説明

シューズサスペンション部材及びこれを用いたシューズ

【課題】最小限の厚さで衝撃吸収機能を発揮できるシューズサスペンション部材を提供する。
【解決手段】シューズ1は、アウトソール11、アッパー12及びインソール13を備える。シューズサスペンション部材20は、主に足の土踏まずの部分に対応するように、アウトソール11とインソール13とからなる靴底部分に対して添設されている。シューズサスペンション部材20は、一本の線状体が所定の延伸方向に、帯状幅の範囲における二次元的な平面内で湾曲乃至は折曲を繰り返しながら進行するように加工されてなる。シューズサスペンション部材20は、三次元的な変位を行うことができる構造的な弾性を有し、靴底部分に加わるどのような力に対しても追従して変形できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底部分に対して添設されるシューズサスペンション部材、及びこれが靴底部分に適用されたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
シューズサスペンションは、人の歩行時若しくは走行時における着地衝撃を緩和させ、足や膝に加わる負荷を軽減するために、靴底部分に組み付けられる部材である。本出願人は、この種のシューズサスペンションとして、特許文献1において、全体が弾性板材により形成され、土踏まず部分をアーチ状に高くしたY字型又はH字型のシューズサスペンションを提案している。このシューズサスペンションにおいて、前記弾性板材は、例えばくさび形状を有する複数の小片板をスライド可能に嵌合した構造体により構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平5−53483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のシューズサスペンションは、複数の小片板をスライド可能に嵌合した構造体を採用する関係上、組み込む部分には相応の厚みを必要とする。このため、比較的靴底部分が厚いスポーツシューズ等には好適であるが、比較的靴底部分が薄い一般シューズには組み込みが難しくなる傾向がある。例えば、スポーツシューズ等では中底にシューズサスペンションを組み込むことが可能であるが、一般シューズではこのような態様でシューズサスペンションを組み込むことは困難である。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、最小限の厚さで衝撃吸収機能を発揮できるシューズサスペンション部材及びこれを用いたシューズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面に係るシューズサスペンション部材は、靴底部分に対して添設されるフレキシブルなシューズサスペンション部材であって、足の土踏まずの形状に沿ったアーチ形状部を備え、前記アーチ形状部は、少なくとも一つの延伸方向に延びる所定幅を有する帯状の部材で構成され、前記帯状の部材は、一本の線状体が前記延伸方向に、前記所定幅の範囲における二次元的な平面内で湾曲乃至は折曲を繰り返しながら進行することで形成され、前記延伸方向に沿った第1方向、前記二次元的な平面内で前記第1方向と直交する第2方向、及び前記二次元的な平面と直交する平面内で前記第1方向と直交する第3方向に沿った力に対して構造的な弾性を有することを特徴とする(請求項1)。
【0007】
この構成によれば、アーチ形状部は、例えば前後(第1方向)、左右(第2方向)及び上下(第3方向)の3方向から靴底に対して加わる三次元的な動きに追従して衝撃を吸収することができる。しかも、このアーチ形状部は、一本の線状体が二次元的な平面内で湾曲乃至は折曲を繰り返しながら当該アーチ形状部の延伸方向に進行することで形成された帯状の部材で形成されているので、最小限の厚さでアーチ形状部を構成することができる。すなわち、アーチ形状部は、外観的にはプレート状の部材でありながら、板バネなどとは異なり、三次元的な変位を行うことができる構造的な弾性を有する。従って、本発明のシューズサスペンション部材は、前記アーチ形状部を有することによる形状的な弾性と、上述の構造的な弾性と、さらに前記線状体自身が有意な弾性を有する場合はその素材弾性とが一体となって、着地衝撃を緩衝することができる。
【0008】
上記構成において、前記一本の線状体は、前記延伸方向に逆行して進行する部分を含むことが望ましい(請求項2)。この構成によれば、帯状の部材(アーチ形状部)の三次元的な弾性を一層良好なものとすることができる。
【0009】
この場合、前記一本の線状体は、曲線を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行しているものとすることができる(請求項3)。特に、前記曲線は、円乃至は楕円が連続的に形成される部分を含むことが望ましい(請求項4)。この構成によれば、例えば円形又は楕円形のコイルバネを平面状に展開することで容易に、良好な構造的弾性を有する帯状の部材を形成することができる。
