説明

シュウ酸バリウムチタニル粒子、その製造方法及びチタン酸バリウムの製造方法

【解決課題】本発明の目的は、微細で且つ、球状の粒子形状を有するシュウ酸バリウムチタニル粒子を提供すること。更に、本発明は結晶性に優れたチタン酸バリウムを提供すること。
【解決手段】平均粒子径が0.1〜50μmであり、粒子形状が球状であることを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子であり、その好ましい製造方法は、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、圧電体、オプトエレクトロニクス材、誘電体、半導体、センサー等の機能性セラミックの原料として有用なシュウ酸バリウムチタニル粒子、その製造方法、及びそれを用いるチタン酸バリウムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、チタン酸バリウムは、固相法、水熱合成法、アルコキシド法、シュウ酸塩法等により製造されている。
【0003】
固相法では、構成原料粉末等を混合し、該混合物を高温で加熱する乾式方法により製造するため、得られた粉末は不規則な形状を呈する凝集体を成し、また、所望の特性を達成するために高温焼成が必要である。また、水熱合成法は、粉体の特性が良好との長所にもかかわらず合成工程が複雑で、オートクレーブを用いるため生産性が劣り、製造粉末の値段が高く工業的に有利でない。また、アルコキシド法も同様、出発物質の取り扱いが難しく、値段が高く工業的に有利でない。
【0004】
シュウ酸塩法で得られるチタン酸バリウムは、水熱合成法やアルコキシド法に比べ、組成が均一なものを安価に製造することができ、また、固相法で製造したチタン酸バリウムに比べ、組成が均一であるという特徴を有する。従来のシュウ酸塩法としては、TiClとBaClとの水溶液を、H水溶液に攪拌下に滴下して、シュウ酸バリウムチタニルを得、該シュウ酸バリウムチタニルを焼成する方法が一般的である(例えば、非特許文献1及び特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−500239号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】W.S.Clabaugh et al.,J.Res.Nat.Bur.Stand.,56(5),289−291(1956)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
シュウ酸塩法により得られるチタン酸バリウムは、誘電体セラミックの材料として、優れた性能を発揮するものの、近年の要求性能の高まりから、更なる性能向上が求められている。チタン酸バリウムの誘電体セラミックとしての特性は、一般的には結晶性が高いものが誘電特性もよいことが知られている(例えば、特開2006−117446号公報参照)。また、シュウ酸塩法では、粒子径が小さいものが得られ難く、得られたとしても結晶性が高いものが得られ難いという問題もある。
【0008】
従来、シュウ酸塩法により得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子は、多くの場合、平均粒子径が100〜200μmで、粒子形状が金平糖状であることが知られている。
本発明者らは、シュウ酸塩法において、反応形態を従来のバッチ式で行う方法に代えて、連続法により反応を行うと、平均粒子径が従来のものより小さく且つ、その粒子形状が球状のものが得られることを見出した。また、該球状のシュウ酸バリウムチタニル粒子を用いることにより、より結晶性が高い優れた性能を有するチタン酸バリウムを製造することができることを見出した。更に、本発明者らは、特定温度範囲で連続反応を行うことにより、目的とする球状のシュウ酸バリウムチタニルが収率よく得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0009】
従って、本発明の目的は、微細で且つ、球状の粒子形状を有するシュウ酸バリウムチタニル粒子を提供すること。また、該微細で球状のシュウ酸バリウムチタニル粒子を工業的に有利に製造する方法を提供すること。更に、本発明は結晶性に優れたチタン酸バリウムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明が提供しようとする第1の発明は、平均粒子径が0.1〜50μmであり、粒子形状が球状であることを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子である。
【0011】
また、本発明が提供しようとする第2の発明は、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を提供するものである。
【0012】
また、本発明が提供しようとする第3の発明は、シュウ酸水溶液(A2液)と、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液(B2液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を提供するものである。
【0013】
また、本発明が提供しようとする第4の発明は、シュウ酸水溶液(A3液)と、塩化バリウム水溶液(B3液)と、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(C3液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を提供するものである。
【0014】
また、本発明が提供しようとする第5の発明は、前記第2〜第4の発明のいずれかのシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行い得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子を焼成することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子は、微細で、且つ粒子形状が球状のものであり、また、本発明の製造方法によれば、該シュウ酸バリウムチタニルを工業的に有利な方法で収率よく、製造することができる。また、このような球状のシュウ酸バリウムチタニル粒子を用いることにより、結晶性が高く、優れた性能を有する誘電体セラミック材料を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】オーバーフロー方式の反応容器の模式的な断面図である。
