説明

シャワー浴装置

【課題】座った姿勢の使用者の前方に吐水部を設けなくても使用者の体の前面側にシャワー流を浴びせることができるシャワー浴装置を提供すること。
【解決手段】座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部への給水路の途中に流量調整弁が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー浴装置に関し、特に使用者が座った姿勢でシャワー浴を受けることができるシャワー浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
使用者が座った姿勢でシャワー浴を受けることができるシャワー浴装置として、例えば特許文献1に開示されるものがある。特許文献1によれば、座った姿勢の使用者の背面から肩越しに前方にせり出したアームに設けられた噴霧ノズルから使用者の全身に向けて噴霧がかけられる。
【0003】
しかし、特許文献1のシャワー浴装置を利用する際には、浴室壁面に取り付けたアームを壁面より引き出して利用するため、浴室が狭くなり、また、アームが浴室空間へせり出すため利用者が鬱陶しさを感じることもあり得る。さらに、アームからの吐水は、体の前面側へ向けての吐水であるため、利用者の顔面への跳ね返りや、逆上せなども懸念される。
【特許文献1】国際公開第97/30619号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、座った姿勢の使用者の前方に吐水部を設けなくても使用者の体の前面側にシャワー流を浴びせることができるシャワー浴装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部への給水路の途中に流量調整弁が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0006】
また、本発明の他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部への給水路の途中に流量調整弁が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0007】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部を上下動させる移動手段が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0008】
また、本発明のさらに一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部を上下動させる移動手段が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0009】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0010】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記第1の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0011】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する一対の吐水部を有し、前記座部は、昇降可能であることを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【0012】
また、本発明のさらに他の一態様によれば、座部と、背面部と、を備え、前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、前記座部は、昇降可能であることを特徴とするシャワー浴装置が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、座った姿勢の使用者の前方に吐水部を設けなくても使用者の体の前面側にシャワー流を浴びせることができるシャワー浴装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシャワー浴装置の外観を模式的に例示する斜視図である。
図2は、図1におけるA−A断面図である。
図3は、図1におけるB−B断面図である。
図4は、図1におけるC−C断面図である。
【0016】
本実施形態に係るシャワー浴装置は、主として、浴室の壁面100に設けられた背面部2と、浴室の床面110上に設けられた台部3とを備える。本具体例においては、台部3は、背面部2の下部に一体的に設けられている。ただし、本発明はこれに限定されず、台部3と、背面部2とを、別体で設けてもよい。
