説明

シュードモナス由来のPA−ILレクチン、PA−IILレクチンまたは両方のレクチンのグリコミメティック阻害剤

【課題】シュードモナス由来のPA−ILレクチン、PA−IILレクチンまたは両方のレクチンのグリコミメティック阻害剤の提供。
【解決手段】シュードモナス細菌に関連する組成物および方法が提供される。当該組成物および方法は、シュードモナス細菌への感染症が関与する医学的症状の診断および治療に用いられ得る。このような感染症には、嚢胞性線維症を有する患者の肺における緑膿菌が挙げられる。本方法で有用な化合物は、治療剤と組み合わせて用いられ得るか、または治療剤に結合され得る。シュードモナス細菌は、コロニー形成のブロッキング、病原性因子の阻害、増殖の抑止または殺菌により阻害され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、嚢胞性線維症を有する患者の肺における緑膿菌などのシュードモナス細菌による感染症およびコロニー形成などの、温血動物(例えば、ヒト)における疾患の診断および治療のための化合物、組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、シュードモナス細菌のPA−ILおよび/またはPA−IILレクチンの結合に選択的な1またはそれより多くの化合物の使用に関する。これらの化合物は、シュードモナス細菌のコロニー形成の診断および/または治療の介入に有用であるか、あるいは、シュードモナス細菌を標的とし、かつ効率的に抑止または殺菌するための薬剤に結合され得る。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
シュードモナス感染症は、種々の医学的症状で起こり、かつ、生命を脅かし得る。シュードモナスは、日和見性細菌である。危険な個体の例には、嚢胞性線維症患者、熱傷患者および呼吸装置上の患者が挙げられる。嚢胞性線維症は、シュードモナス細菌への感染症が関与し得る医学的症状の代表例として以下に記載される。
【0003】
嚢胞性線維症(CF)は、類白色人種における最も一般的な致死的遺伝病である。CFは、クロライドチャネルとして作用する嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子をコード化する遺伝子(CFTR)の変異によって引き起こされる。イオン移動を変化させるCFTRの遺伝的変異はまた、CFTRおよび他の細胞表面分子のN−グリコシル化に影響する。患者の外分泌腺の全てが影響を受けるが、肺は、罹患および死亡の主要な部位である。グリコシル化の全体的変化は、緑膿菌による感染力の増加と関連する。CF患者由来の唾液のおよび呼吸器のムチンはまた、グリコシル化パターンの変化を含む。
【0004】
CF患者の罹患および死亡の主な原因は、緑膿菌による慢性の肺コロニー形成であり、この結果、肺の破壊および死をもたらす頑強な好中球性炎症反応を伴う明白な肺感染症が生じる。緑膿菌によるコロニー形成は、病原性因子が協調的に分泌される細菌の相の固着の間に惹起される。炭水化物を結合する2つの病原性因子は、レクチンである。PA−ILおよびPA−IILとして知られるこれらのレクチンは、これらのオリゴ糖構造に高親和性で結合し、かつ、強力な分子標的を表して、細菌のコロニー形成を阻止する。細菌により十分にコロニー形成されない患者は、優れた長期予後を維持する。個体におけるシュードモナス細菌によるコロニー形成の予防の分野において、現状ではアプローチが困難なので、改善された化合物、組成物および方法が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の簡単な要旨
簡潔に説明すれば、本発明は、シュードモナスの検出のためおよびシュードモナス細菌が関与する疾患、例えば、ヒトの疾患などの診断および治療のための、シュードモナス細菌により発現されるPA−IILおよびPA−ILレクチンの両方、またはいずれか単独を利用する化合物、組成および方法を提供する。例えば、P.aeruginosa由来のPA−IILレクチン、PA−ILレクチンまたは両方のレクチンに高親和性結合を有する本発明の化合物は、CF患者に有利な治療効果を有するであろう。さらに、これらの化合物は、併用療法において抗生物質と組み合わせて投与されるか、または例えば抗生物質と結合体化されて、有効性が増加され得かつ用量が低減され得、それによって、多くの抗生物質の周知の有害事象が回避される。これらの結合部位が、細菌のコロニー形成および病原性に重要であると仮定すると、この結合体での治療に抵抗性となるようなこの標的中での変異は、結果として、細菌の非病原性型をもたらすであろう。
【0006】
本発明の1つの実施態様は、以下の式を有する化合物またはその生理的に許容され得る塩を提供する:
【0007】
【化6】

[式中、
式中の2つの環を分離する−O−は、αまたはβ1−3結合であり;
は、OH、NHAc、6’硫酸化GlcNAc、6’カルボキシル化GlcNAc、GalNAc、Oグリコシド結合、Cグリコシド結合またはSグリコシド結合により結合されたガラクトース、チオジガラクトシド、6’硫酸化ガラクトースおよび6’カルボキシル化ガラクトースから独立して選択されるが、ただし、4つのRのうち3つは、OHおよびNHAcから独立して選択され、かつ、1つのRはOHでもNHAcでもない;Rは、H、フコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、マンノース、シクロヘキサン、置換されたシクロヘキサン、テトラヒドロピラン、置換されたテトラヒドロピラン、ピペリジン、置換されたピペリジン、ポリオールまたは置換されたポリオールであり;
は、(CH、NH、−CH−OH、−CH−(NH)−Xまたは
【0008】
【化7】