【0010】
或いは、前記一本の線状体は、三角形を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行しているもの(請求項5)、又は四角形を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行しているもの(請求項6)とすることができる。若しくは、前記一本の線状体は、直線と曲線とを周期的に繰り返しつつ前記延伸方向に進行しているもの(請求項7)、ハートマークのようなデザインマークの形状を形成しつつ前記延伸方向に進行しているもの(請求項8)とすることもできる。これらの構成によれば、比較的簡単な幾何学的形状ながら、良好な構造的弾性を有する帯状の部材を形成することができる。
【0011】
上記構成において、前記アーチ形状部は、前記一本の線状体により形成された前記帯状の部材が複数積層されて形成されているものとしても良い(請求項9)。この構成によれば、アーチ形状部の強度を高めることができる。
【0012】
また、前記一本の線状体は、接着面となる平面部を含むことが望ましい(請求項10)。この構成によれば、平面部を用いて靴底部分の底面若しくは内面等に接着させることができ、接着性を良好なものとすることができる。
【0013】
また、前記一本の線状体は、第1の断面積を有する部分と、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有する部分とを含むものを用いることができる(請求項11)。この構成によれば、厚さが部分的に異なる帯状の部材を形成することが可能となる。
【0014】
さらに、前記一本の線状体を、前記構造的な弾性を具備させた状態で支持する支持部材をさらに備える構成とすることができる(請求項12)。この構成によれば、前記帯状の部材の強度が補強されることになるので、結果的にアーチ形状部の薄肉化を図ることが可能となる。
【0015】
本発明の他の局面に係るシューズは、靴底部分を有するシューズ本体と、前記靴底部分に対して添設される上記に示したシューズサスペンション部材と、を含むことを特徴とする(請求項13)。このシューズによれば、比較的靴底部分の厚さが薄いシューズであっても、上記のシューズサスペンション部材の三次元的な衝撃吸収作用を享受でき、人体の足や膝への負担を軽減し疲労を緩和することができるシューズを提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、最小限の厚さで衝撃吸収機能を発揮できるシューズサスペンション部材及びこれを用いたシューズを提供することができる。すなわち、一本の線状体で形成される帯状の部材に具備される構造的な弾性でサスペンション機能を発揮できる。このため、靴底部分の裏面や表面への装着、或いは靴底部分の内面への埋め込みに際して肉厚をさほど必要としない。従って、本発明のシューズサスペンション部材は、比較的靴底部分が厚いスポーツシューズ等だけでなく、比較的靴底部分の厚さが薄い一般シューズにも好適に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係るシューズを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るシューズサスペンション部材の外形の例を示す模式的な図である。
【図3】シューズサスペンション部材による足裏の支持状態を説明するための説明図である。
【図4】シューズサスペンション部材の一例を示す平面図である。
【図5】図4に示すシューズサスペンション部材の構造的弾性を説明するための説明図である。
【図6】シューズサスペンション部材の変形状態を説明する模式図である。
【図7】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図である。
【図8】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図である。
【図9】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図である。
【図10】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図である。
【図11】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図である。
【図12】線状体の断面構造の例を示す断面斜視図である。
【図13】シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図及び側面図である。
【図14】支持部材付きのシューズサスペンション部材の例を示す平面図である。