【0017】
台部3は、背面部2の前方側(図1における矢印yの方向)に出張っている。台部3の上面には、その上面の他の部分よりも床面110側にくぼんだ凹状の座部4が形成されている。すなわち、浴室壁面100及び浴室床面110に対して略平行な第1の方向x(台部3の幅方向)にみた台部3上面の両端部と、座部4との間には、壁部6を介して、段差が形成されている。
【0018】
背面部2には、その背面部2の他の部分よりも浴室壁面100側にくぼんだ凹状の背もたれ部5が形成されている。すなわち、第1の方向xにみた背面部2の両端部と、背もたれ部5との間には、壁部7を介して、段差が形成されている。
【0019】
背もたれ部5および座部4は、ひとつながりの凹部として形成されている。背もたれ部5の第1の方向x(幅方向)にみた両端に設けられた壁部7、および座部4の第1の方向x(幅方向)にみた両端に設けられた壁部6も、ひとつながりになっている。
【0020】
座部4は、図3(a)、(b)に表されるように、第1の方向x(幅方向)にみて凹状に形成されている。そして、さらに図3(b)に表したように一対の凹部4Aを設けてもよい。これら凹部4Aは、第2の方向yに延在して形成され、座部4に座った着座者の大腿部に対応する。このような凹部4Aを設けることにより、着座者の大腿部をより安定して支持することができ、また、座部4に溜まった湯水を着座者の脚に向けて流すことができる。
【0021】
また、座部4は、図2に表されるように、奥行き方向に向かって(背もたれ部5に向かって)下向き傾斜している。すなわち、座部4のくぼみ深さが、奥行き方向に向かって(背もたれ部5に向かって)徐々に深くなっている。
【0022】
背面部2の上部であって、第1の方向x(幅方向)にみた略中央部には、座部4に座った着座者の頭部、または首から頭部にかけての部分を支持するための頭部支持部25が設けられている。頭部支持部25は、背面部2に対して第2の方向(台部3の出張り方向)yに出張っている。
【0023】
背もたれ部5よりも上方の背面部2には、1対の第1の吐水部21が設けられている。第1の吐水部21は、第1の方向xにみて頭部支持部25を挟むように頭部支持部25の左右両側に、それぞれ1つずつ設けられている。第1の吐水部21は、使用者が座部4に着座した状態で、その着座者の肩よりも上方に位置する。また、座部4と第1の吐水部21との間の高さは、浴室床面110からの座部4の高さよりも大きい。使用者が座部4に着座した際に、1対の第1の吐水部21間に、着座者の顔または頭部を位置させることができるように、2つの第1の吐水部21は、第1の方向xに互いに離間している。すなわち、1対の第1の吐水部21は、使用者が座部に着座した状態で、着座者の顔または頭部を挟む位置に設けられている。ただし、第1の吐水部21は、座部4に着座した使用者の頭部よりも高い位置に設けられていてもよい。第1の吐水部21の吐水方向は、略水平方向、または水平方向よりやや下方に設定されている。
【0024】
ここで、「略水平方向」とは、 水平面に対してプラスマイナス45°以内であることが望ましく、プラスマイナス30°以内であることがさらに望ましい。また、水平面に対してプラスマイナス20°以内であることが、よりさらに望ましい。
【0025】
すなわち、後に詳述するように、座部4に着座した着座者の肩よりも上方に設けられた第1の吐水部21からは、着座者の下肢近傍に落下するシャワー流が吐水される。この場合、第1の吐水部21の取付位置が低い場合には、着座者の肩越しにほぼ水平方向に向けてシャワー流を吐水させ着座者の下肢近傍に落下させることができる。一方、第1の吐水部21の取付位置が高い場合には、水平方向に吐水させるとシャワー流は着座者の下肢よりも遠方に落下してしまうため、水平方向から下向きに吐水させる必要がある。つまり、第1の吐水部21の取付位置が低い場合にはほぼ水平方向に吐水させ、取付位置が高くなるほど吐水方向を水平方向よりも下向きにする必要がある。
【0026】
例えば、第1の吐水部21の取付位置が低く、略水平方向に吐水させる場合には、シャワー流が着座者の下肢近傍に落下するまでの飛距離が短くなり、その結果、シャワー流の温度低下が起こりにくい。また、第1の吐水部21の取付位置を低くすることによりシャワー浴装置を小型化できる。また、シャワー流が着座者の下肢近傍に落下する時の速度も遅くなる(下向きに吐水する際に加わる加速の影響が少ないからである)ため、シャワー流による着座者への刺激および水跳ねが低減され、着座者は快適に長時間全身シャワーを浴びることが可能となる。
