説明

シャーレ

【課題】使用後、滅菌処理して医療廃棄物として処理しなければならないため、その費用が莫大なものとなっている。
【解決手段】所定大きさのシャーレ本体1と、該シャーレ本体1の表面を被装するカバー2と、前記シャーレ本体1内に載置される乾燥培地3とを備える。シャーレ本体1は、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙紙等の紙類からなる基材1aと、該基材1aの表面にコーティング処理されたガラスコート処理膜1bとを備えており、所定位置に前記乾燥培地3をセットするための載置面部1cを凹設する。好ましくは、シャーレ本体1を、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形し、前記載置面部1cを型押成形したものを使用するのが良い。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、主として紙の表面にガラス質の薄膜コートを施してなるシャーレに関し、更に詳しくは、使用後の滅菌処理が不要で、かつ、燃焼しても環境や人体に影響を与えることなく簡単に廃棄できる安全で有用な新素材のシャーレに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、斯かるシャーレとしては、ガラスやプラスチック等から成形された浅底のシャーレ本体と、該シャーレ本体に被装される蓋状のカバーとを備えている。
また、プラスチック製のシャーレとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチシン(HDPE)、ポリ塩化ビニール(PVC)
、低密度ポリエチシン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)製のものが汎用されている。
【0003】
【考案が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のシャーレのうち、プラスチック製シャーレにあっては、使用後、滅菌処理して医療廃棄物として処理しなければならないため、その費用が莫大なものとなっており、また、その廃棄処理にあっては、特に、ポリ塩化ビニール(PVC)製のシャーレの場合は、燃焼する際に、副産物として有害なる塩素ガスやダイオキシンを発生させ、環境や人体に悪い影響を与えてしまうことが問題となっている。
【0004】
本考案は斯かる問題点に鑑みてなされたもので、使用後の滅菌処理が不要で、かつ、燃焼しても環境や人体に影響を与えることなく簡単に廃棄できるなど、医療用品として安全で安価な廃棄処分ができる有用なシャーレを提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の如き従来の問題点を解決し、所期の目的を達成するため本考案の要旨とする構成は、乾燥培地や検査試料をセットするための載置面部を有するシャーレ本体と、該シャーレ本体の表面を被装するカバーとを備えてなるシャーレにおいて、前記シャーレ本体は、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙等の紙類からなる基材と、該基材の表面に施されたガラスコート処理膜との二層構造を有するシャーレに存する。
【0006】
また、前記シャーレ本体は、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形するが良い。
【0007】
更に、前記ガラスコート処理膜は、アルコキシシランからなる主剤と、触媒及び混合溶剤とを攪拌・混合してなるコート液を紙類に塗布若しくは浸漬して表面処理をするのが良く、更に、前記触媒としては、加水分解可能な有機金属化合物であるのが良い。
【0008】
このように構成される本考案のシャーレは、前記シャーレ本体が、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙等の紙類からなる基材と、該基材の表面に施されたガラスコート処理膜との二層構造を有すること、延いては、前記シャーレ本体を、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形することにより、使用後の滅菌処理が不要で、かつ、燃焼しても環境や人体に影響を与えることなく簡単に廃棄し得ることとなる。
【0009】
また、前記ガラスコート処理膜は、アルコキシシランからなる主剤と、加水分解可能な有機金属化合物からなる触媒及び混合溶剤とを攪拌・混合してなるコート液を紙類に塗布若しくは浸漬して表面処理をすることによって、表面にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜が生成されることとなる。
【0010】
更に、前記触媒に加水分解可能な有機金属化合物を使用すれば、コート液中に反応水を加えなくてもアルコキシシランが紙類の表面にコーティングされる。このため、従来のガラス質コート剤にみられるような過剰な反応水による紙類の変形を阻止し得ると共に、斯かる触媒の作用で、紙類の表面の水分や大気中の湿気と反応し、最終的にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜が、約1〜数十μmの厚さで形成されることとなる。
【0011】
【考案の実施の形態】
次に、本考案の実施の一例を図面を参照しながら説明する。図中Aは、本考案に係るシャーレであり、このシャーレAは、図1乃至図4に示すように、所定大きさのシャーレ本体1と、該シャーレ本体1の表面を被装するカバー2と、前記シャーレ本体1内に載置される乾燥培地3とを備えている。
