説明

シャワー装置

【課題】少ない水量であっても量感を感じることができると共に脈動吐水による刺激感も感じることができるシャワー装置を提供すること。
【解決手段】このシャワー装置F1は、絞り部42から空気混入部43に噴射される主水流を、その噴射方向と交わる方向に振動させることで空気混入部43に取り込まれる空気量を周期的に変動させ、吐水部44から吐出する気泡混入水の脈動吐水を行わせるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吐水装置の一例として、いわゆるエジェクタ効果を利用して水に空気を混入させ、気泡混入水と成して吐出するものが知られている。この吐水装置を、装置内に流入した水を複数の散水孔に分散して吐水するシャワー装置として構成する場合には、吐水に空気を混入させるにあたって、装置内に流入した水に空気を混入させてから各散水孔に分散させるように構成される。
【0003】
このようなシャワー装置の一例として、下記特許文献1に記載されているようなシャワー装置が提案されている。下記特許文献1に記載されているシャワー装置は、円盤状のハウジングシェルの前面に複数の散水孔が設けられており、ハウジングシェルの後面の中央から流入させた水をそれら複数の散水孔に分配して吐出するものである。更にこのシャワー装置では、ハウジングシェルに水が流入してから空気を混入させて気泡混入水とし、この気泡混入水を円盤状のハウジングシェルの前面全体に分布するように形成されている複数の散水孔に分配するものである。そこで、気泡混入水の進行方向に乱流発生拡張部を配置し、この乱流発生拡張部に気泡混入水を衝突させて方向を転換させ、気泡混入水をハウジングシェルの前面全体に行き渡るようにしている。
【0004】
また、このようなシャワー装置の別な一例として、下記特許文献2に記載されているようなシャワー装置も提案されている。下記特許文献2に記載されているシャワー装置は、湯水混合栓等のコックを開くと、ホースから水が供給されてオリフィス部材内を水が通過する。このとき、オリフィス部材の下流側に設けられている減圧室においては減圧状態が形成されるので、この減圧室内に開口した内側吸引口から空気が吸引され、水と空気とが混合される。下記特許文献2に記載されているシャワー装置はこのようにして気泡混入水を生成し、シャワーヘッドに設けられた複数の散水孔から吐出する。このシャワー装置では、生成後の気泡混入水は、減圧室の下流側に設けられている区画管内のネジ部材や更にその下流側のシャワーヘッド内壁に当たって方向が転換されながら散水孔に向かっている。
【0005】
更に、気泡混入水を吐出するシャワー装置の観点からは、下記特許文献3に記載されているようなシャワー装置も提案されている。下記特許文献3に記載されているシャワー装置は、シャワー用水の流れる給水路に気体を混入させる気体混入部を有し、気体混入部にてシャワー用水に混入させた気体を微細化させて、給水路の出口に設けたシャワー吐水部から吐水されるシャワー水に対して泡径0.1〜1000μmの微細気泡を含ませる微細気泡発生装置を備えている。この気体混入部としては、シャワー用水への気体の混入比を制御する気体混入比制御手段が設けられており、気体混入比制御手段を構成する電磁弁である気体流量弁が、気体供給流路に設けられている。気体流量弁はシャワー装置の動作を制御する制御部に接続されており、その開度が制御されるようになっている。気体流量弁の開度制御はすなわち気体供給流路の流路径の大小制御をするものであって、気体供給流路に流れる気体の流量を可変にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−509629号公報
【特許文献2】特許第3747323号公報
【特許文献3】特開2008−237601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に記載のシャワー装置では、同文献の段落0015に記載されているように、途切れ途切れに水が使用者に当たる感覚を実現するためのものである。この「途切れ途切れ」とは、不均一な粒径に粒化された水滴が使用者に当たることで、大きな粒径の水滴が当たれば強い水浴び感を使用者に与え、小さな粒径の水滴が当たれば弱い水浴び感を使用者に与えることになり、これら水浴び感の強弱を断続的に使用者に与えることができることを表現しているものと思われる。本発明者らの具体的な考察によれば、生成直後の気泡混入水は水に対して空気が略均一に混入されていると推察されるところ、生成後の気泡混入水がネジ部材やシャワーヘッド内壁に当たって方向が転換されることで気泡同士の衝突が発生し、散水孔に到達した段階では気泡径が不均一になっているものと考えられる。そして、このような気泡混入水を散水孔から吐出することで不均一な粒径の水滴となし、それら不均一な粒径の水滴を使用者に当てることで上述したような感覚を実現しているものと考えられる。
