説明

シャワー入浴装置

【課題】使用者の年齢や性別、特定の身体部位における疾患の有無等に応じてそれぞれ最適なシャワー入浴を可能とするシャワー入浴装置を提供する。
【解決手段】使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された複数の温水噴出口110,120,130,140と、複数の温水噴出口に温水をそれぞれ供給する複数の温水噴出用流路111,121,131,141と、湯水と冷水とが混合された温水を各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路11を備えたシャワー入浴装置において、共通温水流路と各温水噴出用流路の間に少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能な分配装置150を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の温水噴出口を設け、各温水噴出口が使用者の身体各部位に向けて使用者の好みに応じた分配比の流量の温水をそれぞれ噴出するシャワー入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の温水噴出口を設け、各温水噴出口が使用者の身体各部位に向けてそれぞれ温水を噴出するように配置されたシャワー入浴装置は知られている(例えば、特許文献1参照)。このような従来のシャワー入浴装置は、胸部、上腕部、上側下肢部、下側下肢部など使用者の身体各部位に向けてそれぞれ温水を噴出するように配置された複数の温水噴出口と、各温水噴出口に端部が接続された複数の温水噴出用流路と、各温水噴出用流路に接続された共通温水流路を備えている。
【0003】
そして、湯水流路の湯水と冷水流路の冷水とがサーモミキシングバルブによって所定の温度の温水として混合されて共通温水流路に供給され、各温水噴出用流路に分配供給された後、各温水噴出口から使用者の身体各部位に向けて噴出するようになっている。
【特許文献1】特許第3578428号公報(4頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来型のシャワー入浴装置は、共通温水流路から各温水噴出用流路に分配供給される温水の流量の割合(以下、分配比とする)が予め定められており、その結果、各温水噴出口から噴出する温水の流量の比率も予め決まっていた。
【0005】
一方、例えばこのようなシャワー入浴装置を家族で使用する場合、使用者の年齢や健康状態によって使用者の身体各部位に噴出する温水の流量比率を変えたい場合があり、従来のシャワー入浴装置はこのような要望に対応できなかった。
【0006】
具体的には、例えば高齢者や胸部に疾患を有する使用者がこのシャワー入浴装置を使用する場合、身体各部位のうち、温水噴出口から噴出する温水の温度や圧力に比較的敏感な胸部に噴出する温水の流量を小さくすると共に、下肢部に噴出する温水の流量を高めて下半身のマッサージ効果を高めたい場合がある。
【0007】
また、家事や育児をこなした使用者は上腕部や下肢部に溜まった疲れをとるために、特に上腕部と下肢部に噴出する温水の流量を胸部に噴出する温水の流量より大きくしたい場合がある。
【0008】
また、胸部に神経痛を有する使用者は、温水噴出口から胸部に噴出する温水の流量を他の上腕部や下肢部に噴出する温水の流量に比べて大きくして胸部の血行を高めたい場合がある。
【0009】
また、冷え性の使用者は温水噴出口から下肢部に向かって噴出する温水の流量を他の上腕部や胸部に向かって噴出する温水の流量に比べて大きくし、シャワー入浴によって冷え性を短時間で解消したい場合がある。
【0010】
また、身体各部位のうち特定の部位が麻痺してシャワー入浴中この部分に噴出する温水の流量を他の身体部位に噴出する温水の流量に比べて大きくし、この麻痺した身体部位へのマッサージ効果を高めたい場合がある。
【0011】
しかしながら、従来のシャワー入浴装置では、共通温水流路から各温水噴出用流路に供給される温水の流量の分配比が一義的に決まっているので、このような異なる使用者の様々な好みに合わせた各温水噴出口からの温水噴出形態を実現できなかった。
【0012】
本発明の目的は、使用者の年齢や性別、特定の身体部位における疾患の有無等に応じてそれぞれ最適なシャワー入浴を可能とするシャワー入浴装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、本発明に係るシャワー入浴装置は、