(式中、
m、nおよびqは、0〜1から独立して選択され、
pは、1〜20であり、
Zは、N、OまたはSであり、かつ、
Xは、NH−C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換されたC−Cシクロアルキル、C−Cアルキル、C−C14アリール、置換されたC−C14アリール、C−C14ヘテロアリール、置換されたC−C14ヘテロアリール、非アリールC−C14複素環または置換された非アリールC−C14複素環、NHCHPh、N(CHPh)、NHSONa、NHCO−C−COOH(オルト)、NHCOPh、NHCO−C−Cl(パラ)、NHCO−C−OMe(パラ)、NHCO−C−NO(パラ)、NHCO−C−Ph(パラ)、NHCO−C(OMe)(メタ、パラ)、NHCO(2−ナフチル)、NHCO−C−OCHPh(パラ)、N(CHPh)COPh、NHCOCHCHPh、NHCOCHPh、NHCOMe、NHCO(シクロ−C11)、NHSO−C−Me(パラ)、NHCONHEt、NHCONHPh、NHCOOCH−C−NO(パラ)、NHCOOCH(2−ナフチル)またはNHCOOCHPhである)であり;
は、H、NHAc、−O−ラクトース、置換された−O−ラクトース、−O−ラクトサミン、置換された−O−ラクトサミン、N−グリコリルで置換されたNHAc、ポリエチレングリコールまたは置換されたポリエチレングリコールであり;かつ、
は、H、NHAc、またはN−グリコリルで置換されたNHAcである]。
【0009】
本発明の化合物またはその塩は、薬学上許容され得る担体または希釈液との組み合わせであり得る。
【0010】
本発明の他の実施態様は、上記化合物に結合した治療剤を含む結合体を提供する。
【0011】
本発明の他の実施態様は、温血動物において、シュードモナス細菌感染症を阻害する方法であって、当該動物に、以下の式の化合物またはその生理学的に許容され得る塩を、当該細菌の1またはそれより多くのレクチンを阻害するのに有効な量で投与することを含む、方法を提供する:
【0012】
【化8】

[式中、
式中の2つの環を分離する−O−は、αまたはβ1−3結合であり;
は、OH、NHAc、6’硫酸化GlcNAc、6’カルボキシル化GlcNAc、GalNAc、Oグリコシド結合、Cグリコシド結合またはSグリコシド結合により結合されたガラクトース、チオジガラクトシド、6’硫酸化ガラクトースおよび6’カルボキシル化ガラクトースから独立して選択されるが、ただし、4つのRのうち3つは、OHおよびNHAcから独立して選択され、かつ、1つのRはOHでもNHAcでもない;Rは、H、フコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、マンノース、シクロヘキサン、置換されたシクロヘキサン、テトラヒドロピラン、置換されたテトラヒドロピラン、ピペリジン、置換されたピペリジン、ポリオールまたは置換されたポリオールであり;
は、(CH、NH、−CH−OH、−CH−(NH)−Xまたは
【0013】
【化9】

(式中、
m、nおよびqは、0〜1から独立して選択され、
pは、1〜20であり、
Zは、N、OまたはSであり、かつ、
Xは、NH−C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換されたC−Cシクロアルキル、C−Cアルキル、C−C14アリール、置換されたC−C14アリール、C−C14ヘテロアリール、置換されたC−C14ヘテロアリール、非アリールC−C14複素環または置換された非アリールC−C14複素環、NHCHPh、N(CHPh)、NHSONa、NHCO−C−COOH(オルト)、NHCOPh、NHCO−C−Cl(パラ)、NHCO−C−OMe(パラ)、NHCO−C−NO(パラ)、NHCO−C−Ph(パラ)、NHCO−C(OMe)(メタ、パラ)、NHCO(2−ナフチル)、NHCO−C−OCHPh(パラ)、N(CHPh)COPh、NHCOCHCHPh、NHCOCHPh、NHCOMe、NHCO(シクロ−C11)、NHSO−C−Me(パラ)、NHCONHEt、NHCONHPh、NHCOOCH−C−NO(パラ)、NHCOOCH(2−ナフチル)またはNHCOOCHPhである)であり;
は、H、NHAc、−O−ラクトース、置換された−O−ラクトース、−O−ラクトサミン、置換された−O−ラクトサミン、N−グリコリルで置換されたNHAc、ポリエチレングリコールまたは置換されたポリエチレングリコールであり;かつ、
は、H、NHAc、またはN−グリコリルで置換されたNHAcである]。
【0014】
別の実施態様では、本発明は、シュードモナス細菌を検出する方法であって、試料を、細菌またはそのレクチン産物がもし当該試料中に存在する場合、それに結合するのに十分な条件下で、上記化合物を含む化合物に結合した診断薬に接触させること、および試料の中に存在する薬剤を検出することを含み、当該試料中での薬剤の存在がシュードモナス細菌の存在を示す、方法を提供する。
【0015】
別の実施態様では、本発明は、シュードモナス細菌を固相支持体上に固定化する方法であって、シュードモナス細菌を含む試料を、固相支持体上に固定化された上記化合物を含む化合物と結合するのに十分な条件下で、当該化合物と接触させること、および当該試料を、当該固相支持体から分離することを含む、方法を提供する。
【0016】
別の実施態様では、本明細書中に記載の化合物および結合体は、シュードモナス細菌を阻害するための医薬の調製に用いられ得る。
【0017】
本発明のこれらのおよび他の側面は、以下の詳細な説明および添付の図面を参照すれば明らかになるであろう。本明細書中に開示される全ての参照は、あたかもそれぞれが個々に援用されたかのように、その全体が参照として援用される。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
以下の式を有する化合物またはその生理学上許容され得る塩:
【化1】


式中、
式中の2つの環を分離する−O−は、αまたはβ1−3結合であり;
は、OH、NHAc、6’硫酸化GlcNAc、6’カルボキシル化GlcNAc、GalNAc、Oグリコシド結合、Cグリコシド結合またはSグリコシド結合により結合されたガラクトース、チオジガラクトシド、6’硫酸化ガラクトースおよび6’カルボキシル化ガラクトースから独立して選択されるが、ただし、4つのRのうち3つは、OHおよびNHAcから独立して選択され、かつ、1つのRはOHでもNHAcでもない;Rは、H、フコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、マンノース、シクロヘキサン、置換されたシクロヘキサン、テトラヒドロピラン、置換されたテトラヒドロピラン、ピペリジン、置換されたピペリジン、ポリオールまたは置換されたポリオールであり;
は、(CH、NH、−CH−OH、−CH−(NH)−Xまたは
【化2】