【0012】
シャーレ本体1は、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙紙等の紙類からなる基材1aと、該基材1aの表面にコーティング処理されたガラスコート処理膜1bとの二層構造からなり(図4参照)、所定位置に前記乾燥培地3をセットするための載置面部1cが凹設されている。
【0013】
好ましくは、シャーレ本体1を、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形し、前記載置面部1cを型押成形したものを使用するのが良い。
【0014】
また、前記ガラスコート処理膜1bは、ガラス化のコーティング処理からなり、例えば、適宜前処理を施してなる基材1aの表面にコート液を噴霧、刷毛、ロール等により塗布したり、コート液(コーティング処理剤)内に浸漬して加温処理されるものである。
【0015】
具体的には、アルコキシシランからなる主剤と、触媒及び混合溶剤とを攪拌・混合してなるコート液を調合し、然る後、基材1aに塗布して加温処理することにより、表面にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜(コーティング処理膜)
が生成される。
【0016】
因に、この標準的処理条件としては、本コート液を基材1aに塗布して撥水コートを施し、塗布後、室温で10分程乾燥し、その後、120℃で更に10分程加温するものであるが、斯かる撥水性に合わせて、機械的強度や難燃性も付与され、引張強度の向上も認められるものである。
【0017】
通常、所謂ゾルーゲル法を利用し、ガラス質の薄膜をコートする場合、その反応液中に多量の水分が存在するため、その水分が原因となって紙類(基材)を変形させることが危惧される。
【0018】
而して、本実施例で使用されるガラス質のコート液は、前記触媒に、加水分解可能な有機金属化合物を使用するため、コート液中に反応水を加えなくても、アルコキシシランが基材1aの表面にコーティングされる。
【0019】
斯かる触媒の作用で、紙類の表面の水分や大気中の湿気と反応し、最終的にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜(約1〜数十μmの厚さ)をコートすることができる。
【0020】
このようなシロキサン結合のエネルギーは、Si−O=106kcal/molであるのに対し、典型的な有機化合物の結合エネルギーが、C−C=82.6kcal/molであることにより、斯かるシロキサン結合を有するガラス質のコート膜(コーティング処理膜4)は、有機化合物に比し、はるかに熱的に安定している。
【0021】
従って、斯かる熱的安定性が、基材1aに、耐久性、耐水性、耐摩耗性、耐縮性、耐汚染性を付与するものであり、後述するように、自然で、安全性に優れた新素材を提供できるものである。
【0022】
尚、このコーティング処理は、シャーレAを成形する前の段階で処理しても良いものであるが、これに限定されることなく、事後的に、すなわち、所定形状に成形した後に施しても良い。
【0023】
一方、乾燥培地3は、菌数測定用の簡易培地であり、予め滅菌処理されて前記シャーレ本体1の載置面部1c内にセットされおり、かつ、少なくともその表面(載置面部1c)上を被装すべく前記カバー2をシールすることにより気密状態に保持されている。
【0024】
また、図5は、予備用の乾燥培地3であり、別体の保護シート4と保護カバー5との間に滅菌処理して保持されており、使用する時に初めて保護カバー5を剥離して取り出し、前記シャーレ本体1の載置面部1c内にセットされる。
【0025】
因に、この乾燥培地3は、拡散シート(図示せず)に培地成分とゲル化剤とを乾燥状態でコーティングしてなり、検体を加えることで、培地成分とゲル化剤は水によって溶解し(ゲル化剤は膨潤し)拡散シート内に均質化される。
【0026】
このように構成される本考案のシャーレAは、基材1aの特性を活かしつつ、耐久性、耐水性、耐摩耗性、耐縮性、耐汚染性を付加し、また、表面の色褪せや型くずれを有効に防止できるため、従来汎用されている塩化ビニール(PVC)
等のプラスチック成型品に代わり、長年の使用に耐え、色褪せや湿気による型くずれを起こさない、所謂、経年変化に強い有用なシャーレを提供できるものであり、また、燃焼しても、有害なる塩素ガスやダイオキシンを発生させることがないため、環境や人体に対して安全性が高く、安心して使用できるものである。
【0027】
尚、本考案のシャーレAは、本実施例に限定されることなく、本考案の目的の範囲内で自由に設計変更し得るものであり、本考案はそれらの全てを包摂するものである。例えば、本実施例では、前記シャーレ本体1を基材1aとガラスコート処理膜1bとの二層構造について説明しているが、これに限定されることなく、斯かる二層構造を有することを条件(必須構成要件)として、使用目的に応じ三層、四層の多層構造にしても良い。
【0028】
また、本実施例では、和紙、クラフト紙紙等の紙類を基材1aとして説明しているが、これに限定されることなく、用途や必要に応じて、例えば、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙を使用すれば、透光性が付加されるため、ガラスや透明なプラスチック製シャーレに代用できるのである。
【0029】
