説明

シャワー装置

【課題】シャワー時に無駄な温度低下によるロスをなくし、シャワー浴の効果を高めることができ、ボディシャンプー等の周囲への飛散を防止すること。シャワー後はシャワー装置本体を納まり良く収納すること。
【解決手段】椅子部2に着座した入浴者の少なくとも上半身の前面側を覆うことができると共に内面部3aに入浴者の身体に向けて温水を噴霧させるための多数の噴霧孔が設けられたシャワー装置本体3を備えると共に、シャワー装置本体3を椅子部2から開放する開放位置P1と、シャワー装置本体3の内面部3aを入浴者が入る隙間をあけて椅子部2と対面する対面位置P2と、シャワー装置本体3の内面部3aが椅子部2に重合する重合位置とのいずれか1つの位置にシャワー装置本体3を移動させる移動手段8を備えたシャワー装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者が椅子に腰掛けた着座姿勢でシャワーを浴びることができるシャワー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のシャワー装置として、図5に示すように、椅子20の左右両側に設けたアーム21を上下に回動自在に設置し、このアーム21の内面側に複数の噴霧ノズル22を並べて組み込み、各噴霧ノズル22から噴霧される温水Wにより身体を包み込むようにして洗浄を行なえるようにしたシャワー装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
ところが、従来のアーム21に組み込まれる噴霧ノズル22は、入浴者の身体の表面までの間に距離があり、無駄な温度低下によるエネルギーロスが発生する問題が生じる。しかもその距離にはバラツキがあるため、温水の噴射水圧、温度が身体の各部位によって異なり、爽快感が得られず、シャワー浴の効果が半減するという問題がある。そのうえ、外部に露出しているアーム21から温水を噴霧させるため、周囲への飛散が多くなり、特にボディシャンプーの飛散によって浴槽側や壁面に汚れが付着するといった問題もある。
【特許文献1】特許第3724022号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、シャワー装置本体の内面部に設けた複数の噴霧孔から入浴者の身体の表面までの間の距離を縮めて、無駄な温度低下によるエネルギーロスの発生を防止でき、しかも短時間で温熱効果が得られると共にどんな入浴者の体格にも合わすことができ、さらに温水の噴射水圧、温度を身体の各部位によってほぼ同じにすることで、シャワー浴の効果を高めることができると共に、ボディシャンプー等が周囲へ飛散することを防止でき、そのうえシャワー後はシャワー装置本体を納まり良く収納できようにしたシャワー装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係るシャワー装置は、入浴者が着座する座部2aと背もたれ部2bとを有する椅子部2と、着座した入浴者の少なくとも上半身の前面側Mを覆うことができると共に内面部3aに入浴者の身体に向けて温水を噴霧させるための多数の噴霧孔4が設けられたシャワー装置本体3とを備えると共に、上記椅子部2への着座又は離座ができるようにシャワー装置本体3を椅子部2から開放する開放位置P1と、上記各噴霧孔4から入浴者の身体の表面までの間隔をほぼ同じになるようにシャワー装置本体3の内面部3aを入浴者が入る隙間をあけて椅子部2と対面する対面位置P2と、上記シャワー装置本体3の内面部3aが椅子部2の座部2aから背もたれ部2bに重合する重合位置P3とのいずれか1つの位置にシャワー装置本体3を移動させる移動手段8を備えることを特徴としている。
【0006】
このような構成とすることで、シャワー装置本体3を開放位置P1に移動させて入浴者が椅子部2に着座した後に、シャワー装置本体3を入浴者の少なくとも上半身の前面側Mを覆った対面位置P2に移動させて、シャワー装置本体3の内面部3aに設けた複数の噴霧孔4から入浴者の身体に向けて温水を噴霧させることにより、効率よくかつ適正に温水を身体の必要各部に向けて霧状に噴出させて包み込むことができる。しかも、上記対面位置P2では各噴霧孔4から入浴者の身体の表面までの間隔がほぼ同じになるように構成されているので、入浴者の全身にわたって複数の噴霧孔4から同じ噴射水圧、温度で温水を浴びせることができ、噴霧孔4と身体の表面との間に従来のような距離がなくなるため、無駄な温度低下によるエネルギーロスを防止できるようになると共に、シャワー装置本体3で身体を包み込むことで温水やボディシャンプーが周囲に飛散することもなくなる。さらにシャワー後は、シャワー装置本体3を開放位置P1に移動させて入浴者が椅子部2から離れた後に、シャワー装置本体3を重合位置P3にセットできるようになる。