式中、
m、nおよびqは、0〜1から独立して選択され、
pは、1〜20であり、
Zは、N、OまたはSであり、かつ、
Xは、NH−C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換されたC−Cシクロアルキル、C−Cアルキル、C−C14アリール、置換されたC−C14アリール、C−C14ヘテロアリール、置換されたC−C14ヘテロアリール、非アリールC−C14複素環または置換された非アリールC−C14複素環、NHCHPh、N(CHPh)、NHSONa、NHCO−C−COOH(オルト)、NHCOPh、NHCO−C−Cl(パラ)、NHCO−C−OMe(パラ)、NHCO−C−NO(パラ)、NHCO−C−Ph(パラ)、NHCO−C(OMe)(メタ、パラ)、NHCO(2−ナフチル)、NHCO−C−OCHPh(パラ)、N(CHPh)COPh、NHCOCHCHPh、NHCOCHPh、NHCOMe、NHCO(シクロ−C11)、NHSO−C−Me(パラ)、NHCONHEt、NHCONHPh、NHCOOCH−C−NO(パラ)、NHCOOCH(2−ナフチル)またはNHCOOCHPhである)であり;
は、H、NHAc、−O−ラクトース、置換された−O−ラクトース、−O−ラクトサミン、置換された−O−ラクトサミン、N−グリコリルで置換されたNHAc、ポリエチレングリコールまたは置換されたポリエチレングリコールであり;かつ、
は、H、NHAc、またはN−グリコリルで置換されたNHAcである、化合物。
(項目2)
1aが、OHでもNHAcでもない、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目3)
1bが、OHでもNHAcでもない、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目4)
1cがOHでもNHAcでもない、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目5)
1dが、OHでもNHAcでもない、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目6)
1a、R1b、R1cまたはR1dが、6’硫酸化GlcNAcまたは6’カルボキシル化GlcNAcである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目7)
1a、R1b、R1cまたはR1dが、ガラクトースである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目8)
1a、R1b、R1cまたはR1dが、6’硫酸化ガラクトースまたは6’カルボキシル化ガラクトースである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目9)
1a、R1b、R1cまたはR1dが、チオジガラクトシドである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目10)
式中の2つの環を分離する−O−が、β1−3結合である、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目11)
が、フコースである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目12)
が、−CH−OHである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目13)
が、
【化3】


(式中、Xは項目1のRに従って定義される)
である、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目14)
Xが、
【化4】


である、項目13記載の化合物またはその塩。
(項目15)
が、Hである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目16)
が、NHAcである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目17)
が、Hである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目18)
が、NHAcである、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目19)
前記化合物またはその塩が、薬学上許容され得る担体または希釈液と組み合わせられている、項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(項目20)
項目1〜18のいずれか1項に記載の化合物に結合された治療剤を含む、結合体。
(項目21)
前記結合体が、薬剤的に許容され得る担体または希釈液と組み合わされている、項目20記載の結合体。
(項目22)
前記化合物が、式:
【化5】


を有する、項目1記載の化合物またはその塩。
(項目23)
前記化合物またはその塩が、薬学上許容され得る担体または希釈液と組み合わされている、項目22記載の化合物またはその塩。
(項目24)
項目22記載の化合物に結合した治療剤を含む、結合体。
(項目25)
前記結合体が、薬学上許容され得る担体または希釈液と組み合わされる、項目24記載の結合体。
(項目26)
温血動物において、シュードモナス細菌感染症を阻害する方法であって、該動物に、項目1記載の化合物を含む化合物を、該細菌の1またはそれより多くのレクチンを阻害するのに有効な量で投与することを含む、方法。
(項目27)
前記化合物が、治療剤に結合される、項目26記載の方法。
(項目28)
前記化合物が、薬学上許容され得る担体または希釈液と組み合わされる、項目26または項目27記載の方法。
(項目29)
前記化合物が、他の抗菌性化合物と組み合わせられている、項目26または項目27記載の方法。
(項目30)
前記細菌が、緑膿菌である、項目26の方法。
(項目31)
シュードモナス細菌を検出する方法であって、試料と、項目1記載の化合物を含む化合物に結合した診断薬とを、細菌またはそのレクチン産物が該試料中に存在する場合に該化合物がそれらに結合するのに十分な条件下で接触させること、および該試料中に存在する薬剤を検出することを含み、該試料中での薬剤の存在がシュードモナス細菌の存在を示す、方法。
(項目32)
前記細菌が、緑膿菌である、項目31の方法。
(項目33)
シュードモナス細菌を固相支持体上に固定化する方法であって、シュードモナス細菌を含む試料と、固相支持体上に固定化された項目1記載の化合物を含む化合物とを、結合するのに十分な条件下で接触させること、および該試料を、該固相支持体から分離することを含む、方法。
(項目34)
シュードモナス細菌感染症を阻害する方法またはシュードモナス細菌を検出する方法に用いるための、項目1〜19または22〜23のいずれか1項に記載の化合物またはその塩。
(項目35)
シュードモナス細菌を阻害するための医薬の調製における、項目1〜19または22〜23のいずれか1項に記載の化合物またはその塩の使用。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、グリコミメティック化合物の合成を図解する図である。
【図2A】図2Aは、リンカーアームを含むグリコミメティック化合物の合成を図解する図である。
【図2B】図2Bは、抗菌剤トブラマイシンに対する図2Aの化合物の結合体化を図解する図である。
【図3A】図3Aおよび3Bは、グリコミメティック化合物の合成を図解する図である。
【図3B】図3Aおよび3Bは、グリコミメティック化合物の合成を図解する図である。
【図4】図4は、本明細書中に記載された1またはそれより多くのレクチンアッセイで用いられる3つの化合物(化合物A、化合物Bおよびグリコミメティック1)の構造を図示する。
【図5】図5は、グリコミメティック1(「Glycm1」)によるPA−ILレクチンの阻害を図解する。PA−ILレクチンは、ガラクトース−結合レクチンであり、ガラクトース、メリビオース(Galαl−6Gal)およびグリコミメティック1により阻害されるが、フコース、化合物Aまたは化合物Bでは阻害されない。
【図6】図6は、PA−IILレクチンの阻害を図解する。フコース結合レクチン、PA−IILは、フコース、化合物Aおよびグリコミメティック1により阻害されるが、ガラクトースでは阻害されない。
【図7】図7は、PA−ILを阻害するためのグリコミメティック1のIC50値の決定を示す。グリコミメティック1は、ガラクトース−結合レクチンPA−ILを、ガラクトースの約4〜5倍良好に阻害するが、一方、フコースは不活性である。
【図8】図8は、PA−IILを阻害するためのグリコミメティック1のIC50値の決定を示す。グリコミメティック1は、フコース−結合レクチンPA−IILを、ガラクトースの約4〜5倍良好に阻害するが、一方、ガラクトースは不活性である。
【図9−1】図9は、ヒト上皮細胞へのPA−IIL結合の阻害を図解する。ヒト頬上皮細胞を、ビオチン標識化したPA−IILレクチンと共にインキュベートし、次いで、フルオレセイン標識化ストレプトアビジンに結合したレクチンを検出する。蛍光標識細胞を、蛍光性活性化細胞ソーティング(B)により定量する。PA−IILレクチンのフコース(D)またはグリコミメティック1(EおよびF)でのインキュベーションは、細胞表面への結合を阻害する。ガラクトース(C)は、効果がない。
【図9−2】図9は、ヒト上皮細胞へのPA−IIL結合の阻害を図解する。ヒト頬上皮細胞を、ビオチン標識化したPA−IILレクチンと共にインキュベートし、次いで、フルオレセイン標識化ストレプトアビジンに結合したレクチンを検出する。蛍光標識細胞を、蛍光性活性化細胞ソーティング(B)により定量する。PA−IILレクチンのフコース(D)またはグリコミメティック1(EおよびF)でのインキュベーションは、細胞表面への結合を阻害する。ガラクトース(C)は、効果がない。
【図9−3】図9は、ヒト上皮細胞へのPA−IIL結合の阻害を図解する。ヒト頬上皮細胞を、ビオチン標識化したPA−IILレクチンと共にインキュベートし、次いで、フルオレセイン標識化ストレプトアビジンに結合したレクチンを検出する。蛍光標識細胞を、蛍光性活性化細胞ソーティング(B)により定量する。PA−IILレクチンのフコース(D)またはグリコミメティック1(EおよびF)でのインキュベーションは、細胞表面への結合を阻害する。ガラクトース(C)は、効果がない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
上記のように、本発明は、シュードモナス細菌性レクチン(例えば、緑膿菌レクチン)を結合し、疾患の診断および治療に用いられ得る化合物および組成物を提供する。
【0020】
グリコミメティック化合物
本明細書中で用いられる用語「グリコミメティック化合物」は、シュードモナス細菌由来のPA−ILレクチン、PA−IILレクチンまたは両方のレクチンに高い親和性を有する化合物(その生理学上許容され得る塩を含む)を意味する。本発明のグリコミメティック化合物の構造の実施態様は、以下の式を有する:
【0021】
【化10】

