説明

シャワー装置

【課題】外観を損なうことなく、散水板とそれを取り囲む開口部の干渉を防止することができるシャワー装置を提供する。
【解決手段】本発明は、吐水角度を変更可能な埋め込み式のシャワー装置(4)であって、給湯配管(P)に接続される固定側本体部(20、28)と、この固定側本体部に、ボール継手を介して接続される可動側本体部(30)と、この可動側本体部に設けられた多角形の散水板(24)と、この散水板に対して直交する主軸線を中心とする可動側本体部の回転を規制するガイド手段(24b、40)と、散水板の周囲を取り囲む多角形開口部が形成されたフランジ部材(42)と、散水板の隅部の、多角形開口部内への落ち込み量を規制する落ち込み規制手段(38b)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関し、特に、吐水角度を変更可能な埋め込み式のシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2006−101914号公報(特許文献1)には、シャワー装置が記載されている。このシャワー装置は、ボール継手を使用することにより、吐水角度を変更できるように構成されている。図13は、このようなボール継手を使用して吐水角度を変更可能にしたシャワー装置の断面図である。図13に示すように、シャワー装置100は、壁面Wに取り付けられる固定側本体部102と、この固定側本体部102に対して回動可能に取り付けられた可動側本体部104と、を有する。これらの固定側本体部102及び可動側本体部104は、ボール継手106を介して接続されている。
【0003】
この構造により、可動側本体部104は、ボール継手106の回動中心点Cを通り、壁面Wに平行な平面内の任意の軸線を中心に回動可能になる。また、可動側本体部104の回動可能な範囲は、固定側本体部102の先端部内周テーパ面102bと可動側本体部104の後部円筒外周面104bが当接することにより規制される。このため、可動側本体部104の回動可能な角度は、回動中心点Cを通り、壁面Wに平行な平面内の全ての軸線を中心とした回動について同一である。即ち、可動側本体部104は、正面に向けられた状態からどの方向に回動された場合にも、同一の角度だけ回動可能になっている。
【0004】
この特開2006−101914号公報に記載されたタイプのシャワー装置は、壁面から使用者の身体に向けて吐水するボディーシャワー用の装置として好適である。一方、シャワー装置の散水板を矩形にすること、及びシャワー装置の本体部分を壁面に埋め込むことが意匠性の観点から要求されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−101914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図13に示すようなシャワー装置を壁面に埋め込み、散水板を矩形にすると、散水板を回動させたとき、散水板の縁部とシャワー装置を埋め込んだ壁面開口部の縁部が干渉するという問題がある。即ち、ボール継手で接続された可動側本体部は、回動中心点Cを通り壁面Wに直交する軸線Aを中心とした回動も可能であるため、散水板を矩形にすると、この回動により散水板の縁部と壁面開口部の縁部が干渉してしまう。また、散水板を矩形にした場合には、可動側本体部を鉛直方向又は水平方向のみに回動させたとき干渉が発生しないように構成されていても、鉛直方向に回動させた状態で水平方向に回動させると干渉が発生するという問題がある。
【0007】
さらに、散水板と壁面開口部が干渉すると、シャワー装置の操作感が悪化するばかりでなく、干渉することにより散水板等が傷付いたり、メッキが剥がれる等の問題が発生する。また、干渉が発生することが無いよう、シャワー装置を埋め込む壁面開口部を大きく形成すると、シャワー装置の外観が損なわれるという問題がある。
【0008】
従って、本発明は、外観を損なうことなく、散水板とそれを取り囲む開口部の干渉を防止することができるシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明は、吐水角度を変更可能な埋め込み式のシャワー装置であって、給湯配管に接続される固定側本体部と、この固定側本体部に、ボール継手を介して接続される可動側本体部と、この可動側本体部に設けられた多角形の散水板と、この散水板に対して直交する主軸線を中心とする可動側本体部の回転を規制するガイド手段と、散水板の周囲を取り囲む多角形開口部が形成されたフランジ部材と、散水板の隅部の、多角形開口部内への落ち込み量を規制する落ち込み規制手段と、を有することを特徴としている。
【0010】
このように構成された本発明においては、散水板が設けられた可動側本体部が、給湯配管に接続された固定側本体部に対して、ボール継手により回動される。可動側本体部が回動される際、主軸線を中心とする可動側本体部の回転がガイド手段により規制され、散水板の隅部の、多角形開口部内への落ち込みが、落ち込み規制手段によって規制される。
