説明

シャワー装置

【課題】容易に組み立てることができると共に、熱膨張した場合にも外観が損なわれることのない二重構造のシャワー装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明は、湯水を内部に設けられた通水路で導き、吐水させる二重構造のシャワー装置(1)であって、継手(16)と、この継手に結合された通水路形成部(10,12)と、この通水路形成部の先端部に結合され、散水孔が形成された散水部(6)と、この散水部と継手との間に挟まれるように配置され、通水路形成部を覆うシャワーヘッドカバー(4)と、通水路形成部が熱膨張により伸びたとき、散水部とシャワーヘッドカバーとの間に隙間ができないように、シャワーヘッドカバーを、継手に対して散水部に向けて付勢する弾性部材(30)と、を有することを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャワー装置に関し、特に、シャワーホースから供給された湯水を内部に設けられた通水路で導き、散水孔から吐水させる二重構造のシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2004−105649号公報(特許文献1)にはシャワーヘッドが記載されている。このシャワーヘッドは、概ね円筒形に構成され、通水路を形成する内部構造と、この内部構造を覆う外カバーを備えている。この外カバーは、シャワーヘッドの基端部に配置され、内部構造に結合された下部リングと、シャワーヘッドの先端部に配置され、内部構造に結合された上部リングとの間に挟まれることによって固定されている。
【0003】
このシャワーヘッドのように、外観を構成する外カバーを、他の部品で挟んで固定する構造は、特別な部材を使用することなく外カバーを内部構造に結合することができるので、容易に二重構造のシャワーヘッドを構成することができるという利点がある。さらに、この構造は、外カバーを固定するためのネジ等の部品を外カバー上に配置することなく外カバーを固定することができるので、シャワーヘッドの外観を良好にすることができるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−105649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2004−105649号公報に記載されているような、シャワーヘッドの内部構造の先端部及び基端部に固定された部品により外カバーを固定する構造は、シャワーヘッドの構成部品が熱膨張すると不具合を起こすという問題がある。即ち、シャワーヘッドの内部構造には、温度の高い湯水が流れるので、内部構造は必然的に温度が上昇する。これに対して外カバーは、直接湯水と接触する部分が無いか、或いは極めて少ないためあまり温度上昇しない。このため、内部構造と外カバーが同じ材質で形成されていたとしても、内部構造と外カバーの、熱膨張による伸び量は異なるものになる。
【0006】
このように、熱膨張により内部構造が外カバーよりも大きく伸びると、室温においてぴったりと挟まれて組み立てられていた外カバーと、それを挟む部品(特開2004−105649号記載の発明においては上部リング及び下部リング)の間に隙間を生じることになる。熱膨張による内部構造の伸び量は、一般にシャワーヘッドに使用されている樹脂の場合において1mm程度にもなる。使用中にこのような隙間がシャワーヘッドに生じると、シャワーヘッドの外観を悪くするばかりでなく、シャワーヘッドの高級感が著しく損なわれてしまうという問題がある。
【0007】
従って、本発明は、容易に組み立てることができると共に、熱膨張した場合にも外観が損なわれることのない二重構造のシャワー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明は、シャワーホースから供給された湯水を内部に設けられた通水路で導き、散水孔から吐水させる二重構造のシャワー装置であって、シャワーホースに接続された継手と、この継手に結合され、シャワーホースから供給された湯水が内部に導入される通水路形成部と、この通水路形成部の先端部に結合され、通水路形成部に導入された湯水を吐出させる複数の散水孔が形成された散水部と、この散水部と継手との間に挟まれるように配置され、通水路形成部を覆うシャワーヘッドカバーと、通水路形成部が熱膨張により伸びたとき、散水部とシャワーヘッドカバーとの間に隙間ができないように、シャワーヘッドカバーを、継手に対して散水部に向けて付勢する弾性部材と、を有することを特徴としている。
