説明

シュリンク包装体の製造方法

【課題】 本発明は、ポリ乳酸系樹脂からなる包装フィルムの使用により生じる問題を解決した多分野の被包装物に適用可能なシュリン包装体の製造方法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、低い加熱温度で容易に製造できかつ熱収縮率が大きいフィルムを包装フィルムとして使用して、高密着性等の特徴を備えたシュリンク包装体を多分野で得ることができるシュリンク包装体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の課題は、ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物をシュリンク包装することを特徴とするシュリンク包装体の製造方法、ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物がシュリンク包装されたシュリンク包装体により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂を含んでなる包装フィルムでシュリンク包装されたシュリンク包装体の製造方法に関する。更に詳しくは、ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムでシュリンク包装されたシュリンク包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シュリンク包装は、得られるシュリンク包装体が、(1)包装フィルムが被包装物に密着していてかさばらないものである(高密着性)、(2)形状の異なる被包装物がシワなく美観を損ねることなく包装されたものである(高適用性)、などの優れた特徴を備えることにより、各種容器、食品、日用雑貨、玩具など、多分野の被包装物について利用されている。
【0003】
シュリンク包装体の製造においては、包装フィルムとしてポリオレフィン系樹脂を含んでなる包装フィルムが大量に使用されている。しかし、このフィルムは生分解性を有していないため、使用後の廃棄処理が大きな環境問題となっている。例えば、焼却処理によればダイオキシン等の有害物質の発生や焼却炉の損傷を引き起こし、埋立て処理によれば環境中での半永久的な残存やそれによる処理場の不足を引き起こすといった問題があった。
【0004】
このような問題を解決するため、包装フィルムとして、生分解性樹脂(特にポリ乳酸系樹脂)からなる包装フィルムを使用することが提案されている(特許文献1、2など)。しかし、ポリ乳酸系樹脂からなる包装フィルムには、包装体の製造に際して加熱温度が高く操作がしにくいという問題があり、更に、フィルムの熱収縮率が小さく包装適性に欠けることから、前記の高密着性等の特徴を備えたシュリンク包装体を多分野で得ることが困難であるという問題があった。このような事情から多分野の被包装物に適用可能なシュリンク包装体の製造方法の開発が望まれていた。
【0005】
【特許文献1】特開平7−256753号公報
【特許文献2】特開2001−354786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂からなる包装フィルムの使用により生じる問題を解決した多分野の被包装物に適用可能なシュリン包装体の製造方法を提供することを課題とする。即ち、本発明は、低い加熱温度で容易に製造できかつ熱収縮率が大きいフィルムを包装フィルムとして使用して、高密着性等の特徴を備えたシュリンク包装体を多分野で得ることができるシュリンク包装体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、包装フィルムとしてポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムを使用することにより前記課題を解決できることを見出して、多分野の被包装物に適用可能な本発明のシュリンク包装体の製造方法を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の課題は、以下の発明により解決される。
(1)ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物をシュリンク包装することを特徴とするシュリンク包装体の製造方法。
(2)ポリオキサレート樹脂の数平均分子量が20000〜70000である、前記第1の発明に記載のシュリンク包装体の製造方法。
(3)ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物がシュリンク包装されたシュリンク包装体。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ポリ乳酸系樹脂からなる包装フィルムにある問題を解決した多分野の被包装物に適用可能なシュリン包装体の製造方法を提供することができる。即ち、本発明、のシュリンク包装体の製造方法は、低い加熱温度で容易に製造できかつ熱収縮率が大きいポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムを包装フィルムとして使用することから、高密着性等の特徴を備えたシュリンク包装体を多分野で得ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明で使用するポリオキサレート樹脂は下記一般式で表すことができ、シュウ酸源と脂肪族ジオールを重縮合反応(好ましくは溶融重合)させて得ることができる。