説明

シャワー装置

【課題】シャワー使用開始時に配管内に残留している冷水がノズル部から吐出しにくくする。
【解決手段】使用者の身体を噴霧で包み込むように配設した単一或いは複数のノズル部2と、湯温を制御する温度制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部に供給される湯水の吐水経路を切替制御する切替制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部2への往き管3からノズル部2手前で分岐して再び合流する還流管7と、前記還流管7の下流に設けた排水口8と、前記還流管7を開閉制御することで前記往き管3からの湯水を前記還流管7を介して前記排水口8へ排出可能とする排水制御手段とを備えたシャワー装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の身体に向けて湯水を噴霧させるためのシャワー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数種類の吐水口を備えた湯水供給装置であるシャワー装置が特許文献1、2により知られている。
【0003】
従来のシャワー装置は、図6に示すようなもので、正面中央に鏡40を設置した収納ユニット41の両側部に噴霧用吐水口42である複数の噴霧用ノズルを備えたアーム43を垂直な回転軸を介して横方向に回転するように設置し、また、収納ユニット41の一側方には収納棚45を設置し、他方には通常のハンドシャワー46を設置し、更に、収納ユニット41の下方に洗い場用吐水口48を有する水栓を備えたカウンター47を設置すると共に、洗い場用吐水口47の下方に洗面器を載置する可倒式の洗面器台49を設置した構成となっている。着座してシャワー浴を行うときは洗面器台49を起こした状態で、収納ユニット41の前に置いた椅子44に着座してシャワーを浴びるものである。また、洗面等の洗面器を使用する入浴作業を行う時は洗面器台49を倒し、その上に洗面器を載置して入浴作業を行うようになっている。更に、通常のハンドシャワー46を使用する時はハンドシャワー46のシャワーヘッドを手に持ってシャワー浴等を行うようになっている。
【0004】
図7は従来例の配管ブロック図であり、図中の50は水を供給する給水管、51は湯を供給する給湯管であり、52は給水管50、給湯管51からの水と湯を混合する温度調節ハンドル53を備えたサーモバルブである。サーモバルブ52で混合した湯水を止水弁54を介して噴霧用吐水口42である噴霧用ノズルに供給するようにし、また、サーモバルブ52で混合した湯水を別経路で切換え弁55側に供給し、切換え弁55を介してハンドシャワー46のハンドシャワー用吐水口56と洗い場用吐水口47とに選択的に切換えて供給できるようになっている。
【特許文献1】特開2006−271442号公報
【特許文献2】特開2006−334111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のシャワー装置では、使用初期や、一旦使用した後しばらく時間を空けて再使用する場合において、配管路が冷えていて内部に残って冷たくなった水が押し出されるようにしてノズル部から放出されることになり、冬の寒冷期に冷水を浴びることとなり、不快感を与えてしまう場合がある。このため、通常、使用者は使用初期にシャワーの温度を手や足で確認して、冷たくないことを確認してから身体に浴びるようにしている。例えば、ハンドシャワーでは手や足で湯温を確認できるが、着座した状態でボディシャワーを浴びる場合においては、座り姿勢でノズル部から離れる方向に身体を移動して湯温をいちいち確認しなければならないという煩わしさがあり、たまに確認せずに使用して全身に冷えたシャワーを浴びてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、シャワー使用開始時に配管内に残留している冷水がノズル部から吐出しにくくなるシャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために、本発明のシャワー装置は、使用者の身体を噴霧で包み込むように配設した単一或いは複数のノズル部と、湯温を制御する温度制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部に供給される湯水の吐水経路を切替制御する切替制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部への往き管からノズル部手前で分岐して再び合流する還流管と、前記還流管の下流に設けた排水口と、前記還流管を開閉制御することで前記往き管からの湯水を前記還流管を介して前記排水口へ排出可能とする排水制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明は、前記温度制御手段と前記切替制御手段と前記排水制御手段を、それぞれ、電気的に制御する装置を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシャワー装置は、シャワー使用開始時に配管内に残留している冷水がノズル部から吐出しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のシャワー装置に関連する配管ブロック図である。
