説明

シャワヘッド

【課題】 止水後に残留湯水を即座に排水して水垂れの発生を確実に防止でき、また、菌などの侵入抑制にも大きな効果を発揮するシャワヘッドを提供する。
【解決手段】 シャワヘッド本体2内の通水路6の先端に設けられている散水板9の上流側通水空間7に、該散水板9が有する複数の散水孔8を塞ぐに足りる大きさの遮水板14が設けられ、この遮水板14を、止水時には複数の散水孔8を塞ぐべく散水板9に密着する方向へ付勢しているとともに、通水時には水圧により前記付勢力に抗して複数の散水孔8を開くべく散水板9から離反する方向へ移動可能に構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として浴室やシャワルームで洗髪する場合等に使用されるシャワヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なシャワヘッドは、シャワヘッド本体内の通水路の先端に複数の散水孔を有する散水板を前記シャワヘッド本体に固定状態に取り付けて構成されている。このような構成のシャワヘッドにおいては、通水路を遮断し止水した後に壁面に固定の係止具に散水板が斜め下向きになるように掛けた状態においてシャワヘッド本体内の通水空間に残っている湯水が前記散水孔から水滴となって垂れ落ち、シャワ使用者に不快感や不安感を与えるという問題がある。
【0003】
このような止水後の残留湯水が水滴となって垂れ落ちる現象(以下、単に水垂れという)を抑制するものとして、従来、散水板の上流側通水空間内に網体を設け、止水後の残留湯水を網体の網目に表面張力で保持させることにより、水切れを良くし水垂れを抑制するようにしたものが種々提案されている。その一つに、散水板の散水孔周囲を上流に向けて凸部形状とし、その凸部に網体を当接支持させることにより、網体による表面張力を発生しやすくしたもの(例えば、特許文献1参照)があり、また、別の一つに、通水空間を内側室と散水室とに区画する隔壁を設け、この隔壁に両室を連通する連通路を設けるとともに、この連通路内に網状部をほぼ水平になるように形成して表面張力による残水保持を可能にしたもの(例えば、特許文献2参照)が提案されている。
【0004】
【特許文献1】 特開2002−355581号公報
【特許文献2】 特開平8−89851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の特許文献1及び2で提案されている従来の水垂れ対策は、いずれも網を用いて残留湯水をその網目に表面張力で保持させるものであるから、止水直後には網による保水作用で水切れ性がよくなり一時的に水垂れを抑制できるとしても、暫くすると、つまり、前述した係止具にシャワヘッドを掛けた後に、網に保持されている水が重力によって網目から離れて垂れ落ちるといった具合に、水垂れを確実に防止することができない。特に、網を用いる場合、その網目を小さくすると、通水時における抵抗損失が大きくなるために、余り小さな網目の網の使用が難しく、それゆえに、上述したとおり、止水から一定時間経過後の水垂れの発生は避けられないという問題がある。
【0006】
また、網を用いる従来の水垂れ対策では、外気に混在し浮遊する菌などが散水孔、網目を通ってシャワヘッド本体内の通水空間や通水路に侵入することは全く防ぐことができないものであった。
【0007】
本発明は上記のような実情に鑑みてなされたもので、止水後に残留湯水を即座に排水して水垂れの発生を確実に防止することができ、また、菌などの侵入抑制にも大きな効果を発揮するシャワヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るシャワヘッドは、シャワヘッド本体内の通水路の先端に複数の散水孔を有する散水板が前記シャワヘッド本体に固定状態に取り付けられているシャワヘッドにおいて、前記散水板の上流側通水空間に、前記複数の散水孔を塞ぐに足りる大きさの遮水板が設けられ、この遮水板は、止水時には前記複数の散水孔を塞ぐべく前記散水板に密着する方向へ付勢されているとともに、通水時には水圧により前記付勢力に抗して前記複数の散水孔を開くべく前記散水板から離反する方向へ移動可能に構成されていることを特徴としている。
【0009】
本発明に係るシャワヘッドにおいて、前記遮水板を散水板に密着する方向に付勢する手段は、前記遮水板を剛性材料から構成し、この剛性材料製の遮水板を前記散水板に密着する方向に付勢する弾性部材を該遮水板とこれに対向して前記通水空間に設けられた固定部材との間に介在させる構成(請求項2)、また、前記遮水板を弾性ゴム材料から構成し、この弾性ゴム材料製の遮水板を自己の保有する弾性力によって前記散水板に密着する方向に付勢させる構成(請求項3)のいずれであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
