説明

シャワー装置

【課題】水栓部を閉鎖した際に生じる衝撃波による振動が、シャワー用パイプの内部に挿設された流水管に伝わることにより、浴室内にウォーターハンマー音(水撃音)が響きわたることがないシャワー装置を提供すること。
【解決手段】浴室の内壁面2に沿うように配設される管状のシャワー用パイプ6の内部に、水栓部15から供給される湯水をシャワーノズル10に向けて供給するシャワー用配管19の少なくとも一部が挿設されたシャワー装置1において、シャワー用パイプ6の内部に挿設されたシャワー用配管19の長手方向における少なくとも一部の外周面に、振動を吸収する振動吸収材21が環装されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に浴室等に設置されるシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のシャワー装置として、例えば、内部配管が挿通された手摺杆(シャワー用パイプ)の上端部がブラケットを介して内壁面に固定されるとともに、手摺杆の下端部は浴室のカウンタ天板に固定されており、手摺杆と内部配管とは、ブラケット本体に形成された固定用差込片によって互いに固定されているもの等がある(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開2004−57216号公報(第3頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、キッチン、浴室、洗面所などに設置される蛇口やシャワー等においては、これら蛇口やシャワー等の水栓部の閉鎖時に、配管内の流体が瞬間的に停止させられることによって、配管内の水圧が急激に上昇して衝撃波が発生し、この衝撃波が配管を通じて伝わり、不快な衝撃音となって響いてしまうウォーターハンマー音(水撃音)が発生する場合がある。
【0005】
特に、特許文献1に記載の手摺装置(シャワー装置)にあっては、内部に内部配管(シャワー用配管)が挿通された手摺杆(シャワー用パイプ)が、浴室内において上下方向に延設されているとともに、内部配管は上下端部が固定されているだけであり、その中央部は衝撃波により振動しやすいことから、内部配管に振動が伝わることによりウォーターハンマー音が発生して、浴室内に大きく響きわたることがあったり、振動により内部配管が手摺杆にぶつかって不快な接触音が発生する虞があるといった問題を有していた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、水栓部を閉鎖した際に生じる衝撃波による振動が、シャワー用パイプの内部に挿設されたシャワー用配管に伝わることにより、浴室内にウォーターハンマー音(水撃音)が響きわたることがないシャワー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載のシャワー装置は、
浴室の内壁面に沿うように配設される管状のシャワー用パイプの内部に、水栓部から供給される湯水をシャワーノズルに向けて供給するシャワー用配管の少なくとも一部が挿設されたシャワー装置において、
前記シャワー用パイプの内部に挿設されたシャワー用配管の長手方向における少なくとも一部の外周面に、振動を吸収する振動吸収材が環装されていることを特徴としている。
この特徴によれば、水栓部を閉鎖した時に、水栓部から上流側の配管内の水圧が上昇することで発生する衝撃波が、水栓部の下流側のシャワー用配管に伝わってシャワー用配管が振動しても、シャワー用配管の振動が振動吸収材により吸収されるため、ウォーターハンマー音(水撃音)の増幅が抑えられ、浴室内に響きわたりにくくなる。また、振動によりシャワー用配管の外面がシャワー用パイプの内面に直接ぶつかって不快な接触音がすることが防止される。
【0008】
本発明の請求項2に記載のシャワー装置は、請求項1に記載のシャワー装置であって、
前記振動吸収材は、その外周面が前記シャワー用パイプの内周面に当接するように設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、シャワー用パイプの内部に挿設されたシャワー用配管が、振動吸収材を介してシャワー用パイプに支持されるため、振動が効果的に吸収される。
【0009】
本発明の請求項3に記載のシャワー装置は、請求項1または2に記載のシャワー装置であって、
