説明

シュリンクフィルム

【課題】 本発明は、低温収縮性に優れ且つ機械的強度や耐熱性にも優れたシュリンクフィルムを提供する。
【解決手段】 本発明のシュリンクフィルムは、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜2.0g/10分である低密度ポリエチレン及び密度が0.920g/cm3以下である直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物よりなる中心層の両面に、DSC(示差走査熱量計)による融点が115℃以上である直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる積層フィルムが、90℃以下の温度条件で一軸延伸されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種工業用部材の包装用途などに使用されるシュリンクフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
建築用部材などの各種工業用部材の包装フィルムとしては、シュリンクフィルムが用いられている。このようなシュリンクフィルムとしては、110℃以上の温度での収縮性に優れたものが主に用いられてきた。
【0003】
しかしながら、従来の110℃以上の温度での収縮性に優れたシュリンクフィルムでは、工業用部材などの被包装体を二重包装する用途、例えば、シュリンクフィルムを用いて被包装体を個包装(内包装)し、この個包装された被包装体を複数個まとめてシュリンクフィルムによって包装(外包装)した後、加熱によりシュリンクフィルムを熱収縮させて被包装体を二重に熱収縮包装するような用途に用いた場合、シュリンクフィルムを熱収縮させるのに110℃以上に加熱する必要があるため、シュリンクフィルム同士が熱融着してしまうといった問題が生じた。
【0004】
更に、上記シュリンクフィルム同士の融着の問題だけでなく、省エネの観点からも低温収縮性に優れたシュリンクフィルムが求められている。そこで、近年、低温収縮性に優れたシュリンクフィルムとして、融点の低い樹脂を原料とし、インフレーション法によって製膜されてなるフィルムや、このようにして得られたフィルムを一軸延伸して得られるフィルムなどが開発されている。しかしながら、このようなシュリンクフィルムは、低温収縮性を向上させるのと引き換えに機械的強度や耐熱性を犠牲にしており、シュリンクフィルムによって熱収縮包装されてなる包装体(以下、「熱収縮包装体」という)の仕上がりが良好でなかったり、包装時の作業性に劣るなどの問題があった。
【0005】
そして、低温収縮性、機械的強度及び耐熱性に優れたシュリンクフィルムとしては、例えば、特許文献1に、中心層が高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンのブレンド物、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンのブレンド物又は高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンの3元ブレンド物からなり、この中心層をサンドイッチする2層が所定の直鎖状低密度ポリエチレンを含有してなる3層共押出積層シートを90℃以下の温度にて2〜5倍の範囲で一軸延伸した積層フィルムであって、中心層の厚さが所定の範囲であることを特徴とする上記熱収縮性積層フィルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、近年、上記熱収縮性積層フィルムよりも更に低温収縮性に優れたシュリンクフィルムが要望されている。
【0007】
【特許文献1】特許第3093020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低温収縮性に優れ且つ機械的強度や耐熱性にも優れたシュリンクフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のシュリンクフィルムは、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜2.0g/10分である低密度ポリエチレン及び密度が0.920g/cm3以下である直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物よりなる中心層の両面に、DSC(示差走査熱量計)による融点が115℃以上である直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる積層フィルムが、90℃以下の温度条件で一軸延伸されてなることを特徴とする。
【0010】
