シャワー装置
【課題】均一な気泡を有する水を散水面から均一に吐出することができるシャワー装置を提供する。
【解決手段】水を通す給水路と、前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出す る複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置を提供する。
【解決手段】水を通す給水路と、前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出す る複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関し、より詳細には、気泡を含んだ水を吐出するシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、水に気泡を混入させ、シャワーの質感を向上させるとともに節水を図るシャワー装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、シャワーヘッドであって、ハウジングと、ジェットが出るディスクと、ディスクがジェットの出る数多くの孔を有することと、水をハウジングに入れるための水入口と、シャワーヘッドを経て流れる水に空気を混入させるための空気混入器とを含むことを特徴とする、シャワーヘッドが開示されている。また、特許文献2では、シャワー吐水に空気を混入させるようにしたシャワーノズルであって、湯水の吐出が止水コックの作動と同時に行うことができるシャワーノズルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表第2006−509629号
【特許文献2】特許第3747323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャワー吐水に空気を混入させたシャワー装置について、従来型では散水部内での圧力損失により気泡を含む水が散水面から均一に吐出されないことがあった。
このため、本発明は、均一な気泡を有する水を散水面から均一に吐出することができるシャワー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、水を通す給水路と、前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出す る複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一な気泡を有する水を散水面から均一に吐出することができるシャワー装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るシャワー装置1を例示する模式図である。
【図2】本実施形態と対比される比較例1に係るシャワー装置100を表す模式断面図である。
【図3】散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図4】比較例2に係るシャワー装置101を表す模式図である。
【図5】比較例2に係るシャワー装置101を用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図6】散水板4bからの距離と、散水孔4pから吐出された水の粒径と、の関係を表した模式グラフ図である。
【図7】本実施形態に係るシャワー装置1と同様の構成要素を有するラジアル型のシャワー装置1Bを表す模式図である。
【図8】図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bを用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図9】噴射口2aを例示する模式側面図である。
【図10】噴射口2aを例示する模式断面図である。
【図11】噴射口2aを例示する模式断面図である。
【図12】シャワー装置1の構成を例示する模式図である。
【図13】シャワー装置1の他の構成を例示する模式図である。
【図14】界面制御部5を例示する模式断面図である。
【図15】界面制御部5を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、 水を通す給水路と、
前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出する複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、絞り部から散水部に沿って吐水することにより、絞り部からの吐水の運動エネルギーを効率的に利用して、気泡水が散水部から流出し易くすることができる。また気液界面が生成される位置を制御できるため、空気混入量を最適に制御することができる。これによって、少ない流量でもシャワーの粒径及び流速を同時に大きくすることができるため、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記界面制御部と前記散水部とが成す最も狭い部分である開口部の断面積は、前記散水部の内部空間のうち、前記界面制御部の下流に位置する内部空間の断面積よりも小さいことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、界面制御部と散水孔の間に界面を生成することができる。これにより、界面より下流側の散水部内部には気泡水で満たされるため、界面より下流側に設けられたすべての散水孔から均一に気泡水を吐出することができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口の吐水方向の直線上に前記開口部が位置するよう、前記開口が配置されることを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、絞り部から吐出した水が持つ運動エネルギーの損失が少なく、かつ前記水と空気の接触面積が適切に確保することができるため、空気混入率を上げることができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する複数の開口を有することを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、散水部内において水を様々な態様で吐出することができる。複数の開口を有することで、絞り部からの吐水が整流され易くなるため、散水部内での気泡水も整流され易く、気泡の停滞・結合や渦の発生が少なく、散水部内で気泡水が均一に分散される。さらに、単一の開口の断面積と複数の開口の断面積とを同一にして、絞り部から吐出された水の表面積を比較すると、複数の開口から吐出された水は表面積が大きく、空気との接触面積が増えて、空気を引き込み易くなる。これにより、少ない流量でも空気を多く混入させることができ、効率的に気泡水を散水孔から吐出することができる。さらに、引き込む空気量が増加するということは、散水部から空気混入部への逆流を防ぐ力が増加するということであり、これらにより、シャワーの粒径及び流速を同時に大きくすることができるため、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0013】
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口は、前記開口部に対する吐水が均一となるように配置されたことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、吐出した水により引き込んだ空気が前記開口部に対して均一に流れ込むため、引き込んだ空気が界面を押す力も界面に対して均一となり、水の逆流をより効率良く防ぐことができるため、シャワーの流速をさらに大きくすることができ、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るシャワー装置1を例示する模式図である。図1(a)はその模式斜視断面図、図1(b)は(a)の模式斜視断面図の底面側から見たときの模式斜視図、図1(c)は(a)に表した断面構造を概念的に表した模式図である。
【0015】
シャワー装置1は、水を通す給水路Sと、給水路S(図1では、給水路Sの下流側の端部)に設けられ、水の流路断面積を減らして水を吐出する絞り部2と、絞り部2の下流側に設けられ、絞り部2から吐出された水に空気を混入する空気混入部3と、空気混入部3の下流側に設けられ、空気を含んだ水である空気含有水(気泡水)200を吐出する複数の散水孔4pを有する散水部4と、を備える。絞り部2は、開口(噴射口2a)を有し、水を噴射口2aから吐出する。空気混入部3は、開口3aを有し、絞り部2から吐出した水(矢印A)に開口3aから導入した空気を混入させる(矢印B)。散水部4は、複数の散水孔4pを有する散水板4bを有する。散水部4の内部空間の厚さWは、噴射口2aの径または幅に対して、上下(厚さWの方向)に1mm弱程度から数mm程度の差を有するように設定することができる。例えば、噴射口2aの径が1mm弱程度である場合、散水部4の内部空間の厚さWは、2〜3mm程度とすることができる。