【0009】
このように構成された本発明においては、継手がシャワーホースに接続され、通水路形成部が継手に結合され、散水部が通水路形成部の先端部に結合される。シャワーヘッドカバーは、通水路形成部を覆うと共に、散水部と継手との間に挟まれるように配置される。弾性部材は、通水路形成部が熱膨張により伸びたとき、散水部とシャワーヘッドカバーとの間に隙間ができないように、シャワーヘッドカバーを、継手に対して散水部に向けて付勢する。
【0010】
このように構成された本発明によれば、通水路形成部が熱膨張により伸びた場合にも、シャワーヘッドカバーは、弾性部材により散水部に向けて付勢されているので、散水部とシャワーヘッドカバーとの間に実質的に隙間が生じることはなく、シャワー装置の外観が損なわれることがない。
【0011】
本発明において、好ましくは、さらに、継手と一体又は別体に構成され、弾性部材の少なくとも一部を覆う弾性部材覆いを有する。
このように構成された本発明によれば、弾性部材の少なくとも一部が弾性部材覆いにより覆われているので、通水路形成部の熱膨張に伴って弾性部材が伸びた場合にも、弾性部材が外部に完全に露出されることはなく、シャワー装置の外観が損なわれることがない。また、弾性部材覆いは、シャワー装置の基端部に配置されているので、弾性部材覆いとシャワーヘッドカバーとの間に隙間ができたとしても、シャワー装置の外観が損なわれることはない。
【0012】
本発明において、好ましくは、弾性部材は、バネである。
このように構成された本発明によれば、弾性部材としてバネが使用されているので、小さな部材で大きな伸縮のストロークを得ることができ、通水路形成部の大きな伸びを許容することが可能になる。即ち、このように構成された本発明によれば、弾性部材としてゴム製のパッキン等を使用した場合に比べ、大きな伸縮量を容易に実現することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、さらに、継手と別体に形成された弾性部材覆いを有し、この弾性部材覆いとシャワーヘッドカバーとの間に弾性部材が配置され、継手は、通水路形成部と螺合により結合されるように構成されると共に、弾性部材覆いを散水部に向けて押圧する。
【0014】
このように構成された本発明によれば、継手は通水路形成部に対して螺合により結合されるため、通水路形成部に対して回転されるが、弾性部材覆いが継手とは別体に形成されているので、継手を螺合させる際にも弾性部材覆いが回転されないように維持することが可能になる。これにより、弾性部材覆いとシャワーヘッドカバーとの間に配置された弾性部材が、継手の螺合に伴って圧縮力以外の力を受けるのを防止することができ、弾性部材の損傷や摩耗を回避することができる。
【0015】
本発明において、好ましくは、弾性部材覆いは、弾性部材を中に配置するための弾性部材凹部が形成されており、この弾性部材凹部の中には、弾性部材覆いを貫通する貫通孔が形成されている。
【0016】
このように構成された本発明によれば、弾性部材凹部の中には、弾性部材覆いを貫通する貫通孔が形成されているので、シャワー装置の使用中、シャワーヘッドカバーの内部で漏水が発生した場合にも、貫通孔を通して湯水が漏出するので、使用者は、シャワーヘッドカバーの内部での漏水を速やかに認識することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシャワー装置によれば、二重構造を採用しながら、容易に組み立てることができると共に、熱膨張した場合にも外観が損なわれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態によるシャワー装置を、シャワーハンガーに掛けた状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態によるシャワー装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態によるシャワー装置の部分拡大断面図である。