[式中、
式中の2つの環を分離する−O−は、αまたはβ1−3結合であり;
は、OH、NHAc、6’硫酸化GlcNAc、6’カルボキシル化GlcNAc、GalNAc、Oグリコシド結合、Cグリコシド結合またはSグリコシド結合により結合されたガラクトース、チオジガラクトシド、6’硫酸化ガラクトースおよび6’カルボキシル化ガラクトースから独立して選択され;
は、H、フコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトース、マンノース、シクロヘキサン、置換されたシクロヘキサン、テトラヒドロピラン、置換されたテトラヒドロピラン、ピペリジン、置換されたピペリジン、ポリオールまたは置換されたポリオールであり;
は、(CH、NH、−CH−OH、−CH−(NH)−Xまたは
【0022】
【化11】

(式中、
m、nおよびqは、0〜1から独立して選択され、
pは、1〜20であり、
Zは、N、OまたはSであり、かつ、
Xは、NH−C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換されたC−Cシクロアルキル、C−Cアルキル、C−C14アリール、置換されたC−C14アリール、C−C14ヘテロアリール、置換されたC−C14ヘテロアリール、非アリールC−C14複素環または置換された非アリールC−C14複素環、NHCHPh、N(CHPh)、NHSONa、NHCO−C−COOH(オルト)、NHCOPh、NHCO−C−Cl(パラ)、NHCO−C−OMe(パラ)、NHCO−C−NO(パラ)、NHCO−C−Ph(パラ)、NHCO−C(OMe)(メタ、パラ)、NHCO(2−ナフチル)、NHCO−C−OCHPh(パラ)、N(CHPh)COPh、NHCOCHCHPh、NHCOCHPh、NHCOMe、NHCO(シクロ−C11)、NHSO−C−Me(パラ)、NHCONHEt、NHCONHPh、NHCOOCH−C−NO(パラ)、NHCOOCH(2−ナフチル)またはNHCOOCHPhである)であり;
は、H、NHAc、−O−ラクトース、置換された−O−ラクトース、−O−ラクトサミン、置換された−O−ラクトサミン、N−グリコリルで置換されたNHAc、ポリエチレングリコールまたは置換されたポリエチレングリコールであり;かつ、
は、H、NHAc、またはN−グリコリルで置換されたNHAcである]。
【0023】
本発明において有用なすべての化合物(または結合体)には、その生理学上許容され得る塩が挙げられる。
【0024】
本発明のグリコミメティック化合物には、置換基R〜Rを有する上記式を含む。R〜Rの任意の置換基(すなわち、原子または基)が、「−」を有する場合、これは(R1a、R1b、R1cおよびR−Rについては環への、R1dについてはCHへの、およびRについてはOへの)付加の位置を示し、CHまたはCHを表さない。上記式において、式中に図示された2つの環を結合する酸素(−O−)が存在する。酸素は、α1−3結合またはβ1−3結合中に存在し得る。
【0025】
本明細書中で用いられるように、基が記載されていない線は、置換基を一般式で図示された構造に付加する結合を表す。本明細書中で用いられるように、「C−C14アリール」は、結合またはアルキル基で分離されるかまたは融合していてもよい1つまたは複数の環中に6〜14個の炭素原子を有する芳香族置換基を意味する。本明細書中で用いられるように、「C−C14ヘテロアリール」は、芳香族置換基が環炭素の代わりに少なくとも1つのヘテロ原子(例えば、N、OまたはS)を有する以外は、「C−C14アリール」と同様である。アリールおよびヘテロアリールの例には、フェニル、ナフチル、ジフェニル、ピリジニルおよびピリミジニルが挙げられる。
【0026】
は、上記式に図示するように、R1a、R1b、R1cおよびR1dから構成される。R1aは、2位の炭素に付加する。R1bは、3位の炭素に付加する。R1cは、4位の炭素に付加する。R1dは、6位の炭素に付加し、次いで、5位の炭素に付加する。
【0027】
置換基の例には、GalNAc、6’硫酸化GlcNAcおよび6’カルボキシル化GlcNAcが挙げられる。略語「GlcNAc」は、N−アセチルグルコサミンを表し、「GalNAc」は、N−アセチルガラクトサミンを表す。他のR置換基は、OH、NHAc、ガラクトース、チオジガラクトシド、6’硫酸化ガラクトースおよび6’カルボキシル化ガラクトースである。ガラクトースは、Oグリコシド結合、Cグリコシド結合またはSグリコシド結合により結合される。上記式と共に記載されるRがガラクトース、6’硫酸化ガラクトースまたは6’カルボキシル化ガラクトースである場合、実施態様のRはα1−3結合で付加するが、結合はβであり得る。実施例において、4つのRのうち1つのみがOHまたはNHAc以外である(すなわち、OHまたはNHAc以外の列挙されたR置換基のうち1つから選択される)。
【0028】
置換基の例には、フコース、ガラクトース、アラビノース、フルクトースまたはマンノースなどの単糖が挙げられる。単糖は、D−およびL型を有する。このような単糖には、L−フコース、L−ガラクトース、D−アラビノース、D−フルクトースおよびD−マンノースが挙げられる。Rの単糖は、単糖の模倣物で置き換えられ得る。例えば、単糖環は、シクロヘキサン、置換されたシクロヘキサン、テトラヒドロピラン、置換されたテトラヒドロピラン、ピペリジン、置換されたピペリジン、ポリオールまたは置換されたポリオールで置換され得る。あるいは、または環の置換にさらに加えて、現存する置換基の代わりに、または置換基にさらに加えて、またはその両方で、環に置換基を加え得る。例えば、1またはそれより多くのヒドロキシル基は、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシなど)、ハロゲン化物(例えば、フッ素、塩素など)、エステルおよびアミドで置換され得る。同様に、例えば、シクロヘキサン、テトラヒドロピランまたはピペリジンの1またはそれより多くの水素は、上記基(アルコキシ、ハロゲン化物、エステルおよびアミド)で置換されて、置換されたシクロヘキサン、置換されたテトラヒドロピランまたは置換されたピペリジンをそれぞれ生じ得る。
【0029】
置換基の例には、(CH(式中、pは、1−20である)、−CH−OH、NH、−CH−(NH)−Xおよび−(CH−NH−C(=O)−(Z)−X(式中、m、nおよびqは、独立して、0および1から選択され、かつ、Xは、NH−C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、置換されたC−Cシクロアルキル、C−Cアルキル、C−C14アリール、置換されたC−C14アリール、C−C14ヘテロアリール、置換されたC−C14ヘテロアリール、非アリールC−C14複素環または置換された非アリールC−C14複素環である)が挙げられる。本明細書中で用いられるように、「C−Cアルキル」は、直鎖または分枝鎖であり得る飽和炭化水素を意味する。例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチルおよびt−ブチルである。「C−C14アリール」および「C−C14ヘテロアリール」は、上記で定義したとおりである。例は、上記に提供される。「置換されたC−C14アリール」は、少なくとも1つの環水素が、水素以外の1またはそれより多くの原子で置換されたC−C14アリールである。「置換されたC−C14ヘテロアリール」は、少なくとも1つの環水素またはヘテロ原子に付加した水素が、水素以外の1またはそれより多くの原子で置換されたC−C14ヘテロアリールである。このような原子には、炭素、酸素、窒素、イオウおよびハロゲンが挙げられる。「非アリールC−C14複素環」は、結合により分離され得るかまたは融合され得る1つまたは複数の環中に1〜14個の炭素原子を(少なくとも1つのヘテロ原子と共に)有する非芳香族置換基を意味する。3員環の第3の原子は、Rが付加する炭素により提供され得る。例には、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、ならびにそれらの酸素およびイオウ等価体が挙げられる。「置換された非アリールC−C14複素環」は、少なくとも1つの環水素またはヘテロ原子に付加した水素が、1またはそれより多くの水素以外の原子で置換された非アリールC−C14複素環である。このような原子には、炭素、酸素、窒素、イオウおよびハロゲンが挙げられる。Rの例には、NHCOPh、NHCO−C−Cl(パラ)、NHCO−C−OMe(パラ)、NHCO−C−NO(パラ)、NHCO−C−Ph(パラ)、NHCO−C(OMe)(メタ、パラ)、NHCO(2−ナフチル)、NHCO−C−OCHPh(パラ)、N(CHPh)COPh、NHCOCHCHPh、NHCOCHPh、NHCOMe、NHCO(シクロ−C11)、NHSO−C−Me(パラ)、NHCONHEt、NHCONHPh、NHCOOCH−C−NO(パラ)、NHCOOCH(2−ナフチル)またはNHCOOCHPhが挙げられる。略語「Ph」は、「フェニル」を表す。
【0030】
置換基の例には、H、NHAc、およびN−グリコリルで置換されたNHAcが挙げられる。これにはまた、−O−ラクトース、置換された−O−ラクトース、−O−ラクトサミン、置換された−O−ラクトサミン、ポリエチレングリコールおよび置換されたポリエチレングリコールも挙げられる。
【0031】
置換基の例には、H、NHAc、およびN−グリコリルで置換されたNHAcが挙げられる。
【0032】
非単糖の環置換基の例には、以下のものが挙げられる:
【0033】
【化12】