前記振動吸収材は、前記シャワー用配管の長手方向の全長に渡って連続的に設けられていることを特徴としている。
この特徴によれば、水栓部側からの振動がシャワー用配管に伝わっても、振動がシャワー用配管の下流側に向けて伝わって行く途中で消滅するようになるため、ウォーターハンマー音(水撃音)の発生を効果的に抑えることができる。
【0010】
本発明の請求項4に記載のシャワー装置は、請求項1ないし3のいずれかに記載のシャワー装置であって、
前記振動吸収材は、断熱性を有する素材にて構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、シャワー用配管の熱がシャワー用パイプに伝わり難くなり、これにより水栓部からの給湯が停止された状態においてシャワー用配管内部の湯が冷めにくくなるため、シャワーの使用開始時において冷めた湯が出てくることを防止できる。また、シャワー用配管内部の水が冷えることによってシャワー用パイプの外周面に結露が発生することが防止される。
【0011】
本発明の請求項5に記載のシャワー装置は、請求項1ないし4のいずれかに記載のシャワー装置であって、
前記振動吸収材は、微小な孔部が多数設けられた多孔性を有するスポンジ状部材で構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、微小な孔部が多数設けられたスポンジやウレタン等のスポンジ状部材で振動吸収材を形成することで、シャワー用パイプやシャワー用配管の形状に合わせて容易に加工ができるばかりか、微小な孔部には多量の空気が含まれるので、シャワー用配管内部を流れる湯の保温性が効果的に高まる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るシャワー装置を実施するための最良の形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0013】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、浴室の壁面に設置されるシャワーユニットを示す斜視図であり、図2は、シャワーユニットを示す一部縦断側面図であり、図3は、シャワーユニットを示す正面図であり、図4は、カウンタ及び浴槽を示す縦断正面図であり、図5は、シャワー用パイプの内部構造を示す断面斜視図であり、図6は、クリップを示す斜視図であり、図7は、図3におけるシャワーユニットを示すA−A要部拡大縦断側面図であり、図8は、図7における上部ブラケットを示すB−B横断平面図であり、図9は、屈曲管を流体管に取り付ける状態を示す縦断側面図であり、図10は、フランジ部同士をクリップによって固定する状態を示す縦断側面図であり、図11は、シャワー用パイプが設置された状態を示す縦断側面図である。以下、図2及び図7から図11の紙面左側をシャワーユニットの正面側とし、図3及び図4の紙面手前側をシャワーユニットの正面側として説明する。
【0014】
図1の符号1は、本実施例におけるシャワー装置としてのシャワーユニット1であり、このシャワーユニット1は浴室の壁面2に設置されている。このシャワーユニット1は、浴室内の壁面2に固着されたカウンタ3上から壁面2に沿って上方に延びる脚部カバー4を有し、この脚部カバー4の上部には、壁面2から正面側に突設された下部ブラケット5が固定されている。尚、浴室の側周面を構成する壁面2(内壁面)は、浴室が設置される建築物の構造体32の内面に近接して設けられている(図2参照)。
【0015】
図1に示すように、下部ブラケット5の上部には、上下方向に延びるシャワー用パイプ6の下端が固定されている。シャワー用パイプ6は、その内部が中空の金属製の管体で構成されており、壁面2から所定距離離間された状態で、壁面2に沿って上下方向に向けて延びている。
【0016】
シャワー用パイプ6の上端は、壁面2から正面側に向けて突設された上部ブラケット7に固定されている。この上部ブラケット7の下面には、上部ブラケット7から下方に垂れ下がるシャワーホース8が取付金具9を介して取り付けられている。
【0017】