【0008】
一方、上記特許文献1に記載のシャワー装置によって吐出される気泡混入水の性状については同文献に記載がないが、上記特許文献2に記載のシャワー装置同様に気泡径が不均一な気泡混入水を散水孔に供給し吐出することで不均一な粒径の水滴となし、それら不均一な粒径の水滴を使用者に当てているものと考えられる。上記特許文献1に記載のシャワー装置は、気泡混入水の進行方向に乱流発生拡張部を配置し、この乱流発生拡張部に気泡混入水を衝突させて方向を転換させていることからして、上記特許文献2に記載のシャワー装置においても同様の不均一な気泡成長が起こっており、不均一な粒径の水滴を使用者に当てているものと考えられるからである。上記特許文献1に記載のシャワー装置も、上記特許文献2に記載のシャワー装置も、不均一な気泡が混入された気泡混入水によって、不均一な粒径の水滴を使用者に当てるものであるから、その水浴び感の強弱の差は小さいものであり、刺激感に乏しいものとなっている。
【0009】
一方、上記特許文献3に記載のシャワー装置では、気体混入比制御手段を構成する電磁弁である気体流量弁が、気体供給流路に設けられている。このような気体混入比制御手段を設けることで、気泡混入率の意図的な制御は可能となるものの、気体流量弁としての電磁弁が必要になる。従って、上記特許文献3に記載のシャワー装置によれば刺激感のある気泡混入水の吐出を行うことができる可能性はあるものの、電磁弁のように構造物を物理的に動作させる手段が必要となるため、小型化及び低コスト化とは逆行する吐水装置になってしまう。
【0010】
本発明者らはこのような状況に対して、少ない水量であっても量感を感じることができる吐水であって、吐水の瞬間流量が大きく変化し心地よい刺激感のある吐水を可能とするものであって、小型化及び低コスト化に資するシャワー装置を提供しようと考えた。これに対して上述した従来の技術では、既述の通り不均一な粒径の水滴が使用者に当たる感覚を実現するものであるから、量感に加えて吐水の瞬間流量が大きく変動するような心地よい刺激感のある吐水を提供するものではなかった。また、小型化及び低コスト化を図りつつ、量感に加えて吐水の瞬間流量が大きく変動するような心地よい刺激感のある吐水を提供することができなかった。
【0011】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、少ない水量であっても量感を感じることができると共に吐水の瞬間流量が大きく変動するような心地よい刺激感も感じることができる吐水を享受することが可能なシャワー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明に係るシャワー装置は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、水を供給する給水部と、前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水の流速を高めて主水流として下流側に噴射する絞り部と、前記絞り部の下流側に設けられ、前記主水流に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口が形成されている空気混入部と、前記空気混入部の下流側に設けられ、前記気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が形成されている吐水部と、を備える。本発明に係るシャワー装置は更に、前記主水流とは進行方向が異なる副水流を形成するための副水流形成手段を備える。本発明に係るシャワー装置は、前記副水流の作用によって前記主水流の進行方向を周期的に変化させることで、前記空気混入部において前記主水流に混入される空気の量を変化させている。
【0013】
本発明によれば、空気混入部において絞り部から噴射される主水流に空気を混入させて気泡混入水とし、その気泡混入水を吐水部から吐出するので、使用者に量感のある吐水を享受させることができる。更に、副水流形成手段を設け、この副水流形成手段によって主水流とは進行方向が異なる副水流を形成している。この副水流の作用によって、主水流の進行方向を周期的に変化させているので、空気混入部において主水流に混入される空気の量を変化させることができる。混入される空気の量が変化することで、吐水部から吐出する気泡混入水の瞬間流量が大きく変化し、使用者に当たる水流に強弱が発生する。使用者は、空気の混入率が低い場合は、気泡混入水の瞬間流量が多くなるため強い水流が当たったものと感じる一方で、空気の混入率が高い場合は、気泡混入水の瞬間流量が少なくなるため弱い水流が当たったものと感じる。このように体感的に強い水流と弱い水流が当たると、使用者は脈動的な刺激を受けることができる。
