説明

シャワー装置

【課題】 吐水ヘッドの吐水角度が自在に調整可能で、かつシャワー吐水の切替操作性のよいシャワー装置を提供する。
【解決手段】 回転操作することによりシャワー吐水状態を切替可能な吐水切替部を有する吐水ヘッド部が、前記吐水ヘッド部への給水を行う通水路を内部に備えた球面継手部に対して接続されることにより、前記吐水ヘッド部が首振り状に回転可能なシャワー装置において、前記球面継手部の球面部側面には、溝部を設け、前記吐水ヘッド部の前記球面継手部との接続部には突起を設け、前記溝部内に前記突起部が収まるように接続されることを特徴とするシャワー装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やシャワールームなどの壁に固定して、頭上や体の側面方向からシャワー吐水するシャワー装置に係り、特にシャワー吐水が切替えられ、かつシャワー吐水の方向を自在に調整できるシャワー装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室やシャワールームなどの壁面または天井面に設置される固定式のシャワー装置として、シャワーヘッド部にシャワー吐水形態が異なる複数の散水孔とシャワー吐水形態を切替える吐水切替操作部を設け、球面部を備えた継手等でシャワーヘッドを接続して吐水方向を自在に調整できる形態のものがある。(例えば、特許文献1参照。)
上記の例では、シャワーヘッド部に異なるシャワー吐水形態の散水孔を設けた散水板を設け、散水板を回転操作することにより所望のシャワー吐水に切替えることができるものである。一方、シャワーヘッド部に接続する継手部の先端は球面形状でシャワーヘッド部の内部に収納され、シャワーヘッド部と接続されている。これにより、シャワーヘッド部は継手部の球面に沿って可動できてその向きを自在にすることができる。
このような構成では、散水板の摺動部に使用しているパッキンが固着したり、シャワーヘッド部の部品にかかる水圧の影響によって散水板の摺動部の摩擦抵抗が上昇したりして、操作板の回転に必要な操作力がシャワーヘッド部の向きを調整する操作力よりも高くなると、シャワーヘッド部の散水板を回転操作しても、シャワーヘッド部が共回りしてしまい、吐水切替を行うことができない等の問題があった。

【特許文献1】特開2000−312654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記問題を解決するため、吐水ヘッド部の吐水角度を自在に調整でき、かつシャワー吐水の切替操作性のよいシャワー装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明では、回転操作することによりシャワー吐水状態を切替可能な吐水切替部を有する吐水ヘッド部が、前記吐水ヘッド部への給水を行う通水路を内部に備えた球面継手部に対して接続されることにより、前記吐水ヘッド部が首振り状に回転可能なシャワー装置において、前記球面継手部の球面部側面には、溝部を設け、前記吐水ヘッド部の前記球面継手部との接続部には突起を設け、前記溝部内に前記突起部が収まるように接続されることを特徴とするシャワー装置とした。
【0005】
本発明によれば、球面継手部の球面部側面には、溝部を設け、吐水ヘッド部の球面継手部との接続部には突起を設け、溝部内に突起部が収まるように接続されるため、シャワー吐水状態切替時、吐水切替部の回転操作力により、吐水ヘッド部の球面継手部との接続部が球面継手部上を共回りしようとしても、突起が溝部側面に当たることにより、吐水ヘッド部の回転を阻止し、吐水切替部を回転操作でき、容易にシャワー吐水状態の切替ができる。
【0006】
請求項2記載の発明では、前記溝部を前記球面継手部側面の相対する位置に設けるとともに、前記突起を前記吐水ヘッド部の前記球面継手部との接続部の相対する位置に設け、前記溝部内に前記突起部が収まるように接続されることを特徴とするシャワー装置とした。
【0007】