【図2】実施例1で得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の粒子形状を示す電子顕微鏡写真(倍率;500倍)である。
【図3】実施例1で得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の粒子形状を示すSEM写真(倍率;500倍)である。
【図4】実施例1で得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の粒子形状を示すSEM写真(倍率;2000倍)である。
【図5】比較例1で得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の粒子形状を示す電子顕微鏡写真(倍率;100倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子は、従来のシュウ酸バリウムチタニル粒子に比べ、微細で且つ、その粒子形状に特徴がある。
従来のバッチ式で得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子は、多くの場合レーザー回折・散乱法で求められる平均粒子径が100μm以上、好ましくは100〜150μmであるのに対して、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子は、レーザー回折・散乱法で求められる平均粒子径が0.1〜50μm、好ましくは5〜40μm、一層好ましくは10〜30μmで、従来のものに比べて極めて微粒なものである。
【0018】
更に本発明に係るシュウ酸バリウムチタニル粒子は、その粒子形状が球状であることも特徴の1つである。
該粒子形状は、500倍の倍率で電子顕微鏡観察したときに、その粒子形状が球状とみなされる形状である限り、必ずしも真球であることを要しない。
【0019】
また、本発明に係るシュウ酸バリウムチタニル粒子は、2000倍の倍率で走査型電子顕微鏡観察したときに粒子表面が滑らかであり、実質的に角のない粒子であることも特徴の1つである。
【0020】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応の反応原料であるシュウ酸(H)、塩化バリウム(BaCl)及び四塩化チタン(TiCl)の水溶液を、反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法である。そして、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法には、反応原料水溶液の種類により、以下の形態がある。
【0021】
なお、本発明において、反応液とは、反応原料水溶液が供給された反応容器内の液であり、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応が起こっている液であり、生成したシュウ酸バリウムチタニルの沈澱物を含有する液である。
【0022】
本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法である。
【0023】
本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、シュウ酸水溶液(A2液)と、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液(B2液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法である。
【0024】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、シュウ酸水溶液(A3液)と、塩化バリウム水溶液(B3液)と、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(C3液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法である。
【0025】
つまり、本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、反応原料水溶液として、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を用いる形態である。
【0026】
本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るA1液は、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液であるが、例えば、先ず四塩化チタンを水に混合し、次いで得られた水溶液にシュウ酸を混合することや、シュウ酸水溶液に四塩化チタンを混合することにより調製される。A1液中のTi元素に対するシュウ酸イオンのモル比(シュウ酸イオンのモル数/Ti元素のモル数)は、2.0〜3.8、好ましくは2.8〜3.8、更に好ましくは3.0〜3.3である。A1液中のTi元素に対するシュウ酸イオンのモル比が上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウムを得易くなる。また、A1液中のTi元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.04〜3.0mol/L、特に好ましくは0.2〜0.6mol/Lである。A1液中のシュウ酸イオンの濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜7.0mol/L、特に好ましくは0.6〜1.4mol/Lである。
【0027】
本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るB1液は、塩化バリウム水溶液である。B1液中のBa元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜6.5mol/L、特に好ましくは0.5〜1.3mol/Lである。
【0028】
