説明

シャーベット状アイスの脱水装置

【課題】脱水氷の氷量を可変できるシャーベット状アイスの脱水装置を得る。
【解決手段】シャーベット状アイスを収容する脱水タンク1と、脱水タンクの下部側からシャーベット状アイスを送り込む供給ポンプ5と、脱水タンク1内部に配置されたフィルタ6と、シャーベット状アイスが脱水タンク1の下部から上部へ送られる過程でフィルタ6により濾過された水分を排水する排水パイプ7と、脱水タンク1の上部に達して脱水氷となったシャーベット状アイスが排出される排出口1aと、フィルタ6の露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構8とを有し、フィルタ調整機構8により、フィルタ6の露出面積及び露出面上部から排出口1aまでの高さを変化させて、排出される脱水氷11の氷量を調整するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シャーベット状アイスから液分を分離する脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、海水魚等の鮮度を保つ手段として、シャーベット状アイスを用いる方法が注目されている。シャーベット状アイスの脱水氷は、主に流通分野の送り用氷として使用されるが、特にエア便の場合の輸送コストは輸送重量で決まるため、極力脱水率を上げることで軽量化して輸送コストを削減する方法が取られている。
シャーベット状アイスから液分を分離する従来の技術としては、例えば、氷スラリーの移送管路と、この移送管路の下流側に接続された管状フィルタと、この管状フィルタの下流側に接続された残氷移送管路とを備え、氷を固形分として含む氷スラリーをフィルタ内面に沿って移送しつつ、そのスラリー中の液分をフィルタを介して連続的に分離して外部に取り出すようした氷スラリーの固液分離装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、スラリーアイスを貯溜する分離用容器と、分離用容器内の下方に設けられたフィルタ及び上方に設けられたオーバーフロー管と、分離用容器の上方に配置されて分離用容器の上部に押し上げられた氷分を払い出す氷払出し機とを備え、分離用容器内に導入したスラリーアイスからフィルタを介して水分を分離して、氷払出し機で払い出すようにした氷分離装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−29705号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開2010−7895号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シャーベット状アイスを用いる輸送は、エア便による輸送以外にトラック輸送もあり、トラック輸送の場合は、特に軽量である必要は無く、輸送に要する時間に応じた氷量があれば問題はないが、脱水装置から得る脱水氷を使用するために、過度に脱水率を向上させた氷が使用される場合もあった。脱水率が高い氷は、溶解した際に氷同士がブリッジする可能性があり魚体に氷が触れなくなる危険性もある。従って、適度に水分を含む方が、氷が魚体にまとわりつき、安定して保冷することが可能である。このように、用途によって最適な脱水率は異なってくる。
上記特許文献に示すような従来の分離装置による固液分離では、貯蔵容器内に設けるフィルタ位置やフィルタ面積が一定に固定されているため、ほぼ同じ脱水率の氷しか排出できず、用途に応じて柔軟に対応できないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、脱水氷の氷量を可変できるシャーベット状アイスの脱水装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係るシャーベット状アイスの脱水装置は、シャーベット状アイスを収容する脱水タンクと、脱水タンクの下部側からシャーベット状アイスを送り込む供給ポンプと、脱水タンクの内部の中央部に配置されたフィルタと、脱水タンクに供給されたシャーベット状アイスが下部から上部へ送られる過程でフィルタにより濾過された水分が排水される排水パイプと、脱水タンクの上部に達して脱水氷となったシャーベット状アイスが排出さ
れる排出口と、フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構とを有し、フィルタ調整機構により、フィルタの露出面積及び露出面上部から排出口までの高さを変化させて、排出される脱水氷の氷量を調整するようにしたものである。