【0014】
本発明では、上述したような脈動的な刺激を与える吐水を、主水流の進行方向を周期的に変化させるような副水流を形成することによって実現しているので、例えば吐水圧を脈動的に変化させるポンプを別途設けるようなことなく、簡単な構成で使用者にとって心地よい刺激を与えることができるシャワー装置を提供している。また、副水流によって主水流の進行方向を変化させるためには、主水流の近傍に副水流に起因する圧力変動を発生させることが好ましいものである。本発明の場合、上述したように空気混入部の空気導入口から空気を取り込んで気泡混入水を形成しているので、空気混入部内は負圧状態となっている。そこで、空気混入部内の負圧を低下させないように、主水流の近傍に副水流負圧を発生させることで主水流の進行方向を周期的に変化させている。また、副水流を形成するためのガイドとなる渦室を設けているので、副水流を形成する渦状の流れを渦室の大きさによって大きくしたり小さくしたりすることができる。従って、副水流によって発生させる副水流負圧に求められる負圧量に応じて渦室の大きさを調整し、適切な副水流負圧を発生させることができる。また、主水流によって空気導入口から吸引された空気が副水流側に侵入しないようにしているので、より安定的に副水流を形成することができる。
【0015】
また本発明に係るシャワー装置では、前記絞り部は、前記主水流を噴射する方向が、前記渦室よりも前記空気導入口側に傾いていることも好ましい。
【0016】
この好ましい態様では、主水流を噴射する方向が空気導入口側に傾いているので、絞り部から噴射された主水流の進行方向は空気導入口側に傾く。主水流の噴射によって副水流が形成されると副水流負圧が発生するので、空気導入口側に傾いている主水流の進行方向を副水流側に傾かせることができる。このように予め空気導入口側に傾いている主水流の進行方向を副水流側に引き寄せることで、主水流の進行方向の変動幅を大きくすることができ、空気の混入量の変動も大きくすることができる。従って、体感的に強い水流と弱い水流とが当たる際の変動幅を大きくすることになり、使用者はより強い脈動的な刺激を受けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、少ない水量であっても量感を感じることができると共に吐水の瞬間流量が大きく変動するような心地よい刺激感も感じることができる吐水を享受することが可能な吐水装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本願発明の実施形態に係るシャワー装置を示す図であって、(A)は平面図を示し、(B)は側面図を示し、(C)は下面図を示している。
【図2】図1の(A)におけるA−A断面を示す断面図である。
【図3】図2に示す空気混入部近傍を拡大して示す拡大斜視断面図である。
【図4】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をする原理を説明するための図である。
【図5】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をする原理を説明するための図である。
【図6】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をする原理を説明するための図である。
【図7】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をする原理を説明するための図である。
【図8】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をする原理を説明するための図である。
【図9】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をするメカニズムを示す写真である。
【図10】本実施形態のシャワー装置において、脈動吐水をした状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0020】
本発明の実施形態であるシャワー装置について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシャワー装置F1を示す図であって、図1の(A)は平面図を示し、図1の(B)は側面図を示し、図1の(C)は下面図を示している。図1の(A)に示されるように、シャワー装置F1は主に略円盤状を成す本体4によって構成されており、シャワー装置F1(本体4)の上面4aには給水口41d及び開口431が形成されている。