【0007】
また、上記シャワー装置本体3は上記開放位置P1では椅子部2の上方に開かれるようになっており、下方に下ろした状態で上記対面位置P2と上記重合位置P3のいずれか1つの位置を選択できるようにするのが好ましく、この場合、シャワー装置本体3を跳ね上げることで入浴者は椅子部2に着座又は離座でき、シャワー装置本体3を対面位置P2まで下ろすことでシャワーを浴びることができ、シャワー後にはシャワー装置本体3を更に下ろして重合位置P3にセットすることができる。
【0008】
また、上記シャワー装置本体3の断面形状を、椅子部2の座部2aから背もたれ部2bに沿わせた断面椅子型状に形成するのが好ましく、この場合、シャワー後にシャワー装置本体3の内面部3aを椅子部2と重合する重合位置P3に配置した状態で、シャワー装置本体3の内面部3aとは反対側の外面部3bが椅子形状となるので、シャワー装置本体3の外面部3bに入浴者が着座したり、或いは浴室洗面器置きやカウンターとして有効利用できるようになる。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、椅子部に着座した入浴者の少なくとも上半身の前面側を覆う対面位置にシャワー装置本体を移動させ、シャワー装置本体の内面部に設けた複数の噴霧孔から入浴者の身体に向けて温水を噴霧させることにより、効率よくかつ適正に温水を身体の必要各部に向けて霧状に噴出させて包み込むことができ、全身の温浴感を確保しつつシャワー洗浄を行なうことができると共に、短時間で温熱効果が得られ、そのうえどんな入浴者の体格にも合わすことができる。しかも、上記対面位置では各噴霧孔から入浴者の身体の表面までの間隔がほぼ同じになるので、入浴者の全身にわたって複数の噴霧孔から同じ噴射水圧、温度で温水を浴びせることができ、噴霧孔と身体の表面との間に従来のような距離がなくなるため、無駄な温度低下によるエネルギーロスを防止でき、エネルギー効率を高めることができると共に、シャワー装置本体で身体を包み込むことにより、ボディシャンプー等が周囲に飛散することもなくなり、浴槽側や壁面に汚れが付着するのを防止でき、そのうえシャワー後は、シャワー装置本体を重合位置にセットすることで、納まり良く収納できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0011】
本発明のシャワー装置1は、例えば、ユニットバスルームに設置され、入浴者が着座できる椅子部2と、複数の噴霧孔4を備えたシャワー装置本体3と、シャワー装置本体3を移動させる移動手段8とで主体が構成されている。
【0012】
先ず、椅子部2は、図1に示すように、水平方向に延出して入浴者の臀部を支持する座部2aと、座部2aの後部から上方に突出して入浴者の背部を支持する背もたれ部2bとを有している。
【0013】
シャワー装置本体3は、上記椅子部2に着座した入浴者の腰部よりも上半身(胸、腹、肩、首、腕等)の前面側Mを覆うことができる上半身カバー部3Aと、身体の腰部よりも下半身(腰、大腿、脛等)の前面側Nを覆うことができる下半身カバー部3Bとが一体形成されている。図2中の15は入浴者の首を密着させて嵌め込む凹部、16は把手である。本例では、シャワー装置本体3の断面形状が、椅子部2の座部2aから背もたれ部2bに沿わせた断面略Z型の椅子型形状に形成されている。シャワー装置本体3の一例として、図3に示すように、多数の噴霧孔4が穿孔された複数の給湯用パイプ6を縦横に組み合わせて枠を構成し、該枠の外面側を断熱シート7で覆ったものである。勿論、シャワー装置本体3は上記構成に限定されるものではなく、要するに、人体を覆うことができるシャワー装置本体3の内面部3aに入浴者の身体に向けて温水を噴霧させるための多数の噴霧孔4が設けられたものであればよい。
【0014】