その数平均分子量(M)は20000〜70000(更には25000〜70000、特に25000〜65000)であることが好ましい。重量平均分子量(M)は30000〜200000であることが好ましく、重量平均分子量と数平均分子量の比(M/M)は1〜5であることが好ましい。なお、下記一般式において、「n」は重合度を表す正の整数であり、数平均分子量を満足する数値である。「A」は、分岐構造又は脂環式構造を含んでいてもよい、主鎖の炭素数が3〜12であるアルキレン基を表す。
【0011】
【化1】

【0012】
前記シュウ酸源としては、シュウ酸ジアリール(シュウ酸ジフェニル等)、シュウ酸ジアルキル(シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル等)が挙げられるが、工業的にはシュウ酸ジアルキル(特にシュウ酸ジメチル)が好ましい。また、シュウ酸源には、ポリオキサレートの耐熱性を上げるなどの所望に応じて、テレフタル酸ジメチル等の芳香族ジカルボン酸エステルや炭酸ジアルキル等の炭酸エステルを一部含有させてもよい。但し、これらの使用量はポリオキサレート樹脂の生分解性を損なわない範囲であることが好ましく、例えば、シュウ酸源の50モル%未満であるのがよい。
【0013】
前記脂肪族ジオールとしては、前記一般式においてアルキレン基「A」を与えるものが挙げられ、例えば、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ネオペンチルグリコール、trans(又はcis)−1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオールなどが具体的に挙げられる。これら脂肪族ジオールでは、1,6−ヘキサンジオール、trans(又はcis)−1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましく使用される。なお、脂肪族ジオールはポリオキサレート樹脂中に2種類以上含有されていてもよい。
【0014】
また、前記脂肪族ジオールには、必要に応じて、ポリオキサレート樹脂の溶融加工性或いは成形物の機械的特性を改良する目的で、多価アルコール化合物(前記脂肪族ジオールを除く)を一部含有させてもよい。このような多価アルコール化合物としては、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。但し、多価アルコール化合物の使用割合は重合時或いは溶融加工時にゲル化を引き起こさない範囲であることが好ましく、例えば、脂肪族ジオールの30モル%以下、特に10モル%以下であるのがよい。
【0015】
更に、前記脂肪族ジオールには、ポリオキサレート樹脂の耐熱性を上げるなどの所望により芳香族ジオールを一部含有させてもよい。このような芳香族ジオールとしては、ビスフェノールA、p−キシリレングリコール、ハイドロキノンなどが挙げられる。但し、芳香族ジオールの使用割合は融点が高くなって溶融成形加工温度範囲が狭くならない範囲であることが好ましく、例えば、脂肪族ジオールの50モル%未満であることが好ましい。
【0016】
本発明で使用するポリオキサレート樹脂は、シュウ酸源(好ましくはシュウ酸ジアリール又はシュウ酸ジアルキル)と脂肪族ジオールをバッチ式又は連続式で重縮合反応(好ましくは溶融重合)させることにより得ることができ、重縮合反応は、(I)前重縮合工程、(II)後重縮合工程の順で行うのが好ましい。重縮合反応をシュウ酸源としてシュウ酸ジアルキルを用いた場合について具体的に説明する。
【0017】
(I)前重縮合工程:シュウ酸源と脂肪族ジオールを反応器に仕込んで反応器内を窒素置換した後、攪拌及び/又は窒素バブリングしながら突沸させないように徐々に昇温する。反応圧力は常圧でよいが、反応温度は、最終到達温度が、120〜230℃(好ましくは130〜200℃)の範囲になるように制御するのがよい。反応の進行に伴って反応液中に生成したアルコール(アルキルアルコール)が含まれてくる。
【0018】
(II)後重縮合工程:次いで、前重縮合工程の最終到達温度で、反応器内を攪拌及び/又は窒素バブリングしながら突沸させないように徐々に減圧して、圧力を500〜100mmHg(66.5〜13.3kPa)にして数時間保持し、生成したアルコールを留出させる。その後、更に昇温及び減圧してアルコールを完全に留出させる。最終到達圧力は、3mmHg(399Pa)より低く(好ましくは2mmHg(266Pa)以下)とするのがよい。また、反応温度は、最終到達温度が160〜300℃、更には180〜250℃の範囲になるように制御することが好ましい。
【0019】
重縮合反応においては、所望の高分子量のポリオキサレート樹脂を得るために反応原料中の水分濃度を2000ppm未満に制御するのが好ましい。水分の制御は、例えば、反応原料(特にシュウ酸ジアルキル及び脂肪族ジオール)を反応器に仕込む前に公知の方法により脱水及び/又は乾燥して、仕込み後は反応器内を窒素置換すればよい。なお、この反応原料には、シュウ酸ジアルキル及び脂肪族ジオール以外に触媒が含まれ、シュウ酸ジアルキルにはそれに含有させてよいもの(芳香族ジカルボン酸エステル、炭酸エステル)、脂肪族ジオールにはそれに含有させてよいもの(多価アルコール化合物、芳香族ジオール)も含まれる。なお、水分濃度(ppm)は重量基準である。