【図4】シャワーヘッドカバーに内蔵された部品を示す分解斜視図である。
【図5】オリフィス形成部材の(a)斜視図、及び(b)上面図である。
【図6】押さえリングの上面図である。
【図7】継手とシャワーヘッドカバーの接続部分を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明の実施形態によるシャワー装置を、シャワーハンガーに掛けた状態を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態によるシャワー装置の断面図である。
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態によるシャワー装置1は、シャワーホース2に接続して使用される。シャワーホース2から供給された湯水は、シャワーヘッドカバー4の内部で外気と混合され、気泡を含んだ湯水が、散水部6に設けられた複数の散水ノズル6aの散水孔から吐出されるように構成されている。
【0021】
また、図2に示すように、シャワー装置1は、壁面Wに取り付けられたシャワーハンガー8に掛けられた状態では、シャワーホース2の軸線が鉛直軸線に対して角α傾くように配置され、本実施形態においては角αは約15゜である。
【0022】
次に、図4乃至6を新たに参照して、本発明の実施形態によるシャワー装置の内部構造を説明する。
図4は、シャワーヘッドカバー4に内蔵された部品を示す分解斜視図である。図5は、オリフィス形成部材の(a)斜視図、及び(b)上面図である。図6は押さえリングの上面図である。図7は、継手16とシャワーヘッドカバー4の接続部分を拡大して示す図である。
【0023】
図4に示すように、シャワーヘッドカバー4の内部には、第1通水部材10と、この第1通水部材10に連結される第2通水部材12と、第1通水部材10と第2通水部材12の結合部に挿入されるオリフィス形成部材14が内蔵されている。さらに、シャワー装置1は、第1通水部材10の基端部とシャワーホース2を結合する継手16と、第1通水部材10と継手16の間に配置された弾性部材覆いである押さえリング18を有する。なお、本実施形態において、第1通水部材10及び第2通水部材12は、通水路形成部を構成する。
【0024】
シャワーヘッドカバー4は、第1通水部材10及び第2通水部材12を包囲するように形成された筒状の部材である。このシャワーヘッドカバー4と散水部6により、シャワー装置1の外観が概ね構成される。
【0025】
第1通水部材10は、第1通水管10aと、その周囲に形成された案内突起である複数のリブ10bを有する。第1通水部材10は、その基端部が継手16と螺合されるように構成されており、シャワーホース2、継手16を介して供給された湯水が、第1通水管10a内を流れるように構成されている。また、第1通水部材10は、シャワーヘッドカバー4の内部に配置され、シャワーヘッドカバー4の内側と、第1通水部材10の外側の間に空間4a(図2)が形成される。第1通水管10aの周囲に形成された複数のリブ10bにより、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間に空間4aを確保しながら、第1通水部材10がシャワーヘッドカバー4の内部で位置決めされるようになっている。さらに、第1通水部材10の先端部には、オリフィス形成部材14を受け入れる第1オリフィス受入凹部10cが設けられている。
【0026】
第2通水部材12は、第1通水部材10の先端側に結合される箱状の部材である。第2通水部材12の基端部には、オリフィス形成部材14を受け入れる第2オリフィス受入凹部12a(図3(a))が設けられている。従って、オリフィス形成部材14は、第1通水部材10の第1オリフィス受入凹部10cと、第2通水部材12の第2オリフィス受入凹部12aの中に同時に受け入れられ、第1通水部材10と第2通水部材12の間に挟まれることにより固定されている。また、第1オリフィス受入凹部10c及び第2オリフィス受入凹部12aがオリフィス形成部材14を受け入れた状態で、2本のビス13(図4)により第1通水部材10と第2通水部材12が結合される。
【0027】