【図15】シューズサスペンション部材の外形の他の例を示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るシューズサスペンション部材20が適用されたシューズ1の斜視図である。シューズ1は、アウトソール11と、このアウトソール11の上部に形成されるアッパー12と、シューズ1の内部にアウトソール11と接するように配置されるインソール13とを備えている。シューズサスペンション部材20は、主に足の土踏まずの部分に対応するように、アウトソール11とインソール13とからなる靴底部分に対して添設されている。シューズサスペンション部材20は、靴底部分による土踏まず領域の支持状態を補強し、着地衝撃を緩和させるために組み込まれている。
【0019】
シューズサスペンション部材20は、マクロ的に見て、所定幅(5〜15mm程度)を有する帯状の部材であって、その靴底部分への添設態様は、種々例示することができる。例えば、シューズサスペンション部材20のアウトソール11内部への埋設、アウトソール11とインソール13との間への介在、インソール13の内部への埋設、インソール13の表面への貼り付けの態様を挙げることができる。ミッドソールを有するシューズの場合は、シューズサスペンション部材20を当該ミッドソールの表面又は裏面へ貼り付けたり、ミッドソールの内部へ埋設したりする態様をとることもできる。いずれにしても、シューズサスペンション部材20は、シューズ1の靴底部分における、土踏まずの形状に沿ってアーチ型に成形された部分に埋設又は添設され、結果として土踏まずの形状に沿うアーチ形状部を有している。
【0020】
図2(A)〜(C)は、シューズサスペンション部材20の上面視における各種実施形態を示す図である。図2(A)に例示するシューズサスペンション部材20Aは、足の長さ方向において、踵骨の中程から中足骨(第1中足骨及び第5中足骨)の先端付近まで延びる長さを有し、上述の帯状の部材で構成された上面視で略H型の形状を有している。また、図2(B)に例示するシューズサスペンション部材20Bは、同様な長さを有し、上面視で略Y型の形状を有している。さらに、図2(C)に例示するシューズサスペンション部材20Bは、上面視で略X型の形状を有している。シューズサスペンション部材20の上面視の形状には特に制限はなく、足の土踏まず領域の支持を補助できる適切な形状であれば良い。
【0021】
図3は、シューズサスペンション部材20Aによる足裏の支持状態を説明するための説明図である。シューズサスペンション部材20Aは、側面視では上向きに凸のアーチ形状を備えている。すなわち、図3に示すように、足の土踏まず領域Arの形状に合わせて、シューズサスペンション部材20Aの中央部201が最も高く、つま先側202及び踵側203が下方へ湾曲するアーチ形状を備えている。上述の通り、シューズサスペンション部材20Aのつま先側202は中足骨の先端付近に、踵側203は踵骨の中程に位置し、また、中央部201は土踏まずの最も凹んだ部分付近に位置し、足の土踏まず領域Arを支持する。
【0022】
図3からも明らかな通り、シューズサスペンション部材20(20A)は、略H型の形状を呈するが、全体としては1枚のプレート状の部材であると言うことができる。従って、本実施形態のシューズサスペンション部材20は、靴底部分の厚さが比較的薄いシューズに対しても、その靴底部分の射出成形の際に金型内に組み入れたり、成形後の靴底部分に貼り付けたりする等して、容易に靴底部分に搭載させることができる。
【0023】
図4は、シューズサスペンション部材20の詳細構造の一例を示す平面図である。本実施形態においてシューズサスペンション部材20は、一本の線状体が所定の延伸方向E(例えば足の長さ方向)に、予め定められた帯状幅の範囲における二次元的な平面内で湾曲乃至は折曲を繰り返しながら進行するように加工された加工線状体によって形成される。この線状体としては、金属線、樹脂線、樹脂被覆の金属線、繊維芯材を有する樹脂線等を用いることができる。
【0024】
図4に示す加工線状体31は、1本の線状体が曲線を連続的に形成しつつ延伸方向Eに進行する加工が施されてなる。詳しくは、同径の円(乃至は楕円)が連続的に延伸方向Eに向けて連なり、且つ、それらの円は前記帯状幅の範囲でジグザグ状に配置される態様で、加工線状体31は構成されている。すなわち、加工線状体31は、第1円31Aの終端に次の第2円31Bの始端が連なり、この第2円31Bの終端に次の第3円31Cの始端が連なるというように、1本の線状体が加工されてなる。結果的に加工線状体31は、各円の形成部分において、延伸方向Eに逆行して進行する逆行部分310を含んでいる。帯状幅の方向における、これらの円の最外点を結ぶ線が、シューズサスペンション部材20の幅を規定する仮想的な線となる。換言すると、加工線状体31は、コイルバネが平面的に展開された形状を有するものである。
【0025】
このような加工線状体31で構成されたシューズサスペンション部材20は、図5、図6に示すように、延伸方向Eに沿ったX方向(第1方向)、帯状平面(二次元的な平面)内でX方向と直交するY方向(第2方向)、及び帯状平面と直交する平面内でX方向と直交するZ方向(第3方向)に沿った力に対して構造的な弾性を有する。