上記中心層を構成する樹脂組成物中には、シュリンクフィルムに収縮応力を付与する目的で、低密度ポリエチレンが含有される。この低密度ポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)は、混合ムラが生じてシュリンクフィルムの外観が悪化したり、積層フィルムの製膜時における機械への負荷が増大することがある一方、高いと、シュリンクフィルムの収縮応力が不十分になることがあるので、0.1〜2.0g/10分に限定され、0.2〜0.9g/10分が好ましい。なお、本発明におけるポリエチレン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K7210に準拠して、190℃、荷重21.18Nの条件下で測定された値をいう。
【0011】
そして、上記樹脂組成物中における低密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、シュリンクフィルムの収縮応力が低下したり、シュリンクフィルムをカットした際に糸引きが生じることがある一方、多いと、積層フィルムの延伸加工適性が低下したり、シュリンクフィルムの機械的強度が低下することがあるので、5〜60重量%が好ましく、7〜55重量%がより好ましい。
【0012】
上記樹脂組成物中に含有される直鎖状低密度ポリエチレンは、Ziegler触媒や、メタロセン触媒などのシングルサイト系触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合して得られ、α−オレフィンの種類や量を調整することによって密度範囲を制御することができる。なお、上記α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテンなどが挙げられる。
【0013】
そして、上記樹脂組成物中に含有される直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、高いと、シュリンクフィルムの低温収縮性が低下するので、0.920g/cm3以下に限定され、低過ぎると、シュリンクフィルムの耐熱性が低下することがあるので、0.905〜0.920g/cm3が好ましい。なお、本発明における直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、JIS K7112に準拠して測定された値をいう。
【0014】
又、上記樹脂組成物中に含有される直鎖状低密度ポリエチレンのメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、積層フィルムの製膜時に積層フィルムが破断しやすくなることがある一方、大きいと、積層フィルムの製膜時に積層フィルムが脈動するなどして積層フィルムの製膜安定性が低下することがあるので、0.8〜3.5g/10分が好ましい。
【0015】
更に、上記樹脂組成物中に含有される直鎖状低密度ポリエチレンのDSC(示差走査熱量計)による融点は、低いと、シュリンクフィルムの耐熱性が低下することがある一方、高いと、シュリンクフィルムの低温収縮性が低下することがあるので、115〜125℃が好ましい。なお、本発明における直鎖状低密度ポリエチレンのDSC(示差走査熱量計)による融点とは、ASTM−D2117に準拠して測定された温度をいう。
【0016】
そして、上記樹脂組成物中における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、少ないと、積層フィルムの延伸加工適性が低下したり、シュリンクフィルムの機械的強度が低下することがある一方、多いと、シュリンクフィルムの収縮応力が低下したり、シュリンクフィルムをカットした際に糸引きが生じることがあるので、40〜95重量%が好ましく、45〜93重量%がより好ましい。
【0017】
本発明のシュリンクフィルムを構成する積層フィルムは、シュリンクフィルムの耐熱性を向上させると共に熱収縮に適した温度範囲を拡大させる目的で、上記樹脂組成物からなる中心層の両面に直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる。
【0018】
上記表面層を構成する直鎖状低密度ポリエチレンのDSC(示差走査熱量計)による融点は、低いと、シュリンクフィルムの耐熱性が低下して、熱収縮させた際にシュリンクフィルムが白濁し、得られる熱収縮包装体が光沢のない仕上がりになるので、115℃以上に限定され、高過ぎると、シュリンクフィルムの低温収縮性が低下することがあるので、
115〜125℃がより好ましい。
【0019】
そして、上記表面層は、DSCによる融点が115℃以上である直鎖状低密度ポリエチレンのみからなるのが好ましい。これは、上記表面層にDSCによる融点が115℃以上である直鎖状低密度ポリエチレン以外の合成樹脂を含有させると、シュリンクフィルムの耐熱性が低下して、熱収縮させた際にシュリンクフィルムが白濁し、得られる熱収縮包装体が光沢のない仕上がりになることがあるからである。
【0020】
なお、上記シュリンクフィルムの中心層及び/又は表面層中には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、滑性を付与して包装機適性を向上させる目的で、粒径が15μm以下のアンチブロッキング剤を添加したり、界面活性剤などのスリップ剤を添加してもよい。
【0021】