【0021】
図1の(B)に示されるように、シャワー装置F1の本体4は、給水口41d及び開口431が形成されているキャビティ4Aと、散水孔443が形成されているシャワープレート4Bとによってその外形が構成されている。図1の(C)に示されるように、本体4の下面4bには複数の散水孔443が形成されていると共に、封止コマ4Eが配置されている。本実施形態の場合、散水孔443は封止コマ4Eを中心とした放射状に配置されている。
【0022】
続いて、図1の(A)のA−A断面図である図2を参照しながらシャワー装置F1について説明を加える。図2に示されるように、シャワー装置F1は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入コマ4Dと、封止コマ4Eとによって構成されている。
【0023】
キャビティ4Aは、シャワープレート4Bと共に本体4の外形を形成する部材であって、本体4の上面4aとは反対側の当接面4Aaから上面4aに向けて円形の凹部4Abが形成されている。
【0024】
シャワープレート4Bは、キャビティ4Aと共に本体4の外形を形成する部材であって、散水孔443が放射状に複数個形成されている。この散水孔443が形成されている領域の下面4bとは反対側の当接面4Baは吐水部44の側壁44cとなるように構成されている。
【0025】
シャワープレート4Bの当接面4Baとキャビティ4Aの当接面4Aaとを当接させると、キャビティ4Aの凹部4Abと当接面4Baとによって空隙が形成され、この空隙が空気混入部43及び吐水部44となるように構成されている。凹部4Abの一部分は吐水部44の側壁44aとなるように構成されている。
【0026】
シャワー装置F1の給水部41、絞り部42、及び空気混入部43について、給水部41、絞り部42、及び空気混入部43の近傍を拡大した図3を参照しながら説明を加える。図3に示されるように、給水部41、絞り部42、及び空気混入部43は、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入コマ4Dと、封止コマ4Eとによって構成されている。
【0027】
導入コマ4Dは、大径部4Daと、小径部4Dbとを有する。大径部4Daの、小径部4Dbとは反対側の端部には、給水口41dが形成されている。大径部4Daの内部は、給水口41dに繋がるように筒状の空洞が形成されており、給水部41となっている。大径部4Daの、給水口41dが形成されている端部には、鍔部4Daaが形成されている。鍔部4Daaには、鍔部4Daaを厚み方向に貫通するように、開口431が形成されている。
【0028】
小径部4Dbの、大径部4Daとは反対側の端部には、絞り口42dが形成されている。小径部4Dbの内部は、絞り口42dと給水部41とを繋ぐように空洞が形成されており、絞り部42となっている。
【0029】
導入コマ4Dは、キャビティ4Aに形成された凹部4Ac及び貫通孔4Adに納められている。凹部4Acは、キャビティ4Aの中央に形成されている。凹部4Acの底部中央には、貫通孔4Adが形成されている。導入コマ4Dの小径部4Dbは、貫通孔4Adの内部に収められ、貫通孔4Adから突出して封止コマ4Eに対向するように配置されている。導入コマ4Dの大径部4Daは、凹部4Acの内部に収められ、鍔部4Daaは、凹部4Acの外側端において当接している。
【0030】
大径部4Daと凹部4Acとの間、小径部4Dbと貫通孔4Adとの間は、それぞれ空隙が形成され空気流路431aとなっている。空気流路431aは、開口431と空気混入部43とを繋ぐように形成されている。
【0031】
封止コマ4Eは、シャワープレート4Bの中央に形成されている貫通孔4Bbに嵌め込まれている。封止コマ4Eの導入コマ4D側の面には、中央に水誘導凹部42eが形成されている。水誘導凹部42eの周囲には、渦室432が形成されている。水誘導凹部42e及び渦室432は、封止コマ4Eの導入コマ4D側の面から後退するように凹部を設けることで形成されている。
【0032】
水誘導凹部42eの渦室432側端部には、傾斜面421cが形成されている。傾斜面421cは、水誘導凹部42eの底面から徐々に上昇する傾斜面として形成されている。傾斜面421cは、導入コマ4Dの小径部4Dbの端面421bと対向するように配置されている。端面421bは、水誘導凹部42eの底面と平行に配置されている。傾斜面421cと端面421bとによって、絞り流路421が形成されている。
【0033】
