説明

シャペロニン10変異体

本発明は、一般に、シャペロニン10N末端変異体に関する。より詳細には、本発明は、病原体関連分子パターン(PAMP)および/または損傷関連分子パターン(DAMP)に対する増強された免疫調節能および/または増大した結合親和性を有するシャペロニン10N末端変異体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照による援用
本願は、2009年10月9日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2009904956号明細書からの優先権を主張し、その内容全体は、相互参照により本明細書中に援用される。
【0002】
本発明は、一般に、シャペロニン10N末端変異体に関する。より詳細には、本発明は、病原体関連分子パターン(PAMP)および/または損傷関連分子パターン(DAMP)に対する増強された免疫調節能および/または増大した結合親和性を有するシャペロニン10N末端変異体に関する。
【背景技術】
【0003】
シャペロニン10(Cpn10)は、初期妊娠因子(EPF)および熱ショックタンパク質10(Hsp10;HSPE1)としても既知であり、細胞タンパク質のフォールディングを促進する分子シャペロンとして機能する。特に、Cpn10は、多様な細胞種のミトコンドリア内でシャペロニン60(Cpn60)と複合体を形成することが示されている。この複合体は、ミトコンドリア内に輸入されるポリペプチドのフォールディングに関与し、ペプチド凝集を阻止し、変性タンパク質を再活性化する。
【0004】
Cpn10は、タンパク質フォールディングにおけるその役割に加え、多数の他の細胞プロセスに関与すると考えられる。例えば、Cpn10がパターン認識受容体(PRR)に関連した生物学的活性を調節することが示唆されている。PRRは、「PAMP」(病原体関連分子パターン)として既知の病原性微生物に由来する特定のリガンド(例えば、リポペプチド、糖脂質、核酸)および/または「DAMP」(損傷関連分子パターン)と称される宿主由来リガンド(例えば、ヌクレオチド、ヌクレオシド、DNA、タンパク質)の認識時に、免疫応答を開始させ、駆動することに関与する。例えば、PAMPの、食細胞(例えばマクロファージ)によって発現されるPRRへの結合は、細胞によるエンドサイトーシスおよび病原体の破壊を促進することが示されている。PAMP/DAMPのPRRへの結合はまた、様々な免疫細胞(例えば、マクロファージ、Bリンパ球および樹状細胞)内での細胞シグナルカスケードを開始させ、炎症性メディエーター(例えば、サイトカイン、ケモカイン、反応性酸素種など)の産生および分泌に至る。
最近のデータによると、Cpn10が、PRRシグナル伝達によって誘発される炎症性分子の産生および分泌を下方制御することが示唆される。Cpn10はまた、抗炎症性分子のPRR媒介性の産生および分泌の正の調節に関与している。Cpn10のPRRシグナル伝達に対する調節能は、免疫系の活性化に関連した種々の疾患および障害(例えば炎症性疾患)を処置する手段を提供する。例えば、Cpn10の投与を用い、PRRシグナル伝達を開始させることに関与するリガンドを封鎖することが可能である。次いで、これは、炎症性メディエーターの産生および放出を抑制し、それ故、免疫活性化および炎症を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】オーストラリア仮特許出願第2009904956号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Cpn10の、免疫活性化のサプレッサーとしての同定にもかかわらず、炎症性疾患および症状を予防および/または処置するための改善された作用剤に対する需要がある。望ましくは、かかる作用剤は、PRRリガンドに増大した親和性で結合でき、それにより、PRRシグナル伝達によって媒介される炎症性分子の産生および分泌を阻害することになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中で示されるように、Cpn10ポリペプチドのN末端ドメインに対する特定の変化は、PAMPおよびDAMPへの結合を促進することが見出されている。次いで、これは、Cpn10変異体の免疫抑制能と、特にPRRシグナル伝達によって誘発される炎症性メディエーターの産生および放出に対するその効果を促進するものと考えられる。
【0008】
第1の態様では、本発明は、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を共有し、かつ前記野生型ポリペプチドに比べて、少なくとも2つの追加的なアミノ酸残基によって伸長されたN末端を含む、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドを提供する。
【0009】
第1の態様の一実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を共有する。
【0010】
第1の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0011】
第1の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも95%の配列同一性を共有する。第1の態様の一実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドに比べて、免疫調節機能が増強している。
【0012】
第1の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、病原体関連分子パターン(PAMP)に対する結合親和性が、野生型Cpn10のPAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0013】
第1の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、損傷関連分子パターン(DAMP)に対する結合親和性が、野生型Cpn10のDAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0014】
第1の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、Ala−Cpn10(配列番号3)に比べて、免疫調節機能が増強している。
【0015】
第1の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、病原体関連分子パターン(PAMP)に対する結合親和性が、Ala−Cpn10(配列番号3)のPAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0016】
第1の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、損傷関連分子パターン(DAMP)に対する結合親和性が、Ala−Cpn10(配列番号3)のDAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0017】
第1の態様の一実施形態では、PAMPは、CpGモチーフを含む。
【0018】
第1の態様の一実施形態では、PAMPは、細菌DNAである。
【0019】
第1の態様の一実施形態では、細菌DNAは、CpGモチーフを含む。
【0020】
第1の態様の一実施形態では、PAMPは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドモチーフ(CpG ODN)を含むオリゴヌクレオチドである。
【0021】
第1の態様の一実施形態では、CpG ODNモチーフは、CpGA、CpGBおよび/またはCpGCの任意の1つもしくは複数である。
【0022】
第1の態様の一実施形態では、野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるヒト野生型Cpn10ポリペプチドである。
【0023】
第1の態様の一実施形態では、単離ポリペプチドのN末端は、メチオニン残基から開始する。メチオニン残基は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基に先行しうる。
【0024】
第1の態様の一実施形態では、単離ポリペプチドは、配列番号9、12、15、18、24、26、29、32、38、41、44、47、49、78、90、もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む。
【0025】
第1の態様の別の実施形態では、単離ポリペプチドは、配列番号52、55、58、60、81、84、87、もしくは96のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
第1の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、GSM−Cpn10(配列番号57)ではない。
【0027】
第2の態様では、本発明は、第1の態様の単離ポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。
【0028】
第2の態様の一実施形態では、単離核酸は、配列番号10、13、14、16、17、19、20、25、27、28、30、31、33、34、39、40、42、43、45、46、48、50、51、91、92、94、もしくは95のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む。
【0029】
第2の態様の一実施形態では、単離核酸は、配列番号53、54、56、57、59、61、62、82、83、85、86、88、89、97、もしくは98のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む。
【0030】
第3の態様では、本発明は、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を共有し、かつ前記野生型ポリペプチドに比べて、1つの追加的なアミノ酸残基によって伸長されたN末端を含む、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドを提供する。
【0031】
第3の態様の一実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも80%の配列同一性を共有する。
【0032】
第3の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも90%の配列同一性を共有する。
【0033】
第3の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも95%の配列同一性を共有する。
【0034】
第3の態様の一実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチドに比べて、免疫調節機能が増強している。
【0035】
第3の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、病原体関連分子パターン(PAMP)に対する結合親和性が、野生型Cpn10のPAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0036】
第3の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、損傷関連分子パターン(DAMP)に対する結合親和性が、野生型Cpn10のDAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0037】
第3の態様の別の実施形態では、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチドは、Ala−Cpn10(配列番号3)に比べて、免疫調節機能が増強している。
【0038】
第3の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、病原体関連分子パターン(PAMP)に対する結合親和性が、Ala−Cpn10(配列番号3)のPAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0039】
第3の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、損傷関連分子パターン(DAMP)に対する結合親和性が、Ala−Cpn10(配列番号3)のDAMPに対する結合親和性に比べて増大している。
【0040】
第3の態様の一実施形態では、PAMPは、CpGモチーフを含む。
【0041】
第3の態様の一実施形態では、PAMPは、細菌DNAである。
【0042】
第3の態様の一実施形態では、細菌DNAは、CpGモチーフを含む。
【0043】
第3の態様の一実施形態では、PAMPは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドモチーフ(CpG ODN)を含むオリゴヌクレオチドである。
【0044】
第3の態様の一実施形態では、CpG ODNモチーフは、CpGA、CpGBおよび/またはCpGCの任意の1つもしくは複数である。
【0045】
第3の態様の一実施形態では、野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるヒト野生型Cpn10ポリペプチドである。
【0046】
第3の態様の一実施形態では、追加的なアミノ酸残基は、セリンまたはプロリン残基である。
【0047】
第3の態様の別の実施形態では、追加的なアミノ酸残基は、バリン、ロイシン、イソロイシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、トレオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸またはグルタミン残基である。
【0048】
第3の態様の一実施形態では、単離ポリペプチドは、配列番号21または35で示されるアミノ酸配列を含む。
【0049】
第3の態様の別の実施形態では、単離ポリペプチドは、配列番号63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、もしくは75で示されるアミノ酸配列を含む。
【0050】
第3の態様の一実施形態では、変異ポリペプチドは、Ala−Cpn10(配列番号3)またはGly−Cpn10(配列番号6)ではない。
【0051】
第4の態様では、本発明は、第3の態様の単離ポリペプチドをコードする単離核酸を提供する。
【0052】
第4の態様の一実施形態では、単離核酸は、配列番号7、8、22、23、36、もしくは37のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む。
【0053】
第5の態様では、本発明は、第2または第4の態様の単離核酸を含むベクターを提供する。
【0054】
第6の態様では、本発明は、第5の態様のベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0055】
第7の態様では、本発明は、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター
の任意の1つもしくは複数を含む組成物を提供する。
【0056】
第7の態様の一実施形態では、組成物は、医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む。
【0057】
第8の態様では、本発明は、対象における免疫活性化を抑制するための方法であって、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター、
(d)第7の態様の組成物
を治療有効量で対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0058】
第9の態様では、本発明は、対象における炎症性疾患を予防または処置するための方法であって、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター、
(d)第7の態様の組成物
を治療有効量で対象に投与するステップを含む、方法を提供する。
【0059】
第9の態様の一実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)、慢性疲労症候群、アルツハイマー、グレーブス病、変形性関節症、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性神経炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、自己免疫性ぶどう膜炎、乾癬、シェーグレン病、サルコイドーシス、皮膚筋炎、白血球破砕性血管炎、重症筋無力症、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛および多発性筋炎慢性閉塞性肺疾患(COPD)、感染性疾患、リーキーガット症候群、心血管疾患(例えば、鬱血性心疾患)、アレルギー(例えば、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)およびアテローム硬化症、ならびに感染性疾患からなる群から選択される。
【0060】
第10の態様では、本発明は、免疫抑制剤についてスクリーニングする方法であって、
(a)第2または第4の態様の単離核酸を候補作用剤と、前記候補作用剤と前記核酸との間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、
(b)前記核酸によってコードされるポリペプチドの生成を測定するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0061】
第11の態様では、本発明は、免疫抑制剤についてスクリーニングする方法であって、
(a)パターン認識受容体(PRR)を発現する免疫細胞
(b)前記PRRに対するリガンド、および
(c)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
を含む混合物を候補作用剤と、前記候補作用剤と前記ポリペプチドとの間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、前記免疫細胞内での前記ポリペプチドによって誘発されるPRR媒介性の細胞シグナル伝達のレベルを検出するステップと、
を含む、方法を提供する。
【0062】
第11の態様の一実施形態では、検出ステップは、
(a)前記免疫細胞によるサイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を測定するステップ、
(b)前記免疫細胞による活性化マーカーの発現を測定するステップ、
(c)前記免疫細胞内でのtoll様受容体媒介性のNF−κB活性化を検出するステップ
のうちの任意の1つもしくは複数によって実施される。
【0063】
第12の態様では、本発明は、対象における免疫活性化を抑制するための薬剤の調製における、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター、
(d)第7の態様の組成物、
のうちの任意の1つもしくは複数の使用を提供する。
【0064】
第13の態様では、本発明は、対象における炎症性疾患を予防または処置するための薬剤の調製における、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター、
(d)第7の態様の組成物、
のうちの任意の1つもしくは複数の使用を提供する。
【0065】
第14の態様では、本発明は、対象における炎症性疾患を予防または処置する場合の使用における、
(a)第1または第3の態様の単離ポリペプチド、
(b)第2または第4の態様の単離核酸、
(c)第5の態様のベクター、
(d)第7の態様の組成物、
のうちの任意の1つもしくは複数を提供する。
【0066】
第13の態様または第14の態様の一実施形態では、炎症性疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)、慢性疲労症候群、アルツハイマー、グレーブス病、変形性関節症、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性神経炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、自己免疫性ぶどう膜炎、乾癬、シェーグレン病、サルコイドーシス、皮膚筋炎、白血球破砕性血管炎、重症筋無力症、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛および多発性筋炎慢性閉塞性肺疾患(COPD)、感染性疾患、リーキーガット症候群、心血管疾患(例えば、鬱血性心疾患)、アレルギー(例えば、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)およびアテローム硬化症、ならびに感染性疾患、からなる群から選択される。
【0067】
本発明の好ましい実施形態は、ここではあくまで例として、添付の図面との関連で述べられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ヒトCpn10および大腸菌(E.coli)GroESアミノ酸配列および対応する構造ドメインの境界のアラインメントを示す。
【図2A】様々なCpn10N末端変異体のCpG ODNリガンドへの結合の度合いを示すグラフである。結果は、所与のCpG ODNリガンド(すなわちCpG−A、CpG−BまたはCpG−C)に結合するアラニン−Cpn10(Ala−Cpn10)のパーセントとして表される。
【図2B】様々なCpn10N末端変異体のCpG ODNリガンドへの結合の度合いを示すグラフである。結果は、所与のCpG ODNリガンド(すなわちCpG−A、CpG−BまたはCpG−C)に結合するアラニン−Cpn10(Ala−Cpn10)のパーセントとして表される。
【図2C】様々なCpn10N末端変異体のCpG ODNリガンドへの結合の度合いを示すグラフである。結果は、所与のCpG ODNリガンド(すなわちCpG−A、CpG−BまたはCpG−C)に結合するアラニン−Cpn10(Ala−Cpn10)のパーセントとして表される。
【図3】生成される組換えCpn10タンパク質の純度を示す、代表的なSDS−PAGE電気泳動図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