【0034】
【化13】

特定の実施例については、また、または代わりに、薬物などの診断剤または治療剤をグリコミメティック化合物に結合させて、結合が共有結合である結合体を形成することが有利であり得る。本明細書中で用いられるように、用語「治療剤」は、温血動物(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与して、疾患または他の望ましくない症状を予防または治療するか、あるいは治療の成功率を上げることが意図される任意の生理活性な剤を意味する。治療剤には、抗生物質、ホルモン、増殖因子、タンパク質、ペプチド類、遺伝子、非ウイルス性ベクターおよび他の化合物が挙げられる。
グリコミメティック化合物製剤
本明細書中に記載されたグリコミメティック化合物は、医薬組成物中に存在し得る。医薬組成物は、1またはそれより多くのグリコミメティック化合物を、1またはそれより多くの薬学上または生理学上許容され得る担体、希釈液または賦形剤と組み合わせて含む。このような組成物は、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、ショ糖またはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、ポリペプチドまたはアミノ酸(例えば、グリシン)、抗酸化薬、キレート薬(例えば、EDTAまたはグルタチオン)、アジュバント(例えば、水酸化アルミニウム)および/または保存料を含み得る。さらに別の実施態様では、本発明の組成物は、凍結乾燥物として処方され得る。本発明の組成物は、任意の適切な投与様式、例えば、エアロゾル、局所、経口、経鼻、静脈内、頭蓋内、腹腔内、皮下または筋肉内投与用に処方され得る。
【0035】
医薬組成物はまた、または代わりに、1またはそれより多くの活性剤、例えば、グリコミメティック化合物に結合し得るかまたは組成物中で遊離し得る薬物(例えば、抗生物質)を含む。剤のグリコミメティック化合物への付加は、共有結合的または非共有結合的であり得る。活性剤の例は、トブラマイシンである。トブラマイシンは、代表的には、単独で静脈内に投与されるかまたは吸入されてきた。
【0036】
本明細書中に記載される組成物は、徐放処方物(すなわち、投与後に、調節剤の緩やかな遊離を達成するカプセルまたはスポンジなどの処方物)の一部として投与され得る。このような処方物は、一般に、周知技術を用いて調製され得、例えば、経口、経直腸または皮下埋め込みにより、または所望の標的部位への埋め込みにより、投与される。このような処方の範囲内で用いるための担体は生体適合性であり、かつ、生分解性でもあり得る;好ましくは、処方物は、制御薬放出の相対的定常値を提供する。徐放処方物内に含まれるグリコミメティック化合物の量は、埋め込みの部位、放出の速度および予想される持続時間、ならびに治療または予防される条件の性質に依存する。
【0037】
グリコミメティック化合物は、一般に、治療上の有効量で、医薬組成物中に存在する。治療上の有効量は、シュードモナス感染症を伴う症状の測定されたまたは観察された応答などの、認識可能な患者の利益を生じる量である。
グリコミメティック化合物の使用方法
通常、本明細書中に記載されるグリコミメティック化合物は、シュードモナス(例えば、緑膿菌)細菌による感染症が関与する疾患(例えば、ヒトの疾患)において診断上のおよび/または治療上の結果を達成するために用いられ得る。このような診断上のおよび/または治療上の結果は、シュードモナス(例えば、緑膿菌)またはその産物が、最終的に、認識され得る診断上または治療上の結果を達成するのに十分な量および時間でグリコミメティック化合物と接触した場合、動物、好ましくは、ヒトなどの哺乳動物において、インビトロおよび/またはインビボで達成され得る。本発明の文脈において、治療上の結果は、例えば、肺感染症の予防に関連するであろう。ある条件では、治療上の結果は、シュードモナス(例えば、緑膿菌)またはその産物の阻害を伴うであろう(ここで、阻害とは、例えば、細菌の増殖の抑止または殺菌、あるいは細菌によるコロニー形成の防止をいう)。本明細書中で用いられる治療または治療上の結果には、治療または予防が挙げられる。
【0038】
本発明のグリコミメティック化合物は、治療または予防される疾患に適した様式で投与され得る。投与の適切な用量および適切な持続時間および頻度は、患者の症状、患者の疾患の型および重症度、ならびに投与の方法などの因子により決定され得る。通常、適切な用量および治療の計画は、治療上および/または予防上の利益を提供するのに十分な量の調節剤を提供する。本発明の特に好ましい実施例では、グリコミメティック化合物は、0.001〜1000mg/kg体重(より代表的には、0.01〜1000mg/kg)の範囲の用量で、単回または複数回1日用量の計画において投与され得る。適切な用量は、一般に、実験モデルおよび/または臨床治験を用いて決定され得る。通常、効率的な治療を提供するのに十分な最小用量を用いることが好ましい。患者は、一般に、治療または予防される条件に適したアッセイを用いて治療上の有効性をモニターされ得、これは当業者によく知られているであろう。本明細書中に記載のグリコミメティック化合物は、他の抗菌化合物との組み合わせで(すなわち、同時にまたは順に)投与され得る。例えば、グリコミメティック化合物は、トブラマイシンとの組み合わせで投与され得る。