第2オリフィス受入凹部12aの先端側には、第2オリフィス受入凹部12aと連通して、先端に向かってテーパ状に流路が広がった空気混合室12b(図2)が形成されている。さらに、空気混合室12bの先端側には、空気混合室12bと連通して、散水部6が取り付けられた散水室12c(図2)が形成されている。散水室12cは、その前面側が開放されており、その開放部に散水部6が取り付けられている。第2通水部材12と散水部6の間の水密性は、パッキン(図示せず)により確保されている。
【0028】
散水部6は、シャワーヘッドカバー4と共にシャワー装置1の外観の一部を構成する多孔板6bと、複数の散水ノズル6aが設けられたゴム製のノズル形成部材6cから構成されている。ノズル形成部材6c上に形成された各散水ノズル6aは、多孔板6bに形成された複数の孔と夫々整合するように配置されており、ノズル形成部材6cと多孔板6bを重ねると、各散水ノズル6aが多孔板6bの各孔から突出するように構成されている。また、ノズル形成部材6c及び多孔板6bを第2通水部材12に取り付けると、散水室12c内に設けられた複数のピン12d(図2)の先端が、ノズル形成部材6cの裏面を押してノズル形成部材6cを多孔板6bに密着させるようになっている。
【0029】
また、多孔板6bと連続して、多孔板6bに対して約90゜折り曲げられた折曲部6d(図2)が形成されている。折曲部6dは、シャワーヘッドカバー4の先端と実質的に隙間なく当接するように構成されており、シャワー装置1先端の外観の一部を構成している。同様に、多孔板6bもシャワーヘッドカバー4の先端部のカバー切欠部4b(図1)と実質的に隙間なく当接するように構成されておりシャワー装置1先端部の外観の一部を構成している。
【0030】
図5に示すように、オリフィス形成部材14は、長円形断面の筒状の部材であり、その外周を取り囲むようには4本のリブ14a、14b、14c、14dが順に形成されている。リブ14aとリブ14bの間、及びリブ14cとリブ14dの間には、夫々Oリング(図3(a))が配置されている。これらのOリングにより、第1オリフィス受入凹部10cとオリフィス形成部材14の間、及び2オリフィス受入凹部12aとオリフィス形成部材14の間の水密性が確保されている。また、リブ14bとリブ14cの間には通水路空気導入孔であるスリット状の第2空気導入孔20が形成され、オリフィス形成部材14の外周側と内周側を連通させている。さらに、オリフィス形成部材14の内部には隔壁22が設けられ、この隔壁に複数のオリフィス孔22aが形成されている。第2空気導入孔20は、隔壁22直近の下流側に形成されており、オリフィス孔22aを通って流速が高められた湯水が、第2空気導入孔20から空気を導入するようになっている。なお、本実施形態において、隔壁22及びオリフィス孔22aは、オリフィス部を構成する。
【0031】
また、リブ14bとリブ14cの間の空間は、第1オリフィス受入凹部10c及び第2オリフィス受入凹部12aと共に、留水室24を形成している。後述するように、シャワー装置1の非使用時には留水室24に湯水が滞留し、第2空気導入孔20と、隔壁22に設けられたオリフィス孔22aが水没されるようになっている。さらに、第1通水部材10の先端部には、切欠26(図4)が形成されており、この切欠26は、第1通水部材10と第2通水部材12が結合されたとき、第1通水部材10と第2通水部材12の間に留水室連通孔を形成する。即ち、留水室24は、切欠26(留水室連通孔)を介して、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10との間の空間4aと連通する。
【0032】
さらに、オリフィス形成部材14は、第1通水部材10と第2通水部材12結合部に配置されているので、この結合部を分割することによりオリフィス孔22aが外部に露出され、オリフィス孔22aのメンテナンスを行うことができる。
【0033】