【0020】
シュウ酸ジアルキルと脂肪族ジオールの仕込み比は所望のポリオキサレートの分子量に応じて適宜変えることができるが、シュウ酸ジアルキル1モルに対して脂肪族ジオールが1モル未満から0.50モル以上(更には1モル未満から0.60モル以上、特に1モル未満0.80モル以上)の範囲であることが好ましい。
【0021】
重縮合反応では、反応促進のため、エステル交換触媒を添加することが好ましい。この触媒としては、元素周期律表のII族、III族、IV族、V族、VII族、及びVIII族の元素から選ばれる少なくとも1つの金属の化合物が好ましい。その中では、Ti、Ge、Zn、Fe、Sn、Mn、Co、Zr、V、Ir、La、Hfなどの化合物(特に有機チタン化合物や有機スズ化合物)が好ましく、例えば、チタンアルコキシド(チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド等)、ジスタノキサン化合物(1−ヒドロキシ−3−イソチオシアネート−1,1,3,3−テトラブチルジスタノキサン等)、酢酸スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、ブチルチンヒドロキシオキシドヒドレートなどが高活性で好適である。触媒添加量及び触媒添加時期は、反応促進を図ることができれば特に制限されないが、ポリオキサレート100重量部に対して0.005〜0.5重量部であることが好ましい。
【0022】
更に、重縮合反応においては、重縮合反応時や溶融加工時の熱劣化防止のため、必要であればイルガフォス(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製)等の耐熱剤を添加しておいてもよく、溶融加工時の熱安定化のため、有機リン酸化合物やキレート剤等の金属配位性化合物(エステル交換触媒1重量部に対して好ましくは0.5〜20重量部、更に好ましくは0.6〜15重量部)を重縮合反応の終了時に添加しておいてもよい。
【0023】
有機リン酸化合物としては、リン酸モノ2−エチルヘキシル、リン酸ジ2−エチルヘキシル、リン酸モノステアリル、リン酸ジステアリル等のリン酸エステルが好ましく挙げられ、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸などが挙げられるが、リン酸エステルが好適である。
【0024】
重縮合反応において、反応器は公知のものを用いることができるが、反応を効率よく進めるために反応中に生成するアルコールを蒸発しやすくする必要があることから、反応液の自由表面更新性を高めて広い気液接触面を確保できるものであることが好ましい。例えば、縦型の反応器であれば、攪拌装置を備えたフラスコや反応釜を使用でき、攪拌装置の代わりに窒素などの不活性ガスを反応液に吹き込んでバブリングできる装置を備えたものも使用できる。横型の反応器では、攪拌翼を1軸又は2軸備えた混練装置が効率的に表面積を大きくできるので好ましい。また、反応器は高粘度用のものであることが好ましい。
【0025】
本発明のポリオキサレート樹脂はそれ単独で使用することができるが、必要に応じて他の成分(添加剤、他の重合体等)を単独又は複数で配合して、粉末、チップ、ビーズ等)として使用することもできる。配合できる添加剤としては、例えば、加水分解抑制剤、結晶核剤、顔料、染料、耐熱剤、着色防止剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤(タルク、クレイ、モンモリロナイト、マイカ、ゼオライト、ゾノトライト、炭酸カルシウム、カーボンブラック、シリカ粉末、アルミナ粉末、酸化チタン粉末等)、強化材(ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、セルロース繊維等)、難燃剤、可塑剤、防水剤(ワックス、シリコンオイル、高級アルコール、ラノリン等)などが挙げられ、本発明の効果を損なわない範囲で添加できる。
【0026】
また、配合できる他の重合体としては、天然又は合成高分子が挙げられる。天然高分子としては、例えば、澱粉、セルロース、キトサン、アルギン酸、天然ゴムなどが挙げることができ、合成高分子としては、例えば、ポリカプロラクトン又はその共重合体、ポリ乳酸又はその共重合体、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、コハク酸/アジピン酸コポリエステル、コハク酸/テレフタル酸コポリエステル、ポリ(3−ヒドロキシブタン酸)、(3−ヒドロキシブタン酸/4−ヒドロキシブタン酸)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリグルタミン酸エステル、ポリエステルゴム、ポリアミドゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、水添SBS等のゴム又はエラストマーなどを挙げることができる。