給水口41dから導入された水は、給水部41及び絞り部42を通り、絞り流路421から空気混入部43に向けて噴射される。また、開口431から導入された空気は、空気流路431aを通り、空気混入部43に導入される。絞り流路421から空気混入部43に向けて水を噴射すると、吐水部44側に気液界面が形成され、その気液界面に噴射された水が突入し空気を巻き込むことで気泡混入水が形成される。
【0034】
上述したように、キャビティ4Aと、シャワープレート4Bと、導入こま4Dと、封止コマ4Eとを組み上げることで、シャワー装置F1は、給水部41と、絞り部42と、空気混入部43と、吐水部44とを備えるように構成される。
【0035】
給水部41は、水を供給するための部分であって、給水口41dから導入した水を絞り部42へと供給する部分である。給水口41dには図示しない給水手段(給水ホース等)が接続可能であって、その給水手段から供給される水が給水部41から絞り部42へと供給される。
【0036】
絞り部42は、給水部41の下流側に設けられており、給水部41よりも流路断面積を減少させ、通過する水を下流側に噴射するための部分である。絞り部42には、絞り流路421が形成されている。
【0037】
空気混入部43は、絞り部42の下流側に設けられており、絞り部42を通って噴射される水に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431及び空気流路431aが形成されている部分である。
【0038】
吐水部44は、空気混入部43の下流側に設けられており、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている部分である。
【0039】
シャワー装置F1では、空気混入部43において絞り流路421から噴射される水の進行方向を周期的に変動させることで、気泡混入水の空気混入率を周期的に変動させている。この空気混入率の周期的な変動によって、吐水が脈動状態となり、使用者は刺激感を得ることができる。
【0040】
続いて、図4,5,6,7を参照しながら、空気混入率を周期的に変動させる原理について説明する。図4,5,6,7は、絞り流路421近傍の拡大図であり、空気混入率が変動する様子を時系列的に示す図である。図4は、絞り流路421から水を噴射し始めた初期段階を示す図である。図5は、図4に示した状態から空気混入率が高まった状態を示す図である。図6は、図5に示した状態から更に空気混入率が高まり最大となった状態を示す図である。図7は、図6に示した状態から空気混入率が低下した状態を示す図である。
【0041】
最初に、図4に示すように、絞り流路421から噴射された水は、傾斜面421cに沿って図中上方の空気流路431aに向けて進行し、主水流を形成する。絞り流路421から噴射される主水流の作用によって負圧が発生し、空気流路431aから開口431を通して空気が取り込まれる。絞り流路421から噴射される主水流によって、空気混入部43は満水状態となる。絞り流路421から噴射される主水流と壁面付近の水とは速度差があり、主水流の進行方向と渦室432とは比較的離れているので、絞り流路421から噴射された水の一部が戻り、渦室432へと導かれる。渦室432に導かれた水は渦状の副水流を発生する。
【0042】
上述したように、空気流路431aを通る空気の流れと、渦室432近傍に起きる渦状の副水流の流れとが並行して発生するので、それぞれ吸引負圧と副水流負圧とを主水流を挟むように発生させる。図4に示す状態では、主水流が空気流路431a側(開口431側)に近づいているので、副水流が大きな渦を描くように発生する。従って、吸引負圧よりも副水流負圧が大きい状態となっている。このため、空気混入率は低く(空気混入量は少なく)、主水流は渦室432側に引っ張られることになる。
【0043】
続いて、図5に示すように、絞り流路421から噴射された水による主水流は、渦室432側にその進行方向を変える。図5に示す状態では、主水流が空気流路431aから離れるので、空気流路431aから導入される空気が入る余地が大きくなり、より多くの空気が空気混入部43内に導入される。一方、主水流が渦室432側に近づいているので、副水流は小さな渦を描くように発生する。従って、吸引負圧が副水流負圧よりも大きい状態となっている。このため、空気混入率は中程度に高まり、空気混入量も中程度に増える。吸引負圧が副水流負圧よりも大きい状態となっているけれども、主水流は図4の状態から渦室432に進行方向を変える慣性が働いているので、そのまま主水流の進行方向は渦室432側へと変わり続ける。
【0044】