図2に示すように、シャワーホース8の先端には、ハンドシャワーノズル10が設けられており、このハンドシャワーノズル10は、シャワー用パイプ6に取り付けられた支持体11に設けられたフック12に着脱自在に支持されている。尚、支持体11には、グリップ部13が設けられ、このグリップ部13を押圧することにより、支持体11をシャワー用パイプ6に沿って上下方向に移動させて支持体11の高さ位置を変えることができるようになっているため、シャワーユニット1の使用者は、支持体11の高さを使い易い位置に変更してシャワーを使用できる。
【0018】
下部ブラケット5の下面には、水平方向に回動可能なカラン14が取り付けられている。下部ブラケット5の先端部には、本実施例における水栓部としての切換ハンドル15が設けられている。脚部カバー4内には、浴室の床下から延設される給水管16(湯水供給管)が配設されており、この給水管16から供給された湯水は、切換ハンドル15が連結された分岐金具17を介してカラン14側及びハンドシャワーノズル10側に供給されるようになっている。
【0019】
尚、カラン14の一端は、シャワー用パイプ6の中心軸の延長線を中心として回動自在に軸支されており、そのためカラン14の回動軸心がシャワー用パイプ6、分岐金具17、給水管16とともに一直線状に配置されるので、シャワーユニットの清掃性及び外観体裁が向上するようになっている。
【0020】
図3に示すように、シャワーユニット1に向かって切換ハンドル15を左側に回動させると、カラン14から湯が出るようになっており、切換ハンドル15を右側に回動させると、ハンドシャワーノズル10から湯が出るようになっているとともに、この切換ハンドル15は水栓部も兼用しており、切換ハンドル15をカラン14側とハンドシャワーノズル10側との回動中間位置に配置しているときには、湯水の流出、つまりカラン14側及びハンドシャワーノズル10側への湯水の供給を閉止できるようになっている。
【0021】
図2に示すように、カウンタ3は箱体を成しており、このカウンタ3は浴室の床面を構成する床面防水パン33よりも上方の所定の高さ位置の壁面2に、取付ブラケット34(図4参照)を介して取り付けられている。また、カウンタ3の正面側には左右一対の枢軸部材35を介して上下方向に回動可能に設けられたフラップカウンタ36が設けられている。更に、カウンタ3の側面は、浴槽37の側面側に設けられたエプロン38に固着されており、浴槽37の下方には浴槽用防水パン39が設置されている。
【0022】
図4に示すように、カウンタ3の内部には、シャワーユニット1から垂下された給水管16が延設されており、給水管16は温度調節ユニット40(湯水混合部)に接続されている。この温度調節ユニット40には、水を供給する給水管41(給水路)と、温度の高い湯を供給する給湯管42(給湯路)が接続されており、温度調節ユニット40内部で水と湯とが混合されることにより、所定の温度の湯が給水管16を介してシャワーユニット1に供給できるようになっている。このように分岐金具17にて湯水を混合する必要がなく、分岐金具17の構造が簡素化されるので、清掃性及び外観体裁がより向上する。
【0023】
尚、給水管41及び給湯管42は、図示しない湯水供給源から浴室の床下(床面防水パン33及び浴槽用防水パン39の下方)まで配管された後、浴槽用防水パン39を介して浴室内部(浴槽37とエプロン38との間)まで延設され、更にエプロン38を介してカウンタ3内部にまで延設されている。このように、給水管41及び給湯管42は、前述した構造体32の内面と、浴室の壁面2を構成する壁パネルの外面との間に配管されることなく、浴室の床下から浴室内に向けて延設されている。
【0024】
また、図1に示すように、カウンタ3の上面におけるシャワーユニット1から所定距離離れた位置には、カウンタ3の内部に配置された温度調節ユニット40に連結された温度調節ハンドル18(温度調整操作部)が設けられており、使用者は、温度調節ハンドル18を回動させることで、給水管16から供給される湯の温度を調節できるようになっている。尚、温度調節ユニット40をカウンタ3の上面に設けることで、温度調節ハンドル18が切換ハンドル15の近傍位置に配置されるようになり、切換ハンドル15の操作とともに、湯水の温度調整を容易に行うことができるようになる。
【0025】
このように切換ハンドル15と温度調節ハンドル18とが、所定距離離間されて配置されていることにより、使用者が切換ハンドル15と温度調節ハンドル18を取り違えて操作してしまうミスを防ぐことができる。尚、使用者がシャワーユニット1を使用中に頻繁に操作する頻度が多い切換ハンドル15を下部ブラケット5に設けていることで、シャワーユニット1の使い勝手が向上している。