【0027】
なお、本具体例においては、左右一対の第1の吐水部21が設けられているが、本発明はこれには限定されず、第1の吐水部21はひとつでもよい。この場合には、第1の吐水部21は頭部支持部25の左右両側に渡り、設けられる。
【0028】
背もたれ部5よりも上方の背面部2であって、1対の第1の吐水部21のそれぞれの下方には、1対の第2の吐水部22が設けられている。第2の吐水部22の吐水方向は、第1の吐水部21の吐水方向よりも下方に設定され、着座者の肩に向かって吐水を行うように設定されている。なお、本具体例においては、左右一対の第2の吐水部22が設けられているが、本発明はこれには限定されず、第2の吐水部22はひとつでもよい。この場合には、第2の吐水部22は中心付近に設けられる。
【0029】
第2の吐水部22とほぼ同じ高さあるいは第2の吐水部22よりも少し上方の背面部2であって、第1、第2の吐水部21、22及び背もたれ部5よりも、第1の方向x(背もたれ部2の幅方向)にみて外側には、1対の第3の吐水部23が設けられている。第3の吐水部23の吐水方向は、第1の吐水部21の吐水方向よりも第1の方向xにみて内側に設定され、着座者の肩峰部に向けて吐水を行うように設定されている。
【0030】
各吐水部21〜23からは、例えば40〜45℃程度のシャワー流が吐水される。なお、各吐水部21〜23は、2対以上設けてもよい。また、本具体例においては、各吐水部21〜23がそれぞれ独立し個別に突出した構造体であるが、本発明はこれには限定されず、例えば、これら吐水部21〜23をひとつのユニット体に一体的に内蔵させてもよい。
【0031】
また、台部3において、その出張り方向(第2の方向y)にみた前方側に位置する前面部27には、浴室壁面100側にくぼんだ凹部28が形成されている。第1の方向xにみた前面部27の両端部と、凹部28との間には、壁部8を介して、段差が形成されている。凹部28は座部4とつながっており、壁部8は座部4の両端に形成された壁部6とつながっている。
【0032】
また、凹部28の前方の浴室床面110上には、足浴槽29が設けられている。第1〜第3の吐水部21〜23から吐水された湯水は、着座者の体表面を伝って、もしくは背もたれ部5および座部4を経て足浴槽29に溜まる。
【0033】
次に、図5は、各吐水部21〜23への給水配管系統図である。
【0034】
第1〜第3の吐水部21〜23は、それぞれ、配管51a〜51cに接続されている。各配管51a〜51cは、共通の給水配管51に接続されている。第1の吐水部21に流水を供給する配管51aの途中には、流量制御弁41aが設けられている。
【0035】
次に、本実施形態に係るシャワー浴装置の作用について説明する。
図6は、着座者200に対する各吐水部21〜23からのシャワー流の吐水の様子を模式的に表す斜視図である。
【0036】
図2、6に表されるように、第1の吐水部21からは、略水平方向に噴出し座部4の前縁近傍に落下するシャワー流が吐水される。すなわち、着座者200の肩越しに着座者200の前方へと自重により弧を描く軌跡でシャワー流が吐水され、着座者200の特に大腿部を中心とした下肢近傍にシャワー流が落下する。なおこの時、シャワー流は、着座者200の下肢だけでなく腹部にも落下するようにしてもよい。
【0037】
そして、このシャワー流は、着座者200の膝から足に向けて腹部や下肢の表面を流れる。このような吐水方向に設定することで、着座者200の後方であって、且つ第1の吐水部21が着座者200の下肢から遠い頭部付近に設けられた構成であっても、着座者200の肩越しに吐水を行うことで、その吐水流が着座者200に遮られることなく確実に下肢近傍まで到達させて、膝から下の下肢までも温めることができる。また、このように高い位置から吐水させることにより「打たせ湯」のように、シャワー流によるマッサージ効果も下肢近傍に作用させることができる。
【0038】
また、背もたれ部5の角度や着座者200の姿勢によっては、第1の吐水部21から吐水されるシャワー流を着座者200の下腹部に落下させることもできる。
【0039】
なお、第1の吐水部21からのシャワー流が着座者200の肩の真上を通過する場合に限らず、着座者200の肩口(肩先)付近を通過する場合も、「肩越し吐水」に含まれる。ただし、着座者200の肩の真上をシャワー流が通過するようにすれば、着座者200の背面側に設けられた第1の吐水部21から最短距離で下肢近傍にまでシャワー流を到達させることができる。すなわち、第1の吐水部21から吐水されたシャワー流が下肢近傍に至るまでの飛翔中の温度低下を抑制でき、下肢近傍を所望の温度のシャワー流で温めることができる。