上記のような特徴構成を有する本発明によれば、止水時には、付勢力によって遮水板が散水板側に移動されるため、通水空間に残留する湯水の大部分を遮水板により急速に外部に押出し排水することができるとともに、その遮水板が散水板に密着し複数の散水孔を完全に塞ぐために、少量の湯水が通水空間に残ったとしても、それが散水孔を経て水滴となって外部に垂れ落ちることがなく、止水直後はもとより、壁面の係止具にシャワヘッドを掛けた後における水垂れの発生を確実に防止し、不快感や不安感を解消することができる。
【0011】
しかも、複数の散水孔を完全に塞ぐので、外気に浮遊する菌などがシャワヘッド本体内の通水空間や通水路に侵入することも防止し、衛生的な使用態様も確保できる。また、通水時には水圧を利用して遮水板を散水板から離反させて複数の散水孔を開くことができるので、通水操作に伴い遮水板を付勢力に抗して移動させるための特別な操作機構などが全く不要で、シャワヘッド全体を構造簡単かつ安価に構成することができるという効果を奏する。
【0012】
特に、遮水板として、弾性ゴム材料から構成されたものを用いる場合は、バネなどの付勢力付与部品の組込みも不要で、一層構造の簡素化、低コスト化が図れるとともに、この遮水板の散水板に対する密着力を高めて優れた水密シール効果を発揮させ、水垂れ防止機能及び菌等の侵入防止機能を一層向上することができる。
【0013】
また、止水時に前記散水板に密着する遮水板に前記散水板の複数の散水孔内に入り込んで該散水孔の汚物を排除するとともに、シャワヘッド本体内への汚物の侵入を防ぐ突起部を設ける構成を採用することによって、止水時における水垂れ防止機能を一層高めることができるだけでなく、散水孔内に詰まっている水垢などの汚物を確実に排除し、かつ、汚物がシャワヘッド内に侵入することも確実に防止して常に衛生的にシャワすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1はこのシャワヘッド1は、内部に通水路6を形成するシャワヘッド本体2の一端部にアダプター3を介してシヤワホース4が連通接続されている。このシャワヘッド1は、浴室やシャワルーム等の壁面に固定設置されるシャワフック(係止具)5に対してその上方から降下させることにより、前記アダプター3のところでシャワフック5に掛止保持可能に構成されている。
【0015】
前記シャワヘッド本体2の他端頭部2aには、前記通水路6に連通し該通水路6内における水流方向aをそれに対し略直交する方向bの水流に変換する通水空間7が形成されており、この通水空間7の先端に相当するシャワヘッド本体2の他端頭部2aの端面部には、複数の散水孔8を有する散水板9がシール10により水密化されて止めネジ12を介して固定状態に取り付けられているとともに、この散水板9の上流側通水空間7には、前記散水板9に相対向させて円板状部材11が固定され、かつ、この固定円板状部材11の中心部周りに複数の通水孔13が形成されている。
【0016】
前記散水板9と固定円板状部材11との間の通水空間7部分には、前記複数の散水孔8を塞ぐに足りる大きさ(直径)を有する遮水板14が設けられている。この遮水板14は剛性を有する弾性ゴム材料から構成され、この遮水板14の中央部分14aは前記通水孔13を塞がないように円板状部材11側に向けて凸形環状に成形されており、この凸形環状の中央部分14aにより通水時に後述する付勢力に抗して前記遮水板14を散水板9から離反する方向へ移動させる水圧を作用させるための水圧作用室15が形成されている。
【0017】
そして、前記遮水板14とこれに対向する前記固定円板状部材11との間には、止水時に前記遮水板14を前記散水板9の複数の散水孔8を塞ぐべく散水板9に弾性的に密着させる方向への付勢力を付与する弾性部材の一例としてのスプリング16が介在されている。
【0018】
上記のように構成されたシャワヘッド1によると、図示省略の混合水栓を閉止してシャワヘッド本体2の通水路6に湯水を送給しないように止水した時、図3に明示するように、スプリング16の付勢力によって前記遮水板14が散水板9側に移動され、その移動によって通水空間7に残留する湯水の大部分が散水孔8を経てシャワヘッド本体2の外部に急速に押出し排水されたのち、その遮水板14が前記散水板9に密着し複数の散水孔8が完全に塞がれる。そのため、少量の湯水が通水空間7に残ったとしても、それが散水孔8を経て水滴となって外部に垂れ落ちることがない。また、止水直後だけでなく、シャワヘッド1を図1のように、シャワフック(係止具)5に掛止保持させた状態においても水垂れの発生を確実に防止して不快感や不安感を解消することが可能である。
【0019】
また、止水後は、散水板9の複数の散水孔8が遮水板14により完全に塞がれるので、外気に浮遊する菌などがシャワヘッド本体2内の通水空間7や通水路6に侵入することも防止し、衛生的な使用態様を確保することができる。
【0020】