【0016】
そして、絞り部2は、複数の散水孔4pが配された面(散水面4a)に沿って水を吐出する。
ここで、「散水面4aに沿って吐出する」とは、散水面4aの全部または一部の直上において散水面4aに沿って吐出することの他、散水面4aの全部または一部と離隔した領域において散水面4aと略平行に吐出することも含む。また、吐水の方向は散水面4aに対して厳密に平行である必要はなく、後に図10や図14に関して説明するように、散水面4aに対して傾斜したものも、本発明の範囲に包含される。
【0017】
給水路Sに水を供給し散水部4からシャワー流を吐水させている状態において、界面制御部5と散水部4の間に、気液が混ざる界面4sが形成される。ここで界面4sが形成される過程について、図1を用いて説明する。
噴射口2aから吐出した水流は大気中に開放された状態で、界面制御部5を通過し、散水部4に突入する。このとき、散水部4に設けられた散水孔4p面積は、散水部4の内部空間の断面積より小さいため、散水孔4pからの吐水流速は高められる。よって、散水部4の内部空間の水が持つ内圧は高められることになり、散水部4の内部空間に貯水された水は、より流路が大きく、圧損の少ない界面制御部5のほうへ逆流しようとする。一方、空気混入部において、噴射口2aから吐出した水の運動エネルギーによって引き込まれた空気が、界面制御部5と散水部4とが成す開口部に流入するため、界面制御部5と散水部4の間において、空気が散水部4の内部空間に貯水された水を押し付ける効果が発生する。以下、かかる効果を「シールド効果」と呼ぶこととする。
界面制御部5と散水部4の間において、散水部4の内圧によって散水部4から逆流しようとする水は、シールド効果により押さえつけられ、これらの力が釣り合う位置で界面4sが形成されることになる。すなわち界面制御部5を設けることによりシールド効果の大きさを制御することができ、界面制御部と散水孔の間に界面を形成することができる。また界面4sを境に、空気混入部3側は絞り部2からの水が大気中に開放された状態となっており、散水部4側は絞り部2からの水とそれによって引き込まれる空気とが混ざり、気泡水200が存在する状態となっている。すなわち、絞り部2からの水と、その水の運動エネルギーによって引き込まれる空気と、が界面4sに衝突することで、気液が混ざり気泡水200が形成されることになる。
【0018】
次に、本実施形態のシャワー装置における気泡水の生成作用について、図2〜図8を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態と対比される比較例1に係るシャワー装置100を表す模式断面図である。
図2に表したように、比較例1に係るシャワー装置100は、本実施形態に係るシャワー装置1と類似した構成要素を有するが、絞り部2から吐出された水は、散水面4aに沿って吐出されない。すなわち、給水路Sに導入され絞り部2から吐出された水は(矢印A)、まず散水面4aに対して垂直の方向に進み、空気混入部3において空気を取り込む(矢印B)。その後、斜面50にあたってその流れ方向が散水面4aに沿った方向に変化する。
【0019】
このような構成の場合、気泡水は斜面50に衝突して運動エネルギーを減少させる。このため、散水部4において気泡水の流速が適切に確保されないことがある。この結果、散水部4において下流側に向かうにつれ、気泡同士が結合して成長し、停滞する。これにより、気泡溜まりができ、気泡径が散水孔4pの径よりも大きい場合などに気泡水が散水孔4pから効率よく流出しないことがある。すなわち、散水部4の下流側においては、気泡を十分に含まない水が吐出される。
【0020】
図3は、散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。すなわち、これらの写真は、散水部4の散水孔4pから矢印の方向にシャワー流が吐出される状態を表す。
図3(a)は、気泡を含んだ水(気泡水200)が吐出されたときの吐水態様を表している。散水孔4pから吐出された水200は、粒状であり、それぞれの粒に気泡が混入していることが分かる。このように、気泡を混入させると、吐水後において気泡水200は粒状になりやすく、気泡を含まない吐水よりも大粒化される。このような粒は、空気のせん断力の他、気泡による作用によって生成し得ると考えられる。大粒化すると、シャワーが体表面に当たったときに良好な刺激や質感が得られる。さらに、空気を混入することにより、水の流量に空気の流量が加わるため、吐水後の粒の流速が高くなる。すなわち、空気を混入することで、少ない水量でも粒径が大きくなり、また流速も高くなることから粒の運動エネルギーが増加し、これらにより十分な「当たり感」が得られる。
【0021】
一方、図3(b)は、気泡を含まない水が吐出されたときの吐水態様を表している。気泡を含まない場合、吐水後において水は粒状になりにくく、連続した水流が空気のせん断力により粒化すると考えられる。この粒径は、散水孔4pの孔径に比例しており、孔径により粒径の大きさがほぼ予測できる。この粒径は、気泡を含んだ吐水に比べて小さくなることが分かっている。
この様に、気泡を含んだシャワー吐水に比べて粒径が小さくなるため、シャワーが体表面に当たったときの刺激感や質感に乏しく、十分な「当たり感」を得るためには、水量を大きくし、流速を高めて、運動エネルギーを増加しなくてはならない。
【0022】
比較例1に係るシャワー装置100では、特に散水部4の下流側の散水孔4pにおいて、気泡が含まれにくく、図3(b)に表した態様で水が吐出されやすくなる。このため、良好な質感が得られにくい。
これに対して、本実施形態によれば、図1に関して前述したように、絞り部2は、散水面4aに沿って水を吐出する。すなわち、絞り部2から吐出された水は、壁などに衝突することがなく、散水面4aに対して略平行に散水部4の内部空間を流れる。その結果として、散水部4の下流においても水200の流速の低下が抑制され、気泡を混入したまま散水孔4pから吐出される。つまり、本実施形態によれば、散水部4の上流側でも下流側でも、気泡を含有した水を吐出させるため、図3(a)に表したように大粒化した粒状の吐水を形成することができる。その結果として、少ない水量でも、十分な刺激や「当たり感」を得ることができる。
【0023】
以下、本実施形態と対比される他の比較例(比較例2)による実験結果について、図4〜図6を参照しつつ説明する。
図4は、比較例2に係るシャワー装置101を表す模式図である。図4(a)は模式斜視断面図、図4(b)は模式断面図、図4(c)は模式平面図である。
【0024】
図4に表したように、比較例2に係るシャワー装置101は、比較例1に係るシャワー装置100と同様の構成要素を有するが、絞り部2から放射状に水が吐出される形態を有する。以下、かかる形態を「ラジアル型」と呼ぶこととする。なお、比較例2においても、絞り部2は散水面4aに対して略垂直な方向に水を吐出する。絞り部2から吐出された水は、斜面50に衝突してその流れの方向が変わり、散水部4へと流入する。従って、図2に関して前述した比較例1と同様に、散水部4の下流側では、流速が低下し、気泡が成長する。その結果として、散水部4の下流側から吐出される水は、気泡を含みにくくなる。
【0025】
図5は、比較例2に係るシャワー装置101を用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。図5(a)は、上方から散水部4の内部を観察したときの平面写真である。図5(b)は、散水孔4pからの吐水態様を表した側面写真である。
【0026】
比較例2では、次に説明するように、散水板4bの中心部(上流側)から外周部(下流側)に至るまで気泡が均一に混入されず、シャワーの粒径が均一でない。
図5(a)から、散水板4bの中心方向では、気泡の混入率は高く、気泡径は小さいことがわかる。このため、図5(b)に示したように、散水孔4pから吐水された気泡水の気泡混入率は高く、気泡水の粒径は大きい。
図6は、散水板4bの中心からの距離と、散水孔4pから吐出された水の粒径と、の関係を表した模式グラフ図である。横軸のL1、L2、及びL3は、散水板4bの中心から散水孔4pまでの距離を表している(図4(b)及び図7(b)参照)。