【0007】
また、上記フィルタ調整機構に替えて、フィルタと第1の排出口との中間部に設けられたシャーベット状アイスの掻き出し機構と、掻き出し機構で掻き出されたシャーベット状アイスが排出される第2の排出口とを有し、シャーベット状アイスがフィルタを通過して第1の排出口に達する前に、掻き出し機構により第2の排出口からシャーベット状アイスを取り出せるようにしたものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明のシャーベット状アイスの脱水装置によれば、フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構を有し、フィルタ調整機構により、フィルタの露出面積及び露出面上部から排出口までの高さを変化させて、排出される脱水氷の氷量を調整するようにしたので、脱水氷の用途に応じて、最適な氷量の脱水氷を容易に提供することができる。
【0009】
また、フィルタと第1の排出口との中間部に配置されたシャーベット状アイスの掻き出し機構と、掻き出し機構で掻き出されたシャーベット状アイスが排出される第2の排出口とを有し、脱水タンク内を通過するシャーベット状アイスがフィルタを通過して第1の排出口に達する前に、掻き出し機構により第2の排出口からシャーベット状アイスを取り出せるようにしたので、適度に水分を含む脱水氷を取り出すことができるため、低氷量の脱水氷を必要とする場合にも容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1によるシャーベット状アイスの脱水装置を示す概略構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2によるシャーベット状アイスの脱水装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、図に基づいて説明する。図1は、実施の形態1によるシャーベット状アイスの脱
水装置を示す概略構成図である。なお、シャーベット状アイスは、固体である微細氷と液体である水分との混合体なので、以下の説明において水分または水というときは、この液体の水分を指すものとする。
【0012】
円筒状をした脱水タンク1の底部に配管2が設けられ、その配管2にはシャーベット状アイスを供給するための供給弁3と、脱水タンク1から溶解した脱水シャーベット状アイスを排出するためのドレン弁4が取り付けられている。供給弁3の上流側には、シャーベット状アイスを供給するための供給ポンプ5が備えられている。更に、供給ポンプ5の上流側は、図示しないシャーベット状アイスの供給源に接続される。
なお、図1では、供給弁3とドレン弁4は、一体となった3方弁として図示しているが、もちろん配管を分岐させて個別に設けても良い。
【0013】
脱水タンク1の内部には、フィルタ6を装備した排水パイプ7が設けられている。フィルタ6の配置位置は、脱水タンク1内の上下方向のほぼ中間部としている。また、フィルタ6のフィルタ面は排水パイプ7の側面に露出させている。従って、排水パイプ7の外周側に供給されるシャーベット状アイスの水分は、側面の露出面→フィルタ6→排水パイプ7の内部→下部の排水口7aの経路で排水される。
【0014】
実施の形態1の特徴部として、このフィルタ6には、フィルタ6の露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構8が設けられている。フィルタ調整機構8は、例えば、排水パイプ7の外周側に排水パイプ7を覆う筒状のフィルタ調整筒を設け、これを外部から上下方向にスライドできるようにしたものである。
脱水タンク1の内部の上方には、脱水されたシャーベット状アイスを掻き取って排出するための掻き取り羽根9が配置され、この掻き取り羽根9を駆動するために、脱水タンク1の外部上方に、駆動モータ10が装備されている。
また、脱水タンク1の上部の側面には、脱水されたシャーベット状アイスを排出するための排出口1aが形成されている。
【0015】
次に、動作について説明する。
供給弁3を開き供給ポンプ5を作動させると、シャーベット状アイスは供給弁3から配管2を通って脱水タンク1の底面側より内部に供給される。供給されたシャーベット状アイスは、脱水タンク1内の下部側から段々と上方に溜まっていく。脱水タンク1内の排水パイプ7に取り付けられているフィルタ6は、シャーベット状アイスから水分を透過する機能を備えているので、シャーベット状アイスがフィルタ6の高さに達すると、側面の露出面から少しずつ水分がフィルタ6を通して排水パイプ7内に侵入し、下端の排水口7aから外部へ排出される。