定義
単数形「a」、「an」および「the」は、本願中で使用される場合、文脈によって他に明示されない限り、複数の参照物を含む。例えば、用語「細胞(a cell)」はまた、複数の細胞を含む。
【0070】
用語「含む(comprising)」は、本明細書中で使用される場合、「含む(including)」を意味する。用語「含む(comprising)」の変形、例えば、「含む(comprise)」および「含む(comprises)」は、それに対応して多様な意味を有する。したがって、例えば、タンパク質をコードする配列を「含む(comprising)」ポリヌクレオチドは、排他的にその配列からなるかまたは1つもしくは複数の追加的な配列を含んでもよい。
【0071】
「作用剤」は、本明細書中で使用される場合、その範囲内に、任意の天然または作製された成分または化合物を含む。したがって、同用語は、限定はされないが、任意の化学成分および化合物、核酸、アミノ酸、ポリペプチド、タンパク質、抗体および抗体の断片、ならびに本発明との関連で適切でありうる他の物質を含む。
【0072】
用語「投与する(administering)」ならびに「投与する(administer)」および「投与(administration)」を含むその用語の変形は、本明細書中で使用される場合、任意の適切な手段により、化合物(例えば、核酸、ポリペプチドまたは抗体)または本発明の組成物を生物に、接触させるか、適用するか、送達するか、または提供することを含む。
【0073】
用語「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」は、本明細書中で使用される場合、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む)、IgA(IgA1およびIgA2を含む)、IgD、IgE、またはIgM、およびIgY、全抗体(一本鎖全抗体を含む)、ならびにそれらの抗原結合断片、を含む。抗原結合抗体断片は、限定はされないが、Fab、Fab'およびF(ab')2、Fd、一本鎖Fvs(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fvs(sdFv)、ならびにVLもしくはVHドメインのいずれかを含む断片を含む。抗体は、任意の動物に由来してもよい。一本鎖抗体を含む抗原結合抗体断片は、可変領域を、単独で、または、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインの全体もしくは一部と併せて含んでもよい。また、可変領域と、ヒンジ領域、CH1、CH2、およびCH3ドメインとの任意の組み合わせが含まれる。抗体は、生物学的分子に特異的に結合する、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ、多重特異性、ヒト化、ならびにヒトモノクローナルおよびポリクローナル抗体であってもよい。
【0074】
用語「核酸」は、本明細書中で使用される場合、一本鎖または二本鎖形態のいずれかでのデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを示し、かつ、他に限定されない限り、天然ヌクレオチドと同様に核酸にハイブリダイズする、天然ヌクレオチドの既知の類似体を包含する。
【0075】
用語「ポリペプチド」は、本明細書中で使用される場合、ペプチド結合によって互いに結合されるアミノ酸で構成されるポリマーを意味する。本発明の目的のため、「ポリペプチド」は、完全長タンパク質または完全長タンパク質の一部を構成しうる。
【0076】
用語「処置」は、本明細書中で使用される場合、病状または症候を治療するか、またはそうでなければ、疾患または他の望ましくない症候の進行を、どのような方法であれ、予防するか、阻害するか、遅延させるか、または食い止める、ありとあらゆる使用を示す。
【0077】
用語「有効量」および「治療有効量」は、本明細書中で使用される場合、無毒であるが、所望される治療効果をもたらすのに十分な量の作用剤または化合物をそれらの意味の範囲内に含む。必要とされる正確な量は、処置されている種、年齢および対象の全身状態、処置されている症状の重症度、投与されている特定の作用剤および投与方法などの要素に依存し、対象間で変化することになる。したがって、正確な「有効量」を特定することは不可能である。しかし、任意の所与の場合においては、適切な「有効量」は、単なる型通りの実験を用いて、当業者によって決定されうる。
【0078】
ヒト「野生型Cpn10ポリペプチド配列」は、本明細書中で使用される場合、メチオニン残基から開始されず、配列番号1で示されるアミノ酸配列によって規定されうる。
【0079】
用語「アラニン−Cpn10」および「Ala−Cpn10」は、本明細書中で使用される場合、同じ意味を有し、単一の追加的なN末端アラニン残基から開始する任意のポリペプチド(これは他の同一の野生型Cpn10ポリペプチドまたはその断片と比較される)を包含する。例えば、本明細書中に記載のヒトAla−Cpn10は、N末端でアミノ酸配列Ala−Ala−Gly−Gln−Alaから開始し、配列番号3で示される配列を有しうる。
【0080】
本明細書で使用される用語「実質的に」は、本明細書中で使用される場合、大部分であるが必ずしも全部でないことを意味する。
【0081】
本明細書中の先行技術文書に関する任意の説明、あるいはそれら文書に由来するかまたは基づく本明細書中の記述は、文書またはそれから派生する記述が関連技術の周知の一般的知識の一部であるということを認めるものではない。
【0082】
説明目的で、本明細書中で言及されるすべての文書は、特に明記しない限り、参照により援用される。
【0083】
詳細な説明
発明者は、追加的なN末端アラニン残基を有し(Ala−Cpn10;配列番号3)、かつ柔軟な可動ループが欠如したヒトCpn10変異体の(2Åの解像度での)X線結晶構造を解明している。これらの試験により、Cpn10単量体が、βヘアピン「ルーフループ」領域および「可動ループ」領域によって隣接されたコアの逆平行βバレル領域からなることが示された。ヒトCpn10のN末端ドメインは、β−バレルから生じ、まずβヘアピンターンを受けた後、ルーフループの特定の領域に極めて接近したCpn10ドーム様構造の上部を横切って配置される直線状に伸展した規則性が高い配座を形成する。一部の結晶構造では、Cpn10七量体内部の特定のサブユニットのN末端ドメインは、大規模な構造変化を受け(それは付属物(appendage)がかなり柔軟であることを示し)、例えば核酸への結合を調節するという重要な生物学的機能を果たす可能性が高いことが認められた。
【0084】
発明者によって行われた分子モデリングは、特定の機構または作用機序に縛られることなく、Ala−Cpn10の柔軟なN末端がルーフループ上に、N末端アラニン残基(Ala−1)とルーフループ上の小規模構造ポケットとの相互作用によってドッキングしうることを示した。構造ポケットは、残基Ser52〜Gly57によって形成されると考えられる。ルーフループの開始点における2つの重要な残基Lys53およびLys55は、より小さい残基(Ser52、Gly54、Gly56およびGly57)によって囲まれ、それらの伸長された側鎖CH−CH−CH−CH−NHのおかげで、Gly54によって隔てられたポケットを形成すると考えられる。Ala−1のCH側鎖は、これらのLys側鎖と相互作用し、それらと1つの大きい有意な集団(および第2のより小さいもの)を形成すると考えられる。Ala−1の、Lys53〜Lys55のルーフループ構造ポケットへのこの結合は、柔軟なN末端に有効に固定し、核酸に基づくPAMPまたはDAMPを含む分子へのより強力な結合をもたらすと考えられる。ここで、このより強力な結合は、タンパク質の免疫抑制能を増強すると考えられる。
【0085】
本発明は、N末端ドメイン内の残基に対する修飾を含むCpn10変異体を提供する。一般に、本発明のCpn10N末端ドメイン変異体は、野生型Cpn10に比べて、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む分子および/または損傷関連分子パターン(DAMP)を含む宿主分子に対する増大した結合親和性を有する。故に、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、一般に、野生型Cpn10とそれら分子との間の結合相互作用より強力である。好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、Ala−Cpn10とそれら分子との間の結合相互作用より強力である。
【0086】
PAMPまたはDAMPを含むリガンドのパターン認識受容体(PRR)への結合は、有効な固有の免疫応答を確立する上で中核となる一連の事象を開始させる。特定の機構または作用機序に限定させることなく、本発明のCpn10N末端ドメイン変異体によるこれらのリガンドの強力な結合が、それらリガンドとそれらの標的PRRとの間の相互作用を修飾または阻止すると仮定される。次いで、これは、PRRシグナル伝達によって引き起こされる免疫応答、例えば炎症性分子の産生および分泌によって誘発されるものなどの開始を阻害すると考えられる。
【0087】
したがって、PAMPまたはDAMPを含む分子への結合は、免疫応答の性質および/または強さに影響を与えうる。本発明のCpn10N末端ドメイン変異体は、PAMPまたはDAMPを含む分子に、Ala−Cpn10がそれら分子に結合する場合より強力に結合するおかげで、Ala−Cpn10に比べて増強された免疫調節機能を果たしうる。
【0088】
本発明のCpn10N末端ドメイン変異体は、投与することで、免疫応答を抑制することが可能である。したがって、変異体は、投与することで、免疫活性化に関連した種々の疾患(例えば慢性炎症性疾患)を予防および/または処置することが可能である。
【0089】
本発明のCpn10N末端ドメイン変異体はまた、スクリーニングアッセイにおいて使用し、それらの活性のアゴニストを同定することが可能である。これらのアゴニストは、一般に、本発明の変異体によって媒介されるPRRシグナル伝達に対する抑制効果を促進することから、PRRシグナル伝達のアンタゴニストとなる。
【0090】
Cpn10N末端ドメイン変異体
本発明は、N末端ドメインでの残基に対する修飾を含むCpn10変異体(「本発明のCpn10ポリペプチド」)を提供する。また、Cpn10変異体をコードする核酸(「本発明のCpn10核酸」)が提供される。
【0091】
典型的には、本発明のCpn10ポリペプチドは、単離ポリペプチドである。これに関連する用語「単離された」は、ポリペプチドが、その天然状態で見出されることになる場合に伴う他の成分の一部もしくは全部から除去されているかまたはそれらに関連しないことを意味することは理解されるであろう。例えば、「単離された」ポリペプチドは、より大きなポリペプチド配列内の他のアミノ酸配列から除去されうるか、または関連のないタンパク質などの天然成分から除去されうる。理解を容易にするため、「単離された」ポリペプチドはまた、自然から得られていないばかりか、新たに調製され、例えば、化学合成され、および/または組換え方法によって調製されているポリペプチドを含む。本明細書中に記載のように、本発明の単離Cpn10ポリペプチドは、より長いポリペプチドまたは融合タンパク質の一成分として含めてもよい。
【0092】
典型的には、本発明のCpn10核酸は、単離核酸である。これに関連する用語「単離された」は、核酸が、その天然状態で見出されることになる場合に伴う他の成分の一部もしくは全部から除去されているかまたはそれらに関連しないことを意味することは理解されるであろう。例えば、「単離された」核酸は、より大きな核酸配列内の他の核酸配列から除去されうるか、または関連のない核酸などの天然成分から除去されうる。理解を容易にするため、「単離された」核酸はまた、自然から得られていないばかりか、新たに調製され、例えば、化学合成され、および/または組換え方法によって調製されている核酸を含む。
【0093】
本発明のCpn10ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチド配列と、N末端ドメイン内の1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失および/または挿入の分だけ異なりうる。
【0094】
当業者は、生物学的条件下で、多数の哺乳類野生型Cpn10ポリペプチド(例えばヒト野生型Cpn10ポリペプチド)の開始メチオニンが、一般に2番目の残基であるアラニンを踏まえて切断される(すなわち「N末端ルール」)ことを理解するであろう。したがって、ヒト「野生型Cpn10ポリペプチド配列」は、本明細書中で検討される場合、メチオニン残基から開始することなく、配列番号1で示されるアミノ酸配列によって規定されうる。
【0095】
Cpn10の「N末端ドメイン」は、本明細書中で検討される場合、Cpn10単量体におけるβバレルの第1のβ鎖を形成する残基に先行する、ポリペプチド配列内のすべてのアミノ酸残基を包含する。したがって、ヒト野生型Cpn10配列の「N末端ドメイン」は、配列番号1で示されるアミノ酸配列の残基1〜7によって規定されうる。
【0096】
本発明のCpn10ポリペプチドは、N末端ドメイン内での修飾を別にして、野生型Cpn10ポリペプチド、野生型Cpn10ポリペプチドの変異体、または野生型Cpn10ポリペプチドの断片と同一または実質的に同一でありうることは理解されるであろう。
【0097】
野生型Cpn10ポリペプチドは、任意の供給源に由来してもよく、その非限定例として、植物(例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、細菌(例えば、ヒト型結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、大腸菌(Escherichia coli))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae))、線虫(例えば、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans))、ならびに動物、例えば、哺乳類、カエル(例えば、ニシツメガエル(Xenopus tropicalis))、ミバエ(例えば、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、ニワトリ、魚(例えば、ゼブラフィッシュ(Danio terio))および他の海洋動物(例えば、ユウレイボヤ(Ciona savignyi)などのホヤ)が挙げられる。あるいは、野生型Cpn10ポリペプチドは、古細菌(archael)(例えば、メタノサルシナ・マゼイ(Methanosarcina mazei))であってもよい。
【0098】
好ましくは、野生型Cpn10ポリペプチドは、哺乳動物に由来する。例えば、野生型Cpn10ポリペプチドは、霊長動物、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタ、ネコ、イヌ、またはマウスCpn10ポリペプチドであってもよい。
【0099】
より好ましくは、野生型Cpn10ポリペプチドは、ヒト野生型Cpn10ポリペプチドである。ヒト野生型Cpn10ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0100】
したがって、本発明のCpn10ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチド配列またはそのポリペプチド配列の変異体もしくは断片(すなわちその変異体もしくは断片)のN末端ドメイン内の任意のアミノ酸残基を置換または欠失させることにより、生成してもよい。N末端ドメイン内の任意の数のアミノ酸を置換または欠失させ、本発明のCpn10ポリペプチドを生成してもよく、ここで欠失または置換される特定のアミノ酸については限定されない。
【0101】
それに加え、またはその代わりに、本発明のCpn10ポリペプチドは、1つもしくは複数の追加的なアミノ酸残基を野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端ドメインに組み込むことによって生成してもよい。1つもしくは複数の追加的なアミノ酸残基をN末端ドメインに「組み込む」ことが、アミノ酸残基または2つ以上のアミノ酸残基を含む配列をN末端ドメインのいずれかの場所に挿入することを包含することは理解されるであろう。任意の数の追加的なアミノ酸を、N末端ドメインに組み込んでもよく、ここで組み込まれるアミノ酸の同一性については限定されない。
【0102】
したがって、本発明のCpn10ポリペプチドは、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端残基(すなわち第1の残基)に付加される1つもしくは複数の追加的なアミノ酸残基を含んでもよい。付加残基は、正に帯電した残基、負に帯電した残基、または中性の残基であってもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、増大したPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0103】
本発明のCpn10ポリペプチドは、1つもしくは複数の中性アミノ酸残基を、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加することによって生成してもよい。追加的な中性アミノ酸は、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンからなる群から選択してもよい。
【0104】
特定の実施形態では、特定のシャペロニン10N末端変異体Ala−Cpn10(配列番号3)およびGly−Cpn10(配列番号6)は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加された単一の中性アミノ酸残基を有するN末端変異体であり、本発明の範囲から除外される。
【0105】
本発明のCpn10ポリペプチドは、1つもしくは複数の正に帯電したアミノ酸残基を、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加することによって生成してもよい。正に帯電したアミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、およびリジンからなる群から選択してもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0106】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号66で示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、配列番号66によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0107】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号66で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号66によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0108】
本発明のCpn10ポリペプチドは、1つもしくは複数の負に帯電したアミノ酸残基を、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加することによって生成してもよい。負に帯電した1種または複数種アミノ酸は、アスパラギン酸およびグルタミン酸からなる群から選択してもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0109】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号72または74で示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、配列番号72または74によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0110】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号72または74で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号72または74によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0111】
一部の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、2つ以上のアミノ酸残基を含む配列を、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加することによって生成される。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0112】
アミノ酸残基の付加された配列は、異なるように帯電したアミノ酸の組み合わせを含んでもよい。例えば、配列は、中性アミノ酸残基と正に帯電した残基の組み合わせ、または中性アミノ酸残基と負に帯電した残基の組み合わせを含んでもよい。
【0113】
当業者は、タンパク質翻訳における生体系では、メチオニン残基を生成するATG開始コドンの翻訳から開始されることを理解するであろう。Cpn10の場合、開始メチオニンが、隣接残基の同一性に依存し、最終(野生型)ポリペプチドから切断されうることが判定されている。より詳細には、隣接アミノ酸が、アラニン、グリシン、プロリン、またはセリンである場合、開始メチオニンが野生型Cpn10から切断されることが判定されている。例えば、上記のように、ヒト野生型Cpn10は、一般に、生物学的条件下で、アラニン残基から開始する(すなわち開始メチオニンは切断される)一方、大腸菌(E.coli)相同体GroESは、メチオニンから開始し、アスパラギンが後続する(すなわち開始メチオニンは切断されない)。
【0114】
場合により、生体系ではCpn10ポリペプチドの開始メチオニンを切断する傾向があるにもかかわらず、本発明のCpn10ポリペプチドを、代替手段(例えば化学合成)を用いて合成し、および/または、修飾し、開始メチオニンを維持または除去することが可能であることは理解されるであろう。したがって、本発明のCpn10ポリペプチドは、開始メチオニン残基から開始してもまたは開始しなくてもよい。
【0115】