【0011】
このように構成された本発明によれば、落ち込み規制手段により、散水板の隅部の、多角形開口部内への落ち込みが規制されるので、フランジ部材の多角形開口部を小さく構成した場合の、フランジ部材と散水板の干渉を防止することができる。これにより、シャワー装置の外観を損なうことなく、散水板と壁面開口部の干渉を防止することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、ガイド手段が、ピン及びこのピンを受け入れる案内溝により構成され、これらのピン及び案内溝は、可動側本体部が回動されるとき、相対的に移動されるように構成されている。
このように構成された本発明によれば、主軸線を中心とする可動側本体部の回転を規制するガイド手段を、簡単な機構で構成することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、さらに、フランジ部材の背面側に配置され、可動側本体部を受け入れるケースを有し、落ち込み規制手段は、ケースの隅部に形成され、可動側本体部又は散水板と当接して、散水板の隅部の落ち込み量を規制するケース当接部により構成されている。
このように構成された本発明によれば、散水板の隅部の、多角形開口部内への落ち込み量を規制する落ち込み規制手段を、簡単な機構で構成することができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、落ち込み規制手段は、可動側本体部又は散水板と当接するように配置されたテーパ面から構成され、このテーパ面は、散水板の対角線の方向が高く形成されており、散水板の隅部の落ち込み量を規制する。
このように構成された本発明によれば、シャワー装置がケースを備えていない場合にも、落ち込み規制手段を設けることができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、多角形開口部は、その周縁に、多角形開口部が背面側に向かって広くなるように向けられた面取面が形成されている。
このように構成された本発明によれば、面取面が形成されていない場合と比較して、多角形開口部の前面側を小さく構成することができるので、散水板との隙間を小さく構成でき、シャワー装置の美観を、より向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシャワー装置によれば、外観を損なうことなく、散水板とそれを取り囲む開口部の干渉を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置を、取付面である壁面に埋め込んだ水栓設備全体を示す図である。図2は本実施形態によるシャワー装置の平面断面図であり、図3はシャワー装置の一部を切断して示す斜視図である。また、図4は本実施形態のシャワー装置の分解斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の第1実施形態によるシャワー装置を使用した水栓設備1は、4つの水栓装置2a、2b、2c、2dと、ボディーシャワー用のシャワー装置4と、ハンドシャワー用のハンドシャワーヘッド6と、オーバーヘッドシャワー用のオーバーシャワーヘッド8と、吐水温度を調整するためのサーモ水栓16と、を有する。
【0019】
各水栓装置2a、2b、2c、2dは、取付面である正面の壁面W1に埋め込まれており、それらの間が壁面W1に埋め込まれた配管により接続されている。また、壁面W1上には、オーバーヘッドシャワー吐水用の押しボタンユニット10a、ハンドシャワー吐水用の押しボタンユニット10b、及びボディーシャワー吐水用の押しボタンユニット10c、10dが配置されている。
【0020】
さらに、各水栓装置2a、2b、2c、2dの下方には、吐水温度を調整するためのサーモ水栓16が埋め込まれており、サーモ水栓16には設定温度を調節するための温度調整ツマミ16aが設けられている。
また、本実施形態によるシャワー装置4は、左右の壁面W2、W3に夫々2つずつ埋め込まれている。シャワー装置4は、使用者がシャワー装置4の散水板を押圧することにより吐水角度を適宜変更できるように構成されており、ボディーシャワー吐水用の押しボタンユニット10c、10dを操作することにより、吐水状態と止水状態を切り替えることができる。
【0021】
図2乃至図4に示すように、本発明の第1実施形態によるシャワー装置4は、給湯配管Pに接続されるベース部材20と、このベース部材20に対して摺動可能に接続されるボール継手22と、このボール継手22に取り付けられた散水板24と、を有する。これにより、給湯配管Pから供給された湯水は、ベース部材20、ボール継手22、及び散水板24を通って、散水板24に形成された多数の散水孔から吐出される。さらに、本実施形態によるシャワー装置4は、ベース部材20及びボール継手22を収容するケース38と、散水板24の周囲を取り囲む矩形開口部が形成されたフランジ部材42と、を有する。
