説明

シャワー装置

【課題】コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用した反復的な首振り動作を可能なシャワー装置を提供する。
【解決手段】ハウジング102と、前記ハウジング内に導入された湯水により往復運動が可能に設けられた中子120とを有する駆動部と、首振り可能に設けられたシャワー部と、前記ハウジング内に導入された前記湯水を前記シャワー部に導く通水路と、前記中子の移動を前記シャワー部に伝達する動力伝達部とを備え、前記ハウジング102に湯水を供給すると、前記シャワー部は前記首振り運動をしながら湯水を散水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やシャワーブース等で用いられる、シャワー散水方向を反復的に変化させる自動往復動作を可能としたシャワー装置及びシャワーブースに関する。
【背景技術】
【0002】
リラクゼーションや美容健康増進などを目的としたシャワー装置のニーズが高まっている。この用途においては、例えば、旋回流などを利用して数10ヘルツ以上の比較的高速で水流を変調させることにより、マッサージ効果などを促進するアプローチがある。また一方、例えば数ヘルツ以下の比較的ゆっくりとした速度でシャワーノズルなどの散水位置や散水方向を反復的に変化させると、例えば人体の所定範囲に均一に湯水を噴射してリラクゼーション効果などを促進することが可能である。
【0003】
往復動作のために、モータやソレノイドなどの電動手段を用いることも可能であるが、浴室やシャワーブース等で用いられるシステムに搭載するためには、電源の確保や、感電や漏電などに対する対策が必要とされ、コストや信頼性の点でも解決すべき課題が多い。これに対して、往復動作を水力により実現できれば、電気や潤滑オイルなどが不要となり、初期コスト、ランニングコスト、信頼性、メンテナンス性などの多くの観点で、改善が期待できる。
【0004】
上下往復動作を可能としたシャワー装置として、ピストンと4方弁とを組み合わせたものが開示されている(特許文献1)。このシャワー装置は、シリンダー内に設けられたピストンを水圧により上下動作させ、ワイヤーを介してシャワーヘッドを上下に移動させる。ピストンの上下動作の切替は、シリンダーに対する給水流路を4方弁により切り替えることにより実施される。
【0005】
このようなシリンダーとピストンの組合せによる水圧を利用した駆動装置は、水車を高速で回転させて駆動力を得るタイプの駆動装置に比べて、低速かつ高い駆動力をピストンの動きとして直接得ることができ、裸の人が直接触れるという点で安定した動きを求められるシャワー装置に利用する上で適していると言える。つまり、シャワーブースなどでの利用形態を考慮した場合、直接、使用者が手に触れられる場所に設置されるため、誤ってシャワーヘッドにぶつかった際に、シャワーヘッドが破損しないようにシャワーヘッド自体に剛性が求められ、そのシャワーヘッドを動かすためには大きな駆動力が必要となる。さらに、心地よいシャワー使用感を感じるために低速であることが望まれている。このシリンダーとピストンの組合せによる水圧駆動装置によれば、水車を用いる水圧駆動装置に比べて、大きな駆動力をシャワーヘッドに伝達できると共にシャワーヘッドを低速で駆動することが容易に可能である。
【特許文献1】特開平2-134119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このシャワー装置の場合、シャワーヘッドを上下に移動させているため、広範囲に吐水するにはシャワーヘッドが移動する距離を長くとる必要があり、結果シャワーヘッドが存在可能な領域が広くなり、浴室やシャワーブースといった限られたスペースに設置する上では、デザイン性を損なうという点で課題を有していた。
【0007】
本発明はかかる課題の認識に基づいてなされたものであり、その目的は、コンパクト且つシンプルな構造で、広範囲に吐水可能にしつつもシャワーヘッドの存在可能な領域を少なくし、デザイン性を向上したシャワー装置及びシャワーブースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、ハウジングと、前記ハウジング内に導入された湯水により往復運動が可能に設けられた中子と、を有する駆動部と、首振り運動可能に設けられたシャワー部と、前記ハウジング内に導入された前記湯水を前記シャワー部に導く通水路と、前記中子の運動を前記シャワー部に伝達する動力伝達部と、前記シャワー部の前記首振り運動を任意の角度で停止させることが可能な速度調整手段と、を備え、前記ハウジングに湯水を供給すると、前記シャワー部は前記首振り運動をしながら湯水を散水することが可能であり、前記速度調整手段によって、前記シャワー部からの湯水の散水を維持しながら前記シャワー部の前記首振り運動を停止させた状態において、使用者が前記シャワー部の散水方向を変更可能であることを特徴とするシャワー装置が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、壁面と、天井と、前記壁面及び天井の少なくともいずれかに取り付けられる上記のシャワー装置と、を備えたことを特徴とするシャワーブースが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
まず、本実施形態のシャワー装置に設けられる駆動部100の構造および動作について詳細に説明する。図1乃至図4は、本実施形態の駆動部100の動作メカニズムを説明するための模式図である。尚、便宜上、駆動部100は横向きにしてあり、中子120及び吐水筒体180は紙面左右方向に往復移動可能となっている。
【0012】
駆動部100は、ハウジング102と、ハウジング102から突出した吐水筒体180と、を有する。そして、吐水筒体180の中には吐水流路182が設けられている。ハウジング102には、2つの入水口112、114が設けられている。これら入水口112、114を並列に接続し、湯水をこれら入水口112、114にほぼ同圧に供給すると、吐水筒体180が矢印Mで表したように、左右に往復運動をしながら、吐水流路182から吐水を外部に送り出す。
【0013】
駆動部100は、ハウジング102の中に移動可能に設けられた中子(なかご)120を有する。ハウジング102の内部は、中子120によって第1の圧力室116と第2の圧力室118とに分割されている。中子120は中空構造を有し、その中空空間は、吐水筒体180に設けられた吐水流路182と連通した中子内流路124を構成している。また、中子内流路124は、導入口(排水口)132、134を介してそれぞれ圧力室116、118と連通する。
【0014】
中子120には、導入口132、134の開度を変化させる弁体142、144が設けられている。また、中子120には、これら弁体142、144を制御する制御手段が設けられている。制御手段によって導入口132、134の開度に差を設けることにより、入水口から中子内流路124に至る左右の流路の流路抵抗を異ならせ、これにより左右の圧力室116、118に生ずる圧力差を利用して中子120を移動させることができる。
【0015】
図1に表した状態においては、制御手段は弁体142、144をそれぞれ右端に付勢された状態とし、中子120の右側に湯水の導入口134が開かれている。従って、入水口114から供給された湯水は、圧力室118から矢印Cで表した経路で中子120の中子内流路124に流入し、吐水筒体180に設けられた吐水流路182を通って矢印Dで表したように流出する。一方、ハウジングの入水口112から供給された湯水は流出経路がなく、圧力室116の圧力は圧力室118の圧力よりも高くなる。その結果として、中子120は矢印Mの方向に動く。
【0016】
図5は、導入口132、134の開度に差を設けることの作用効果を説明するための模式図である。 図5(a)に例示したように、弁体142、144が中立的な状態にあり、導入口132、134の開度がほぼ同一の状態においては、これら導入口132、134を介した流路の流路抵抗もほぼ同一となるので、中子120の左右で圧力差は生じない。従って、何らかの外力が作用しないと中子120は動かない。
【0017】
これに対して、図5(b)に例示したように、弁体142、144が中立的な状態から外れて導入口132、134の開度に差が生ずると、流路抵抗にも差が生ずるために、中子120の左右で圧力差が生ずる。
【0018】
なお、本願明細書において、導入口の「開度」とは、導入口と弁体との間を流れる湯水の流路抵抗を決定するパラメータであるものとする。例えば、図5(b)に表した状態においては、導入口132と弁体142との間に形成される流路の流路抵抗は、導入口134と弁体144との間に形成される流路の流路抵抗よりも大きい。この場合、導入口132の開度は、導入口134の開度よりも小さいものとする。 図5(b)に表した具体例の場合には、導入口134の開度が導入口132の開度よりも大きいので、導入口132を介した流路のほうが流路抵抗が大きくなる。その結果として、中子120の左側のほうが右側よりも圧力が高くなる。その結果として、中子120及び弁体142に圧力差による力がそれぞれ作用する。
【0019】
従って、中子120にかかる力が摺動抵抗を上回る時には、中子120は右側に動くこととなる。また一方、弁体142も中子120に対して移動可動であるので、弁体142にかかる力が弁体142の摺動抵抗を上回る時には、弁体142が中子120に対して相対的に右側に移動する。弁体142が右側に移動すると導入口132を介する流路抵抗がますます大きくなるために圧力差が拡大する。つまり、中子120及び弁142にかかるそれぞれの力は増加することとなり、中子120と弁体142の移動が促進される。 そして遂には、図5(c)に表したように、導入口132が全閉状態となる。この時、左右の流路抵抗の差が最も大きい状態となり、中子120及び弁体142には、最大の圧力差に対応した力がそれぞれ作用する。