発明者は、メチオニン残基のCpn10のN末端への付加が、PAMPまたはDAMPを含む分子への結合力増大を促進することを判定している。特定の機構または作用機序に限定されないが、メチオニンの大きい側鎖(CH−CH−S−CH)が、発明者によって同定された推定上の結合ポケットの外部に位置する、Cpn10分子のルーフループ内の残基(例えば配列番号1のイソロイシン59(Ile59)および/またはバリン62(Val62))との複数の相互作用を受けることが提起されている。
【0116】
したがって、特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、2つ以上のアミノ酸残基を含む配列を、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加することによって生成され、ここで付加される配列の1つもしくは複数の残基は、メチオニンである。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0117】
一部の実施形態では、配列は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端残基に付加されたメチオニン残基を含む。
【0118】
特定の実施形態では、特定のシャペロニン10N末端変異体GSM−Cpn10(配列番号57)は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の1番目のN末端残基に付加された3つの中性アミノ酸残基を有するN末端変異体であり、本発明の範囲から除外される。
【0119】
他の実施形態では、配列は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端残基に付加された他の残基(すなわちメチオニン以外の残基)を含む。N末端残基に付加された配列の付加されたアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、フェニルアラニン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンからなる群から選択してもよい。
【0120】
好ましくは、付加された配列は、1つもしくは複数の追加的なアミノ酸残基に先行する少なくとも1つのメチオニン残基を含む。配列の最後のアミノ酸残基は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端残基に付加される。最後のアミノ酸残基は、中性アミノ酸残基または帯電したアミノ酸残基であってもよい。1つもしくは複数の追加的な残基は、メチオニン残基とN末端に付加された残基を分離しうる。
【0121】
好ましくは、付加された配列は、2番目のアミノ酸残基に先行する1番目のメチオニン残基を含む。配列の2番目のアミノ酸残基は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)のN末端残基に付加される。2番目のアミノ酸残基は、中性アミノ酸残基または帯電したアミノ酸残基であってもよい。
【0122】
特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、1つの中性アミノ酸残基を、ヒト野生型ポリペプチド配列の最初のN末端残基に付加することによって生成される。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0123】
特定の実施形態では、特定のシャペロニン10N末端変異体Ala−Cpn10(配列番号3)およびGly−Cpn10(配列番号6)は、野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)の最初のN末端残基に付加された単一の中性アミノ酸残基を有するN末端変異体であり、本発明の範囲から除外される。本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号6、21、35、63、64、65、67、68、69、70、71、73、もしくは75で示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、配列番号6、21、もしくは35によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0124】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号6、21、35、63、64、65、67、68、69、70、71、73、もしくは75で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号6、21、もしくは35によって規定されるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0125】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号7、8、22、23、36もしくは37のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列またはその断片を含んでもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0126】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号7、8、22、23、36もしくは37のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む核酸またはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初のアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0127】
他の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、2つの中性アミノ酸残基を含む配列を、ヒト野生型ポリペプチド配列の最初のN末端残基に付加することによって生成される。付加される配列の最初のアミノ酸残基は、メチオニンであってもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0128】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号9、12、15、24、26、29、32、38、44、49、52、55、76、78、84、もしくは96のいずれか1つで示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0129】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号9、12、15、24、26、29、32、38、44、49、52、55、76、78、84、もしくは96のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0130】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号10、13、14、16、17、25、27、28、30、31、33、34、39、40、45、46、50、51、53、54、56、57、85、86、97、もしくは98のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列またはその断片を含んでもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0131】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号10、13、14、16、17、25、27、28、30、31、33、34、39、40、45、46、50、51、53、54、56、57、85、86、97、もしくは98のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む核酸またはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0132】
他の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、3つ以上の中性アミノ酸残基を含む配列を、ヒト野生型ポリペプチド配列の最初のN末端残基に付加することによって生成される。付加される配列は、1つもしくは複数のメチオニン残基を含んでもよい。付加される配列の最初のアミノ酸残基は、メチオニンであってもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0133】
したがって、本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号58、60、77、81、87、90、もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによって規定されるN末端ドメイン配列の最初の3つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0134】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号58、60、77、81、87、90、もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによって規定されるN末端ドメイン配列の最初の3つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0135】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号59、61、62、82、83、88、89、91、92、94、もしくは95のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列またはその断片を含んでもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の3つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0136】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号59、61、62、82、83、88、89、91、92、94、もしくは95のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む核酸またはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、上記の配列番号のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の3つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0137】
さらなる実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、中性アミノ酸残基と正に帯電した残基の組み合わせを含む配列を、ヒト野生型ポリペプチド配列の最初のN末端残基に付加することによって生成される。付加される配列の最初のアミノ酸残基は、メチオニンであってもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0138】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号18で示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、配列番号18によって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0139】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号18で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号18によって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0140】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号19または配列番号20で示されるヌクレオチド配列を含んでもよい。断片は、配列番号19または配列番号20によってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0141】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号19または配列番号20で示されるヌクレオチド配列を含む核酸と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号19または配列番号20によってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0142】
他の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、中性アミノ酸残基と負に帯電した残基の組み合わせを含む配列を、ヒト野生型ポリペプチド配列の最初のN末端残基に付加することによって生成される。付加される配列の最初のアミノ酸残基は、メチオニンであってもよい。ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、および/または野生型Cpn10に比べて(例えば配列番号1で示されるヒト野生型Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有してもよい。ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10のそれらPAMPおよび/またはDAMPに対する結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。
【0143】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号41または配列番号47で示されるアミノ酸配列またはその断片を含んでもよい。断片は、配列番号41または配列番号47によって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0144】
本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号41または配列番号47で示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号41または配列番号47によって規定されるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくとも含む。
【0145】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号42、43もしくは48のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含んでもよい。断片は、配列番号42、43もしくは48のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0146】
本発明のCpn10核酸配列は、配列番号42、43もしくは48のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む核酸と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。断片は、配列番号42、43もしくは48のいずれか1つによってコードされるN末端ドメイン配列の最初の2つのアミノ酸残基を少なくともコードする。
【0147】
本発明のCpn10ポリペプチドは、N末端ドメインの外部に位置する領域内で、(野生型Cpn10ポリペプチド配列に比べて)追加的なアミノ酸残基の置換、欠失および/または挿入をさらに含んでもよい。
【0148】
例えば、本発明のCpn10ポリペプチドは、ルーフβヘアピンドメイン、βバレルドメインおよび/または可動ループドメイン内で、1つもしくは複数のアミノ酸の挿入、欠失または置換をさらに含んでもよい。したがって、あくまで例として、本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号1で示されるアミノ酸配列の位置7〜101の任意の1つもしくは複数において、追加的な置換、欠失および/または挿入をさらに含んでもよい。
【0149】
特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、ヒト野生型Cpn10ポリペプチド配列(またはその変異体もしくは断片)と、N末端ドメイン内での1つもしくは複数のアミノ酸残基の置換、欠失および/または挿入、また、(配列番号1の残基52〜62によって規定される)ルーフβヘアピンドメイン内での1つもしくは複数のアミノ酸の挿入、欠失または置換の分だけ異なる。
【0150】
2つの配列間の配列同一性のパーセントは、比較ウインドウ上で2つの最適に整列された配列を比較することによって判定されうる。2つの配列を最適に整列するため、比較ウインドウにおける配列(例えば、本発明のCpn10ポリペプチドまたはCpn10核酸)の一部は、例えば、欠失または付加を含まない参照配列(例えば別種に由来するもの)と比較し、欠失または付加(すなわちギャップ)を含んでもよく、その逆もいえる。次いで、配列同一性のパーセントは、同一のアミノ酸残基(またはヌクレオチド)が両配列内に存在する位置の数を測定し、一致した位置の数を生成し、一致した位置の数を比較ウインドウにおける位置の総数で除し、その結果に100を掛けて配列同一性のパーセントを生成することにより、計算することが可能である。
【0151】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列との関連では、配列同一性のパーセントは、次の配列比較アルゴリズムのうちの1つを使用するかまたはマニュアルでのアラインメントおよび目視検査によって測定される際、比較ウインドウまたは指定領域にわたって最大一致(maximum correspondence)になるように比較および整列される場合、特定の領域(または特定化されない場合には全配列)にわたって同一であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの特定のパーセントを示す。
【0152】
配列比較においては、典型的には、一方の配列は、試験配列の比較対象の参照配列としての機能を果たす。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験および参照配列がコンピュータに入力され、必要ならば、部分配列座標が指定され、配列アルゴリズムプログラムパラメータが指定される。デフォルトプログラムパラメータを使用するか、または代替パラメータを指定してもよい。次いで、配列比較アルゴリズムは、参照配列に対して、試験配列における配列同一性のパーセントをプログラムパラメータに基づいて計算する。
【0153】
比較のための配列のアラインメント方法は、当該技術分野で既知である。配列同一性の判定のための配列の最適なアラインメントは、限定はされないが、PC/Geneプログラム(Intelligenetics、Mountain View,Californiaから入手可能)におけるCLUSTAL、ALIGNプログラム(バージョン2.0)ならびにGCG Wisconsin Genetics Software Package(バージョン10)におけるGAP、BESTFIT、BLAST、FASTA、およびTFASTA(Accelrys Inc.、9685 Scranton Road,San Diego,California,USAから入手可能)を含む既知のコンピュータプログラムを用いて従来のように行ってもよい。
【0154】
本明細書中で例示される本発明のCpn10ポリペプチドは、1つもしくは複数の追加的なアミノ酸をさらに含んでもよい。一部の実施形態では、追加的なアミノ酸は、例示されるポリペプチドの由来元でありうるタンパク質またはより大きなポリペプチドのすぐ上流および/または下流のアミノ酸に対応しうる。当業者は、本明細書中で例示される本発明のCpn10ポリペプチドの1つもしくは複数のアミノ酸が、活性の低下を伴わずに欠失しうることを理解するであろう。
【0155】
本発明のCpn10ポリペプチドを、例えば、アセチル基、脂質、炭水化物および/またはリン酸基で修飾することで、免疫原性、安定性および/または溶解度が改善されうる。ポリペプチド末端のキャッピングを用いることで、細胞性プロテアーゼに対する安定性が促進されうる。
【0156】
本明細書中で例示される本発明のCpn10核酸は、1つもしくは複数の追加的なヌクレオチドをさらに含んでもよい。一部の実施形態では、追加的なヌクレオチドは、核酸の由来元であるゲノム配列内のすぐ上流および/または下流のヌクレオチドに対応しうる。当業者は、本明細書中で例示される本発明のCpn10核酸の1つもしくは複数のヌクレオチドが、活性の低下を伴わずに欠失しうることを理解するであろう。
【0157】
「本発明のCpn10ポリペプチド」がそれらポリペプチドの変異体を包含することは理解されるであろう。同様に、「本発明のCpn10核酸」がそれら核酸の変異体を包含することは理解されるであろう。
【0158】
用語「変異体」は、本明細書で使用される場合、実質的に類似の配列を示す。一般に、2つの配列は、その2つの配列が、特定の領域全体または特定されない場合に全配列にわたって同じ(「配列同一性」のパーセント)である、特定のパーセントのアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する場合、「実質的に類似する」。したがって、本発明のCpn10核酸または本発明のCpn10ポリペプチドの「変異体」は、参照配列と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、83%、85%、88%、90%、93%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を共有しうる。
【0159】