【0022】
ベース部材20は、ベース部材フランジ20aを有する概ね円筒形の部材であり、ベース部材フランジ20aが形成された後端部が壁面に埋め込まれた給湯配管Pに接続されるように構成されている。また、ベース部材20の円筒形の前端部は、ボール継手22の後端部に摺動可能に受け入れられるように構成されている。
【0023】
散水板24は、概ね正方形の板状に形成されており、その背面側の中央でボール継手22に取り付けられるように構成されている。また、散水板24の背面両側側部には、後方に突出するように延びる突出プレート24aが形成されている。
【0024】
次に、図5を新たに参照して、ボール継手22の構成を説明する。図5は、ボール継手22を構成する継手カバー28の斜視図である。
図2に示すように、ボール継手22は、ベース部材20を受け入れる円筒部材26と、この円筒部材26を受け入れる継手カバー28と、概ね球形のボールを有するボール部材30と、を有する。さらに、ボール継手22は、継手カバー28とボール部材30のボールの間に配置される摺動リング34と、ボールに押し付けられるボール抑え32と、このボール抑え32をボールに向けて付勢する付勢バネ36と、を有する。
従って、本実施形態においては、ベース部材20、円筒部材26、及び継手カバー28が固定側本体部を構成し、散水板24及びボール部材30が可動側本体部を構成する。
【0025】
円筒部材26は概ね円筒形の部材であり、その内側にベース部材20の円筒部を水密的に摺動可能に受け入れるように構成されている。
図5に示すように、継手カバー28は、カバーフランジ28aを有する概ね円筒形の部材であり、円筒部分の内側に円筒部材26を水密的に受け入れるように構成されている。また、円筒部材26の外周部、及び継手カバー28の内周部には夫々雄ネジ及び雌ネジが形成されており、このネジにより継手カバー28と円筒部材26が結合されている。また、カバーフランジ28aには、4つのビス穴が設けられており、このビス穴を通してビス28bをベース部材フランジ20aに固定することにより、ボール継手22がベース部材20に固定される。
【0026】
ボール部材30は、継手カバー28の内部に受け入れられる概ね球形のボールと、このボールから延び散水板24に連結されるボール連結部を備えている。ボールは、継手カバー28の前端部開口の内周に配置された摺動リング34と、円筒部材26の内部に摺動可能に配置されたボール抑え32の間に挟まれて、ボールの回動中心点Cを中心に任意の方向に回動可能に支持される。また、ボール部材30のボールと継手カバー28の間の水密性は、それらの間に配置されたOリング29により確保されている。
【0027】
摺動リング34は、内周に面取面が形成された環状の部材であり、ボール部材30のボールと円周状の領域で滑らかに接触するように構成されている。
ボール抑え32は、概ね円筒状の部材であり、その内周にはすり鉢状の面が形成されている。このすり鉢状の面は、ボール部材30のボールと円周状の領域で滑らかに接触するように構成されている。また、ボール抑え32の外周には、付勢バネ36が配置されており、この付勢バネ36がボール抑え32の外周に形成された段部に係合することにより、ボール抑え32はボールに向けて付勢される。
【0028】
次に、図6を新たに参照して、ケース38の構成を説明する。図6は、ケース38の斜視図である。
ケース38は、内部にベース部材20及びボール継手22を収容する箱形の収容部と、この収容部の前端開口部の周囲に設けられた鍔部38aと、を有する。収容部の4つの隅部には、散水板24の背面側の角と当接するように形成されたケース当接部38bが形成されている。ケース当接部38bは、収容部の4つの隅部に夫々形成された、壁面とほぼ平行に延びる平面部によって構成されている。このケース当接部38bと、散水板24の背面側の角が当接されることにより、散水板24の隅部のケース38の内部への落ち込み量が規制される。従って、本実施形態において、ケース当接部38bは、落ち込み規制手段を構成する。
【0029】
さらに、ケース38の収容部の両側側面には、2本のピン40(図4)が収容部の内方に突出するように取り付けられている。さらに、これらのピン40は、散水板24から後方に向けて突出する突出プレート24aに夫々形成された案内溝24b(図3)に受け入れられている。ピン40が案内溝24bに受け入れられることにより、回動中心点Cを通り散水板24に直交する主軸線Aを中心とした散水板24の回動が規制される。従って、本実施形態において、ピン40及び案内溝24bは、主軸線を中心とする散水板24(可動側本体部)の回転を規制するガイド手段として機能する。