図6に表したように、比較例2に係るシャワー装置101では、距離L1付近を境に外周部(下流側)において、散水孔4pから吐出された水の粒径が小さくなることが分かる。
【0027】
さらに、図5(a)から、散水板4bの外周方向では、気泡の混入率は低く、気泡径は大きいことがわかる。このように散水部4の外周方向では、気泡が大きいため、散水孔4pから気泡水が流出しにくい。これは、液相や気泡の流速が低く、気泡同士が結合して停滞しているためである。また、渦や逆流が発生しやすく、これによる運動エネルギーの損失が大きい。さらに、整流用リブ(散水板4bの内面に設けられた、整流のための突起部)などが存在する場合には、気泡が整流リブ等に衝突し、気泡がさらに結合しやすくなるとともに、渦や逆流がさらに発生しやすくなる。これらの結果、図5(b)及び図6に示したように、散水板4bの外周部の散水孔4pから吐水された気泡水の気泡混入率は低くなり、気泡水の粒径は小さくなる。
なお、散水部4における気泡径は、600〜1200μm程度となり、気泡径がばらついている。
【0028】
このように、比較例2では、特に外周部においてシャワーの粒径と流速とが適切に確保されていない。このため、全体として、良好な質感のシャワーが得られにくい。
ここで、絞り部2から非放射状に水が吐出される形態(以下、かかる形態を「非ラジアル型」と呼ぶ)の比較例1についても、比較例2と同様に論じることができる。
【0029】
これに対し、本実施形態による実験結果について、図6〜図8を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態に係るシャワー装置1と同様の構成要素を有するラジアル型のシャワー装置1Bを表す模式図である。図7(a)は模式斜視断面図、図7(b)は模式断面図、図7(c)は模式平面図である。図7(a)及び(b)に示したように、このシャワー装置1Bは、後述する界面制御部5を有する。界面制御部5により、気泡水の空気混入部3方向への逆流が抑制されるとともに、気泡水の散水部4内での流速を適切に確保することができる。
【0030】
図8は、図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bを用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。図8(a)は、上方から散水部4の内部を観察したときの平面写真である。図8(b)は、外周側から見たときの散水孔4pからの吐水態様を表した側面写真である。
【0031】
図8(a)から、シャワー装置1Bでは、散水部4の中心部(上流側)から外周部(下流側)に至るまで、気泡が適切な量で均一に混入していることがわかる。気泡の停滞は見られず、小さい径のままで気泡が外周方向に流れている。このため、気泡水200は適切に散水孔4pから流出することができる。これは、液相や気泡の流速が高く、このため気泡同士が結合して停滞することが抑制されていることを示している。このため、渦や逆流が発生しにくく、これによる運動エネルギーの損失が小さい。整流リブなどが存在する場合にも、比較例2に比べて気泡結合や、渦、逆流等が生じにくいと考えられる。
【0032】
そして、図8(b)からわかるように、外周側も含め満遍なく、散水孔4pから吐水された気泡水200の気泡混入率は高く、また気泡水200の粒径は大きい。
また、図6からわかるように、比較例2に係るシャワー装置101では距離L1付近を境に外周部(下流側)において粒径が小さくなるのに対して、図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bでは、距離L1付近を境に外周部(下流側)において気泡水200の粒径は小さくならない。これは、図8(a)に示すように、散水部4の中心部から外周部に至るまで小さい気泡が均一に混入されているからである。
シャワー全体での気泡混入率は、比較例2に係るシャワー装置101では流量11リットル/分程度で約25%であったのに対し、シャワー装置1Bでは流量6.5リットル/分程度で25%以上であった。
また、比較例2のシャワー装置においては、流量11リットル/分程度で供給水圧を0.1メガパスカル程度にしても、散水部4の下流側まで気泡を含んだ均一なシャワー流を得ることは容易でなかったが、本実施形態のシャワー装置1Bでは、流量6.5リットル/分程度で供給水圧が0.1メガパスカル程度においても、散水部4の下流側まで気泡を含んだ均一なシャワー流を得ることができた。
【0033】
このように、本実施形態に係るシャワー装置1Bでは、散水部4の中心部から外周部に至るまで、シャワーの粒径と流速とが適切に確保されている。このため、良好な質感のシャワーを得ることができる。
ここで、非ラジアル型のシャワー装置1についても、シャワー装置1Bと同様に論じることができる。
なお、複数の散水孔4pは、絞り部2から離間した位置に設けることができる。この意義について、以下説明する。
絞り部2から大気中に開放された水の運動エネルギーによって、この水の側に空気が引き込まれる。このとき、空気の吸引量は絞り部2から吐出された後の水の速度と表面積に比例する。この吐出された水と引き込まれた空気は、空気混入部3と散水部4との境界付近に形成される気液の界面4sに衝突することで、これら気液が混ざることになる。
ここで、絞り部2から離間した位置に複数の散水孔4pを設けることで、絞り部2と気液の界面4sとが離間し、絞り部2から吐出した水の空気に触れる表面積が増加する。これにより、絞り部2での流速を高く(圧力損失を大きく)しなくても効率的に空気を引き込むことができる。これにより、空気の混入率が上昇する。
絞り部2から散水孔4pまでの距離は、例えば15mm以上とすることができる。短すぎると、絞り部2から吐出した水の周囲に形成される速度境界層(高い速度を有する水と、その周囲に存在する低い速度の空気と、の境界に形成される層)が発達しないまま、水と空気は気液の界面4sに衝突することになる。このため、絞り部2から吐出した水の表面積が十分確保できず、空気の混入率が低下する可能性がある。それに対して、絞り部2と散水孔4pとが例えば15mm以上離間している場合、絞り部2から吐出した水の周囲に形成される速度境界層が十分に発達し、この水の表面積が十分確保できるため、空気の混入率が上昇する。
このように、複数の散水孔4pを絞り部2から離間した位置に設けることにより、空気の混入率を上昇させ、気泡水200を良好に形成することができる。
【0034】
なお、比較例1や2において、噴射口2aの開口面積を小さくすることにより散水部4内の水(気泡水)の流速を向上させることも考えられるが、この場合でも、絞り部2からの吐出水流が斜面50などに衝突することにより運動エネルギーが減殺される。これに対し、本実施形態では、絞り部2からの吐出水流は散水孔4pに流出するまでに直接衝突する箇所が無いため、より効果的に散水部4内の水(気泡水)の流速を確保し、気泡水を整流することができる。このため、運動エネルギーの損失が少ない。
【0035】
このように、本実施形態によれば、シャワーの粒径と流速とを適切に確保することができる。これにより、良好な質感を有するシャワーを得ることができ、心地よい刺激が得られる。本実施形態は、水圧の低い地域で特に有効に適用できる。また、粒が大きいと、放熱が少ないという副次的効果が得られる。本実施形態は、浴室やキッチン等で用いられるハンディ型または固定型のシャワーなどに好適に適用することができる。
【0036】
次に、本実施形態の各種構成について、図9〜図19を参照しつつ説明する。
本実施形態において、絞り部2は、水を吐出する単数または複数のオリフィス等の開口(噴射口2a)を有する。
噴射口2aが複数存在する場合には、複数の噴射口2aから吐出される水の少なくとも2つは、複数の噴射口2aのそれぞれに応じて複数の異なる方向に吐出される構成にしてもよい。また、複数の噴射口2aから吐出される水の吐出流路の少なくとも2つは、同一平面上にない構成にしてもよい。
【0037】
図9は、噴射口2aを例示する模式側面図である。
図9(a)に表したように、噴射口2aは、円形等の形状を有する噴射口2aが点在する構成にしてよく、あるいは図9(b)及び(c)に表したように、大きな噴射口2aを1または2以上設けた構成にしてもよい。図9(b)及び(c)のようにした場合、孔数が少ないため、製造上作りやすく、製造コストも低く抑えられると考えられる。
【0038】
また、図9(d)に表したように、複数の噴射口2aを千鳥(ジグザグ)配置してもよい。すなわち、複数の噴射口2aの少なくとも2つは、散水面4aからの距離が互いに異なる。かかる構成にすることにより、吐出される水の吐出流路は同一平面上になく、吐出水流の流路は密になる。このため、気泡水200が空気混入部3側に逆流することを防ぐ、シールド効果がより高くなる。また、複数の噴射口2aを千鳥(ジグザグ)配置することで、吐出される水は空気との接触面積が増加し、空気混入率が向上する。