【0016】
フィルタ6の露出面の部位を通過して更に上方に送られるシャーベット状アイスは、水分が失われた分だけ氷量が増す。なお、氷量とは、IPF(Ice Packing Factor)とも呼ばれているもので、シャーベット状アイスの全重量のうち、そのシャーベット状アイスに含まれる氷の重量の割合のことである。
シャーベット状アイスは、供給ポンプ5の作動により一定の速度で供給されるので、氷量が増したシャーベット状アイスは脱水タンク1の上部に移動する。この過程においても残った水分は下降を続けるので、図1(b)に示すように、フィルタ6面を過ぎて上部の排出口1aに行くに従い脱水率は高くなる。
【0017】
脱水タンク1の上部に達したときは、ほぼ水が抜け切った状態で、脱水シャーベット状アイスとなっている。この状態を脱水氷11と呼ぶことにする。脱水氷11は、水がほとんど抜け切っているが、氷の回りに水分が付着しているために、氷量は80〜85%程度である。
脱水タンク1の上部に達した脱水氷11は、駆動モータ10により掻き取り羽根9を回転させて、排出口1aから外部へ排出される。
【0018】
ここで、フィルタ調整機構8の作用について説明する。
脱水氷11の氷量は、シャーベット状アイスの供給速度を一定とした場合、フィルタ6での水抜き速度と、フィルタ6を通過してから脱水タンク1上部に到達するまでの高さで決定される。従って、氷量が異なる脱水シャーベット状アイスを得るには、フィルタ6での水抜き速度、あるいは脱水タンク1上部に到達するまでの高さを変えることで可能となる。水抜き速度は、シャーベット状アイスが触れるフィルタ6の露出面積に左右される。
本実施の形態では、フィルタ調整機構8として、フィルタ6の外周面に上下動可能なフィルタ調整筒を設けているので、このフィルタ調整筒を上下させることで、フィルタ6の露出面積、及びフィルタ6の露出面の上端から排出口1a下端までの高さの双方とも調整することができる。従って、フィルタ調整機構8により、露出面積,高さを適宜変化させることで、更にはシャーベット状アイスの供給速度と組み合わせることで、脱水氷の氷量を任意に変えることが可能となる。
【0019】
以上のように、実施の形態1のシャーベット状アイスの脱水装置によれば、シャーベッ
ト状アイスを収容する脱水タンクと、脱水タンクの下部側からシャーベット状アイスを送り込む供給ポンプと、脱水タンク内部の中央部に配置されたフィルタと、脱水タンクに供給されたシャーベット状アイスが下部から上部へ送られる過程でフィルタにより濾過された水分が排水される排水パイプと、脱水タンクの上部に達して脱水氷となったシャーベット状アイスが排出される排出口と、フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構とを有し、フィルタ調整機構により、フィルタの露出面積及び露出面上部から排出口までの高さを変化させて、排出される脱水氷の氷量を調整するようにしたので、脱水氷の用途に応じて、最適な氷量の脱水氷を容易に得ることができる。
【0020】
実施の形態2.
図2は、実施の形態2によるシャーベット状アイスの脱水装置の概略構成を示す断面図である。実施の形態1の図1と同等部分は同一符号を付して説明は省略し、相違点を中心に説明する。
図1と比較して、フィルタ調整機構は設けていない。替わりに、フィルタ6より上方で、排出口1aより下方の位置に、掻き出し機構12を設けている。掻き出し機構12は、例えばスクリュー羽根12aと、スクリュー羽根12aを駆動する駆動モータ13とで構成される。また、脱水タンク1の側壁の、掻き出し装置12の高さの位置に、開閉可能な蓋を備えた第2の排出口1bが形成されている。第2の排出口1bと区別するために、上方にある排出口を第1の排出口1aと呼ぶことにする。
なお、掻き出し機構12は、図に限定するものではなく、例えば、シリンダで押し出すような構造でも良い。
【0021】
次に、動作について説明する。脱水シャーベット状アイスの生成方法は、実施の形態1に示したとおりである。
脱水タンク1内のシャーベット状アイスは、フィルタ6で水分を除去しながら上方へ移動するが、実施の形態1で説明したように、氷量は上方に移動するに従い向上していく。上部に達する前の脱水シャーベット状アイスの氷量は、上部の氷量と比較すると、水分を含む低氷量の脱水シャーベット状アイスである。図のように第1の排出口1aの高さより低い位置に、掻き出し機構12を組込んでいるので、必要に応じ掻き出し機構12を駆動させることで、上部側より水分を含んだ、すなわち氷量の低い脱水シャーベット状アイスを取り出すことができる。氷量の高い脱水氷が必要なときは、排出口1bの蓋を閉じて上方へ移動させ、掻き取り羽根9を駆動して第1の排出口1aから取り出すようにする。