【0020】
以上説明したように、本発明の本実施形態の駆動部100において中子120を動かすためには、導入口132、134の開度に差を設けて移動に必要な圧力差を生じさせればよい。このとき、導入口の一方を開状態、他方を閉状態とすることで最大の圧力差が得られ、最も確実且つ安定的な移動力が得られる。
【0021】
再び図2に戻って説明を続けると、同図に表したように中子120がハウジング102内をその移動ストロークの右端または右端近傍まで動くと、制御手段の制御によって、弁体142、144が左側に移動する。すると、中子120の右側の導入口134は閉じられ、左側の導入口132が開かれる。この状態においては、入水口112から供給された湯水は矢印Cで表したように圧力室116から導入口132を介して中子120の中子内流路124に流入し、矢印Dで表したように吐水筒体180から流出する。一方、入水口114から供給された湯水は流出経路がなく、圧力室118の圧力は圧力室116の圧力に比べて高くなる。その結果として、中子120は、図5及び図1に矢印Mで表したように左方向に動く。
【0022】
中子120が左側に動き続け、図4に表したように、ハウジング102の左端または左端近傍に至ると、制御手段の制御によって、弁体142、144が右側に移動する。すると、図1に関して前述したように、中子120の左側の導入口132が閉じて右側の導入口134が開く。その結果として、圧力室116の圧力が圧力室118に比べて高くなり中子120は矢印Mで表したように右側に動く。この後、図1乃至図4に関して前述した動作を繰り返すことにより、中子120は、ハウジング102の中を左右に反復して動き続ける。
【0023】
以下、本実施形態のシャワー装置の駆動部100の構造について、具体例を参照しつつさらに詳細に説明する。 図6は、本具体例の駆動部100の斜視図であり、図7は、その斜視切断図、図8は、断面図、図9は、図8のA-A線断面図である。 本具体例の駆動部100は、ハウジング本体103とハウジング蓋104により形成されるハウジング102から吐水筒体180が突出した例を有する。吐水筒体180は、内部に吐水流路182を有する中空構造となっており、先端にて開口している。なお、吐水筒体180は、必ずしも円柱状である必要はなく、角柱状や偏平形状など、各種の形状を与えることができる。
【0024】
ハウジング本体103に設けられた入水口112、114に湯水を導入すると、左右に突出した吐水筒体180が矢印Mの方向に往復直線運動をする。
【0025】
その内部構造について説明すると、図7乃至図9に表したように、ハウジング本体103及びハウジング蓋104により形成されるハウジング102内部の筒状の空間に、中子本体121と中子蓋122とからなる中子120が移動可能に収容されている。中子120は、ハウジング102から突出する吐水筒体180に連結され、ハウジング102内部の筒状の空間を第1の圧力室116と第2の圧力室118とに分割してピストンのように動く。これら圧力室116、118のそれぞれには、入水口112、114からそれぞれ湯水が導入される。中子120とハウジング102の内壁との摺動部には、液密を維持しつつ摺動を円滑にするためのシール126が設けられている。また、吐水筒体180とハウジング102との摺動部にも、同様の目的でシール184が設けられている。これらシール126、184の材料は、液密を維持しつつ摺動を円滑にするものであり、例えば、テフロン(登録商標)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPOM(ポリアセタール)などを用いることができる。なお、ここでいう「液密」とは、左右の圧力室に圧力差を生じさせるに足る状態を確保できればよい。
【0026】
次に、中子120の構造について説明する。 中子本体121に中子蓋122を組合せることにより中子内流路124が形成され、この中子内流路124は、吐水筒体180に設けられた吐水流路182に連通している。中子本体121及び中子蓋122には、中子内流路124と圧力室116、118とを連通させる導入口132、134が設けられている。
【0027】
そして、本具体例においては、制御手段として板ばね160とスライドバー146、148とが中子120に設けられている。スライドバー146、148は、主弁と共に、中子内流路124を横断するように設けられている。
【0028】
図10は、これら主弁及びスライドバーを表す斜視図である。 左右の主弁142、144は連結棒149により連結され、中子本体121及び中子蓋122に設けられた導入口132、134を貫通して左右に移動可能に設置されている。つまり、弁体としての主弁142、144は、中子120に対して、所定のストロークで左右に移動可能に設置されている。主弁142、144にはリブ143が形成されており、主弁142、144が導入口132、134に対して同軸に移動するように構成されている。主弁142、144がそれぞれ中子120から離れる方向に移動すると、これらリブ143の間に設けられている溝部145が導入口132、134の開口部となり湯水の流路を形成する。そして、これら主弁142、144を同軸状に貫通するスライドバー146、148が、やはり左右に移動可能に設置されている。つまり、スライドバー146、148は、主弁142、144の動作ストロークよりも長いストロークで左右に移動可能に設置されている。
【0029】
図8乃至図9に例示したように、主弁146が中子120から離れる方向に移動すると導入口132が開かれる。一方、これとは逆に、主弁144が中子120から離れる方向に移動すると導入口134が開かれる。 これら導入口132、134は、いずれも中子内流路124に連通している。つまり、導入口132は、ハウジング内の圧力室116と中子内流路124とを連通させ、導入口134は、圧力室118と中子内流路124とを連通させる。
【0030】
そして、これら導入口132、134の開度を変化させる主弁142、144の動作は、同軸に設置されたスライドバー146、148により決定される。すなわち、図9に表したように、左右のスライドバー146、148は圧縮された板ばね160をはさんで連結され、板ばね160の湾曲方向に応じて右端あるいは左端に向けた付勢力を受ける。 尚、板ばね160は、その両端が中子120に支持されており、スライドバー146、148は、板ばね160を介して中子120に対して相対的に移動する。主弁142、144は、スライドバー146、148からこの付勢力を受けて、導入口132、134を全開状態あるいは全閉状態の択一的な状態にする。すなわち、スライドバー146、148と板ばね160が制御手段として作用し、弁体である主弁142、144を制御する。
【0031】
以下、本具体例の駆動部の動作について説明する。 図11は、本具体例の駆動部の往復動作を表す模式図である。すなわち、図11(a)は、スライドバー146、148が板ばね160の作用により向かって右側に向けて付勢された状態を表す。この時、主弁142、144もスライドバー146により右側に向けて付勢されるので、導入口132は閉じ、導入口134が開いた状態が形成される。
【0032】
この状態で入水口112、114にほぼ同圧に湯水を供給すると、矢印Bで表したように入水口114から圧力室118に導入された湯水は、矢印Cで表したように導入口134から中子内流路124に流入し、吐水流路182を介して矢印Dで表したように流出する。 これに対して、矢印Aで表したように入水口112から圧力室116に導入された湯水は、導入口132が閉じているために流出経路がなく、圧力室116の圧力は圧力室118の圧力に比べて高くなる。つまり、導入口132、134の開度に差を設けることにより流路抵抗に差が生じ圧力差が生ずる。その結果として、中子120は矢印Mの方向に押されて移動する。
【0033】
なお、中子120が矢印Mの方向に移動すると、圧力室116の容積が増大し、その分だけ圧力室118の容積が縮小する。このため、矢印Aの経路による圧力室116への湯水の流入量の分、圧力室118内の湯水も押し出され、流路182から流出する湯水の吐水量に含まれることとなる。
【0034】
図11(a)に表した状態から中子120が矢印Mの方向にさらに移動を続け、スライドバー148がハウジング102の内壁に当接し、中子に対して押されると、板ばね160の湾曲方向が反転し、図11(b)に表したように、スライドバー146、148は、向かって左側に向けて付勢される。すると、スライドバー148が主弁144を押すことにより、主弁142、144も左側に移動する。すなわち、導入口132が開き、導入口134が閉じる。 図11(b)に表した状態においては、矢印Aで表したように入水口112から圧力室116に導入された湯水は、矢印Cで表したように、導入口132から中子内流路124に流入し、吐水流路182を介して矢印Dで表したように流出する。これに対して、矢印Bで表したように、入水口114から圧力室118に導入された湯水は、導入口134が閉じているために流出経路がなく、圧力室118の圧力は圧力室116の圧力に比べて高くなる。その結果として、圧力室116、118に圧力差が生じ、中子120は矢印Mで表したように左側に向けて移動を開始する。
【0035】
