説明

シャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具

【課題】非常に簡単な構造で半袖の袖先も乾燥させることができる。
【解決手段】人形胴2に被せた半袖シャツ1の袖部に挿入させる半袖緊張具10と、半袖緊張具10を所定の姿勢に保持すると共に半袖シャツ1に挿入された半袖緊張具10に張力を付与する半袖姿勢保持具30とからなる。半袖緊張具10は、半袖姿勢保持具30が係合する係合部12と、係合部12より伸び半袖シャツ1の袖部の上部及び下部を弾性力によって緊張させる上側部13a及び下側部13bが形成され、半袖姿勢保持具30は、支持板31に回転自在に設けられ、半袖緊張具10の係合部12に係合する保持レバー33と、保持レバー33を人形胴2から離れる方向に引っ張る引っ張りばね34とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
シャツ仕上げ機は、洗濯されたワイシャツ等のシャツを人体の上半身形状を模した人形胴に着せた状態で、熱風やプレス鏝で皺を除去できるように形成されている。かかるシャツ仕上げ機は、半袖シャツも仕上げできることが好ましい。従来、長袖シャツ仕上げ機に半袖シャツ用治具を取付けたものとして、例えば特許文献1が挙げられる。
【特許文献1】特開2003−24699号公報
【0003】
特許文献1は、次のような構成よりなっている。シャツを着せるための人形胴と、この人形胴の前後を押圧してシャツをプレス仕上げするための前後一対のプレス鏝と、前記人形胴の両側に設けられた左右一対の支持腕とを備えている。そして、この支持腕の上部には、シャツの袖先が差し込まれてセットされるアイロン台と、長袖シャツのタック及びカフスをプレス仕上げするための熱鏝とが設けられ、シャツの袖内に熱風が供給されて緊張仕上げされる。この構成により長袖シャツを仕上げることができる。
また半袖シャツも仕上げできるように、前記支持腕の上部には、半袖シャツの袖先を挟み付けて固定するためのクランプ装置が設けられ、このクランプ装置を備えた支持腕の上部を回動させて人形胴の側部にクランプ装置を対向状に配置させるための回動装置が支持腕に設けられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術は、半袖シャツの袖先を両側からクランプ装置の挟持部材で挟み付ける。このため袖先は閉じられて熱風が通らなく、袖先が乾燥しない。そこで、袖先を予めプレスしておくか、またはシャツ仕上げ機で半袖シャツをプレス仕上げした後に袖先をプレスする必要があった。またクランプ装置は、一対の挟持部材と、この挟持部材を開閉させる開閉手段とからなり、更にクランプ装置を人形胴の側部に配置させるための回動装置を必要とし、構造が複雑となった。
【0005】
本発明の課題は、非常に簡単な構造で半袖の袖先も乾燥させることができるシャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の請求項1は、人形胴に被せた半袖シャツの袖部に挿入させる半袖緊張具と、この半袖緊張具を所定の姿勢に保持すると共に半袖シャツに挿入された半袖緊張具に張力を付与する半袖姿勢保持具とからなり、前記半袖緊張具は、前記半袖姿勢保持具が係合する係合部と、この係合部より伸び半袖シャツの袖部の上部及び下部を弾性力によって緊張させる上側部及び下側部が形成され、前記半袖姿勢保持具は、支持板に回転自在に設けられ、前記半袖緊張具の係合部に係合する保持レバーと、この保持レバーを前記人形胴から離れる方向に引っ張る引っ張りばねとからなることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するための本発明の請求項2は、前記請求項1において、前記半袖姿勢保持具は、シャツ仕上げ機の人形胴の両側に設けられたアイロン台を支持する支持腕に設けられていることを特徴とする。
【0008】