一般に、ポリペプチド変異体は、それらの由来元であるポリペプチドと定性的な生物学的活性を共有する。核酸変異体は、一般に、由来元であるポリペプチドと定性的な生物学的活性を一般に共有するポリペプチドをコードする。また、本発明のCpn10核酸および本発明のCpn10ポリペプチドの相同体は、用語「変異体」の意味の範囲内に含まれる。核酸相同体は、典型的には、異なる種に由来するが、対応する本発明のCpn10核酸と実質的に同一の生物学的機能または活性を共有している。ポリペプチド相同体は、典型的には、異なる種に由来するが、対応する本発明のCpn10ポリペプチドと実質的に同一の生物学的機能または活性を共有している。
【0160】
さらに、用語「変異体」はまた、本発明のCpn10ポリペプチドの類似体を含む。ポリペプチド「類似体」は、本発明のCpn10ポリペプチドの誘導体であるポリペプチドであり、ここで誘導体は、ポリペプチドが実質的に同一の機能を保持する程度に、1つもしくは複数のアミノ酸の付加、欠失、置換を含む。用語「保存的アミノ酸置換」は、ポリペプチド鎖(タンパク質の一次配列)内で同様の特性を有する、一方のアミノ酸ともう一方のアミノ酸との置換(substitution)または置換(replacement)を示す。例えば、帯電したアミノ酸のグルタミン酸(Glu)と同様に帯電したアミノ酸のアスパラギン酸(Asp)との置換の場合、保存的アミノ酸置換となる。
【0161】
「本発明のCpn10ポリペプチド」がそれらポリペプチドの断片を包含することは理解されるであろう。同様に、「本発明のCpn10核酸」がそれら核酸の断片を包含することは理解されるであろう。
【0162】
本発明のCpn10ポリペプチドの「断片」は、成分をコードするポリペプチドであるか、あるいは本発明のCpn10ポリペプチドまたはその変異体の成分である。典型的には、断片は、それが成分であるポリペプチドと定性的な生物学的活性を共有する。典型的には、ポリペプチド断片は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100もしくは100を超えるアミノ酸残基長であってもよい。
【0163】
本発明のCpn10核酸の「断片」は、成分をコードする核酸であるか、あるいは本発明のCpn10核酸またはその変異体の成分である。核酸の断片は、必ずしも生物学的活性を保持するポリペプチドをコードする必要がない。断片は、例えばハイブリダイゼーションプローブまたはPCRプライマーとして有用でありうる。典型的には、核酸断片は、少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、425、450、475、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1750、2000、2250、2500、2750、3000、3250もしくは3400ヌクレオチド長であってもよい。
【0164】
一般に、本発明のCpn10ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10に比べて、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む分子および/または損傷関連分子パターン(DAMP)を含む宿主分子に対する増大した結合親和性を有する。故に、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、一般に、野生型Cpn10とそれらの分子との間の結合相互作用より強力である。好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、Ala−Cpn10とそれらの分子との間の結合相互作用より強力である。
【0165】
PAMPまたはDAMPを含む分子との結合は、免疫応答の性質および/または強さに影響を与えうる。本発明のCpn10ポリペプチドは、PAMPまたはDAMPを含む分子との結合が、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10がそれらの分子に結合する場合より強力であることから、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10に比べて、増強された免疫調節機能を発揮しうる。
【0166】
したがって、特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、Ala−Cpn10に比べて(例えば配列番号3で示されるヒトAla−Cpn10に比べて)、増強された免疫調節機能を有しうる。
【0167】
ポリペプチド(polyeptides)のN末端は、野生型ポリペプチドに比べて、少なくとも1つ、2つ、もしくは3つの追加的なアミノ酸残基によって伸長されうる。N末端は、メチオニン残基から開始されうる。
【0168】
Ala−Cpn10に比べて増強された免疫調節機能を有する本発明のCpn10ポリペプチドは、例えば、配列番号9、12、15、18、21、24、26、29、32、35、38、41、44、52、55、58、60、81、84、87、90もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列またはその断片(その配列のN末端ドメインを含む)を含んでもよい。
【0169】
Ala−Cpn10に比べて増強された免疫調節機能を有する本発明のCpn10ポリペプチドは、配列番号9、12、15、18、21、24、26、29、32、35、38、41、44、52、55、58、60、81、84、87、90もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含むポリペプチドまたはその断片(その配列のN末端ドメインを含む)と、少なくとも約40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の配列同一性を共有してもよい。
【0170】
本発明のCpn10ポリペプチドの免疫調節機能(すなわち免疫調節能)のレベルは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いて測定してもよい。例えば、免疫調節機能のレベルは、ポリペプチドとPAMPおよびDAMP(例えば細菌CpG)との結合相互作用の性質および/または強さによって測定し、ひいては本明細書の実施例中に記載の方法を用いて測定してもよい。それに加え、またはその代わりに、本発明のCpn10ポリペプチドの免疫調節機能は、ポリペプチドによって引き起こされるパターン認識受容体(PRR)シグナル伝達の程度を測定することによって評価してもよい。例えば、ポリペプチドの、PRR(例えばToll様受容体)を介するポリ(I:C)誘発性のNFκB生成に対する阻害能は、米国特許出願第12/934980号明細書(2009年12月30日公開)中に記載の技術を用いて測定してもよく、その内容全体は、相互参照によって本明細書中に援用される。それに加え、またはその代わりに、本発明のCpn10ポリペプチドの免疫調節機能は、PRRを発現する細胞によるポリペプチドおよびそれらPRRに対するリガンドの存在下でのサイトカイン生成および/またはサイトカイン分泌のレベルを測定することによって評価してもよい(下記の表題「免疫抑制」の項も参照)。当業者は、上記の技術が例示的なものであり、かつ、本発明のCpn10ポリペプチドの免疫調節機能(すなわち免疫調節能)のレベルを測定するのに使用される特定の方法に関する特定の制限が全く存在しないことを理解するであろう。
【0171】
特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、野生型Cpn10および/またはAla−Cpn10とPAMPおよび/またはDAMPとの結合親和性に比べて、PAMPおよび/またはDAMPに対する増大した結合親和性を有してもよい。
【0172】
PAMPは、CpGモチーフを含んでもよい。例えば、PAMPは、細菌DNAであってもよい。PAMPは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドモチーフ(CpG ODN)を含むオリゴヌクレオチドであってもよい。特定の実施形態では、CpG ODNモチーフは、CpGA、CpGBおよびCpGCのうちの任意の1つもしくは複数である。
【0173】
一部の実施形態では、特定のCpn10N末端変異体は、本発明の範囲から除外してもよい。例えば、特定の実施形態では、特定のヒトCpn10N末端変異体Ala−Cpn10(配列番号3)、GSM−Cpn10(配列番号57)、およびGly−Cpn10(配列番号6)は、本発明の範囲から除外してもよい。
【0174】
本発明のCpn10ポリペプチドは、当該技術分野で既知の方法を用いて作製してもよい。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドは、ペプチド化学合成、例えば固相ペプチド合成、液相ペプチド合成および組換え遺伝子技術において使用される従来の方法によって作製してもよい。本発明のCpn10ポリペプチドのアミノ酸残基は、ありとあらゆるそれらの異性体(例えば、D体、L体およびDL体)およびアイソフォームを含むことは理解されるであろう。
【0175】
本発明のCpn10ポリペプチドは、固相化学技術(例えば、Stewardら、(1963年)、「Solid Phase Peptide Synthesis」、H.Freeman Co.、San Francisco;Meienhofer(1973年)、「Hormonal Proteins and Peptides」、第2巻、46頁を参照)または古典的溶液合成(例えば、Schroderら、(1965年)、「The Peptides」、第1巻、72−75頁、Academic Press(New York)を参照)によって合成してもよい。一般に、かかる方法は、1つもしくは複数のアミノ酸または好適に保護されたアミノ酸の、ポリマー上の成長する連続ポリペプチド鎖への付加を含む。典型的には、最初のアミノ酸のアミノ基またはカルボキシル基のいずれかは、好適な保護基によって保護される。次いで、保護および/または誘導体化されたアミノ酸は、不活性固体支持体に付加されるか、または好適に保護された相補的な(complimentary)(アミノまたはカルボキシル)基を有する配列における次のアミノ酸を、アミド結合を形成するのに適した条件下で付加することにより、溶液中で使用される。次いで、保護基は、新たに付加されたアミノ酸残基から除去される場合があり、次いで(好適に保護された)次のアミノ酸が付加され、成長するポリペプチド鎖が形成される。
【0176】
本発明のCpn10ポリペプチドは、例えば、タンパク質またはより大きなポリペプチドの、endoLys−C、endoArg−C、endoGlu−Cおよびブドウ球菌(Staphylococcus)V8−プロテアーゼなどの1つもしくは複数のプロテイナーゼによる消化により、生成してもよい。消化されたペプチド断片は、例えば高性能液体クロマトグラフ(HPLC)技術により、精製してもよい。
【0177】
それに加え、またはその代わりに、本発明のCpn10ポリペプチドは、組換えポリペプチド生成技術を用いて生成してもよい。組換えポリペプチド生成技術は、典型的には、本発明のCpn10ポリペプチドをコードする核酸のプラスミドへのクローニングを、後続する好適な微生物における過剰発現のため、含むことになる。発現ベクターまたはプラスミドの作成に適した方法は、例えば、Sambrookら、(1989年)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York;および、Ausubelら、(編)、(2007年)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,Inc.などの標準のテキスト中で詳述されている。
【0178】
本発明のCpn10ポリペプチドの生成に適した組換え方法は、例えば、Coliganら、(編)(2007年)、「Current Protocols in Protein Science」、(第5章)、John Wiley and Sons、Inc.;およびPharmacia Biotech.、(1994年)、「The Recombinant Protein Handbook」、Pharmacia Biotechなどの標準のテキスト中で詳述されている。
【0179】
本発明のCpn10ポリペプチドの生成用に使用可能な一般に使用される発現系は、例えば、細菌(例えば大腸菌(E.coli))、酵母(例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、アスペルギルス(Aspergillus)、メタノール資化酵母(Pichia pastorisis))、ウイルス(例えば、バキュロウイルスおよび痘疹)、細胞(例えば哺乳類および昆虫)および無細胞系、を含む。使用可能な好適な無細胞系は、限定はされないが、真核生物としてのウサギ網状赤血球(reticuloctye)、小麦胚芽抽出系、および原核生物としての大腸菌(E.coli)無細胞系を含む(例えば、Madinら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.97:559−564頁(2000年)、PelhamおよびJackson、Eur.J.Biochem.、67:247−256頁(1976年);RobertsおよびPaterson、Proc.Natl.Acad.Sci.、70:2330−2334頁(1973年);Zubay、Ann.Rev.Genet.、7:267頁(1973年);GoldおよびSchweiger、Meth.Enzymol.、20:537頁(1971年);Lesleyら、J.Biol.Chem.、266(4):2632−2638頁(1991年);Baranovら、Gene、84:463−466頁(1989年);ならびにKudlickiら、Analyt.Biochem.、206:389−393頁(1992年)を参照。
【0180】
(例えば、本発明のCpn10ポリペプチドと特定のパーセントの配列同一性を有するポリペプチドを生成するための)本発明のCpn10ポリペプチドのアミノ酸配列への変化は、当該技術分野で標準の技術を用いて行ってもよい。例えば、アミノ酸変化は、ヌクレオチドの付加、欠失または置換を含むヌクレオチド置換技術(保存的および/または非保存的)を、適切なリーディングフレームが維持されるという条件下で使用することによって行ってもよい。典型的な技術は、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、オリゴヌクレオチド媒介性またはポリヌクレオチド媒介性突然変異誘発、既存もしくは改変された制限酵素部位の使用を介した選択領域の欠失、ならびにポリメラーゼ連鎖反応、を含む。本発明の目的に合うように修飾されたポリペプチドの活性の試験は、当業者に既知の多数の技術のいずれかの技術を介して行ってもよい。
【0181】
本発明のCpn10ポリペプチドの精製は、当該技術分野における標準的技術、例えば、Coliganら、(2007年)、「Current Protocols in Protein Science」、(第6章)、John Wiley and Sons、Inc.に記載のものを用いて行ってもよい。例えば、ポリペプチドが溶解状態である場合、それは、カラムクロマトグラフィーなどの標準的方法を用いて単離してもよい。本発明のCpn10ポリペプチドは、精製を補助する様々な親和性タグまたは担体タンパク質を有するように遺伝子操作してもよい。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸を有する発現ベクターに操作されるヒスチジンおよびタンパク質タグの使用は、例えば、天然または変性条件下での金属−キレートアフィニティークロマトグラフィー(MCAC)により、精製を促進しうる。精製は、大規模生成を目的として、スケールアップしてもよい。
【0182】
本発明のCpn10核酸は、当該技術分野で既知の標準的技術、例えば、Sambrookら、(1989年) 「Molecular Cloning A Laboratory Manual」、(第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York;Itakura K.ら、(1984年)、「Synthesis and use of synthetic oligonucleotides」、Annu.Rev.Biochem.53:323頁;Innisら、(編)、(1990年)、「PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications」、Academic Press,New York;InnisおよびGelfand、(編)、(1995年)、「PCR Strategies」、Academic Press,New York;ならびにInnisおよびGelfand、(編)、(1999年)、「PCR Methods Manual」、Academic Press,New Yorkに記載のものを用いて作製してもよい。
【0183】
本発明のCpn10核酸は、例えば、リン酸ジエステルおよびリン酸トリエステル法(例えば、Narangら、(1979年)、「Improved phosphotriester method for the synthesis of gene fragments」、Meth.Enzymol.68:90頁;Brownら、(1979年)、「Chemical Synthesis and Cloning of a Tyrosine tRNA Gene」、Meth.Enzymol.68:109−151頁;および米国特許第4356270号明細書を参照)またはジエチルホスホロアミダイト法(BeaucageおよびCaruthers、(1981年)、「Deoxynucleotide phosphoramidite」、Tetrahedron Letters,22:1859−1862頁を参照)を含む化学合成技術により、作製してもよい。修飾された固体支持体上でオリゴヌクレオチドを合成するための方法は、米国特許第4458066号明細書中に記載されている。
【0184】
本発明のCpn10核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)または相補デオキシリボ核酸(cDNA)であってもよい。RNAは、DNA配列のRNAポリメラーゼ触媒転写から誘導してもよい。RNAは、対応するDNA配列の転写から誘導される一次転写産物であってもよい。RNAはまた、転写後プロセシングを受けることがある。例えば、一次RNA転写産物は、転写後プロセシングを受け、成熟RNAを形成しうる。メッセンジャーRNA(mRNA)は、細胞によってタンパク質に翻訳されうる対応するオープンリーディングフレームから誘導されるRNAを示す。cDNAは、mRNAに相補的でありかつそれから誘導される二本鎖DNAを示す。センスRNAは、mRNAを含むことから、細胞によってタンパク質に翻訳されうるRNA転写産物を示す。アンチセンスRNAは、標的一次転写産物またはmRNAの全部または一部に相補的でありかつ標的遺伝子の発現を遮断するために使用されうるRNA転写産物を示す。
【0185】
当業者は、所与のCpn10DNA配列によってコードされるRNAおよびcDNA配列が、遺伝子コードを使用して誘導しうることを理解するであろう。RNA配列は、特定のDNA配列に相補的な配列を生成することにより、所与のDNA配列から誘導してもよい。相補配列は、DNA配列内の各シトシン(「C」)塩基をグアニン(「G」)塩基に、DNA配列内の各グアニン(「G」)塩基をシトシン(「C」)塩基に、DNA配列内の各チミジン(「T」)塩基をアデニン(「A」)塩基に、またDNA配列内の各アデニン(「A」)塩基をウラシル(「U」)塩基に変換することにより、生成してもよい。
【0186】
相補DNA(cDNA)配列は、RNA配列を上記のようにDNA配列から誘導し、次いでRNA配列をcDNA配列に変換することにより、DNA配列から誘導してもよい。RNA配列は、RNA配列内の各シトシン(「C」)塩基をグアニン(「G」)塩基に、RNA配列内の各グアニン(「G」)塩基をシトシン(「C」)塩基に、RNA配列内の各ウラシル(「U」)塩基をアデニン(「A」)塩基に、またRNA配列内の各アデニン(「A」)塩基をチミジン(「T」)塩基に変換することにより、cDNA配列に変換してもよい。
【0187】
特定の実施形態では、本発明のCpn10核酸は、ベクターにクローン化してもよい。ベクターは、例えば、DNA、RNAまたは相補DNA(cDNA)配列を含んでもよい。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または外来配列の挿入、細胞へのそれらの導入および導入配列の発現に適した任意の他の好適な媒体であってもよい。典型的には、ベクターは、発現ベクターであり、また、発現制御およびプロセシング配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列を含んでもよい。
【0188】
本発明では、かかるベクターによって形質転換された宿主細胞についても検討される。例えば、本発明のCpn10核酸は、細菌宿主細胞に形質転換されるベクターにクローン化してもよく、それは、例えば大腸菌(E.coli)などの細菌宿主細胞に形質転換される。ベクターの作成およびその宿主細胞への形質転換のための方法は、一般に当該技術分野で既知であり、例えば、Sambrookら、(1989年)、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press,Plainview,New York;およびAusubelら、(編)(2007年)、「Current Protocols in Molecular Biology」、John Wiley and Sons,Inc.に記載されている。
【0189】
抗体
本発明はまた、本発明のCpn10ポリペプチドに「特異的に結合する」抗体(「本発明の抗体」)を提供する。
【0190】
本発明のCpn10ポリペプチドに「特異的に結合する」抗体は、ポリペプチドに、それが無関連分子(例えば非標的ポリペプチド)に結合する場合より有意に高い親和性で結合できるものである。したがって、本発明のCpn10ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、そのポリペプチドと他の任意の数の有望な代替的な結合パートナーとを識別する能力を有する抗体である。故に、本発明のCpn10ポリペプチドに特異的な抗体は、有望な結合パートナーとして複数の異なっても等しく接近可能な分子に暴露される場合、そのポリペプチドに選択的に結合し、他の代替的な有望な結合パートナーは、抗体によって実質的に未結合のまま残ることになる。一般に、本発明のCpn10ポリペプチドに特異的な抗体は、そのポリペプチドに、標的ポリペプチドでない他の有望な結合パートナーより、少なくとも10倍、好ましくは50倍、より好ましくは100倍、および最も好ましくは100倍を超えるほど頻繁に、優先的に結合することになる。本発明のCpn10ポリペプチドに特異的な抗体は、他の非標的分子に、弱くても検出可能なレベルで結合できる場合がある。これは、バックグラウンド結合として周知であり、例えば適切な対照の使用により、ポリペプチドに特異的な結合と容易に識別可能である。