中子120が移動を続けると、図11(c)に表したように、スライドバー146がハウジング102の内壁に当接する位置まで移動する。この状態からさらに中子120が移動し、スライドバー146が中子120に対して押されることにより、板ばね160の湾曲方向が反転して、右側に付勢される。すると、図11(a)に表した状態と同様に、導入口132が閉じて導入口134が開いた状態となり、中子120は右側に向けて移動を開始する。
【0036】
以上説明したように、本具体例によれば、中子120に弁体としての主弁142、144と、スライドバー146、148及び板ばね160からなる制御手段を設けることにより、中子120の移動に応じて導入口132、134の開度差の大小関係を適宜逆転させ、中子120を左右に反復的に動作させることができる。本具体例における中子120の往復運動のストロークは、ハウジング102の内部空間の長さと、中子120の厚み(幅)と、により適宜設定できる。
【0037】
次に、本具体例における制御手段の作用についてさらに詳しく説明する。図12は、本実施例における制御手段の動作を説明するための模式図である。 すなわち、図12(a)は、板ばね160が向かって右側に湾曲してスライドバー146、148をこの方向に付勢している状態を表す。この時、主弁142により導入口132は閉じ、主弁144により導入口134は開いた状態とされる。 さて、この状態で中子120が向かって右側に移動していくと、同図(a)に表したようにハウジング102の内壁にスライドバー148が当接する。中子120には圧力差が働いているため、スライドバー148をハウジング内壁に当接した状態で、中子120はさらに右に移動し、図12(b)に表した状態になる。すなわち、板ばね160の付勢力に打ち勝って中子120とスライドバー148との相対位置を変化させ、中子120に対してスライドバー148が押される。この結果、板ばね160も左側に押されて変形し、同図に例示したような略S字状の状態となる。このとき、主弁142、144には中子120と同様に圧力差が働いており、導入口132、134の開閉状態を変化させない。
【0038】
この後、中子120がさらに移動することにより、中子120に対してスライドバー148がさらに押されると、図12(c)に表したように、板ばね160の湾曲方向が左側に反転を開始し、スライドバー146、148を左側に付勢する。
【0039】
すると、図12(d)に表したように、板ばね160の付勢力によって主弁142、144が左側に移動し、導入口132が全開となり導入口134が全閉の状態となる。
【0040】
以上説明したように、本具体例においては、圧縮した板ばね160の湾曲方向をスライドバー146、148により適宜反転させ、その付勢力を利用して主弁142、144を動作させることにより導入口132、134を全開及び全閉のいずれかの状態に択一的に制御する。つまり、板ばね160の付勢力を利用することで、中子120の反転のために左右の導入口132、134の開度差を確実に形成している。
【0041】
スライドバー146、148を介して主弁142、144を制御する本具体例の機構は、本実施例の吐水装置の円滑な動作に対して極めて重要な役割を有する。すなわち、圧縮された板ばね160は、右側あるいは左側に湾曲した状態が安定状態であるが、図12(b)に表したようにこれら安定状態の中間付近において、準安定な中立状態となる場合がある。つまり、この状態において、板ばね160には、左あるいは右への付勢力があまり発生しない。従って、この状態において、仮に導入口132、134の開度がほぼ同一の状態となると、中子の両側の導入口132、134から湯水が流入するために圧力差が無くなり、中子120の移動が停止してしまう。つまり、主弁142、144の動作開始のタイミングが板ばね160の反転のタイミングよりも早いと、中子120の動作が停止してしまうことがある。
【0042】
これに対して、本具体例によれば、スライドバー146、148を設け、そのストロークを適宜調整することにより、図12(b)のような準安定な中立状態においては、主弁142、144がまだ移動せず、中子120に圧力がかかって動き続ける状態を維持できる。そして、この中立状態を越えて板ばね160が反転を開始した時に主弁142、144が移動を始めるようにすることができる。つまり、主弁142、142の動作開始のタイミングを、板ばね160の反転のタイミングに同期させることができる。
【0043】
言い換えれば、中子120を移動させるに足る開度差がなくなる前に板ばね160を反転させ、その反転力(付勢力)によりスライドバー146、148を介して主弁142、144を移動させ、導入口132、134の開度差を、中子120を逆方向に移動させるに足る開度差に逆転させることができる。
【0044】
このようにすれば、板ばね160が中立状態の時に導入口132、134の開度がほぼ等しい状態となり中子120が停止してしまう、という問題を解消して、円滑な反復運動を実現できる。
【0045】
また、このようにすると、中子120がその移動ストロークの中間付近などに停止している状態からシャワー散水を開始させるような場合においても、シャワー散水開始時に板ばね160により主弁142、144を制御して導入口132、134のいずれかが択一的に開かれた状態にあり、中子120の両側に圧力差を形成させて安定した初期動作を開始させることができる。つまり、導入口132の開度よりも導入口134の開度が大なる状態と、導入口134の開度よりも導入口132の開度が大なる状態と、を択一的に保持可能とすることができる。
【0046】
以上説明したように、本具体例においては、中子120の移動方向と、主弁142、144の可動方向、スライドバー146、148の可動方向、板ばね160の付勢方向を略同一とすることにより、力の働き方に無駄がなく、受圧面積の大きな中子の移動力を有効に活用でき、円滑かつ安定した動作が可能となる。つまり、中子120の移動動作と開度制御動作とを連動させることにより、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させる制御動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0047】
なお、図6乃至図12に表した具体例の場合、中子120の反転に際して、スライドバー146、148をハウジング102の内壁に当接させているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スライドバー146、148に磁石を設け、一方、ハウジング102の内壁にも磁石を設け、これらの間に作用する反発力を利用してスライドバー146、148をハウジング102に対して相対的に停止させることも可能である。つまりこの場合には、図12(a)乃至(c)に対応する状態において、スライドバー146、148がハウジング102の内壁に当接せず、磁石(図示せず)の反発力によりハウジング102の内壁から所定の距離だけ離れた状態にあることとなる。このようにすれば、非接触で中子120の反転が可能となる。
【0048】
本実施形態の駆動部100の往復直線動作において得られる推力は、中子120に負荷される湯水の圧力と中子の受圧面積との積により決定される。従って、中子120の受圧面積を増加させれば、それに応じた大きな推力を得ることが可能となる。
【0049】
また、図7乃至図9においては、ハウジング内に設けられた略円筒状の空間に円形の中子120を収容した具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。例えば、ハウジング120の内部空間は、角柱状でも偏平柱状でもよく、中子120もこれら形状に合わせて各種の形状とすることができる。
【0050】
また、吐水筒体180の外周形状も円形である必要はなく、多角形状や偏平形状であってもよい。またさらに、吐水筒体180は中子120の中心に設ける必要はなく、中子120の中心から偏心させて設けてもよい。このようにすれば、中子120の小型化が容易であり、駆動部100を小型化できる。
【0051】
なお、本具体例の如くハウジング120の内部空間を円柱状とし、吐水筒体180を円筒状の中子120の中心に設けた場合には、吐水筒体180を回転できる。このようにすれば、中子120の往復直線運動によって、シャワー散水方向を変化させることも可能である。
【0052】
以上説明したように、中子120を動かすためには、導入口132、134の開度に差を設けて移動に必要な圧力差を生じさせればよい。また同様に、中子120の移動方向を反転させる際にも、制御手段によって、導入口132、134の開度の大小関係を逆転させればよい。例えば、導入口132及び134の開度の比率を制御手段によって、70:30から30:70に変化させることにより、反転動作が可能である。またさらに、制御手段によって、開度を100:0から0:100に変化させれば、最も確実且つ安定的反転動作が可能となる。
【0053】
本実施形態の駆動部100によれば、ハウジング102に収容した中子に弁体142、144と制御手段を設け、両側の圧力室に湯水を供給することにより、中子120を往復運動させることができる。このとき、中子120の移動方向と弁体142、144の可動方向とを略同一とすることにより、中子120の移動動作と開度制御動作とを連動させ、中子120の反転のための導入口132、134の開度の大小関係を逆転させるという弁体の反転動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0054】
後に詳述するように、本実施形態における吐水筒体180の内部の吐水流路182は、中子120内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。また、例えば図39〜図41に関して後述するように、中子120の往復直線運動は直線運動を回転運動に変換する機構458(動力伝達部)を介することにより、シャワー部410の首振り運動を実現することができる。