【0026】
尚、カウンタ3内部に温度調節ユニット40を配置することにより、温度調節ユニット40を分岐金具17の近傍に配置できるので、温度調節ユニット40にて混合された湯水を極力冷やすことなく、分岐金具17に供給することができるばかりか、温度調節ユニット40がカウンタ3の内部に配設されるので、邪魔になることがない。
【0027】
尚、特に図示はしないが、浴槽37の内面側には、浴槽37内部に湯を供給する給湯口(図示略)が設けられており、この給湯口(図示略)に接続される給水管(図示略)が温度調節ユニット40に接続されている。温度調節ユニット40が浴槽37をシャワーユニット1との間の中間位置に配置することで、浴槽37及びシャワーユニット1に延設される給水管16等の配管の長さを極力短くすることができる。
【0028】
図3に示すように、このシャワーユニット1に設けられたカラン14、切換ハンドル15、ハンドシャワーノズル10、フック12、上部ブラケット7及び下部ブラケット5が、正面視で上下方向に延びる一直線状に配置されており、シャワーユニット1の美観が向上するようになっている。
【0029】
また、シャワーユニット1の各々の部材が一直線上に配置されていることにより、シャワーユニット1に付着した水滴等が、上下方向に沿ってスムーズに流れ落ちるようになり、シャワーユニット1の清掃性が向上する。更に、シャワーユニット1の横幅を極力短くすることができ、狭い浴室であっても設置することができる。
【0030】
更に、図2に示すように、シャワーホース8の取付金具9は、上部ブラケット7の下面におけるシャワー用パイプ6と壁面2との中間位置に取り付けられており、シャワーホース8がシャワー用パイプ6の背面側に沿って垂れ下がっている。そのため図3に示すように、シャワーユニット1を正面側から見たときに、シャワーホース8の一部がシャワー用パイプ6の背面側に隠れるようになり、シャワーユニット1が上下方向に延びる一直線上に配置された一体感を有するデザインとなり、使用者側からシャワーホース8が見えにくくなるので、シャワーユニット1の外観体裁が向上する。
【0031】
尚、シャワーユニット1を上下方向に延びる一直線上に配置することで、床下から立ち上げた給水管16やシャワー用配管19の長さを極力短く配管することができ、シャワーユニット1の設置が容易となるとともに、給水管16やシャワー用配管19の内部を流れる湯の温度低下を極力抑えることができる。
【0032】
更に、従来のように、壁面2と構造体32との間の間隙に給水管16やシャワー用配管19などの配管を配設する場合と比べて、本実施例のシャワーユニット1では、全ての配管が壁面2の内側(浴室内側)に配設されるので、壁面2と構造体32との間の狭い間隙に配管を配設する必要がない。その分、壁面2を構造体32に近接若しくは密着させ、浴室の内部スペースを広くすることができる。
【0033】
図2に示すように、シャワー用パイプ6の内部には、銅など金属製の材質で構成されたシャワー用配管19が、分岐金具17の上端に接続されて、分岐金具17から上方に延びるように設けられている。更に、シャワー用配管19の上端には、側面視で略U字形状になるように屈曲された接続管としての屈曲管20の一端(前端)が嵌合され、屈曲管20がシャワー用配管19に対して回動可能に連結されている。そのためシャワー用配管19の下端をナット等により固定した後でも、屈曲管20を所定方向に向けることができる。屈曲管20の他端(後端)には、前述したシャワーホース8の取付金具9が螺合されて接続されている。よって、シャワー用配管19に供給された湯は、シャワー用配管19内部を上昇し、屈曲管20を介してシャワーホース8に供給され、ハンドシャワーノズル10から吐出されるようになっている。
【0034】
また、シャワー用パイプ6の内径よりもシャワー用配管19の外径は小さく形成され、シャワー用パイプ6の内面とシャワー用配管19の外面との間に所定の間隙が形成されており、この間隙には、振動吸収材としての管状のスポンジ状部材21が充填されている。
【0035】
図5に示すように、このスポンジ状部材21は、シャワー用配管19の外周全体を囲繞するように環装されており、スポンジ状部材21の外周面はシャワー用パイプ6の内周面に当接されていることにより、このスポンジ状部材21を介して、上下端が固定されたシャワー用配管19の中央部が、振動によりシャワー用パイプ6の内部で撓まないように支持されている。