【0026】
例えばX方向の引っ張り力がシューズサスペンション部材20の作用した場合、各円31A、31B、31C・・・が拡開し、図6(A)に実線(変形前)と点線(変形後)とで示すように、シューズサスペンション部材20は全体として帯状幅が狭くなるように弾性変形する。逆に、X方向に圧縮力が作用した場合、各円31A、31B、31C・・・が縮径し、シューズサスペンション部材20はその帯状幅が広くなるように弾性変形することになる。
【0027】
また、Y方向の引っ張り力がシューズサスペンション部材20の作用した場合、各円31A、31B、31C・・・がY方向に延びて扁平化し、図6(B)に実線(変形前)と点線(変形後)とで示すように、シューズサスペンション部材20は全体として帯状幅が広くなるように弾性変形する。逆に、Y方向に圧縮力が作用した場合、各円31A、31B、31C・・・がX方向に延びて扁平化し、結果としてシューズサスペンション部材20はその帯状幅が狭くなるように弾性変形する。
【0028】
さらに、Z方向において上から下方向への力がシューズサスペンション部材20の作用した場合、図6(C)に実線(変形前)と点線(変形後)とで示すように、シューズサスペンション部材20は下向きに湾曲変形する。逆に、Z方向において下から上方向への力がシューズサスペンション部材20の作用した場合、シューズサスペンション部材20は上向きに湾曲変形することになる。
【0029】
以上の通り、シューズサスペンション部材20(アーチ形状部)は、一本の線状体が二次元的な平面内で湾曲を繰り返しながら当該アーチ形状部の延伸方向に進行することで形成された帯状の部材で形成されているので、X方向、Y方向及びZ方向の3方向から加わる力に追従して変形することができる。すなわち、シューズサスペンション部材20は、マクロ的には帯状の部材でありながら、板バネなどとは異なり、三次元的な変位を行うことができる構造的な弾性を有する(X方向に延びる板バネの場合、X方向及びY方向には弾性を有さない)。このような構造的な弾性は、加工線状体31自身が有する素材弾性(可撓性)と、シューズサスペンション部材20の形状自体(図3に例示したアーチ形状)で発揮される形状弾性とが加味され一体化されることで達成されている。
【0030】
従って、靴底部分にシューズサスペンション部材20を組み込むことで、靴底部分に対して加わる三次元的な動きに追従して自在に変形し衝撃を吸収することができる。しかも、シューズサスペンション部材20の厚さは、加工線状体が丸線で構成されている場合は、その外径の分の厚さのみで済むので、薄肉の靴底部分にも好適に組み込むことができる。さらに、例えば加工線状体31をインソール13の表面に表出させたり、或いはアウトソール11の裏面に表出させたりすれば、その幾何学的な形状的特徴によって、足裏とシューズ1との間、或いはシューズ1と路面との間における滑り止め効果を発揮させることも可能となる。なお、図4に示した円が連続する加工線状体31は、曲線が連続する加工の一例であり、楕円や円弧等が連続する加工であっても良い。
【0031】
図7(A)〜(C)は、シューズサスペンション部材の他の例を示す平面図であり、一本の線状体が延伸方向Eに(湾曲ではなく)折曲を繰り返しながら進行するように加工された加工線状体でシューズサスペンション部材が構成される例を示している。
【0032】
図7(A)のシューズサスペンション部材201は、一本の線状体が三角形を連続的に形成しつつ延伸方向Eに進行する態様の加工線状体32で構成されている。加工線状体32は、頂点方向が交互に変化するように三角形が延伸方向Eに連なる態様に加工されている。すなわち、加工線状体32は、第1三角形32Aの終端に第2三角形32Bの始端が連なるというように、一本の線状体が加工されてなり、結果的に延伸方向Eに逆行して進行する逆行部分320を含んでいる。これら三角形32A、32B・・・の同方向の底辺同士を結ぶ線が、シューズサスペンション部材201の幅を規定する仮想的な線となる。
【0033】
図7(B)のシューズサスペンション部材202は、一本の線状体が略S字状の矩形を連続的に形成しつつ延伸方向Eに進行する態様の加工線状体33で構成されている。加工線状体33は、S字状の矩形体が延伸方向Eに連なる態様に加工されている。すなわち、加工線状体33は、第1矩形体33Aの終端に第2矩形体の始端が連なるというように、一本の線状体が加工されてなり、結果的に延伸方向Eに逆行して進行する逆行部分330を含んでいる。これら矩形体33A、33B・・・の上辺同士、下辺同士を結ぶ線が、シューズサスペンション部材202の幅を規定する仮想的な線となる。
【0034】
