シャワー装置
【課題】均一且つ小さな気泡径の気泡混入水を散水孔に供給できるシャワー装置を提供する。
【解決手段】給水部の下流側に設けられ、給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、絞り部の下流側に設けられ、絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431が形成されている空気混入部と、空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部とを備え、絞り部には、複数の散水孔443が配された散水面と沿う方向に膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路421が設けられており、空気混入部には、絞り流路421から噴射された膜状水流が空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段を設けた。
【解決手段】給水部の下流側に設けられ、給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、絞り部の下流側に設けられ、絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431が形成されている空気混入部と、空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部とを備え、絞り部には、複数の散水孔443が配された散水面と沿う方向に膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路421が設けられており、空気混入部には、絞り流路421から噴射された膜状水流が空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において、いわゆるエジェクタ効果を利用して水に空気を混入させ、気泡混入水と成して吐出するシャワー装置が知られている。このような気泡混入水を吐出するシャワー装置によれば、少ない水量でありながら、使用者は量感のあるシャワー水を浴びることが可能となる。
【0003】
このようなシャワー装置の一例として、下記特許文献1に記載されているようなシャワー装置が提案されている。下記特許文献1に記載されているシャワー装置は、ハウジングシェルに水が流入してから空気を混入させて気泡混入水とするものであって、この気泡混入水を円盤状のハウジングシェルの前面全体に分布するように形成されている複数の散水孔に分配するために、気泡混入水の進行方向に乱流発生拡張部を配置し、この乱流発生拡張部に気泡混入水を衝突させて方向を転換させ、気泡混入水をハウジングシェルの前面全体に行き渡るように構成している。
【0004】
また、このようなシャワー装置の別な一例として、下記特許文献2に記載されているようなシャワー装置も提案されている。下記特許文献2に記載されているシャワー装置は、絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水とするものであって、この気泡混入水を吐出するための複数の散水孔を、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って配置することで、気泡混入水がシャワーヘッドの内壁と衝突して方向転換されることなく散水孔が形成された位置まで到達されるようにしている。
【0005】
下記特許文献1のようなシャワー装置は、気泡同士の衝突により不均一な気泡径に成長した気泡混入水が散水孔に供給されることになるため、吐出後に形成される水滴は、不均一な粒径の水滴となって使用者に当たることになる。一方、特許文献2のようなシャワー装置は、気泡同士の衝突が抑制され、小さな気泡径を極力均一に保った気泡混入水が散水孔に供給されることになるため、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることができ、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地を感じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−509629号公報
【特許文献2】特開2010−162532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のシャワー装置によれば、小さな気泡径を極力均一に保った気泡混入水を散水孔に供給することはできるものの、まだ改善の余地があった。具体的には、絞り部から噴射される水流が線状の水流であるため、線状の水流が気液界面に突入した場合は、水流が線ではなく点で気液界面に突入するため、線状の水流を中心にその突入点を囲むように全方向から対流が発生する。このように線状の水流が突入する突入点を囲み、その突入点に向うように全方向から対流が発生すると、それら対流は互いに衝突する方向に発生することになる。従って、線状の水流を気液界面に突入させた場合には、その突入点を囲んで発生する対流が互いに衝突しやすくなり、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くおそれがある。
【0008】
上述した課題を踏まえ、本発明の第1の目的は、絞り部から噴射される水流が気液界面に突入する際に発生する対流が互いに衝突することを抑制することである。
【0009】
この第1の目的に対して、本発明者らが想到したシャワー装置は、水を供給するための給水部と、前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられている。このような構成によって、絞り部から噴射される水流が気液界面に突入する際に発生する対流が互いに衝突することを抑制することができる。
【0010】
本発明は、上記第1の目的に加え、更に以下の点についても工夫している。具体的には、扁平形状の絞り流路から噴射された膜状水流は、空気混入部に存在する空気、あるいは空気混入部を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流は、気液界面に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流には、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面位置においても膜状水流としての状態をより確実に維持し続けられるようにするためには、絞り流路から噴射された膜状水流全体の速度ベクトルが気液界面に到達するまで、全体として極力、揃っていることが好ましい。すなわち、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面に突入する前に膜状水流が分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流が気液界面に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くことになり好ましくない。
【0011】
このように、本発明の第2の目的は、絞り流路から噴射された膜状水流が気液界面に到達するまでに分断されることなく、膜状水流としての状態を維持したまま気液界面に突入できるようにすることである。
【0012】
本発明は上述した課題を解決するためのものであり、より均一且つ小さな気泡径の気泡混入水を散水孔に供給できるようにすることで、より均一且つ大きな粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係るシャワー装置は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、水を供給するための給水部と、前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられており、前記空気混入部には、前記絞り流路から噴射された前記膜状水流が前記空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、給水部から供給される水が絞り部を通って空気混入部に向けて噴射され、空気混入部及び散水部に一時的に貯留された水が散水部の複数の散水孔から外部へと吐出される。絞り部を通って噴射される水は、空気混入部に形成されている開口から取り込まれた空気を伴って、空気混入部に一時的に貯留された水と空気との気液界面に突入することで気泡混入水となり、散水部の複数の散水孔から散水される。
【0015】
また、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されているため、気泡混入水は空気混入部および散水部を構成する内壁に衝突して方向転換されるようなことがないため、その略均一な気泡径のまま散水孔が形成された位置まで到達することができる。このように略均一で小さな気泡径の気泡を含む気泡混入水が散水孔から吐出されると、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0016】
更に本発明では、より均一で小さな気泡径の気泡を含む気泡混入水を散水孔から吐出するために、絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路を設けている。扁平形状の絞り流路から噴射された水流は、その断面形状が扁平形状を成す膜状の水流となって気液界面へと向う。膜状の水流が気液界面に突入すると、膜状の水流に沿った領域では膜状の水流が略平面状に延びる方向に沿って、その膜状の水流が気液界面に突入する方向に沿った対流が並ぶように発生する。このような対流が発生すると、対流の発生方向が膜状の水流の一方側では揃うと共に、他方側で発生する対流とは回転方向が逆になるものの膜状の水流が突入する気液界面近傍では双方の対流の進行方向が揃うため、近接する対流が互いに衝突するおそれが低減される。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性をより低減することができる。
【0017】
更に本発明では、絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段を設けている。本発明のような、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されるシャワー装置においては、気液界面の位置は、絞り流路から離間した位置に形成されることとなる。一方、絞り流路から噴射された膜状水流は、空気混入部に存在する空気、あるいは空気混入部を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流は、気液界面に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流を形成している成分の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流には、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面位置においても膜状水流としての状態をより確実に維持し続けられるようにするためには、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルが気液界面に到達するまで、全体として極力、揃っていることが好ましい。本発明によれば、膜状水流分断抑制手段を設けているため、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。よって、より確実に、気液界面位置における対流の衝突を低減することができる。
【0018】
また本発明に係るシャワー装置では、前記膜状水流分断抑制手段は、前記空気混入部内に突出する微細突起であり、前記微細突起は、前記膜状水流の速度ベクトルを前記絞り流路に対して直進方向の速度ベクトル成分となるように矯正するものであることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、空気混入部内に突出して設けられた微細突起によって、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正することができるため、簡単な構成で、膜状水流の速度ベクトルの乱れを矯正することができ、気液界面に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可できる。