【0036】
更に、スポンジ状部材21は、微小な孔部が多数設けられた多孔性を有するウレタン等の材質で形成されており、シャワー用パイプ6やシャワー用配管19の形状に合わせて容易に加工ができるようになっている。また、内部に微小な孔部が多数設けることで、スポンジ状部材21は、断熱性を有するとともに、振動を吸収する緩衝性を有している。
【0037】
図2に示すように、スポンジ状部材21は、シャワー用配管19の長手方向の全長に渡って連続的に設けられている。尚、本実施例ではスポンジ状部材21をシャワー用配管19の長手方向の全長に渡って設けているが、シャワー用配管19における分岐金具17の近傍の位置、若しくはシャワー用配管19における中央部(腹部)などのシャワー用配管19の長手方向における少なくとも一部に設けてもよいし、長手方向の複数箇所に部分的に設けてもよい。
【0038】
従来のシャワー用パイプ6にあっては、使用時において、切換ハンドル15を閉止位置にしてハンドシャワーノズル10若しくはカラン14からの湯の流出を急に止めたときに、給水管16内部の湯(流体)が瞬間的に停止させられることによって、水栓部よりも上流側の給水管16内の水圧が急激に上昇されて衝撃波が発生し、この衝撃波の振動が給水管16に接続された分岐金具17を通じて、水栓部よりも下流側のシャワー用配管19に伝わり、振動がシャワー用配管19によって増幅されて大きな音となって浴室内に響いてしまうウォーターハンマー音(水撃音)が発生したり、ウォーターハンマー音による振動によって、シャワー用配管19がシャワー用パイプ6の内面にぶつかって不快な接触音がすることもあった。
【0039】
しかしながら本実施例におけるシャワーユニット1にあっては、シャワー用パイプ6とシャワー用配管19との間に、シャワー用配管19の外周に環装された環状のスポンジ状部材21が設けられているため、切換ハンドル15を閉鎖した時に、分岐金具17から上流側に位置するシャワー用配管19内で発生する衝撃波の振動が、分岐金具17の下流側のシャワー用配管19に伝わってシャワー用配管19が振動しても、シャワー用配管19の振動がスポンジ状部材21にて効果的に吸収されるようになるので、ウォーターハンマー音の増幅が抑えられるようになり、浴室内にウォーターハンマー音が響かなくなる。また、シャワー用配管19がシャワー用パイプ6の内面にぶつかることも防止できるので、不快な接触音もしなくなる。
【0040】
更に、シャワー用配管19の長手方向の全長に渡って、該シャワー用配管19の外周がスポンジ状部材21により覆われており、かつスポンジ状部材21の外周面がシャワー用パイプ6の内面に当接して支持されているので、分岐金具17からシャワー用配管19に振動が伝わっても、振動がシャワー用配管19を伝わって行く途中で消滅するようになり、ウォーターハンマー音の発生を抑えることができる。
【0041】
また、スポンジ状部材21が断熱性を有することで、シャワー用配管19の熱がシャワー用パイプ6に伝わり難くなっており、シャワー用配管19内部を流れる湯の保温性を高めることができる。例えば、ハンドシャワーノズル10から湯を吐出させ、その湯の吐出を一時的に停止しても、シャワー用配管19内部の湯が冷めにくいので、ハンドシャワーノズル10から湯を吐出し始めたときに、シャワー用配管19内部に残留している冷めた湯が出てくることを防止できる。また、冬場などにおいて、浴室の未使用時に、シャワー用配管19内部の水が冷えることによってシャワー用パイプ6の外面に結露が発生することも防止できる。
【0042】
更に、シャワー用パイプ6、分岐金具17、給水管16が正面から見て上下方向に向けて一直線状に配置されていることで、床下側から供給される湯水を、分岐金具17及びシャワー用パイプ6の内部に配設されたシャワー用配管19を介してハンドシャワーノズル10まで効率よく供給することができるばかりか、清掃性及び外観体裁が向上する。尚、シャワー用パイプ6の下端側を固定するブラケット等を別途設けなくて済むため、部品点数を低減できるばかりか、分岐金具17からの湯水をシャワー用配管19に効率よく供給することができる。
【0043】