【0039】
次に、図10は、シャワー装置1の構成を例示する模式図である。図10(a)及び(c)は模式平面図であり、図10(b)及び(d)はそれぞれ図10(a)及び(c)の絞り部2近傍を拡大した図である。
【0040】
図10に表したように、絞り部2は曲面を有してよく、これにより散水部4は様々な形状を有することができる。図10では、例として円形形状を有する散水部4を示した。
【0041】
図10(a)及び(b)に表したように、絞り部2は、複数の噴射口2aから吐出される水が散水部4の円周に向けて放射状に満遍なく吐出される構成にしてもよい。この場合、絞り部2は散水部4側に凸状となる曲面を有してもよい。これにより、散水部4内に気泡水が満遍なく行き渡り、各散水孔4pから気泡水が吐出され、大粒化し、流速も高くなり易い。
【0042】
また、図10(c)及び(d)に表したように、絞り部2は、給水路Sに対して平行な方向に水が吐出される構成にしてもよい。これにより、シールド効果が適切に得られる。この場合、絞り部2は散水部4側に凹状となる曲面を有してもよい。この構造により、逆流を防ぎやすくなるため、絞り部2での流速を高く(圧損を大きく)しなくても、空気を適切に混入することができる。
【0043】
次に、図11は、シャワー装置1の他の構成を例示する模式図である。図11(a)は模式斜視図、図11(b)は模式平面図、図11(c)は模式断面図である。
【0044】
図11に表したように、本実施形態では、絞り部2が散水部4を包囲する構成にしてもよい。同図では、給水路S(またはその一部)、絞り部2、及び空気混入部3は、散水部4を包囲するように外側から内側にこの順で配置されている。水は散水部4の周囲に配された給水路Sを流れ、絞り部2の噴射口2aから散水部4に向けて吐出される。このとき、空気混入部3により空気が混入される。噴射口2aは、気泡水が散水部4内を均一に流れるように適宜配置することができる。なお、散水部4の平面形状は、図示した円形の他、矩形や他の任意の形状であってもよい。散水部4の形状を円形にした場合は、気泡水をより均一に散水部4内に流すことができる。すなわち、散水部4の周辺部から中心部に至るまで、気泡水は側面などに衝突することなく略同一の流速で逆放射状の各方向に進むことができる。
【0045】
次に、散水部4の他の構成について、図12及び13を参照しつつ説明する。
図12及び図13は、散水部4を例示する模式断面図である。
図12に表したように、散水部4の内部空間の厚さWは、絞り部2から遠ざかるにつれて小さくなる構成にしてもよい。これにより、内部空間における水の流速を適切に確保することができる。
【0046】
例えば、図12(a)に表したように、下流側に向かうにつれて散水面4aが対向面4c側に傾斜する構成にしてもよい。また、図12(b)に表したように、下流側に向かうにつれて対向面4cが散水面4a側に傾斜する構成にしてもよい。
【0047】
なお、散水孔4pは、図12(a)に表したように、散水部4の内部側と外部側とで流路断面積を変えてよく、例えば外部側が相対的に小さい流路断面積を有する構成にしてもよい。これにより、散水孔4pから吐出される気泡水の流速を適切に確保することができる。
なお、図12(a)に表した例のように、絞り部2が、散水面4aの側に傾斜した方向に水を吐出する構成にすることにより、散水部4内の気泡水200が複数の散水孔4pに向けて均一に流れるため、散水部4内が整流された状態となる。これにより、均一な気泡を有する水を散水面4aから均一に吐出することができる。また、散水部4内で渦が形成されにくくなり、絞り部2から大気中に開放された水の運動エネルギーを効率的に利用することができる。
【0048】
次に、図13(a)、(b)に表したように、界面制御部は、空気混合部と複数の散水孔との間に、界面制御部と散水部が成す開口部の最小となる開口面積5aが、界面制御部5の下流側直後に位置する、散水部の内部空間断面積4gより小さくなるように、散水部に対して突起状に設ける。本実施例において界面制御部とは、散水部から突出する突起状の部材であり、これにより界面制御部と散水部の成す開口部の開口面積を狭くし、その形状や配置によって界面の生成位置やシールド効果の強度を制御できるものである。これにより、流入空気流速が高められ、シールド効果が向上する。また、図13(c)に表したように、界面制御部は散水部の上下に設けてもよい。また、図13(d)に示したように、界面制御部と散水部が成す開口部は、先細り形状にしてもよく、この場合、噴出口から吐出した水が、その周囲に形成する空気の境界層の発達を阻害することなく、より多くの空気を混入することができる。また、図13(e)に表したように、界面制御部の下流側流路の一部を拡大した形状にしてもよい。このように流路断面積を十分に大きくすることによって、シールド効果をより確実に制御させ、界面を形成させることができる。また、開口部の流路方向の長さLを適宜調節することにより、空気混入率を向上でき、整流性を適切に確保することができる。
【0049】
また、図14(b)に表したように、噴出口から吐出した水は開口部に対して均一に流入することが望ましい。吐出した水がその周囲に形成する空気の境界層は、水流と同心円状に形成されるため、水同士、または水と壁面との距離が一様でない場合、シールド効果の強弱が発生する。そのため、シールド効果が弱い部分から散水部内部の水が逆流してくる恐れがある。また、開口部に対して均一とすることで、散水部内部において、水流が均一に突入していくため、より高い整流性を確保できる。よって、より望ましい形状として、図14(c)に表したように、界面制御部と散水部が成す開口部形状を、噴出口から吐出した水と同心円状にすることで、よりシールド効果を高めることができる。
【0050】
あるいは、図15に表したように、界面制御部は、絞り部から吐出した水流の一部に接触するように設けてもよい。このように水流の一部に界面制御部を接触させることで、水勢を保ちつつ、円柱状の水流を膜状に変化させることで、シールド効果を制御し、界面制御部と散水孔の間に界面を形成することができる。なお、界面制御部の形状として、円柱状の水流断面積の50%程度を接触させるように設けることができる。
【0051】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1 シャワー装置、1B シャワー装置、2 絞り部、2a 開口、噴射口、3 空気混入部、3a 開口、4 散水部、4a 散水面、4b 散水板、4c 対向面、4p、4pa、4pb、4pc 散水孔、4s 界面、4g 散水部内部断面積、5 界面制御部、50 斜面、100 シャワー装置、101 シャワー装置、200 水、気泡水、A 矢印(水の流路)、B 矢印(空気の流路)、L 流路方向の長さ、L1、L2、L3、L4 距離、P、P1、P2 線分、R 吐水方向の直線、S 給水路、W 厚さ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関し、より詳細には、気泡を含んだ水を吐出するシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、水に気泡を混入させ、シャワーの質感を向上させるとともに節水を図るシャワー装置が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、シャワーヘッドであって、ハウジングと、ジェットが出るディスクと、ディスクがジェットの出る数多くの孔を有することと、水をハウジングに入れるための水入口と、シャワーヘッドを経て流れる水に空気を混入させるための空気混入器とを含むことを特徴とする、シャワーヘッドが開示されている。また、特許文献2では、シャワー吐水に空気を混入させるようにしたシャワーノズルであって、湯水の吐出が止水コックの作動と同時に行うことができるシャワーノズルが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表第2006−509629号
【特許文献2】特許第3747323号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シャワー吐水に空気を混入させたシャワー装置について、従来型では散水部内での圧力損失により気泡を含む水が散水面から均一に吐出されないことがあった。