【0055】
図13は、駆動部100の変型例を表す模式断面図である。 同図については、図6乃至図9に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。 本変型例の駆動部100aにおいては、吐水筒体180が中子120の両側に設けられている。すなわち、吐水筒体180は、ハウジング102の両側から突出しており、両端から散水を得たい場合に特に便利である。このような形態においても、吐水筒体180の内部の吐水流路182は、中子120内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。また、例えば図21に関して後述するように、中子120の往復直線運動は直線運動を回転運動に変換する機構(動力伝達部)を介することにより、シャワー部71a、71bの首振り運動M2を実現している。
【0056】
上述した駆動部の第1の実施形態では、中子が往復直線運動を行うものを説明した。次に、中子が往復回動運動を行う駆動部の第2の実施形態について説明する。
【0057】
図14乃至図18は、本実施形態の駆動部200の要部を表す模式図である。すなわち、図14は、本実施例の駆動部200の斜視図であり、図15は、その斜視切断図、図16は、底面側から眺めた斜視図及び切断図、図17は、縦断面図、図18は、図17のB-B線断面図である。
【0058】
本実施形態の駆動部200は、ハウジング本体203とハウジング蓋204、205により形成されるハウジング202から一方に吐水筒体280が突出した例を有する。吐水筒体280は、内部に吐水流路282を有する中空構造となっており、先端にて開口している。ハウジング202に設けられた入水口212、214に湯水を導入すると、吐水筒体280が矢印Rの方向に往復回動運動をする。
【0059】
その内部構造について説明すると、図15乃至図18に表したように、ハウジング本体203及びハウジング蓋204、205により形成されるハウジング202内部の扇状の空間に、中子本体221と中子蓋222とからなる中子220が中子回動軸902を中心軸として回動可能に収容されている。中子220は、ハウジング蓋204を貫通する吐水筒体280と連結され、ハウジング202内部の扇状の空間を第1の圧力室216と第2の圧力室218に分割して回動する。これら圧力室216、218のそれぞれには、入水口212、214からそれぞれ湯水が導入される。中子220とハウジング202の内壁との摺動部には、液密を維持しつつ摺動を円滑にするためのシール227が設けられている。また、吐水筒体280とハウジング202との摺動部にも、同様の目的でシール226が設けられている。これらシール227、226の材料も、液密を維持しつつ摺動を円滑にするものであり、例えば、テフロン(登録商標)、NBR(ニトリルゴム)、EPDM(エチレンプロピレンゴム)やPOM(ポリアセタール)などを用いることができる。なお、ここでいう「液密」とは、左右の圧力室に圧力差を生じさせるに足る状態を確保できればよい。
【0060】
次に、中子220の構造について説明する。 本実施形態においても、中子220は、前述した駆動部100と同様の弁体と制御手段とを備える。中子220の中には中子内流路224が形成され、この中子内流路224は、吐水筒体280に設けられた吐水流路282に連通している。中子220には、中子内流路224と圧力室216、218とを連通させる導入口(排水口)232、234が設けられている。そして、この中子内流路224を横断するように、主弁242、244、スライドバー246、248が設けられている。これら主弁及びスライドバーの形状は、図10に関して前述した如くである。また、これら要素からなる弁体と制御手段の動作についても、駆動部100に関して前述したものと同様である。
【0061】
すなわち、板ばね260は、その両端が中子220に支持されており、スライドバー246、248は、板ばね260を介して中子220に対して相対的に移動する。そして、導入口232、234の開度を変化させる主弁242、244の動作は、同軸に設置されたスライドバー246、248により決定される。板ばね260の湾曲方向に応じてスライドバー246、248は付勢力を受け、結果、主弁242、244は、スライドバー246、248からこの付勢力を受けて、導入口232、234を全開状態あるいは全閉状態の択一的な状態に制御する。
【0062】
以下、駆動部200の動作について説明する。 図19は、駆動部200の動作を説明するための模式図である。
【0063】
まず、図19(a)は、スライドバー246、248が板ばね260の作用により向かって左側に向けて付勢された状態を表す。この時、主弁242、244もスライドバー246により左側に向けて付勢されるので、導入口232は閉じ、導入口234が開いた状態が形成される。
【0064】
この状態で入水口212、214にほぼ同圧に湯水を供給すると、矢印Aで表したように入水口214から圧力室218に導入された湯水は、矢印Cで表したように導入口234から中子内流路224に流入し、矢印Dで表したように吐水流路282を介して流出する。 これに対して、矢印Bで表したように入水口212から圧力室216に導入された湯水は、導入口232が閉じているために流出経路がなく、圧力室216の圧力は圧力室218の圧力より高くなる。つまり、導入口232、234の開度に差を設けることにより流路抵抗に差が生じ圧力差が生ずる。その結果として、中子220は矢印Rの方向に押されて回動する。
【0065】
尚、中子220が矢印Rの方向に回動すると、圧力室216の容積が増大し、その分だけ圧力室218の容積が縮小する。このため、矢印Bの経路による圧力室216への湯水の流入量の分、圧力室218内の湯水も押し出され、流路282から流出する湯水の吐水量に含まれることとなる。
【0066】
そしてさらに中子220が回動を続け、スライドバー248がハウジング202の内壁に当接し、中子220に対して押されると、板ばね260の湾曲方向が反転し、図19(b)に表したように、スライドバー246、248は、反対側に向けて付勢される。すると、スライドバー248が主弁244を押すことにより、主弁242、244も右側(向かって時計回り方向)に移動する。すなわち、導入口232が開き、導入口234が閉じる。図19(b)に表した状態においては、矢印Bで表したように入水口212から圧力室216に導入された湯水は、矢印Cで表したように、導入口232から中子内流路224に流入し、矢印Dで表したように吐水流路282を介して流出する。これに対して、矢印Aで表したように、入水口214から圧力室218に導入された湯水は、導入口234が閉じているために流出経路がなく、圧力室218の圧力は圧力室216の圧力より高くなる。こうして、圧力室216、218に圧力差が生じ、中子220は矢印Rで表したように右側に向けて回動を開始する。
【0067】
中子220がさらに回動すると、図19(c)に表したように、スライドバー246がハウジング202の内壁に当接する位置まで移動する。この状態からさらに中子220が移動し、スライドバー246が中子220に対して押されることにより、板ばね260の湾曲方向が反転して、反対側に付勢される。すると、図19(a)に表した状態と同様に、導入口232が閉じて導入口234が開いた状態となり、中子220は左側に向けて回動を開始する。
【0068】
以上説明したように、駆動部200においても、中子220に主弁242、244からなる弁体と、板ばね260とスライドバー246、248からなる制御手段とを設けることにより、中子220の回動に応じて導入口の開度差の大小関係を適宜逆転させ、中子220を左右に反復的に動作させることができる。尚、駆動部200においても、図12に関して前述したように、主弁242、242の反転動作開始のタイミングを、板ばね260の反転のタイミングに同期させることができる。このようにすれば、板ばね260が中立状態の時に主弁242、244の開度がほぼ等しい状態となり中子220が停止してしまう、という問題を解消して、円滑な反復運動を実現できる。
【0069】
言い換えれば、中子220を移動させるに足る開度差がなくなる前に板ばね260を反転させ、その反転力(付勢力)によりスライドバー246、248を介して主弁242、244を移動させ、導入口232、234の開度差を、中子220を逆方向に移動させるに足る開度差に逆転させることができる。
【0070】
駆動部200においても、中子220の回動方向と、主弁242、244の可動方向、スライドバー246、248の可動方向、板ばね260の付勢方向を略同一とすることにより、力の働き方に無駄がなく、受圧面積の大きな中子の移動力を有効に活用でき、円滑かつ安定した動作が可能となる。つまり、中子220がハウジング202に内壁に接近した時、中子220の動く方向と、主弁242、244の可動方向、板ばね260の付勢方向、スライドバー246、248の可動方向とを略同一とすることにより、中子220の回動動作と開度制御動作とを連動させる、中子220の反転のための導入口232、234の開度の大小関係の反転動作を確実且つ容易なものとし、シンプルでコンパクトな弁体と制御手段を実現している。
【0071】
また、このようにすると、中子220がその回動ストロークの中間付近などに停止している状態からシャワー散水を開始させるような場合においても、シャワー散水開始時に板ばね260により主弁242、244を制御して導入口232、234のいずれかが択一的に開かれた状態にあり、中子220の両側に圧力差を形成させて安定した初期動作を開始させることができる。つまり、導入口232の開度よりも導入口234の開度が大なる状態と、導入口234の開度よりも導入口232の開度が大なる状態と、を択一的に保持可能とすることができる。