続いて、図6に示すように、絞り流路421から噴射された水による主水流は、渦室432側に最もその進行方向を近接させる。図6に示す状態では、主水流が空気流路431aから最も離れ、空気流路431aから導入される空気が入る余地が最大となり、より多くの空気が空気混入部43内に導入される。一方、主水流が渦室432側に最も近づいているので、副水流はより小さな渦を描くように発生する。従って、吸引負圧が副水流負圧よりも更に大きい状態となっている。このため、空気混入率は最大に高まり、空気混入量も最大に増える。吸引負圧が副水流負圧よりも完全に大きい状態となっているので、主水流は空気流路431a側に引っ張られることになる。
【0045】
続いて、図7に示すように、絞り流路421から噴射された水による主水流は、渦室432側から空気流路431a側にその進行方向を変える。図7に示す状態では、主水流が空気流路431aに近づくので、空気流路431aから導入される空気が入る余地が図6の状態よりは小さく(図5に示す状態よりは大きく)なり、中程度の量の空気が空気混入部43内に導入される。一方、主水流が渦室432側から離れているので、副水流は大きな渦を描くように発生する。従って、吸引負圧が副水流負圧よりも小さい状態となっている。このため、空気混入率は中程度に低下し、空気混入量も中程度に減る。吸引負圧が副水流負圧よりも小さい状態となっているけれども、主水流は図6の状態から空気流路431aに進行方向を変える慣性が働いているので、そのまま主水流の進行方向は空気流路431a側へと変わり続ける。図7に示す状態が更に進行すると、図4に示す状態に戻り、上述したサイクルが繰り返される。
【0046】
上述したような作動原理により、吸引負圧と副水流負圧は互いに逆位相となるような振動を繰り返す。図8に、この吸引負圧と副水流負圧との関係を示すため、主水流を引き寄せる力の大きさを時系列で示す。図8に示すように、主水流を渦室432側に引き寄せる力が最も弱い場合は、主水流を空気流路431a側に引き寄せる力が最も強い(図6参照)。一方、主水流を渦室432側に引き寄せる力が最も強い場合は、主水流を空気流路431a側に引き寄せる力が最も弱い(図6参照)。また、主水流を渦室432側に引き寄せる力と、主水流を空気流路431a側に引き寄せる力とが瞬間的に均衡する状態もある(図5,7参照)。しかしながら、主水流を渦室432側に引き寄せる力が減り続ける状態に対して、主水流を空気流路431a側に引き寄せる力が増え続ける状態であり(図5参照)、主水流を渦室432側に引き寄せる力が増え続ける状態に対して、主水流を空気流路431a側に引き寄せる力が減り続ける状態であるので(図7参照)、実際には主水流の進行方向は変動し続ける。
【0047】
上述した作動原理によって構成したシャワー装置F1に通水した場合の内部の状態を撮影した写真を、図9の(A)及び(B)に示す。図9の(A)は、図4を参照しながら説明した状態の実際の通水状態を撮影したものであり、図9の(B)は、図6を参照しながら説明した状態の実際の通水状態を撮影したものである。
【0048】
上述した作動原理によって構成したシャワー装置F1から吐水した場合の状態を撮影した写真を図10に示す。図10に示すように、シャワー装置F1から吐水すると、空気混入量が少なく水量が多い吐水と、空気混入量が多く水量が多い吐水とが交互に繰り返され、脈動的な吐水となっている。一方、空気を混入しないシャワー装置F2においても、空気を混入するけれども脈動的な吐水としないシャワー装置F3においても、本実施形態のような脈動的な吐水は実現されていない。
【0049】
上述したように本実施形態に係るシャワー装置F1は、空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、水を供給する給水部41と、給水部41の下流側に設けられ、給水部41よりも流路断面積を減少させ、通過する水の流速を高めて主水流として下流側に噴射する絞り部42と、絞り部42の下流側に設けられ、主水流に空気を混入させて気泡混入水と成すための開口431及び空気流路431aが形成されている空気混入部43と、空気混入部43の下流側に設けられ、気泡混入水を吐出するための複数の散水孔443が形成されている吐水部44と、を備える。
【0050】
シャワー装置F1は、主水流とは進行方向が異なる副水流を形成するための副水流形成手段として、主水流の進行方向を空気流路431a側に方向付ける傾斜面421cと、副水流の形成をより促進する渦室432とを備える。シャワー装置F1は、副水流の作用によって主水流の進行方向を周期的に変化させることで、空気混入部43において主水流に混入される空気の量を変化させている。
【0051】