本発明によれば、溝部を球面継手部側面の相対する位置に設けるとともに、前記突起を前記吐水ヘッド部の球面継手部側面との接続部の相対する位置に設けるため、突起が溝部側面に当たる力分散し突起の摩耗及び劣化を抑制できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐水ヘッドの吐水角度が自在に調整可能で、かつ吐水ヘッドにある時吐水状態を切り替える吐水切替部を回転操作する時、吐水ヘッドの回転を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。図1は浴室の壁面に本発明のシャワー装置を取り付けた状態を示した図、図2は本発明のシャワー装置の側面断面図、図3は本発明のシャワー装置の平面断面図である。
図1に示すように本発明のシャワー装置Aは浴室の洗い場で一壁面あるいは相対する二つの壁面の所定位置に設置され、操作ハンドル(図示しない)を操作することによってシャワー装置Aからシャワー吐水するものである。
本発明のシャワー装置Aは、主として湾曲隆起した散水板11の中心部で刺激のあるマッサージ吐水部を備えた異なる形態のシャワー吐水に切替えることができ、吐水方向を自在に調整できる吐水ヘッド1と、湯水混合水を供給する配管(図示しない)に接続される継手部2と、これらを接続する接続具である袋ナット3とから構成されている。
【0010】
吐水ヘッド1には、図2に示すように湾曲隆起し、一般的な吐水形態のシャワー吐水を行う散水孔11aを複数備えた散水板11と、散水板11の中心で使用者に刺激のあるマッサージ吐水を行うノズル12と、ノズル12を収めるためのノズルケース13、ノズルガイド111が備えられている。
散水板11の内部には、底面14aに水を流入させるための複数の孔加工が施された切替継手14が収められ、平面部に孔加工がありシャワー吐水の切り替えを行うための切替板15がバネ16に付勢されて前記継手14の底面14aに押し当てられて接するように、取り付けられている。
切替板15のさらに内側には、バネ16を収め切替板15を固定するための軸17が配置しており、軸17には袋ナット3を接続するための接続継手18が接着剤等により強固にねじ込み固定されている。
吐水ヘッド1の接続継手18には、内周面部の相対する位置に孔部18aを2箇所設け、この孔部18aに突起19を挿入し、溶接や接着等により一体的に固定されている。
また、吐水ヘッド1の外周には、回転操作することにより、吐水状態を切り替えるための吐水切替部である切替リング110が、設けられている。
【0011】
図3に示すように、継手部2は、湯水混合水を供給する配管(図示しない)に接続する配管継手部21と、配管継手部21を覆うように取り付けられる球面継手部22から構成されている。
配管継手部21は、黄銅等の材質で製作され、根元部(上流側)には配管(図示しない)と接続するための雄ネジ部21bを設け、中央部には配管(図示しない)と接続する際の工具掛りとする六角形の板状のツバ21cが2ケ所、その間には後述する止めネジ23が当接し、球面継手部22のズレを防止するための円錐状の胴体部21dを設けている。さらに先端(下流側)には、外周に溝加工された円筒部21eがあり、この溝部にOリング24が装着されている。そして、配管継手部21の内部には通水路21aが設けられている。
【0012】
配管に接続固定された配管継手部21には、内部に通水路22aを備えた球面継手部22が取り付けられる。
球面継手部22は外観が略円柱状で、吐水ヘッド1側には袋ナット3の一部が収容される凹みが形成され、その部位に球面形状の球面突部22bが外周側面より突出した状態で設けられている。
なお、図6に示すように前記球面継手部22の球面突部22bは、側面に球面継手部22の中心軸方向(通水方向)に縦長に加工された溝部22dを相対する位置に2ケ所有している。
そして、球面継手部22の外周側面には止めネジ23を螺合するための雌ネジ部22cを開口孔22eまで貫通するように設けている。
また、球面継手部22の内部には上流側に配管継手部21のツバ21cを覆う開口孔22e、下流側に円筒部21eが挿入される通水路22aが設けられている。
【0013】
次に、シャワー装置Aの設置方法について説明する。
まず、配管継手部21を配管(図示しない)に接続する。配管継手部21の雄ネジ部21bにシール材等を塗布し、壁面に配置された配管のねじ部(図示しない)に螺合接続する。この時、ツバ21cの六角部に工具を当てて、締付けを行う。
【0014】
次に、球面継手部22の球面突部22bに向けて袋ナット3を取り付ける。