【0072】
尚、駆動部200における中子220の回動運動のストローク(回動角度)は、ハウジング202の内部の扇状空間の開き角度により適宜設定できる。
【0073】
また、駆動部200における回動動作により得られる推力は、中子220に付加される湯水の圧力と中子の受圧面積との積により決定される。従って、中子220の受圧面積を増加させれば、それに応じた大きな推力を得ることが可能となる。
【0074】
本実施形態においても、吐水筒体280の内部の吐水流路282は、中子220内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。また、例えば図29〜図31に関して後述するように、前記中子220の往復回動運動を動力伝達部を介してシャワー部410に伝達することにより、前記シャワー部410の首振り運動を実現している。
【0075】
上述した駆動部100および駆動部200を用いることにより、本発明のシャワー装置は、電気などの機械動力を必要とせず、湯水の供給圧力のみで中子を円滑な往復直線運動及び往復回動運動を可能としており、さらにシャワー部が首振り運動した状態でこの湯水を散水させることで、無駄水のないシャワー装置を実現している。
【0076】
またさらに、本発明のシャワー装置は、往復運動を可能とする弁体や制御手段が中子に付属して設けられているので、例えば外付けの4方弁などが不要となり、シンプルな構成で円滑な往復反転運動を実現できる。その結果として、装置全体の小型化が容易となり、浴室空間の美観、レイアウトの点で有利である。
【0077】
また、往復運動する吐水筒体にシャワー部を接続し、かつ吐水筒体の内部から湯水を送り出す構成となっているため、流路がシンプルになり、シャワー装置内での流路の圧力損失を抑えることができ、シャワー散水量やシャワー圧を確保できる点でも有利である。
【0078】
また、弁体や制御手段がハウジングの中に内蔵されている構造であるため、外乱に強く円滑な動作を実現できるとともに、シャワー装置の組み立て性に優れる。その結果として、信頼性の高い、安定したシャワー散水動作を実現できている。
【0079】
また、駆動部への湯水の供給に関しても、同一の管路から分岐して2つの入水口に接続するだけでよく、施工性に優れる。尚、入水口に関して左右の圧力室に対応した入水口がそれぞれ形成されていればよく、例えばハウジング内で分岐した流路を形成しそれぞれの入水口に接続されるようにし、ハウジングへの入水接続口は一つとすることで配管を更に簡素化することもできる。
【0080】
次に、シャワー利用時における利便性を向上させるための、シャワー部の首振り運動を停止する方法ついて説明する。ここではシャワー部から湯水を吐水させながら駆動部の中子の動きを停止させる具体例について説明する。
図20は、本具体例に係る駆動部200を示す断面図である。
本具体例の場合、中子220の左右に形成される圧力室216、218を接続するバイパス流路340が設けられている。そして、このバイパス流路340に開閉弁342が設けられている。この開閉弁342を操作することにより、中子220を停止させたり速度を調節できる。
【0081】
すなわち、開閉弁342を開いて左右の圧力室216、218をバイパス流路340により接続すると、体積が膨らむはずの圧力室から体積が減るはずの圧力室に向けて湯水がバイパスされる。例えば、図20に矢印Rで表したように、中子220が向かって左側に動いている時に開閉弁342を開くと、入水口212から圧力室216に供給された湯水がバイパス流路340を介して圧力室218にバイパスされる。その結果として、中子220の左右で十分な圧力差が生じず、中子220の回動動作が停止する。この時、導入口234は開いたままであるので、吐水は続けられ吐水流量も殆ど変化しない。すなわち、吐水を維持したまま、中子220を任意の位置に停止させることができる。
【0082】
一方、開閉弁342の開度を調節すると、中子220の回動速度を調節できる。つまり、バイパス流路340を介した水流のバイパス量が小さい場合には、中子220の速度は大きくなり、バイパス流路340を介した水流のバイパス量が大きい場合には、中子220の速度は小さくなる。従って、開閉弁342の開度を調節することにより、中子220の速度を調節できる。
【0083】
本具体例の場合、中子220の回動方向によらずに、一つの開閉弁342で中子220の停止や速度制御ができる。また、左右の入水口212、214に至る水路の流路抵抗は変化しないので、入水経路における圧損は変化せず、通常動作時も、停止時も、減速時も、吐水総流量を常にほぼ一定に維持できる。
【0084】
なお、バイパス流路340は、ハウジング202の内部空間の両端部において圧力室216、218にそれぞれ連通していることが望ましい。つまり、中子220が左右のストローク端にある時でも、バイパス流路340が塞がれないようにするために、バイパス流路340の開口は、できるだけハウジング202の端に寄せて形成することが望ましい。
【0085】
以上説明した具体例の停止方法は、図1〜図13に関して前述した駆動部100についても同様に適用できる。
【0086】
以上説明したように、回動速度(停止含む)を調節可能としたことで、使用者はシャワー部から湯水を散水させてシャワーを浴びている際、湯水の散水を維持したまま任意の角度でシャワー部の首振り運動を停止させることが可能となるため、使い勝手が良い。
以上、駆動部100および駆動部200について説明した。
【0087】
次に、上述した駆動部100(中子が往復直線運動する実施形態)を用いた際のシャワー装置の第1の実施形態について詳細に説明する。
【0088】
図21は、本実施形態に係るシャワー装置2を示す模式図である。本実施形態においては、シャワー装置2は、図13を参照して説明した駆動部100aを有している。そして、駆動部100aのハウジングの両端部からそれぞれ吐水筒体が突出した構成を有しており、吐水筒体にはシャワー部71a、71bが接続されている。シャワー装置2は、浴室などの壁面900に設置され、駆動部100aの吐水筒体は水平方向に往復運動可能に設置されている。
【0089】
駆動部100aの吐水筒体には吐水流路が設けられており、駆動部100aの内部に供給された湯水を吐水流路を通ってシャワー部71a、71bの内部へと湯水を送り、シャワー部71a、71bに設けられたシャワー散水口から湯水を散水させる。ここで、中子の往復直線運動は変換機構(図示しない)を介してシャワー部を首振り運動させる。こうして、駆動部100の働きにより、シャワー部71a、71bを矢印M2の方向に回転させることにより、シャワー部71a、71bから湯水を散水させながら、シャワー散水方向を周期的に変化させることが可能な、いわゆる首振り運動を行うことができる。
【0090】
なお、吐水筒体の内部の吐水流路は、中子内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。また、本実施形態における動力伝達部は、中子と接続された吐水筒体と変換機構とで構成されている。
【0091】
このようなシャワー散水を、使用者の肩などにあてると、シャワー散水方向が周期的に変化するので、いわゆる「打たせ湯」のマッサージ効果をより広範囲に効果的に作用させることができると共に、使用者が自ら身体を揺すって作用部位を変化させる必要がなく、使用感が向上する。また、噴霧状の吐水を広範囲にあてることにより、リラクゼーション効果を得ることも可能であり、使用感が向上する。
【0092】
ここで、本実施形態における「首振り運動」とは、上述したようなシャワー部の動きを意味する。すなわち、散水口を有するシャワー部に回動軸を有し、シャワー部がこの回動軸に対して往復回動運動を行うような動きである。このとき、シャワー部の散水口の開口方向と回動軸とは略垂直の関係にある。このようにすれば、シャワー部の回動動作によって広範囲の吐水を実現しつつ、シャワー部が存在可能な領域を少なくし、ほぼ一定にすることができるため、デザイン性を向上したシャワー装置を実現することができる。また、回動軸とシャワー部の散水口が近傍に配置されていることが好ましい。さらに、回動軸より散水口の方が、本シャワー装置を取り付けた状態において、前方側に配置されていることが好ましい。なお、本実施形態における回動軸は、シャワー部が上下方向に首振り運動するものであるため、床面に対して略平行に配置されている。
【0093】
次に、上述した駆動部200(中子が往復回動運動する実施形態)を用いた際のシャワー装置の第2の実施形態について詳細に説明する。
【0094】
図22は、本発明の第2の実施形態に係るシャワー装置3を示す模式図である。シャワー装置3は、浴室等の壁面900に設置され、駆動部200の吐水筒体にシャワー部81が接続されている。そして、シャワー部81の駆動部200側とは別の端部は、支持部82にて支えられている。
【0095】
駆動部200の吐水筒体には吐水流路が設けられており、駆動部200の内部に供給された湯水を吐水流路を通ってシャワー部81の内部へと湯水を送り、シャワー部81に設けられたシャワー散水口から湯水を散水させる。ここで、駆動部200の働きにより、吐水筒体が矢印Rで示すように往復回動運動を行い、その結果、シャワー部81も湯水を散水させながら往復回動運動、すなわち首振り運動を行うことができる。すなわち、シャワー散水方向を周期的に変化することができる。
【0096】