【0191】
抗体の本発明のCpn10ポリペプチドへの結合を促進するための反応条件(例えば、抗体の濃度、インキュベーション時間、pH、温度など)は、主に使用される抗体および特異的な標的ポリペプチドに依存することになり、当該技術分野で既知の方法を用いて容易に決定されうる(例えば、Ausubelら、(1994年)、「Current Protocols in Molecular Biology」、第1巻、John Wiley & Sons,Inc.、New York;Coliganら、(編)、(2008年)、「Current protocols in Immunology」、John Wiley and Sons,Inc.;およびBonifacinoら、(編)(2007年)、「Current protocols in Cell Biology」、John Wiley and Sons,Inc.を参照)。
【0192】
本発明のCpn10ポリペプチドに特異的に結合する抗体は、当該技術分野で既知の方法を用いて生成してもよい。
【0193】
例えば、典型的にはFab部分を有する、本発明のCpn10ポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体は、HarlowおよびLane(編)、(1988年)、「Antibodies−A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory,N.Y.に記載のハイブリドーマ技術を用いて調製してもよい。
【0194】
本質的には、本発明のCpn10ポリペプチドに対するモノクローナル抗体の調製においては、培養物中の連続細胞系によって抗体の産生をもたらす任意の技術を用いてもよい。これらは、Kohlerおよび同僚によって最初に開発されたハイブリドーマ技術(Kohlerら、(1975年)、「Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity」、Nature、256:495−497頁を参照)、ならびにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら、(1983年)、「The Production of Monoclonal Antibodies From Human Lymphocytes」、Immunology Today,4:72−79頁を参照)、およびヒトモノクローナル抗体を生成するためのEBV−ハイブリドーマ技術(Coleら、(1985年)、「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」、77−96頁、Alan R.Liss,Inc.を参照)、を含む。不死の抗体産生細胞系は、融合以外の技術、例えば発癌性DNAによるBリンパ球の直接形質転換、またはエプスタイン−バーウイルスの形質移入によって作製してもよい(例えば、Schreierら、(1980年)、「Hybridoma Techniques」、Cold Spring Harbor Laboratory;Hammerlingら、(1981年)、「Monoclonal Antibodies and T−cell Hybridomas」、Elsevier/North−Holland Biochemical Press,Amsterdam;およびKennettら、(1980年)、「Monoclonal Antibodies」、Plenum Pressを参照)。
【0195】
要するに、モノクローナル抗体が産生される元となるハイブリドーマの作製は、典型的には、骨髄腫または他の自己増殖性細胞系を、哺乳動物の脾臓(その認識因子結合部分、または認識因子、またはその起点(origin)に特異的なDNA結合部分で超免疫されたもの)から得られるリンパ球と融合することを含む。本発明のポリペプチドに特異的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、そのポリペプチド中に存在する抗原とのその免疫反応能によって同定される。
【0196】
本発明のCpn10ポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体は、適切な抗原特異性のある抗体を分泌するハイブリドーマを有する栄養素培地を含むモノクローナルハイブリドーマ培養を開始することによって産生してもよい。培養物は、ハイブリドーマが抗体分子を培地中に分泌するのに十分な条件下で、またその期間、維持される。次いで、抗体含有培地は回収される。次いで、抗体分子は、既知の技術を用いてさらに単離してもよい。
【0197】
同様に、ポリクローナル抗体の産生のために使用可能な、当該技術分野で既知の様々な手順がある。本発明のCpn10ポリペプチドに対するポリクローナル抗体の産生においては、限定はされないが、ウサギ、ニワトリ、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギなどを含む様々な宿主動物は、ポリペプチドの注射によって免疫してもよい。さらに、ポリペプチドは、免疫原性担体(例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)またはスカシ貝ヘモシアニン(KLH))に複合してもよい。また、限定はされないが、フロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムなどの天然ゲル、界面活性物質、例えば、リソレシチン、プルロニック・ポリオール(pluronic polyol)、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、スカシ貝ヘモシアニン、ジニトロフェニル、および潜在的に有用なヒトアジュバント、例えば、BCG(カルメット・ゲラン菌(bacille Calmette−Guerin))およびコリネバクテリウム・パルヴムを含む、様々なアジュバントを使用し、免疫応答を増強してもよい。
【0198】
所望される抗体に対するスクリーニングはまた、当該技術分野で既知の種々の技術によって行ってもよい。抗体の免疫特異的結合に適したアッセイは、限定はされないが、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチイムノアッセイ、イムノラジオメトリックアッセイ、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、インサイチュイムノアッセイ、ウエスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ、補体固定アッセイ、免疫蛍光アッセイ、プロテインAアッセイ、免疫電気泳動アッセイなどを含む(例えば、Ausubelら、(1994年)、「Current Protocols in Molecular Biology」、第1巻、John Wiley & Sons,Inc.、New Yorkを参照)。抗体結合は、一次抗体に対する検出可能な標識によって検出してもよい。あるいは、抗体は、適切に標識された二次抗体または試薬とのその結合によって検出してもよい。イムノアッセイにおける結合事象を検出するための種々の方法は、当該技術分野で既知であり、本発明の範囲内に含まれる。
【0199】
適量の本発明の抗体を得るという観点では、抗体を無血清培地でのバッチ発酵を使用して作製してもよい。発酵後、抗体は、クロマトグラフィーおよびウイルス不活化/除去ステップを組み込んだ多段階手順を介して精製してもよい。例えば、抗体は、まずプロテインAアフィニティークロマトグラフィーによって分離し、次いで溶媒/洗剤で処理し、任意の脂質で包まれたウイルスを不活化してもよい。典型的にはアニオンおよびカチオン交換クロマトグラフィーによるさらなる精製を用い、残留するタンパク質、溶媒/洗剤および核酸を除去してもよい。精製抗体は、ゲル濾過カラムを使用し、さらに精製し、0.9%生理食塩水に調合してもよい。次いで、調合されたバルク調製物を、滅菌し、ウイルス濾過を行い、調剤してもよい。
【0200】
免疫抑制
本発明は、対象における免疫活性化を抑制するための方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、本発明のCpn10ポリペプチド(またはそれを含む組成物)を対象に投与するステップを含む。他の実施形態では、本方法は、本発明のCpn10核酸(またはそれを含む組成物)を対象に投与するステップを含む。また、対象における免疫活性化を抑制するための薬剤の調製における本発明のCpn10ポリペプチドまたは本発明のCpn10核酸の使用が提供される。
【0201】
本発明のCpn10ポリペプチドおよび本発明のCpn10核酸は、限定はされないが、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下または筋肉内)、粘膜(例えば、経口または鼻腔内)、または局所経路を含む任意の好適な経路により、対象(例えばヒト対象)に投与してもよい。
【0202】
特定の機構または作用機序に限定されないが、野生型Cpn10ポリペプチドのN末端ドメイン内の残基に対する修飾が、野生型Cpn10に比べて、病原体関連分子パターン(PAMP)を含む分子および/または損傷関連分子パターン(DAMP)を含む宿主分子に対する結合親和性の増大をもたらすものと考えられる。故に、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、一般に、野生型Cpn10とそれらの分子との間の結合相互作用より強力である。好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドとPAMPまたはDAMPを含む分子との間の結合相互作用は、Ala−Cpn10とそれらの分子との間の結合相互作用より強力である。PAMPまたはDAMPを含むリガンドのパターン認識受容体(PRR)への結合は、有効な固有の免疫応答を確立する上で中核となる一連の事象を開始させる。本発明のCpn10ポリペプチドによるこれらのリガンドの強力な結合が、それらリガンドとそれらの標的PRRとの間の相互作用を修飾または阻止すると仮定される。次いで、これは、PRRシグナル伝達によって誘発される免疫活性化(例えば炎症性分子の産生および分泌)の開始を阻害すると考えられる。
【0203】
本発明のCpn10ポリペプチドは、任意の微生物に由来するPAMPに結合しうる。かかる微生物の非限定例として、細菌、ウイルス、真菌、線虫、マイコバクテリアおよび原虫が挙げられる。
【0204】
好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドは、核酸に基づくPAMPに高親和性に結合する。
【0205】
本発明のCpn10ポリペプチドが結合しうる核酸に基づくPAMPの非限定例として、非メチル化シトシンリン酸グアニン(CgG)モチーフを有する細菌DNA、ならびに、二本鎖RNA、5'三リン酸ssRNAおよび他の複製中間体を含むウイルス由来のPAMPが挙げられる。
【0206】
好ましい実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、CpGモチーフ(CpG ODN)を有するオリゴヌクレオチドに高親和性に結合する。
【0207】
一般に、本発明のCpn10ポリペプチドは、CpG ODNに、野生型Cpn10がCpG ODNに結合する場合より高い親和性で結合する。好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドは、CpG ODNに、Ala−Cpn10がCpG ODNに結合する場合より高い親和性で結合する。
【0208】
特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、微生物に由来する1つもしくは複数のPAMPと、構造、立体配座および/または配列相同性を共有する宿主分子(例えば、宿主タンパク質、核酸または脂質)に結合する。
【0209】
したがって、本発明のCpn10ポリペプチドbindは、DAMPに結合しうる。
【0210】
好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドは、核酸に基づくDAMPに高親和性に結合し、その非限定例として、細胞DNAおよびRNAならびに免疫複合体が挙げられる。それに加え、またはその代わりに、本発明のCpn10ポリペプチドは、ヌクレオチドおよび/またはヌクレオシドDAMPに高親和性に結合する。
【0211】
好ましい実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドは、DNA DAMPに高親和性に結合する。
【0212】
一般に、本発明のCpn10ポリペプチドは、DNA DAMPに、野生型Cpn10がDNA DAMPに結合する場合より高い親和性で結合する。好ましくは、本発明のCpn10ポリペプチドは、DNA DAMPに、Ala−Cpn10がDNA DAMPに結合する場合より高い親和性で結合する。
【0213】
本発明のCpn10ポリペプチドによって結合されるPAMPまたはDAMPは、一般に、パターン認識受容体(PRR)に対するリガンドとなる。かかるリガンドによって結合されるPRRの非限定例として、toll様受容体(TLR)、レチノイン酸誘導性遺伝子I様受容体(RLR)、ヌクレオチド結合オリゴマー形成ドメイン様受容体(NLR)、およびIFN調節因子のDNA依存性活性化因子(DAI)が挙げられる。
【0214】
PRRは、1つもしくは複数の免疫細胞タイプ上で発現される場合があり、その非限定例として、マクロファージ、単球、Bリンパ球、マスト細胞、ナチュラルキラー細胞および樹状細胞(例えば、骨髄樹状細胞、形質細胞様樹状細胞)が挙げられる。
【0215】
特定の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドによって結合されるPAMPまたはDAMPは、RLR受容体に対するリガンドであり、その非限定例として、RIG−1およびMDA5が挙げられる。
【0216】
他の実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドによって結合されるPAMPまたはDAMPは、NLRに対するリガンドであり、その非限定例として、NALP3−インフラマソームおよびAIM2−インフラマソームが挙げられる。
【0217】
さらなる実施形態では、本発明のCpn10ポリペプチドによって結合されるPAMPまたはDAMPは、toll様受容体に対するリガンドである。toll様受容体は、TLR3、TLR7、TLR8、またはTLR9からなる群から選択されうる。一実施形態では、TLR受容体は、TLR9である。
【0218】
本明細書中に提供される方法に従い、本発明のCpn10ポリペプチドおよび本発明のCpn10核酸は、対象における免疫活性化を抑制するために投与される。
【0219】
対象は、限定はされないが、ヒツジ(ovine)属(例えば、ヒツジ(sheep))、ウシ属、ウマ属、ブタ属、ネコ属、イヌ属、霊長類(例えばヒト)、および齧歯類のメンバを含む任意の哺乳動物種の個体であってもよい。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0220】
特定の実施形態では、本方法は、免疫抑制剤を対象に投与するステップをさらに含む。免疫抑制剤の非限定例として、抗炎症性化合物、気管支拡張化合物、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、ならびにそれらの組み合わせ、が挙げられる。免疫抑制剤はまた、免疫抑制薬またはBもしくはTリンパ球に特異的な特異抗体、またはその活性化を媒介する表面受容体であってもよい。例えば、免疫抑制薬は、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0221】
上で考察したように、本発明のCpn10ポリペプチドの、PRRのPAMPおよびDAMP(すなわちリガンド)への結合が、リガンドと受容体との相互作用を改変すると考えられる。
【0222】
したがって、本発明のCpn10ポリペプチドの、PRRのアゴニストであるリガンドへの結合は、アゴニストのPRRに対する結合能を低下させ、それにより、免疫活性化に関与する細胞シグナルカスケードの開始を阻害しうる。
【0223】
リガンドの、食細胞(例えばマクロファージ)上の細胞PRRへの結合によって開始される細胞シグナルカスケードは、エンドサイトーシスおよび病原体の破壊を誘発しうる。
【0224】
リガンドの、細胞PRRへの結合によって開始される細胞シグナルカスケードは、炎症性メディエーターまたは抗炎症性メディエーター(例えば、サイトカインおよびケモカイン)の産生および分泌を誘発しうる。次いで、これらのメディエーターは、様々な免疫細胞の活性化および機能を調節する。
【0225】
一般に、本発明のCpn10ポリペプチド(および/またはそれをコードする本発明のCpn10核酸)は、それらが投与される対象における免疫活性化を抑制する。
【0226】
本発明のCpn10ポリペプチド(および/またはそれをコードする本発明のCpn10核酸)の所与の対象における免疫活性化に対する抑制能は、当該技術分野で既知の標準的技術を用いて測定可能である。
【0227】
例えば、PRRを発現する対象に由来する免疫細胞を、生体外で所与のPRRリガンドと併せてCpn10ポリペプチドに暴露し、次いで炎症性メディエーター(例えば、サイトカインおよびケモカイン)の産生および/または分泌を標準的アッセイ(例えばELISA)を用いて測定してもよい。炎症性メディエーターは、炎症性サイトカインまたはケモカイン(例えば、TNFα、IL−1、IL4、IL6、IL8、IL−12、IL−17、IL−23、IFNα、IFNβ、IFNγ、RANTESなど)、化学メディエーター(例えば、ロイコトリエン、ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジン、CGRP、酸化窒素、ブラジキニン、リソソーム酵素、トロンボキサン、血小板活性化因子(PAF)、反応性酸素種、酸化窒素)、神経ペプチド、成長因子または神経伝達物質、であってもよい。炎症性メディエーターは、抗炎症性サイトカイン(例えば、IL4、IL−10、TGFβ)であってもよい。
【0228】
それに加え、またはその代わりに、炎症性メディエーターに対する細胞表面受容体および/または活性化細胞表面マーカーの発現は、免疫細胞の、所与のPRRリガンドと併せた本発明のCpn10ポリペプチドへの暴露後に、生体外で(例えばフローサイトメトリーにより)測定してもよい。
【0229】
細胞活性化の度合いもまた、細胞シグナル(例えば、TLR媒介性NF−κB活性化、1型インターフェロン産生、チロシンまたはセリン/トレオニンのリン酸化、ADPリボシル化など)または補体の活性化を、当該技術分野で既知の標準的アッセイを用いて検出することによって測定してもよい。
【0230】
当業者は、上で言及された免疫活性化を検出するための方法があくまで例示を目的として提供され、かつ当該技術分野で既知の他の好適な手段が本発明の範囲内に含まれることを理解するであろう。
【0231】
処置の方法
本発明は、免疫活性化に関連した疾患および症状、特に過剰および/または慢性炎症の処置および/または予防のための方法を提供する。本方法は、本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸を投与するステップを含む。ポリペプチドおよび/または核酸は、組成物(例えば、適切な担体、希釈剤および/または担体を含む医薬組成物)の形態で投与してもよい。
【0232】
特定の機構または作用機序に限定されないが、本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸(またはそれらを含む組成物)の投与は、PRR媒介性のシグナル伝達を阻害する手段を提供すると考えられることから、それを用い、対象における炎症性メディエーターの産生/分泌を抑制することが可能である。多数の疾患および症状は、免疫系の慢性炎症に関連し、それ故、本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸の投与は、かかる疾患を予防および/または処置する手段を提供する。
【0233】
特定の実施形態では、本方法は、免疫抑制剤を対象に投与するステップをさらに含む。免疫抑制剤の非限定例として、抗炎症性化合物、気管支拡張化合物、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、ならびにそれらの組み合わせ、が挙げられる。免疫抑制剤はまた、免疫抑制薬またはBもしくはTリンパ球に対する特異抗体、またはその活性化を媒介する表面受容体であってもよい。例えば、免疫抑制薬は、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0234】
本発明の方法に従って処置される疾患は、自己免疫炎症性疾患であってもよい。かかる疾患の非限定例として、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)、慢性疲労症候群、アルツハイマー、グレーブス病、変形性関節症、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性神経炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、自己免疫性ぶどう膜炎、乾癬、シェーグレン病、サルコイドーシス、皮膚筋炎、白血球破砕性血管炎、重症筋無力症、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛、および多発性筋炎、が挙げられる。
【0235】
本発明の方法に従って処置される疾患は、非自己免疫性炎症性疾患であってもよい。かかる疾患の非限定例として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、リーキーガット症候群、心血管疾患(例えば鬱血性心疾患)、アレルギー(例えば、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アテローム硬化症、および感染性疾患、が挙げられる。
【0236】
それに加え、またはその代わりに、本発明の方法に従って処置される疾患は、移植片対宿主病(GVHD)であってもよい。