【0027】
ポリオキサレート樹脂を包装フィルムへ成形する方法としては、インフレーション成形、Tダイ成形などが最も代表的であるが、カレンダー法や溶媒キャスティング法などの技術も挙げられ、いずれの方法においても透明性が損なわれない成形条件を選択することが必要である。溶融フィルム成形法(インフレーション成形、Tダイ成形など)の場合、透明性に影響を及ぼすのは冷却条件であるので、ポリオキサレートの結晶化を抑制するような速い冷却が望まれる。例えば、脂肪族ジオールに1,4−シクロヘキサンジメタノールを選択したポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレートをTダイ成形する場合、冷却ロール温度が30〜45℃の範囲であることが好適である。なお、この包装フィルムへの成形においては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリコハク酸エステルなど、ポリオキサレート以外の樹脂からなるフィルムを積層させることもできる。
【0028】
得られた包装フィルムは、ガラス転移温度以上であって結晶化温度以下の温度範囲内で、一定幅の一軸延伸、逐次二軸延伸、又は同時二軸延伸することができ、延伸により機械的特性を向上させることができる。延伸は、延伸条件を適宜選択して行なわれるが、通常、30〜100℃、好ましくは40〜80℃の延伸温度、1.5〜6.0、好ましくは2.5〜6.0の延伸倍率で実施される。延伸倍率が1.5以下では実質的に延伸の効果が認められず、また6以上ではフィルムの均一性が失われ、ともに好ましくない。
【0029】
以上のようにして得られた包装フィルムはポリオキサレート樹脂を含んでなるものであり、これを用いて被包装物をシュリンク包装することによりシュリンク包装体を得ることができる。シュリンク包装には公知の種々のシュリンク包装機を使用することができ、シュリンク包装する際のフィルムの加熱温度は包装フィルム製造時の延伸温度にも依存するが、本発明では40〜70℃(更には40〜60℃)の低温であればよい。勿論、一般的に採用される100℃までの温度範囲でもシュリンク包装は可能である。加熱時間は被包装物の形や大きさに応じて適宜選定される。
【0030】
被包装物としては、食品、医薬品、化粧品、精密機械、家電製品など特に制限はない。具体例としては、小麦粉、米、餅、麺、即席麺などの穀類と穀類加工品;食肉、食肉加工品、食肉惣菜、鶏卵などの食肉と食肉加工品;牛乳、バター、チーズなどの牛乳と乳製品;生鮮食、水産加工品、食肉練り製品、削り節などの生鮮魚と水産加工品;野菜、果実、果実飲料、カット野菜などの野菜・果実;菓子、パン、キャンディ、チョコレートなどの菓子・パン;水産発酵食品、味噌、醤油、漬物、日本酒、ワインなどの発酵食品;マヨネーズ、ドレッシング、トマトケチャップ、タレ、食酢、食用油などの調味料;日本茶、コーヒー、ウーロン茶、紅茶、清涼飲料、香辛料などの嗜好品;レトルト食品、冷凍食品、佃煮、珍味などの調理加工食品;弁当惣菜、調理パン、サンドウィッチ、こんにゃく、豆腐、米飯などの日配調理食品;固形製剤、液剤、軟膏剤などの医療品;化粧品、粉末洗剤、歯磨き、シャンプー、固形石鹸、紙おむつ、生理用品などの化粧品やトイレタリー;パソコン、プリンター、カメラ、テレビ、冷蔵庫、携帯オーディオ機器、電池、ICチップ、光及び/又は磁気記録メディアなどの精密機械や家電製品などが挙げられる。
【実施例】
【0031】
次に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。但し、ポリオキサレート樹脂の物性測定及び成形は次のように行った。DMOはシュウ酸ジメチル、CHDMは1,4−シクロヘキサンジメタノール(trans:cis(重量比)=7:3)を表す。
【0032】
(1)水分
反応原料の水分含有量は、カールフィッシャー電量滴定法により測定した。測定条件は以下の通りである。
・使用機種:三菱化成製CA−06
・操作:200℃で原料を加熱し、気化した水分を乾燥窒素でカールフィッシャー液に導入して測定した。
【0033】
(2)数平均分子量(M)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。測定条件は次の通りである。
・使用機種:東ソー製HLC−8020
・カラム:Shodex K−80M(2本)
・溶媒:クロロホルム
・試料濃度:0.3mg/ml
・カラム温度:38℃
・標準試料:ポリスチレン
【0034】
(3)融点:融点は、示差走査熱量測定(DSC)における第2昇温過程の吸熱ピーク温度とした。測定条件は次の通りである。
・使用機種:パーキンエルマー製DSC−7
・第1昇温過程:−100℃〜融点以上(試料により設定)、昇温速度10℃/分、保持5分
・第一降温過程:融点以上(試料により設定)〜−100℃、降温速度−10℃/分、保持5分
・第二昇温過程:−100℃から融点以上(試料により設定)、昇温速度10℃/分
【0035】
(4)フィルム成形:先端にT−ダイスを装着した東洋精機製ラボプラストミル二軸押出機(スクリュー径(D)=18mm、スクリュー長さ(L)/スクリュー径(D)=25)により成形した。即ち、バレル温度190℃、スクリュー回転数30rpmにて押し出し、40℃の冷却ロールで冷却して、幅約200mmのフィルムを成形した。