図6に示すように、押さえリング18は、シャワーヘッドカバー4の下端部に配置されるリング状の部材である。押さえリング18には、第1空気導入孔28が形成され、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10との間の空間4aは、この第1空気導入孔28を介して外気と連通される。即ち、外気は、図3(b)の矢印Aで示すように、押さえリング18とシャワーホース2の間の隙間、第1空気導入孔28、押さえリング18とシャワーヘッドカバー4の間の隙間を通って空間4aと連通するように構成されている。従って、第1空気導入孔28は、第2空気導入孔20よりもシャワー装置1の基端側、即ち、シャワー装置1のシャワーホース2が接続される側に位置決めされる。また、第1空気導入孔28は、シャワー装置1の基端部、即ち、シャワー装置1のシャワーホース2が接続される部分に配置される。なお、本実施形態において、シャワーヘッドカバー4及び押さえリング18は、シャワーヘッド本体を構成する。
【0034】
また、第1空気導入孔28の断面積は、第2空気導入孔20の断面積よりも大きく形成されている。本実施形態においては、第1空気導入孔28の断面積は、第2空気導入孔20の断面積の2倍に構成されている。
【0035】
また、押さえリング18の回転位置は、押さえリング18に形成された切欠18aと、第1通水部材10に設けられた突起(図示せず)により、シャワーヘッドカバー4に対して位置決めされるようになっている。これにより、押さえリング18の第1空気導入孔28は、シャワーヘッドカバー4の前面側、即ち、散水部6が配置されている側に位置決めされる。このため、第1空気導入孔28は、常に、シャワーヘッドカバー4の前面側に向けて開口されるように位置決めされる。
【0036】
次に、図7を参照して、シャワーヘッドカバー4の取り付け構造を説明する。
図7に示すように、継手16の先端側に形成された雄ネジ16aは、第1通水部材10の基端部に形成された雌ネジ10dと螺合され、継手16と第1通水部材10は結合される。また、継手16の段部16bは、押さえリング18の凹部18bと係合している。また、押さえリング18の円周上には、弾性部材凹部である4つのコイルバネ配置孔18c(図6)が設けられており、各コイルバネ配置孔18cには弾性部材であるバネ30が夫々配置されている。各バネ30の先端は、シャワーヘッドカバー4の基端に当接されており、シャワーヘッドカバー4をシャワー装置1の先端側に向かって付勢している。一方、付勢されたシャワーヘッドカバー4の先端は多孔板6bの折曲部6d(図2)に実質的に隙間なく当接されていると共に、シャワーヘッドカバー4のカバー切欠部4bは、多孔板6bの周縁部と実質的に隙間なく当接されている。
【0037】
また、図7に示すように、押さえリング18には、縁部18dが形成されており、各コイルバネ配置孔18cに配置されたバネ30が外部から見えないように、各バネ30を覆っている。さらに、各コイルバネ配置孔18cの中には、押さえリング18を貫通する貫通孔18eが形成されている。
【0038】
シャワーヘッドカバー4は、バネ30の付勢力により折曲部6dに押し付けられ、シャワーヘッドカバー4の位置が固定される。これにより、シャワーヘッドカバー4と散水部6は、一体となってシャワー装置1の外観を構成する。即ち、シャワーヘッドカバー4は、散水部6の折曲部6dと押さえリング18の間に挟み付けられることにより固定される。
【0039】
シャワー装置1を組み立てる際には、まず、散水部6、第2通水部材12、オリフィス形成部材14、及び第1通水部材10を結合し、結合された組立体32(図4)を、シャワーヘッドカバー4の先端側から挿入する。図2に示すように、シャワーヘッドカバー4は全体として湾曲した形状に形成されているが、第1通水部材10に設けられたリブ10bが挿入を案内するので、組立体32をシャワーヘッドカバー4に円滑に挿入することができる。次に、押さえリング18の各コイルバネ配置孔18cにバネ30を配置し、これを、上記の組立体32を挿入したシャワーヘッドカバー4の基端に当接させる。さらに、押さえリング18を当接させたシャワーヘッドカバー4の基端に、継手16を取り付ける。即ち、継手16の雄ネジ16aを、第1通水部材10の基端の雌ネジ10dに螺合させる。継手16を第1通水部材10にねじ込むことにより、継手16の段部16bが押さえリング18の凹部18bを押圧し、押さえリング18が固定される。この際、継手16は螺合させるために回転されるが、押さえリング18がスリップワッシャーのように作用して回転されずに止まる。このため、シャワーヘッドカバー4と押さえリング18の間に挟まれた各バネ30は、軸線方向に単純に圧縮され、バネ30を軸線に対して屈曲させる力は殆ど作用しない。継手16が第1通水部材10に所定位置までねじ込まれると、各バネ30は圧縮され、これらのバネ30付勢力により、シャワーヘッドカバー4が、散水部6に押し付けられる。