【0020】
また本発明に係るシャワー装置では、前記微細突起の下流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されていることも好ましい。
【0021】
膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するために微細突起を設けると、膜状水流は微細突起の周囲は、部分的にみると小分けされた水流となる。微細突起によって部分的に小分けされた分流は、微細突起の下流側近傍位置において再び膜状水流として合流される必要がある。この好ましい態様では、微細突起の下流側部位が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成したため、小分けされたそれぞれの分流の一部が、微細突起に沿って下流側に導かれて、その下流側近傍位置において滑らかに合流させることができる。
【0022】
また本発明に係るシャワー装置では、前記微細突起の上流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されていることも好ましい。
【0023】
膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するために微細突起を設けると、膜状水流は微細突起の周囲を部分的にみると小分けされた水流となる。小分けにする際、膜状水流が微細突起と正面衝突してしまうと、膜状水流が大きく乱れてしまい、微細突起によって直進方向に整流されにくくなるとともに、微細突起の下流側近傍位置においても分流が合流されにくくなり、膜状水流としての状態を維持できなくなる恐れがある。この好ましい態様では、微細突起の上流側部位が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成したため、絞り流路から噴射された膜状水流の流れが大きく乱れることを抑制できるため、より確実に、微細突起によって直進方向に整流されやすくなるとともに、微細突起の下流側近傍位置において分流を合流させやすいくすることができ、膜状水流としての状態を維持しやすくすることができる。
【0024】
また本発明に係るシャワー装置では、前記絞り流路の噴射方向が長辺となり、前記絞り部の噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状であることも好ましい。
【0025】
この好ましい態様では、絞り部の噴射方向と直交する方向の断面積は小さく、且つ絞り部の噴射方向の断面積は大きく形成されることとなるため、絞り部から噴射された膜状水流の流れを大きく乱すことなく分流させることができる。また、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するための距離を大きく確保することができるため、より安定的に小分けにされた分流を直進方向に整流することができる。また、微細突起の下流側近傍位置においてより確実に膜状水流としての状態を維持可能なように分流を合流させることができる。
【0026】
また本発明に係るシャワー装置では、前記絞り流路は、放射状に前記膜状水流を噴射するように構成され、前記複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されており、前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けられていることも好ましい。
【0027】
この好ましい態様では、微細突起を絞り部に噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けることで、絞り部から噴射された膜状水流の速度ベクトルを絞り部に対して直進方向(放射方向)に整流している。このように構成することで、放射状に膜状水流を噴射するようなシャワー装置においても、気液界面位置に対して、より確実に膜状の水流を突入させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、より均一且つ小さな気泡径の気泡混入水を散水孔に供給できるようにすることで、より大きく均一な粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることが可能なシャワー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の第一実施形態に係るシャワー装置を示す図であって、(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は下面図を示している。
【図2】図1の(B)におけるA−A断面を示す断面図である。
【図3】図1の(A)におけるB−B断面側から見た断面斜視図である。
【図4】図1の(B)におけるC矢視図である。
【図5】図1の(A)におけるB−B断面に相当する断面を示す図であって、シャワー装置内の水の流れを示す図である。
【図6】本願発明の第一実施形態に係るシャワー装置内の気泡混入水の発生状態を示す図である。
【図7】比較例に係るシャワー装置内の気泡混入水の発生状態を示す図である。
【図8】比較例に係る気液界面の状態を示す図である。
【図9】本願発明の第一実施形態に係る気液界面の状態を示す図である。
【図10】微細突起に対する膜状水流の流れ方を拡大して示す図である。
【図11】本願発明の第二実施形態に係るシャワー装置を示す図であって、(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は下面図を示している。
【図12】図11の(A)におけるF−F断面を示す断面図である。
【図13】図12に示す水噴射コマ近傍を拡大して示す拡大斜視断面図である。
【図14】図12に示す水噴射コマ近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【図15】本願発明の第二実施形態に係る気液界面の状態を示す図である。
【図16】比較例に係る気液界面の状態を示す図である。
【図17】微細突起の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0031】
続いて、本発明の第一実施形態であるシャワー装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るシャワー装置F1を示す図であって、図1の(A)は平面図を示し、図8の(B)は側面図を示し、図8の(C)は下面図を示している。
【0032】
図1の(A)に示されるように、シャワー装置F1は主に略直方体を成す本体2によって構成されており、シャワー装置F1(本体2)の上面2aには開口231が形成されている。図1の(B)に示されるように、シャワー装置F1の上面2aと対向する下面2bには複数の散水突起242が設けられている。各散水突起242には散水孔243が形成されている。図1の(C)に示されるように、本体2の下面2bには複数の散水突起242が設けられている。本実施形態の場合、散水突起242は7行×10列に70個形成されている。
【0033】
続いて、図1の(B)のC−C断面図である図2を参照しながらシャワー装置F1について説明を加える。図2に示されるように、シャワー装置F1は、給水部21と、絞り部22と、空気混入部23と、散水部24と、を備えている。
【0034】
給水部21は、水を供給するための部分であって、給水口21dから導入した水を絞り部22へと供給する部分である。給水口21dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部21から絞り部22へと供給される。給水部21は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁21e及び側壁21fを有しており、側壁21eと側壁21fとは互いに平行になるように配置されている。
【0035】
絞り部22は、給水部21の下流側に設けられており、給水部21よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための部分である。絞り部22は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁22e及び側壁22fを有しており、側壁22eと側壁22fとは互いに平行になるように配置されている。
【0036】
絞り部22には、単一の絞り流路221が設けられている。絞り流路221は、側壁22eから側壁22fに向う方向が長辺側となるように扁平形状且つスリット状に形成されている。
【0037】
絞り流路221の様子を図4に示す。図4は、図1の(B)のC矢視図である。図4に示すように、絞り流路221は、本体2の上面2a及び下面2bに沿った辺が長辺となり、側壁22e,22fに沿った辺が短辺となるように扁平形状且つスリット状に形成されている。
【0038】
図2に戻ってその他の部分の説明を続ける。空気混入部23は、絞り部22の下流側に設けられており、絞り部22を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口231が形成されている部分である。空気混入部23は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁23ea,23eb及び側壁23fa,23fbを有している。
【0039】
側壁23eaと側壁23faとは互いに平行になるように配置されている。側壁23ebは側壁23eaの下流側に連続して設けられている壁であって、側壁23eaに繋がっている部分よりも下流側に向かって外側に流路を広げるように斜めに配置されている。同様に、側壁23fbは側壁23faの下流側に連続して設けられている壁であって、側壁23faに繋がっている部分よりも下流側に向かって外側に流路を広げるように斜めに配置されている。また、空気混入部23には、膜状水流分断抑制手段として微細突起30が、絞り流路221の長辺方向に対して間隔を空けて3つ設けられている。この微細突起30は、その上流側端部が絞り流路221の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されており、その下流側端部が絞り流路221の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されている。また、全体として、絞り流路221の噴射方向が長辺となり、噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状に形成されている。
【0040】
散水部24は、空気混入部23の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔243が形成されている部分である。散水孔243は、散水突起242(図2においては明示しない)に形成されている。
【0041】
図2に示すように、給水部21を構成する側壁21eと、絞り部22を構成する側壁22eと、空気混入部23の一部を構成する側壁23eaとは同一面上に位置するように配置されている。空気混入部23の残部を構成する側壁23ebは本体2の外側側面に向かうように斜めに配置され、散水部24を構成する側壁24eに繋がっている。同様に、給水部21を構成する側壁21fと、絞り部22を構成する側壁22fと、空気混入部23の一部を構成する側壁23faとは同一面上に位置するように配置されている。空気混入部23の残部を構成する側壁23fbは本体2の外側側面に向かうように斜めに配置され、散水部24を構成する側壁24fに繋がっている。
【0042】
続いて、図1の(A)のB−B断面図である図3を参照しながらシャワー装置F1について説明を加える。図3に示されるように、給水部21は、側壁21eと側壁21fとを繋ぐ側壁21b及び側壁21cを有している。側壁21b及び側壁21cは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁21e及び側壁21fよりも長くなるように形成されている。従って、給水部21は流路断面が扁平形状となるように形成されている。給水部21と絞り部22との境界部分には、前壁面21aが設けられていて、側壁21e,21f,21b,21cは前壁面21aに繋がっている。前壁面21aは、側壁21bから側壁21cに延びる部分と、側壁21cから側壁21bに延びる部分とで構成されている。