【0039】
グリコミメティック化合物はまた、物質を、シュードモナス細菌、例えば、緑膿菌に標的化するのに用いられ得る。このような物質には、治療剤および診断剤が挙げられる。治療剤は、障害の治療または予防に利点を提供するか、または患者の生理学を制御するために標的細胞の特性を改変することが実証可能な分子、ウイルス、ウイルス性成分、細胞、細胞成分または任意の他の物質であり得る。治療剤はまた、インビボで生物活性を有する剤を産生する薬物またはプロドラッグであり得る。治療剤であり得る分子は、例えば、ポリペプチド、アミノ酸、核酸、ポリヌクレオチド、ヌクレオシド、ステロイド、多糖類または無機化合物であり得る。このような分子は、酵素、酵素阻害薬、ホルモン、受容体、アンチセンスオリゴヌクレオチド、触媒作用ポリヌクレオチド、抗ウイルス薬、抗腫瘍薬、抗菌薬、免疫調節剤および殺細胞剤(例えば、ヨウ素、臭素、鉛、レニウム、ホミウム(homium)、パラジウムまたは銅などの放射性核種)を含む種々の方向のいずれかで機能し得る。診断薬には、金属および放射性薬物(例えば、ガリウム、テクネチウム、インジウム、ストロンチウム、ヨウ素、バリウム、臭素およびリン含有化合物)などの画像形成剤、造影剤、色素(例えば、蛍光色素および発色団)ならびに比色分析または蛍光定量反応を触媒する酵素が挙げられる。通常、治療剤および診断剤は、例えば、上述したような種々の技術を用いてグリコミメティック化合物に付加し得る。標的化の目的のため、グリコミメティック化合物は、本明細書中に記載のように患者に投与され得る。
【0040】
グリコミメティック化合物はまた、インビトロで、例えば、種々の周知の細胞培養および細胞分離法で用いられ得る。例えば、グリコミメティック化合物は、スクリーニング、アッセイおよび培地中での増殖のために、シュードモナス細菌またはそれらの産物を固定化するのに用いられる固相支持体上に固定化(例えば、組織培養プレートまたは他の細胞培養支持体の内部表面に結合)され得る。このような結合は、任意の適した技術、例えば、上記の方法および他の標準的な技術により実施され得る。グリコミメティック化合物はまた、細胞の同定およびインビトロでのソーティングを促進するために用いられ得、このような細菌細胞の選択を可能にする。好ましくは、このような方法に用いるためのグリコミメティック化合物は、検出可能なマーカーである診断剤に結合される。適したマーカーは、当該分野で周知であり、放射性核種、発光性基、蛍光性基、酵素、色素、定常免疫グロブリン領域およびビオチンが挙げられる。好ましい実施例では、蛍光性マーカー、例えば、フルオレセインに結合したグリコミメティック化合物を、細胞と接触させ、次いで、これを蛍光標示式細胞分取器(FACS)により分析する。
【0041】
このようなインビトロでの方法は、一般に、試料(例えば、生物学的調製物)をグリコミメティック化合物のいずれか1つと接触させること、および試料中の化合物を検出することを含む。所望であれば、方法に、1またはそれより多くの洗浄工程を加えてもよい。例えば、試料とグリコミメティック化合物とを接触させた後であるが化合物の検出の前に、試料を洗浄してもよい(すなわち、非結合性グリコミメティック化合物を除去するために、液体と接触させ、次いで、液体を除去する)。あるいは、またはさらに加えて、検出プロセスの間に洗浄工程を加えてもよい。例えば、グリコミメティック化合物が、検出可能な物質に結合し得るマーカー(診断薬)を有する場合、試料を検出可能な物質と接触させた後であるが検出する前に、試料を洗浄することが望ましくあり得る。本明細書中で用いられる、句「試料中の化合物(または薬剤)を検出する」は、検出する試料に結合した化合物(または薬剤)を検出すること、または試料に結合していた化合物(または薬剤)を試料から分離した後に検出することを含む。
【0042】
以下の実施例は、制限の目的ではなく、図解の目的で提供される。
【実施例】
【0043】
実施例1
グリコミメティック1の合成
試薬および溶媒は、市販の供給元から受け取ったまま用いた。薄層クロマトグラフィー(TLC)は、Analtechシリカゲルプレートを用いて行い、紫外光(254nm)染色により可視化した。反応の進行は、薄層クロマトグラフィーまたはGCによりモニタリングした。
【0044】
B4誘導体の調製
【0045】
【化14】