【0022】
なお、図2の構成に、実施の形態1の図1で説明したフィルタ調整機構8と同様のフィルタ調整機構を組み込んでもよい。掻き出し機構とフィルタ調整機構とを組み合わせることで、取り出せる脱水氷の氷量を、より細かく調整することが可能となる。
【0023】
以上のように、実施の形態2のシャーベット状アイスの脱水装置によれば、フィルタと第1の排出口との中間部に設けられたシャーベット状アイスの掻き出し機構と、掻き出し機構で掻き出されたシャーベット状アイスが排出される第2の排出口とを有し、シャーベット状アイスがフィルタを通過して第1の排出口に達する前に、掻き出し機構により第2の排出口からシャーベット状アイスを取り出せるようにしたので、適度に水分を含む脱水氷を取り出すことができるため、低氷量の脱水氷を必要とする場合にも容易に対応することができる。
【0024】
また、上記に加えて、フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構を備え、フィルタ調整機構により、フィルタの露出面積、及び露出面上部から第1又は第2の排出口までの高さ変化させて、排出されるシャーベット状アイスの氷量を調整するようにしたので、取り出せる脱水氷の氷量を、より細かく調整することができるため、広い用途に対応できる。
【符号の説明】
【0025】
1 脱水タンク 1a 排出口(第1の排出口)
1b 第2の排出口 2 配管
3 供給弁 4 ドレン弁
5 供給ポンプ 6 フィルタ
7 排水パイプ 7a 排水口
8 フィルタ調整機構 9 掻き取り羽根
10 駆動モータ 11 脱水氷
12 掻き出し機構 12a スクリュー羽根
13 駆動モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャーベット状アイスを収容する脱水タンクと、前記脱水タンクの下部側から前記シャーベット状アイスを送り込む供給ポンプと、前記脱水タンクの内部の中央部に配置されたフィルタと、前記脱水タンクに供給された前記シャーベット状アイスが下部から上部へ送られる過程で前記フィルタにより濾過された水分が排水される排水パイプと、前記脱水タンクの上部に達して脱水氷となった前記シャーベット状アイスが排出される排出口と、前記フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構とを有し、
前記フィルタ調整機構により、前記フィルタの前記露出面積及び露出面上部から前記排出口までの高さを変化させて、排出される前記脱水氷の氷量を調整するようにしたことを特徴とするシャーベット状アイスの脱水装置。
【請求項2】
シャーベット状アイスを収容する脱水タンクと、前記脱水タンクの下部側から前記シャーベット状アイスを送り込む供給ポンプと、前記脱水タンクの内部の中央部に配置されたフィルタと、前記脱水タンクに供給された前記シャーベット状アイスが下部から上部へ送られる過程で前記フィルタにより濾過された水分が排水される排水パイプと、前記脱水タンクの上部に達して脱水氷となった前記シャーベット状アイスが排出される第1の排出口と、前記フィルタと前記第1の排出口との中間部に設けられた前記シャーベット状アイスの掻き出し機構と、前記掻き出し機構で掻き出された前記シャーベット状アイスが排出される第2の排出口とを有し、
前記シャーベット状アイスが前記フィルタを通過して前記第1の排出口に達する前に、前記掻き出し機構により前記第2の排出口から前記シャーベット状アイスを取り出せるようにしたことを特徴とするシャーベット状アイスの脱水装置。
【請求項3】
請求項2記載のシャーベット状アイスの脱水装置において、
前記フィルタの露出面積及び露出位置を調整可能なフィルタ調整機構を備え、前記フィルタ調整機構により、前記フィルタの前記露出面積、及び露出面上部から前記第1の排出口又は前記第2の排出口までの高さを変化させて、排出される前記シャーベット状アイスの氷量を調整するようにしたことを特徴とするシャーベット状アイスの脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−104588(P2013−104588A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247246(P2011−247246)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】