【0237】
本発明の方法に従って処置される対象は、限定はされないが、ヒツジ(ovine)属(例えば、ヒツジ(sheep))、ウシ属、ウマ属、ブタ属、ネコ属、イヌ属、霊長類(例えばヒト)、および齧歯類のメンバを含む任意の哺乳動物種の個体であってもよい。好ましくは、対象は、ヒトである。
【0238】
対象は、疾患(例えば炎症性疾患)を患っているかまたは患っているのではないかと思われうる。あるいは、対象は、疾患(例えば炎症性疾患)を発症しやすい傾向を有するかまたは有するのではないかと思われうる。
【0239】
ポリペプチドまたは核酸は、限定はされないが、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下または筋肉内)、粘膜(例えば、経口または鼻腔内)、または局所経路を含む任意の好適な経路により、対象(例えばヒト対象)に投与してもよい。
【0240】
特定の実施形態では、本発明は、疾患を処置するための薬剤の調製における本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸の使用を提供する。
【0241】
疾患は、自己免疫炎症性疾患であってもよい。かかる疾患の非限定例として、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)、慢性疲労症候群、アルツハイマー、グレーブス病、変形性関節症、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性神経炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、自己免疫性ぶどう膜炎、乾癬、シェーグレン病、サルコイドーシス、皮膚筋炎、白血球破砕性血管炎、重症筋無力症、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛、および多発性筋炎、が挙げられる。
【0242】
疾患は、非自己免疫性炎症性疾患であってもよい。かかる疾患の非限定例として、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、感染性疾患、リーキーガット症候群、心血管疾患(例えば鬱血性心疾患)、アレルギー(例えば、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、アテローム硬化症、および感染性疾患、が挙げられる。
【0243】
それに加え、またはその代わりに、本発明の方法に従って処置される疾患は、移植片対宿主病(GVHD)であってもよい。
【0244】
本発明のCpn10ポリペプチドは、組成物の形態で対象に投与してもよい。一般に、本発明の方法に準じた使用に適した組成物は、当業者に既知の方法に従って調製してもよく、また医薬的に許容できる担体、希釈剤および/またはアジュバントを含んでもよい。本発明の組成物は、本発明のCpn10ポリペプチドまたは本発明の2つ以上の異なるCpn10ポリペプチドの組み合わせを含むように調製してもよい。かかる組成物は、医薬的に許容できる担体、アジュバントおよび/または希釈剤を含む医薬組成物中に含めてもよい。本発明の組成物は、免疫抑制剤を含んでもよい。
【0245】
本発明の実施形態では、本発明のCpn10核酸の投与についても検討される。かかる状況では、本発明のCpn10核酸(例えば、DNAまたはcDNA)は、核酸の対象への投与後に適切なポリペプチド配列が生成されるように、典型的にはプロモーターに作動可能に連結される。核酸は、ベクターで対象に投与してもよい。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または外来配列の挿入、真核細胞へのそれらの導入および導入配列の発現に適した任意の他の好適な媒体であってもよい。投与されるべき核酸コンストラクトは、裸DNAを含むか、または1つもしくは複数の医薬的に許容できる担体とともに組成物の形態であってもよい。
【0246】
典型的には、ベクターは、真核発現ベクターであり、また、発現制御およびプロセシング配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列を含んでもよい。本発明のCpn10ポリペプチドをコードする核酸の発現は、当該技術分野で既知の様々な遺伝子送達方法を用い、対象の免疫細胞内で増大しうる。例えば、誘導性プロモーターなどの発現制御配列に作動可能に連結された、本発明のCpn10ポリペプチドをコードする核酸配列を含む発現ベクターは、ポリペプチドの生成を増大させるため、対象に投与してもよい。あるいは、本発明のCpn10ポリペプチドをコードする核酸配列を有するウイルスベクター(例えばレトロウイルスおよびアデノウイルスベクター)は、前記タンパク質の生成を誘発するため、対象に投与してもよい。本発明のCpn10ポリペプチドをコードする核酸の送達はまた、細胞を対象から抽出し、目的の核酸を有するベクターを投与し、次いで細胞を対象に再導入することによって行ってもよい。
【0247】
本明細書中に提供される疾患を予防または処置するための方法の有効性は、標準的技術を用いて判定してもよい。
【0248】
治療用途においては、かかる判定は、一般に、疾患が、処置された対象において治癒されるかまたは少なくとも部分的に抑制されるかを確定することに依存することになる。
【0249】
予防用途においては、かかる判定は、一般に、対象が、処置後の関連期間にわたって疾患を発病するか否かを確定することに依存することになる。
【0250】
これらの要素は、対象の問題の疾患の症候および兆候についての臨床試験によって確定することが可能である。それに加え、またはその代わりに、診断アッセイを行い、疾患の指標または問題の疾患を発病する可能性を検出することが可能である。
【0251】
免疫抑制剤についてのスクリーニング
本発明のCpn10N末端ドメイン変異体はまた、スクリーニングアッセイにおいて使用し、それらの活性のアゴニストを同定することが可能である。これらのアゴニストは、一般に、本発明の変異体によって媒介されるPRRシグナル伝達に対する抑制効果を促進することから、PRRシグナル伝達のアンタゴニストとなる。
【0252】
本発明のCpn10ポリペプチドに結合する化合物は、それらの活性を促進する能力を有しうる。
【0253】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、本発明のCpn10ポリペプチドに結合する作用剤についてスクリーニングする方法を提供する。本方法は、ポリペプチドを候補作用剤と、候補作用剤とポリペプチドとの間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、作用剤がポリペプチドに結合するか否かを判定するステップと、を含む。
【0254】
本発明のCpn10核酸に結合する化合物は、それらの活性を促進する能力を有しうる。
【0255】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、本発明のCpn10核酸に結合する作用剤についてスクリーニングする方法を提供する。本方法は、核酸を候補作用剤と、候補作用剤と核酸との間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、作用剤が核酸に結合するか否かを判定するステップと、を含む。
【0256】
候補作用剤の本発明のCpn10ポリペプチドまたは本発明のCpn10核酸への「結合」が、直接結合、間接結合(例えば1つもしくは複数の中間分子を介する)、部分結合、完全結合、一過性(transient)/一時的(temporary)結合および安定的/持続的(enduring)結合、を包含することは理解されるであろう。
【0257】
特に、望ましい作用剤は、本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸に結合し、それらの活性を促進する能力を有する候補作用剤である。
【0258】
本発明のスクリーニング方法において使用される候補作用剤は、任意の供給源に由来してもよい。
【0259】
例えば、候補作用剤は、天然起源または合成であってもよい。
【0260】
有望な候補作用剤は、本発明の方法におけるスクリーニングのため、当業者に既知の多数の技術によって生成してもよい。例えば、X線結晶学および核磁気共鳴分光学などの方法を用い、本発明のCpn10ポリペプチドおよび本発明のCpn10核酸の構造をモデル化することにより、コンピュータに基づくモデリングを用いて有望な免疫抑制剤の設計を容易化できる。また、様々な形態のコンビナトリアル化学を用い、推定上の候補作用剤を生成することが可能である。
【0261】
候補作用剤は、任意の分子量、例えば、少なくとも約100、200、300、400、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、7000、9000、10000、20000、30000、40000、50000、60000、70000、80000、90000、もしくは100000ダルトンであってもよい。
【0262】
候補作用剤は、任意の化合物であってもよく、その非限定例として、アミノ酸、核酸、ペプチド核酸、脂質、ポリペプチド、炭水化物、およびヌクレオシドが挙げられる。他の非限定例として、ペプチドミメティクス(例えば、ペプトイド)、アミノ酸類似体、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチド類似体、ヌクレオチド、ヌクレオチド類似体、代謝産物、代謝類似体、および有機もしくは無機化合物(ヘテロ有機および有機金属化合物を含む)が挙げられる。
【0263】
特定の実施形態では、ハイスループット方法を用い、化学物質の大規模ライブラリがスクリーニングされる。候補化合物のかかるライブラリは、作成するかまたは商業的供給源から購入してもよい。例えば、ライブラリは、10,000、50,000、もしくは100,000もしくはそれより多くの固有化合物を含んでもよい。あくまで一例として、ライブラリは、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾオキサゾール、フラン、イミダゾール、インドール、モルホリン、ナフタレン、ピペリジン、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、ピロリジン、ピロール、キノリン、チアゾール、チオフェン(thiphenes)、およびトリアジンを含む複素環から作成してもよい。ライブラリは、化学物質、例えば、Carrellら、(1994年)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2059頁;Carellら、(1994年)、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33:2061頁;Choら、(1993年)、Science 261:1303−1305頁;DeWittら、(1993年)、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:6909−6913頁;Erbら、(1994年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422−11426頁;Gallopら、(1994年)、J.Med.Chem.37:1233−1251頁;およびZuckermannら、(1994年)、J.Med.Chem.37:2678−2685頁において記載のものの1つもしくは複数のクラスを含んでもよい。
【0264】
本発明のスクリーニング方法は、候補作用剤を本発明のCpn10ポリペプチドまたは本発明のCpn10核酸と接触させるステップを含む。
【0265】
本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸と結合するかまたはそうでなければ相互作用する作用剤、および詳細にはそれらの活性を促進する作用剤は、種々の好適な方法によって同定してもよい。非限定的方法として、ツーハイブリッド法、共免疫沈降、親和性精製、質量分析、タンデム親和性精製、ファージディスプレイ、ラベル転移、DNAマイクロアレイ/遺伝子共発現およびタンパク質マイクロアレイ、が挙げられる。
【0266】
例えば、ツーハイブリッドアッセイを用い、候補作用剤が本発明のCpn10ポリペプチドと相互作用または結合するかを判定してもよい。酵母ツーハイブリッドアッセイシステムは、典型的にはタンパク質−タンパク質相互作用を検出するのに使用される酵母に基づく遺伝子アッセイである(例えば、FieldsおよびSong、(1989年)、Nature、340:245−246頁を参照)。同アッセイは、転写活性化因子のマルチドメイン性を利用する。例えば、既知の転写活性化因子のDNA結合ドメインは、本発明のCpn10ポリペプチドに融合され、また転写活性化因子の活性化ドメインは、候補作用剤に融合されうる。候補作用剤とポリペプチドとの間の相互作用は、転写活性化因子のDNA結合および活性化ドメインを近接化することになる。それに続く、転写活性化因子によって活性化される特定のレポーター遺伝子の転写は、相互作用の検出を可能にする。
【0267】
上記技術の改良においては、融合タンパク質は、本発明のCpn10ポリペプチドを検出可能なタグ(例えばアルカリホスファターゼ)に融合し、FlanaganおよびLederによって記載の免疫沈降の改良形態(FlanaganおよびLeder、(1990年)、Cell、63:185−194頁)を用いることによって作成することが可能である。
【0268】
それに加え、またはその代わりに、共免疫沈降を用い、候補作用剤が本発明のCpn10ポリペプチドと相互作用または結合するかを判定してもよい。この技術を用い、末梢血単核球の試料は、タンパク質−タンパク質相互作用の保護に適した非変性条件下で溶解されうる。次いで、得られた溶液は、本発明のCpn10ポリペプチドに特異的な抗体とともにインキュベートされ、例えば固体支持体に付着された抗体結合タンパク質による捕捉により、バルク溶液から免疫沈降されうる。この方法によるポリペプチドの免疫沈降は、ポリペプチドに関連の作用剤の共免疫沈降を容易にする。関連の作用剤の同定は、限定はされないが、SDS−PAGE、ウエスタンブロッティング、および質量分析を含む、当該技術分野で多くの既知の方法を用いて確立してもよい。
【0269】
それに加え、またはその代わりに、ファージディスプレイ法を用い、候補作用剤が本発明のCpn10ポリペプチドと相互作用または結合するかを判定してもよい。ファージディスプレイは、遺伝子バンク由来の複数の遺伝子をファージに組み込むことによる、タンパク質相互作用についてスクリーニングするための試験である。この方法下で、組換えDNA技術を用い、極めて多数の遺伝子が、各遺伝子のポリペプチド生成物がウイルス粒子の表面上に提示されるように、バクテリオファージのコートタンパク質と融合されて、発現される。目的のファージディスプレイされたポリペプチド生成物の全ライブラリは、このようにして作成されうる。次いで、ファージディスプレイされたポリペプチド生成物の得られたライブラリに対し、本発明のCpn10ポリペプチドに対する結合能についてスクリーニングしてもよい。ファージと相互作用することから抽出されたDNAは、ポリペプチドと相互作用する配列を有する。
【0270】
それに加え、またはその代わりに、アフィニティークロマトグラフィーを用い、候補作用剤が本発明のCpn10ポリペプチドと相互作用または結合するかを判定してもよい。例えば、本発明のCpn10ポリペプチドは、支持体(セファロースなど)上に固定され、また細胞溶解液がカラム上を通過されうる。次いで、固定された本発明のCpn10ポリペプチドに結合するタンパク質が、カラムから溶出され、例えばN末端アミノ酸の配列決定によって同定されうる。
【0271】
本発明のCpn10核酸と結合するかまたはそうでなければ相互作用する作用剤、また詳細にはそれらの活性を調節する作用剤は、当該技術分野で既知の種々の方法によって同定してもよく、その非限定例として、電気泳動、ゲルシフトアッセイ、表面プラズモン共鳴ATPアーゼアッセイ、円偏光二色性、質量分析、および核磁気共鳴、が挙げられる。DNA結合分子の検出のためのスクリーニングアッセイの具体例が、米国特許第5726014号明細書中に記載されている。
【0272】
本発明のCpn10ポリペプチドおよび本発明のCpn10核酸は、ハイスループットスクリーニングにおいて使用し、候補作用剤の、それらと結合するかまたはそうでなければ相互作用する能力についてアッセイしてもよい。これらの候補化合物は、機能的なポリペプチドおよび核酸に対してさらにスクリーニングし、作用剤の活性に対する効果を判定してもよい。
【0273】
本発明ではまた、本発明のCpn10ポリペプチドの活性を、ポリペプチドの発現を改変することによって促進しうる化合物の同定について検討される。この場合、かかる化合物は、候補化合物の存在下でのポリペプチドの発現レベルを候補化合物の不在下での発現レベルと比較することによって同定することが可能である。
【0274】
特定の候補作用剤によって結合されることが同定された本発明のCpn10ポリペプチドの活性は、例えば、免疫細胞(例えば末梢血単核球)の試料を、PRRリガンドの存在下で、ポリペプチドおよび作用剤と接触させることにより、評価してもよい。次いで、細胞内で誘発されるPRR媒介性のシグナル伝達の度合いは、当該技術分野で既知の方法を用いて評価してもよい。好適な方法は、限定はされないが、上記の表題「免疫抑制」の項に記載のものを含む。例えば、細胞内で誘発されるPRR媒介性のシグナル伝達の度合いは、炎症性メディエーター(例えばサイトカインおよびケモカイン)の産生および/または分泌を測定し、炎症性メディエーターに対する細胞表面受容体または他の活性化細胞表面マーカーの発現を測定し、活性化(例えば、TLR媒介性のNF−κB活性化、1型インターフェロン産生、チロシンまたはセリン/トレオニンリン酸化、ADPリボシル化など)を示す細胞シグナルを検出し、および/または補体系の活性化を検出することによって評価してもよい。
【0275】
特定の候補作用剤によって結合されることが同定された本発明のCpn10核酸の活性は、例えば、候補作用剤への暴露時に、コードされたポリペプチドの生成を測定することにより、評価してもよい。これは、例えば、タンパク質を検出し、および/または定量することが可能な任意の技術を用いて行ってもよい。好適な方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、免疫組織化学、SDS−PAGE、イムノアッセイ、プロテオミクスなどを含む。それに加え、またはその代わりに、同定された作用剤の存在下での核酸の転写レベルは、例えば定量的転写(transcription quantitative)ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を含む技術を用いて測定してもよい。
【0276】
上記の技術が、あくまで、本発明のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明のCpn10核酸と相互作用するか、あるいはそれらの活性を促進する能力を有する作用剤を同定するために利用可能な方法のタイプの例であることは理解されるであろう。他の好適な方法は、当業者によって既知となり、本発明の範囲内である。
【0277】
上記の方法を用い、本発明のCpn10ポリペプチドまたは本発明のCpn10核酸のアゴニストである作用剤は、同定可能である。アゴニストである作用剤は、ポリペプチドまたは核酸の1つもしくは複数の生物学的活性を促進する。好ましくは、アゴニストによって促進される生物学的活性は、ポリペプチドのPRRリガンドへの結合である。
【0278】
抗体を産生するための方法は、当該技術分野で既知であり、上記の表題「抗体」の項に記載されている。
【0279】
組成物
本発明は、本発明の1つもしくは複数のCpn10ポリペプチドおよび/または本発明の1つもしくは複数のCpn10核酸を含む組成物を提供する。本発明の組成物は、本発明の1つもしくは複数の抗体を含んでもよい。
【0280】
本発明の組成物は、医薬的に許容できる担体、アジュバントおよび/または希釈剤を含んでもよい。担体、希釈剤およびアジュバントは、組成物の他の成分に適合可能であり、かつそのレシピエントに対して有害でないという点で「許容できる」必要がある。医薬的に許容できる担体または希釈剤の非限定例として、脱塩水または蒸留水;生理食塩水溶液;植物に基づく油、例えば、ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油;ゴマ油、例えば、ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、ラッカセイ油またはヤシ油;ポリシロキサン、例えばメチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサンおよびメチルフェニルポリシロキサン(polysolpoxane)を含むシリコーン油;揮発性シリコーン;液体パラフィン、ソフトパラフィンまたはスクアランなどの鉱油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;低級アルカノール、例えばエタノールまたはイソプロパノール;低級aralkanols;低級ポリアルキレングリコールまたは低級アルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールまたはグリセリン;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピルまたはオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrolidone);寒天;ガムトラガカントまたはアカシアゴム、ならびにワセリン、が挙げられる。典型的には、1つもしくは複数の担体は、組成物の10重量%〜99.9重量%を形成することになる。
【0281】
それに加え、またはその代わりに、本発明の組成物は、免疫抑制剤を含んでもよく、その非限定例として、抗炎症性化合物、気管支拡張化合物、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。免疫抑制剤はまた、免疫抑制薬またはBもしくはTリンパ球に対する特異抗体、またはその活性化を媒介する表面受容体であってもよい。例えば、免疫抑制薬は、シクロスポリン、タクロリムス、シロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、メトトレキサート、クロモグリケート、テオフィリン、ロイコトリエンアンタゴニスト、および抗ヒスタミン、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0282】