本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A1液及びB1液を反応容器に供給することにより、反応容器内で、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行う。
【0029】
このとき、反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比(Ba元素の供給速度/Ti元素の供給速度)は、0.5〜3.0、好ましくは1.0〜1.5である。反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比が、上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウム粒子を得ることができる。
【0030】
本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A1液中のTi元素の濃度、B1液中のBa元素の濃度、A1液の供給速度(L/時間)及びB1液の供給速度(L/時間)を適宜選択することにより、反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比を調節することができる。
【0031】
なお、本発明において、反応容器への、Ti元素の供給速度とは、単位時間当たりのTi元素の供給モル数(モル/時間)を指し、また、Ba元素の供給速度とは、単位時間当たりのBa元素の供給モル数(モル/時間)を指し、シュウ酸イオンの供給速度とは、単位時間当たりのシュウ酸イオンの供給モル数(モル/時間)を指す。
【0032】
そして、本発明の第一の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A1液及びB1液を反応容器に供給しつつ、反応容器内で生成したシュウ酸バリウムチタニルの沈澱物を含有する反応液を、反応容器から排出する。このとき、反応容器に供給するA1液及びB1液の合計量と、反応容器から排出する反応液の量を、同量にすることが、安定した反応が行える点で好ましい。例えば、反応容器に、A1液をa1(L/時間)、B1液をb1(L/時間)の供給速度で供給しつつ、且つ反応容器から、反応液をa1+b1(L/時間)の排出速度で排出することが好ましい。
【0033】
また、本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、反応原料水溶液として、シュウ酸水溶液(A2液)と、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液(B2液)と、を用いる形態である。
【0034】
本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るA2液は、シュウ酸水溶液である。A2液中のシュウ酸イオンの濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜7.0mol/L、特に好ましくは0.6〜1.4mol/Lである。
【0035】
本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るB2液は、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液であるが、例えば、先ず四塩化チタンを水に混合し、次いで得られた水溶液に塩化バリウムを混合することや、塩化バリウム水溶液に四塩化チタンを混合することにより調製される。B2液中のTi元素に対するBa元素のモル比(Ba元素のモル数/Ti元素のモル数)は、0.5〜3.0、好ましくは1.0〜1.5である。B2液中のTi元素に対するBa元素のモル比が上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウムを得ることができる。また、B2液中のTi元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.04〜4.0mol/L、特に好ましくは0.2〜0.8mol/Lである。B2液中のBa元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.08〜6.5mol/L、特に好ましくは0.4〜1.3mol/Lである。
【0036】
本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A2液及びB2液を反応容器に供給することにより、反応容器内で、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行う。
【0037】
このとき、反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比(シュウ酸イオンの供給速度/Ti元素の供給速度)は、2.0〜3.8、好ましくは2.8〜3.8、特に好ましくは3.0〜3.3である。反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比が、上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウムを得ることができる。
【0038】
本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A2液中のシュウ酸イオンの濃度、B2液中のTi元素の濃度、A2液の供給速度(L/時間)及びB2液の供給速度(L/時間)を適宜選択することにより、反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比を調節することができる。
【0039】
そして、本発明の第二の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A2液及びB2液を反応容器に供給しつつ、反応容器内で生成したシュウ酸バリウムチタニルの沈澱物を含有する反応液を、反応容器から排出する。このとき、反応容器に供給するA2液及びB2液の合計量と、反応容器から排出する反応液の量を、同量にすることが、安定な反応が行える点で好ましい。例えば、反応容器に、A2液をa2(L/時間)、B2液をb2(L/時間)の供給速度で供給しつつ、且つ反応容器から、反応液をa2+b2(L/時間)の排出速度で排出することが好ましい。
【0040】