【0043】
前壁面21aを下流側に越えた領域には絞り部22が設けられている。絞り部22は、側壁22eと側壁22fとを繋ぐ側壁22b及び側壁22cを有している。側壁22b及び側壁22cは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁22e及び側壁22fよりも長くなるように形成されている。従って、絞り部22の側壁22b,22c,22e,22fで囲まれた流路断面は扁平形状となるように形成されている。絞り部22と空気混入部23との境界部分には仕切壁22aが設けられていて、側壁22e,22f,22b,22cは仕切壁22aに繋がっている。仕切壁22aには、扁平形状且つスリット状の絞り流路221が形成されている。
【0044】
仕切壁22aを下流側に越えた領域には空気混入部23が設けられている。空気混入部23は、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbとを繋ぐ側壁23b、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbとを繋ぐ側壁であって側壁23bと対向し相対的に側壁23bから遠い位置に配置されている側壁23c、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbを繋ぐ側壁であって側壁23bと対向し相対的に側壁23bに近い位置に配置されている側壁23dを有している。側壁23cは散水部24側に、側壁23dは絞り部22側に、それぞれ配置されており側壁23cと側壁23dとを繋ぐ段差部23gが形成されている。側壁23b,23c,23dは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁23ea,23eb及び側壁23fa,23fbよりも長くなるように形成されている。従って、空気混入部23は流路断面が扁平形状となるように形成されている。
【0045】
側壁23cよりも下流側の領域には散水部24が設けられている。散水部24は、側壁24eと側壁24fとを繋ぐ側壁であって、空気混入部23の側壁23bと同一面を形成する側壁24bを有している。更に散水部24は、側壁24eと側壁24fとを繋ぐ側壁であって、空気混入部23の側壁23cと同一平面を形成する側壁24cを有している。側壁24b,24c,24e,24fは、給水口21dと対向するように位置し流路の末端として機能する奥側の側壁24aに繋がっている。散水部24には、本体2の下面2bから突出する散水突起242が形成されており、散水突起242には散水孔243が形成されている。
【0046】
続いて、シャワー装置F1内部の水の流れについて図5を参照しながら説明する。図5は、図1の(A)のB−B断面を簡略化して示す図であって、シャワー装置F1に水を供給した際の内部の水の状態を示す図である。
【0047】
図5に示すように、給水部21に給水手段(図示しない)から水が所定圧力以上で供給されると、絞り部22に形成された絞り流路221を通って下流側に噴射される。絞り流路221から下流側の空気混入部23及び散水部24に噴射された膜状の水流である膜状水流WFは、空気混入部23の側壁23b,23c,23d,23e,23f及び散水部24の側壁24b,24c,24d,24eと干渉しないように、最も遠くに位置する散水孔243までその噴射水仮想直線BW1が延びるように噴射される。噴射水仮想直線BW1は、絞り部22から噴射される水の噴射方向を延伸させた仮想的な直線である。
【0048】
このように絞り部22から膜状水流が噴射されると、散水部24及び空気混入部23の少なくとも一部に一時的に水が溜まり、その溜まった水と空気との界面である気液界面BW3が形成される。従って、噴射水仮想直線BW1に沿って噴射された膜状水流が気液界面BW3から溜まった水に対して突入し、空気混入部23に存在する空気を巻き込んで気泡混入水BWが生成される。気泡混入水BWは各水流BW2に分かれて各散水孔243から外部に吐出される。空気混入部23には開口231が形成されているので、噴射水仮想直線BW1に沿って噴射された膜状水流が気液界面BW3から溜まった水に対して突入し、空気混入部23に存在する空気を巻き込んでも、空気が常に供給される状態を維持することができる。
【0049】
本実施形態では、絞り部22の絞り流路221を扁平形状且つスリット状に形成し、膜状水流WFを噴射することで微細な気泡を含む気泡混入水BWを生成するものとしている。図6に、膜状水流WFが気液界面BW3に突入する状態を模式的に示す図を示す。
【0050】
図6に示すように、扁平形状且つスリット状の絞り流路221から噴射された水流は、その断面形状が扁平形状を成す膜状水流WFとなって気液界面BW3へと向う。膜状水流WFが気液界面BW3に突入すると、膜状水流WFに沿った領域では膜状水流WFが略平面状に延びる方向であるx方向に沿って、その膜状水流WFが気液界面BW3に突入する方向に沿った対流が並ぶように発生する。
【0051】
このような対流が発生すると、対流の発生方向が膜状水流WFの一方側(図中において膜状水流WFの手前側)では揃うと共に、他方側(図中において膜状水流WFの反対側)で発生する対流とは回転方向が逆になるものの膜状水流WFが突入する気液界面BW3近傍では双方の対流の進行方向が揃うため、近接する対流が互いに衝突するおそれが低減される。膜状水流WFの両端ではその対流に加えて膜状水流WFの両端に向う対流も発生するが、膜状水流WFの両端を除いた領域では、膜状水流WFを挟んで膜状水流WFに向う対流のみが発生するので、全体としてみた場合にも気液界面BW3近傍での対流の衝突が低減される。
【0052】
一方、線状の噴射水を気液界面に突入させた場合について図7を参照しながら説明する。図7は、線状水流WFsが気液界面BW3に突入する状態を模式的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、線状水流WFsを気液界面BW3に突入させた場合は、水流が線ではなく点で気液界面BW3に突入するため、線状水流WFsを中心にその突入点を囲むように全方向(図中においてxz平面の全ての方向)から対流が発生する。このように線状水流WFsが突入する突入点を囲み、その突入点に向うように全方向から対流が発生すると、それら対流は互いに衝突する方向に発生することになる。従って、線状水流WFsを気液界面BW3に突入させた場合には、その突入点を囲んで発生する対流が互いに衝突しやすくなり、気泡の衝突が発生し気泡の肥大化を招くおそれがある。
【0054】
これに対して図6に示す本実施形態のように膜状水流WFを発生させると、上述したように膜状水流WFが突入する突入線を挟んで互いに衝突し難い対流が発生する。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性を低減することができる。気泡混入水中の気泡が微細化され、気泡混入水の流れが衝突し難くなって微細化された気泡が維持される。
【0055】
更に本実施形態では、絞り流路221と気液界面BW3との間に扁平形状の微細突起30を備えている。図8に示すように、扁平形状の絞り流路221から噴射される膜状水流WFは、空気混入部23に存在する空気、あるいは空気混入部23を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流WFは、気液界面BW3に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流WFには、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面BW3に突入する前に膜状水流WFが分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流WFが気液界面BW3に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くこととなる。
【0056】
これに対して図9に示す本実施形態では、空気混入部23に微細突起30を複数設けているため、この微細突起30によって、絞り流路221から噴射された膜状水流WFの速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面BW3に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。
【0057】
この微細突起30の作用について、図10を用いて、より具体的に説明する。絞り流路から噴射された膜状水流WFは、まず、微細突起30の上流側端部に衝突する。この際、微細突起30は、絞り流路の噴射方向と直交する方向が5mm以下となるように小さく形成されており、且つ、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大されるように形成されているため、衝突によって膜状水流が大きく乱れることなく、微細突起の上流端部の側壁面に沿って滑らかに下流側に導かれることとなる。微細突起の中流部には、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正することが可能なように、絞り流路の開口方向に対して略平行となる側壁面が設けられている。これによって、仮に、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルが乱れていたとしても、微細突起によって、膜状水流の速度ベクトルを全体として揃え直ことができる。直進方向に矯正された膜状水流は、微細突起の下流側端部が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されているため、微細突起を挟んで小分けにされた分流をその下流側近傍位置において滑らかに合流させることができる。小分けにされた分流は、それぞれ対向する速度ベクトルを打ち消し合いながら合流して下流側に流れるため、膜状水流の速度ベクトルが全体として直進方向に矯正されることになる。
【0058】
このように略均一な気泡径の気泡を含む気泡混入水BWが散水孔243に供給されると、散水孔243内及び散水孔243から吐出された直後において気泡流又はスラグ流を形成することができる。このように略均一な気泡径の気泡を含み気泡流又はスラグ流として形成される気泡混入水BWが散水孔243から吐出されると、環状流のようにミスト化することなく、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0059】
また本実施形態に係るシャワー装置F1では、開口231は、膜状水流WFに対して一方側にのみ設けられているけれども、開口231を、膜状水流WFを挟んで一方側と他方側とに位置するように少なくとも一対設けられていることも好ましい。
【0060】
本実施形態では、絞り流路221から膜状水流WFを噴射するため、上述したような気泡肥大化の抑制効果があるものの膜状水流WFを挟んだ空気の移動が抑制される傾向にある。そこで、膜状水流WFを挟んで一方側と他方側との双方に開口231を設けることで、膜状水流WFの双方に空気をムラ無く供給することができ、円滑な気泡混入水BWの生成に寄与することができる。
【0061】
上述した第一実施形態に係るシャワー装置F1は、本体2を略直方体状に形成し、絞り部22によって噴射される水の方向を同一方向に揃えたものである。本発明の趣旨に鑑みれば実施の形態はこれらに限られるものではなく、絞り流路は、放射状に膜状の水流を噴射するように構成され、複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されるように構成することも可能である。複数の散水孔が配置される領域は、円形領域であったり矩形領域であったり様々な形態の領域と成すことが可能である。続いて説明する本発明の第二実施形態では、本体を略円盤状に形成し、絞り部によって噴射される水の方向を放射状にするものを例にとって説明する。
【0062】
本発明の第二実施形態であるシャワー装置について図11を参照しながら説明する。図11は、本発明の第二実施形態に係るシャワー装置F3を示す図であって、図11の(A)は平面図を示し、図11の(B)は側面図を示し、図11の(C)は下面図を示している。図11の(A)に示されるように、シャワー装置F3は主に略円盤状を成す本体4によって構成されており、シャワー装置F3(本体4)の上面4aには給水口41dが形成されている。