【図2】同上のシャワー装置の斜視図である。
【図3】同上の往き管とノズル部への通水路と還流管との分岐点付近の断面図である。
【図4】(a)はシャワー使用時において同上の往き管に供給される湯水がノズル部から噴出する状態を示す断面図であり、(b)はシャワー使用開始時において同上の往き管から還流管への湯水の流れと空気の吸い込み状態とを説明する断面図である。
【図5】図3の変形例であり、同上の往き管から還流管への流れ方向に対して、往き管からノズル部への通水路への流れ方向を鋭角に配設した場合の一例を示す断面図である。
【図6】従来のシャワー装置の説明図である。
【図7】従来のシャワー装置の配管ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
本実施形態のシャワー装置1は、図2に示すように、使用者が着座してシャワー浴を行なう着座手段10と、縦長アーム形状をした左右一対のノズルユニット11とを備えている。ノズルユニット11は、左右一対の腰部用のノズル部2bと複数の全身シャワー浴用のノズル部2aを備えている。腰部用のノズル部2bは、使用者の主に腰部に向かって微細水流(シャワー)を噴霧するものである。全身シャワー浴用のノズル部2aは、使用者の主に上半身に向かって左右から温水を噴霧するものである。
【0013】
また本シャワー装置1は、後述するサーモバルブ12と切替バルブ4と排水電磁弁5とを、それぞれ電気的に制御する制御装置19(図1)を備えている。この制御装置19は、着座手段10の近くに配置したリモコン操作器30により遠隔操作される。座席下側には排水口8が配置されている。図中の18はハンドシャワー用のホース、13はハンドシャワー用のヘッドである。
【0014】
図1は、本シャワー装置1の配管系統の一例を示している。湯温を制御する温度制御手段としてサーモバルブ12を備えている。サーモバルブ12の上流には、逆止弁付き止水栓14,15を介して給水径路16と給湯径路17とが並列に接続されている。
【0015】
サーモバルブ12の下流には、混合した湯水の温度を検知するサーミスタ9と、圧力逃し弁20と、混合した湯水の供給を制御する主電磁弁21と、流量センサー22と、加圧ポンプ23と、電動式の切替バルブ4とが、直列に接続されている。圧力逃し弁20は、水圧が予め設定した圧力を越えたときにその圧力を外部へ逃す働きをする。
【0016】
電動式の切替バルブ4は、湯水の吐水経路を切替制御する切替制御手段を構成する。本例では切替バルブ4の一方の吐出口はノズル部2への往き管3に接続されており、切替バルブ4の他方の吐出口はハンドシャワー用のホース18に接続されている。
【0017】
本例のノズル部2は、腰部用の左右2個のノズル部2bと、全身シャワー浴用の複数のノズル部2aとで構成されている。本例のノズル部2への往き管3は、4系統に分岐されている。つまり、全身シャワー浴用の複数のノズル部2aを備えた2系統と、腰部用の単一のノズル部2bを備えた2系統とに分岐されている。
【0018】
上記往き管3には、ノズル部2の手前で往き管3から分岐し再び合流する還流管7が接続されている。図3の例では、往き管3と還流管7とを1本の連続した配管で構成してあり、各ノズル部2(2a又は2b)へ至る通水路6の手前で往き管3の延長上に還流管7が配置された配管構造となっている。図3中の矢印A1は排水口8を閉止した状態での湯水の流れ方向を示し、矢印Bは排水口8を開放したときの空気の流れ方向を示している。ここでは、往き管3の流れ方向Aに対して、通水路6への流れ方向A1を略直角に配置してある。
【0019】
上記還流管7は、図1に示すように、全てのノズル部2の下流側の位置で合流して1系統に集められ、さらにその下流は排水電磁弁5を介して、排水口8(図2参照)に接続されている。排水電磁弁5は、還流管7を開閉制御することで往き管3からの湯水を還流管7を介して排水口8へ排出するための排水制御手段を構成する。
【0020】
次に、ボディシャワーの使用動作を説明する。
【0021】
リモコン操作器30によりボディシャワー使用開始を指令すると、制御装置19がサーモバルブ12と切替バルブ4と排水電磁弁5とを電気的に制御する。つまり、排水電磁弁5を開いて、還流管7を排水口8に開放された状態とする。この状態で、サーモバルブ12からの湯水が切替バルブ4により往き管3へと流れ、さらに図4(b)の矢印Aのように、ノズル部2を通りすぎて還流管7へと流れる。このとき還流管7は排水口8を介して大気に開放された状態にあり、しかも還流管7の断面積S2は、ノズル部2への通水路6の断面積S1よりも大きい。従って、往き管3からの湯水は通水路6には流れずに、還流管7の方へと流れる。またこのとき往き管3から還流管7への湯水の水流圧によって、浴室内の空気が図4(b)の矢印Bのようにノズル部2から通水路6を通って還流管7側に吸い込まれるので、ノズル部2から湯水が噴出することはない。そして、還流管7に流れた湯水は、排水口8(図2)から浴室内へと排出される。このようにして配管内に残留していた冷水は往き管3からの湯水により押し出されるようにして排水口8から取り除かれる。