使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された複数の温水噴出口と、
前記複数の温水噴出口に温水をそれぞれ供給する複数の温水噴出用流路と、
湯水と冷水とが混合された温水を前記各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路を備えたシャワー入浴装置において、
前記共通温水流路と前記各温水噴出用流路の間に少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能な分配装置を備えたことを特徴としている。
【0014】
シャワー入浴装置がこのような分配装置を有することで、分配装置の単純な操作により各温水噴出口から好みの分配比に応じた流量の温水をそれぞれ噴出させることができ、各使用者の好みに合わせたシャワー入浴を可能とする。
【0015】
また、本発明の請求項2に記載のシャワー入浴装置は、請求項1に記載のシャワー入浴装置において、
前記共通温水流路の前記分配装置より上流側に流量調整弁を備えたことを特徴としている。
【0016】
シャワー入浴装置がこのような流量調整弁を備えることで、各温水噴出口から噴出する流量分配比を使用者の好みに応じた特定の分配比に保ちながら総流量を変えることができ、温水の総流量を調整しつつ好みの分配比を保った流量の温水を各温水噴出口からそれぞれ噴出させることができる。
【0017】
また、本発明の請求項3に記載のシャワー入浴装置は、請求項1又は請求項2に記載のシャワー入浴装置において、
前記分配装置は、前記共通温水流路と前記各温水噴出用流路との間に介在し、前記共通温水流路から前記各温水噴出用流路へ供給される温水の流量を規定する絞り部を有し、かつ前記絞り部を前記分配装置の流量分配比の複数パターンに対応するように複数の異なる組み合わせで配設可能とする分配比切換え部を備えたことを特徴としている。
【0018】
シャワー入浴装置がこのような分配装置を有することで、2パターン以上の分配比に基づく流量で各温水噴出口から温水を噴出することができる。
【0019】
また、本発明の請求項4に記載のシャワー入浴装置は、
使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された複数の温水噴出口と、
前記複数の温水噴出口に温水をそれぞれ供給する複数の温水噴出用流路と、
湯水と冷水とが混合された温水を前記各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路を備えたシャワー入浴装置において、
前記各温水噴出用流路のそれぞれに流量調整弁が備わると共に、少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能にして供給するように当該流量調整弁の各温水噴出口への温水供給量を制御する制御部を備えたことを特徴としている。
【0020】
シャワー入浴装置がこのような流量調整弁と制御部を備えることで、制御装置の単純な制御により各温水噴出口から使用者毎の好みの分配比に応じた流量の温水を噴出することができ、各使用者の好みに合わせたシャワー入浴を可能とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るシャワー入浴装置を使用することで、使用者の年齢や性別、特定の身体部位における疾患の有無等に応じて最適なシャワー入浴を可能とすることができる。
【0022】
具体的には、シャワー入浴装置が本発明のような分配装置を有することで、分配装置の単純な操作により各温水噴出口から好みの分配比に応じた流量の温水をそれぞれ噴出させることができ、各使用者の好みに合わせたシャワー入浴を可能とする。
【0023】
また、シャワー入浴装置が本発明のような流量調整弁を備えることで、各温水噴出口から噴出する流量分配比を使用者の好みに応じた特定の分配比に保ちながら総流量を変えることができ、温水の総流量を調整しつつ好みの分配比を保った流量の温水を各温水噴出口からそれぞれ噴出させることができる。
【0024】