【0063】
図11の(B)に示されるように、シャワー装置F3の本体4は、給水口41dが形成されているキャビティ4Aと、散水孔443が形成されているシャワープレート4Bとによってその外形が構成されている。図11の(C)に示されるように、本体4の下面4bには複数の散水孔443が形成されていると共に、開口431も形成されている。本実施形態の場合、散水孔443は開口431を中心とした放射状に配置されている。
【0064】
続いて、図11の(A)のF−F断面図である図12を参照しながらシャワー装置F3について説明を加える。図12に示されるように、シャワー装置F3は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、水噴射コマ4Cとによって構成されている。
【0065】
キャビティ4Aは、シャワープレート4Bと共に本体4の外形を形成する部材であって、本体4の上面4aとは反対側の当接面4Aaから上面4aに向けて円形の凹部4Abが形成されている。
【0066】
キャビティ4Aの中心近傍には、上面4aから凹部4Abに至る貫通穴4Acが形成されている。このように貫通穴4Acを設けることで、給水口41dから絞り部42に至る給水部41が形成されている。
【0067】
シャワープレート4Bは、キャビティ4Aと共に本体4の外形を形成する部材であって、散水孔443が放射状に複数個形成されている。この散水孔443が形成されている領域の下面4bとは反対側の当接面4Baは散水部44の側壁44cとなるように構成されている。
【0068】
シャワープレート4Bの当接面4Baとキャビティ4Aの当接面4Aaとを当接させると、キャビティ4Aの凹部4Abとの間には空隙が形成され、この空隙が空気混入部43及び散水部44となるように構成されている。凹部4Abの一部分は散水部44の側壁44aとなるように構成されている。
【0069】
続いて、水噴射コマ4Cについて図10を参照しながら説明する。図10は水噴射コマ4C近傍を拡大した斜視断面図である。図10に示されるように、水噴射コマ4Cは、フランジ4Cbをツバとする帽子形状を成しており、その帽子形状の頂部に相当するフランジ4Cbとは反対側の端部に空気導入突起部4Caが形成されている。空気導入突起部4Caとは反対側であってフランジ4Cbの中央近傍には絞り突起部4Cdが形成されている。
【0070】
絞り突起部4Cdは、絞り部42の一部を構成するものであって、キャビティ4Aと対向することで絞り流路421を形成している。従って、絞り流路421は、キャビティ4Aの中央近傍から放射状且つ膜状の水が噴射されるように全周に渡ってスリットを形成している。
【0071】
絞り突起部4Cdの周囲には空気導入孔431aが、絞り突起部4Cdの全周に渡って複数個形成されている。空気導入孔431aは、空気導入突起部4Caに形成されている開口431と連通しており、絞り流路421に対して空気を供給するものである。
【0072】
シャワープレート4Bにおいては、本体4の下面4bとは反対側の当接面4Baから下面4bに向けて円形の凹部4Bcが形成されている。凹部4Bcは、放射状に設けられた散水孔443の内側に位置するように、シャワープレート4Bの中央に設けられている。凹部4Bcの底面から下面4bに至るように貫通穴4Bbが形成されている。凹部4Bcには、水噴射コマ4Cが収められている。
【0073】
水噴射コマ4Cの空気導入突起部4Caは、貫通穴4Bbから外部に突出するように配置されている。従って、空気導入突起部4Caに形成されている開口431は、外気を取り込むことが可能なように構成されている。
【0074】
上述したようにキャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、水噴射コマ4Cとを組み上げることで、シャワー装置F3は、給水部41と、絞り部42と、空気混入部43と、散水部44とを備えるように構成される。
【0075】
給水部41は、水を供給するための部分であって、給水口41dから導入した水を絞り部42へと供給する部分である。給水口41dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部41から絞り部42へと供給される。
【0076】
絞り部42は、給水部41の下流側に設けられており、給水部41よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための部分である。絞り部42には、単一の絞り流路421が形成されている。
【0077】
空気混入部43は、絞り部42の下流側に設けられており、絞り部42を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431が形成されている部分である。また、空気混入部43には、膜状水流分断抑制手段として微細突起30が、絞り流路421に対して放射状に間隔を空けて6つ設けられている。この微細突起30は、その上流側端部が絞り流路421に対する放射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されており、その下流側端部が絞り流路221に対する放射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されている。また、全体として、絞り流路221に対する放射方向が長辺となり、放射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状に形成されている。
【0078】
散水部44は、空気混入部43の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている部分である。
【0079】
このシャワー装置F3では、給水部41から水を供給すると、絞り部42の絞り流路421から膜状水流WFcが噴射される。この膜状水流WFcの噴射状態を図15に示す。図13は、シャワー装置F3を給水部41側から見た場合の膜状水流WFcの噴射状態を模式的に示す図である。図13に示すように、膜状水流WFcは全周に渡って噴射される。
【0080】
このように膜状水流WFcを噴射することで、第一実施形態に係るシャワー装置F1と同様に、膜状水流WFcが突入する突入線を挟んで互いに衝突し難い対流が発生する。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性を低減することができる。気泡混入水中の気泡が微細化され、気泡混入水の流れが衝突し難くなって微細化された気泡が維持される。
【0081】
更に本実施形態では、絞り流路421と気液界面BW3との間に扁平形状の微細突起30を備えている。図16に示すように、全周に渡ってスリット状に形成された絞り流路421から噴射される放射状の膜状水流WFcは、空気混入部43に存在する空気、あるいは空気混入部43を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流WFcは、気液界面BW3に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流WFcには、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。特に、本実施形態のように、放射状に膜状水流WFcを噴射する形態においては、噴射時の僅かな乱れが外周方向に進むにつれ増幅し、気液界面BW3近傍では大きな乱れとなるおそれがある。
膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面BW3に突入する前に膜状水流WFcが分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流WFcが気液界面BW3に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くこととなる。
【0082】
これに対して図15に示す本実施形態では、空気混入部23に微細突起30を複数設けているため、この微細突起30によって、絞り流路421から噴射された放射状の膜状水流WFcの速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面BW3に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。
【0083】
このように略均一な気泡径の気泡を含む気泡混入水が散水孔443に供給されると、散水孔443内及び散水孔443から吐出された直後において気泡流又はスラグ流を形成することができる。このように略均一な気泡径の気泡を含み気泡流又はスラグ流として形成される気泡混入水が散水孔443から吐出されると、環状流のようにミスト化することなく、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。また、微細突起30の形状としては、上述した第1および第2の実施形態に限定されるものではなく、例えば、図17に示すように新円形状や多角形状であって良く、同様の作用効果を奏するものは本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0085】
F1:シャワー装置
2:本体
2a:上面
2b:下面
21:給水部
21a:前壁面
21b:側壁
21c:側壁
21d:給水口
21e:側壁
21f:側壁
22:絞り部
22a:仕切壁
22b:側壁
22c:側壁
22e:側壁
22f:側壁
221:絞り流路
23:空気混入部
23b:側壁
23c:側壁
23d:側壁
23ea:側壁
23eb:側壁
23fa:側壁
23fb:側壁
23g:段差部
231:開口
24:散水部
24a:側壁
24b:側壁
24c:側壁
24e:側壁
24f:側壁
242:散水突起
243:散水孔
30:微細突起
BW:気泡混入水
BW1:噴射水仮想直線
BW2:水流
BW3:気液界面
WF:膜状水流
WFs:線状水流
F3:シャワー装置
4:本体
4A:キャビティ
4Aa:当接面
4Ab:凹部
4Ac:貫通穴
4B:シャワープレート
4Ba:当接面
4Bb:貫通穴
4Bc:凹部
4C:水噴射コマ
4Ca:空気導入突起部
4Cb:フランジ
4Cd:絞り突起部
4a:上面
4b:下面
41:給水部
41d:給水口
42:絞り部
421:絞り流路
43:空気混入部
43b:側壁
43c:側壁
431:開口
431a:空気導入孔
44:散水部
44a:側壁
44b:側壁
44c:側壁
443:散水孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この技術分野において、いわゆるエジェクタ効果を利用して水に空気を混入させ、気泡混入水と成して吐出するシャワー装置が知られている。このような気泡混入水を吐出するシャワー装置によれば、少ない水量でありながら、使用者は量感のあるシャワー水を浴びることが可能となる。
【0003】
このようなシャワー装置の一例として、下記特許文献1に記載されているようなシャワー装置が提案されている。下記特許文献1に記載されているシャワー装置は、ハウジングシェルに水が流入してから空気を混入させて気泡混入水とするものであって、この気泡混入水を円盤状のハウジングシェルの前面全体に分布するように形成されている複数の散水孔に分配するために、気泡混入水の進行方向に乱流発生拡張部を配置し、この乱流発生拡張部に気泡混入水を衝突させて方向を転換させ、気泡混入水をハウジングシェルの前面全体に行き渡るように構成している。
【0004】
また、このようなシャワー装置の別な一例として、下記特許文献2に記載されているようなシャワー装置も提案されている。下記特許文献2に記載されているシャワー装置は、絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水とするものであって、この気泡混入水を吐出するための複数の散水孔を、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って配置することで、気泡混入水がシャワーヘッドの内壁と衝突して方向転換されることなく散水孔が形成された位置まで到達されるようにしている。
【0005】