上記課題を解決するための本発明の請求項3は、前記請求項1において、前記半袖緊張具の前記上側部の半袖挿入部は、下側部の半袖挿入部より長く形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1によれば、半袖シャツの袖部は半袖緊張具で外側に緊張され、また外側に一定の姿勢を保って保持されており、袖先は開放した状態にあるので、熱風は袖先より外部に逃げる。これにより、袖先で乾燥仕上げされる。また半袖シャツ用治具は、半袖緊張具と半袖姿勢保持具の保持レバー、引っ張りばねよりなる非常に簡単な構成よりなるので、安価な装置が得られる。また請求項3によれば、上側部の半袖挿入部は、下側部の半袖挿入部より長く形成されているので、半袖を最良な状態に緊張させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のシャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具の一実施の形態を図1乃至図4により説明する。長袖シャツ又は半袖シャツ1を着せるための人形胴2の両側の左右には、長袖シャツの袖先に差し込まれてセットされるアイロン台3が配設されており、アイロン台3は支持腕4に固定されている。なお、図示しないが、支持腕4は従来と同様に、人形胴2の両側に左右一対設けられ、支持腕4の上部には、アイロン台3と長袖シャツのタック及びカフスをプレス仕上げするための熱鏝とが設けられている。また人形胴2の前後には、シャツをプレス仕上げする前後一対のプレス鏝が設けられている。
【0011】
半袖シャツ用治具は、半袖シャツ1の袖先に差し込まれる半袖緊張具10と、この半袖緊張具10を所定の姿勢に保持すると共に半袖シャツ1の袖部にセットして該袖部に張力を付与する半袖姿勢保持具30とならなっている。
【0012】
半袖緊張具10は、図4に示すように、スプリング線11と、このスプリング線11に装着された樹脂チューブ20とからなっれいる。半袖緊張具10は、輪状に形成された係合部12と、この係合部12の一端より伸びて半袖シャツ1の上側に挿入される上側部13aと、係合部12の他端より伸びて半袖シャツ1の下側に挿入される下側部13bとから形成されている。上側部13a及び下側部13bは、係合部12の両端より外側に開く方向に伸びたつまみ部14、14と、このつまみ部14、14より上下に伸びた外側伸長部15、15と、この外側伸長部15、15より外側に開く方向に伸びた半袖挿入部16a、16bと、この半袖挿入部16a、16bより内側方向に僅かに伸びた挿入先部17a、17bとからなっている。ここで、上側部13aの半袖挿入部16aは、下側部13bの半袖挿入部16bより長く形成され、上側部13aの上方部18aと下側部13bの下方部18bの長さHは、半袖シャツ1の袖部内側幅より長く形成されている。
【0013】
半袖姿勢保持具30は、図2及び図3に示すように、次のような構成よりなっている。支持腕4には、支持板31が固定されており、支持板31には、支軸32を介して保持レバー33の一端部が回転自在に支承されている。保持レバー33の他端には、半袖緊張具10の係合部12に係合する係合部33aが人形胴2の反対側の面、即ちアイロン台3側に形成されている。半袖緊張具10を人形胴2から離れた側に引っ張るために、支持板31と保持レバー33には引っ張りばね34が掛けられている。また支持板31には、保持レバー33の回動位置、即ちセット位置を規制するためのストッパー35と解除位置を規制するためのストッパー36とが固定されている。
【0014】
次に作用について説明する。保持レバー33は、常時2点鎖線で示すように、アイロン台3の前方から離れた状態にある。即ち、長袖シャツのプレス仕上げに支障しない位置となっている。半袖シャツ1をプレス仕上げする場合には、まず、人形胴2に半袖シャツ1を着せる。そして、半袖緊張具10のつまみ部14、14又は半袖挿入部16a、16bをつまんで押し、上方部18aと下方部18bの長さHを半袖の袖先きより短くして半袖挿入部16a、16bを半袖シャツ1の袖部に差し込む。そして、指を離すと、半袖挿入部16a、16bは弾性復帰して半袖シャツ1の袖部を上下に拡げて緊張させる。
【0015】
そして、2点鎖線の状態にある保持レバー33を回動させ、該保持レバー33の係合部33aを半袖緊張具10の係合部12に係合させる。この場合、係合部12の半袖挿入部16a、16bが引っ張りばね34の張力で半袖シャツ1の袖部を外側に引っ張るように半袖緊張具10の半袖シャツ1に対する位置を調整して保持レバー33の係合部33aを半袖緊張具10の係合部12に係合させる。これにより、半袖シャツ1の袖部は半袖緊張具10で外側に緊張され、また外側に一定の姿勢を保って保持される。
【0016】