尚、強度面等から、球面継手部22、配管継手部21、袋ナット3の材質は、黄銅等の金属材料を用いることが好ましいが、この場合、摩擦抵抗や音の発生を考慮すると、袋ナット3と、球面継手部22の球面突部22bの間には、樹脂製のスリップワッシャー3a等を入れるのが好ましい。さらに、スリップワッシャー3aの底面部に、金属板3bを入れるとより好ましい形態となり、万一、球面突部22bとの摩擦による摩耗等によって、スリップワッシャー3aの孔径が広がっても袋ナット3が抜け落ちて落下することなく、安全である。
【0015】
そして、袋ナット3と吐水ヘッド1を接続するが、その方法は、接続継手18内部にパッキン112を配置し、このパッキン112を球面継手部22の球面突部22bに押し当てながら、袋ナット3を接続継手18に締め付ける。
この時、接続継手18内周面部に設置された突起19は、球面継手部22の球面突部22bに施された溝部22dに収まるようにして固定される。
これにより、吐水ヘッド1は、前記パッキン112により止水性を保ちながら、任意に角度を調整することができる。すなわち、使用者が吐水ヘッド1先端を手で操作することにより、図5に矢印で示すように、体形や体勢に応じた好みのシャワー吐水角度に設定することが可能である。
【0016】
このようにして組立てられた吐水ヘッド1及び袋ナット3及び球面継手部22は、球面継手部22の球面突部22bに加工された通水路22aに、配管継手部21の先端部が挿入される。挿入後、球面継手部22の側面に設けられた雌ネジ部22cに止めネジ23をねじ込み、配管継手部21側面の胴体部21dに突き当てて、固定する構造となっている。
このような構造にすることにより、仮に壁面への配管継手部21のねじ込み深さに誤差が生じても、配管継手部21先端の円筒部21eへの球面継手部22の挿入深さを調整することによって、誤差吸収が可能であるため、配管継手部21の雄ネジ部21bを露出させることなく、意匠性を保つことができる。さらに、球面継手部22の抜けや、ガタツキも防止できる。
【0017】
このようにして、構成されたシャワー装置Aにおけるシャワー吐水について説明する。まず、壁面等に取付けられた温度調節ハンドル(図示しない)及び、操作ハンドル(図示しない)を操作すると所望の湯水混合水が配管継手部21、球面継手部22のそれぞれ内部にある通水路21a、通水路22aを通って、先端の吐水ヘッド1へ給水される。
吐水ヘッド1への流入水は、切替板15の孔15aと継手14の孔14bの位置関係により、継手14の内側に区画形成された空間14cか外側に区画形成された空間14dのいずれかに給水される。
【0018】
内側に区画形成された空間14cへの流入水は、やがてノズルケース13内に流入し、内部に旋回流を発生させて、ノズル12を回転させながら先端部の孔12aより吐水される。
このシャワー吐水は、断続感のあるマッサージ吐水となり、使用者へ刺激を与えたり、疲れを癒したりするのに役立つ。
【0019】
一方、外側に区画形成された空間14dへの流入水は、散水板11の散水孔11aから一般的なシャワー吐水として、排出される。
こちらは、主に複数箇所からのシャワー吐水によって、体を温めたり、洗体時の石鹸を洗い流す等の使用に好適である。
【0020】
次に、本発明のシャワー装置Aにおけるシャワー吐水形態の切替えについて説明する。
シャワー吐水形態の切替えは、前述の通り、図4に示す矢印の方向に吐水ヘッド1外周の切替リング110を回転操作することによりなされる。詳しくは、切替リング110を図4に矢印で示すように回転操作すると、散水板11、ノズルケース13、ノズルガイド111、切替継手14が一体的に回る構造になっている。
一方、一体的に構成された接続継手18と軸17及び切替板15は、切替リング110の回転操作力の影響を切替継手14や切替リング110との接触面の摩擦抵抗を通じて受けるため、切替リング110と同方向に共回りしようとする。
【0021】
ところが、図8に示すように、接続継手18内周面の突起19が球面継手部22の球面突部22bの溝部22dに収まっているため、共回りしようとしても突起19が溝部22d側面の壁面に当たり回転が抑制されることになる。
従って、散水板11、ノズルケース13、ノズルガイド111、切替継手14が一体的に回って、切替板15の孔15aと継手14の孔14bの位置関係が変わってシャワー吐水の形態を切替えることができる。
【0022】
次に、吐水ヘッド1の角度調整について説明する。