下記特許文献1のようなシャワー装置は、気泡同士の衝突により不均一な気泡径に成長した気泡混入水が散水孔に供給されることになるため、吐出後に形成される水滴は、不均一な粒径の水滴となって使用者に当たることになる。一方、特許文献2のようなシャワー装置は、気泡同士の衝突が抑制され、小さな気泡径を極力均一に保った気泡混入水が散水孔に供給されることになるため、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることができ、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地を感じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−509629号公報
【特許文献2】特開2010−162532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2のシャワー装置によれば、小さな気泡径を極力均一に保った気泡混入水を散水孔に供給することはできるものの、まだ改善の余地があった。具体的には、絞り部から噴射される水流が線状の水流であるため、線状の水流が気液界面に突入した場合は、水流が線ではなく点で気液界面に突入するため、線状の水流を中心にその突入点を囲むように全方向から対流が発生する。このように線状の水流が突入する突入点を囲み、その突入点に向うように全方向から対流が発生すると、それら対流は互いに衝突する方向に発生することになる。従って、線状の水流を気液界面に突入させた場合には、その突入点を囲んで発生する対流が互いに衝突しやすくなり、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くおそれがある。
【0008】
上述した課題を踏まえ、本発明の第1の目的は、絞り部から噴射される水流が気液界面に突入する際に発生する対流が互いに衝突することを抑制することである。
【0009】
この第1の目的に対して、本発明者らが想到したシャワー装置は、水を供給するための給水部と、前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられている。このような構成によって、絞り部から噴射される水流が気液界面に突入する際に発生する対流が互いに衝突することを抑制することができる。
【0010】
本発明は、上記第1の目的に加え、更に以下の点についても工夫している。具体的には、扁平形状の絞り流路から噴射された膜状水流は、空気混入部に存在する空気、あるいは空気混入部を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流は、気液界面に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流には、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面位置においても膜状水流としての状態をより確実に維持し続けられるようにするためには、絞り流路から噴射された膜状水流全体の速度ベクトルが気液界面に到達するまで、全体として極力、揃っていることが好ましい。すなわち、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面に突入する前に膜状水流が分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流が気液界面に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くことになり好ましくない。
【0011】
このように、本発明の第2の目的は、絞り流路から噴射された膜状水流が気液界面に到達するまでに分断されることなく、膜状水流としての状態を維持したまま気液界面に突入できるようにすることである。
【0012】
本発明は上述した課題を解決するためのものであり、より均一且つ小さな気泡径の気泡混入水を散水孔に供給できるようにすることで、より均一且つ大きな粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明に係るシャワー装置は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、水を供給するための給水部と、前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられており、前記空気混入部には、前記絞り流路から噴射された前記膜状水流が前記空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、給水部から供給される水が絞り部を通って空気混入部に向けて噴射され、空気混入部及び散水部に一時的に貯留された水が散水部の複数の散水孔から外部へと吐出される。絞り部を通って噴射される水は、空気混入部に形成されている開口から取り込まれた空気を伴って、空気混入部に一時的に貯留された水と空気との気液界面に突入することで気泡混入水となり、散水部の複数の散水孔から散水される。
【0015】
また、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されているため、気泡混入水は空気混入部および散水部を構成する内壁に衝突して方向転換されるようなことがないため、その略均一な気泡径のまま散水孔が形成された位置まで到達することができる。このように略均一で小さな気泡径の気泡を含む気泡混入水が散水孔から吐出されると、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0016】
更に本発明では、より均一で小さな気泡径の気泡を含む気泡混入水を散水孔から吐出するために、絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状の水流である膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路を設けている。扁平形状の絞り流路から噴射された水流は、その断面形状が扁平形状を成す膜状の水流となって気液界面へと向う。膜状の水流が気液界面に突入すると、膜状の水流に沿った領域では膜状の水流が略平面状に延びる方向に沿って、その膜状の水流が気液界面に突入する方向に沿った対流が並ぶように発生する。このような対流が発生すると、対流の発生方向が膜状の水流の一方側では揃うと共に、他方側で発生する対流とは回転方向が逆になるものの膜状の水流が突入する気液界面近傍では双方の対流の進行方向が揃うため、近接する対流が互いに衝突するおそれが低減される。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性をより低減することができる。
【0017】
更に本発明では、絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段を設けている。本発明のような、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されるシャワー装置においては、気液界面の位置は、絞り流路から離間した位置に形成されることとなる。一方、絞り流路から噴射された膜状水流は、空気混入部に存在する空気、あるいは空気混入部を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流は、気液界面に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流を形成している成分の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流には、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流の一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。絞り流路から噴射された膜状水流が、気液界面位置においても膜状水流としての状態をより確実に維持し続けられるようにするためには、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルが気液界面に到達するまで、全体として極力、揃っていることが好ましい。本発明によれば、膜状水流分断抑制手段を設けているため、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。よって、より確実に、気液界面位置における対流の衝突を低減することができる。
【0018】
また本発明に係るシャワー装置では、前記膜状水流分断抑制手段は、前記空気混入部内に突出する微細突起であり、前記微細突起は、前記膜状水流の速度ベクトルを前記絞り流路に対して直進方向の速度ベクトル成分となるように矯正するものであることも好ましい。
【0019】
この好ましい態様では、空気混入部内に突出して設けられた微細突起によって、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正することができるため、簡単な構成で、膜状水流の速度ベクトルの乱れを矯正することができ、気液界面に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可できる。
【0020】
また本発明に係るシャワー装置では、前記微細突起の下流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されていることも好ましい。
【0021】
膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するために微細突起を設けると、膜状水流は微細突起の周囲は、部分的にみると小分けされた水流となる。微細突起によって部分的に小分けされた分流は、微細突起の下流側近傍位置において再び膜状水流として合流される必要がある。この好ましい態様では、微細突起の下流側部位が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成したため、小分けされたそれぞれの分流の一部が、微細突起に沿って下流側に導かれて、その下流側近傍位置において滑らかに合流させることができる。
【0022】
また本発明に係るシャワー装置では、前記微細突起の上流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されていることも好ましい。
【0023】
膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するために微細突起を設けると、膜状水流は微細突起の周囲を部分的にみると小分けされた水流となる。小分けにする際、膜状水流が微細突起と正面衝突してしまうと、膜状水流が大きく乱れてしまい、微細突起によって直進方向に整流されにくくなるとともに、微細突起の下流側近傍位置においても分流が合流されにくくなり、膜状水流としての状態を維持できなくなる恐れがある。この好ましい態様では、微細突起の上流側部位が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成したため、絞り流路から噴射された膜状水流の流れが大きく乱れることを抑制できるため、より確実に、微細突起によって直進方向に整流されやすくなるとともに、微細突起の下流側近傍位置において分流を合流させやすいくすることができ、膜状水流としての状態を維持しやすくすることができる。
【0024】
また本発明に係るシャワー装置では、前記絞り流路の噴射方向が長辺となり、前記絞り部の噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状であることも好ましい。
【0025】
この好ましい態様では、絞り部の噴射方向と直交する方向の断面積は小さく、且つ絞り部の噴射方向の断面積は大きく形成されることとなるため、絞り部から噴射された膜状水流の流れを大きく乱すことなく分流させることができる。また、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正するための距離を大きく確保することができるため、より安定的に小分けにされた分流を直進方向に整流することができる。また、微細突起の下流側近傍位置においてより確実に膜状水流としての状態を維持可能なように分流を合流させることができる。
【0026】