そして、シャワヘッド1を前記シャワフック5から掛止解除して手で把持する、あるいは、そのシャワフック5に掛止保持させたままで、前述の混合水栓を開放してシャワヘッド本体2の通水路6への湯水送給を開始した通水開始時には、湯水が通水空間7、通水孔13を経て水圧作用室15内に流入し、その水圧により、図4に明示するように、前記遮水板14がスプリング16の付勢力に抗して散水板9から離反する方向へ自動的に移動されて複数の散水孔8が開かれることになり、特別な操作を要することなく、散水孔8から湯水を放射状に散水させて所定どおりのシャワリングを行い得る。
【0021】
なお、上記実施の形態では、遮水板14を剛性のある弾性ゴム材料から構成し、これをスプリング16を用いて散水板9側に移動付勢した構成のものについて説明したが、樹脂製や金属製の剛性材料製遮水板14を用いてもよい。特に、この場合、遮水板14のうち止水時に散水板9に密着する面部分にのみ軟質ゴム材料からなるシール膜を重ね合わせ接着したり、あるいは、樹脂製や金属製の剛性板を軟質ゴム層内にインサート成形したりすることにより、止水時における散水孔8の閉塞性能を高めて水垂れをより確実に防止することができる。
【0022】
また、上記実施の形態では、遮水板14を散水板9側に移動付勢する弾性部材として、スプリングを使用したが、これに代えて、板バネや皿バネ、ゴムを用いてもよく、さらに、このような弾性部材は用いずに、弾性ゴム材料製遮水板14自身が保有する弾性力によって、該遮水板14を散水板9に密着する方向に移動付勢するように構成してもよい。
【0023】
さらに、図5に示すように、前記遮水板14が前記散水板9に密着して複数の散水孔8を塞ぐとき、それら複数の散水孔8内に入り込んで該散水孔8内に詰まっている水垢などの汚物を排除するとともに、シャワヘッド本体2の通水空間7内への汚物の侵入を防ぐ複数の突起部14bを遮水板14に設けることが好ましい。この場合は、止水時に遮水板14が散水板9に密着するとともに、複数の突起部14bが複数の散水孔8内に入り込んで該散水孔8に詰まっている水垢などの汚物を排除できるとともに、シャワヘッド本体2の通水空間7内への汚物の侵入を防ぐことができ、シャワヘッド1を常に衛生的に使用することができる。なお、図5の左半分は遮水板14が前記散水板9に密着した状態、右半分は遮水板14が前記散水板9から離反した状態を示している。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るシャワヘッドの構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係るシャワヘッドの断面図である。
【図3】止水時における動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図4】通水時における動作状態を示す要部の拡大断面図である。
【図5】他の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1 シャワヘッド
2 シャワヘッド本体
6 通水路
7 通水空間
8 散水孔
9 散水板
11 固定円板状部材
14 遮水板
14b 突起部
15 水圧作用室
16 スプリング(弾性部材の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワヘッド本体内の通水路の先端に複数の散水孔を有する散水板が前記シャワヘッド本体に固定状態に取り付けられているシャワヘッドにおいて、
前記散水板の上流側通水空間に、前記複数の散水孔を塞ぐに足りる大きさの遮水板が設けられ、この遮水板は、止水時には前記複数の散水孔を塞ぐべく前記散水板に密着する方向へ付勢されているとともに、通水時には水圧により前記付勢力に抗して前記複数の散水孔を開くべく前記散水板から離反する方向へ移動可能に構成されていることを特徴とするシャワヘッド。
【請求項2】
前記遮水板が、剛性材料から構成され、この剛性材料製の遮水板を前記散水板に密着する方向に付勢する弾性部材が該遮水板とこれに対向して前記通水空間に設けられた固定部材との間に介在されている請求項1に記載のシャワヘッド。
【請求項3】
前記遮水板が、弾性ゴム材料から構成され、この弾性ゴム材料製の遮水板は自己の保有する弾性力によって前記散水板に密着する方向に付勢されている請求項1に記載のシャワヘッド。
【請求項4】
前記遮水板には、止水時に前記散水板の複数の散水孔内に入り込んで該散水孔の汚物を排除するとともに、シャワヘッド本体内への汚物の侵入を防ぐ突起部が設けられている請求項1ないし3のいずれかに記載のシャワヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−275530(P2007−275530A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130762(P2006−130762)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【出願人】(000144072)株式会社三栄水栓製作所 (111)
【Fターム(参考)】