次に、シャワー用パイプ6と屈曲管20との取付構造について詳述する。図2に示すように、シャワー用パイプ6の上端を固定する上部ブラケット7は、側面視で矩形状の箱体を成し、壁面2にネジ(図示略)等を用いて固着されるブラケット本体22と、このブラケット本体22を正面側から覆うように取り付けられるカバー体23とで構成されている(図10参照)。
【0044】
図7に示すように、上部ブラケット7の内部には、屈曲管20が配置されており、この屈曲管20は、L字形状に屈曲されたL字取付部24を有し、このL字取付部24の下端(接続端部)の外周面には、外向きに拡径する環状のフランジ部24aが形成されているとともに、L字取付部24の他端側は壁面2側に向かって延設されている。
【0045】
更に、L字取付部24は、図11に示すように、銅管25を介してシャワーホース8の取付金具9が螺合される雄ネジ部26aと、後述する孔部22bの周縁に係合できる係合片26bとが形成されたホース取付部26と連結されている(図11参照)。尚、L字取付部24、銅管25及びホース取付部26は、各々が溶接によって連結されており、そのため別途、ネジやボルト等を用いずに連結できるので屈曲管20全体の寸法が小さく形成されている。
【0046】
また、シャワー用パイプ6の上端には、上端取付部27が溶接によって固着されており、この上端取付部27(接続端部)の外周面には、L字取付部24に形成されたフランジ部24aと同一寸法の外向きに拡径する環状のフランジ部27aが形成されている。更に、上端取付部27には、上方に突出する差込部27bが形成され、この差込部27bはL字取付部24内に挿設されるようになっている。尚、差込部27bの外周面には、ゴム等の材質で形成されたパッキンリング28が設けられている。
【0047】
更に、図9に示すように、ブラケット本体22の下面には、シャワー用パイプ6の上端が挿設される支持部としての孔部22aが形成されるとともに、屈曲管20の雄ネジ部26aが挿設される貫通穴としての孔部22bが形成されている。
【0048】
図7及ぶ図8に示すように、シャワー用配管19の上端取付部27に形成されたフランジ部27aと屈曲管20のL字取付部24に形成されたフランジ部24aとが互いに当接されるようになっており、この当接し合うフランジ部24a,27a同士の外周に、連結部材としてのクリップ29が取り付けられている。
【0049】
図6に示すように、クリップ29は、弾力性を有する一枚の帯状の金属板材が平面視環状に折り曲げられて形成された略円筒形状を成し、その円周の一部が切り欠かれて開口部30が形成されている。また、開口部30から外方に拡開された当接片29aが形成されている。更に、クリップ29の側面には、重なったフランジ部24a,27a同士の上下幅とほぼ同寸法の上下幅を有する挟持部としての長穴29bが形成されている。
【0050】
次に、シャワー用パイプ6の設置作業について詳述する。シャワー用パイプ6を設置する際には、先ず図9に示すように、下部ブラケット5に下端を固定されたシャワー用パイプ6の上端に、ブラケット本体22の孔部22aを嵌合させ、ブラケット本体22を壁面2にネジ(図示略)にて固着する。
【0051】
また、ブラケット本体22の孔部22bには、上方から屈曲管20の雄ネジ部26aが嵌合され、かつ係合片26bが孔部22bの周縁に係合されて、下方側からナット31が雄ネジ部26aに螺合されることで、屈曲管20がブラケット本体22の孔部22bに移動不能に固定される(図10参照)。そのため後述するように、シャワー用配管19と屈曲管20の各々の端部に形成された互いのフランジ部24a,27a同士をクリップ29で留めるときに、屈曲管20の屈曲方向が前後方向を向くようになり、屈曲管20の位置決めがし易くなっている。
【0052】
更に、屈曲管20のL字取付部24には、シャワー用配管19の差込部27bが挿設され、屈曲管20及びシャワー用配管19の各々の端部に設けられたフランジ部24a,27a同士が当接される。
【0053】
図10に示すように、正面側からフランジ部24a,27aに向けて水平方向(フランジ部24a,27a同士の径方向)にクリップ29を押圧しながら嵌め込むと、クリップ29の当接片29aがフランジ部24a,27aに当接され、クリップ29の開口部30が側方側に広がるように拡開される。そして更にクリップ29を押し込むと、弾性復帰力にて開口部30が狭まり、重なったフランジ部24a,27aがクリップ29の長穴29bに挿入されるとともに、クリップ29が配管周りに装着される(図8参照)。