このため、本発明は、均一な気泡を有する水を散水面から均一に吐出することができるシャワー装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、水を通す給水路と、前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出す る複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、均一な気泡を有する水を散水面から均一に吐出することができるシャワー装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に係るシャワー装置1を例示する模式図である。
【図2】本実施形態と対比される比較例1に係るシャワー装置100を表す模式断面図である。
【図3】散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図4】比較例2に係るシャワー装置101を表す模式図である。
【図5】比較例2に係るシャワー装置101を用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図6】散水板4bからの距離と、散水孔4pから吐出された水の粒径と、の関係を表した模式グラフ図である。
【図7】本実施形態に係るシャワー装置1と同様の構成要素を有するラジアル型のシャワー装置1Bを表す模式図である。
【図8】図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bを用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。
【図9】噴射口2aを例示する模式側面図である。
【図10】噴射口2aを例示する模式断面図である。
【図11】噴射口2aを例示する模式断面図である。
【図12】シャワー装置1の構成を例示する模式図である。
【図13】シャワー装置1の他の構成を例示する模式図である。
【図14】界面制御部5を例示する模式断面図である。
【図15】界面制御部5を例示する模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の発明は、 水を通す給水路と、
前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出する複数の散水孔を有する散水部と、を備え、前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、絞り部から散水部に沿って吐水することにより、絞り部からの吐水の運動エネルギーを効率的に利用して、気泡水が散水部から流出し易くすることができる。また気液界面が生成される位置を制御できるため、空気混入量を最適に制御することができる。これによって、少ない流量でもシャワーの粒径及び流速を同時に大きくすることができるため、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記界面制御部と前記散水部とが成す最も狭い部分である開口部の断面積は、前記散水部の内部空間のうち、前記界面制御部の下流に位置する内部空間の断面積よりも小さいことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、界面制御部と散水孔の間に界面を生成することができる。これにより、界面より下流側の散水部内部には気泡水で満たされるため、界面より下流側に設けられたすべての散水孔から均一に気泡水を吐出することができる。
【0011】
第3の発明は、第1または第2の発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口の吐水方向の直線上に前記開口部が位置するよう、前記開口が配置されることを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、絞り部から吐出した水が持つ運動エネルギーの損失が少なく、かつ前記水と空気の接触面積が適切に確保することができるため、空気混入率を上げることができる。
【0012】
第4の発明は、第1〜第3のいずれかの発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する複数の開口を有することを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、散水部内において水を様々な態様で吐出することができる。複数の開口を有することで、絞り部からの吐水が整流され易くなるため、散水部内での気泡水も整流され易く、気泡の停滞・結合や渦の発生が少なく、散水部内で気泡水が均一に分散される。さらに、単一の開口の断面積と複数の開口の断面積とを同一にして、絞り部から吐出された水の表面積を比較すると、複数の開口から吐出された水は表面積が大きく、空気との接触面積が増えて、空気を引き込み易くなる。これにより、少ない流量でも空気を多く混入させることができ、効率的に気泡水を散水孔から吐出することができる。さらに、引き込む空気量が増加するということは、散水部から空気混入部への逆流を防ぐ力が増加するということであり、これらにより、シャワーの粒径及び流速を同時に大きくすることができるため、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0013】
第5の発明は、第1〜第4のいずれかの発明において、前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口は、前記開口部に対する吐水が均一となるように配置されたことを特徴とするシャワー装置である。
このシャワー装置によれば、吐出した水により引き込んだ空気が前記開口部に対して均一に流れ込むため、引き込んだ空気が界面を押す力も界面に対して均一となり、水の逆流をより効率良く防ぐことができるため、シャワーの流速をさらに大きくすることができ、良好な質感のシャワーが得られるシャワー装置が提供される。
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施形態に係るシャワー装置1を例示する模式図である。図1(a)はその模式斜視断面図、図1(b)は(a)の模式斜視断面図の底面側から見たときの模式斜視図、図1(c)は(a)に表した断面構造を概念的に表した模式図である。
【0015】
シャワー装置1は、水を通す給水路Sと、給水路S(図1では、給水路Sの下流側の端部)に設けられ、水の流路断面積を減らして水を吐出する絞り部2と、絞り部2の下流側に設けられ、絞り部2から吐出された水に空気を混入する空気混入部3と、空気混入部3の下流側に設けられ、空気を含んだ水である空気含有水(気泡水)200を吐出する複数の散水孔4pを有する散水部4と、を備える。絞り部2は、開口(噴射口2a)を有し、水を噴射口2aから吐出する。空気混入部3は、開口3aを有し、絞り部2から吐出した水(矢印A)に開口3aから導入した空気を混入させる(矢印B)。散水部4は、複数の散水孔4pを有する散水板4bを有する。散水部4の内部空間の厚さWは、噴射口2aの径または幅に対して、上下(厚さWの方向)に1mm弱程度から数mm程度の差を有するように設定することができる。例えば、噴射口2aの径が1mm弱程度である場合、散水部4の内部空間の厚さWは、2〜3mm程度とすることができる。
【0016】
そして、絞り部2は、複数の散水孔4pが配された面(散水面4a)に沿って水を吐出する。
ここで、「散水面4aに沿って吐出する」とは、散水面4aの全部または一部の直上において散水面4aに沿って吐出することの他、散水面4aの全部または一部と離隔した領域において散水面4aと略平行に吐出することも含む。また、吐水の方向は散水面4aに対して厳密に平行である必要はなく、後に図10や図14に関して説明するように、散水面4aに対して傾斜したものも、本発明の範囲に包含される。
【0017】
給水路Sに水を供給し散水部4からシャワー流を吐水させている状態において、界面制御部5と散水部4の間に、気液が混ざる界面4sが形成される。ここで界面4sが形成される過程について、図1を用いて説明する。
噴射口2aから吐出した水流は大気中に開放された状態で、界面制御部5を通過し、散水部4に突入する。このとき、散水部4に設けられた散水孔4p面積は、散水部4の内部空間の断面積より小さいため、散水孔4pからの吐水流速は高められる。よって、散水部4の内部空間の水が持つ内圧は高められることになり、散水部4の内部空間に貯水された水は、より流路が大きく、圧損の少ない界面制御部5のほうへ逆流しようとする。一方、空気混入部において、噴射口2aから吐出した水の運動エネルギーによって引き込まれた空気が、界面制御部5と散水部4とが成す開口部に流入するため、界面制御部5と散水部4の間において、空気が散水部4の内部空間に貯水された水を押し付ける効果が発生する。以下、かかる効果を「シールド効果」と呼ぶこととする。