上記シャワー装置本体3の移動手段8は、シャワー装置本体3を椅子部2に対して移動させるためのものであり、本例では図1、図2(a)に示すように、椅子部2の背もたれ部2bの上部両サイドとシャワー装置本体3の上部両サイドとをそれぞれ回動自在に連結する左右一対のダンパー機能を有する伸縮ロッド8a,8bで構成されている。そして、椅子部2への着座又は離座ができるようにシャワー装置本体3を椅子部2から開放する開放位置P1(図1(b)の状態)と、各噴霧孔4から入浴者の身体の表面までの間隔をほぼ同じになるようにシャワー装置本体3の内面部3aを入浴者が入る隙間をあけて椅子部2と対面する対面位置P2(図1(a)、図2(b)の状態)と、シャワー装置本体3の内面部3aが椅子部2の座部2aから背もたれ部2bに重合する重合位置P3(図4の状態)のいずれか1つの位置にシャワー装置本体3が移動できるようになっている。また重合位置P3では下半身カバー部3Bの下端が床と接触しないようにしている。また本例では伸縮ロッド8a,8bがダンパ機能を有することにより、開放位置P1と対面位置P2と重合位置P3とで、シャワー装置本体3をそれぞれ安定保持できるようにしている。
【0015】
また、上記シャワー装置本体3の各噴霧孔4への温水の供給手段として、例えば、シャワー装置本体3に給湯配管9(図2)を接続し、図示省略した給湯装置からの温水をポンプから給湯配管9を介してシャワー装置本体3内の複数の給湯用パイプ6にそれぞれ送り込み、各給湯用パイプ6に設けた複数の噴霧孔4からシャワー状に噴射されるようになっている。なお、給湯配管9への温水供給・停止は、浴室内に設けた操作パネル(或いはリモコン操作器)にて操作できるようにし、例えば、低温・高温の交互刺激、流量の強弱の相互刺激を入浴者の好みに合わせて実行するための自動洗浄モードを選択できるようにしている。
【0016】
しかして、本発明のシャワー装置1にあっては、先ず図2(a)のようにシャワー装置本体3を上方に跳ね上げて、椅子部2の座部2aに腰掛け、その後、シャワー装置本体3を引き下げ、入浴者の首から下の身体部分を覆う。このとき入浴者の首をシャワー装置本体3の上端部に設けた凹部15に嵌め込むことができ、密着性を高めることができる。またこのとき、図2(b)のように、シャワー装置本体3の断面形状は、椅子部2の座部2aから背もたれ部2bに沿わせた断面椅子型状に形成されているので、シャワー装置本体3の内面部3aが椅子部2に着座している入浴者の上半身の前面側Mから下半身の前面側Nに沿ってピッタリとフィットするようになり、どんな入浴者の体格にも合わすことができるようになる。この状態で、上半身カバー部3Aの噴霧孔4から入浴者の胸や腹等の上半身の前面側Mに向けて温水が噴霧すると共に、下半身カバー部3Bの噴霧孔4から入浴者の腰部から下半身の前面側Nに向けて温水が噴霧することにより、効率よくかつ適正に温水を身体全体に向けて霧状に噴出させて包み込むことができ、しかも身体のまわりに湯水の微粒子が充満することで、全身の温浴感を確保しつつシャワー洗浄を行なうことができる。また、温水で全身を包み込むことにより、短時間で温熱効果が得られると共に、各噴霧孔4から入浴者の身体の表面までの間隔がほぼ同じになるので、入浴者の全身にわたって複数の噴霧孔4から同じ噴射水圧、温度で温水を浴びせることができ、爽快感が十分に得られ、シャワー浴の効果を一層高めることができる。特に、噴霧孔4と身体の表面との間には従来のような距離がなくなるため、無駄な温度低下によるエネルギーロスを防止でき、エネルギー効率を高めることができる。またシャワー装置本体3が身体全身を包み込むので、ボディシャンプーが周囲に飛散することがなくなり、このため、浴槽側や壁面に汚れが付着するのを防止できる利点もある。
【0017】
さらに、身体を洗浄した後の温水は、シャワー装置本体3の下部の隙間から自然に排出されるので、身体を包み込む温水の微粒子が、噴霧孔4から順次噴出される新しい温水の微粒子と常時入れ代わることにより、身体全体の熱交換を迅速かつ十分に行なうことができ、バスタブ入浴の場合と同等レベルの温熱作用が容易に得られる。つまり従来のバスタブ入浴に比べ、シャワー浴は静水圧作用がなく入浴者の身体への負担が少ないものであり、そのうえ本発明のシャワー装置本体3による全身シャワーでは、全身が十分に暖まりやすく、リラックスした気分が得られると共に、低温・高温の交互刺激、流量の強弱の相互刺激を入浴者の身体の状況に応じて適宜調整すれば、安全入浴を確保しつつ、身体にマッサージ的な刺激を与えて身体の血行促進や内蔵の働きをよくできる作用効果が得られるようになる。さらに、シャワー装置本体3は上下に回動自在であるため、シャワー途中でもシャワー装置本体3を上方に開いて、体温調整を行なったり、顔や頭等の汗を拭ったりする動作を容易に行なえるようになる。
【0018】