【0040】
また、第1通水部材10及び第2通水部材12は、内部に湯水が導入されることにより温度が上昇し、熱膨張による伸びが発生する。これに対してシャワーヘッドカバー4には直接湯水が接触しないので、シャワーヘッドカバー4の熱膨張による伸びは、第1通水部材10及び第2通水部材12の伸びの合計よりも少なくなる。このため、熱膨張により、散水部6の折曲部6dと押さえリング18の間の距離は、シャワーヘッドカバー4の長さよりも長くなる。この状態においても、シャワーヘッドカバー4の基端に配置されたバネ30がシャワーヘッドカバー4をシャワー装置1の先端側に向かって付勢しているので、シャワーヘッドカバー4の先端と折曲部6dの間、及びカバー切欠部4bと多孔板6bの周縁部との間は、依然として隙間なく当接された状態が維持される。
【0041】
一方、シャワーヘッドカバー4をシャワー装置1の先端側に向かって付勢している各バネ30は伸びるので、シャワーヘッドカバー4は押さえリング18に対してシャワー装置1の先端側に向かって移動され、シャワーヘッドカバー4と押さえリング18の間の隙間C(図7)は大きくなる。しかしながら、隙間Cは、シャワー装置1の基端部にあるので、あまり目立たず、シャワー装置1の外観が損なわれることはない。また、シャワーヘッドカバー4の基端は、その一部が押さえリング18の縁部18dの内側に入り込んでいるので、隙間Cが大きくなった状態においても、バネ30や、他の内蔵部品が外部に露出することはなく、外観が損なわれることはない。
【0042】
次に、本発明の実施形態によるシャワー装置1の作用を説明する。
まず、シャワーホース2から供給された湯水は、継手16、第1通水部材10を通って、オリフィス形成部材14に到達する。オリフィス形成部材14に到達した湯水は、隔壁22に設けられた複数のオリフィス孔22aに流入する。オリフィス孔22aによって流路断面積が絞られた湯水は、流速が上昇し、隔壁22の下流側では、湯水の圧力が低下する。湯水の圧力が低下すると、シャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内の空気が、エジェクター効果により第2空気導入孔20を介して通水路内に導入される。即ち、外気は、シャワーヘッドカバー4と押さえリング18の間の隙間から、第1空気導入孔28を通ってシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内に流入する。空間4a内の空気は、切欠26によって形成された留水室連通孔を通って留水室24に流入し、留水室24に流入した空気は第2空気導入孔20を通って通水路内に導入される。
【0043】
ここで、第1空気導入孔28は、シャワーヘッドカバー4の前面側に配置されているため、使用者がシャワー装置1を把持することにより、第1空気導入孔28を偶発的に塞いでしまう状態は発生しにくい。また、第1空気導入孔28はシャワー装置1の下端部に配置されているので、使用者の手指により第1空気導入孔28が塞がれる確率はさらに低くなる。
隔壁22の下流側で第2空気導入孔20を通って通水路内に導入された空気は、下流側に向かって流路断面積が広がった空気混合室12b内で十分に湯水と混合される。空気が混合された湯水は、散水室12cに流入し、散水部6に設けられた複数の散水ノズル6aの散水孔から、気泡を含む湯水として吐水される。
【0044】
また、空気が第2空気導入孔20を介して通水路内に導入される際、空気が第2空気導入孔20の断面積が小さいため、空気音が発生する場合があるが、この空気音は、シャワーヘッドカバー4の内部で発生するものであるため、外部に漏れる音は非常に小さなものになる。さらに、外気が第1空気導入孔28を介してシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4a内に流入する際には、第1空気導入孔28の断面積が大きく形成されているため、空気の流速は遅く、空気音の発生を抑制することができる。これにより、通水路内を流れる湯水に、適量の空気を混合しながら、シャワー装置1の外部に漏れる空気音を低減することができる。