界面制御部5と散水部4の間において、散水部4の内圧によって散水部4から逆流しようとする水は、シールド効果により押さえつけられ、これらの力が釣り合う位置で界面4sが形成されることになる。すなわち界面制御部5を設けることによりシールド効果の大きさを制御することができ、界面制御部と散水孔の間に界面を形成することができる。また界面4sを境に、空気混入部3側は絞り部2からの水が大気中に開放された状態となっており、散水部4側は絞り部2からの水とそれによって引き込まれる空気とが混ざり、気泡水200が存在する状態となっている。すなわち、絞り部2からの水と、その水の運動エネルギーによって引き込まれる空気と、が界面4sに衝突することで、気液が混ざり気泡水200が形成されることになる。
【0018】
次に、本実施形態のシャワー装置における気泡水の生成作用について、図2〜図8を参照しつつ説明する。
図2は、本実施形態と対比される比較例1に係るシャワー装置100を表す模式断面図である。
図2に表したように、比較例1に係るシャワー装置100は、本実施形態に係るシャワー装置1と類似した構成要素を有するが、絞り部2から吐出された水は、散水面4aに沿って吐出されない。すなわち、給水路Sに導入され絞り部2から吐出された水は(矢印A)、まず散水面4aに対して垂直の方向に進み、空気混入部3において空気を取り込む(矢印B)。その後、斜面50にあたってその流れ方向が散水面4aに沿った方向に変化する。
【0019】
このような構成の場合、気泡水は斜面50に衝突して運動エネルギーを減少させる。このため、散水部4において気泡水の流速が適切に確保されないことがある。この結果、散水部4において下流側に向かうにつれ、気泡同士が結合して成長し、停滞する。これにより、気泡溜まりができ、気泡径が散水孔4pの径よりも大きい場合などに気泡水が散水孔4pから効率よく流出しないことがある。すなわち、散水部4の下流側においては、気泡を十分に含まない水が吐出される。
【0020】
図3は、散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。すなわち、これらの写真は、散水部4の散水孔4pから矢印の方向にシャワー流が吐出される状態を表す。
図3(a)は、気泡を含んだ水(気泡水200)が吐出されたときの吐水態様を表している。散水孔4pから吐出された水200は、粒状であり、それぞれの粒に気泡が混入していることが分かる。このように、気泡を混入させると、吐水後において気泡水200は粒状になりやすく、気泡を含まない吐水よりも大粒化される。このような粒は、空気のせん断力の他、気泡による作用によって生成し得ると考えられる。大粒化すると、シャワーが体表面に当たったときに良好な刺激や質感が得られる。さらに、空気を混入することにより、水の流量に空気の流量が加わるため、吐水後の粒の流速が高くなる。すなわち、空気を混入することで、少ない水量でも粒径が大きくなり、また流速も高くなることから粒の運動エネルギーが増加し、これらにより十分な「当たり感」が得られる。
【0021】
一方、図3(b)は、気泡を含まない水が吐出されたときの吐水態様を表している。気泡を含まない場合、吐水後において水は粒状になりにくく、連続した水流が空気のせん断力により粒化すると考えられる。この粒径は、散水孔4pの孔径に比例しており、孔径により粒径の大きさがほぼ予測できる。この粒径は、気泡を含んだ吐水に比べて小さくなることが分かっている。
この様に、気泡を含んだシャワー吐水に比べて粒径が小さくなるため、シャワーが体表面に当たったときの刺激感や質感に乏しく、十分な「当たり感」を得るためには、水量を大きくし、流速を高めて、運動エネルギーを増加しなくてはならない。
【0022】
比較例1に係るシャワー装置100では、特に散水部4の下流側の散水孔4pにおいて、気泡が含まれにくく、図3(b)に表した態様で水が吐出されやすくなる。このため、良好な質感が得られにくい。
これに対して、本実施形態によれば、図1に関して前述したように、絞り部2は、散水面4aに沿って水を吐出する。すなわち、絞り部2から吐出された水は、壁などに衝突することがなく、散水面4aに対して略平行に散水部4の内部空間を流れる。その結果として、散水部4の下流においても水200の流速の低下が抑制され、気泡を混入したまま散水孔4pから吐出される。つまり、本実施形態によれば、散水部4の上流側でも下流側でも、気泡を含有した水を吐出させるため、図3(a)に表したように大粒化した粒状の吐水を形成することができる。その結果として、少ない水量でも、十分な刺激や「当たり感」を得ることができる。
【0023】
以下、本実施形態と対比される他の比較例(比較例2)による実験結果について、図4〜図6を参照しつつ説明する。
図4は、比較例2に係るシャワー装置101を表す模式図である。図4(a)は模式斜視断面図、図4(b)は模式断面図、図4(c)は模式平面図である。
【0024】
図4に表したように、比較例2に係るシャワー装置101は、比較例1に係るシャワー装置100と同様の構成要素を有するが、絞り部2から放射状に水が吐出される形態を有する。以下、かかる形態を「ラジアル型」と呼ぶこととする。なお、比較例2においても、絞り部2は散水面4aに対して略垂直な方向に水を吐出する。絞り部2から吐出された水は、斜面50に衝突してその流れの方向が変わり、散水部4へと流入する。従って、図2に関して前述した比較例1と同様に、散水部4の下流側では、流速が低下し、気泡が成長する。その結果として、散水部4の下流側から吐出される水は、気泡を含みにくくなる。
【0025】
図5は、比較例2に係るシャワー装置101を用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。図5(a)は、上方から散水部4の内部を観察したときの平面写真である。図5(b)は、散水孔4pからの吐水態様を表した側面写真である。
【0026】
比較例2では、次に説明するように、散水板4bの中心部(上流側)から外周部(下流側)に至るまで気泡が均一に混入されず、シャワーの粒径が均一でない。
図5(a)から、散水板4bの中心方向では、気泡の混入率は高く、気泡径は小さいことがわかる。このため、図5(b)に示したように、散水孔4pから吐水された気泡水の気泡混入率は高く、気泡水の粒径は大きい。
図6は、散水板4bの中心からの距離と、散水孔4pから吐出された水の粒径と、の関係を表した模式グラフ図である。横軸のL1、L2、及びL3は、散水板4bの中心から散水孔4pまでの距離を表している(図4(b)及び図7(b)参照)。
図6に表したように、比較例2に係るシャワー装置101では、距離L1付近を境に外周部(下流側)において、散水孔4pから吐出された水の粒径が小さくなることが分かる。
【0027】
さらに、図5(a)から、散水板4bの外周方向では、気泡の混入率は低く、気泡径は大きいことがわかる。このように散水部4の外周方向では、気泡が大きいため、散水孔4pから気泡水が流出しにくい。これは、液相や気泡の流速が低く、気泡同士が結合して停滞しているためである。また、渦や逆流が発生しやすく、これによる運動エネルギーの損失が大きい。さらに、整流用リブ(散水板4bの内面に設けられた、整流のための突起部)などが存在する場合には、気泡が整流リブ等に衝突し、気泡がさらに結合しやすくなるとともに、渦や逆流がさらに発生しやすくなる。これらの結果、図5(b)及び図6に示したように、散水板4bの外周部の散水孔4pから吐水された気泡水の気泡混入率は低くなり、気泡水の粒径は小さくなる。
なお、散水部4における気泡径は、600〜1200μm程度となり、気泡径がばらついている。
【0028】
このように、比較例2では、特に外周部においてシャワーの粒径と流速とが適切に確保されていない。このため、全体として、良好な質感のシャワーが得られにくい。
ここで、絞り部2から非放射状に水が吐出される形態(以下、かかる形態を「非ラジアル型」と呼ぶ)の比較例1についても、比較例2と同様に論じることができる。
【0029】
これに対し、本実施形態による実験結果について、図6〜図8を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態に係るシャワー装置1と同様の構成要素を有するラジアル型のシャワー装置1Bを表す模式図である。図7(a)は模式斜視断面図、図7(b)は模式断面図、図7(c)は模式平面図である。図7(a)及び(b)に示したように、このシャワー装置1Bは、後述する界面制御部5を有する。界面制御部5により、気泡水の空気混入部3方向への逆流が抑制されるとともに、気泡水の散水部4内での流速を適切に確保することができる。