また、シャワー入浴装置が本発明のような流量調整弁と制御部を備えることで、制御装置の単純な制御により各温水噴出口から使用者毎の好みの分配比に応じた流量の温水を噴出することができ、各使用者の好みに合わせたシャワー入浴を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の第1の実施形態に係るシャワー入浴装置について図面に基づいて説明する。本発明の第1の実施形態に係るシャワー入浴装置1は、図1に示すように、使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された4つの温水噴出口110,120,130,140と、各温水噴出口110,120,130,140に端部が接続された4本の温水噴出用流路111,121,131,141と、分配比切り替え弁150を介して各温水噴出用流路111,121,131,141に接続された共通温水流路11を有している。
【0026】
なお、本実施形態の場合、4つの温水噴出口110,120,130,140は、使用者の胸部に向かって温水を噴出するように配置された胸部用の温水噴出口110、上腕部に向かって温水を噴出するように配置された上腕部用の温水噴出口120、上側下肢部に向かって温水を噴出するように配置された上側下肢部用の温水噴出口130、下側下肢部に向かって温水を噴出するように配置された下側下肢部用の温水噴出口140から構成されている。
【0027】
また、分配比切り替え弁150は、後述する絞り部を複数の異なる組み合わせで配設可能とする分配比切り替え部を備えた分配装置として機能し、共通温水流路11に供給された温水を予め決められた複数の分配比のうち何れかの分配比に使用者が選択することで、各温水噴出用流路111,121,131,141に温水を選択的に分配供給するようになっている。
【0028】
これによって、湯水流路12からの湯水と冷水流路13からの冷水がサーモミキシングバルブ14介して共通温水流路11に所定の温度で供給された後、分配比切り替え弁150を介して各温水噴出用流路111,121,131,141に予め定めた複数パターンの分配比のうち、何れかのパターンの分配比で分配供給され、各温水噴出用流路111,121,131,141の端部に備わった温水噴出口110,120,130,140から所定の流量比率で使用者の身体各部位に温水がそれぞれ噴出するようになっている。
【0029】
なお、分配比切り替え弁150は、図2に示すように、一端部が開口すると共に共通温水流路11の端部に接続されかつ図示しないアクチュエータ等で周方向所定の回転角度で選択的に回転可能となり、他端部が閉塞した流路切り替え円筒体151と、流路切り替え円筒体151の周囲を液密に覆い、各温水噴出用流路111,121,131,141の端部が接続されて、これら各温水噴出用流路の端部開口部111a,121b,131c,141dが内周壁面の所定位置に長手方向一列に並んで形成された円筒状ハウジング155を有している。
【0030】
そして、流路切り替え用円筒体151には、外周部の長手方向に内径の異なる4つの貫通孔152a〜152d,153a〜153dが、上述した各温水噴出用流路の端部開口部111a,121b,131c,141dに対応する位置に周方向二列をなす組み合せ、すなわち2パターンの内径の異なる組み合わせで形成されている。
【0031】
なお、貫通孔152a〜152d,153a〜153dは、共通温水流路から温水噴出用流路111,121,131,141に至るまでのそれぞれの流路内に介在する絞り部の役目を果たし、それら貫通孔152a〜152d,153a〜153dの内径寸法の比率は温水の流量比率、すなわちこれらに対応する各温水噴出用流路111,121,131,141に供給される温水の分配比に合致している。
【0032】
続いて、このような構成を有する第1の実施形態に係るシャワー入浴装置1の作用について説明する。
【0033】
最初に1人目の使用者がシャワー入浴装置1の使用を開始すると、図1に示すように、湯水流路12からの湯水と冷水流路13からの冷水がサーモミキシングバルブ14によって所定の温度の温水に混合され、分配比切り替え弁150に供給される。
【0034】
分配比切り替え弁150は、本実施形態の場合、図1に示す左側の分配比調整前になるように切り替え円筒体151を第1分配パターンに位置させている。これによって、共通温水流路11に供給された温水は、胸部温水噴出用の温水噴出口110への流量:上腕部温水噴出用の温水噴出口120への流量:上側下肢部温水噴出用の温水噴出口130への流量:下側下肢部温水噴出用の温水噴出口140への流量の比率(分配比)が1:2:3:4となり、使用者の下肢部を主に温めたりマッサージしたりする噴出形態となる。