【0045】
次いで、シャワーホース2から供給される湯水が停止され、図2に示すようにシャワー装置1が壁面Wに取り付けられたシャワーハンガー8に掛けられると、第2通水部材12内に滞留していた湯水は、第1空気導入孔28を通ってシャワー装置1の外部に排出される。即ち、第2通水部材12内の湯水は、第2空気導入孔20を通って留水室24内に逆流し、留水室24内の湯水は、切欠26(留水室連通孔)を通ってシャワーヘッドカバー4と第1通水部材10の間の空間4aに流れ込む。空間4aに流れ込んだ湯水は、シャワー装置1の基端部に設けられた第1空気導入孔28を通ってシャワー装置1の外部に排出される。また、図2に示すシャワーハンガー8に掛けられた状態において、1通水部材10はシャワー装置1の最下部に位置するので、空間4a内の湯水は残留することなくシャワー装置1の外部に排出される。また、空間4aに流れ込んだ湯水の一部は、押さえリング18のコイルバネ配置孔18cの中に夫々設けられた各貫通孔18eを通ってシャワー装置1の外部に排出される。
【0046】
さらに、吐水時において、シャワーヘッドカバー4の内部で漏水が起こった場合にも、漏れた湯水が各貫通孔18eを通ってシャワー装置1の外部に排出されるので、使用者は、速やかにシャワーヘッドカバー4内の漏水を認識することができる。
【0047】
一方、留水室24内の湯水は、図2に示す状態において、切欠26が第2空気導入孔20よりも上方に位置するので、全てが排出されることなく一部が残留する。このため、シャワーホース2からの湯水が停止されたシャワー装置1の非使用状態において、シャワー装置1内の湯水の水面は、概ね図3(a)の直線Lに示す位置になる。このため、隔壁22に設けられたオリフィス孔22aは、シャワー装置1の非使用状態においても水没した状態に維持される。オリフィス孔22aが水没した状態に維持されると、オリフィス孔22aが乾燥して湯水に含まれるカルシウム分等がオリフィス孔22aに堆積し、オリフィス孔22aを詰まらせるのを防止することができる。
【0048】
本発明の実施形態のシャワー装置によれば、第1通水部材10及び第2通水部材12が熱膨張により伸びた場合にも、シャワーヘッドカバー4は、4本のバネ30により散水部6に向けて付勢されているので、散水部6の折曲部6dとシャワーヘッドカバー4との間や、多孔板6bとシャワーヘッドカバー4との間に実質的に隙間が生じることはなく、シャワー装置1の外観が損なわれることがない。これにより、第1通水部材10及び第2通水部材12の外側を覆い、二重構造を形成するシャワーヘッドカバー4の組み付けるを容易にしながら、内部の第1通水部材10及び第2通水部材12が熱膨張した場合にも、シャワー装置の外観が損なわれるのを防止することができる。
【0049】
また、本実施形態のシャワー装置によれば、バネ30がほぼ押さえリング18により覆われているので、第1通水部材10及び第2通水部材12の熱膨張に伴ってバネ30が伸びた場合にも、バネ30が外部に露出されることは殆どなく、シャワー装置1の外観が損なわれることがない。また、押さえリング18は、シャワー装置1の基端部に配置されているので、押さえリング18とシャワーヘッドカバー4との間に隙間Cができたり、隙間Cが広がったとしても、シャワー装置1の外観が損なわれることはない。
【0050】
さらに、本実施形態のシャワー装置によれば、弾性部材としてバネ30が使用されているので、小さな部材で大きな伸縮のストロークを得ることができ、第1通水部材10及び第2通水部材12の大きな伸びを許容することが可能になる。即ち、本実施形態によれば、弾性部材としてゴム製のパッキン等を使用した場合に比べ、大きな伸縮量を容易に実現することができる。
【0051】
また、本実施形態のシャワー装置によれば、継手16は第1通水部材10に対して螺合により結合されるため、第1通水部材10に対して回転されるが、押さえリング18が継手16とは別体に形成されているので、継手16を螺合させる際にも押さえリング18が回転されないように維持することができる。これにより、押さえリング18とシャワーヘッドカバー4との間に配置された各バネ30が、継手16の螺合に伴って圧縮力以外の力を受けるのを防止することができ、バネ30の損傷や摩耗を回避することができる。
【0052】