【0040】
第2の吐水部22からは、着座者200の首の付け根の近くの肩部に向けてシャワー流が吐水される。肩部にあたったシャワー流の一部は、着座者200の胸部から胴部にかけての側部を中心とした体の前側表面を流れ、シャワー流の他の一部は、背中に回り込む。このようにして、着座者200の体の前側と背中とをいずれも温めることができる。また、シャワー流によるマッサージ効果も肩部に作用させることができる。なお、前述したように第2の吐水部22がひとつだけ設けれる場合には、例えば着座者200の首の後ろから首の付け根の近くの両肩部に向けてシャワー流が吐水され、同様の効果が得られる。
【0041】
第2の吐水部22から着座者200の首の付け根の近くの肩部に向けてシャワー流を吐水し着座者200の上半身の前面と背中とにシャワー流を流すことにより、着座者200の後方に設けた1対の第2の吐水部22だけであっても、着座者22の上半身全体を効率よく温めることができる。すなわち、吐水部を最小限にして低コスト化を図りつつ、高い温熱効果が得られる。
【0042】
着座者200の背面側に回り込んだ湯水は、着座者200の背中または背もたれ部5を伝って、座部4に向けて連続的に流れる。すなわち、第2の吐水部22から吐水された湯水が、背もたれ部5へ次々と流れ込むため着座者200の背中と背もたれ部5との間に温度境界層ができず、湯水の熱が着座者200の背中に伝わりやすくなる。人体の背中は、温熱受容器(人体が熱を感じる部分)の密度が高いため、少ない流量でも温熱効果を高くでき、使用湯量の節約による節水及び省エネルギーにもなる。
【0043】
また、背もたれ部5は、第1の方向x(幅方向)の両端に形成された壁部7で仕切られ、また座部4へとつながる凹状に形成されているため、背もたれ部5に流れ込んだ湯水の飛散や流出を抑えて、無駄なく確実に座部4へと湯水を導くことができる。すなわち、少ない流量でも温熱効果を損なうことなく、また、使用湯量の節約による節水及び省エネルギーにもなる。
【0044】
第3の吐水部23からは、着座者200の肩峰部(肩頂部)に向けてシャワー流が吐水される。肩峰部にあたったシャワー流は、第1及び第2の吐水部21、22からのシャワー流によってカバーしきれない、腕部の中央付近を中心とした部分に流れて、その部分を温める。第3の吐水部23から肩峰部に向けてシャワー流を吐水することで、第1及び第2の吐水部21、22でカバーしきれない腕部などを、1対だけの吐水部23でカバーでき、低コストである。
【0045】
第1〜第3の吐水部21〜23から吐水された湯水は、着座者200の体表面もしくは背もたれ部5を伝って、凹状の座部4に溜まる。座部4に湯水が溜まることで、着座者200の臀部、および大腿部における少なくとも裏側が確実に湯水に接触した状態となる。これにより、各吐水部21〜23からの吐水流が直接当たらない腰部付近を効率的に温めることができる。また、腰部を温めることで、腸内運動の活性化も図れる。
【0046】
座部4は、第1の方向x(幅方向)の両端に形成された壁部6で仕切られ、また背もたれ部5からつながるくぼみとして形成されているため、湯水の横漏れを抑えて、各吐水部21〜23からの湯水を無駄なく効率的に利用できる。すなわち、使用湯水量の節約による節水及び省エネルギーが図れる。
【0047】
座部4にも、着座者200の体表面もしくは背もたれ部5を伝って次々と湯水が流れ込むため、着座者200と座部4との間に温度境界層ができず、湯水の熱が着座者200の臀部および大腿部に伝わりやすくなり、温熱効果を高めることができる。
【0048】
またさらに、座部4に溜まった湯水は、前方(図1の方向y)に向けて流出し、着座者200の脚部から足を流れる。その結果として、湯水を無駄にせずに足まで温めることができる。特に、図3(b)に例示したような凹部4Aを設けると、座部4に溜まった湯水は着座者200の脚部に向けて流れやすくなるので効率的である。
【0049】
また、座部4に溜まった湯水に浸かりつつ、第1〜第3の吐水部21〜23によるシャワー流を体全体に受けることで、浴槽への入浴と同様なお湯に浸かる感覚(入浴感)を得ることができ、シャワー浴でありながら高い温熱効果を得られる。しかも、浴槽に浸かる場合に比べて水圧が体にかからず体への負担が少ない。浴槽の中に出入りする動作が必要なく、着座した状態で使用できるので、高齢者や身体動作に障害を有する使用者でも高い温熱効果を楽に得ることができる。また、体の部分ごとにシャワーをかけるのではなく、全身にシャワーを同時にかけられるため、短時間で節水しながらシャワーを浴びて体を温めることができる。
【0050】