【0035】
次いで、胸部に例えば神経痛を有して胸部を特に温めたい使用者が交替してシャワー入浴装置1を使用した場合、又は同一使用者であっても下半身が十分に温まったので胸部のマッサージを主に行いたくなった場合は、分配比切り替え弁150を操作して切り替え円筒体151の分配比を別の分配比に変更する。
【0036】
本実施形態の場合、この調整後の分配比は、図1の右側の分配比調整後における分配比に相当し、胸部噴出用の温水噴出口110への流量:上腕部噴出用の温水の温水噴出口120への流量:上側下肢部噴出用の温水噴出口130への流量:下側下肢部噴出用の温水噴出口140への流量の比率は、4:3:2:1となって、主に使用者の胸部に向かって温水を噴出してこの部分を温めると共にマッサージ効果を与える。
【0037】
以上のように本実施形態に係るシャワー入浴装置1を使用することにより、分配比切り替え弁(分配装置)150の単純な操作により好みの分配比に応じた流量の温水を各温水噴出口110,120,130,140から噴出することができ、各使用者の好みに合ったシャワー入浴を可能とするようになる。
【0038】
続いて、上述した第1の実施形態に係るシャワー入浴装置1の変形例について説明する。なお、上述した第1の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
この変形例に係るシャワー入浴装置2は、図3に示すように、胸部に向かって温水を噴出する温水噴出口211〜213、上腕部に向かって温水を噴出する温水噴出口221〜223、下肢部に向かって温水を噴出する温水噴出口231〜233からなる使用者の3カ所の身体部位に対応するそれぞれ3つの温水噴出口を備えている。
【0040】
そして、湯水流路22からの湯水と冷水流路23からの冷水はサーモミキシングバルブ24によって適当な温度の温水に混合され、共通温水流路21に供給される。そして、共通温水流路21から分配比切り替え弁150によって3本の温水噴出用流路201,202,203に分配供給された温水は、更にそれぞれ3本の温水噴出用流路201a〜201c,202a〜202c,203a〜203cに等量ずつ分配供給されてこれら使用者の身体各部位に対応するように配置された各温水噴出口211〜213,221〜223,231〜233にそれぞれ供給されるようになっている。
【0041】
シャワー入浴装置2がこのような構成を有することによっても、上述した第1の実施形態と同等の作用効果、すなわち分配比切り替え弁(分配装置)150の単純な操作により各温水噴出口211〜213,221〜223,231〜233から使用者の好みの分配比に応じた流量の温水を噴出することができ、使用者の好みに合ったシャワー入浴を可能とするという作用を発揮すると共に、温水噴出用流路をこのように段階的に分岐することで、多数の流路及びこの末端に備わる各温水噴出口の全体構造を簡略化することができ、上述した作用を発揮するシャワー入浴装置自体の小型化、低コスト化を図ることができるようになる。
【0042】
なお、このような変形例に係るシャワー入浴装置2の更なる変形例を図4に示す。図4に示すシャワー入浴装置3は、上述した変形例に係るシャワー入浴装置2の構成に加えて、サーモミキシングバルブ34と分配比切り替え弁150との間に流量調整弁35を更に備えている。
【0043】
この更なる変形例に係るシャワー入浴装置3が流量調整弁35をこのような位置に備えることで、各温水噴出口311〜313,321〜323,331〜333から噴出する流量分配比を使用者の好みに応じた特定の分配比に保ちながら総流量を変えることができ、温水の総流量を調整しつつ好みの分配比のまま温水を各温水噴出口311〜313,321〜323,331〜333から噴出させることができるようになる。
【0044】
続いて、上述した第1の実施形態に係る分配比切り替え弁150の変形例について説明する。この変形例に係る分配比切り替え弁250は、上述した分配比切り替え弁150と同様に分配比切り替え部を備えた分配装置として機能し、図5乃至図7に示すように、共通温水流路(図示せず)からの温水を受け入れるチャンバ251aが内部に形成されたハウジング251と、チャンバ内に設けられた切り替えカム部260を備え、切り替えカム部260の回転停止位置を選択することでチャンバ内に突出した各温水噴出用流路111,121,131,141の端部開口部111a,121a,131a,141aを複数の所定の断面積比パターンに切り替え可能となっている。