また本発明に係るシャワー装置では、前記絞り流路は、放射状に前記膜状水流を噴射するように構成され、前記複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されており、前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けられていることも好ましい。
【0027】
この好ましい態様では、微細突起を絞り部に噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けることで、絞り部から噴射された膜状水流の速度ベクトルを絞り部に対して直進方向(放射方向)に整流している。このように構成することで、放射状に膜状水流を噴射するようなシャワー装置においても、気液界面位置に対して、より確実に膜状の水流を突入させることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、より均一且つ小さな気泡径の気泡混入水を散水孔に供給できるようにすることで、より大きく均一な粒径に粒化された水滴を連続して使用者に着水させることが可能なシャワー装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本願発明の第一実施形態に係るシャワー装置を示す図であって、(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は下面図を示している。
【図2】図1の(B)におけるA−A断面を示す断面図である。
【図3】図1の(A)におけるB−B断面側から見た断面斜視図である。
【図4】図1の(B)におけるC矢視図である。
【図5】図1の(A)におけるB−B断面に相当する断面を示す図であって、シャワー装置内の水の流れを示す図である。
【図6】本願発明の第一実施形態に係るシャワー装置内の気泡混入水の発生状態を示す図である。
【図7】比較例に係るシャワー装置内の気泡混入水の発生状態を示す図である。
【図8】比較例に係る気液界面の状態を示す図である。
【図9】本願発明の第一実施形態に係る気液界面の状態を示す図である。
【図10】微細突起に対する膜状水流の流れ方を拡大して示す図である。
【図11】本願発明の第二実施形態に係るシャワー装置を示す図であって、(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は下面図を示している。
【図12】図11の(A)におけるF−F断面を示す断面図である。
【図13】図12に示す水噴射コマ近傍を拡大して示す拡大斜視断面図である。
【図14】図12に示す水噴射コマ近傍を拡大して示す拡大断面図である。
【図15】本願発明の第二実施形態に係る気液界面の状態を示す図である。
【図16】比較例に係る気液界面の状態を示す図である。
【図17】微細突起の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0031】
続いて、本発明の第一実施形態であるシャワー装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係るシャワー装置F1を示す図であって、図1の(A)は平面図を示し、図8の(B)は側面図を示し、図8の(C)は下面図を示している。
【0032】
図1の(A)に示されるように、シャワー装置F1は主に略直方体を成す本体2によって構成されており、シャワー装置F1(本体2)の上面2aには開口231が形成されている。図1の(B)に示されるように、シャワー装置F1の上面2aと対向する下面2bには複数の散水突起242が設けられている。各散水突起242には散水孔243が形成されている。図1の(C)に示されるように、本体2の下面2bには複数の散水突起242が設けられている。本実施形態の場合、散水突起242は7行×10列に70個形成されている。
【0033】
続いて、図1の(B)のC−C断面図である図2を参照しながらシャワー装置F1について説明を加える。図2に示されるように、シャワー装置F1は、給水部21と、絞り部22と、空気混入部23と、散水部24と、を備えている。
【0034】
給水部21は、水を供給するための部分であって、給水口21dから導入した水を絞り部22へと供給する部分である。給水口21dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部21から絞り部22へと供給される。給水部21は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁21e及び側壁21fを有しており、側壁21eと側壁21fとは互いに平行になるように配置されている。
【0035】
絞り部22は、給水部21の下流側に設けられており、給水部21よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための部分である。絞り部22は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁22e及び側壁22fを有しており、側壁22eと側壁22fとは互いに平行になるように配置されている。
【0036】
絞り部22には、単一の絞り流路221が設けられている。絞り流路221は、側壁22eから側壁22fに向う方向が長辺側となるように扁平形状且つスリット状に形成されている。
【0037】
絞り流路221の様子を図4に示す。図4は、図1の(B)のC矢視図である。図4に示すように、絞り流路221は、本体2の上面2a及び下面2bに沿った辺が長辺となり、側壁22e,22fに沿った辺が短辺となるように扁平形状且つスリット状に形成されている。
【0038】
図2に戻ってその他の部分の説明を続ける。空気混入部23は、絞り部22の下流側に設けられており、絞り部22を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口231が形成されている部分である。空気混入部23は、水の進行方向に沿うように本体2の一部分としての側壁23ea,23eb及び側壁23fa,23fbを有している。
【0039】
側壁23eaと側壁23faとは互いに平行になるように配置されている。側壁23ebは側壁23eaの下流側に連続して設けられている壁であって、側壁23eaに繋がっている部分よりも下流側に向かって外側に流路を広げるように斜めに配置されている。同様に、側壁23fbは側壁23faの下流側に連続して設けられている壁であって、側壁23faに繋がっている部分よりも下流側に向かって外側に流路を広げるように斜めに配置されている。また、空気混入部23には、膜状水流分断抑制手段として微細突起30が、絞り流路221の長辺方向に対して間隔を空けて3つ設けられている。この微細突起30は、その上流側端部が絞り流路221の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されており、その下流側端部が絞り流路221の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されている。また、全体として、絞り流路221の噴射方向が長辺となり、噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状に形成されている。
【0040】
散水部24は、空気混入部23の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔243が形成されている部分である。散水孔243は、散水突起242(図2においては明示しない)に形成されている。
【0041】
図2に示すように、給水部21を構成する側壁21eと、絞り部22を構成する側壁22eと、空気混入部23の一部を構成する側壁23eaとは同一面上に位置するように配置されている。空気混入部23の残部を構成する側壁23ebは本体2の外側側面に向かうように斜めに配置され、散水部24を構成する側壁24eに繋がっている。同様に、給水部21を構成する側壁21fと、絞り部22を構成する側壁22fと、空気混入部23の一部を構成する側壁23faとは同一面上に位置するように配置されている。空気混入部23の残部を構成する側壁23fbは本体2の外側側面に向かうように斜めに配置され、散水部24を構成する側壁24fに繋がっている。
【0042】
続いて、図1の(A)のB−B断面図である図3を参照しながらシャワー装置F1について説明を加える。図3に示されるように、給水部21は、側壁21eと側壁21fとを繋ぐ側壁21b及び側壁21cを有している。側壁21b及び側壁21cは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁21e及び側壁21fよりも長くなるように形成されている。従って、給水部21は流路断面が扁平形状となるように形成されている。給水部21と絞り部22との境界部分には、前壁面21aが設けられていて、側壁21e,21f,21b,21cは前壁面21aに繋がっている。前壁面21aは、側壁21bから側壁21cに延びる部分と、側壁21cから側壁21bに延びる部分とで構成されている。
【0043】
前壁面21aを下流側に越えた領域には絞り部22が設けられている。絞り部22は、側壁22eと側壁22fとを繋ぐ側壁22b及び側壁22cを有している。側壁22b及び側壁22cは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁22e及び側壁22fよりも長くなるように形成されている。従って、絞り部22の側壁22b,22c,22e,22fで囲まれた流路断面は扁平形状となるように形成されている。絞り部22と空気混入部23との境界部分には仕切壁22aが設けられていて、側壁22e,22f,22b,22cは仕切壁22aに繋がっている。仕切壁22aには、扁平形状且つスリット状の絞り流路221が形成されている。
【0044】
仕切壁22aを下流側に越えた領域には空気混入部23が設けられている。空気混入部23は、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbとを繋ぐ側壁23b、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbとを繋ぐ側壁であって側壁23bと対向し相対的に側壁23bから遠い位置に配置されている側壁23c、側壁23ea,23ebと側壁23fa,23fbを繋ぐ側壁であって側壁23bと対向し相対的に側壁23bに近い位置に配置されている側壁23dを有している。側壁23cは散水部24側に、側壁23dは絞り部22側に、それぞれ配置されており側壁23cと側壁23dとを繋ぐ段差部23gが形成されている。側壁23b,23c,23dは、水が進行する方向に直交する方向に沿った長さが、側壁23ea,23eb及び側壁23fa,23fbよりも長くなるように形成されている。従って、空気混入部23は流路断面が扁平形状となるように形成されている。
【0045】
側壁23cよりも下流側の領域には散水部24が設けられている。散水部24は、側壁24eと側壁24fとを繋ぐ側壁であって、空気混入部23の側壁23bと同一面を形成する側壁24bを有している。更に散水部24は、側壁24eと側壁24fとを繋ぐ側壁であって、空気混入部23の側壁23cと同一平面を形成する側壁24cを有している。側壁24b,24c,24e,24fは、給水口21dと対向するように位置し流路の末端として機能する奥側の側壁24aに繋がっている。散水部24には、本体2の下面2bから突出する散水突起242が形成されており、散水突起242には散水孔243が形成されている。
【0046】
続いて、シャワー装置F1内部の水の流れについて図5を参照しながら説明する。図5は、図1の(A)のB−B断面を簡略化して示す図であって、シャワー装置F1に水を供給した際の内部の水の状態を示す図である。
【0047】
図5に示すように、給水部21に給水手段(図示しない)から水が所定圧力以上で供給されると、絞り部22に形成された絞り流路221を通って下流側に噴射される。絞り流路221から下流側の空気混入部23及び散水部24に噴射された膜状の水流である膜状水流WFは、空気混入部23の側壁23b,23c,23d,23e,23f及び散水部24の側壁24b,24c,24d,24eと干渉しないように、最も遠くに位置する散水孔243までその噴射水仮想直線BW1が延びるように噴射される。噴射水仮想直線BW1は、絞り部22から噴射される水の噴射方向を延伸させた仮想的な直線である。
