亘り放置したときにノズル100の内圧が上昇しても、ノズル100内に残留した液が注出孔Aから漏れることがない。
【0034】
しかも、本発明に従うシャットオフノズル100によれば、シャットピン130を後方に移動させて内容物の注出を可能とするための系と、ノズル本体122とフランジ140との間の空間R1を増大させてノズル100の内圧上昇を抑制するための系とが、互いに独立した系となる。即ち、本発明に従うシャットオフノズル100によれば、押圧ヘッド120の押下げ動作に起因する本来の注出動作と、押圧ヘッド120の押下げ動作に起因しない液洩れを防止するための動作とを別個独立した機能として確保することができる。
【0035】
ところで、シャットオフノズルは一般に、ジョイント110の上筒部114と、押圧ヘッド120の下筒部121aとの間を、レバー160を揺動させる機能を確保するために、互いに摺動可能に嵌合させている。
【0036】
これに対し、本発明に従うシャットオフノズル100は、図3に示すように、ノズル100の内圧が上昇した状態にあっても、レバー160の下端部162がジョイント110に接触しない位置にある。言い換えれば、この間隔Xは、ノズル100の内圧上昇に従って、その相互間に形成された空間R2を拡大させるための予備摺動量である。
【0037】
即ち、本発明に従うシャットオフノズル100のように、ジョイント110の上筒部114と、押圧ヘッド120の下筒部121aとの相互間に、ノズル100の内圧上昇に従って拡大する空間R2を形成すれば、ジョイント110の上筒部114と、押圧ヘッド120の下筒部121aとの間の摺動量に、ノズル100の内圧上昇に従って空間R2を拡大させるための予備摺動量(間隔X)が含まれる。従って、かかる構成によれば、ジョイント110と押圧ヘッド120との間の摺動によっても、ノズル100の内圧上昇が抑制されるため、液漏れの防止を更に確実なものとすることができる。
【0038】
上述したところは、本発明の好適な形態を示したものであるが、用途に応じて様々に設計変更することができる。例えば、本発明であるシャットオフノズルは、その容器として、同形態のように、エアゾール容器を採用すれば、液漏れの防止に特に有効であるが、エアゾール容器に限らず、ピストンと、吸排弁とで構成された蓄圧ポンプを備える容器にも適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一形態であるシャットオフノズル100の初期状態を側面から示す縦断面図である。
【図2】同形態の注出状態を側面から示す縦断面図である。
【図3】同形態の注出完了後の内圧上昇状態を側面から示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0040】
100 シャットオフノズル
110 ジョイント
111 装着筒(基部)
112 天壁
113 外装筒
114 上筒部
120 押圧ヘッド
121 ヘッド本体
121a 下筒部
121b 開口部
121c 後壁
121d 横向き通路
122 ノズル本体
130 シャットピン
131 シャットピン先端部
130 シャットピン
130c シャットピン後端括れ部
140 フランジ
141 フランジ円筒部
142 フランジ外周縁
143 フランジ内周縁
144 座部
150 コイルスプリング(弾性部材)
160 レバー
161 上端部
161a 切欠き
162 下端部
170 コイルスプリング(補助弾性部材)
A 注出孔
C エアゾール容器
h 空洞部
P 揺動用支承ピン
1 ノズル本体とフランジとの間の空間(横向き通路)
2 ジョイント上筒部と押圧ヘッド下筒部との相互間に形成された空間
S ステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器のステムに繋がる基部を有し当該基部から起立する上筒部がステムを通る内容物の通路となるジョイントと、
このジョイントの上筒部と摺動可能に嵌合する下筒部を有し当該下筒部に繋がる横向き通路を通ってその前方に形成した注出孔に当該上筒部を通じさせる押圧ヘッドと、
この押圧ヘッドの横向き通路に沿って摺動するフランジを有し先端が注出孔を封止可能なシャットピンと、
フランジと横向き通路の後壁との間に介在してシャットピンを前方に付勢して排出孔を封止させる弾性部材と、
押圧ヘッドの押し下げによってジョイントと接触して当該接触に伴う揺動によりシャットピンを後方に移動させて排出孔を開放するレバーとを備えるシャットオフノズルにおいて、
前記フランジをシャットピンと別体に形成し、このシャットピンに沿って摺動可能に保持すると共に、
シャットピンとフランジとの間に、フランジに加わる前記弾性部材からの付勢力を相殺し、ノズルの内圧上昇に従い、この内圧と共に弾性部材からの付勢力に抗して当該フランジを後方に移動させる補助弾性部材を介在させたことを特徴とするシャットオフノズル。
【請求項2】
請求項1において、ジョイントの上筒部と、押圧ヘッドの下筒部との相互間に、ノズルの内圧上昇に従って拡大する空間を形成したことを特徴とするシャットオフノズル。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記容器がエアゾール容器であることを特徴とするシャットオフノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−56375(P2009−56375A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−224752(P2007−224752)
【出願日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】