また、基材1aとなる紙の種類や繊維の長さ、コーティング処理剤の濃度や配合比の変化で、様々な効果や機能が得られ、特に、その無公害性や加工のし易さ並びに再生可能性は、単に紙類の領域にとどまらず塩化ビニールやポリカーボネート等の代替品としての可能性も多大であり、エコロジーという地球全体の中で、環境に優しい新素材を提供できるものである。
【0030】
しかも、紙類にガラスコート処理膜1bを施してなるシャーレは、そのガラス質が非常に薄いため、紙類として再生が可能であり、廃棄しても自然に紙類とガラス質に分離・分解してしまうため、使用後、焼却、再生、廃棄のいかなる形態においても、環境に大きな負担を与えることがない。
【0031】
【考案の効果】
本考案は上述のように構成され、前記シャーレ本体が、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙紙等の紙類からなる基材と、該基材の表面に施されたガラスコート処理膜との二層構造を有すること、延いては、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形することによって、使用後の滅菌処理が不要で、かつ、燃焼しても環境や人体に影響を与えることなく簡単に廃棄できるなど、医療用品として安全で安価な廃棄処分ができるといった効果を奏するものである。
【0032】
しかも、基材となる紙類の種類や繊維の長さ、ガラスコート処理膜の濃度や配合比の変化で、様々な効果や機能が得られ、特に、その無公害性や加工のし易さ並びに再生可能性は、紙の領域にとどまらず、塩化ビニールやポリカーボネート等のプラスチック製シャーレの代替品として使用できるものであり、エコロジーという地球全体の中で、環境に優しい新素材のシャーレを提供できるものである。
【0033】
また、前記ガラスコート処理膜が、アルコキシシランからなる主剤と、加水分解可能な有機金属化合物からなる触媒及び混合溶剤とを攪拌・混合してなるコート液を紙類に塗布若しくは浸漬して表面処理をすることによって、表面にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜が生成できるため、ガラス質の持つ熱的安定性が付加されて、更なる耐久性、耐水性、耐摩耗性、撥水性、耐汚染性に優れた新素材のシャーレを提供できるといった効果を奏するものであり、表面の色褪せや湿気による型くずれも防止できる。
【0034】
特に、前記触媒に、加水分解可能な有機金属化合物を使用すれば、コート液中に反応水を加えなくてもアルコキシシランが紙類の表面にコーティングされるため、従来のガラス質コート剤にみられるような過剰な反応水による紙類の変形を阻止しできると共に、斯かる触媒の作用で、紙類の表面の水分や大気中の湿気と反応し、最終的にシロキサン結合からなるガラス質の薄膜が、約1〜数十μmの厚さで形成され、また、燃焼しても、有害なる塩素ガスやダイオキシンを発生させることがないため、環境や人体に対して安全性が高く、安心して使用できるといった効果を奏するものである。
【0035】
このように本考案は、紙類特有の素材を活かしつつも、色褪せや型くずれを起こさない、所謂、経年変化に強く、また、使用後の滅菌処理が不要で、かつ、燃焼しても環境や人体に影響を与えることなく簡単に廃棄できるなど、医療用品として安全で安価な廃棄処分ができる有用なシャーレを提供できるものであり、本考案を実施することはその実益的価値が甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案に係るシャーレを示す斜視図である。
【図2】同シャーレの側面図である。
【図3】同シャーレの組立分解斜視図である。
【図4】同シャーレの二層構造を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】乾燥培地の保護シートを示す説明図である。
【符号の説明】
1 シャーレ本体
1a 基材
1b ガラスコート処理膜
1c 載置面部
2 カバー
3 乾燥培地
4 保護シート
5 保護カバー

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】乾燥培地や検査試料をセットするための載置面部を有するシャーレ本体と、該シャーレ本体の表面を被装するカバーとを備えてなるシャーレにおいて、前記シャーレ本体は、セルロースフィルム、和紙、クラフト紙等の紙類からなる基材と、該基材の表面に施されたガラスコート処理膜との二層構造を有することを特徴とするシャーレ。
【請求項2】前記シャーレ本体は、透明なセルロースフィルムにシロキサンコートを施してなる透明超越紙で成形したことを特徴とする請求項1に記載のシャーレ。
【請求項3】前記ガラスコート処理膜は、アルコキシシランからなる主剤と、加水分解可能な有機金属化合物である触媒及び混合溶剤とを攪拌・混合してなるコート液を紙類に塗布若しくは浸漬してなることを特徴とする請求項1に記載のシャーレ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】実用新案登録第3091771号(U3091771)
【登録日】平成14年11月20日(2002.11.20)
【発行日】平成15年2月14日(2003.2.14)
【考案の名称】シャーレ
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願2002−4732(U2002−4732)
【出願日】平成14年7月30日(2002.7.30)
【出願人】(390027476)株式会社飾一 (8)