【0036】
(5)同時二軸延伸:前記(4)で得られた押出成形フィルムから10cm×10cmに切り出したものを二軸延伸機(BIX−703型;岩本製作所製)に取り付けて、変形速度35mm/秒で同時二軸延伸を行った。なお、雰囲気温度は適宜選択した。
【0037】
(6)収縮応力特性:前記(5)で得られた延伸フィルムについて、D.N式ストレス・テスター(日理工業製)を使用し、室温から30℃/分の速度で昇温させながら収縮応力の温度依存性を測定して、収縮開始温度、収縮応力ピーク温度、最大収縮応力を求めた。
【0038】
(7)収縮率:前記(5)で得られた延伸フィルムから切り出した130mm×10mmの短冊状試験片を100℃の熱風オーブン中で5分間処理し、次式により算出した。但し、Lは熱処理前試験片での標線間長さ(100mm)、Lshは熱処理後試験片での標線間長さを表す。
試験率(%)={(L−Lsh)/L}×100
【0039】
〔参考例〕
撹拌機、温度計、圧力計、窒素ガス導入口、放圧口、及び重合物取出し口を備えた内容積5Lの圧力容器に、シュウ酸ジメチル2025.0g(17.148mol)、1,4−シクロヘキサンジメタノール2312.0g(16.032mol)、ブチルチンヒドロキシドオキシドヒドレート3.6g(シュウ酸ジメチルDMOの0.100mol%)及び耐熱剤イルガフォス168(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)21.6g(原料の5000ppm)を仕込んで、内部を窒素で置換した。次いで、以下のように重縮合反応を行った。なお、シュウ酸ジメチル中の水分濃度は478ppm、シクロヘキサンジメタノール中の水分濃度は200ppmであった。
【0040】
(I)前重縮合工程:前記圧力容器内の温度を室温から100℃まで1.25時間かけて昇温した。均一の溶融液になったことを確認した後、150℃まで2時間かけて昇温しながら反応させた。この昇温の過程におけるメタノールの留出量は394.5gであった。次いで、190℃まで2時間かけて昇温しながら更に反応させた。トータルのメタノール留出量は434.5gであった。
【0041】
(II)後重縮合工程:圧力容器内の温度を190℃に保ったままで減圧を開始して、0.75時間で300mmHg(39.9kPa)に減圧し、更に1時間で100mmHg(13.3kPa)にまで減圧して反応させた。この間のトータルのメタノール留出量は484.5gであった。次いで、圧力容器内の温度を207℃へ1.5時間かけて上げると共に、圧力を徐々に下げながら1.25時間後に5mmHg(665Pa)まで低下させ、更に4時間後に0.8mmHg(106Pa)まで到達させて反応を行った。その後、撹拌を停止し、重合物取出し口から溶融状態の内容物をひも状で抜き出して水冷し、ペレット化した。得られたポリシクロヘキシレンジメチレンオキサレート(2430g)は、Mn:35100、融点:174℃であった。
【0042】
次いで、二軸押出機を使用し、190℃において、このペレットに、加水分解抑制剤カルボジライトLA−1(日清紡製)を1重量%、同HMV−8CA(日清紡製)を0.1重量%、耐熱剤イルガフォス168を0.32重量%、酸化防止剤イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)を0.25重量%配合した。配合割合はいずれもペレットに対する割合である。
【0043】
〔実施例1〕
参考例で得られたポリオキサレート樹脂ペレットを用いて、T−ダイスを装着した押出機により厚み139μmのフィルムを成形した。次いで、得られたフィルムを雰囲気温度50℃で二軸延伸して厚み12μmのフィルムに成形し、二軸延伸フィルムを作成した。このフィルムの収縮応力特性及び収縮率の測定結果を表1に示す。
【0044】
〔比較例1〕
ポリ乳酸ペレット(レイシアH−100PL(M90000、融点167℃);三井化学製)を使用し、雰囲気温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを作成した。結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0046】
実施例及び比較例から明らかなように、本発明の方法は、包装フィルムとして低温で包装することができしかも収縮率が大きいフィルムを使用するため、多分野の被包装物をシュリンク包装するのに好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物をシュリンク包装することを特徴とするシュリンク包装体の製造方法。
【請求項2】
ポリオキサレート樹脂の数平均分子量が20000〜70000である、請求項1記載のシュリンク包装体の製造方法。
【請求項3】
ポリオキサレート樹脂を含んでなる包装フィルムで被包装物がシュリンク包装されたシュリンク包装体。

【公開番号】特開2006−181768(P2006−181768A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375579(P2004−375579)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】