前記継手部2と、前記吐水ヘッド1を接続するには、継手18内部にパッキン112を、配置し、このパッキン112を球面継手部22の球面突部22bに押し当てながら、袋ナット3を継手18に締め付ける。
これにより、吐水ヘッド1は、前記パッキン112により止水性を保ちながら、継手部2と接続される。
図9において、吐水ヘッド1は、散水板11がシャワー装置Aの設置面と略平行の場合、図9(a)のようになるが、X軸方向に角度調整する場合、図9(b)のように溝部22dの中で突起19の中心軸を中心にして吐水ヘッド1が動き、吐水ヘッド1の吐水角度が変更されることになる。
【0023】
また、図10において、吐水ヘッド1は、散水板11がシャワー装置Aの設置面と略平行の場合、図10(a)のようになるが、Y軸方向に角度調整する場合、溝部22dを球面継手部22の中心軸方向(通水方向)に縦長に加工されていることから、図10(b)のようにその角度に応じて、突起19が、溝部22dの中を長辺方向に沿うように移動して吐水ヘッド1が動き、吐水ヘッド1の吐水角度が変更されることになる。
以上の突起19の溝部22d内での2つの動きを組合わせることにより、吐水ヘッド1は、任意の角度への調整が可能となり、首振状に回転可能となる。
【0024】
以上により、吐水ヘッドの吐水角度が自在に調整可能で、かつシャワー吐水の切替操作性のよいシャワー装置を提供することができる。

【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のシャワー装置の設置を示した状態図。
【図2】本発明のシャワー装置の横側断面図。
【図3】本発明のシャワー装置の縦側断面図。
【図4】本発明のシャワー装置で切替リングの動きを示した外観図。
【図5】本発明のシャワー装置で吐水ヘッドの向きを示した外観図。
【図6】吐水ヘッドと継手部を正面から見た分解斜視図。
【図7】吐水ヘッドと継手部を背面から見た分解斜視図。
【図8】本発明のシャワー装置の突起と溝部の透視斜視図。
【図9】本発明のシャワー装置で吐水ヘッドの動きを示した斜視図。
【図10】本発明のシャワー装置で吐水ヘッドの動きを示した横側断面図。
【符号の説明】
【0026】
1………吐水ヘッド
11……散水板
11a…散水孔
12……ノズル
12a…孔
13……ノズルケース
14……切替継手
14a…底面
14b…孔
14c…空間
14d…空間
15……切替板
15a…孔
16……バネ
17……軸
18……接続継手
18a…孔部
19……突起
110…切替リング
111…ノズルガイド
112…パッキン
2………継手部
21……配管継手部
21a…通水路
21b…雄ネジ部
21c…ツバ
21d…胴体部
21e…円筒部
22……球面継手部
22a…通水路
22b…球面突部
22c…雌ネジ部
22d…溝部
22e…開口孔22e
23……止めネジ
24……Oリング
3………袋ナット
3a……スリップワッシャー
3b……金属板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転操作することによりシャワー吐水状態を切替可能な吐水切替部を有する吐水ヘッド部が、前記吐水ヘッド部への給水を行う通水路を内部に備えた球面継手部に対して接続されることにより、前記吐水ヘッド部が首振り状に回転可能なシャワー装置において、前記球面継手部の球面部側面には、溝部を設け、前記吐水ヘッド部の前記球面継手部との接続部には突起を設け、前記溝部内に前記突起部が収まるように接続されることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記溝部を前記球面継手部側面の相対する位置に設けるとともに、前記突起を前記吐水ヘッド部の前記球面継手部との接続部の相対する位置に設け、前記溝部内に前記突起部が収まるように接続されることを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。

















【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−101914(P2006−101914A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−288762(P2004−288762)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】