本実施形態のシャワー装置3は、シャワー部81が矢印Rで表したように往復回動運動をすることにより、コンパクトな形状にてシャワー散水を広範囲に散水させることができ、使用者の身体を広範囲に洗浄するとともに、使用者は手放しでシャワーを効率的に浴びることができる。また、反復的に変化するシャワーの刺激によるマッサージ効果やリラクゼーション効果も期待できる。また、このように回動動作にてシャワー散水方向を変化させることにより、往復運動によるシャワー部81が存在可能な領域を抑えることができ、浴室全体の美観、レイアウトなどのデザイン性に優れる。
【0097】
本実施形態においては、中子の回動運動をダイレクトにシャワー部の首振り運動に伝達できるため、シャワー装置をよりコンパクトにすることが可能となる。そして、周期的に変化させることが可能な、いわゆる首振り運動を行うことができる。
【0098】
なお、吐水筒体の内部の吐水流路は、中子内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。また、本実施形態における動力伝達部は、中子と接続された吐水筒体が該当する。
【0099】
ここで、本実施形態における「首振り運動」とは、上述したようなシャワー部の動きを表す。すなわち、散水口を有するシャワー部に回動軸を有し、シャワー部がこの回動軸に対して往復回動運動を行うような動きである。このとき、シャワー部の散水面と回動軸とは略平行(シャワー部の散水口の開口方向と回動軸とは略垂直)の関係にある。このようにすれば、シャワー部の回動動作によって広範囲の吐水を実現しつつ、シャワー部が存在可能な領域を少なくし、ほぼ一定にすることができるため、デザイン性を向上したシャワー装置を実現することができる。また、より好ましい形態としては、回動軸とシャワー部の散水口が近傍に配置されていることが好ましい。さらに、回動軸より散水口の方が、本シャワー装置を取り付けた状態において、前方側に配置されていることが好ましい。なお、本実施形態における回動軸は、シャワー部が上下方向に首振り運動するものであるため、床面に対して略平行に配置されている。
【0100】
次に、上述した駆動部200(中子が往復回動運動する実施形態)を用いた際のシャワー装置の第3の実施形態について詳細に説明する。
【0101】
図23は、本実施形態に係るシャワー装置4が設置されたシャワーブース950を表す模式図である。
また、図24は、本実施形態のシャワー装置4の外観を例示する模式図である。
【0102】
本実施形態のシャワー装置4は、フレーム400と、このフレームに支持されたシャワー部410とスイッチ420とを有する。フレーム400は、シャワーブース950や浴室などの壁面に埋設可能とされている。図23には、ボディシャワーとして用いる場合を例示したが、本発明はこれには限定されず、シャワーブース950や浴室などの天井にシャワー装置4を設置して、オーバーヘッドシャワーとして用いることもできる。
【0103】
シャワー部410は、矢印Rの方向に上下に首振り運動をする。図24は、シャワー部410がやや下方を向いた状態を表す。このようにシャワー部410が上下に首振り運動をするので、シャワー装置4の前に立った使用者は、手放しの状態で、身体の広い範囲にシャワーを浴びることができる。その結果として、使用者は効率的にシャワーを浴びることができるばかりでなく、身体に対してシャワー散水が作用する部位が周期的に変化することにより、心地よくマッサージ感が得られる。
【0104】
またさらに、本実施形態によれば、シャワーブースや浴室の壁面にシャワー装置4を埋め込むことができ、外観がすっきりとして見栄えがよいばかりでなく、狭いシャワーブースや浴室などにおいて、使用者に圧迫感を与えたり、身体にぶつかったりすることも防止できる。
【0105】
以下、本実施形態のシャワー装置4の構造について説明する。
図25は、本実施形態のシャワー装置4を斜め上方から眺めた斜視図である。
また、図26は、シャワー装置4の正面図である。
また、図27は、シャワー装置を斜め後方から眺めた斜視図である。
【0106】
なお、図25〜図27に表したシャワー装置4は、図23及び図24に表したものと少し外見が異なるが、内部構造は同一である。
【0107】
シャワー部410には、複数のシャワー散水口412が縦横2次元的に設けられ、広い範囲に散水することが可能とされている。フレーム400の裏側には、筐体401により保護された内部に支持枠408が設けられ、図14〜図20に関して前述した駆動部200が固定されている。駆動部200の一端には、中子220と連動せずフレーム400に対して固定された固定通水部430、432が設けられ、シャワー部410に湯水を導く。一方、駆動部200の他端には、図20に関して前述したバイパス流路340と開閉弁342が設けられている。開閉弁342は、フレーム400の正面に設けられたスイッチ420により開閉が可能とされている。またさらに、駆動部200の中子の往復回動運動は、ギア450に伝えられ、シャワー部410を首振り運動させる。そして、支持枠400や駆動部200などのシャワー装置のパーツを収納する筐体401がフレーム400の裏側に取り付けられている。なお、給水部404の一部は筐体401の外側に突出され、壁裏の給水配管に接続されている。この時、給水部404と筐体401との接続部はシール部材で覆われている。
【0108】
図28は、図26のA−A線断面図である。
また、図29〜図31は、いずれも図26のB−B線断面図である。
【0109】
シャワー部410の一端は、軸支部440により軸支され、他端は軸支部448により軸支されている。
図示しない給水源から供給された湯水は、給水部404に導入される。給水部404に導入された湯水は、図14〜図20に関して前述したように、駆動部200の入水口212、214(図19参照)に導入され、中子220を往復回動運動させる。そして、中子内流路224に導入された湯水は、固定通水部430、432と軸支部440に設けられた通水路434を介して、シャワー部410の中に設けられた通水路414に供給され、シャワー散水口412から散水される。往復回動運動をする中子220と固定通水部430との間には、Oリングなどのシール438が設けられている。また、首振り運動をするシャワー部410と固定された軸支部440との間にも、Oリングなどのシール444が設けられている。
【0110】
駆動部200の中子220の一端228は、ハウジング蓋205を貫通して突出し、ギア450に固定され、中子220の往復回動運動をギア450に伝達する。ギア450は、シャワー部410に固定されたギア452に往復回動運動を伝達する(動力伝達部)。その結果として、シャワー部410は往復首振り運動をする。図29は、シャワー部410が正面を向いた状態を表し、図30はシャワー部410が斜め上方を向いた状態を表し、図31はシャワー部410が斜め下方を向いた状態を表す。シャワー部410の可動範囲は、例えば、プラスマイナス30度程度とすることができる。このように、中子220の往復回動運動により、シャワー部410は上下に往復首振り運動を繰り返す。
【0111】
本実施形態によれば、駆動部200のサイズとギア450及び452のギア比を適切に選択することにより、シャワー部410の首振り運動の周期を数ヘルツ程度にすることができる。使用者の身体に広範囲に散水する際に、心地よいマッサージ感を与えるためには、シャワー部410の首振り運動の周期が速すぎても遅すぎてもよくない。周期が速すぎても遅すぎても、使用者は散水が当たる部位の変化を感ずることができないからである。
【0112】
使用者に対して、心地よいマッサージ感や揉みほぐしの効果を与えるためには、シャワー部410の首振り運動の周期は、0.1ヘルツ以上で5ヘルツ以下であることが望ましい。また、0.2ヘルツ以上で3ヘルツ以下とすると、さらに効果的である。また、0.3ヘルツ以上で1ヘルツ以下とすると、なおさらに多くの使用者に対して心地よさを与えることができる。本実施形態によれば、このような周期でシャワー部410を首振り運動させることができる。
【0113】
また、本実施形態においては、中子220の往復回動運動の回動軸と、シャワー部410の首振り運動の回動軸と、は異なる。つまり、中子220の往復回動運動の回動軸は、フレーム400から離れた奥側に設けられ、一方、シャワー部410の首振り運動の回動軸は、フレーム400の近傍に設けられている。このようにすれば、駆動部200を背後に収容しつつ、フレーム400の前面にシャワー部410を設けることができる。つまり、シャワー部410の周囲に突出部などがなく、見栄えがすっきりとして使い勝手もよいシャワー装置を提供できる。
【0114】
一方、本実施形態のシャワー装置においては、スイッチ420を操作することにより、シャワー部410の首振り運動を止めることができる。
すなわち、駆動部200にはバイパス流路340と開閉弁342が設けられ、スイッチ420によりバイパス流路340が開閉可能とされている。
【0115】
図32及び図33は、図28のC−C線断面図である。
開閉弁342の内部には、バイパス流路340の途中に介在した弁内流路344が設けられている。そして、遮蔽体424が弁内流路344を開閉可能に支持されている。図32は、スイッチ420が押され、遮蔽体424が進出して弁内流路344が遮断された状態を表す。この状態においては、バイパス流路340は遮断されているので、図20に関して前述したように、駆動部200の中子220は往復回動運動をし、シャワー部410は首振り運動をする。
【0116】