本発明のシュリンクフィルムの厚みは、薄いと、シュリンクフィルムの機械的強度が低下して被包装体を外部の圧力や摩擦から保護できなくなることがある一方、厚いと、シュリンクフィルムの柔軟性が低下して被包装体を包装する際の作業性が低下したり、材料の使用量が増大して資源が無駄になることがあるので、10〜150μmが好ましく、15〜120μmがより好ましい。
【0022】
又、上記シュリンクフィルム全体の厚みのうち、中心層の厚みが占める割合(以下、「中心層の厚み割合」という)は、低いと、シュリンクフィルムの低温収縮性や収縮応力が低下することがある一方、高いと、シュリンクフィルムの耐熱性が低下することがあるので、30〜80%が好ましく、50〜75%がより好ましい。
【0023】
なお、本発明のシュリンクフィルムの中心層は、単層に限定されず、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜2.0g/10分である低密度ポリエチレン及び密度が0.920g/cm3以下である直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物よりなる複数の層を積層一体化してなるものであってもよいが、単層であるのが好ましい。
【0024】
そして、上記シュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率は、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。これは、上記シュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率が低いと、低温で熱収縮させて得られる熱収縮包装体の外観が劣ったものとなることがあるためである。又、95℃における延伸方向の収縮率が低いシュリンクフィルムを十分に熱収縮させるためには高温で熱収縮させる必要があるが、高温で熱収縮させた場合、シュリンクフィルムが白濁して熱収縮包装体が光沢のない仕上がりとなり、被包装体の商品価値が損なわれることがある。
【0025】
更に、上述のようにシュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率が低いと、熱収縮させる際の温度を高温にする必要があるため、このシュリンクフィルムによって工業用部材などの被包装体を二重に熱収縮包装する用途、例えば、シュリンクフィルムを用いて被包装体を個包装(内包装)し、この個包装された被包装体を複数個まとめてシュリンクフィルムによって包装(外包装)した後、加熱によりシュリンクフィルムを熱収縮させて被包装体を二重に熱収縮包装するような用途に用いた場合、内包装に用いたシュリンクフィルムと外包装に用いたシュリンクフィルムとが熱融着することもある。
【0026】
一方、上記シュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率は、高過ぎると、シュリンクフィルムが収縮し過ぎて、被包装体との接触点からシュリンクフィルムが破れることがあるので、55〜70%が特に好ましい。
【0027】
ここで、上記シュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率の測定方法は、シュリンクフィルムから一辺が100mmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を95℃のオイル浴槽に20秒間浸漬させた後、試験片をオイル浴槽から取り出して常温に戻るまで放置する。続いて、上記試験片を常温に戻った時点から更に1分間放置した後、試験片における延伸方向の最大長さx(mm)を測定して、下記式に基づき収縮率(%)を算出する。
収縮率(%)=(x/100)×100
【0028】
次に、本発明のシュリンクフィルムの製造方法について説明する。上記シュリンクフィルムの製造方法としては、上記樹脂組成物からなる中心層の両面に、直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる積層フィルムを製膜した後、この積層フィルムを90℃以下の温度条件で一軸延伸する方法が挙げられる。
【0029】
又、上記積層フィルムの製膜方法としては、特に限定されず、従来公知の製膜方法で製膜すればよく、例えば、円形の多層ダイを用いて共押出製膜を行う多層インフレーション法、多層Tダイを用いて共押出製膜を行う多層Tダイ法などが挙げられ、多層インフレーション法が好ましい。
【0030】
更に、上記積層フィルムを一軸延伸する方法としては、特に限定されず、例えば、ロール延伸装置により一軸延伸する方法や、テンター延伸装置により一軸延伸する方法などが挙げられ、ロール延伸装置により一軸延伸する方法が好ましい。
【0031】
ここで、上記積層フィルムを一軸延伸させる際の温度は、高いと、シュリンクフィルムの収縮開始温度が高くなり、低温収縮性が低下するので、90℃以下に限定され、低過ぎると、延伸ムラが生じて得られるシュリンクフィルムの外観が悪化することがあるので、70〜90℃が好ましい。
【0032】