また、本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法は、反応原料水溶液として、シュウ酸水溶液(A3液)と、塩化バリウム水溶液(B3液)と、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(C3液)と、を用いる形態である。
【0041】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るA3液は、シュウ酸水溶液である。A3液中のシュウ酸イオンの濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜7.0mol/L、特に好ましくは0.6〜1.4mol/Lである。
【0042】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るB3液は、塩化バリウム水溶液である。B3液中のBa元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.1〜6.5mol/L、特に好ましくは0.5〜1.3mol/Lである。
【0043】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法に係るC3液は、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液である。C3液中のTi元素の濃度は、特に制限されないが、好ましくは0.04〜6.0mol/L、特に好ましくは0.2〜3.0mol/Lである。
【0044】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A3液、B3液及びC3液を反応容器に供給することにより、反応容器内で、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行う。
【0045】
このとき、反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比(Ba元素の供給速度/Ti元素の供給速度)は、0.5〜3.0、好ましくは1.0〜1.5である。反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比が、上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウムを得ることができる。また、反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比(シュウ酸イオンの供給速度/Ti元素の供給速度)は、2.0〜3.8、好ましくは2.8〜3.8である。反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比が、上記範囲にあることにより、Ba/Tiモル比が0.998〜1.002の略1のチタン酸バリウムを得ることができる。
【0046】
本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A3液中のシュウ酸イオンの濃度、B3液中のBa元素の濃度、C3液中のTi元素の濃度、A3液の供給速度(L/時間)、B3液の供給速度(L/時間)及びC3液の供給速度(L/時間)を適宜選択することにより、反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比及び反応容器へのTi元素の供給速度に対するシュウ酸イオンの供給速度の比を調節することができる。
【0047】
そして、本発明の第三の形態のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、A3液、B3液及びC3液を反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出する。このとき、反応容器に供給するA3液、B3液及びC3液の合計量と、反応容器から排出する反応液の量を、同量にすることが好ましい。例えば、反応容器に、A3液をa3(L/時間)、B3液をb3(L/時間)、C3液をc3(L/時間)の供給速度で供給しつつ、且つ反応容器から、反応液をa3+b3+c3(L/時間)の排出速度で排出することが好ましい。
【0048】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を、例えば、図1で示すオーバーフロー方式の反応容器を用いて行うことができる。図1は、オーバーフロー方式の反応容器の模式的な断面図である。図1中、オーバーフロー方式の反応容器1は、反応容器の側壁上部に取り付けられているオーバーフロー管2を有する。そして、オーバーフロー方式の反応容器1では、オーバーフロー管2が反応液の排出口となるため、反応液3の液面4の高さは、常に、オーバーフロー管2の取り付け位置の高さとなり、反応原料水溶液を供給した分だけ、反応液3がオーバーフロー管2からオーバーフローして、オーバーフロー方式の反応容器1から排出される。つまり、オーバーフロー方式の反応容器1では、反応容器への反応原料水溶液の供給量と、反応容器からの反応液の排出量を、常に同量にすることができる。よって、オーバーフロー方式の反応容器を用いれば、反応原料水溶液を反応容器に供給しつつ、反応液を反応容器から排出することができる。なお、図1では、オーバーフロー方式の反応容器1は、実際には、他に、例えば、撹拌装置、加熱装置、反応原料の供給管等を有するが、説明の都合上、反応容器の輪郭のみ記載し、他の記載を省略した。
【0049】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行うための反応容器は、オーバーフロー方式の反応容器に限定されず、他には、例えば、撹拌装置が内部に設置され、反応原料水溶液の供給量が調節できるポンプ等が付設されている供給管及び反応液の排出量が調節できる弁等が付設されている排出管が取り付けられている密閉式反応容器或いは撹拌装置が内部に設置され、反応原料水溶液の供給量が調節できるポンプ等が付設されている供給管及び反応液からポンプ等で一定速度で排出させる排出管が取り付けられている密閉式反応容器等が挙げられる。