【0045】
切り替えカム部260は、図5に示すようにチャンバ内に回転自在に収容されかつその作動用端部がハウジング外部の図示しないアクチュエータに接続されて切り替えカム部260が幾つかの所定の回転角度で選択的に停止させるためのカムシャフト265と、各温水噴出用流路111,121,131,141に対応するようにカムシャフト265に固定され、それぞれが図6に示すように固有の楕円状輪郭を有したカム板261〜264を備えている。また、ハウジング251のチャンバ251aには共通温水流路11の一端側開口部(図5では図示せず)が形成されている。
【0046】
一方、チャンバ内に突出した各温水噴出用流路111,121,131,141の端部開口部111a,121a,131a,141aには、図7に示すように、圧縮バネ291〜294を介して流量調整弁281〜284がそれぞれ支持され、各流量調整弁281〜284の図5中上面端部のカム受け部にカム板261〜264がそれぞれ対応して当接するようになっている。
【0047】
分配比切り替え弁250がこのような構成を有することによって、図示しないアクチュエータの駆動又は使用者の操作によりカムシャフト265が回転方向所定の回転角度に留まると、それぞれのカム板261〜264が各温水噴出用流路111,121,131,141に対応して備わった流量調整弁281〜284を上述した回転角度に対応した所定の流路断面積を形成するように開いて共通温水流路11から各温水噴出用流路111,121,131,141に所定の分配比で温水を分配供給し、これに対応する各温水噴出口110,120,130,140からこの分配比に対応した温水を使用者の身体各部位に向かって噴出させるようになっている。
【0048】
なお、図5に示す分配比切り替え弁250の分配比切り替え状態においては、図中右側の流量調整弁284の開閉度合いが最も大きく、続いて左側の流量調整弁281の開閉度合いが大きく、図中真ん中の流量調整弁282,283の開閉度合いが小さくなっており、これに対応するように下側下肢部への温水噴出用流路141、胸部への温水噴出用流路111、上腕部への温水噴出用流路及び上側下肢部への温水噴出用流路121,131の順番に共通温水流路11から分配供給される温水の分配比率が変わるようになっている。
【0049】
分配比切り替え弁250がこのような構成を有していても、上述した第1の実施形態に係るシャワー入浴装置1の奏する作用と同等の作用、すなわち分配比切り替え弁(分配装置)250の単純な操作により各温水噴出口110,120,130,140から使用者の好みの分配比に応じた流量の温水を噴出させることができ、各使用者の好みに合ったシャワー入浴を可能とする作用を発揮する。
【0050】
なお、分配比切り替え弁の流量調整弁の部分に上述のように円筒体の組合せ又はカム機構を用いる代わりに、図8に示すように、分配比の複数パターンに対応した複数の異なる開口部の組み合わせを有するディスク360を用いても良い。すなわち、この場合、ディスク360の周方向所定の回転角度において半径方向に各温水噴出用流路111,121,131に対応する絞り部をなす異なる内径の絞り孔371〜373,381〜383が周方向異なる位置に2列に並んで形成されている。そして、ディスク360の周方向の回転角度を変えることによって、異なる組合せの絞り孔371〜373,381〜383を各温水噴出用流路111,121,131に選択的に合致させて異なる流量分配比を選択するようにしても良い。
【0051】
続いて、本発明の第2の実施形態に係るシャワー入浴装置4について図面に基づいて説明する。なお、上述した第1の実施形態及びその変形例と同等の構成については、対応する符号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