図7(C)のシューズサスペンション部材203は、一本の線状体が四角形を連続的に形成しつつ延伸方向Eに進行する態様の加工線状体34で構成されている。加工線状体34は、同サイズの四角形が連続的に延伸方向Eに連なり、且つ、それらの四角形が帯状幅の範囲でジグザグ状に配置される態様に加工されている。すなわち、加工線状体34は、第1四角形34Aの終端に第2四角形34Bの始端が連なるというように、一本の線状体が加工されてなり、結果的に延伸方向Eに逆行して進行する逆行部分340を含んでいる。これら四角形34A、34B・・・の最外辺同士を結ぶ線が、シューズサスペンション部材203の幅を規定する仮想的な線となる。
【0035】
以上のようなシューズサスペンション部材201、202、203においても、弾性作用は先に説明した図4に示すシューズサスペンション部材20と実質的に同じである。従って、シューズサスペンション部材201、202、203は、素材弾性、形状弾性及び構造弾性を有し、X方向、Y方向及びZ方向の3方向から加わる力に追従して変形することができる。
【0036】
図8は、積層型のシューズサスペンション部材204を示す平面図である。このシューズサスペンション部材204は、図7(A)に示したものと同様な、三角形が延伸方向Eに連なる態様に加工された3本の加工線状体351、352、353が積層されてなる。3本の加工線状体351、352、353は、各々の三角形が重ならないよう、互いに位置をずらして積層されている。このようなシューズサスペンション部材204によれば、それ自身の強度を高めることができる。もちろん、本例以外に、図4、図7(B)、図7(C)に示す加工線状体31、33、34を複数個積層してシューズサスペンション部材204を構成しても良い。
【0037】
さらに、複数個の加工線状体を単純に積層するのではなく、複数個の加工線状体同士を部分的に係合させるようにしても良い。例えば2本の線状体をネット状に編み上げるようにしても良いし、複数本の細い線状体を撚って1本の線状体を構成し、その撚り線を用いて上記の加工線状体としても良い。
【0038】
図9は、ランダムな形状が連続する加工線状体を用いた、配線密度が高いシューズサスペンション部材を例示する平面図である。図9(A)に示すシューズサスペンション部材205は、これを構成する加工線状体36が、ランダムな大きさの三角形を複数含む三角形群36A、36Bが延伸方向Eに連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。また、図9(B)に示すシューズサスペンション部材206は、これを構成する加工線状体37が、ランダムな大きさ及び幅の円弧を複数含む円弧群37A、37Bが延伸方向Eに連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。このようなシューズサスペンション部材205、206であれば、上掲の例と同様に三次元的な弾性変形が達成できると共に、線状体の配線密度を高くすることができるので、強度を向上させたシューズサスペンション部材を提供することができる。
【0039】
図10(A)〜(D)は、直線と曲線とを周期的に繰り返しつつ前記延伸方向に進行する加工線状体を用いたシューズサスペンション部材の様々な例を示す平面図である。図10(A)に示すシューズサスペンション部材207は、これを構成する加工線状体38が、延伸方向Eと直交する幅方向に周期的に方向を180°変更するパターンを繰り返す部分38Aと、延伸方向Eの周期的に方向を180°変更するパターンを繰り返す部分38Bとが交互に連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。
【0040】
図10(B)に示すシューズサスペンション部材208は、これを構成する加工線状体39が、延伸方向Eに対して45°傾斜した方向において、周期的に方向を180°変更するパターンを繰り返す部分39Aと、部分39Aとは逆方向に45°傾斜した方向において、周期的に方向を180°変更するパターンを繰り返す部分39Bとが交互に連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。これらのシューズサスペンション部材207、208によれば、線状体の密度を高くすることができ、その分だけ構造的な弾性を大きくすることができる。
【0041】
図10(C)、(D)に示すシューズサスペンション部材209、210は、加工線状体が周期的に方向を180°変更するパターンをベースとして、その振幅を調整することで、外観的には図形が連なる態様とされたシューズサスペンション部材である。すなわち、図10(C)のシューズサスペンション部材209における加工線状体40は、丸型部分40A、三角部分40B、及び四角部分40Cが連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。また、図10(D)のシューズサスペンション部材210における加工線状体41は、トランプのクローバー状の形状部分41A、スペード形状部分41B、ダイヤ形状部分41C、及びハート形状部分41Dが連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。