【0054】
図7及び図8に示すように、クリップ29は、屈曲管20のL字取付部24及びシャワー用配管19の上端取付部27の外周を囲むように配置され、フランジ部24a,27a同士が長穴29bに挿設されることで、クリップ29がフランジ部24a,27a同士が離間(離脱)不能に挟持される。尚、差込部27bにパッキンリング28が設けられていることで、差込部27bがL字取付部24に挿設されたときに、シャワー用配管19及び屈曲管20が液密に連結される。
【0055】
そして、図10に示すように、ブラケット本体22に、カバー体23を取り付けてネジ(図示略)等で固着させる。屈曲管20に設けられた雄ネジ部26aには、下方からシャワーホース8の取付金具9が螺合される。図11に示すように、屈曲管20の寸法が小さく形成されていることにより上部ブラケット7の寸法も小さく形成できるようになり、シャワーユニット1の見栄えが向上するようになっている。
【0056】
以上、本実施例のシャワー装置1にあっては、シャワー用配管19と屈曲管20の各々の端部に形成された互いのフランジ部24a,27aを、クリップ29によって留めることで、別途、接続作業用の工具などを使うことなくシャワー用配管19と屈曲管20との接続が容易に行えるようになり、かつ上下方向に延びるシャワー用パイプ6に対して正面側から水平方向にクリップ29を挿設できるので、比較的高所にて行われるシャワー用パイプ6の上端を壁面2に固定する作業が容易になり、作業者の負担も軽減される。
【0057】
また、クリップ29が略円筒形状を成し、その側面にフランジ部24a,27a同士が挿通される長穴29bが形成されていることで、簡素な構成でフランジ部24a,27a同士を挟持できるクリップ29を製造することができ、クリップ29の製造コストを低減できる。更に、略円筒形状のクリップ29の円周の一部を切り欠いて開口部30を形成することで、クリップ29が径方向に拡径できるようになり、クリップ29をフランジ部24a,27a同士に取り付け易くなっている。
【0058】
また、ブラケット本体22の下面に、屈曲管20の雄ネジ部26aが挿設される固定部としての孔部22bが形成され、かつこの孔部22bの周縁を屈曲管20の係合片26bとナット31によって上下方向から挟持することで、屈曲管20がブラケット本体22に固着される。そのためシャワーホース8やハンドシャワーノズル10の荷重や、使用時においてシャワーホース8の捩れ等の負荷が屈曲管20に加わっても、その荷重や負荷をブラケット本体22で支持することができ、クリップ29によって接合されたフランジ部24a,27aに荷重や負荷が加わらないようになる。このようにすれば、シャワーユニット1の使用中に屈曲管20ががたつくことがなくなり、長年使用してもシャワー用配管19と屈曲管20との連結部に緩みが生じて湯水が漏洩することを防止できる。
【0059】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0060】
例えば、前記実施例では、振動吸収材としてのスポンジ状部材21が、浴室に設置され、内部にシャワー用配管19が挿通されたシャワー用パイプ6に適用されていたが、本発明はシャワー用パイプ6に限定されるものではなく、内部にシャワー用配管が挿設された管体ならば、建築物の壁面内や床下や天井裏などに配置される配管にも適用でき、これらの配管で発生するウォーターハンマー音(水撃音)を低減させることができる。
【0061】
また、前記実施例では、連結部材としてのクリップ29が、シャワー用パイプ6内部に挿設されたシャワー用配管19と、その上端に接続される屈曲管20とを接合させるために用いられているが、本発明はシャワー用パイプ6の屈曲管20との接合に限らず、シャワー用パイプ6と分岐金具17とを接合する際に、シャワー用パイプ6の下端と分岐金具17の上端にフランジ部を形成しておき、互いのフランジ部を挟持するためにクリップ29を用いてもよいし、その他の構成の管体の接合に用いてもよい。
【0062】
更に、前記実施例では、連結部材としてのクリップ29が、その側面にフランジ部24a,27aが挿設される長穴29bが形成された略円筒形状を成していたが、本発明は円筒形状のクリップ29に限定されるものではなく、例えば、側面視で略コ字形状を成す連結部材をフランジ部24a,27aに複数取り付け、フランジ部24a,27a同士を離間不能に挟持して接合させてもよいし、屈曲管20若しくはシャワー用配管19のいずれの部材も回動(螺合)させないで接合できるならば、その他の形状の連結部材であっても本発明と同様の効果を得ることができる。