また、各吐水部21〜23から吐水されるのは噴霧ではなく連続的な水流からなるシャワー流であるため、ミスト(噴霧)を噴出させる場合のように周辺の空間が高温高湿雰囲気にならず、逆上せを防げる。またさらに、気化熱による吐水の温度低下が少ないので、シャワーの設定温度を必要以上に高く設定する必要がなく、経済的である。
【0051】
なお、本実施形態のシャワー浴装置において第1〜第3の吐水部21〜23から吐水されるシャワー流は、各吐水部に設けられた複数のシャワー穴から吐水される。その穴径は、例えば0.2mm〜4mmの範囲内であることが望ましく、この範囲であれば、少ない流量で広範囲に渡り効率的に温めることができる。
【0052】
また、着座者200はその足部を、足浴槽29に溜まった湯水に浸けることにより、第1〜第3の吐水部21〜23から最も遠く、また血流が流れにくく、皮膚温が低い足部の温熱効果を高めることができる。また、足部には、動静脈吻合(AVA:arteriovenous anastomosis)があり、足部を足浴槽29の湯水に浸けることでAVAが開いて血流が増大し、これにより全身の温熱効果がさらに高まる。
【0053】
また、台部3の前面部27に、座部4とつながった凹部28を設けたことで、座部4に溜まった湯水があふれても横漏れせずに凹部28を流れて足浴槽29に溜まるため、吐水部21〜23からの湯水を無駄なく利用することができる。
【0054】
また、複数の吐水部を設けたアームが着座者の前方にせり出す特許文献1に比べて、本実施形態では、各吐水部21〜23を着座者200の後方の浴室壁面に一体に設けることにより、限られたスペースの浴室空間内で、設置スペースの省スペース化が図れ、またコンパクトですっきりした構成であるため浴室内での鬱陶しさがなくなり、デザイン性も損なわない。また、前方にせり出すアームがないため、例えば使用者を車いすからシャワー浴装置の座部4へと移乗させる作業も安全且つ容易に行え、使い勝手がよい。
【0055】
また、各吐水部21〜23からのシャワー流の吐水方向を前述したように適切に設定することで、着座者200の前方に多数の吐水部を設けなくても、着座者の後方に最小限の吐水部を設けるだけで、少量の湯でも効率的に着座者200の体全体を温めるシャワー浴が実現できる。吐水部を最小限にすることで、低コスト化も図れる。また、必要湯量を抑えることで、節水及び省エネルギーにもなる。
【0056】
さらに、本実施形態では、図5に表したように、第1の吐水部21に流水を供給する配管51aの途中に、流量制御弁41aを設けたので、第1の吐水部21へ供給される流水の流量を制御して、第1の吐水部21から吐水されるシャワー流の飛距離を変化させることができる。これにより、着座者200の体格、体型、深く座るあるいは浅く座るなどの座り方、また、どの部位にシャワー流を当てるかといった好みなどに応じて、着座者200の所望の部位に、第1の吐水部21からのシャワー流を確実に到達させることができる。
【0057】
例えば、図7に表されるように、体格が小さい子供等が使用する場合には、流量制御弁41aの開度を小として、第1の吐水部21からの吐水流量を少なめにし、シャワー流の飛距離を小さくし、体格の小さな使用者の下肢近傍に第1の吐水部21からのシャワー流を確実に落下させることができる。また、体格の小さい子供がシャワーを使用する際には、湯水を無駄に使用することがないため、節水効果が得られ、家族で使用する水の総流量を減らすことができる。
【0058】
また、例えば、図8に表されるように、大人などの体格が大きい使用者に対しては、流量制御弁41aの開度を大として、第1の吐水部21からの吐水流量を多めにし、シャワー流の飛距離を大きくし、体格の大きな使用者の下肢近傍に第1の吐水部21からのシャワー流を確実に落下させることができる。使用者の体格、体型、座り方(例えば、深く座ったり浅く座るなど)、どの部位にシャワー流をあてるか、などの好みに応じてシャワー流を調整することができる。つまり、湯水を無駄に使用することなく、節水しながらも使用者の全身を効率的に温めることができる。また、使用者の体格等に応じて複数の吐水部を設けなくてよいので、コスト低減にもなる。
【0059】
なお、このようにシャワー流の飛距離を変えることにより、足先からふくらはぎ、太もも、腰、胸に吐水を移動させることができるのは、着座者が座部4に座った状態で、シャワー流の吐水方向がy方向(図1参照)であり、また着座者の下肢もy方向(図1参照)に延在するからである。本発明によれば、このように着座者の姿勢とシャワー流の吐水方向とを独特の関係に配置することにより、着座者の体格、体型、座り方などの好みに応じてシャワー流を調整することができる。
【0060】