【0050】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法において、反応液の温度、つまり、反応温度は、20〜90℃の範囲で行うことができるが、反応温度が50℃以上になると、目的とするシュウ酸バリウムチタニルの収率が劣る傾向があるため、本製造方法では、反応温度は50℃未満、好ましくは25〜40℃とする。本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法において、反応温度を前記範囲とすることにより、収率よくも目的とするシュウ酸バリウムチタニル粒子を得ることができる。
【0051】
本製造法において、得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子の大きさは、生成したシュウ酸バリウムチタニルの滞留時間と関係がある。即ち、滞留時間が短くなるに従ってより微細なものが得られやすい傾向がある。
従って、本製造法では、生成したシュウ酸バリウムチタニルの滞留時間を調整することで、平均粒子径が0.1〜50μmのものを適宜調整して生成させることができる。例えば、平均粒子径が0.1〜50μm、好ましくは5〜40μmのシュウ酸バリウムチタニル粒子を得るには、生成したシュウ酸バリウムチタニル滞留時間を1〜60分間、好ましくは1〜30分間とすればよい。また、本発明で特に好ましい平均粒子径の範囲である10〜30μmのものを得るには、生成したシュウ酸バリウムチタニル滞留時間を1〜15分間となるように調整すればよい。
なお、滞留時間が1分未満だと、得られるシュウ酸バリウムチタニルのBa/Tiのモル比の制御が困難になりBa/Tiのモル比が0.998〜1.002の略1のものが得られ難くなる傾向があり、一方、滞留時間が60分を超えると、前記範囲の粒子径より大きなシュウ酸バリウムチタニル粒子が生成される傾向があり、好ましくない。
本発明において、生成したシュウ酸バリウムチタニルの滞留時間とは、反応容器内の反応液の体積(L)を、反応容器からの反応液の排出速度(L/時間)で除した値(反応液の体積/反応液の排出速度)である。
【0052】
本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法では、反応容器から排出させた反応液を固液分離して、沈澱物を得、次いで、必要に応じて、洗浄及び乾燥して、シュウ酸バリウムチタニルを得ることができる。また、得られたシュウ酸バリウムチタニルを、必要に応じて粉砕してもよい。
【0053】
このようにして、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行い得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子は、粒子形状が球状であり、レーザー回折・散乱法により求められる平均粒子径が0.1〜50μm、好ましくは5〜40μm、一層好ましくは10〜30μmである。
また、該球状のシュウ酸バリウムチタニル粒子を焼成することにより、粒子径が小さいにもかかわらず結晶性が高いチタン酸バリウムが得られるので、優れた性能を有する誘電体セラミック材料が得られる。
【0054】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行い得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子を焼成することにより、チタン酸バリウムを得るチタン酸バリウムの製造方法である。なお、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行い、シュウ酸バリウムチタニル粒子を得る方法については、前述のとおりである。
【0055】
すなわち、本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行い得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子を、焼成することにより、チタン酸バリウムを得るチタン酸バリウムの製造方法である。
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、シュウ酸水溶液(A2液)と、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液(B2液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行い得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子を、焼成することにより、チタン酸バリウムを得るチタン酸バリウムの製造方法である。
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法は、シュウ酸水溶液(A3液)と、塩化バリウム水溶液(B3液)と、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(C3液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行い得られるシュウ酸バリウムチタニル粒子を、焼成することにより、チタン酸バリウムを得るチタン酸バリウムの製造方法である。
【0056】
最終製品に含まれるシュウ酸由来の有機物は、材料の誘電特性を損なうとともに、セラミック化のための熱工程における挙動の不安定要因となるので好ましくい。従って、本発明では焼成によりシュウ酸バリウムチタニル粒子を熱分解して目的とするチタン酸バリウムを得ると共に、シュウ酸由来の有機物を十分除去する必要がある。
【0057】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法において、シュウ酸バリウムチタニル粒子を焼成する際の焼成温度は、600〜1300℃、好ましくは700〜1200℃である。シュウ酸バリウムチタニルを焼成する際の焼成温度が上記範囲にあることにより、粒子径のバラツキが小さく、高い結晶性を有したX線回折分析において単一相のチタン酸バリウムとなる。一方、焼成温度が上記範囲未満だと、X線回折分析において単一相のチタン酸バリウムが得られ難く、また、上記範囲を超えると、得られるチタン酸バリウムの粒子径のバラツキが大きくなる傾向があり好ましくない。
また、焼成時間は、好ましくは2〜30時間、特に好ましくは5〜27時間である。また、焼成雰囲気は、特に制限されず、不活性ガス雰囲気下、真空雰囲気下、酸化性ガス雰囲気下、大気中のいずれであってもよく、或いは水蒸気を導入しながら前記雰囲気中で焼成を行ってもよい。
【0058】