本実施形態によれば、空気混入部43において絞り部42から噴射される主水流に空気を混入させて気泡混入水とし、その気泡混入水を吐水部44から吐出するので、使用者に量感のある吐水を享受させることができる。更に、副水流形成手段を設け、この副水流形成手段によって主水流とは進行方向が異なる副水流を形成している。この副水流の作用によって、主水流の進行方向を周期的に変化させている(図9参照)ので、空気混入部43において主水流に混入される空気の量を変化させることができる(図10参照)。混入される空気の量が変化することで、吐水部から吐出する気泡混入水の瞬間流量が大きく変化し、使用者に当たる水流に強弱が発生する。使用者は、空気の混入率が低い場合は、気泡混入水の瞬間流量が多くなるため強い水流が当たったものと感じる一方で、空気の混入率が高い場合は、気泡混入水の瞬間流量が少なくなるため弱い水流が当たったものと感じる。
【0052】
本実施形態では、上述したような脈動的な刺激を与える吐水を、主水流の進行方向を周期的に変化させるような副水流を形成することによって実現しているので、例えば吐水圧を脈動的に変化させるポンプを別途設けるようなことなく、簡単な構成で使用者にとって心地よい刺激を与えることができるシャワー装置F1を提供している。
【0053】
また本実施形態では、副水流形成手段は、主水流の近傍に副水流負圧を発生させるように副水流を形成するものである。
【0054】
副水流によって主水流の進行方向を変化させるためには、主水流の近傍に副水流に起因する圧力変動を発生させることが簡便且つ確実な手法である。本実施形態の場合、上述したように空気混入部43の開口431及び空気流路431aから空気を取り込んで気泡混入水を形成しているので、空気混入部43内は負圧状態となっている。そこでこの好ましい態様では、空気混入部43内の負圧を低下させないように、主水流の近傍に副水流負圧を発生させることで主水流の進行方向を周期的に変化させている。
【0055】
また本実施形態では、副水流形成手段は、空気混入部43に噴射される主水流によって副水流を形成するものである。
【0056】
このように、主水流によって副水流を形成するので、副水流を発生させるための特別な機構を別途設けることなく、より簡単な構成で主水流の進行方向を周期的に変動させることができる。
【0057】
また本実施形態では、空気混入部43に開口431から空気を吸引するために発生される吸引負圧と、副水流負圧との圧力差によって、主水流の進行方向を周期的に変化させるものであり、副水流形成手段は、副水流の作用によって副水流負圧を変化させ、圧力差を変化させている(図4〜8参照)。
【0058】
主水流の進行方向を変動させることのみに着目すれば、主水流の進行方向と交わる方向に作用する負圧が発生していればよく、気泡混入水を生成するために開口431から空気を吸引する際に発生する吸引負圧の変動のみで主水流の進行方向を変動させることも考えられる。しかしながら、吸引負圧のみの作用によって主水流の進行方向を変動させようとすれば、吸引負圧と主水流の変動による圧力バランスが均衡し、主水流の動きが止まることが想定される。そこで、吸引負圧と副水流負圧との圧力差によって主水流の進行方向を周期的に変化させるので、主水流には吸引負圧と副水流負圧とが相互作用することになり、圧力バランスが均衡して主水流の動きが止まってしまうことを防止できる。このように主水流の進行方向を変動させることを副水流水圧の変化によって行っているので、より簡単な構成で確実に主水流の進行方向を周期的に変動させることができる。
【0059】
また本実施形態では、副水流形成手段は、吸引負圧が小さくなると副水流負圧を大きくし、吸引負圧が大きくなると副水流負圧を小さくするように副水流を形成している(図8参照)。
【0060】
このように、吸引負圧が小さくなると副水流負圧を大きくし、吸引負圧が大きくなると副水流負圧を小さくすることで、主水流に作用する力を吸引負圧側と副水流負圧側とから交互に大きく作用させることができる。従って、主水流の進行方向の変動をより確実に起こすことができる。
【0061】
また本実施形態では、副水流形成手段は、副水流を渦状の流れに形成するためのガイドとなる渦室432を有する。
【0062】
このようには、副水流を形成するためのガイドとなる渦室432を設けているので、副水流を形成する渦状の流れを渦室432の大きさによって大きくしたり小さくしたりすることができる。従って、副水流によって発生させる副水流負圧に求められる負圧量に応じて渦室432の大きさを調整し、適切な副水流負圧を発生させることができる。
【0063】
また本実施形態では、渦室432は、主水流を挟んで開口431及び空気流路431aと反対側であって、開口431及び空気流路431aと対向する位置に設けられている。
【0064】
このように、副水流負圧を発生させる渦室432と吸引負圧を発生させる開口431及び空気流路431aとを対向する位置に形成するので、副水流負圧と吸引負圧とを主水流を挟んで対向発生させることができ、主水流の進行方向を安定して周期変動させることができる。
【0065】