一方、図33に表したように、スイッチ420が押されていない状態においては、遮蔽体424は後退して弁内流路344が開通される。この状態においては、バイパス流路340は遮断されていないので、図20に関して前述したように、駆動部200の左右の圧力室216、218の圧力差はなくなり、中子220は停止する。つまり、シャワー部410は首振り運動をせずに停止する。また、この状態において、例えば使用者は、シャワー部410を上下いずれかの方向に押すことにより、その向きを自由に変えることもできる。つまり、シャワー部410の首振り運動を停止させた状態において、その散水方向を好みに応じて変えることができ、使い勝手がよい。
【0117】
なお、スイッチ420は、付勢手段やラッチ機構などを設けることにより、図32に表した状態と図33に表した状態とをそれぞれ保持可能とすることができる。つまり、スイッチ420を押す度に、図32に表した状態と図33に表した状態とが交互に得られ、使用者はスイッチ420から手を離してシャワー部410の首振り運動によるシャワーを楽しむことができる。
【0118】
図34〜図38は、バイパス流路340を開閉する機構の変型例を表す模式図である。 すなわち、図34は、フレーム400の裏面側から開閉機構の部分を眺めた模式図である。
また、図35及び図37は、それぞれ図34のA−A線断面図であり、図36及び図38は、それぞれ図34のB−B線断面図である。
【0119】
本変型例においても、バイパス流路340の途中に開閉弁342が設けられている。開閉弁342の内部には、弁内流路344が設けられ、回転式の遮蔽体426により開閉可能とされている。遮蔽体426は、ギア428により駆動される。スイッチ420には、ガイド470の中に摺動可能に保持されたワイヤ472が接続されている。ワイヤ472の先端は、ラック474に接続されている。スイッチ420を押すと、ワイヤ472が摺動し、ラック474がギア428を回転させる。ギア428の回転は遮蔽体426に伝えられ、弁内流路344が開閉される。
【0120】
図35及び図36に表したように、遮蔽体426が弁内流路344を遮蔽した状態においては、駆動部200の中子220は往復回動運動をし、シャワー部410は首振り運動をする。
一方、図37及び図38に表したように、遮蔽体426が弁内流路344を開放した状態においては、駆動部200の中子220は停止し、シャワー部410も停止する。このようにして、使用者の好みに応じて、シャワー部410を首振り運動させたり停止できる。
【0121】
なお、本変型例においても、スイッチ420にラッチ機構を設けたり、ワイヤ472に付勢手段などを設けることにより、図35及び図36に表した状態と図36及び図38に表した状態とをそれぞれ保持可能とすることができる。つまり、スイッチ420を押す度に、図35及び図36に表した状態と図37及び図38に表した状態とが交互に得られ、使用者はスイッチ420から手を離してシャワー部410の首振り運動によるシャワーを楽しむことができる。
【0122】
また、シャワー散水口を有するシャワー部とフレーム400の隙間(クリアランス)は、シャワー部410が首振り運動しても手が挟まらないような寸法で形成されている。より好ましくは、シャワー部410が首振り運動しても、その隙間が略一定となるように、フレームのシャワー部410を装着するための開口側面がシャワー部410の端部の回動奇跡と連なるような形状に形成されていることが好ましい。
【0123】
また、筐体401は、シャワー装置4のシャワー部410の側に開口を有するボックス状に形成することが好ましい。このようにすることで、湯水がシャワー部410とフレーム400の隙間(クリアランス)に流入しても、ボックス状に形成された筐体401により、湯水が壁の裏側に漏れないようになっている。より好ましくは、筐体401の底面がシャワー部410の側に下り勾配となっていて、筐体401内に流入した水が浴室または、シャワーブース内に排水できるようになっていることが好ましい。
【0124】
本実施形態においては、中子の回動運動をギア450、452を介してシャワー部410の首振り運動に伝達できるため、シャワー装置をよりコンパクトにすることが可能となる。そして、周期的に変化させることが可能な、いわゆる首振り運動を行うことができる。
【0125】
なお、吐水筒体の内部の吐水流路は、中子内から流入した湯水をシャワー部に導く通水路の役割を果たしている。
【0126】
本実施形態における「首振り運動」とは、上述したようなシャワー部の動きを表す。すなわち、散水口を有するシャワー部に回動軸を有し、シャワー部がこの回動軸に対して往復回動運動を行うような動きである。このとき、シャワー部の散水面と回動軸とは略平行(シャワー部の散水口の開口方向と回動軸とは略垂直)の関係にある。このようにすれば、シャワー部の回動動作によって広範囲の吐水を実現しつつ、シャワー部が存在可能な領域を少なくし、ほぼ一定にすることができるため、デザイン性を向上したシャワー装置を実現することができる。また、より好ましい形態としては、回動軸とシャワー部の散水口が近傍に配置されていることが好ましい。さらに、回動軸より散水口の方が、本シャワー装置を取り付けた状態において、前方側に配置されていることが好ましい。なお、本実施形態における回動軸は、シャワー部が上下方向に首振り運動するものであるため、床面に対して略平行に配置されている。
【0127】
次に、上述した駆動部100(中子が往復直線運動する実施形態)を用いた際のシャワー装置の第4の実施形態について詳細に説明する。
【0128】
図39〜図41は、本発明の第4の実施形態に係るシャワー装置5の一部を表す模式図である。
本実施形態のシャワー装置5も、第4実施形態のシャワー装置4と同様に、図示しないフレームに支持されたシャワー部410を備え、シャワーブースや浴室などの壁面に埋設することが可能とされている。シャワー部410は、軸支部454により軸支され、図40及び図41に表したように、上下に首振り可能とされている。そして、本実施形態においては、図1〜図13に関して前述した駆動部100が設けられている。駆動部100に設けられた中子120の一端128がハウジング102から突出し、リンク機構458に接続されている。そして、矢印Aにより表した往復直線運動が、シャワー部410の往復首振り運動に変換される(変換機構を有する動力伝達部)。なお、中子内流路124(図1参照)から放出された湯水は、第4実施形態に関して前述したような固定通水部や、またはフレキシブル通水管などを介してシャワー部410に供給される。
【0129】
本実施形態においても、駆動部100やリンク機構458のサイズなどを適切に選択することにより、シャワー部410の首振り運動の周期を数ヘルツ程度にすることができる。その結果として、使用者に対して、心地よいマッサージ感や揉みほぐしの効果を与えることができる。
【0130】
また、本実施形態においても、図32〜図38に関して前述したようなスイッチ420、バイパス流路340及び開閉弁342を設けることにより、使用者の好みに応じてシャワー部410の首振り運動をオン・オフできる。またさらに、シャワー部410を停止させた状態において、手などで押すことにより散水方向を変えることもできる。
【0131】
本実施形態における「首振り運動」とは、上述したようなシャワー部の動きを表す。すなわち、散水口を有するシャワー部に回動軸を有し、シャワー部がこの回動軸に対して往復回動運動を行うような動きである。このとき、シャワー部の散水面と回動軸とは略平行(シャワー部の散水口の開口方向と回動軸とは略垂直)の関係にある。このようにすれば、シャワー部の回動動作によって広範囲の吐水を実現しつつ、シャワー部が存在可能な領域を少なくし、ほぼ一定にすることができるため、デザイン性を向上したシャワー装置を実現することができる。また、より好ましい形態としては、回動軸とシャワー部の散水口が近傍に配置されていることが好ましい。さらに、回動軸より散水口の方が、本シャワー装置を取り付けた状態において、前方側に配置されていることが好ましい。なお、本実施形態における回動軸は、シャワー部が上下方向に首振り運動するものであるため、床面に対して略平行に配置されている。
【0132】
次に、上述した駆動部100(中子が往復直線運動する実施形態)または、駆動部200(中子が往復回動運動する実施形態)を用いた際のシャワー装置の第5の実施形態について詳細に説明する。
【0133】
図42は、本実施形態に係るシャワー装置6を表す模式図である。
本実施形態のシャワー装置6は、例えば、シャワーブースや浴室などの壁面900に取り付けて、ボディシャワーとして用いることができる。または、本実施形態のシャワー装置6は、シャワーブースや浴室などの天井に取り付けてオーバーヘッドシャワーとして用いることもできる。
ボディ500の内部には、図1〜図13に関して前述した駆動部100または図14〜図20に関して前述した駆動部200が設けられている。また、ボディ500の前面には、シャワー部410が設けられている。シャワー部410は、駆動部100(または200)の作用により、矢印R1で表したような上下方向または矢印R2で表したような左右方向に首振り運動が可能とされている。
【0134】
また、ボディ500は、支持部510に対して上下または左右に方向を調整可能とされている。つまり、シャワー装置5の設置場所や使用者の好みなどに応じて、散水方向を調節できる。またさらに、ボディ500を支持部510に対して、軸Cの回りに矢印Fで表したように手動で回転可能としてもよい。このようにすれば、シャワー部410の首振り方向を矢印Aで表した左右方向(回動軸が床面に対して略平行な状態)にも、矢印Bで表した上下方向(回動軸が床面に対して略垂直な状態)にも、またはこれらの中間的な斜め方向(回動軸が床面に対して平行でも垂直でもない状態)にも自在に調整できる。
【0135】
