説明

シャツの前立てに挿して使う衣服内送風機

【課題】衣服内へ送風機で強制的に送風、換気して体温を下げる従来の空調衣服は、送風機と専用の衣服が一体となって機能するよう製品化されている為、寸法が嵩張る、価格が高価である、色やデザインが限定されている、必要に応じて羽織ったり脱いだりする必要がある、空気がシャツの上を流れて、体温を下げる効果が劣る等の欠点があった。
【解決手段】シャツの左右の前立てを、上下に隣り合う2つのボタンで留めることで、前後に重なり合う左右の前立ての間に構成される紡錘状の隙間に勘合する断面を持つ外殻の内部に、シャツの外側からシャツの内側に向けて送風する送風機と駆動用電源を納めると共に、外殻の上部に、脱落防止の為、シャツのボタンに掛けるクリップを設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服内に送風して体温を下げる送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
気温が高い時、衣服内へ強制的に送風して換気すれば、汗の蒸散を促進し、効率的に体温を下げることができる。
従来、衣服内へ強制的に送風して体温を下げる発明としては、服の後身頃に送風機を設けた空調衣服があった。
これは空調設備の無い作業現場用に開発されたもので、空気を通さない布地で作られ、後身頃の左右の脇腹の辺りに取り付けた送風機から衣服内へ送風された空気が襟元や袖口から排気されるもので、空調設備の無い作業現場で体温を下げる目的としては実用上十分であった。
【0003】
しかし、空調衣服という送風機と衣服が一体の方式には、以下のような欠点があった。
寸法的には、携帯、着用、取扱いや収納時に嵩張る。
価格的には、空気を送る送風機本体の他に、送風機本体を着脱する用具、送風用の穴、空気の流路を確保するスペーサ等を備えた専用の衣服が必要な為、高価になる。
外見的には、色やデザインが限定され、職場によってはふさわしくない場合がある。
機能的には、服としてシャツの上に羽織る構造の為、使用する時は羽織り、使用しない時は脱ぐ必要がある、送風した空気はシャツの上を流れ、体温を下げる効率が劣る、内側に空気の流路を確保するスペーサーがあり、後身頃に送風機がある為、椅子に座るデスクワークには不向きである。
【0004】
近年、空調設備がある屋内でも、節電等の観点から室温が高めに設定さたオフィスでは、小型ファン等の局所的空冷装置の需要があるが、色やデザインが限定された専用の衣服をシャツの上に羽織って背中から送風する、送風機と衣服が一体の空調衣服の方式は、寸法面、価格面、外見面、機能面から適当ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許公開2006−132040
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、衣服内へ送風するという目的に対して、空調衣服が、送風機本体だけでは機能せず、送風機本体を着脱する用具、送風用の穴、空気の流路を確保するスペーサ等備えた専用の衣服と一体となって機能する空調衣服として製品化されている為、寸法的に嵩張る点、価格的に高価である点、外見的に色やデザインが限定される点、機能的に使用する度に羽織ったり脱いだりする必要があり、空気がシャツの上を流れる為、体温を下げる効率が劣る等の点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送風機本体を着脱する用具、送風用の穴、空気の流路を確保するスペーサ等を備えた専用の衣服を必要とせず、送風機単体で機能し、オフィス等で装用される通常のシャツに簡単に着脱でき、シャツの下のより皮膚に近い層へ直接送風して効率的に体温を下げることができるよう、シャツの左右の前立てを、上下に隣り合う2つのボタンで留めることで、2つのボタンと前後に重なり合う左右の前立ての間に、左右方向に構成される紡錘状の隙間に、勘合する断面を持つ外殻の内部に、送風機と電源を納め、送風機の吸気側から外殻の一端まで吸気ダクトを配し、先端を吸気口として外殻の外に向けて開口し、送風機の排気側から外殻の他端まで排気ダクトを配し、先端を排気口として外殻の外に向けて開口し、外殻の表面に脱落を防止する為の突起部として、シャツに留めるクリップを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の、シャツの前立てに挿して使う衣服内送風機は、送風機本体を着脱する用具、送風用の穴、空気の流路を確保するスペーサを備えた専用の衣服を必要としない為、携帯、着用、取扱い、収納に適した小型軽量かつ安価であり、使用する度に着替える必要がなく、通常のシャツのままで左右の前立ての上下に並ぶ2つのボタンの間に、本発明のシャツの前立てに挿して使う衣服内送風機を挿し込んで、上のボタンにクリップを掛けるだけで手軽に装着でき、外見上の違和感がなく、外殻が、左右の前立ての間の紡錘状の隙間に勘合する為、送風した空気は前立ての間からほとんど逆流せず、シャツの内側を通り、汗の蒸散を促進して体温を下げ、襟元や袖口から排気される。