また、図4に示すように、ケース38は、鍔部38aの背面側が壁面Wに設けられた開口部の縁に当接され、壁面Wに対して位置決めされる。
【0030】
フランジ部材42は、図4に示すように、散水板24の周囲を取り囲む矩形開口部42aが中央に形成された概ね正方形板状の部材であり、ケース38の鍔部38aを覆うように配置される。また、矩形開口部42aの周縁には、矩形開口部42aが背面側に向かって広くなるように向けられた面取面42bが形成されている。
【0031】
次に、図7乃至図9を参照して、本発明の第1実施形態によるシャワー装置4の作用を説明する。図7は、ボール継手22及び散水板24をケース38に収納しない状態で、散水板24を種々の方向に回動させた場合の散水板24の動きを示す図である。図8は、本実施形態のシャワー装置4の散水板24を傾けた状態を示す平面断面図である。図9は、本実施形態のシャワー装置4の散水板24を上方向及び左方向に傾けた状態を示す正面図である。
【0032】
まず、本実施形態のシャワー装置4に備えられている落ち込み規制手段(ケース当接部38b)の作用を説明するために、図7を参照して、散水板24をケース38に収納しない状態(落ち込み規制手段がない状態)で種々の方向に回動させた場合の動きを説明する。ボール継手22及び散水板24がケース38に収納されていない場合には、散水板24の回動は、散水板24の背面と継手カバー28の前端面28c(図5)が当接することにより規制される。前端面28cは主軸線Aに対して概ね対称に形成されているので、ケース38に収納されていない状態では、散水板24の最大回動角度は何れの方向も同一になる。
【0033】
図7(a)は、散水板24が各方向に最大に回動された状態を、シャワー装置4の正面から重畳的に示した図である。図7(b)は、散水板24を図7(a)に示すように回動させた場合における、散水板24の右上の角の動きを拡大して示した図である。
【0034】
まず、散水板24が正面に向けられている状態、即ち、散水板24が傾けられていない状態においては、散水板24の右上の角は、図7(b)のp0の位置にある。次に、散水板24の上辺部を押圧し、散水板24を上方に、即ち、散水板24を回動中心点Cを通り水平な軸線を中心に最大限回動させると、右上の角は散水板24の背面側に落ち込みながら図7(b)のp1の位置に移動される。このとき、散水板24の右上及び左上の角の落ち込み量は等しく、散水板24の右下及び左下の角が浮き上がる量も等しくなる。
【0035】
一方、図7(b)のp0の位置から、散水板24の左側の辺部を押圧し、散水板24を左方に、即ち、散水板24を回動中心点Cを通り鉛直な軸線を中心に最大限回動させると、右上の角は散水板24の背面側に浮き上がりながら図7(b)のp3の位置に移動される。このとき、散水板24の左上及び左下の角の落ち込み量は等しく、散水板24の右上及び右下の角が浮き上がる量も等しくなる。
同様に、p0の位置から散水板24の下辺部を押圧して散水板24を回動させると、右上の角は図7(b)のp5の位置に移動され、また、p0の位置から散水板24の右側の辺部を押圧して散水板24を回動させると、右上の角は図7(b)のp7の位置に移動される。
【0036】
次に、散水板24が上方に傾けられた状態、即ち、図7(b)のp1の位置から、散水板24の左側の辺部を押圧すると、散水板24の右上の角は浮き上がりながら図7(b)のp2の位置に移動される。このとき、散水板24の左上の角は、散水板24が上方に傾けられた状態よりもさらに、散水板24の背面側に落ち込む。図7(b)のp2の位置は、散水板24が、左上方に傾けられた状態、即ち、回動中心点Cを通り、散水板24の右上と左下の角を結ぶ対角線方向の軸線を中心に、最大限回動された状態である。
【0037】
図7(b)のp2の位置から、散水板24の左側の辺部をさらに押圧すると、右上の角は浮き上がりながら図7(b)のp3の位置に移動される。このとき、散水板24の左上の角は、図7(b)のp2における位置よりも浮き上がり、左下の角は落ち込んで、散水板24は左方に傾けられた状態になる。
【0038】
同様に、散水板24が左方に傾けられた状態(図7(b)のp3)から散水板24の下辺部を押圧すると、散水板24は左下方に傾けられた状態(図7(b)のp4)を経て下方に傾けられた状態(図7(b)のp5)に移行する。さらに、散水板24が下方に傾けられた状態(図7(b)のp5)から散水板24の右側の辺部を押圧すると、散水板24は右下方に傾けられた状態(図7(b)のp6)を経て右方に傾けられた状態(図7(b)のp7)に移行する。散水板24が右方に傾けられた状態(図7(b)のp7)から散水板24の上辺部を押圧すると、散水板24は右上方に傾けられた状態(図7(b)のp8)を経て上方に傾けられた状態(図7(b)のp1)に移行する。
【0039】