B4−2の調製
B4−1(150g、385mmol)のCHCl(800μL)中溶液を、ZrCl(85g、366mmol)のCHCl(800mL)中スラリーに、0℃でゆっくり添加した。反応物を0℃で30分撹拌した後、EtSH(32mL、423mmol)を添加し、反応は2時間以内に完了した。反応を、食塩水(500mL)により停止した。層を分離し、有機層を飽和水性NaHCO(1×500mL)および食塩水(1×500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濾過し、濃縮して、油状の残渣を得た。これをMTBE(300mL)に溶解し、溶液をヘプタン(1.2L)で希釈した。得られたスラリーを氷浴中で1時間撹拌した後、混合物を濾過して、化合物B4−2(143g、95%)を得た。
【0046】
B4の調製
NaOMe(メタノール中0.5M、1.09L、545mmol)を、B4−2(710g、392mmol)のMeOH(4L)中溶液に、室温で添加した。2時間後、Dowex 50wx8−200樹脂(350g)を、pHが3.5〜4に達するまで添加した。樹脂を濾去し、濾液を濃縮して、油状の残渣にした。これをCHCl中に溶解し、再度濃縮して、B4(367g、90%)を固体として得た。
【0047】
B4−3の調製
B4(10g、44.6mmol)の無水DMF(125mL)中溶液を、NaH(14g、357mmol、鉱油中60%)の無水DMF(125mL)中懸濁液に、0℃で添加した。反応物を室温で30分撹拌し、次いで0℃に冷却し、BnBr(42mL、357mmol)を慎重に加えた。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで、氷浴中で冷却しながら、MeOH(30mL)で慎重に反応を停止した。水(200mL)を添加し、混合物を、EtOAc(2×200mL)で抽出した。有機相を、水(2×500mL)および食塩水で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、油状の残渣とした。EtOAc/ヘプタン(1:9)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、B4(20.6g、79%)を得た。
【0048】
B2誘導体の調製
【0049】
【化15】

B2−2の調製
トリエチルアミン(6.8L、48.7mol)を、B2−1(1kg、6.1mol)およびDMAP(74g、0.61mol)のCHCl(12L)溶液に添加し、次いで、AcO(3.46L、36.6mol)を0〜10℃で添加した。反応物を室温で一晩(oversight)撹拌し、次いで、水(25L)で反応停止した。層を分離した。有機相を、水(25L)、飽和水性NaHCO(2×10L)および食塩水(10L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、粗製B2−2を得た(2.1kg、>定量的)。
【0050】
B2−3の調製
B2−2(1.5kg、3.01mol)のCHCl(6L)中溶液を、ZrCl(1kg、2.86mol)のCHCl(1.2L)中スラリーに、0〜5℃でゆっくり添加した。反応物を30分撹拌した後、EtSH(351mL、3.16mol)を加えた。反応物を、0℃で撹拌した。不完全な反応のため、反応の最初の30時間、追加のEtSH(3×3051mL)を添加した。2日後、混合物を食塩水(7.5L)で反応停止した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO(6L)および食塩水(6L)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、油状の残渣を得た。残渣をMTBE/ヘプタン(1:3)から再結晶して、B2−3の第1の画分を得た。母液を濃縮し、残渣を、EtOAc/ヘプタン(2:8)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製して、第2の画分を得た。合計560gのB2−3(2工程で38%)を得た。
【0051】
B2−4の調製
NaOMe(メタノール中25重量%、119ml、519mmol)を、B2−3(579g、1.73mol)のメタノール(2.3L)溶液に、室温でゆっくり添加した。1時間後、Dowex 50wx8−200樹脂(290g)を添加し、反応物を30分撹拌した。樹脂を濾去し、濾液を濃縮して、固体のB2−4(360g、定量的)を得た。
【0052】
B2の調製
B2−4(360g、1.73mol)のTHF(3.5L)中溶液を、カリウムtert−ブトキシド(THF中20重量%、3.88kg、6.91mol)を用いて0℃で処理した。30分後、BnBr(822mL、6.91mol)を加えた。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで、10℃に冷却した。一晩撹拌した後、反応を飽和水性NHCl(2L)で停止し、次いで、Celiteのパッドを通して濾過した。濾過物を、EtOAc(5.5L)で抽出した。有機相を、食塩水(4L)で洗浄し、濃縮した。EtOAc/ヘプタン(1:9)で溶出するクロマトグラフィー精製により、B2(460g、56%)を得た。
【0053】
B5誘導体の調製
【0054】
【化16】