本発明の第2の実施形態に係るシャワー入浴装置4は、図9に示すように、胸部、上腕部、上側下肢部、下側下肢部など使用者の身体各部位に向けてそれぞれ温水を噴出するように配置された4つの温水噴出口410,420,430,440と、使用者の胸部に対応する温水噴出口410に一端が接続された温水噴出用流路411と、使用者の上腕部、上側下肢部、下側下肢部にそれぞれ一端が接続された3本の温水噴出用流路421,431,441と、使用者の胸部に対応する温水噴出用流路411に定流量弁460を介して接続されると共に、使用者の上腕部、上側下肢部、下側下肢部に分配比切り替え弁450を介して接続され、流路途中の上流側にサーモミキシングバルブ45、下流側に流量調整弁46を設けた共通温水流路41を備えている。
【0053】
そして、湯水流路42からの湯水と冷水流路43からの冷水は、サーモミキシングバルブ45で所定の温度の温水に混合され、流量調整弁46で所定の流量に調整された後、定流量弁460を介して胸部に対応する温水噴出用流路411に常に一定流量の温水が分配供給されると共に、残りの温水が分配比切り替え弁450を介して2パターン以上の分配比のうち何れかの分配比に分配されながら3本の各温水噴出用流路421,431,441に供給されるようになっている。
【0054】
なお、分配比切り替え弁450は上述した第1の実施形態に係る分配比切り替え弁150又はその変形例に係る分配比切り替え弁250のいずれの分配比切り替え弁と同等の構成を有していても良い。
【0055】
この変形例に係るシャワー入浴装置4の場合、使用者の胸部に対応する温水噴出口410から噴出する温水の流量を常に一定にすると共に、上腕部に対応する温水噴出口420、上側下肢部に対応する温水噴出口430、下側下肢部に対応する温水噴出口440から噴出する温水の流量を予め定めた流量分配比に設定可能となっている。
【0056】
これによって、使用者の上腕部、上側下肢部、下側下肢部に噴出する温水の流量を使用者の好みに応じて適時変えることができると共に、このような温水噴出流量の変更とは無関係に温水の温度や圧力に敏感な胸部に噴出する温水の流量を一定流量とすることができ、身体各部位のうち温水の温度や圧力の変化に特に敏感な胸部への温水の流量が変化することで使用者が不意に驚いたりすることがなく、常に快適なシャワー入浴を楽しむことができるようになる。
【0057】
なお、このような変形例に係るシャワー入浴装置4において、流量調整弁46を設けることにより、各温水噴出口410,420,430,440から噴出する流量分配比を使用者の好みに応じた特定の分配比に保ちながら総流量を変えることも可能となり、温水の総流量を調整しつつ好みの分配比を保った流量の温水を各温水噴出口410,420,430,440から噴出させることができる。
【0058】
続いて、本発明の第3の実施形態に係るシャワー入浴装置について説明する。本発明の第3の実施形態に係るシャワー入浴装置5は、図10に示すように、使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された4つの温水噴出口510,520,530,540と、4つの温水噴出口510,520,530,540に温水をそれぞれ供給する4本の温水噴出用流路511,521,531,541と、湯水と冷水とが混合された温水を各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路51を備えると共に、各温水噴出用流路511,521,531,541のそれぞれに流量調整弁551,552,553,554を備え、当該流量調整弁551,552,553,554による各温水噴出口510,520,530,540への温水供給量のうち少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能に供給するように制御する制御部57を備えている。
【0059】
シャワー入浴装置5がこのような流量調整弁551,552,553,554と制御部57を備えることで、制御部57の単純な制御により各温水噴出口510,520,530,540から各使用者の好みの分配比に応じた流量の温水を噴出することができ、各使用者の好みに合わせたシャワー入浴を可能とする。
【0060】
続いて、上述した各実施形態及びその変形例に係るシャワー入浴装置の作用を従来のシャワー入浴装置との関連で比較説明する。図11及び図12は、本発明のシャワー入浴装置の作用を従来のシャワー入浴装置と関連して説明した比較表である。
【0061】
図11に示すように、1番目の胸部と下肢部の流量を均等とした分配比を選択した場合、普通のシャワー入浴装置と作用上変わらなくなる。
【0062】