その後、人形胴2を通して半袖シャツ1の袖内に熱風が供給される。これにより、半袖シャツ1の袖が膨張して乾燥仕上げされる。この場合、袖先は開放した状態にあるので、熱風は袖先より外部に逃げる。これにより、袖先まで乾燥仕上げされる。また図示しないプレス鏝が人形胴2を押圧し、半袖シャツ1の前側と後側がプレス仕上げされる。半袖シャツ1のプレス仕上げ後は、保持レバー33を2点鎖線で示すように回動させて保持レバー33の係合部33aを半袖緊張具10より離す。これにより、保持レバー33は長袖シャツの場合に邪魔にならない位置となる。そして、半袖緊張具10のつまみ部14、14を指でおして半袖挿入部16a、16bを縮めて半袖緊張具10を半袖シャツ1より外す。これにより、一連の工程が終了する。
【0017】
このように、半袖シャツ1の袖部は半袖緊張具10で外側に緊張され、また外側に一定の姿勢を保って保持されており、袖先は開放した状態にあるので、熱風は袖先より外部に逃げる。これにより、袖先で乾燥仕上げされる。また半袖シャツ用治具5は、半袖緊張具10と半袖姿勢保持具30の保持レバー33、引っ張りばね34よりなる非常に簡単な構成よりなるので、安価な装置が得られる。また上側部13aの半袖挿入部16aは、下側部13bの半袖挿入部16bより長く形成されているので、半袖を最良な状態に緊張させることができる。
【0018】
なお、上記実施の形態においては、半袖姿勢保持具30をアイロン台3が設けられた支持腕4に設けたが、特に設ける場所は限定されなく、例えばシャツ仕上げ機の固定位置に半袖姿勢保持具30を取付ける取付け部を設けてもよい。しかし、アイロン台3を設けた支持腕4に設けた方が、余分な部材を必要としなく好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の半袖シャツ用治具を設けたシャツ仕上げ機の一実施の形態の要部を示し、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図2】図1の要部拡大正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】半袖緊張具の拡大正面面である。
【符号の説明】
【0020】
1 半袖シャツ
2 人形胴
3 アイロン台
4 支持腕
10 半袖緊張具
11 スプリング線
12 係合部
13a 上側部
13b 下側部
14 つまみ部
15 外側伸長部
16a、16b 半袖挿入部
20 樹脂チューブ
30 半袖姿勢保持具
32 支軸
33 保持レバー
34 引っ張りばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人形胴に被せた半袖シャツの袖部に挿入させる半袖緊張具と、この半袖緊張具を所定の姿勢に保持すると共に半袖シャツに挿入された半袖緊張具に張力を付与する半袖姿勢保持具とからなり、前記半袖緊張具は、前記半袖姿勢保持具が係合する係合部と、この係合部より伸び半袖シャツの袖部の上部及び下部を弾性力によって緊張させる上側部及び下側部が形成され、前記半袖姿勢保持具は、支持板に回転自在に設けられ、前記半袖緊張具の係合部に係合する保持レバーと、この保持レバーを前記人形胴から離れる方向に引っ張る引っ張りばねとからなることを特徴とするシャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具。
【請求項2】
前記半袖姿勢保持具は、シャツ仕上げ機の人形胴の両側に設けられたアイロン台を支持する支持腕に設けられていることを特徴とする請求項1記載のシャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具。
【請求項3】
前記半袖緊張具の前記上側部の半袖挿入部は、下側部の半袖挿入部より長く形成されていることを特徴とする請求項1記載のシャツ仕上げ機に用いる半袖シャツ用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−229357(P2007−229357A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−57453(P2006−57453)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(591035209)ワイエイシイ株式会社 (15)