シャワー後は、シャワー装置本体3を椅子部2の上方に跳ね上げることで、入浴者は椅子部2から離れることができ、その後でシャワー装置本体3を再び下ろして椅子部2と重合する重合位置P3にセットすることにより、図4(b)のようにシャワー装置本体3の椅子形状をした外面部3bを人の着座面として利用したり、或いは浴室洗面器置きやカウンター面として有効利用できるようになる。
【0019】
さらに本例では、複数本の噴霧孔4を有する給湯用パイプ6を用いてシャワー装置本体3の枠を構成しているので、シャワー装置本体3を簡易で安価なものとすることができると共に、軽量化を図ることができるので、シャワー装置本体3の上方向への跳ね上げ動作や引き下げ動作が容易となり、安全を確保しながら使い勝手が良くなる利点もある。
【0020】
なお前記実施形態ではシャワー装置本体3を上方に跳ね上げる場合を説明したが、必ずしもこれに限らず、左右いずれかに片開き式としてもよく、或いは、シャワー装置本体3の中央部を分断して左右両開き式とすることも可能である。
【0021】
本発明に係るシャワー装置1は、一般家庭の浴室やユニットバスルームに限らず、例えば、病院や福祉施設において、高齢者等の被介護者を椅子に座らせたままシャワーを浴びることができる介護シャワー装置としても広く使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に用いられるシャワー装置を示し、(a)はシャワー装置本体を対面位置に配置した状態を示す側面図、(b)はシャワー装置本体を開放位置に跳ね上げた状態を示す側面図である。
【図2】(a)は同上のシャワー装置本体を開放位置にした状態で入浴者が椅子部に着座した状態を説明する斜視図、(b)は同上のシャワー装置本体を対面位置まで下ろしてシャワーを浴びる状態を説明する側面図である。
【図3】同上のシャワー装置本体の内面部に設けられる噴霧孔の説明図である。
【図4】(a)は同上のシャワー装置本体を椅子部と重合する重合位置に配置した状態を説明する斜視図、(b)は同上の重合位置に配置したシャワー装置本体の外面部に入浴者が着座している状態を説明する側面図である。
【図5】従来のシャワー装置の説明図である。
【符号の説明】
【0023】
1 シャワー装置
2 椅子部
2a 座部
2b 背もたれ部
3 シャワー装置本体
3a 内面部
3b 外面部
4 噴霧孔
8 移動手段
M 上半身前面側
N 下半身前面側
P1 開放位置
P2 対面位置
P3 重合位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴者が着座する座部と背もたれ部とを有する椅子部と、着座した入浴者の少なくとも上半身の前面側を覆うことができると共に内面部に入浴者の身体に向けて温水を噴霧させるための多数の噴霧孔が設けられたシャワー装置本体とを備えると共に、上記椅子部への着座又は離座ができるようにシャワー装置本体を椅子部から開放する開放位置と、上記各噴霧孔から入浴者の身体の表面までの間隔をほぼ同じになるようにシャワー装置本体の内面部を入浴者が入る隙間をあけて椅子部と対面する対面位置と、上記シャワー装置本体の内面部が椅子部の座部から背もたれ部に重合する重合位置とのいずれか1つの位置にシャワー装置本体を移動させる移動手段を備えることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
上記シャワー装置本体は開放位置では椅子部の上方に開かれるようになっており、下方に下ろした状態で上記対面位置と上記重合位置のいずれか1つの位置を選択できるようにしたことを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
上記シャワー装置本体の断面形状を、椅子部の座部から背もたれ部に沿わせた断面椅子型状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載のシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−236412(P2007−236412A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−58659(P2006−58659)
【出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(505154956)松下電工バス&ライフ株式会社 (306)
【Fターム(参考)】