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法では、シュウ酸バリウムチタニル粒子の焼成を、焼成温度を変えた多段階の焼成で行ってもよい。また、粉体特性を均一にする目的で、一度焼成したものを粉砕し、次いで再焼成や再粉砕を行ってもよい。
【0059】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られるチタン酸バリウムを、必要に応じて、粉砕又は分級することができる。
【0060】
このようにして、本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られるチタン酸バリウムの物性は、Ba/Tiのモル比が0.998〜1.002の略1であり、上述のとおり粒子径が小さいものでも、結晶性が高いものである。
【0061】
従って、本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られるチタン酸バリウムは誘電体セラミックスとして、優れた性能を有する。
【0062】
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られるチタン酸バリウムには、必要により誘電特性や温度特性を調製する目的で、副成分元素含有化合物を本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られるチタン酸バリウムに添加して、副成分元素を含有させることができる。用いることができる副成分元素含有化合物としては、例えば、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの希土類元素、Ba、Li、Bi、Zn、Mn、Al、Si、Ca、Sr、Co、Ni、Cr、Fe、Mg、Ti、V、Nb、Mo、W及びSnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含有する化合物が挙げられる。
【0063】
副成分元素含有化合物は、無機物又は有機物のいずれであってもよい。例えば、前記の元素を含む酸化物、水酸化物、塩化物、硝酸塩、蓚酸塩、カルボン酸塩及びアルコキシド等が挙げられる。副成分元素含有化合物がSi元素を含有する化合物である場合は、酸化物等に加えて、シリカゾルや珪酸ナトリウム等も用いることができる。副成分元素含有化合物は1種又は2種以上適宜組み合わせて用いることができる。その添加量や添加化合物の組み合わせは、常法に従って行えばよい。
【0064】
チタン酸バリウムに副成分元素を含有させるには、例えば、チタン酸バリウムと副成分元素含有化合物を均一混合後、焼成を行えばよい。或いは、シュウ酸バリウムチタニル粒子と副成分元素含有化合物を均一混合後、焼成を行ってもよい。
【0065】
本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られたチタン酸バリウムを用いて、例えば積層セラミックコンデンサを製造する場合には、先ず、チタン酸バリウムの粉末を、副成分元素を含め従来公知の添加剤、有機系バインダ、可塑剤、分散剤等の配合剤と共に適当な溶媒中に混合分散させてスラリー化し、シート成形を行う。これにより、積層セラミックコンデンサの製造に用いられるセラミックシートを得る。該セラミックシートから積層セラミックコンデンサを作製するには、先ず、該セラミックシートの一面に内部電極形成用導電ペーストを印刷する。乾燥後、複数枚の前記セラミックシートを積層し、厚み方向に圧着することにより積層体とする。次に、この積層体を加熱処理して脱バインダ処理を行い、焼成して焼成体を得る。さらに、該焼成体にNiペースト、Agペースト、ニッケル合金ペースト、銅ペースト、銅合金ペースト等を塗布し焼き付けて、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0066】
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られたチタン酸バリウムの粉末を、例えばエポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂等の樹脂に配合して、樹脂シート、樹脂フィルム、接着剤等とすると、プリント配線板や多層プリント配線板等の材料、内部電極と誘電体層との収縮差を抑制するための共材、電極セラミック回路基板、ガラスセラミックス回路基板、回路周辺材料及び無機EL用の誘電体材料として用いることができる。
【0067】
また、本発明のチタン酸バリウムの製造方法を行い得られたチタン酸バリウムは、排ガス除去、化学合成等の反応時に使用される触媒や、帯電防止、クリーニング効果を付与する印刷トナーの表面改質材として好適に用いられる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0069】
(実施例1)
水2154gにシュウ酸2水和物250gを加えた水溶液にTiが2.56mol/Lの濃度である四塩化チタン水溶液332gを混合し、シュウ酸が0.79mol/L、Tiが0.26mol/Lであるシュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)を作製した。すなわち、A1液におけるTi元素に対するシュウ酸イオンのモル比は3.1である。また、塩化バリウム195gを水963gに溶解させ、Baが0.80mol/Lである塩化バリウム水溶液(B1液)を作製した。次いで、反応容器に純水を入れ、35℃に保持し、攪拌下にA1液及びB1液を0.9L/時間、0.4L/時間の速度で反応容器に供給した。すなわち反応容器へのTi元素の供給速度に対するBa元素の供給速度の比は1.3であり、生成するシュウ酸バリウムチタニルの滞留時間は14分として反応を行った。
反応容器から排出させた反応液から、固液分離して、沈澱物を得、洗浄後、乾燥して、シュウ酸バリウムチタニル粒子を得た。
また、BaとTiの反応率を求めた結果、Baは80%でTiは99%であった。
なお、反応率とは、反応終了時に溶出しているBaとTiをICPで測定し、その溶出分を未反応分とし、仕込量からその未反応分を差し引いたものを反応分とし、仕込みの百分率として表わしたものである。この反応率が高い方が未反応で残存するBa及びTiの成分が少なく反応効率及び収率が高いことを示す。
得られたシュウ酸バリウムチタニルのBa/Tiモル比を測定するために、シュウ酸バリウムチタニルを焼成後、蛍光X線分析を行ったところ、バルクのBa/Tiモル比は1.001であった。