このように、散水板24の上辺部、左側の辺部、下辺部、右側の辺部を順次押圧すると、散水板24は、上方、左上方、左方、左下方、下方、右下方、右方、右上方に順次傾けられ、このとき、散水板24の角は、図7(b)に示す円を描くように移動される。
【0040】
次に、図8及び図9を参照して、散水板24をケース38に収納した状態(落ち込み規制手段を設けた状態)で種々の方向に回動させた場合の動きを説明する。図8は、本発明の第1実施形態によるシャワー装置4において、散水板24を最大限左方に傾けた状態を示す平面断面図である。また、図9は、(a)散水板24を最大限上方に傾けた状態、(b)散水板24を最大限左方に傾けた状態を示す正面図、及び(c)散水板24の右上の角が移動する軌跡を示す図である。
【0041】
まず、ボール継手22及び散水板24がケース38に収納されている場合には、散水板24の回動は、散水板24の背面と落ち込み規制手段であるケース当接部38bが当接することにより規制される。即ち、図8に示すように、散水板24を左方に傾けた状態においては、散水板24の左上及び左下の角が、ケース38の左上及び左下の隅に設けられたケース当接部38bに夫々当接して、散水板24の傾斜角度が規制される。同様に、散水板24を上方に傾けた状態では左上及び右上の隅のケース当接部38bが、下方に傾けた状態では左下及び右下の隅のケース当接部38bが、右方に傾けた状態では右上及び右下の隅のケース当接部38bが、散水板24の背面側の角に当接される。
【0042】
まず、図9(a)に示す散水板24が上方に傾けられた状態において、散水板24の左側の辺部を押圧すると、散水板24は、図9(b)に示す散水板24が左方に傾けられた状態に移行する。この際、散水板24の左上の角は、ケース当接部38bによって落ち込み量が規制されているので、散水板24の左上の角が図9(a)の状態よりも落ち込むことはなく、散水板24の右上の角が浮き上がる。散水板24の左側の辺部をさらに押圧すると、散水板24の左下の角が落ち込み、左下の角とケース当接部38bが当接して、図9(b)に示す状態になる。
【0043】
即ち、図9(a)に示す状態において、散水板24の左側の辺部を押圧すると、散水板24は、散水板24の左上の角とケース当接部38bが当接する点と、回動中心点Cとを結ぶ軸線を中心に回動され、図9(b)に示す状態に移行する。換言すれば、落ち込み規制手段のない状態においては、散水板24は、回動中心点Cを通り壁面Wに平行な任意の軸線を中心とする回動について、同一の角度だけ回動可能である。これに対して、落ち込み規制手段を設けることにより、回動中心点Cを通り散水板24の対角線の方向の軸線を中心とした散水板24の回動可能な角度が、回動中心点Cを通り水平又は鉛直な軸線を中心とする回動可能な角度よりも小さくなる。
【0044】
この落ち込み規制手段の作用により、散水板24の右上の角が描く軌跡は、図9(c)に示すものとなる。図7(b)におけるp1からp3に至る軌跡が円弧状であるのに対し、図9(c)におけるp1からp3に至る軌跡は比較的直線に近いものであり、移動範囲が狭くなっていることがわかる。なお、ケース38内に設けられたピン40が、散水板24背面の突出プレート24aに設けられた案内溝24bに受け入れられているが、ピン40と案内溝24bの間には、所定のクリアランスがあるため、図9(a)から図9(b)の状態に移行する際に、ピン40と案内溝24bが干渉することはない。従って、ピン40及び案内溝24bの構成は、図9(c)の軌跡には無関係である。
【0045】
ここで、散水板24の角が図9(c)に示す軌跡を描く場合には、散水板24が上方、左方、下方、右方に最大限傾斜された際に散水板24とフランジ部材42が干渉することのないように、フランジ部材42の矩形開口部42aを設計しておくことにより、散水板24とフランジ部材42の干渉を回避することができる。
【0046】
これに対して、散水板24の角が図7(b)に示す軌跡を描く場合には、散水板24が上方、左方、下方、右方に最大限傾斜された際に散水板24とフランジ部材42の干渉が発生しないように矩形開口部42aを設計しても、散水板24の角が、図7(b)のp2、p4、p6、p8の近傍に位置するとき、干渉が起こる場合がある。この干渉を避けるために矩形開口部42aを大きく設計すると、散水板24と矩形開口部42aの間のクリアランスが大きくなり、シャワー装置4の意匠性が損なわれることになる。
【0047】
また、フランジ部材42の矩形開口部42aの背面側の縁には、矩形開口部42aが背面側に向かって広くなるように面取面42bが形成されている。これにより、矩形開口部42aの背面側の縁と散水板24の干渉が効果的に防止されるので、矩形開口部42aの前面側を、より小さく設計することができ、シャワー装置4の意匠性をより向上させることができる。
【0048】