さらに、左右の前立ての間に挿し込んで装着することで、外殻の厚み分だけ前立てが膨んで、シャツと体の間に自然に空間が生まれ、その空間へ送風する為、空気の流路を作るスペーサ等が無くとも、送風された空気はシャツの内部を通って襟元や袖口から排気される。
同時に、送風によりシャツ内の気圧が上がってシャツが膨らみ、左右の前立ての他の部分は密着し、スペーサが無くともシャツと体の間に空気の流路が形成される。
シャツの下のより皮膚に近い層へ直接送風する為、効率的に汗を蒸散させ、体温を下げることができる。
送風機をシャツの左右の前立ての間にほぼ隠れる形で挿し込んで装着する為、装着しても目立たず、体の前面に装着する為、背もたれのある椅子に座るデスクワークでも違和感なく利用できる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】シャツの前立てに挿して使う衣服内送風機を、シャツ左右の前立ての間へ装着したイメージ図である。
【図2】シャツの前立てに挿して使う衣服内送風機の外殻の一部をカットした内部構造の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図2は、1実施例の外殻の一部をカットした内部構造の斜視図であって、シャツの左右の前立てを、上下に隣り合う2つのボタンで留めることで、2つのボタンと前後に重なり合う左右の前立ての間に構成される紡錘状の隙間に勘合する断面を持つ外殻1の内部に、モータ2及びモータ2に取り付けられたファン3から成る送風機と、モータ2を駆動する電源4と、モータ2を起動、停止させるスイッチ5と、ファン3の吸気側から外殻1の一端に開口した吸気口6に通じる吸気ダクト7と、ファン3の排気側から外殻1の他端に開口した排気口8に通じる排気ダクト9を配することで、外殻1の紡錘状の隙間に勘合する断面と直行する方向、つまり本装置を前立てに挿し込む方向によって異なるが、シャツの前立ての左右方向に強制的に空気を送る構造とし、外殻1の上部に、脱落を防止する為の突起部として、シャツのボタンに掛かるクリップ10を、ピン11で揺動可能に設け、クリップ末端12の動きをスイッチ5に連携させたものである。
クリップをボタンに掛けるとは、クリップをボタンとボタンが縫い付けてある前立ての間に掛けることである。
図は、原理の説明を主目的にしており、部品相互の位置や大きさは一部誇張、省略している。
【0011】
外殻1の寸法については、本装置を挿し込むシャツの上下のボタンのピッチは、Yシャツからカジュアルシャツまで一般的に寸法は近いが、ピッチの異なる服への対応としては、大きさの異なる外殻1の製品を提供する、外殻1の上に被せて、外形を調整するアダプターを別に提供する、本装置をシャツの前立てに装着した状態から見て、外殻1を上下に分割し、上下の外殻が中央のマージン部分で噛み合い、相互が上下にスライドする伸縮自在な構造にして、装着時に外殻の上下幅をボタンのピッチに合わせる、外殻1の下部にゴムやスポンジやブラシのような柔らかい可塑性の部分を設ける等の方法がある。
外殻1の上部に脱落防止用の突起部であるクリップ10を設けると共に、下部に左右いずれか一方、できれば双方の前立てに留めるクリップを別に設けることで、ボタンのピッチが広いシャツでも外殻1の下の部分からの空気漏れを抑えて使用することもできる。
又、外殻1の先端側は丸みを帯びて前立てへの挿入を容易にしている。
【0012】
ファン3の形状は、図面では外殻1に馴染む薄さと風圧を得るためシロッコファンとしているが、ターボファン、プロペラファン等、送風機能があれば良く、シロッコファンに限定されない。
【0013】
電源4は電池を想定しているが、電源であれば乾電池に限定されず、充電できるものでも良く、本体に内蔵せず、ポケット等にいれた携帯できる電池ボックスからコードで給電する方法でも良い。
デスクワークを前提にすれば、パソコンのUSBや100Vからの変換アダプターによるコード供給とすれば、電池交換の必要も無く、電圧も上がり、より送風性能、体温冷却機能が高まる。外部電源専用とすれば、重量が軽くなり装用感も軽減される。