さらに、本実施形態のシャワー装置によれば、コイルバネ配置孔18cの中には、押さえリング18を貫通する貫通孔18eが形成されているので、シャワー装置1の使用中、シャワーヘッドカバー4の内部で漏水が発生した場合にも、貫通孔18eを通して湯水が漏出するので、使用者は、シャワーヘッドカバー4の内部での漏水を速やかに認識することができ、メンテナンス等の対応を執ることができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、継手16と、押さえリング18が別体に構成されていたが、これらの部材が一体にされた継手を使用することもできる。この場合には、一体に形成された継手が直接バネ等の弾性部材を押圧し、弾性部材の付勢力によりシャワーヘッドカバー4が散水部6に当接されるように構成する。また、上述した実施形態においては、弾性部材としてコイルバネが使用されていたが、コイルバネに代えてゴム等で形成されたパッキン、Oリング等を使用することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 シャワー装置
2 シャワーホース
4 シャワーヘッドカバー
4a 空間
4b カバー切欠部
6 散水部
6a 散水ノズル
6b 多孔板
6c ノズル形成部材
6d 折曲部
8 シャワーハンガー
10 第1通水部材
10a 第1通水管
10b リブ
10c 第1オリフィス受入凹部
10d 雌ネジ
12 第2通水部材
12a 第2オリフィス受入凹部
12b 空気混合室
12c 散水室
12d ピン
14 オリフィス形成部材
14a、14b、14c、14d リブ
16 継手
16a 雄ネジ
16b 段部
18 押さえリング(弾性部材覆い)
18a 切欠
18b 凹部
18c コイルバネ配置孔(弾性部材凹部)
18d 縁部
18e 貫通孔
20 第2空気導入孔
22 隔壁
22a オリフィス孔
24 留水室
26 切欠
28 第1空気導入孔
30 バネ(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーホースから供給された湯水を内部に設けられた通水路で導き、散水孔から吐水させる二重構造のシャワー装置であって、
上記シャワーホースに接続された継手と、
この継手に結合され、上記シャワーホースから供給された湯水が内部に導入される通水路形成部と、
この通水路形成部の先端部に結合され、上記通水路形成部に導入された湯水を吐出させる複数の散水孔が形成された散水部と、
この散水部と上記継手との間に挟まれるように配置され、上記通水路形成部を覆うシャワーヘッドカバーと、
上記通水路形成部が熱膨張により伸びたとき、上記散水部と上記シャワーヘッドカバーとの間に隙間ができないように、上記シャワーヘッドカバーを、上記継手に対して上記散水部に向けて付勢する弾性部材と、
を有することを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
さらに、上記継手と一体又は別体に構成され、上記弾性部材の少なくとも一部を覆う弾性部材覆いを有する請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
上記弾性部材は、バネである請求項1又は2記載のシャワー装置。
【請求項4】
さらに、上記継手と別体に形成された弾性部材覆いを有し、この弾性部材覆いと上記シャワーヘッドカバーとの間に上記弾性部材が配置され、上記継手は、上記通水路形成部と螺合により結合されるように構成されると共に、上記弾性部材覆いを上記散水部に向けて押圧する請求項3記載のシャワー装置。
【請求項5】
上記弾性部材覆いは、上記弾性部材を中に配置するための弾性部材凹部が形成されており、この弾性部材凹部の中には、上記弾性部材覆いを貫通する貫通孔が形成されている請求項4記載のシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−167287(P2011−167287A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−32340(P2010−32340)
【出願日】平成22年2月17日(2010.2.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】