【0022】
その後、所定時間が経過した時点或いはサーミスタ9で検知される湯温が所定湯温に達した時点で、制御装置19により排水電磁弁5が自動的に閉じられる。これにより、排水口8からの排水が停止されると同時に、往き管3からの湯水は、閉止された還流管7に流れることができなくなる。従って、図4(a)の矢印A→A1のように、浴室内に開放された通水路6を通ってノズル部2へと供給され、ボディシャワー噴霧状態となる。また、リモコン操作器30によってハンドシャワーに切り替えると、切替バルブ4が湯水の止水方向をハンドシャワー用ホース18に向け、ハンドシャワーヘッド13から湯水が噴霧する状態となる。
【0023】
しかして、シャワー使用開始時に排水電磁弁5により還流管7を開放することで、使用初期や時間をあけての再使用時に配管内に残留している冷水の殆どを排水口8から取り除くことができる。従って、ボディシャワー使用開始時に冷水や汚れた残水を全身に浴びるようなことがなくなり、特に冬の寒冷期では使用者に不快感を与えることがない。しかも、着座手段10への座り姿勢のままで、リモコン操作器30を用いて、サーモバルブ12、切替バルブ4、排水電磁弁5をそれぞれ電気的に制御する制御装置19を遠隔操作できる。従って、特に身体を移動して制御装置19を操作するといった煩わしさもなくなり、快適にボディシャワーやハンドシャワーを浴びることができる。
【0024】
また本例では、ノズル部2への通水路6の断面積S1を、通水路6の手前から分岐した還流管7の断面積S2よりも小さく設定している。これにより、排水状態では往き管3からの湯水が、往き管3の延長上に位置する断面積S2の大きな還流管7の方へ流れ、ノズル部2の方へ流れることがない。このため、ノズル部2を開閉するための弁機構などを設ける必要がなく、構造を簡易化できる。また万一、冷水が通水路6からノズル部2に流れたとしても、通水路6の断面積S1を十分に小さくしているので冷水の噴霧は極少量で済み、使用者が不意に浴びたとしても冷たさの影響は殆どない。
【0025】
図5は本発明の他の実施形態であり、往き管3から還流管7への流れ方向Aに対して、往き管3からノズル部2への通水路6への流れ方向A1を鋭角θ(<90°)に配設したものである。他の構成は図3及び図4と同様である。本例では、排水状態において、往き管3からの湯水が、往き管3の延長上に位置する還流管7内に流れて、鋭角θに配置されたノズル部2への通水路6の方向へ逆流することがない効果をより高める。この結果、通水路6の断面積S1を還流管7の断面積S2よりも小さくした効果とあいまって、排水動作がより円滑に行なわれると共に、ノズル部2からの冷水噴霧を極力防止できるものとなる。
【0026】
なお、前述の実施形態では、ハンドシャワーを備えたシャワー装置を例示したが、ハンドシャワーは省略可能である。また、ボディシャワーの往き管3を複数系統に分岐配管したが、必ずしもこれに限られるものではない。
【符号の説明】
【0027】
1 シャワー装置
2 ノズル部
3 往き管
4 切替バルブ(切替制御手段)
5 排水電磁弁(排水制御手段)
6 通水路
7 還流管
8 排水口
19 制御装置
S1 往き管の断面積
S2 通水路の断面積
θ 鋭角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体を噴霧で包み込むように配設した単一或いは複数のノズル部と、湯温を制御する温度制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部に供給される湯水の吐水経路を切替制御する切替制御手段と、前記単一或いは複数のノズル部への往き管からノズル部手前で分岐して再び合流する還流管と、前記還流管の下流に設けた排水口と、前記還流管を開閉制御することで前記往き管からの湯水を前記還流管を介して前記排水口へ排出可能とする排水制御手段とを備えていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記温度制御手段と前記切替制御手段と前記排水制御手段を、それぞれ、電気的に制御する装置を備えていることを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−29795(P2012−29795A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170892(P2010−170892)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】