本発明の第1実施形態のシャワー装置によれば、ケース当接部により、散水板の隅部の、矩形開口部内への落ち込みが規制されるので、フランジ部材の矩形開口部を小さく構成した場合の、フランジ部材と散水板の干渉を防止することができる。これにより、シャワー装置の外観を損なうことなく、散水板と壁面開口部の干渉を防止することができる。
【0049】
また、本実施形態のシャワー装置によれば、ピン及びこのピンを受け入れる案内溝により、主軸線を中心とする可動側本体部の回転を簡単な機構で規制することができる。
【0050】
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態によるシャワー装置を説明する。本実施形態のシャワー装置は、落ち込み規制手段が形成されたケースの構成が、上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明する。図10は、本実施形態のシャワー装置に使用されているケースの斜視図である。
【0051】
図10に示すように、本実施形態において使用されるケース50は、その収容部の各辺に、落ち込み規制手段としてケース当接部50aが夫々形成されている。各ケース当接部50aは、隅部近傍の収容部側面から延びる稜線50bが散水板24の背面側と当接して、散水板24の隅部の、矩形開口部の中への落ち込みを防止するように構成されている。
【0052】
ケース当接部50aをこのように形成することによっても、散水板24の隅部の落ち込み量を規制することができる。これにより、散水板24を回動させたとき、散水板24の角は図9(c)と類似の軌跡を描いて移動される。
【0053】
次に、図11及び図12を参照して、本発明の第3実施形態によるシャワー装置を説明する。本実施形態のシャワー装置は、落ち込み規制手段がボール継手の継手カバーに形成されている点が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第3実施形態の、第1実施形態とは異なる点のみを説明する。図11は、本実施形態のシャワー装置に使用されている継手カバーの斜視図である。また、図12は、本発明の第3実施形態のシャワー装置の散水板が傾斜された状態を示す斜視断面図である。
【0054】
図11に示すように、本発明の第3実施形態においては、ボール継手の継手カバー60の前端部に、四角錐状に配置されたテーパ面である4つの当接平面60aが形成されている。従って、各当接平面60aの間には、4本の稜線60bが形成される。本実施形態においては、4つの当接平面60a及び4本の稜線60bが落ち込み規制手段として機能する。継手カバー60は、その4本の稜線60bが散水板24の対角線の方向に整合されるように配置される。従って、継手カバー60の前端部は、前端部が概ね円錐面状に形成されている継手カバー28(図5)に比べ、散水板24の対角線の方向が高くなるように形成されているということができる。即ち、稜線60bの方向において、図5の継手カバー28に比べ、散水板24の背面と継手カバー60の前端部の間の距離が近くなる。
【0055】
図12に示すように、散水板24が左方に傾けられている状態においては、散水板24の背面と当接平面60aの一つが当接されている。さらに、図12に示す状態から、図12に矢印で示す散水板24の下辺部を押圧すると、散水板24の背面が当接平面60aから浮き上がり、散水板24の背面は、1本の稜線60bのみで継手カバー60と当接するようになる。ここで、稜線60bの部分は、当接平面60aよりも高くなるように形成されているので、稜線60bと当接している散水板24の隅部の落ち込みが規制される。これにより、散水板24を回動させたとき、散水板24の角は図9(c)と類似の軌跡を描いて移動される。
【0056】
本発明の第3実施形態のシャワー装置によれば、シャワー装置がケースを備えていない場合にも、落ち込み規制手段を設けることができる。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、散水板は正方形の板状に構成されていたが、散水板は長方形の他、任意の多角形にすることができる。また、矩形を含む多角形の散水板の角には或る程度の丸味が付けられていても良く、本明細書において、「矩形」、「多角形」には、このような形状も含まれるものとする。さらに、散水板の各辺は、完全な直線である必要はなく、或る程度湾曲されていても良い。本明細書において、「矩形」、「多角形」には、このような形状も含まれるものとする。
【0058】
さらに、上述した実施形態においては、可動側本体部の側にボール継手のボールが設けられ、固定側本体部においてこのボールを支持していたが、逆に、固定側本体部にボールを設けても良い。また、上述した実施形態においては、ガイド手段として、ケースにピンが設けられ、散水板に案内溝が設けられていたが、逆に、散水板にピンを設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施形態によるシャワー装置を壁面に埋め込んだ水栓設備全体を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるシャワー装置の平面断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるシャワー装置の一部を切断して示す斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるシャワー装置の分解斜視図である。