【0030】
図8は、図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bを用いた場合の、散水部4内の状況及び散水孔4pからの吐水態様を表した写真である。図8(a)は、上方から散水部4の内部を観察したときの平面写真である。図8(b)は、外周側から見たときの散水孔4pからの吐水態様を表した側面写真である。
【0031】
図8(a)から、シャワー装置1Bでは、散水部4の中心部(上流側)から外周部(下流側)に至るまで、気泡が適切な量で均一に混入していることがわかる。気泡の停滞は見られず、小さい径のままで気泡が外周方向に流れている。このため、気泡水200は適切に散水孔4pから流出することができる。これは、液相や気泡の流速が高く、このため気泡同士が結合して停滞することが抑制されていることを示している。このため、渦や逆流が発生しにくく、これによる運動エネルギーの損失が小さい。整流リブなどが存在する場合にも、比較例2に比べて気泡結合や、渦、逆流等が生じにくいと考えられる。
【0032】
そして、図8(b)からわかるように、外周側も含め満遍なく、散水孔4pから吐水された気泡水200の気泡混入率は高く、また気泡水200の粒径は大きい。
また、図6からわかるように、比較例2に係るシャワー装置101では距離L1付近を境に外周部(下流側)において粒径が小さくなるのに対して、図7に表した本実施形態に係るシャワー装置1Bでは、距離L1付近を境に外周部(下流側)において気泡水200の粒径は小さくならない。これは、図8(a)に示すように、散水部4の中心部から外周部に至るまで小さい気泡が均一に混入されているからである。
シャワー全体での気泡混入率は、比較例2に係るシャワー装置101では流量11リットル/分程度で約25%であったのに対し、シャワー装置1Bでは流量6.5リットル/分程度で25%以上であった。
また、比較例2のシャワー装置においては、流量11リットル/分程度で供給水圧を0.1メガパスカル程度にしても、散水部4の下流側まで気泡を含んだ均一なシャワー流を得ることは容易でなかったが、本実施形態のシャワー装置1Bでは、流量6.5リットル/分程度で供給水圧が0.1メガパスカル程度においても、散水部4の下流側まで気泡を含んだ均一なシャワー流を得ることができた。
【0033】
このように、本実施形態に係るシャワー装置1Bでは、散水部4の中心部から外周部に至るまで、シャワーの粒径と流速とが適切に確保されている。このため、良好な質感のシャワーを得ることができる。
ここで、非ラジアル型のシャワー装置1についても、シャワー装置1Bと同様に論じることができる。
なお、複数の散水孔4pは、絞り部2から離間した位置に設けることができる。この意義について、以下説明する。
絞り部2から大気中に開放された水の運動エネルギーによって、この水の側に空気が引き込まれる。このとき、空気の吸引量は絞り部2から吐出された後の水の速度と表面積に比例する。この吐出された水と引き込まれた空気は、空気混入部3と散水部4との境界付近に形成される気液の界面4sに衝突することで、これら気液が混ざることになる。
ここで、絞り部2から離間した位置に複数の散水孔4pを設けることで、絞り部2と気液の界面4sとが離間し、絞り部2から吐出した水の空気に触れる表面積が増加する。これにより、絞り部2での流速を高く(圧力損失を大きく)しなくても効率的に空気を引き込むことができる。これにより、空気の混入率が上昇する。
絞り部2から散水孔4pまでの距離は、例えば15mm以上とすることができる。短すぎると、絞り部2から吐出した水の周囲に形成される速度境界層(高い速度を有する水と、その周囲に存在する低い速度の空気と、の境界に形成される層)が発達しないまま、水と空気は気液の界面4sに衝突することになる。このため、絞り部2から吐出した水の表面積が十分確保できず、空気の混入率が低下する可能性がある。それに対して、絞り部2と散水孔4pとが例えば15mm以上離間している場合、絞り部2から吐出した水の周囲に形成される速度境界層が十分に発達し、この水の表面積が十分確保できるため、空気の混入率が上昇する。
このように、複数の散水孔4pを絞り部2から離間した位置に設けることにより、空気の混入率を上昇させ、気泡水200を良好に形成することができる。
【0034】
なお、比較例1や2において、噴射口2aの開口面積を小さくすることにより散水部4内の水(気泡水)の流速を向上させることも考えられるが、この場合でも、絞り部2からの吐出水流が斜面50などに衝突することにより運動エネルギーが減殺される。これに対し、本実施形態では、絞り部2からの吐出水流は散水孔4pに流出するまでに直接衝突する箇所が無いため、より効果的に散水部4内の水(気泡水)の流速を確保し、気泡水を整流することができる。このため、運動エネルギーの損失が少ない。
【0035】
このように、本実施形態によれば、シャワーの粒径と流速とを適切に確保することができる。これにより、良好な質感を有するシャワーを得ることができ、心地よい刺激が得られる。本実施形態は、水圧の低い地域で特に有効に適用できる。また、粒が大きいと、放熱が少ないという副次的効果が得られる。本実施形態は、浴室やキッチン等で用いられるハンディ型または固定型のシャワーなどに好適に適用することができる。
【0036】
次に、本実施形態の各種構成について、図9〜図19を参照しつつ説明する。
本実施形態において、絞り部2は、水を吐出する単数または複数のオリフィス等の開口(噴射口2a)を有する。
噴射口2aが複数存在する場合には、複数の噴射口2aから吐出される水の少なくとも2つは、複数の噴射口2aのそれぞれに応じて複数の異なる方向に吐出される構成にしてもよい。また、複数の噴射口2aから吐出される水の吐出流路の少なくとも2つは、同一平面上にない構成にしてもよい。
【0037】
図9は、噴射口2aを例示する模式側面図である。
図9(a)に表したように、噴射口2aは、円形等の形状を有する噴射口2aが点在する構成にしてよく、あるいは図9(b)及び(c)に表したように、大きな噴射口2aを1または2以上設けた構成にしてもよい。図9(b)及び(c)のようにした場合、孔数が少ないため、製造上作りやすく、製造コストも低く抑えられると考えられる。
【0038】
また、図9(d)に表したように、複数の噴射口2aを千鳥(ジグザグ)配置してもよい。すなわち、複数の噴射口2aの少なくとも2つは、散水面4aからの距離が互いに異なる。かかる構成にすることにより、吐出される水の吐出流路は同一平面上になく、吐出水流の流路は密になる。このため、気泡水200が空気混入部3側に逆流することを防ぐ、シールド効果がより高くなる。また、複数の噴射口2aを千鳥(ジグザグ)配置することで、吐出される水は空気との接触面積が増加し、空気混入率が向上する。
【0039】
次に、図10は、シャワー装置1の構成を例示する模式図である。図10(a)及び(c)は模式平面図であり、図10(b)及び(d)はそれぞれ図10(a)及び(c)の絞り部2近傍を拡大した図である。
【0040】
図10に表したように、絞り部2は曲面を有してよく、これにより散水部4は様々な形状を有することができる。図10では、例として円形形状を有する散水部4を示した。
【0041】
図10(a)及び(b)に表したように、絞り部2は、複数の噴射口2aから吐出される水が散水部4の円周に向けて放射状に満遍なく吐出される構成にしてもよい。この場合、絞り部2は散水部4側に凸状となる曲面を有してもよい。これにより、散水部4内に気泡水が満遍なく行き渡り、各散水孔4pから気泡水が吐出され、大粒化し、流速も高くなり易い。
【0042】
また、図10(c)及び(d)に表したように、絞り部2は、給水路Sに対して平行な方向に水が吐出される構成にしてもよい。これにより、シールド効果が適切に得られる。この場合、絞り部2は散水部4側に凹状となる曲面を有してもよい。この構造により、逆流を防ぎやすくなるため、絞り部2での流速を高く(圧損を大きく)しなくても、空気を適切に混入することができる。
【0043】
次に、図11は、シャワー装置1の他の構成を例示する模式図である。図11(a)は模式斜視図、図11(b)は模式平面図、図11(c)は模式断面図である。
【0044】