又、上記積層フィルムを一軸延伸させる際の延伸倍率は、小さいと、シュリンクフィルムの収縮率が不十分になることがある一方、大きいと、シュリンクフィルムが収縮し過ぎて、被包装体との接触点からシュリンクフィルムが破れることがあるので、2〜5倍が好ましく、2.5〜4.5倍がより好ましい。
【0033】
そして、上記のようにして得られたシュリンクフィルムによって被包装体を包装し、熱収縮包装体を得る方法としては、例えば、シュリンクトンネルが連結されてなるシュリンク包装機に、上記シュリンクフィルムをセットし、このシュリンク包装機に被包装体を供給して、被包装体をシュリンクフィルムによって多少のゆとりをもって包装した後、この被包装体を100℃未満の温度に設定したシュリンクトンネル内に供給し、シュリンクフィルムを被包装体の形状に沿って密着するように熱収縮させることによって熱収縮包装体を得る方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明のシュリンクフィルムは、メルトフローレイト(MFR)が0.1〜2.0g/10分である低密度ポリエチレン及び密度が0.920g/cm3以下である直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物よりなる中心層の両面に、DSCによる融点が115℃以上の直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる積層フィルムが、90℃以下の温度条件で一軸延伸されてなるので、低温収縮性に優れている。従って、上記シュリンクフィルムを工業用部材などの被包装体を二重に熱収縮包装する用途に用いた場合、内包装に用いたシュリンクフィルムと外包装に用いたシュリンクフィルムとが熱融着することはないので、このような用途にも好適に使用することができる。
【0035】
又、本発明のシュリンクフィルムは、その表面層がDSC(示差走査熱量計)による融点が115℃以上の直鎖状低密度ポリエチレンを含有してなるため、耐熱性にも優れている。従って、上記シュリンクフィルムによれば、熱収縮包装させた際にシュリンクフィルムが白濁するようなことは殆どなく、外観に優れた熱収縮包装体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
3機の押出機が接続具を介して円形の多層ダイスに接続されてなる多層インフレーション製膜装置を用意し、この多層インフレーション製膜装置の3機の押出機のうちの1機を中心層用、他の2機を表面層用の押出機とした。
【0038】
そして、上記中心層用の押出機に低密度ポリエチレン(メルトフローレイト:0.3g/10分)50重量%及び直鎖状低密度ポリエチレンA(密度:0.910g/cm3、メルトフローレイト:2.0g/10分、DSCによる融点:119℃)50重量%からなる樹脂組成物を供給する一方、表面層用の2機の押出機のそれぞれに直鎖状低密度ポリエチレンA(密度:0.910g/cm3、メルトフローレイト:2.0g/10分、DSCによる融点:119℃)を供給し、3機の押出機内でそれぞれ溶融混練した後、溶融状態の樹脂組成物及び直鎖状低密度ポリエチレンを円形の多層ダイスに供給して、円形の多層ダイスから共押出製膜することにより、厚み60μmの中心層の両面に厚み15μmの表面層が積層一体化されてなる積層フィルムを得た。
【0039】
次に、上記積層フィルムを、ロール延伸装置により85℃の温度で積層フィルムの製膜時における押出方向に3倍延伸することにより、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであるシュリンクフィルムを得た。なお、このシュリンクフィルムの中心層の厚み割合は67%であった。
【0040】
(実施例2)
中心層用の押出機に、低密度ポリエチレン(メルトフローレイト:0.3g/10分)10重量%及び直鎖状低密度ポリエチレンA(密度:0.910g/cm3、メルトフローレイト:2.0g/10分、DSCによる融点:119℃)90重量%からなる樹脂組成物を供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであり且つ中心層の厚み割合が67%のシュリンクフィルムを得た。
【0041】
(比較例1)
直鎖状低密度ポリエチレンAの代わりに、直鎖状低密度ポリエチレンB(密度:0.903g/cm3、メルトフローレイト:3.0g/10分、DSCによる融点:102℃)を表面層用の2機の押出機に供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであり且つ中心層の厚み割合が67%のシュリンクフィルムを得た。
【0042】
(比較例2)
押出機に接続具を介して円形のダイスが配設されてなるインフレーション製膜装置を用意し、このインフレーション製膜装置の押出機に低密度ポリエチレン(メルトフローレイト:0.3g/10分)50重量%及び直鎖状低密度ポリエチレンA(密度:0.910g/cm3、メルトフローレイト:2.0g/10分、DSCによる融点:119℃)50重量%からなる樹脂組成物を供給して、押出機内で溶融混練した後、溶融状態の樹脂組成物を円形のダイスに供給して、上記ダイスから押出製膜することによって、厚み90μmのポリエチレン系樹脂フィルムを製膜した。