なお、使用者が、着座する前にシャワー浴装置の前に立った状態で、第1の吐水部21からシャワー流を吐水させる操作を行う場合もあり得る。このような場合に使用者の胸部などに第1の吐水部21からのシャワー流がかかって不快感や心肺への負担を与えないように、第1の吐水部21からの吐水開始初期の流量を小さめに設定してもよい。
【0061】
図9は、各吐水部21〜23への給水配管系統の他の具体例を表す図である。
【0062】
本具体例では、各吐水部21〜23に共通に接続された給水配管51の途中に、流量制御弁41を設けている。
【0063】
したがって、本具体例では、各吐水部21〜23へ供給される流水の流量が、流量制御弁41の開度制御によって制御され、各吐水部21〜23から吐水されるシャワー流の流量を同時に変化させることができる。これにより、着座者200の体格、体型、深く座るあるいは浅く座るなどの座り方、また、どの部位にシャワー流を当てるかといった好みなどに応じて、着座者200の所望の部位に、各吐水部21〜23からのシャワー流を確実にあてることができる。
【0064】
図10は、各吐水部21〜23への給水配管系統のさらに他の具体例を表す図である。
【0065】
本具体例では、第1〜第3の吐水部21〜23は、それぞれ、配管51a〜51cに接続されている。各配管51a〜51cは、共通の給水配管51に接続されている。そして、第1の吐水部21に流水を供給する配管51aの途中には、流量制御弁41aが設けられ、第2の吐水部22に流水を供給する配管51bの途中には、流量制御弁41bが設けられ、第3の吐水部23に流水を供給する配管51cの途中には、流量制御弁41cが設けられている。
【0066】
したがって、着座者200の体格、体型、座り方、好みなどに応じて、各吐水部21〜23へ供給される流水の流量を個別に独立して制御することができ、よって、各吐水部21〜23から吐水されるシャワー流の流量を個別に独立して変化させることができる。これにより、着座者200の体格、体型、座り方、好みなどの違いに、より柔軟に対応できる。
【0067】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。なお、前述したものと同様の要素については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0068】
[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態に係るシャワー浴装置における背もたれ部5を正面側見た模式図である。
図12は、第1〜第3の吐水部21〜23を上下動させる移動手段の模式側面図である。
【0069】
本実施形態では、第1〜第3の吐水部21〜23の設置高さを変えられるように、第1〜第3の吐水部21〜23を上下動させる移動手段を設けている。
【0070】
本具体例の移動手段は、背もたれ部5の高さ方向に延在して設けられたボールネジ47と、このボールネジ47を回転させるモータ48と、ボールネジ47に螺合して設けられた昇降体46とを備える。第1〜第3の吐水部21〜23は、昇降体46に設けられている。
【0071】
モータ48の駆動によってボールネジ47が回転されると、昇降体46は、その左右の両端が係合しているガイド部材49のガイド作用を受けながら昇降する。また、ガイド部材49は、昇降体49の回り止めをする機能も有する。
【0072】
昇降体46の昇降により、第1〜第3の吐水部21〜23の設置高さを変えることができ、着座者の体格、体型、座り方、好みなどに応じて、着座者の所望の部位に確実に各吐水部からのシャワー流をあてることができる。
【0073】
次に、図13は、第1〜第3の吐水部21〜23の移動手段の他の具体例を表す模式図である。本具体例では、移動手段として、ラッチ機構を利用している。
【0074】
すなわち、背もたれ部5に、上下方向に所定間隔で離間した複数の係合溝52を設けると共に、昇降体46の裏面側に、係合溝52に係合可能な係合突起53を設けている。係合突起53を、どの高さ位置の係合溝52に係合させるかによって、昇降体46の高さ、すなわち第1〜第3の吐水部21〜23の設置高さを変えることができる。
【0075】
なお、すべての吐水部21〜23を昇降可能にすることに限らず、少なくとも第1の吐水部21のみを昇降可能にすればよい。また、すべての吐水部21〜23を昇降可能にする構成において、各吐水部21〜23を個別に独立して昇降できるようにしてもよい。
【0076】
[第3の実施形態]
図14〜16は、第1〜第3の吐水部21〜23において、対をなすうちの一方のみを表した模式斜視図である。
【0077】