それに加え、またはその代わりに、本発明の組成物は、アジュバントを含んでもよい。任意の好適なアジュバントは、本発明のワクチン中に含めてもよい。例えば、アルミニウムに基づくアジュバントを使用してもよい。好適なアルミニウムに基づくアジュバントは、限定はされないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムおよびそれらの組み合わせを含む。使用可能なアルミニウムに基づくアジュバントの他の具体例が、欧州特許第1216053号明細書および米国特許第6372223号明細書中に記載されている。
【0283】
水中油エマルジョンは、本発明の組成物およびワクチン中のアジュバントとして使用してもよい。水中油エマルジョンは、当該技術分野で周知である。一般に、水中油組成物は、代謝可能な油、例えば、魚油、植物油、または合成油を含むことになる。好適な水中油エマルジョンの例として、欧州特許第0399843号明細書、米国特許第7029678号明細書およびPCT公開の国際公開第2007/006939号パンフレット中に記載のものが挙げられる。水中油エマルジョンは、他のアジュバントおよび/または免疫刺激剤と併用してもよい。
【0284】
他の好適なアジュバントの非限定例として、免疫刺激剤、例えば顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、モノホスホリル脂質A(MPL)、コレラ毒素(CT)またはその成分サブユニット、易熱性エンテロトキシン(LT)またはその成分サブユニット、toll様受容体リガンドアジュバント、例えばリポ多糖(LPS)、およびそれらの誘導体(例えば、モノホスホリル脂質Aおよび3−脱アシル化モノホスホリル脂質A)、ムラミールジペプチド(MDP)、および呼吸器合抱体ウイルス(RSV)のFタンパク質、が挙げられる。
【0285】
それに加え、またはその代わりに、本発明の組成物は、ステロイド、例えばコルチコステロイドを含んでもよい。
【0286】
本発明の組成物は、注射による投与に適した形態、経口摂取に適した製剤の形態(例えば、カプセル、タブレット、カプレット、エリキシルなど)、局所投与に適した軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼剤としての送達に適した形態、吸入、例えば鼻腔内吸入または経口吸入による投与に適したエアロゾル形態、あるいは非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内または静脈内注射に適した形態であってもよい。
【0287】
注射可能溶液または懸濁液としての投与においては、無毒な非経口的に許容できる希釈剤または担体は、リンガー液、等張生理食塩水、リン酸塩緩衝化生理食塩水、エタノールおよび1,2プロピレングリコールを含んでもよい。
【0288】
経口使用に適した数例の担体、希釈剤、賦形剤およびアジュバントは、ピーナッツ油、液体パラフィン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アカシアゴム、トラガカントゴム、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、ゼラチンおよびレシチンを含む。さらにこれらの経口製剤は、好適な香料および着色剤を含有してもよい。カプセルは、カプセル形態で使用される場合、崩壊を遅延させるモノステアリン酸グリセリルまたはステアリン酸グリセリルなどの化合物でコーティングしてもよい。
【0289】
アジュバントは、典型的には、皮膚軟化剤、乳化剤、増粘剤、防腐剤、殺菌薬および緩衝剤を含む。
【0290】
経口投与用の固体形態は、ヒトおよび動物(veterinary)対象の薬務において許容できる結合剤、甘味料、崩壊剤、希釈剤、香料、コーティング剤、防腐剤、潤滑剤および/または時間遅延剤(time delay agent)を含有してもよい。好適な結合剤は、アカシアゴム、ゼラチン、トウモロコシデンプン、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースまたはポリエチレングリコールを含む。好適な甘味料は、スクロース、ラクトース、グルコース、アスパルテームまたはサッカリンを含む。好適な崩壊剤は、トウモロコシデンプン、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、グアーガム、ザンタンガム、ベントナイト、アルギン酸または寒天を含む。好適な希釈剤は、ラクトース、ソルビトール、マンニトール、デキストロース、カオリン、セルロース、炭酸カルシウム、けい酸カルシウムまたはリン酸ニカルシウムを含む。好適な香料は、ペパーミント油、冬緑油、サクランボ油、オレンジ油またはラズベリー香料、を含む。好適なコーティング剤は、アクリル酸および/またはメタクリル酸および/またはそれらのエステルのポリマーまたはコポリマー、ワックス、脂肪アルコール、ゼイン、セラックまたはグルテン、を含む。好適な防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ビタミンE、α−トコフェロール、アスコルビン酸、メチルパラベン、プロピルパラベンまたは重亜硫酸ナトリウム、を含む。好適な潤滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウムまたはタルク、を含む。好適な時間遅延剤は、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルを含む。
【0291】
経口投与用の液体形態は、上記作用剤に加え、液体担体を含有してもよい。好適な液体担体は、水、油、例えば、オリーブ油、ピーナッツ油、ゴマ油、ヒマワリ油、サフラワー油、ラッカセイ油、ヤシ油、液体パラフィン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、グリセロール、脂肪アルコール、トリグリセリドまたはそれらの混合物を含む。
【0292】
経口投与用の懸濁液は、分散剤および/または懸濁化剤をさらに含んでもよい。好適な懸濁化剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、またはアセチルアルコール、を含む。好適な分散剤は、レシチン、脂肪酸のポリオキシエチレンエステル、例えば、ステアリン酸、ポリオキシエチレンソルビトールモノ−もしくはジ−オレエート、−ステアレートまたは−ラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノ−もしくはジ−オレエート、−ステアレートまたは−ラウレートなど、を含む。
【0293】
経口投与用のエマルジョンは、1つもしくは複数の乳化剤をさらに含んでもよい。好適な乳化剤は、上で例示された分散剤、またはグアーガム、アカシアゴムもしくはトラガカントゴムなどの天然ゴムを含む。
【0294】
非経口に投与可能な組成物を調製するための方法は、当業者にとって自明であり、例えば、「Remington's Pharmaceutical Science」、第15版、Mack Publishing Company,Easton,Pa中により詳述されている。
【0295】
本発明の局所製剤は、1つもしくは複数の許容できる担体と、場合によって任意の他の治療成分とともに活性成分を含んでもよい。局所投与に適した製剤は、処置が必要とされる部位に向けての皮膚の貫通に適した液体または半液体製剤、例えば、眼、耳または鼻への投与に適した塗布剤、ローション、クリーム、軟膏またはペースト、およびドロップを含む。
【0296】
本発明に従うドロップは、無菌の水性もしくは油性の溶液または懸濁液を含んでもよい。これらは、活性成分を、殺菌剤および/または抗真菌剤および/または任意の他の好適な防腐剤(場合によって表面活性剤を含む)の水溶液に溶解させることによって調製してもよい。次いで、得られた溶液は、濾過によって浄化し、好適な容器に移し、滅菌してもよい。滅菌は、90℃〜100℃で30分間オートクレーブまたは維持するかあるいは濾過し、その後、無菌技術によって容器に移すことにより、行ってもよい。ドロップ中への封入に適した殺菌剤および抗真菌剤の例として、硝酸フェニル水銀または酢酸フェニル水銀(0.002%)、塩化ベンザルコニウム(0.01%)および酢酸クロルヘキシジン(0.01%)、が挙げられる。油性溶液の調製にとって好適な溶媒は、グリセロール、希釈アルコールおよびプロピレングリコールを含む。
【0297】
本発明に従うローションは、皮膚または眼への適用に適したものを含む。点眼薬は、場合によって殺菌薬を含有する無菌水溶液を含んでもよく、ドロップの調製に関する上記の方法と同様の方法で調製してもよい。皮膚に適用するためのローションまたは塗布剤はまた、乾燥を速め、皮膚を冷やすための作用剤、例えばアルコールまたはアセトン、および/またはグリセロールなどの保湿剤、あるいはヒマシ油またはラッカセイ油などの油、を含んでもよい。
【0298】
本発明に従うクリーム、軟膏またはペーストは、外用の活性成分の半固体製剤である。それらは、微粉または粉末形態の活性成分を、単独であるいは水性または非水性流体中の溶液または懸濁液中で、脂肪性または非脂肪性基剤と混合することによって作製してもよい。基剤は、炭化水素、例えば、硬質、軟質または液体パラフィン、グリセロール、蜜ろう、金属石鹸;粘液;天然由来の油、例えば、アーモンド油、トウモロコシ油、ラッカセイ油、ヒマシ油またはオリーブ油、羊毛脂またはその誘導体、あるいはプロピレングリコールまたはマクロゴールなどのアルコールを伴うステアリン酸またはオレイン酸などの脂肪酸、を含んでもよい。
【0299】
本発明の組成物は、アニオン性、カチオン性もしくは非イオン性界面活性剤などの任意の好適な界面活性剤、例えばソルビタンエステルまたはそのポリオキシエチレン誘導体を組み込んでもよい。天然ゴム、セルロース誘導体または無機材料などの懸濁化剤、例えばケイ素シリカ(silicaceous silica)、およびラノリンなどの他の成分もまた、含めてもよい。
【0300】
本発明の組成物は、リポソームの形態で投与してもよい。リポソームは、一般にリン脂質または他の脂質物質に由来し、水性培地中に分散されたモノまたはマルチラメラ水和液晶によって形成される。リポソームを形成可能な、任意の無毒の生理学的に許容できる代謝可能な脂質を使用してもよい。リポソーム形態の組成物は、安定剤、防腐剤、賦形剤などを含有してもよい。好ましい脂質は、天然および合成の双方での、リン脂質およびホスファチジルコリン(レシチン)である。リポソームを形成するための方法は、当該技術分野で既知であり、これに関しては、特に、Prescott(編)、(1976年)、「Methods in Cell Biology」、第XIV巻、Academic Press,New York,N.Y.33頁(以下参照)を参照のこと。
【0301】
本組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)誘導体のアレイに複合してもよい。PEGのタンパク質への付加(ペグ化)は、タンパク質の血漿クリアランス速度を減少させ、それによりその有効性を増大させるための十分に確立された方法である(Nucciら、1991年、Adv.Drug Del.Rev.6:133頁)。ペグ化のさらなる利点は、タンパク質の安定性の増大、免疫原性の低下、溶解度の促進およびタンパク質加水分解に対する感受性の低下を含みうる(Sheffield W.2001年、Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord.1:1−22頁)。PEG分子は、−(OCHCH−OHの基本的な反復構造を有し、その分子量に従うグループに分類される。PEG誘導体は、タンパク質に複合されることで、その流体力学的半径が増加し、一般に、その半減期の増加は、付加されるPEG鎖のサイズに直接関連する(Sheffield W.2001年、Curr Drug Targets Cardiovasc Haematol Disord.1:1−22頁)。
【0302】
本組成物はまた、微粒子の形態で投与してもよい。ポリラクチド(PLA)、ポリラクチド−co−グリコリド(PLGA)、およびイプシロン−カプロラクトン(ε−caprolactone)から形成される生分解性微粒子は、血漿半減期を増加させ、それによって有効性を延長する薬剤担体として広く使用されている(R.Kumar、M.、2000年、J Pharm Pharmaceut Sci.3(2)234−258頁)。微粒子は、ワクチン、抗生物質、およびDNAを含む、ある範囲の薬剤候補を送達するために調合されている。さらに、これらの製剤は、非経口的な皮下注射、静脈内注射および吸入を含む様々な送達経路に対して開発されている。
【0303】
本組成物は、イソ酪酸酢酸スクロース(SAIB)および有機溶媒または有機溶媒混合物からなる放出制御マトリックスを組み込んでもよい。ポリマー添加剤は、さらに粘度を増大させかつ放出速度を低下させるための放出調節剤として媒体に添加してもよい。SAIBは、周知の食品添加物である。それは、イソ酪酸基6対酢酸基2の名目比の、非常に疎水性の高い、完全エステル化スクロース誘導体である。混合エステルとして、SAIBは、結晶化しないが、透明な粘液として存在する。SAIBをエタノールまたはベンジルアルコールなどの医薬的に許容できる有機溶媒と混合すると、混合物の粘度が十分に低下し、注射が可能になる。活性薬剤成分をSAIB送達媒体に添加し、SAIB溶液または懸濁製剤を形成することが可能である。製剤が皮下注射される場合、溶媒がマトリックスから拡散し、それにより、SAIB薬剤またはSAIB−薬剤−ポリマー混合物がインサイチュで形成するデポーとして構成されうる。
【0304】
本発明の目的のため、分子および作用剤は、治療用または予防用のいずれかの組成物として対象に投与してもよい。例えば、本発明の組成物は、ワクチン(例えば予防用ワクチンまたは治療用ワクチン)として投与してもよい。治療用途においては、組成物は、既に疾患に罹患している患者に、疾患およびその合併症を治療するかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。組成物は、患者を有効に処置するのに十分な量の分子または作用剤を提供する必要がある。
【0305】
本発明の実施形態では、本発明のCpn10核酸の投与についても検討される。かかる状況では、核酸は、核酸の対象への投与後に適切なポリペプチド配列が生成されるように、典型的にはプロモーターに作動可能に連結される。核酸は、ベクターで対象に投与してもよい。ベクターは、プラスミドベクター、ウイルスベクター、または外来配列の挿入、真核細胞へのそれらの導入および導入配列の発現に適した任意の他の好適な媒体であってもよい。典型的には、ベクターは、真核発現ベクターであり、また、発現制御およびプロセシング配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列を含んでもよい。投与されるべき核酸コンストラクトは、裸DNAを含むか、または1つもしくは複数の医薬的に許容できる担体とともに組成物の形態であってもよい。
【0306】
投与の経路
本発明のCpn10ポリペプチド、本発明のCpn10核酸、本発明の組成物、または本発明の抗体の対象への投与は、限定はされないが、非経口(例えば、静脈内、皮内、皮下または筋肉内)、粘膜(例えば、経口または鼻腔内)または局所経路を含む、任意の好適な経路によって行ってもよい。
【0307】
したがって、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物は、注射による投与に適した形態、経口摂取(例えば、カプセル、タブレット、カプレット、エリキシルなど)に適した製剤の形態、局所投与に適した軟膏、クリームまたはローションの形態、点眼剤としての送達に適した形態、吸入、例えば鼻腔内吸入または経口吸入による投与に適したエアロゾル形態、あるいは非経口投与、すなわち、皮下、筋肉内または静脈内注射に適した形態で投与してもよい。
【0308】
鼻腔内投与用の製剤は、凍結乾燥粉末形態、点鼻剤、スプレーのような液体形態、または、粉末、クリーム、もしくはエマルジョンのような吸入に適した形態で提供してもよい。
【0309】
一実施形態では、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物は、本発明の方法に従い、対象への投与用に経口形態で提供される。経口投与は、自己タンパク質中に存在する抗原(病原性細菌タンパク質の場合と配列相同性を共有する)に対する耐性を再誘発するように設計された処置方法に役立ちうる。
【0310】
ポリペプチド、核酸、抗体または組成物は、治療的または予防的に対象に投与してもよい。
【0311】
治療用途においては、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物は、既に疾患(例えば炎症性疾患)に罹患している患者に、疾患およびその合併症を治療するかまたは少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で投与される。典型的には、治療用途の場合、処置は、病状または症状の期間中に行われることになる。
【0312】
予防用途においては、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物は、投与時に疾患に罹患していない対象に投与される。
【0313】
任意の特定の対象における治療有効量レベルは、処置されている疾患および疾患の重症度;使用される化合物または作用剤の活性;使用される組成物;対象の年齢、体重、全身状態、性別および食生活;投与の時間;投与の経路;ポリペプチド、核酸、抗体または組成物の封鎖の速度;治療の期間;処置と併用または同時使用される薬剤、を含む種々の要素とともに、当該技術分野で既知の他の関連する要素に依存することになる。
【0314】
さらに、最適量および個別用量の間隔が、処置されている疾患の性質および範囲、投与の形態、経路および部位、ならびに処置されている特定の対象の性質によって決定されることは、当業者にとって明らかであろう。
【0315】
当業者であれば、型通りの実験により、該当する自己免疫疾患を有効に予防または処置するのに必要となる、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物の無毒な有効量を決定できるであろう。
【0316】
例えば、最適用量は、好適な試験手順と相まって、ポリペプチド、核酸、抗体または組成物を含む希釈製剤を連続的に投与することから得られうる。それに加え、またはその代わりに、様々な異なる用量および投与頻度を含むマトリックスを、設計し、実験対象の1つもしくは複数の群に適用することで、最適用量を決定することが可能である。
【0317】
一般に、有効用量は、約0.0001mg〜約1000mgの活性物質/kg体重/24時間;典型的には、約0.001mg〜約750mgの活性物質の活性物質/kg体重/24時間;約0.0lmg〜約500mgの活性物質/kg体重/24時間;約0.lmg〜約500mgの活性物質/kg体重/24時間;約0.lmg〜約250mgの活性物質/kg体重/24時間;または約1.0mg〜約250mgの活性物質/kg体重/24時間の範囲内であると想定される。
【0318】
より典型的には、有効用量範囲は、約1.0mg〜約200mgの活性物質/kg体重/24時間;約1.0mg〜約100mgの活性物質/kg体重/24時間;約1.0mg〜約50mgの活性物質/kg体重/24時間;約l.0mg〜約25mgの活性物質/kg体重/24時間;約5.0mg〜約50mgの活性物質/kg体重/24時間;約5.0mg〜約20mgの活性物質/kg体重/24時間;または約5.0mg〜約15mgの活性物質/kg体重/24時間の範囲内であると想定される。
【0319】
あるいは、有効用量は、週2回で約0.1mgの活性成分/kg体重〜約2mgの活性成分/kg体重の範囲内であってもよい。
【0320】
あるいは、有効用量は、最大で約500mg/mであってもよい。一般に、有効用量は、約25〜約500mg/m、好ましくは約25〜約350mg/m、より好ましくは約25〜約300mg/m、さらにより好ましくは約25〜約250mg/m、さらにより好ましくは約50〜約250mg/m、およびさらにより好ましくは約75〜約150mg/mの範囲内であると想定される。
【0321】
特定の実施形態において示されるように、極めて多くの変形および/または改良が、広範に記載される、本発明の精神または範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされうることは、当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、例示的であって限定的でないものとして、あらゆる観点で考慮されるべきである。
【実施例】
【0322】
本発明は、ここで具体例との関連で説明されることになり、それらは、決して限定するものとして解釈されるべきではない。
【0323】
実施例1:Cpn10ポリペプチドの生成
本発明のCpn10ポリペプチドの生成プロセスをさらに明らかにするため、以下の非限定例を提供する。
【0324】
(修飾を伴うかまたは伴わない)ヒトCpn10の発現を、大腸菌(E.coli)株XL1−Blue(Stratagene)に形質転換された熱誘発性(heat−inducible)発現プラスミドまたは大腸菌(E.coli)株BL21(DE3)(Invitrogen)に形質転換されたIPTG誘発性発現プラスミドpET30 KanRおよびpET23 AmpR(Novagen)のいずれかを用いて行った。
【0325】
本質的にRyanらによって記載(1995年、J Biol Chem 270:22037−22043頁)のように、熱誘発性発現プラスミドを使用し、Cpn10を生成し、Macro−Prep High Q(BioRad)カラム上への単一通過によって90%超の純度に精製し、pH8で平衡化した。次いで、Cpn10を含有する未結合材料を、S−Sepharose、次いでゲル濾過(Superdex 200、Amersham Biosciences)クロマトグラフィーによってさらに精製した。50mMトリス−HCl(pH7.6)および150mM NaCl中の精製Cpn10を、製造業者の使用説明書に従い、0.2mmのMustang E膜を有するAcrodiscを通して濾過し(Pall Corporation,Ann Arbor、MI.カタログ番号MSTG5E3)、残留エンドトキシンを除去し、−80℃で保存した。
【0326】