【0043】
次に、上記ポリエチレン系樹脂フィルムを、ロール延伸装置により85℃の温度でポリエチレン系樹脂フィルムの製膜時における押出方向に3倍延伸することにより、厚み30μmのシュリンクフィルムを得た。
【0044】
(比較例3)
中心層用の押出機に、低密度ポリエチレン(メルトフローレイト:0.3g/10分)のみを供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであり且つ中心層の厚み割合が67%のシュリンクフィルムを得た。
【0045】
(比較例4)
中心層用の押出機に、直鎖状低密度ポリエチレンA(密度:0.910g/cm3、メルトフローレイト:2.0g/10分、DSCによる融点:119℃)のみを供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであり且つ中心層の厚み割合が67%のシュリンクフィルムを得た。
【0046】
(比較例5)
中心層用の押出機に、高密度ポリエチレン(密度:0.950g/cm3)のみを供給したこと以外は実施例1と同様の要領で、中心層の厚みが20μm、両表面層の厚みが共に5μmであり且つ中心層の厚み割合が67%のシュリンクフィルムを得た。
【0047】
次に、上記のようにして得られたシュリンクフィルムの収縮応力、シールカット性、耐熱性及び95℃における延伸方向の収縮率について下記の要領で評価し、その結果を表1に示した。なお、表1中の「95℃収縮率(%)」とはシュリンクフィルムの95℃における延伸方向の収縮率(%)を意味する。
【0048】
(95℃における延伸方向の収縮率)
シュリンクフィルムから一辺が100mmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を95℃のオイル浴槽に20秒間浸漬させた後、試験片をオイル浴槽から取り出して常温に戻るまで放置した。続いて、上記試験片を常温に戻った時点から更に1分間放置した後、試験片における延伸方向の最大長さx(mm)を測定して、下記式に基づき95℃における延伸方向の収縮率(%)を算出した。
収縮率(%)=(x/100)×100
【0049】
(収縮応力)
テンシロン引張試験機(島津製作所社製 商品名「オートグラフ」)のチャック間距離を40mmに設定し、このテンシロン引張試験機のチャックにシュリンクフィルムを、引張方向とシュリンクフィルムの延伸方向とが一致し且つシュリンクフィルムが水平となるように緩みなく固定した。続いて、このテンシロン引張試験機を100℃のギアオーブン内に供給して1分間放置した後、上記ギアオーブンのドアを開け、ギアオーブンのドアを開けた時点からその1分後までのシュリンクフィルムの収縮応力(g/10mm)を計測し、計測された収縮応力の最大値をシュリンクフィルムの収縮応力の評価の値とした。
【0050】
(シールカット性)
シュリンクフィルムをインパルスシール機によってシールカットした際に、シュリンクフィルムに糸引きが発生しなかったものを○、糸引きが発生したものを×と評価した。
【0051】
(耐熱性)
シュリンクフィルムをシュリンク包装機にセットし、このシュリンク包装機のシュリンクトンネル内の温度を140℃にした後、直方体形状の木箱(縦130mm×横170mm×高さ50mm)を上記シュリンク包装機内に供給して、上記シュリンクフィルムによって熱収縮包装することにより熱収縮包装体を得た。次に、得られた熱収縮包装体の表面を目視観察し、下記基準によりシュリンクフィルムの耐熱性を評価した。
○:シュリンクフィルムに白濁は認められなかった。
△:シュリンクフィルムは少し白濁していた。
×:シュリンクフィルムが白濁し、熱収縮包装体は光沢がなく外観に劣ったものとなっ
ていた。
【0052】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフローレイト(MFR)が0.1〜2.0g/10分である低密度ポリエチレン及び密度が0.920g/cm3以下である直鎖状低密度ポリエチレンからなる樹脂組成物よりなる中心層の両面に、DSC(示差走査熱量計)による融点が115℃以上である直鎖状低密度ポリエチレンを含有する表面層が積層一体化されてなる積層フィルムが、90℃以下の温度条件で一軸延伸されてなることを特徴とするシュリンクフィルム。
【請求項2】
樹脂組成物中における直鎖状低密度ポリエチレンの含有量が40〜95重量%であることを特徴とする請求項1に記載のシュリンクフィルム。
【請求項3】
95℃における延伸方向の収縮率が50%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシュリンクフィルム。

【公開番号】特開2009−154358(P2009−154358A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−333901(P2007−333901)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(596111276)積水フイルム株式会社 (133)
【Fターム(参考)】