一方、2番目の胸部のみを弱めた分配比を選択した場合、体で温水の温度や圧力に対して敏感な箇所は胸、腕、足の順であり、胸部がこの中で最も敏感なので、胸部への刺激を弱めることで使用者の受ける不快感及び心拍変動が少なくなる。また、胸部における温水の跳ね上がりが無くなり、使用者に不快感を与えることも無く逆上せも生じない。また、胸部に対する温水の噴出速度が比較的遅くなるので、粒滴温度が下がり、逆上せが生じにくくなる。
【0063】
また、3番目の胸部を弱めかつ下肢部を強めた分配比を選択した場合、体で敏感な箇所は胸、腕、足の順でありこの中で最も敏感な胸部への刺激を弱めることで、使用者の受ける不快感及び心拍変動が少なくなる。また、足は温水の温度や圧力に対して比較的鈍感であるので、温水噴出による刺激を強くすることにより、マッサージ効果を高めて血行を促進させる。また、受熱部である足に噴出速度を上げた粒滴を噴出することにより、噴出した温水の温度が下がらず、体が温まり易くなる。また、胸部における温水の跳ね上がりが無くなり、使用者に不快感を与えず逆上せを生じにくくする。
【0064】
また、4番目の胸部を強めかつ下肢部を強めるが両者の強さのレベルが違うように流量分配比を選択した場合、胸部の噴出圧力を少し高めることで、使用者は温まり感を感じることができる。また、大幹部への温水噴出量を上げることにより、早急に体を温めることができるようになる。また、足は噴出する温水の温度や圧力に対して比較的鈍感なため、刺激を強くすることにより、マッサージ効果による血行促進を図ることができる。また、受熱部である下肢部に噴出速度を上げた粒滴を噴出することにより、噴出される温水の温度が下がらず、体が温まり易くなる。
【0065】
また、図12上段の胸部を強めかつ上腕部を強めるが強さのレベルが違う流量分配比を選択した場合、大幹部への噴出量を上げることにより、早急に体を温めることができるようになる。また、噴出速度を上げた粒滴を噴出することにより、噴出の温度が下がらず、体が温まり易くなる。一方、胸部の噴出は、粒滴の跳ね上がりによる逆上せを防止するため、噴出量に制限がある。そのため、大幹部を温める際には、上腕部の噴出量を胸部より上げることで逆上せを防止しつつ体を即時温めることができるようになる。
【0066】
また、図12中段の胸部を弱めかつ上腕部を強めた流量分配比を選択した場合、胸部への噴出は粒滴の跳ね上りによる逆上せを防止するため噴出量に制限されるが、大幹部を温める際には上腕部の噴出量を胸部より大きくすることで体を即時温めることができる。
【0067】
また、図12下段の胸部を弱めかつ上腕部を弱めた流量分配比を選択した場合、大幹部の噴出量を下げることにより、粒滴の跳ね返りによる使用者の逆上せを防止することができる。
【0068】
なお、本発明は各温水噴出口がシャワーボックス内壁面に配置されたいわゆるボックスタイプのシャワー入浴装置に適用しても良く、このような構成を有さない流路と温水噴出口が露出したいわゆるオープンタイプのシャワー入浴装置に適用しても良い。
【0069】
また、所定温度の温水を供給可能な給湯器からシャワー入浴装置の共通温水流路に適温の温水が直接供給される形態、すなわち湯水流路、冷水流路、サーモミキシングバルブを給湯器側に備えた形態の場合にも本発明のシャワー入浴装置は適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシャワー入浴装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示したシャワー入浴装置の分配比切り替え弁の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図1に示した第1の実施形態に係るシャワー入浴装置の変形例を示す概略構成図である。
【図4】図3に示したシャワー入浴装置の更なる変形例を示す概略構成図である。
【図5】図2に示した分配比切り替え弁の変形例を示す断面図である。
【図6】図5に示した変形例に係る分配比切り替え弁のカム板形状を示す平面図である。
【図7】図5に示した変形例に係る分配比切り替え弁の流量調整弁と温水噴出用流路の一側開口部を示す断面図である。
【図8】図2に示したシャワー入浴装置の分配比切り替え弁の更なる変形例を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係るシャワー入浴装置を示す概略構成図である。
【図10】本発明の第3の実施形態に係るシャワー入浴装置を示す概略構成図である。