またさらに、本実施形態においても、図32〜図38に関して前述したようなスイッチ420、バイパス流路340及び開閉弁342を設けることにより、使用者の好みに応じてシャワー部410の首振り運動をオン・オフできる。またさらに、シャワー部410を停止させた状態において、手などで押すことにより散水方向を変えることもできる。
【0136】
本実施形態のシャワー装置6は、シャワーブースや浴室の壁面900に埋設する必要がないので、既存のシャワー接続口に接続を利用して容易に設置できる。その結果として、シャワー部410の自動的な首振り運動による心地よいマッサージ感や揉みほぐしの効果などを簡単に得ることができる。
【0137】
本実施形態における「首振り運動」とは、上述したようなシャワー部の動きを表す。すなわち、散水口を有するシャワー部に回動軸を有し、シャワー部がこの回動軸に対して往復回動運動を行うような動きである。このとき、シャワー部の散水面と回動軸とは略平行(シャワー部の散水口の開口方向と回動軸とは略垂直)の関係にある。このようにすれば、シャワー部の回動動作によって広範囲の吐水を実現しつつ、シャワー部が存在可能な領域を少なくし、ほぼ一定にすることができるため、デザイン性を向上したシャワー装置を実現することができる。
【0138】
以上本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。
【0139】
すなわち、本発明のシャワー装置を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。例えば、シャワー装置の駆動部及びシャワー部の外形や、構成部品の形状あるいは配置、ストロークや回動角度、などについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【0140】
また、上述の各実施形態において、駆動部によるシャワー部の往復回動速度又は往復直線運動速度を調整する速度調整手段を設けていても良い。このような速度調整手段は、例えば、吐水筒体に可変の摺動抵抗を与える摺動部材を設けることや、前述したように、2つの圧力室間にバイパス流路を設け、このバイパス流路の流量を制御する開閉弁を設けることによって、実現することができる。このような速度調整手段を設けることにより、駆動部に接続されたシャワー部からのシャワー散水をさせたまま、シャワー部の往復運動の速度を変化させたり、更にはシャワー部の往復運動を停止させることが可能となる。すなわち、使用者は、好みの散水方向でシャワー部を停止させてシャワー散水を浴びることが可能となり、例えば集中的に身体部位に作用させてマッサージ効果を得たり、集中的に頭部にシャワー散水を当てて洗髪したり、といった行為が可能となり、より使いやすいシャワー装置を提供できる。
また、上述の各実施形態において、駆動部によるシャワー部の往復回動運動の角度範囲又は往復直線運動のストロークを調整するストローク調整手段を設けていても良い。このようなストローク調整手段は、例えば、駆動部のハウジング部に、圧力室内に突出する可変終端を設け、中子のスライドバーに当接するようにすることで実現できる。このようなストローク調整手段を設けることにより、駆動部に接続されたシャワー部の回動範囲や移動範囲を調整でき、シャワー散水の方向の変化範囲を調整することができる。すなわち、使用者は、シャワー散水の作用する領域を好みに応じて調整することができ、また各個人の体格に合わせて変化範囲を調整することで無駄な領域にシャワー散水をすることがなく、使いやすく効率のよいシャワー装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明によれば、コンパクト且つシンプルな構造で、水力を利用してシャワー散水方向を反復的に変化させる自動往復動作を可能としたシャワー装置及びシャワーブースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】駆動部100の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図2】駆動部100の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図3】駆動部100の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図4】駆動部100の動作メカニズムを説明するための模式図である。
【図5】導入口132、134の開度に差を設けることの作用効果を説明するための模式図である。
【図6】駆動部100の斜視図である。
【図7】駆動部100の斜視切断図である。
【図8】駆動部100の断面図である。
【図9】図8のA-A線断面図である。
【図10】主弁及びスライドバーを表す斜視図である。
【図11】駆動部100の往復動作を表す模式図である。
【図12】制御手段の動作を説明するための模式図である。
【図13】駆動部100の変型例を表す模式断面図である。
【図14】駆動部200の斜視図である。
【図15】駆動部200の斜視切断図である。
【図16】駆動部200を底面側から眺めた斜視図及び切断図である。
【図17】駆動部200の縦断面図である。
【図18】図17のB-B線断面図である。
【図19】駆動部の動作を説明するための模式図である。
【図20】本発明の具体例に係る駆動部200を示す断面図である。
【図21】本発明の第1の実施形態に係るシャワー装置2を示す模式図である。
【図22】本発明の第2の実施形態に係るシャワー装置3を示す模式図である。
【図23】本発明の第3の実施形態に係るシャワー装置4が設置されたシャワーブース950を表す模式図である。
【図24】シャワー装置4の外観を例示する模式図である。
【図25】シャワー装置4を斜め上方から眺めた斜視図である。
【図26】シャワー装置4の正面図である。
【図27】シャワー装置4を斜め後方から眺めた斜視図である。
【図28】図26のA−A線断面図である。
【図29】図26のB−B線断面図である。
【図30】図26のB−B線断面図である。
【図31】図26のB−B線断面図である。
【図32】図28のC−C線断面図である。
【図33】図28のC−C線断面図である。
【図34】フレーム400の裏面側から開閉機構の部分を眺めた模式図である。
【図35】図34のA−A線断面図である。
【図36】図34のB−B線断面図である。
【図37】図34のA−A線断面図である。
【図38】図34のB−B線断面図である。
【図39】本発明の第4の実施形態に係るシャワー装置5の一部を表す模式図である。
【図40】本発明の第4の実施形態に係るシャワー装置5の一部を表す模式図である。
【図41】本発明の第4の実施形態に係るシャワー装置5の一部を表す模式図である。
【図42】本発明の第5の実施形態に係るシャワー装置6を表す模式図である。
【符号の説明】
【0143】
2、3、4、5、6 シャワー装置
71 シャワー部
81 シャワー部
82 支持部
100、100a、200 駆動部
102、202 ハウジング
103、203 ハウジング本体
104、204、205 ハウジング蓋
112、114、212、214 入水口
116、118、216、218 圧力室
120、220 中子
121、221 中子本体
122、222 中子蓋
124、224 中子内流路
126、184、226、227 シール
132、134、232、234 導入口(排水口)
142、144、242、244 主弁
146、148、246、248 スライドバー
149 連結棒
160、260 板ばね
180、280 吐水筒体
182、282 吐水流路
340 バイパス流路
342 開閉弁
344 弁内流路
400 フレーム
401 筐体
404 給水部
408 支持枠
410 シャワー部
412 シャワー散水口
414 通水路
420 スイッチ
424、426 遮蔽体
428 ギア
430 固定通水部
434 通水路
438 シール
440 軸支部
444 シール
448 軸支部
450、452 ギア
454 軸支部
458 リンク機構
470 ガイド
472 ワイヤ
474 ラック
500 ボディ
510 支持部
900 壁面
902 中子回動軸
950 シャワーブース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、前記ハウジング内に導入された湯水により往復運動が可能に設けられた中子と、を有する駆動部と、
首振り運動可能に設けられたシャワー部と、
前記ハウジング内に導入された前記湯水を前記シャワー部に導く通水路と、
前記中子の運動を前記シャワー部に伝達する動力伝達部と、
前記シャワー部の前記首振り運動を任意の角度で停止させることが可能な速度調整手段と、
を備え、
前記ハウジングに湯水を供給すると、前記シャワー部は前記首振り運動をしながら湯水を散水することが可能であり、
前記速度調整手段によって、前記シャワー部からの湯水の散水を維持しながら前記シャワー部の前記首振り運動を停止させた状態において、使用者が前記シャワー部の散水方向を変更可能であることを特徴とするシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2009−22781(P2009−22781A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247435(P2008−247435)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【分割の表示】特願2007−540444(P2007−540444)の分割
【原出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】