【0042】
図11(A)〜(D)は、デザインマークの形状を形成しつつ前記延伸方向に進行している加工線状体を用いたシューズサスペンション部材の様々な例を示す平面図である。ここでは、トランプの4つのデザインマークが形成される例を示している。図11(A)に示すシューズサスペンション部材211は、これを構成する加工線状体42が、ハートのデザインマーク42Aが延伸方向Eに連なる態様に、一本の線状体が加工されてなる。
【0043】
以下同様に、図11(B)のシューズサスペンション部材212は、これを構成する加工線状体43が、ダイヤのデザインマーク43Aが延伸方向Eに連なる態様に、図11(C)のシューズサスペンション部材213は、これを構成する加工線状体44が、クローバーのデザインマーク44Aが延伸方向Eに連なる態様に、また、図11(D)のシューズサスペンション部材214は、これを構成する加工線状体45が、スペードのデザインマーク45Aが延伸方向Eに連なる態様に、それぞれ一本の線状体が加工されてなる。これらはデザインマークの一例であり、星形や花型等もデザインマークとして用いることができる。このようなデザインマークを採用することで、シューズサスペンション部材のデザイン性を高めることができる。
【0044】
図12は、線状体の断面構造の例を示す断面斜視図である。所定形状に加工される線状体の断面形状には特に制限は無く、各種の断面形状のものを用いることができる。図12(A)は、断面円形の線状体3A、図12(B)は、断面三角形の線状体3B、図12(C)は断面四角形の線状体3C、及び、図12(D)は、断面台形の線状体3Dをそれぞれ示している。例えばこれらの線状体3A、3B、3C、3Dを使用して、円、三角或いは四角が帯状幅の範囲で連続的に連なるように加工することで、シューズサスペンション部材を形成することができる。
【0045】
特に、図12(D)の線状体3Dであれば、全体形状に対して比較的幅広の平面301を備える。このため、例えばインソール13の表面にシューズサスペンション部材を貼り付ける搭載態様を取る場合に、この平面301をインソール13に対する接着面として活用できるので好ましい。
【0046】
また、線状体として、長さ方向に外径が変化する線状体を用いることもできる。このような線状体を用いることで、厚さ寸法が部分的に異なるシューズサスペンション部材を形成することができる。図13は、厚さ変化型のシューズサスペンション部材200Aを示し、図13(A)はその平面図、図13(B)はその側面図をそれぞれ示している。
【0047】
このシューズサスペンション部材200Aでは、図4に示す加工線状体が用いられているが、矢印T1で示す部分における線状体の断面積(第1の断面積)は比較的小さく、矢印T2で示す部分における線状体の断面積(第2の断面積)は比較的大きい。このため、図13(B)に示すように、シューズサスペンション部材200Aは、矢印T1の部分では薄肉であり、矢印T2の部分では厚肉とされている。このようなシューズサスペンション部材200Aであれば、ある程度立体的なシューズサスペンション部材を形成でき、靴底部分の形状にマッチングさせたシューズサスペンション部材を提供できる。
【0048】
図14(A)は、他の変形実施形態を示す図であって、支持部材5を備えたシューズサスペンション部材200Bを示す平面図、図14(B)は、図14(A)のX−X線断面図である。支持部材5は、シューズサスペンション部材200Bを構成している加工線状体310Bを、その構造的な弾性を具備させた状態で支持する部材であり、伸縮自在なゴム又は樹脂からなる薄板状の部材である。加工線状体310Bは、支持部材5の表面に接着する、支持部材5の表面に部分的に埋め込む等の方法で、支持部材5に固着される。このシューズサスペンション部材200Bによれば、細径線で加工線状体310Bを構成した場合でも支持部材5で強度を補強することができるので、結果的にシューズサスペンション部材200Bの薄肉化を図ることができる利点がある。
【0049】
図14の実施形態において、支持部材5として、薄板状の部材に代えて伸縮性のワイヤーを用いるようにしても良い。この場合、加工線状体310Bの延伸方向に沿って、加工線状体310Bの変曲パターンの間隙を縫うようにワイヤーを延在させることで、加工線状体310Bを支持させるようにすることができる。もちろん、延伸方向に延びるワイヤーの上に、加工線状体310Bを貼付するようにしても良い。さらに、シート状の支持部材の内部に、加工線状体310Bの可動空間を確保した状態で、加工線状体310Bを埋設するようにしても良い。
【0050】
図15(A)、(B)は、シューズサスペンション部材20の上面視における他の実施形態を示す図である。図15(A)に例示するシューズサスペンション部材20Dは、足の長さ方向において、ジグザグ状に延びる帯状の部材とされた例を示している。また、図15(B)に例示するシューズサスペンション部材20Eは、ジグザグ状に延びる帯状の部材の中間部分に、クロスバーが付加された態様を示している。このようなシューズサスペンション部材20D、20Eにおいても、上記と同様な効果を発揮することができる。