図15は、例えば第1の吐水部21のみを、図14に表される吐水方向の初期設定方向に対して、吐水方向がやや上向きになるように設定した状態を表す。
図16は、第1〜第3の吐水部21〜23それぞれの吐水方向を、図14に表される初期設定方向に対して変更した状態を表す。
【0078】
本実施形態によれば、着座者の体格、体型、座り方、好みなどに応じて、各吐水部21〜23の設置角度を変えてシャワー流の吐水方向を変更できるようにしている。これにより、所望の部位に確実に各吐水部21〜23からのシャワー流をあてることができる。
【0079】
[第4の実施形態]
本実施形態では、着座者の体格、体型、座り方、好みなどに応じて、座部4の高さを調整することで、所望の部位に確実に各吐水部21〜23からのシャワー流をあてることができるようにしている。
【0080】
例えば、図17に表される使用者200に比べて、図18に表されるように座高が高い使用者200aに対しては、座部4の設置高さを低くすることで、各吐水部21〜23との相対的な位置関係を調整し、それぞれのシャワー流を確実に受けることができる。
【0081】
図19は、座部の高さ調整機構の具体例を表す。
この具体例では、上面に座部4を設けた台部3自体が上下動可能に設けられている。
【0082】
図20は、座部の高さ調整機構の他の具体例を表す。
この具体例では、支持部材54の上端部に、座部44の前端部が軸部材55を介して揺動自在に係合しており、座部44が軸部材55を中心に揺動することで、座部44の高さ(傾斜角度)が変わる。
【0083】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれら具体例に限定されるものではない。
例えば、前述した各実施形態は、技術的に可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、これらも本発明の範囲に包含される。
また、各具体例における各要素の構造、形状、機能、配置関係、材料などについて当業者が適宜変更あるいは追加したものであっても、本発明の要旨を含む限りにおいて本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシャワー浴装置の外観を模式的に例示する斜視図である。
【図2】図1におけるA−A断面図である。
【図3】図1におけるB−B断面図である。
【図4】図1におけるC−C断面図である。
【図5】各吐水部への給水配管系統図である。
【図6】着座者に対する各吐水部からのシャワー流の吐水の様子を模式的に表す斜視図である。
【図7】比較的体格の小さな使用者に対して第1の吐水部からシャワー流を吐水する様子を表す模式図である。
【図8】図7に表す使用者よりも体格の大きな使用者に対して第1の吐水部からシャワー流を吐水する様子を表す模式図である。
【図9】各吐水部への給水配管系統の他の具体例を表す図である。
【図10】各吐水部への給水配管系統のさらに他の具体例を表す図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係るシャワー浴装置における背もたれ部を正面側見た模式図である。
【図12】同実施形態において、第1〜第3の吐水部を上下動させる移動手段の模式側面図である。
【図13】第1〜第3の吐水部の移動手段の他の具体例を表す模式図である。
【図14】第1〜第3の吐水部において、対をなすうちの一方のみを表した模式斜視図である。
【図15】図14の状態から、第1の吐水部のみ吐水方向を変えた状態を表す図である。
【図16】図14の状態からすべての吐水部が吐水方向を変えた状態を表す図である。
【図17】座部の高さ調整を説明するための模式側面図である。
【図18】図17よりも座部の高さが低く設定された模式側面図である。
【図19】座部の高さ調整機構の具体例を表す。
【図20】座部の高さ調整機構の他の具体例を表す。
【符号の説明】
【0085】
2…背面部、3…台部、4…座部、5…背もたれ部、21…第1の吐水部、22…第2の吐水部、23…第3の吐水部、29…足浴槽、41,41a〜41c…流量調整弁、100…浴室壁面、110…浴室床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する吐水部を有し、