図11に表したように、本実施形態では、絞り部2が散水部4を包囲する構成にしてもよい。同図では、給水路S(またはその一部)、絞り部2、及び空気混入部3は、散水部4を包囲するように外側から内側にこの順で配置されている。水は散水部4の周囲に配された給水路Sを流れ、絞り部2の噴射口2aから散水部4に向けて吐出される。このとき、空気混入部3により空気が混入される。噴射口2aは、気泡水が散水部4内を均一に流れるように適宜配置することができる。なお、散水部4の平面形状は、図示した円形の他、矩形や他の任意の形状であってもよい。散水部4の形状を円形にした場合は、気泡水をより均一に散水部4内に流すことができる。すなわち、散水部4の周辺部から中心部に至るまで、気泡水は側面などに衝突することなく略同一の流速で逆放射状の各方向に進むことができる。
【0045】
次に、散水部4の他の構成について、図12及び13を参照しつつ説明する。
図12及び図13は、散水部4を例示する模式断面図である。
図12に表したように、散水部4の内部空間の厚さWは、絞り部2から遠ざかるにつれて小さくなる構成にしてもよい。これにより、内部空間における水の流速を適切に確保することができる。
【0046】
例えば、図12(a)に表したように、下流側に向かうにつれて散水面4aが対向面4c側に傾斜する構成にしてもよい。また、図12(b)に表したように、下流側に向かうにつれて対向面4cが散水面4a側に傾斜する構成にしてもよい。
【0047】
なお、散水孔4pは、図12(a)に表したように、散水部4の内部側と外部側とで流路断面積を変えてよく、例えば外部側が相対的に小さい流路断面積を有する構成にしてもよい。これにより、散水孔4pから吐出される気泡水の流速を適切に確保することができる。
なお、図12(a)に表した例のように、絞り部2が、散水面4aの側に傾斜した方向に水を吐出する構成にすることにより、散水部4内の気泡水200が複数の散水孔4pに向けて均一に流れるため、散水部4内が整流された状態となる。これにより、均一な気泡を有する水を散水面4aから均一に吐出することができる。また、散水部4内で渦が形成されにくくなり、絞り部2から大気中に開放された水の運動エネルギーを効率的に利用することができる。
【0048】
次に、図13(a)、(b)に表したように、界面制御部は、空気混合部と複数の散水孔との間に、界面制御部と散水部が成す開口部の最小となる開口面積5aが、界面制御部5の下流側直後に位置する、散水部の内部空間断面積4gより小さくなるように、散水部に対して突起状に設ける。本実施例において界面制御部とは、散水部から突出する突起状の部材であり、これにより界面制御部と散水部の成す開口部の開口面積を狭くし、その形状や配置によって界面の生成位置やシールド効果の強度を制御できるものである。これにより、流入空気流速が高められ、シールド効果が向上する。また、図13(c)に表したように、界面制御部は散水部の上下に設けてもよい。また、図13(d)に示したように、界面制御部と散水部が成す開口部は、先細り形状にしてもよく、この場合、噴出口から吐出した水が、その周囲に形成する空気の境界層の発達を阻害することなく、より多くの空気を混入することができる。また、図13(e)に表したように、界面制御部の下流側流路の一部を拡大した形状にしてもよい。このように流路断面積を十分に大きくすることによって、シールド効果をより確実に制御させ、界面を形成させることができる。また、開口部の流路方向の長さLを適宜調節することにより、空気混入率を向上でき、整流性を適切に確保することができる。
【0049】
また、図14(b)に表したように、噴出口から吐出した水は開口部に対して均一に流入することが望ましい。吐出した水がその周囲に形成する空気の境界層は、水流と同心円状に形成されるため、水同士、または水と壁面との距離が一様でない場合、シールド効果の強弱が発生する。そのため、シールド効果が弱い部分から散水部内部の水が逆流してくる恐れがある。また、開口部に対して均一とすることで、散水部内部において、水流が均一に突入していくため、より高い整流性を確保できる。よって、より望ましい形状として、図14(c)に表したように、界面制御部と散水部が成す開口部形状を、噴出口から吐出した水と同心円状にすることで、よりシールド効果を高めることができる。
【0050】
あるいは、図15に表したように、界面制御部は、絞り部から吐出した水流の一部に接触するように設けてもよい。このように水流の一部に界面制御部を接触させることで、水勢を保ちつつ、円柱状の水流を膜状に変化させることで、シールド効果を制御し、界面制御部と散水孔の間に界面を形成することができる。なお、界面制御部の形状として、円柱状の水流断面積の50%程度を接触させるように設けることができる。
【0051】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
1 シャワー装置、1B シャワー装置、2 絞り部、2a 開口、噴射口、3 空気混入部、3a 開口、4 散水部、4a 散水面、4b 散水板、4c 対向面、4p、4pa、4pb、4pc 散水孔、4s 界面、4g 散水部内部断面積、5 界面制御部、50 斜面、100 シャワー装置、101 シャワー装置、200 水、気泡水、A 矢印(水の流路)、B 矢印(空気の流路)、L 流路方向の長さ、L1、L2、L3、L4 距離、P、P1、P2 線分、R 吐水方向の直線、S 給水路、W 厚さ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を通す給水路と、
前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出する複数の散水孔を有する散水部と、を備え、
前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、
前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記界面制御部と前記散水部とが成す最も狭い部分である開口部の断面積は、
前記散水部の内部空間のうち、前記界面制御部の下流に位置する内部空間の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口の吐水方向の直線上に前記開口部が位置するよう、前記開口が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記絞り部は、前記水を吐出する複数の開口を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口は、前記開口部に対する吐水が均一となるように配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシャワー装置。
【請求項1】
水を通す給水路と、
前記給水路に設けられ、前記水の流路断面積を減らして前記水を吐出する絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記吐出された水に空気を混入する空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、前記空気を含んだ水である空気含有水を吐出する複数の散水孔を有する散水部と、を備え、
前記絞り部は、前記複数の散水孔が配された面に沿って前記水を吐出するよう配置され、
前記散水部の、前記空気混入部と前記複数の散水孔の間に界面制御部を備えたことを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記界面制御部と前記散水部とが成す最も狭い部分である開口部の断面積は、
前記散水部の内部空間のうち、前記界面制御部の下流に位置する内部空間の断面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口の吐水方向の直線上に前記開口部が位置するよう、前記開口が配置されることを特徴とする請求項1または2に記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記絞り部は、前記水を吐出する複数の開口を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記絞り部は、前記水を吐出する開口を備え、前記開口は、前記開口部に対する吐水が均一となるように配置されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のシャワー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−188046(P2010−188046A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37754(P2009−37754)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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