【0063】
更に、前記実施例では、シャワー用パイプ6が壁面2に沿って上下方向に延びるように設置されていたが、シャワー用パイプ6は壁面2に沿って左右方向や斜め方向に延びるように設置されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】浴室の壁面に設置されるシャワーユニットを示す斜視図である。
【図2】シャワーユニットを示す一部縦断側面図である。
【図3】シャワーユニットを示す正面図である。
【図4】カウンタ及び浴槽を示す縦断正面図である。
【図5】シャワー用パイプの内部構造を示す断面斜視図である。
【図6】クリップを示す斜視図である。
【図7】図3におけるシャワーユニットを示すA−A要部拡大縦断側面図である。
【図8】図7における上部ブラケットを示すB−B横断平面図である。
【図9】屈曲管を流体管に取り付ける状態を示す縦断側面図である。
【図10】フランジ部同士をクリップによって固定する状態を示す縦断側面図である。
【図11】シャワー用パイプが設置された状態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 シャワーユニット(シャワー装置)
2 壁面(内壁面)
3 カウンタ
4 脚部カバー
5 下部ブラケット
6 シャワー用パイプ
7 上部ブラケット
8 シャワーホース
9 取付金具
10 ハンドシャワーノズル
11 支持体
12 フック
13 グリップ部
14 カラン
15 切換ハンドル(水栓部)
16 給水管(湯水供給管)
17 分岐金具(水栓部)
18 温度調節ハンドル(温度調整操作部)
19 シャワー用配管
20 屈曲管(接続管)
21 スポンジ状部材(振動吸収材)
22 ブラケット本体
22a 孔部(支持部)
22b 孔部(貫通穴)
23 カバー体
24 L字取付部
24a フランジ部
25 銅管
26 ホース取付部
26a 雄ネジ部
26b 係合片
27 上端取付部
27a フランジ部
27b 差込部
28 パッキンリング
29 クリップ(連結部材)
29a 当接片
29b 長穴(挟持部)
30 開口部
31 ナット
32 構造体
33 床面防水パン
34 取付ブラケット
35 枢軸部材
36 フラップカウンタ
37 浴槽
38 エプロン
39 浴槽用防水パン
40 温度調節ユニット(湯水混合部)
41 給水管(給水路)
42 給湯管(給湯路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の内壁面に沿うように配設される管状のシャワー用パイプの内部に、水栓部から供給される湯水をシャワーノズルに向けて供給するシャワー用配管の少なくとも一部が挿設されたシャワー装置において、
前記シャワー用パイプの内部に挿設されたシャワー用配管の長手方向における少なくとも一部の外周面に、振動を吸収する振動吸収材が環装されていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記振動吸収材は、その外周面が前記シャワー用パイプの内周面に当接するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記振動吸収材は、前記シャワー用配管の長手方向の全長に渡って連続的に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記振動吸収材は、断熱性を有する素材にて構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記振動吸収材は、微小な孔部が多数設けられた多孔性を有するスポンジ状部材で構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−175334(P2007−175334A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−378284(P2005−378284)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】