【図5】ボール継手を構成する継手カバーの斜視図である。
【図6】ケースの斜視図である。
【図7】ボール継手及び散水板をケースに収納しない状態で、散水板を種々の方向に回動させた場合の散水板の動きを示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態によるシャワー装置の散水板を傾けた状態を示す平面断面図である。
【図9】本発明の第1実施形態によるシャワー装置の散水板を上方向及び左方向に傾けた状態を示す正面図である。
【図10】本発明の第2実施形態によるシャワー装置に使用されているケースの斜視図である。
【図11】本発明の第3実施形態によるシャワー装置に使用されている継手カバーの斜視図である。
【図12】本発明の第3実施形態によるシャワー装置の散水板が傾斜された状態を示す斜視断面図である。
【図13】ボール継手を使用して吐水角度を変更可能にした従来のシャワー装置の断面図である。
【符号の説明】
【0060】
A 主軸線
C 回動中心点
P 給湯配管
W 壁面
1 水栓設備
2a、2b、2c、2d 水栓装置
4 本発明の第1実施形態によるシャワー装置
6 ハンドシャワーヘッド
8 オーバーシャワーヘッド
10a、10b、10c、10d 押しボタンユニット
16 サーモ水栓
20 ベース部材
20a ベース部材フランジ
22 ボール継手
24 散水板
24a 突出プレート
24b 案内溝
26 円筒部材
28 継手カバー
28a カバーフランジ
28b ビス
28c 前端面
29 Oリング
30 ボール部材
32 ボール抑え
34 摺動リング
36 付勢バネ
38 ケース
38a 鍔部
38b ケース当接部
40 ピン
42 フランジ部材
42a 矩形開口部
42b 面取面
50 本発明の第2実施形態において使用されるケース
50a ケース当接部
50b 稜線
60 本発明の第3実施形態において使用される継手カバー
60a 当接平面
60b 稜線
100 従来のシャワー装置
102 固定側本体部
104 可動側本体部
106 ボール継手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水角度を変更可能な埋め込み式のシャワー装置であって、
給湯配管に接続される固定側本体部と、
この固定側本体部に、ボール継手を介して接続される可動側本体部と、
この可動側本体部に設けられた多角形の散水板と、
この散水板に対して直交する主軸線を中心とする上記可動側本体部の回転を規制するガイド手段と、
上記散水板の周囲を取り囲む多角形開口部が形成されたフランジ部材と、
上記散水板の隅部の、上記多角形開口部内への落ち込み量を規制する落ち込み規制手段と、
を有することを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
上記ガイド手段が、ピン及びこのピンを受け入れる案内溝により構成され、これらのピン及び案内溝は、上記可動側本体部が回動されるとき、相対的に移動されるように構成されている請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
さらに、上記フランジ部材の背面側に配置され、上記可動側本体部を受け入れるケースを有し、上記落ち込み規制手段は、上記ケースの隅部に形成され、上記可動側本体部又は上記散水板と当接して、上記散水板の隅部の落ち込み量を規制するケース当接部により構成されている請求項1又は2記載のシャワー装置。
【請求項4】
上記落ち込み規制手段は、上記可動側本体部又は上記散水板と当接するように配置されたテーパ面から構成され、このテーパ面は、上記散水板の対角線の方向が高く形成されており、上記散水板の隅部の落ち込み量を規制する請求項1又は2記載のシャワー装置。
【請求項5】
上記多角形開口部は、その周縁に、多角形開口部が背面側に向かって広くなるように向けられた面取面が形成されている請求項1乃至4の何れか1項に記載のシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−213778(P2009−213778A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−62841(P2008−62841)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】