【0048】
このように絞り部22から膜状水流が噴射されると、散水部24及び空気混入部23の少なくとも一部に一時的に水が溜まり、その溜まった水と空気との界面である気液界面BW3が形成される。従って、噴射水仮想直線BW1に沿って噴射された膜状水流が気液界面BW3から溜まった水に対して突入し、空気混入部23に存在する空気を巻き込んで気泡混入水BWが生成される。気泡混入水BWは各水流BW2に分かれて各散水孔243から外部に吐出される。空気混入部23には開口231が形成されているので、噴射水仮想直線BW1に沿って噴射された膜状水流が気液界面BW3から溜まった水に対して突入し、空気混入部23に存在する空気を巻き込んでも、空気が常に供給される状態を維持することができる。
【0049】
本実施形態では、絞り部22の絞り流路221を扁平形状且つスリット状に形成し、膜状水流WFを噴射することで微細な気泡を含む気泡混入水BWを生成するものとしている。図6に、膜状水流WFが気液界面BW3に突入する状態を模式的に示す図を示す。
【0050】
図6に示すように、扁平形状且つスリット状の絞り流路221から噴射された水流は、その断面形状が扁平形状を成す膜状水流WFとなって気液界面BW3へと向う。膜状水流WFが気液界面BW3に突入すると、膜状水流WFに沿った領域では膜状水流WFが略平面状に延びる方向であるx方向に沿って、その膜状水流WFが気液界面BW3に突入する方向に沿った対流が並ぶように発生する。
【0051】
このような対流が発生すると、対流の発生方向が膜状水流WFの一方側(図中において膜状水流WFの手前側)では揃うと共に、他方側(図中において膜状水流WFの反対側)で発生する対流とは回転方向が逆になるものの膜状水流WFが突入する気液界面BW3近傍では双方の対流の進行方向が揃うため、近接する対流が互いに衝突するおそれが低減される。膜状水流WFの両端ではその対流に加えて膜状水流WFの両端に向う対流も発生するが、膜状水流WFの両端を除いた領域では、膜状水流WFを挟んで膜状水流WFに向う対流のみが発生するので、全体としてみた場合にも気液界面BW3近傍での対流の衝突が低減される。
【0052】
一方、線状の噴射水を気液界面に突入させた場合について図7を参照しながら説明する。図7は、線状水流WFsが気液界面BW3に突入する状態を模式的に示す図である。
【0053】
図7に示すように、線状水流WFsを気液界面BW3に突入させた場合は、水流が線ではなく点で気液界面BW3に突入するため、線状水流WFsを中心にその突入点を囲むように全方向(図中においてxz平面の全ての方向)から対流が発生する。このように線状水流WFsが突入する突入点を囲み、その突入点に向うように全方向から対流が発生すると、それら対流は互いに衝突する方向に発生することになる。従って、線状水流WFsを気液界面BW3に突入させた場合には、その突入点を囲んで発生する対流が互いに衝突しやすくなり、気泡の衝突が発生し気泡の肥大化を招くおそれがある。
【0054】
これに対して図6に示す本実施形態のように膜状水流WFを発生させると、上述したように膜状水流WFが突入する突入線を挟んで互いに衝突し難い対流が発生する。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性を低減することができる。気泡混入水中の気泡が微細化され、気泡混入水の流れが衝突し難くなって微細化された気泡が維持される。
【0055】
更に本実施形態では、絞り流路221と気液界面BW3との間に扁平形状の微細突起30を備えている。図8に示すように、扁平形状の絞り流路221から噴射される膜状水流WFは、空気混入部23に存在する空気、あるいは空気混入部23を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流WFは、気液界面BW3に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流WFには、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。膜状水流WFの一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面BW3に突入する前に膜状水流WFが分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流WFが気液界面BW3に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くこととなる。
【0056】
これに対して図9に示す本実施形態では、空気混入部23に微細突起30を複数設けているため、この微細突起30によって、絞り流路221から噴射された膜状水流WFの速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面BW3に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。
【0057】
この微細突起30の作用について、図10を用いて、より具体的に説明する。絞り流路から噴射された膜状水流WFは、まず、微細突起30の上流側端部に衝突する。この際、微細突起30は、絞り流路の噴射方向と直交する方向が5mm以下となるように小さく形成されており、且つ、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大されるように形成されているため、衝突によって膜状水流が大きく乱れることなく、微細突起の上流端部の側壁面に沿って滑らかに下流側に導かれることとなる。微細突起の中流部には、膜状水流の速度ベクトルを直進方向に矯正することが可能なように、絞り流路の開口方向に対して略平行となる側壁面が設けられている。これによって、仮に、絞り流路から噴射された膜状水流の速度ベクトルが乱れていたとしても、微細突起によって、膜状水流の速度ベクトルを全体として揃え直ことができる。直進方向に矯正された膜状水流は、微細突起の下流側端部が、絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されているため、微細突起を挟んで小分けにされた分流をその下流側近傍位置において滑らかに合流させることができる。小分けにされた分流は、それぞれ対向する速度ベクトルを打ち消し合いながら合流して下流側に流れるため、膜状水流の速度ベクトルが全体として直進方向に矯正されることになる。
【0058】
このように略均一な気泡径の気泡を含む気泡混入水BWが散水孔243に供給されると、散水孔243内及び散水孔243から吐出された直後において気泡流又はスラグ流を形成することができる。このように略均一な気泡径の気泡を含み気泡流又はスラグ流として形成される気泡混入水BWが散水孔243から吐出されると、環状流のようにミスト化することなく、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0059】
また本実施形態に係るシャワー装置F1では、開口231は、膜状水流WFに対して一方側にのみ設けられているけれども、開口231を、膜状水流WFを挟んで一方側と他方側とに位置するように少なくとも一対設けられていることも好ましい。
【0060】
本実施形態では、絞り流路221から膜状水流WFを噴射するため、上述したような気泡肥大化の抑制効果があるものの膜状水流WFを挟んだ空気の移動が抑制される傾向にある。そこで、膜状水流WFを挟んで一方側と他方側との双方に開口231を設けることで、膜状水流WFの双方に空気をムラ無く供給することができ、円滑な気泡混入水BWの生成に寄与することができる。
【0061】
上述した第一実施形態に係るシャワー装置F1は、本体2を略直方体状に形成し、絞り部22によって噴射される水の方向を同一方向に揃えたものである。本発明の趣旨に鑑みれば実施の形態はこれらに限られるものではなく、絞り流路は、放射状に膜状の水流を噴射するように構成され、複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されるように構成することも可能である。複数の散水孔が配置される領域は、円形領域であったり矩形領域であったり様々な形態の領域と成すことが可能である。続いて説明する本発明の第二実施形態では、本体を略円盤状に形成し、絞り部によって噴射される水の方向を放射状にするものを例にとって説明する。
【0062】
本発明の第二実施形態であるシャワー装置について図11を参照しながら説明する。図11は、本発明の第二実施形態に係るシャワー装置F3を示す図であって、図11の(A)は平面図を示し、図11の(B)は側面図を示し、図11の(C)は下面図を示している。図11の(A)に示されるように、シャワー装置F3は主に略円盤状を成す本体4によって構成されており、シャワー装置F3(本体4)の上面4aには給水口41dが形成されている。
【0063】
図11の(B)に示されるように、シャワー装置F3の本体4は、給水口41dが形成されているキャビティ4Aと、散水孔443が形成されているシャワープレート4Bとによってその外形が構成されている。図11の(C)に示されるように、本体4の下面4bには複数の散水孔443が形成されていると共に、開口431も形成されている。本実施形態の場合、散水孔443は開口431を中心とした放射状に配置されている。
【0064】
続いて、図11の(A)のF−F断面図である図12を参照しながらシャワー装置F3について説明を加える。図12に示されるように、シャワー装置F3は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、水噴射コマ4Cとによって構成されている。
【0065】
キャビティ4Aは、シャワープレート4Bと共に本体4の外形を形成する部材であって、本体4の上面4aとは反対側の当接面4Aaから上面4aに向けて円形の凹部4Abが形成されている。
【0066】
キャビティ4Aの中心近傍には、上面4aから凹部4Abに至る貫通穴4Acが形成されている。このように貫通穴4Acを設けることで、給水口41dから絞り部42に至る給水部41が形成されている。
【0067】
シャワープレート4Bは、キャビティ4Aと共に本体4の外形を形成する部材であって、散水孔443が放射状に複数個形成されている。この散水孔443が形成されている領域の下面4bとは反対側の当接面4Baは散水部44の側壁44cとなるように構成されている。
【0068】
シャワープレート4Bの当接面4Baとキャビティ4Aの当接面4Aaとを当接させると、キャビティ4Aの凹部4Abとの間には空隙が形成され、この空隙が空気混入部43及び散水部44となるように構成されている。凹部4Abの一部分は散水部44の側壁44aとなるように構成されている。
【0069】
続いて、水噴射コマ4Cについて図10を参照しながら説明する。図10は水噴射コマ4C近傍を拡大した斜視断面図である。図10に示されるように、水噴射コマ4Cは、フランジ4Cbをツバとする帽子形状を成しており、その帽子形状の頂部に相当するフランジ4Cbとは反対側の端部に空気導入突起部4Caが形成されている。空気導入突起部4Caとは反対側であってフランジ4Cbの中央近傍には絞り突起部4Cdが形成されている。
【0070】
絞り突起部4Cdは、絞り部42の一部を構成するものであって、キャビティ4Aと対向することで絞り流路421を形成している。従って、絞り流路421は、キャビティ4Aの中央近傍から放射状且つ膜状の水が噴射されるように全周に渡ってスリットを形成している。
【0071】
絞り突起部4Cdの周囲には空気導入孔431aが、絞り突起部4Cdの全周に渡って複数個形成されている。空気導入孔431aは、空気導入突起部4Caに形成されている開口431と連通しており、絞り流路421に対して空気を供給するものである。
【0072】
シャワープレート4Bにおいては、本体4の下面4bとは反対側の当接面4Baから下面4bに向けて円形の凹部4Bcが形成されている。凹部4Bcは、放射状に設けられた散水孔443の内側に位置するように、シャワープレート4Bの中央に設けられている。凹部4Bcの底面から下面4bに至るように貫通穴4Bbが形成されている。凹部4Bcには、水噴射コマ4Cが収められている。
【0073】
水噴射コマ4Cの空気導入突起部4Caは、貫通穴4Bbから外部に突出するように配置されている。従って、空気導入突起部4Caに形成されている開口431は、外気を取り込むことが可能なように構成されている。