【0051】
以上説明した本実施形態によれば、最小限の厚さで衝撃吸収機能を発揮できるシューズサスペンション部材及びこれを用いたシューズを提供することができる。従って、比較的靴底部分が厚いスポーツシューズ等だけでなく、比較的靴底部分の厚さが薄い一般シューズにも好適に組み込むことができる。
【符号の説明】
【0052】
1 シューズ
11 アウトソール
12 アッパー
13 インソール
20 シューズサスペンション部材
31〜37 加工線状体
E 延伸方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底部分に対して添設されるフレキシブルなシューズサスペンション部材であって、
足の土踏まずの形状に沿ったアーチ形状部を備え、
前記アーチ形状部は、少なくとも一つの延伸方向に延びる所定幅を有する帯状の部材で構成され、
前記帯状の部材は、
一本の線状体が前記延伸方向に、前記所定幅の範囲における二次元的な平面内で湾曲乃至は折曲を繰り返しながら進行することで形成され、
前記延伸方向に沿った第1方向、前記二次元的な平面内で前記第1方向と直交する第2方向、及び前記二次元的な平面と直交する平面内で前記第1方向と直交する第3方向に沿った力に対して構造的な弾性を有することを特徴とするシューズサスペンション部材。
【請求項2】
前記一本の線状体は、前記延伸方向に逆行して進行する部分を含むことを特徴とする請求項1に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項3】
前記一本の線状体は、曲線を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行していることを特徴とする請求項2に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項4】
前記曲線は、円乃至は楕円が連続的に形成される部分を含むことを特徴とする請求項3に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項5】
前記一本の線状体は、三角形を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行していることを特徴とする請求項2に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項6】
前記一本の線状体は、四角形を連続的に形成しつつ前記延伸方向に進行していることを特徴とする請求項2に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項7】
前記一本の線状体は、直線と曲線とを周期的に繰り返しつつ前記延伸方向に進行していることを特徴とする請求項2に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項8】
前記一本の線状体は、デザインマークの形状を形成しつつ前記延伸方向に進行していることを特徴とする請求項2に記載のシューズサスペンション部材。
【請求項9】
前記アーチ形状部は、前記一本の線状体により形成された前記帯状の部材が複数積層されて形成されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシューズサスペンション部材。
【請求項10】
前記一本の線状体は、接着面となる平面部を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のシューズサスペンション部材。
【請求項11】
前記一本の線状体は、第1の断面積を有する部分と、前記第1の断面積よりも大きい第2の断面積を有する部分とを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシューズサスペンション部材。
【請求項12】
前記一本の線状体を、前記構造的な弾性を具備させた状態で支持する支持部材をさらに備えることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のシューズサスペンション部材。
【請求項13】
靴底部分を有するシューズ本体と、
前記靴底部分に対して添設される請求項1〜12のいずれかに記載のシューズサスペンション部材と、
を含むことを特徴とするシューズ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−125553(P2011−125553A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288064(P2009−288064)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(597166914)
【Fターム(参考)】