前記第1の吐水部への給水路の途中に流量調整弁が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項2】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記第1の吐水部への給水路の途中に流量調整弁が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項3】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記第1の吐水部を上下動させる移動手段が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項4】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記第1の吐水部を上下動させる移動手段が設けられたことを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項5】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記第1の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項6】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記第1の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項7】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、略水平方向に向けて噴出し前記座部の前縁近傍に落下する湯水のシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記座部は、昇降可能であることを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項8】
座部と、
背面部と、
を備え、
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩を越えて下肢近傍に落下するシャワー流を吐水する第1の吐水部を有し、
前記座部は、昇降可能であることを特徴とするシャワー浴装置。
【請求項9】
前記背面部は、前記第1の吐水部より下方に設けられた第2の吐水部をさらに有し、
前記第2の吐水部は、前記第1の吐水部よりも下方に向けて湯水のシャワー流を吐水することを特徴とする請求項1、3、5及び7のいずれか1つに記載のシャワー浴装置。
【請求項10】
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩に向かって湯水のシャワー流を吐水する第2の吐水部をさらに有することを特徴とする請求項2、4、6及び8のいずれか1つに記載のシャワー浴装置。
【請求項11】
前記背面部は、前記座部の中心を挟んで前記第1の吐水部より外側にそれぞれ設けられた1対の第3の吐水部をさらに有し、
前記第3の吐水部は、前記第1の吐水部よりも、前記座部の中心に向けた内側に向けて湯水のシャワー流を吐水することを特徴とする請求項1、3、5、7及び9のいずれか1つに記載のシャワー浴装置。
【請求項12】
前記背面部は、前記座部に着座した着座者の肩峰部よりも外側から前記肩峰部に向かって湯水のシャワー流をそれぞれ吐水する一対の第3の吐水部をさらに有することを特徴とする請求項2、4、6、8及び10のいずれか1つに記載のシャワー浴装置。
【請求項13】
前記第2の吐水部への給水路の途中に流量調整弁を設けたことを特徴とする請求項9または10に記載のシャワー浴装置。
【請求項14】
前記第3の吐水部への給水路の途中に流量調整弁を設けたことを特徴とする請求項11または12に記載のシャワー浴装置。
【請求項15】
前記第2の吐水部を上下動させる移動手段を設けたことを特徴とする請求項9または10に記載のシャワー浴装置。
【請求項16】
前記第3の吐水部を上下動させる移動手段を設けたことを特徴とする請求項11または12に記載のシャワー浴装置。
【請求項17】
前記第2の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とする請求項9または10に記載のシャワー浴装置。
【請求項18】
前記第3の吐水部は、前記シャワー流の吐水方向が変更可能であることを特徴とする請求項11または12に記載のシャワー浴装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2007−268159(P2007−268159A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−100280(P2006−100280)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】