【図11】本発明に係るシャワー入浴装置の作用を従来のシャワー入浴装置との関連で示す表である。
【図12】図11に続く本発明に係るシャワー入浴装置の作用を従来のシャワー入浴装置との関連で示す表である。
【符号の説明】
【0071】
1 シャワー入浴装置
11 共通温水流路
12 湯水流路
13 冷水流路
17 流量調整弁
110,120,130,140 温水噴出口
111,121,131,141 温水噴出用流路
111a,121b,131c,141d 端部開口部
150 分配比切り替え弁
151 流路切り替え円筒体
152a〜152d,153a〜153d 貫通孔
155 円筒状ハウジング
2 シャワー入浴装置
21 共通温水流路
22 湯水流路
23 冷水流路
24 サーモミキシングバルブ
201,202,203 温水噴出用流路
201a〜201c 温水噴出用流路
202a〜202c 温水噴出用流路
203a〜203c 温水噴出用流路
211〜213 温水噴出口
221〜223 温水噴出口
231〜233 温水噴出口
250 分配比切り替え弁
251 ハウジング
251a チャンバ
260 切り替えカム部
261〜264 カム板
265 カムシャフト
281〜284 流量調整弁
291〜294 圧縮バネ
3 シャワー入浴装置
34 サーモミキシングバルブ
35 流量調整弁
311〜313,321〜323,331〜333 温水噴出口
360 ディスク
371〜373,381〜383 絞り孔
4 シャワー入浴装置
41 共通温水流路
42 湯水流路
43 冷水流路
45 サーモミキシングバルブ
46 流量調整弁
410,420,430,440 温水噴出口
411,421,431,441 温水噴出用流路
450 分配比切り替え弁
460 定流量弁
5 シャワー入浴装置
51 共通温水流路
57 制御部
510,520,530,540 温水噴出口
511,521,531,541 温水噴出用流路
551,552,553,554 流量調整弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された複数の温水噴出口と、
前記複数の温水噴出口に温水をそれぞれ供給する複数の温水噴出用流路と、
湯水と冷水とが混合された温水を前記各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路を備えたシャワー入浴装置において、
前記共通温水流路と前記各温水噴出用流路の間に少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能な分配装置を備えたことを特徴とするシャワー入浴装置。
【請求項2】
前記共通温水流路の前記分配装置より上流側に流量調整弁を備えたことを特徴とする、請求項1に記載のシャワー入浴装置。
【請求項3】
前記分配装置は、前記共通温水流路と前記各温水噴出用流路との間に介在し、前記共通温水流路から前記各温水噴出用流路へ供給される温水の流量を規定する絞り部を有し、かつ前記絞り部を前記分配装置の流量分配比の複数パターンに対応するように複数の異なる組み合わせで配設可能とする分配比切換え部を備えたことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載のシャワー入浴装置。
【請求項4】
使用者の身体各部位に向けて温水を噴出するようにそれぞれ配置された複数の温水噴出口と、
前記複数の温水噴出口に温水をそれぞれ供給する複数の温水噴出用流路と、
湯水と冷水とが混合された温水を前記各温水噴出用流路に分配供給する共通温水流路を備えたシャワー入浴装置において、
前記各温水噴出用流路のそれぞれに流量調整弁が備わると共に、少なくとも2つ以上の温水噴出口に供給される温水の流量分配比を変更可能にして供給するように当該流量調整弁の各温水噴出口への温水供給量を制御する制御部を備えたことを特徴とするシャワー入浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−202793(P2007−202793A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25260(P2006−25260)
【出願日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】