この時、先端が磁石で着脱できるコネクタ方式にすることで、着脱が簡単なスイッチとなり、不意に立ち上がった時に容易に外れる等のメリットがある。
その場合、コード電源専用にする、コードの着脱による電源4とコード電源の自動切り換えにする、コードを接続すると、コード電源で送風しつつ電源4に充電して、コードが外れると電源4に切り換わるようにする等、各種の方式が可能である。
【0014】
スイッチ5は、ボタンやトグルを外殻1の表面に出して、手動で操作することも可能であるが、クリップ10の動きに連携させることで、シャツへの着脱によって自動的に起動、停止させることができる。
又、単なる断続スイッチでなく、段階的、又は連続的にモータ2の回転数を制御する機能を付加することで、気温に合わせた送風量を選ぶこともできる。
尚、スイッチ5は揺動可能に設けたクリップ10の戻り力を付勢するバネを兼ねている。
【0015】
クリップ10は、送風機を衣服に留める為の脱落防止用突起部であり、基本であるシャツの上のボタンに掛ける方法は、クリップ10と外殻1の上部の間でボタンを挟んで、本装着を安定させるものであるが、外殻1の上部に2つの上方向への突起を設け、その間にボタンを挟む方法もある、これは外殻1の上部とクリップでボタンを挟む方法を半時計方向に90度回転させたものであるが、同時に外殻1の下部にひとつの突起を設け、下のボタンに当たるようにすることでより安定する、この方法は突起の位置を上下逆転しても同じである。
又、ボタン以外に、クリップ10をシャツの前立て、袖口、襟元に留める等、本装置を衣服の隙間から衣服内に向けて装着する方法でより幅広い衣服に利用できる。
その他に、広義の突起部としてネックストラップで首から吊るす等の脱落防止方法も可能であり、首から吊るす場合、前立ての間に差し込む方法の他に、吸気口を上に、排気口を下に向けることで、本装置を前立てのボタンの間に挿し込む方法に比べて効率は落ちるが、前立ての無いシャツでも襟元からシャツの内部に空気を送り込むことができる。
【0016】
本装置の利用法としては、前立てのあるシャツを装用した状態で暑さを感じた時に、本発明のシャツの前立てに挿して使う衣服内送風機を、装用しているシャツの左右の前立ての間、かつ上下に隣り合う2つのボタンの間に横から挿し込み、クリップを上のボタンに掛けるだけで、本装置がシャツの左右の前立ての間に勘合固定されると共にスイッチが入って送風機が起動し、外殻の一端に開口した吸気口から吸入された空気が、シャツの内側に挿し込まれた外殻の他端に開口した排気口からシャツの下の皮膚に近い層に直接送風され、シャツの内部を通って汗を蒸散させ、体から気化熱を奪って効率的に体温を下げ、襟元や袖口から排気される。
本装置をシャツの左右の前立ての間に差し込むことで、その厚みによって前立てが膨らみ、体の前面とシャツの間に空間ができ、専用のスペーサ等が無くても、シャツの内部に空気の流路が確保される。
シャツへの装着位置は、図1ではわかりやすく、胸の位置に書かれているが、実際にはベルトラインの上あたりに装着すると、重量が首ではなくベルトにかかり、装用感がより軽くなり、襟元や袖口までの空気の流路が長くなるのでより効率的である。
襟元は空気が抜けやすいのでボタンを留めて、袖口から排気するほうがより効率的に体温を下げることができる。
【符号の説明】
【0017】
1 外殻
2 モータ
3 ファン
4 電源
5 スイッチ
6 吸気口
7 吸気ダクト
8 排気口
9 排気ダクト
10 クリップ
11 ピン
12 クリップ末端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口から吸入した空気を排気口から排出する送風機において、
シャツの左右の前立てを、上下の2つのボタンで留めることで、前記2つのボタンと、前後に重なり合う前記左右の前立ての間に構成される紡錘状の隙間に勘合する形状の外殻を備え、
前記吸気口を前記外殻の一端に開口し、
前記排気口を前記外殻の他端に開口すると共に、
前記外殻の表面に脱落を防止する為の突起部を有することを特徴とする、
シャツの前立てに挿して使う衣服内送風機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−2018(P2013−2018A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135784(P2011−135784)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(591184596)
【Fターム(参考)】