IPTG誘発性発現プラスミドを使用し、細胞を、適切な抗生物質(100μg/ml Ampおよび50μg/ml Kan)を含有するLB中で、OD600nmが0.5になるまで成長させ、次いでCpn10の生成を、1mM IPTGで5時間誘発した。細胞を、遠心分離(6,000×g)によって4℃で10分間ペレット化し、25mMトリス(pH7.5)に再懸濁し、8,000psiで4回均質化した。不溶性材料を、4℃、15,000×gで30分間の遠心分離によって除去した。Cpn10を含有する上清を、0.1%(w/v)PEIでボルテックスし、氷上で5分間インキュベートし、次いで4℃、15,000×gで30分間遠心分離し、核酸および極めて多量の大腸菌(E.coli)タンパク質を除去した。Cpn10が豊富に存在する上清を、0.45μmのフィルターシリンジを通過させ、25mMトリス(pH7.5)で予備平衡化したBig Bead Sulfopropyl−Sepharoseカチオン交換カラム上に負荷し、0〜0.5MのNaCl勾配で溶出を行った。Cpn10を含有する画分をプールし、25mMトリス(pH7.5)+2M硫酸アンモニウムで1/10に希釈し、Butyl−S−Sepharose疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)カラム上に負荷し、25mMトリス(pH7.5)の0〜60%の勾配で溶出を行った。Cpn10を含有する画分を、25mMトリス(pH8)+1mM EDTAに透析し、約10mg/mlに濃縮した。残留エンドトキシンおよび核酸を除去するため、Cpn10を、最終的に25mMトリス(pH7.5)+1mM EDTAで予備平衡化したCapto−Q−Sepharoseカラム上を通過させた。精製Cpn10を、50mMトリス−HCl(pH7.6)+150mM NaClに透析し、−80℃で保存するため、約5mg/mlまで希釈した。
【0327】
Cpn10、例えば図2中に示される様々なCpn10変異ポリペプチドの純度を、SDS−PAGE上でのクマシーブリリアント染色によって測定し、99%超であった。一定分量を、使用前に1回解凍した。
【0328】
実施例2:Cpn10のCpGオリゴヌクレオチド(ODN)への結合の定量分析
Cpn10突然変異体のODNへの結合量を測定するため、突然変異体を、10μg/μlでPBS(pH7.2)(Invitrogen)中で調合し、50μgを、96ウェルプレートの3通りのウェルに4℃で16時間吸着させた。非結合タンパク質のデキャンティング後、プレートを、PBS(pH7.2)中、1%BSAおよび5%スクロースで、23℃で2時間ブロッキングした。PBS(pH7.2)中、0.01μg/μlで調合した、50μlの3’もしくは5’−ビオチン標識ヒトODN−2216クラス−A、ヒトODN−2006クラス−B、またはヒトODN−M362クラス−C(TLR9アゴニスト)(Proligo/Sigma)を、各ウェルに添加し、23℃で2時間インキュベートした。未結合リガンドを、5PBS(pH7.2)+0.05%Tween20での洗浄により、除去した。結合CpG−ODNを、A450nmでのストレプトアビジン−HRPおよびTMB検出システムで分析した。
【0329】
図1では、生理的塩濃度(約150mM)での定量分析による、CpG−ODNと多数のCpn10N末端変異体との、Ala−Cpn10よりも強力な相互作用を強調する。
【0330】
例えば、変異体MV−Cpn10、ML−Cpn10、MI−Cpn10、MH−Cpn10、Pro−Cpn10、MF−Cpn10、MY−Cpn10、MW−Cpn10、MC−Cpn10、Ser−Cpn10、MT−Cpn10、MD−Cpn10、MN−Cpn10、MQ−Cpn10、AA−Cpn10、AAA−Cpn10、SG−Cpn10、STG−Cpn10、PG−Cpn10、PTG−Cpn10、MQS−Cpn10およびMQSN−Cpn10の各々は、少なくとも1つのCpG−クラス(すなわち、CpG−クラスA、Bおよび/またはC)と、Ala−Cpn10よりも強力な相互作用を示した。
【0331】
実施例3:分子モデリング
生物活性タンパク質であるには、特定の折り畳まれた三次元構造をとる必要があり、この構造は、タンパク質のアミノ酸配列によって決定される。アミノ酸側鎖に特有の構造および特性は、タンパク質の特定の生物学的機能を決定づける。水素結合、イオン相互作用、ファンデルワールス力および疎水性パッキングなどの極めて多数の非共有相互作用は、タンパク質フォールディングの安定性および柔軟性に寄与する。
【0332】
2Åの解像度での(柔軟な可動ループが欠如した)ヒトAla−Cpn10のX線結晶構造が得られた。Cpn10単量体は、βヘアピン「ルーフループ」領域および「可動ループ」領域によって隣接されたコアの逆平行βバレル領域からなる。結晶構造によると、Ala−Cpn10のN末端が、βヘアピンを形成し、ルーフループの特定の領域に極めて接近したCpn10ドーム様構造の上部を横切る直線状に伸展した規則性が高い配座で存在することが示される。一部のX線結晶構造においては、Cpn10七量体内部の特定のサブユニットのN末端は、大規模な構造変化を受け(それは付属物がかなり柔軟であることを示し)、例えば核酸への結合を調節するという重要な生物学的機能を果たすことが認められた。分子モデリングによると、Ala−Cpn10の柔軟なN末端が、ルーフループ上に、(アミノ酸位置−1(以後Ala−1と称される)での)アラニンの、残基Ser52〜Gly57によって形成されるルーフループ上の小さい構造ポケットへの相互作用(鍵と鍵穴に類する)によってドッキングしうるという示唆が得られる。ルーフループの開始点における2つの重要な残基Lys53およびLys55は、より小さい残基(Ser52、Gly54、Gly56およびGly57)によって囲まれ、それらの伸長された側鎖CH−CH−CH−CH−NHのおかげで、Gly54によって隔てられたこのポケットを形成できると考えられる。アミノ酸側鎖相互作用およびパッキング形状の分析(ThorntonおよびSinghのAtlas of Protein Side−Chain Interactionsを使用;Singh J.およびThornton J.M.(1992年).「Atlas of Protein Side−Chain Interactions」、第IおよびII巻、IRL press,Oxford)によると、Ala−1のCH側鎖が、これらのLys側鎖と相互作用し、それらと1つの大きい有意な集団(および第2のより小さいもの)を形成できることが示される。Ala−1の、Lys53〜Lys55のルーフループ構造ポケットへのこの結合は、柔軟なN末端に有効に固定し、強力な核酸結合をもたらす場合がある。
【0333】
Atlas of Protein Side−Chain Interactions(ThorntonおよびSingh)は、20の異なる種類のアミノ酸側鎖間に全部で400の考えられるペアワイズ相互作用が存在することを説明し、アミノ酸側鎖がいかにして相互作用し、互いに対してパック(集団化)するかを判定するための重要な参考文献であると考えられる。側鎖の接触における任意の集団化の有意性は、パッキング形状およびファンデルワールス力に関連して評価される。有意性は、ランダム分布に対するChi試験によって評価される。これらの相互作用を分析するためのデータベースおよびソフトウェアは、EMBL European Bioinformatics Instituteの一部としてのThornton Group Services and DatabasesのUniversity College Londonによって主催される(http://www.biochem.ucl.ac.uk/bsm/sidechains/index.html)。このデータベースを使用し、Ala−Cpn10のN末端変異の、核酸リガンドへの結合および免疫調節機能に対する効果をモデル化した。
【0334】
Ala−1のLys53Lys55への結合の摂動により、Ala−Cpn10の立体構造が改変され、核酸(例えばCpG−ODN)に対する結合能が損なわれる場合がある。分子の完全なN末端(Ala−Cpn10−ΔNterm)またはルーフループ(Ala−Cpn10−ΔRoof)の除去により、Ala−1のこのポケットへの結合が阻止され、Cpn10のCpG−ODNに対する結合能が著しく損なわれる(図1参照)。同様に、Lys53およびLys55の異なるアミノ酸への突然変異が、結合ポケットを破壊し、CpG−ODNへの結合を著しく損なわせることが認められた(図1参照)。
【0335】
突然変異体X−Cpn10によって示されるように、位置−1(Ala−1)でのAlaの除去によるN末端の短縮がまた、CpG−ODNへの結合を損なわせることが認められた(図1参照)。
【0336】
グリシンは、大きさおよび構造の双方においてアラニンに類似したアミノ酸であり、グリシンが、アラニンの−CH側鎖に比べて、−H側鎖のみを有する点が異なる。また、Ala−1とグリシンとの置換の結果、おそらくはそれがポケットに正確に適合できない(酷似しても不正確な鍵の鍵穴への挿入に類する)ことが理由で、免疫調節機能が損なわれた。グリシンとLys53Lys55側鎖との相互作用のモデリングは、6つの大規模かつ有意な集団が側鎖間に形成されうるという示唆を提供した。これらの集団は、Ala−Cpn10によって形成されるものと異なることから、分子の異なる立体構造をもたらし、それにより、CpG−ODNへの結合が損なわれた。
【0337】
故に、N末端Ala−1の、ルーフループの構造ポケットへの正確な結合は、CpG−ODNの結合およびPRRシグナル伝達のモジュレータとしてのAla−Cpn10の機能にとって必要であると考えられる。
【0338】
タンパク質翻訳は、開始メチオニンから開始される。「N末端ルール」によると、一部のタンパク質では、開始メチオニンが、以下のアミノ酸の同一性に応じて除去される。質量分析を用いて、隣接アミノ酸が、アラニン(Ala−Cpn10の場合)、グリシン(Gly−Cpn10の場合)プロリンまたはセリンである場合、開始メチオニンがCpn10から切断されることが測定された。他のすべてのアミノ酸においては、メチオニンは、無傷のままであった。プロリン(Pro)、セリン(Ser)およびメチオニン(Met)はすべて、アラニンより大きいアミノ酸である。
【0339】
Ala−Cpn10の立体構造がCpG−ODNへの結合にとっていかに必要であるかについて仮説を立てると、Ala−1アミノ酸がより大きくより大規模な(bulkier)アミノ酸によって置換される場合、それはルーフループのポケットに正確に適合できない可能性があり、その場合、Cpn10−Δ−NtermまたはAla−Cpn10−ΔRoof、Gly−Cpn10またはX−Cpn10と同様、Ala−Cpn10に対して機能が悪化していると仮定された(図1参照)。驚くべきことに、これは事実と異なった。事実、より大きくより大規模なアミノ酸のPro、SerまたはMetのN末端での置換は、実際にはCpG−ODNの改善された結合をもたらしたことから、PRRシグナル伝達の抑制を促進することが想定されたことになる。
【0340】
セリンは、アラニンと、(−CHの代わりに)側鎖CH−OHにおける単一の酸素分子の分だけ異なる小さいアミノ酸である。N末端でのセリンの配置は、Ala−Cpn10と最も構造的に類似し、その場合、ポケットに正確に適合せず、Gly−Cpn10と同様、CpG−ODNへの結合を損なわれるのに適したサイズであると想定することができる。しかし、これは事実でないとは限らず、Thorntonデータベースによると、Serは、Lys53Lys55側鎖に結合できず、有意な集団を全く形成できないことが予測された。しかし、それは、Lys53Lys55に対してルーフループの他方の末端で、Gly57、Glu58、Ile59、Gln60、Pro61およびVal62のいずれかと結合し、有意な集団形状(clustering geometries)を形成することができると予測される。
【0341】
プロリンは、それがアミノ酸骨格の最初のNと環を形成する側鎖CH−CH−CHを有する点で独特である。したがって、その側鎖は大規模であり、その場合、ポケットを遮断すると考えることができる。しかし、Thorntonデータベースによると、ProがLys53Lys55側鎖に結合できないことが予測されることから、これは事実であるとは限らない。しかし、それは、Lys53Lys55に対してルーフループの他方の末端で、Gly57、Glu58、Ile59、Pro61およびVal62のいずれかと結合し、有意な集団形状を形成することができると予測される。
【0342】
メチオニンは、大きい側鎖CH−CH−S−CHを有し、側鎖相互作用の試験(Thornton)によると、N末端メチオニンがLys53Lys55と集団を全く形成できないと予測されることが示された。しかし、メチオニンは、ルーフループ内に位置するイソロイシン59(Ile59)またはバリン62(Val62)と複数の相互作用を形成すると予測される。
【0343】
N末端位置にメチオニンを有する突然変異体のCpG−ODNに対する結合能においては、いずれのアミノ酸がそれに後続するかによって違いがあることに注目することは興味深い。この違いは、Metに後続するこれらのアミノ酸と、Ile59またはVal62のいずれかを囲むルーフループ内のそれらとの追加的な側鎖相互作用に起因すると仮定される。
【0344】
これらのアミノ酸は、Lys53Lys55の側鎖に結合し、ポケットに適合することができない可能性があることから、実際にはポケット外部のルーフループに結合することが提起されている。次いで、この結合は、ルーフループに対して異なる構造変化を起こす可能性があり、それにより、分子は、全体として、CpG−ODNとのより強力な結合を可能にし、Ala−Cpn10全体にわたる免疫修飾を促進する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を共有し、かつ前記野生型ポリペプチドに比べて少なくとも2つの追加的なアミノ酸残基によって伸長されたN末端を含む、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチド。
【請求項2】
Ala−Cpn10(配列番号3)に比べて免疫調節機能を増強している、請求項1に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項3】
病原体関連分子パターン(PAMP)に対する結合親和性を、Ala−Cpn10(配列番号3)の前記PAMPに対する結合親和性に比べて増大させている、請求項1または請求項2に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項4】
前記変異ポリペプチドの前記N末端は、メチオニン残基から開始する、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項5】
前記メチオニン残基は、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、およびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基に先行する、請求項4に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項6】
配列番号9、12、15、18、24、26、29、32、38、41、44、47、49、78、90、もしくは93のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする単離核酸。
【請求項8】
配列番号10、13、14、16、17、19、20、25、27、28、30、31、33、34、39、40、42、43、45、46、48、50、51、91、92、94、もしくは95のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む、請求項7に記載の単離核酸。
【請求項9】
配列番号52、55、58、60、81、84、87、もしくは96のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項10】
請求項9に記載のポリペプチドをコードする単離核酸。
【請求項11】
配列番号53、54、56、57、59、61、62、82、83、85、86、88、89、97、もしくは98のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の単離核酸。
【請求項12】
野生型Cpn10ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を共有し、かつ前記野生型ポリペプチドに比べて1つの追加的なアミノ酸残基によって伸長されたN末端を含み、ここで前記追加的なアミノ酸残基は、セリンまたはプロリン残基であり、またここで前記変異ポリペプチドは、ヒトAla−Cpn10に比べて免疫調節機能を増強している、単離シャペロニン10(Cpn10)変異ポリペプチド。
【請求項13】
配列番号21または35で示されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載の単離Cpn10変異ポリペプチド。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のポリペプチドをコードする単離核酸。
【請求項15】
配列番号7、8、22、23、36、もしくは37のいずれか1つで示されるヌクレオチド配列を含む、請求項14に記載の単離核酸。
【請求項16】
(a)請求項1から6、9、12または13のいずれか一項に記載のポリペプチド、あるいは
(b)請求項7、8、10、11、14または15のいずれか一項に記載の核酸
の任意の1つもしくは複数を含む組成物。
【請求項17】
医薬的に許容できる賦形剤、希釈剤または担体をさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
対象における免疫活性化を抑制するための方法であって、
(a)請求項1から6、9、12または13のいずれか一項に記載のポリペプチド、
(b)請求項7、8、10、11、14または15のいずれか一項に記載の核酸、あるいは
(c)請求項16または請求項17に記載の組成物
を治療有効量で前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項19】
対象における炎症性疾患を予防または処置するための方法であって、
(a)請求項1から6、9、12または13のいずれか一項に記載のポリペプチド、
(b)請求項7、8、10、11、14または15のいずれか一項に記載の核酸、あるいは
(c)請求項16または請求項17に記載の組成物
を治療有効量で前記対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項20】
前記炎症性疾患は、関節リウマチ、炎症性腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)、I型糖尿病(インスリン依存性糖尿病、若年型糖尿病)、慢性疲労症候群、アルツハイマー、グレーブス病、変形性関節症、コラーゲンII関節炎、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性心筋炎、自己免疫性卵巣疾患、自己免疫性甲状腺疾患、自己免疫性神経炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性ぶどう膜網膜炎、自己免疫性ぶどう膜炎、乾癬、シェーグレン病、サルコイドーシス、皮膚筋炎、白血球破砕性血管炎、重症筋無力症、アレルギー性脳脊髄炎、甲状腺機能亢進症、悪性貧血、リウマチ性多発筋痛および多発性筋炎慢性閉塞性肺疾患(COPD)、感染性疾患、リーキーガット症候群、心血管疾患(例えば、鬱血性心疾患)、アレルギー(例えば、アナフィラキシー、薬剤反応、皮膚アレルギー、湿疹、アレルギー性鼻炎、じんましん、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触アレルギー、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎、昆虫毒アレルギー)、喘息、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)およびアテローム硬化症、ならびに感染性疾患、からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
免疫抑制剤についてスクリーニングする方法であって、
(a)請求項7、8、10、11、14または15のいずれか一項に記載の核酸を候補作用剤と、前記候補作用剤と前記核酸との間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、
(b)前記核酸によってコードされるポリペプチドの生成を測定するステップと、
を含む、方法。
【請求項22】
免疫抑制剤についてスクリーニングする方法であって、
(a)パターン認識受容体(PRR)を発現する免疫細胞、
(b)前記PRRに対するリガンド、および
(c)請求項1から6、9、12または13のいずれか一項に記載のポリペプチド
を含む混合物を候補作用剤と、前記候補作用剤と前記ポリペプチドとの間で結合が生じるのに適した条件下で接触させるステップと、前記免疫細胞内での前記ポリペプチドによって誘発されるPRR媒介性の細胞シグナル伝達のレベルを検出するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記検出するステップは、
(a)前記免疫細胞によるサイトカインおよび/またはケモカインの産生および/または分泌を測定するステップ、
(b)前記免疫細胞による活性化マーカーの発現を測定するステップ、
(c)前記免疫細胞内でのtoll様受容体媒介性のNF−κB活性化を検出するステップ
のうちの任意の1つもしくは複数によって実施される、請求項22に記載の方法。

【図3】
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【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2013−507102(P2013−507102A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532421(P2012−532421)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【国際出願番号】PCT/AU2010/001327
【国際公開番号】WO2011/041847
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512091202)
【Fターム(参考)】