また、乾燥後のシュウ酸バリウムチタニルは、レーザー回折・散乱法(堀場製作所;レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920))により求められる平均粒子径が20μmであった。
また、得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の電子顕微鏡写真を図2に、また、SEM写真を図3及び図4に示す。
さらに、得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子を、900℃で24時間焼成し、チタン酸バリウムを得た。得られたチタン酸バリウムについて、結晶性の指標であるc軸とa軸の長さの比(c軸/a軸比)をXRDによって測定したところ1.0093であり、BET法による比表面積を測定したところ2.0m/gであった。
【0070】
(参考例1)
シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を55℃にした以外は、実施例1と同様な操作及び条件にて反応を行って、シュウ酸バリウムチタニル粒子を得た。また、実施例1と同様にしてBaとTiの反応率を求めた結果、Baは70%でTiは95%であった。
従って、実施例1と比べると、未反応で残存するBa及びTiの成分が多く、反応効率及び収率が低下していることが分かる。
【0071】
(比較例1)
バッチ式反応容器を用意し、55℃にした水1400gにシュウ酸2水和物325gを溶解させ、シュウ酸が1.73mol/Lであるシュウ酸水溶液(A11液)を作製した。水1830gに塩化バリウム325gを加えた水溶液にTiが2.6mol/Lの濃度である四塩化チタン水溶液を630g混合し、塩化バリウムが0.55mol/L、Tiが0.52mol/Lである塩化バリウム及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(B11液)を作製した。すなわち、B11液におけるTi元素に対するBa元素のモル比は1.1である。次いで、55℃にしたA11液に撹拌下にB11液を0.7L/時間の速度で滴下して反応容器に供給した。すなわちB11液滴下完了時の反応容器内のTi元素に対するシュウ酸イオンの比は2.1である。
0.5時間熟成した後、反応液を、固液分離して、沈澱物を得、洗浄後、乾燥して、シュウ酸バリウムチタニルを得た。
得られたシュウ酸バリウムチタニルを焼成後、蛍光X線分析を行ったところ、バルクのBa/Tiモル比は0.999であった。
また、乾燥後のシュウ酸バリウムチタニルは、レーザー回折・散乱法(堀場製作所;レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LA−920))により求められる平均粒子径が145μmであった。
また、得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子の電子顕微鏡写真を図5に示す。
得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子を900℃で24時間焼成し、チタン酸バリウムを得た。得られたチタン酸バリウムのXRDによるc軸/a軸比が1.0090であり、BET法による比表面積が1.5m/gであった。
【0072】
図1及び図5から明らかなように、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子は粒子形状が実質的に球状であるのに対して、比較例1で得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子は、粒子形状が金平糖状であることが分かる。
更に図4から、本発明のシュウ酸バリウムチタニル粒子は、粒子表面が滑らかであり、実質的に角のない粒子であることが分かる。
【符号の説明】
【0073】
1 オーバーフロー方式の反応容器
2 オーバーフロー管
3 反応液
4 液面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が0.1〜50μmであり、粒子形状が球状であることを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子。
【請求項2】
シュウ酸及び四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(A1液)と、塩化バリウム水溶液(B1液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法。
【請求項3】
シュウ酸水溶液(A2液)と、四塩化チタン及び塩化バリウムを水に混合して得られる水溶液(B2液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法。
【請求項4】
シュウ酸水溶液(A3液)と、塩化バリウム水溶液(B3液)と、四塩化チタンを水に混合して得られる水溶液(C3液)と、を反応容器に供給しつつ、反応液を該反応容器から排出しながら、シュウ酸バリウムチタニルの生成反応を50℃未満で行うことを特徴とするシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法。
【請求項5】
生成するシュウ酸バリウムチタニルの前記反応容器内の滞留時間が、1〜60分間であることを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項2〜5いずれか1項記載のシュウ酸バリウムチタニル粒子の製造方法を行い得られたシュウ酸バリウムチタニル粒子を焼成することを特徴とするチタン酸バリウムの製造方法。
【請求項7】
焼成温度が600〜1300℃であることを特徴とする請求項6記載のチタン酸バリウムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−77068(P2012−77068A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176504(P2011−176504)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000230593)日本化学工業株式会社 (296)
【Fターム(参考)】