また本実施形態では、渦室432は、絞り部42側における空気混入部43の端部に設けられている。
【0066】
本実施形態では、絞り部42側における空気混入部43の端部は、主水流の噴射側に最も近くなり、主水流の流速が最も速い場所となる。このように、主水流の流速が最も速くなる場所に渦室432を形成しているので、渦流も流速が早くなり、より大きな副水流負圧を発生させることができる。
【0067】
また本実施形態では、絞り部42は、主水流を噴射する方向が、副水流が形成される位置よりも開口431及び空気流路431a側に傾いていることも好ましい。
【0068】
このように、主水流を噴射する方向が開口431及び空気流路431a側に傾いているので、絞り部42から噴射された主水流の進行方向は開口431及び空気流路431a側に傾く(図4及び図9参照)。主水流の噴射によって副水流が形成されると副水流負圧が発生するので、開口431及び空気流路431a側に傾いている主水流の進行方向を副水流側に傾かせることができる(図5及び図9参照)。このように予め開口431及び空気流路431a側に傾いている主水流の進行方向を副水流側に引き寄せることで、主水流の進行方向の変動幅を大きくすることができ、空気の混入量の変動も大きくすることができる。従って、体感的に強い水流と弱い水流とが当たる際の変動幅を大きくすることになり、使用者はより強い脈動的な刺激を受けることができる。
【0069】
また本実施形態では、主水流は、副水流側に開口431及び空気流路431aから吸引された空気が侵入しないような水流となるように形成されている。
【0070】
このように、主水流によって開口431及び空気流路431aから吸引された空気が副水流側に進入しないようにしているので、より安定的に副水流を形成し、安定した副水流負圧を発生することができる。
【0071】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0072】
F1:シャワー装置
4:本体
4A:キャビティ
4Aa:当接面
4Ab:凹部
4Ac:凹部
4Ad:貫通穴
4B:シャワープレート
4Ba:当接面
4Bb:貫通穴
4D:導入コマ
4Da:大径部
4Daa:鍔部
4Db:小径部
4E:封止コマ
4a:上面
4b:下面
41:給水部
41d:給水口
42:絞り部
42d:絞り口
42e:水誘導凹部
421:絞り流路
421b:端面
421c:傾斜面
43:空気混入部
431:開口
431a:空気流路
432:渦室
44:吐水部
44a:側壁
44b:側壁
44c:側壁
443:散水孔
F2:シャワー装置
F3:シャワー装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を混入させた気泡混入水を吐出するシャワー装置であって、
水を供給する給水部と、
前記給水部の下流側に設けられ、前記給水部よりも流路断面積を減少させ、通過する水の流速を高めて主水流として下流側に噴射する絞り部と、
前記絞り部の下流側に設けられ、空気を導入する空気導入口を有し、前記空気導入口から導入した空気を前記主水流に混入させて気泡混入水を生成する空気混入部と、
前記空気混入部の下流側に設けられ、前記気泡混入水を吐出するための複数の散水孔が形成されている吐水部と、を備えるとともに、
更に、前記主水流に混入させる空気の量を周期的に変化させるために、前記空気混入部における前記主水流の近傍に前記主水流の進行方向を周期的に変化させる副水流を形成するための副水流形成手段を備え、
前記副水流形成手段は、前記主水流を挟んで前記空気導入口とは反対側に設けられ、前記副水流を、前記主水流を引き寄せる負圧を発生させる渦状の流れとするためのガイドとなる凹状の渦室を有するとともに、
前記絞り部は、前記主水流を前記空気導入口と前記渦室との間に噴射し、前記空気導入口から導入した空気が前記渦室に侵入しないように構成されている、
ことを特徴とするシャワー装置。
【請求項2】
前記絞り部は、前記主水流を噴射する方向が、前記渦室よりも前記空気導入口側に傾いていることを特徴とする請求項1に記載のシャワー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−46768(P2013−46768A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−214211(P2012−214211)
【出願日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【分割の表示】特願2011−55419(P2011−55419)の分割
【原出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】