【0074】
上述したようにキャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、水噴射コマ4Cとを組み上げることで、シャワー装置F3は、給水部41と、絞り部42と、空気混入部43と、散水部44とを備えるように構成される。
【0075】
給水部41は、水を供給するための部分であって、給水口41dから導入した水を絞り部42へと供給する部分である。給水口41dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部41から絞り部42へと供給される。
【0076】
絞り部42は、給水部41の下流側に設けられており、給水部41よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための部分である。絞り部42には、単一の絞り流路421が形成されている。
【0077】
空気混入部43は、絞り部42の下流側に設けられており、絞り部42を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431が形成されている部分である。また、空気混入部43には、膜状水流分断抑制手段として微細突起30が、絞り流路421に対して放射状に間隔を空けて6つ設けられている。この微細突起30は、その上流側端部が絞り流路421に対する放射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されており、その下流側端部が絞り流路221に対する放射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されている。また、全体として、絞り流路221に対する放射方向が長辺となり、放射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状に形成されている。
【0078】
散水部44は、空気混入部43の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている部分である。
【0079】
このシャワー装置F3では、給水部41から水を供給すると、絞り部42の絞り流路421から膜状水流WFcが噴射される。この膜状水流WFcの噴射状態を図15に示す。図13は、シャワー装置F3を給水部41側から見た場合の膜状水流WFcの噴射状態を模式的に示す図である。図13に示すように、膜状水流WFcは全周に渡って噴射される。
【0080】
このように膜状水流WFcを噴射することで、第一実施形態に係るシャワー装置F1と同様に、膜状水流WFcが突入する突入線を挟んで互いに衝突し難い対流が発生する。このように互いに衝突し難い対流が発生すると、気泡の衝突による気泡の肥大化の可能性を低減することができる。気泡混入水中の気泡が微細化され、気泡混入水の流れが衝突し難くなって微細化された気泡が維持される。
【0081】
更に本実施形態では、絞り流路421と気液界面BW3との間に扁平形状の微細突起30を備えている。図16に示すように、全周に渡ってスリット状に形成された絞り流路421から噴射される放射状の膜状水流WFcは、空気混入部43に存在する空気、あるいは空気混入部43を構成している内壁面と接触しながら気液界面に向かって移動するものである。すなわち、膜状水流WFcは、気液界面BW3に到達するまでに、空気や内壁面との接触による摩擦抵抗を受けるため、膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。また、膜状水流WFcには、水流の表面積を小さくしようと表面張力が発生するため、この表面張力も一つの要因となって、膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れてしまう恐れがある。特に、本実施形態のように、放射状に膜状水流WFcを噴射する形態においては、噴射時の僅かな乱れが外周方向に進むにつれ増幅し、気液界面BW3近傍では大きな乱れとなるおそれがある。
膜状水流WFcの一部の速度ベクトルが乱れると、気液界面BW3に突入する前に膜状水流WFcが分断されてしまう恐れがある。このように、分断された膜状水流WFcが気液界面BW3に突入すると、その分断された部分において、対流が互いに衝突することとなり、結果として、気泡の衝突が発生し気泡の不均一な肥大化を招くこととなる。
【0082】
これに対して図15に示す本実施形態では、空気混入部23に微細突起30を複数設けているため、この微細突起30によって、絞り流路421から噴射された放射状の膜状水流WFcの速度ベクトルを全体として揃えることができ、気液界面BW3に対してより確実に膜状の水流を突入させることが可能となる。
【0083】
このように略均一な気泡径の気泡を含む気泡混入水が散水孔443に供給されると、散水孔443内及び散水孔443から吐出された直後において気泡流又はスラグ流を形成することができる。このように略均一な気泡径の気泡を含み気泡流又はスラグ流として形成される気泡混入水が散水孔443から吐出されると、環状流のようにミスト化することなく、吐出方向と略直交する方向にせん断されて略均一に粒化される。従って、比較的大きく均一な粒径に粒化された水滴が連続して使用者に着水し、使用者は大粒の雨を浴びているような量感のある浴び心地のシャワーを享受することができる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。また、微細突起30の形状としては、上述した第1および第2の実施形態に限定されるものではなく、例えば、図17に示すように新円形状や多角形状であって良く、同様の作用効果を奏するものは本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0085】
F1:シャワー装置
2:本体
2a:上面
2b:下面
21:給水部
21a:前壁面
21b:側壁
21c:側壁
21d:給水口
21e:側壁
21f:側壁
22:絞り部
22a:仕切壁
22b:側壁
22c:側壁
22e:側壁
22f:側壁
221:絞り流路
23:空気混入部
23b:側壁
23c:側壁
23d:側壁
23ea:側壁
23eb:側壁
23fa:側壁
23fb:側壁
23g:段差部
231:開口
24:散水部
24a:側壁
24b:側壁
24c:側壁
24e:側壁
24f:側壁
242:散水突起
243:散水孔
30:微細突起
BW:気泡混入水
BW1:噴射水仮想直線
BW2:水流
BW3:気液界面
WF:膜状水流
WFs:線状水流
F3:シャワー装置
4:本体
4A:キャビティ
4Aa:当接面
4Ab:凹部
4Ac:貫通穴
4B:シャワープレート
4Ba:当接面
4Bb:貫通穴
4Bc:凹部
4C:水噴射コマ
4Ca:空気導入突起部
4Cb:フランジ
4Cd:絞り突起部
4a:上面
4b:下面
41:給水部
41d:給水口
42:絞り部
421:絞り流路
43:空気混入部
43b:側壁
43c:側壁
431:開口
431a:空気導入孔
44:散水部
44a:側壁
44b:側壁
44c:側壁
443:散水孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、
水を供給するための給水部と、
前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、
前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられており、
前記空気混入部には、前記絞り流路から噴射された前記膜状水流が前記空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段が設けられていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記膜状水流分断抑制手段は、前記空気混入部内に突出する微細突起であり、
前記微細突起は、前記膜状水流の速度ベクトルを前記絞り流路に対して直進方向の速度ベクトルとなるように矯正するものであることを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記微細突起の下流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されていることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記微細突起の上流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されていることを特徴とする請求項3記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向が長辺となり、前記絞り部の噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状であることを特徴とする請求項4記載のシャワー装置。
【請求項6】
前記絞り流路は、放射状に前記膜状水流を噴射するように構成され、
前記複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されており、
前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする請求項4記載のシャワー装置。
【請求項1】
空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、
水を供給するための給水部と、
前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、前記絞り部を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が、前記絞り部から噴射される水の噴射方向に沿って形成されている散水部と、を備え、
前記絞り部には、前記複数の散水孔が配された散水面と沿う方向に膜状水流が形成されるように扁平形状の絞り流路が設けられており、
前記空気混入部には、前記絞り流路から噴射された前記膜状水流が前記空気混入部に一時的に貯留される水と空気との気液界面に到達する前に分断されることを抑制する膜状水流分断抑制手段が設けられていることを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記膜状水流分断抑制手段は、前記空気混入部内に突出する微細突起であり、
前記微細突起は、前記膜状水流の速度ベクトルを前記絞り流路に対して直進方向の速度ベクトルとなるように矯正するものであることを特徴とする請求項1記載のシャワー装置。
【請求項3】
前記微細突起の下流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って縮小するように形成されていることを特徴とする請求項2記載のシャワー装置。
【請求項4】
前記微細突起の上流側部位は、前記絞り流路の噴射方向と直交する方向の断面積が下流側に向かうに従って拡大するように形成されていることを特徴とする請求項3記載のシャワー装置。
【請求項5】
前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向が長辺となり、前記絞り部の噴射方向と直交する方向が短辺となる楕円形状であることを特徴とする請求項4記載のシャワー装置。
【請求項6】
前記絞り流路は、放射状に前記膜状水流を噴射するように構成され、
前記複数の散水孔は、膜状の水流が噴射される領域に散在するように配置されており、
前記微細突起は、前記絞り流路の噴射方向に沿って間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする請求項4記載のシャワー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−34801(P2013−34801A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175774(P2011−175774)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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