B5−2の調製
B5−1(184g、676mmol、Aldrich)およびPd/C(10重量%、50%水湿潤;19g)のTHF(800mL)中懸濁液を、50psiで、一晩、室温にて水素付加した。触媒を、パッドを通して室温で一晩濾去した。触媒を、Celiteのパッドを通して濾去し、フィルタパッドを酢酸エチルで洗浄し、合わせた濾液を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、次いで、溶液を、水(250mL)、水性炭酸水素ナトリウム(250mL)および次いで食塩水(250mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、B5−2を油状の残渣(217g、定量的)として得た。
【0055】
B5−3の調製
NaOMe(MeOH中25重量%、236mL、1.03mol)を、B5−2(189g、689mmol)のMeOH(600mL)中溶液に、室温でゆっくり加えた。2時間後、Dowex 50wx8−200(320g)を加えて、pHを3.5〜4に調整した。樹脂を濾過し、濾液を濃縮した。残渣を、トルエンと、次いでアセトニトリルと共沸して、B5−3(102g、定量的)をワックス状の固体として得た。
【0056】
B5の調製
B5−3(69g、465mmol)のCHCN(1.2L)中懸濁液を、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(76.9mL、512mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(4.56g、24mmol)のCHCN(75mL)溶液で処理した。室温で1時間撹拌した後、反応物を1時間加熱還流し、次いで、室温に冷却し、EtN(3mL)で中和した。混合物を濃縮し、残渣をEtOAc(800mL)に溶解した。溶液を、水(500mL)および次いで食塩水(500mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させ、濃縮して、粗製物を得た。これを酢酸エチル(100mL)に70℃で溶解し、次いで、ヘプタン(270mL、50mL部分)で処理した。混合物を室温に冷却し、濾過して、B5の第1の画分を得た。EtOAc/ヘプタン(3:7)で溶出するシリカゲル上での母液のクロマトグラフィー精製により、第2の画分を得た。合計88gのB5(80%)を得た。
【0057】
グリコミメティック1の調製
【0058】
【化17】

化合物1の調製
B5(20g、87.4mmol)、B4−2(40g、101.6mmol)、N−ヨードスクシンイミド(25g、110.1mmol)のCHCl(230ml、無水)中懸濁液を、トリフルオロメタンスルホン酸(CHCl中0.15M、約2ml;使用前に新たに調製する)を用いて、0℃で、色が明るい赤褐色から濃褐色に変化するまで処理した。反応物を、氷浴中で40分撹拌し、次いで、水性NaCO(8%、100mL)で反応停止してpH9にした。CHCl(100mL)および水(100mL)で希釈した後、層を分離した。有機相を、水性Na(10%、370mL)、次いで、食塩水(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。MTBE/ヘプタン(6:4)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、1(40.8g、81%)を泡状物として得た。
【0059】
化合物2の調製
NaBHCN(42g、670mmol)の無水THF(280mL)中溶液を、化合物1(38g、67mmol)の無水THF(70mL)中溶液に室温で加えた。次いで、モレキュラーシーブ(3Å、粉末、乾燥;30g)を加え、反応混合物を室温で30分撹拌し、その後、0℃に冷却した。HCl(無水EtO中、使用前に調製する;約90mL)を、化合物1のTLCが完全に消費するまでゆっくりと加えた。固体NaCO(35g)を、氷浴で冷却しながら反応物に滴下し、スラリーを10分撹拌し、その後、Celiteのパッドを通して濾過した。濾過物をEtOAc(300mL)で希釈し、飽和水性NaHCO(100mL)および食塩水(100mL)で洗浄し、濃縮して黄色油状物とした。この残渣を、トルエン(400mL)と水(200mL)との間で分配したが、3層が生じた。層を分離し、中間層をトルエン(6×400mL)と水(6×100mL)の間で繰り返し分配した。合わせた有機層を濃縮して、粗製の2(35g)を得た。EtOAc/ヘプタン(6:4)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、2(26g、68%)を油状の泡状物として得た。
【0060】
化合物3の調製
パート1:Br(Pで蒸留、1.8mL、34.8mmol)を、B2(13.9g、29mmol)の無水CHCl(30mL)の溶液に、0℃で滴下した。反応物を氷浴中で40分撹拌した後、シクロヘキサン(4mL)を、色が持続的な黄色に変化するまで添加した。
【0061】
パート2:化合物2(11g、19.4mmol)を無水CHCl(80mL)に溶解し、次いで、EtNBr(200℃、窒素下で2時間乾燥;6.1g、29mmol)、無水ジメチルホルムアミド(50mL)およびモレキュラーシーブ(4Å粉末、乾燥;12g)を添加した。反応混合物を室温で30分攪拌した後、パート1からの溶液を加えた。反応混合物を、40時間、室温で攪拌し、次いで、EtOAc(100ml)で希釈し、Celiteのパッドを用いて濾過した。濾過物を、水性Na(10%、100mL)、水(100mL)、次いで食塩水(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。EtOAc/ヘプタン(1:1)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、3(15g、78%)を油状の泡状物として得た。
【0062】
化合物4の調製
NaOMe(MeOH中0.5M、4.6mL、2.24mmol)を、化合物3(11g、11.2mmol)のMeOH(30mL)中溶液に、室温で添加した。3時間後、AcOH(1mL)を添加し、pHは4に達した。混合物を濃縮して、粗製の4(9.2g、定量的)を得、これをさらに精製することなく、次の工程で用いた。
【0063】
化合物5の調製
化合物4(9.2g、12.3mmol)およびジブチルスズオキシド(3.92g、15.8mmol)の無水メタノール(150mL)中混合物を、4時間にわたり加熱還流し、次いで、反応物を蒸発乾固させた。残渣を、乾燥フラスコ中のトルエン(150mL、無水)中に溶解させた。臭化テトラブチルアンモニウム(3.65g、7.91mmol)および臭化アリル(1.6mL、18.1mmol)を加えた。反応混合物を、4時間にわたり加熱還流し、冷却し、次いで、濃縮した。残渣を、EtOAc/CHCl(7:3)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより精製して、5を得た(6.4g、2工程で67%)。
【0064】
化合物6の調製
化合物5(6.3g、7.35mmol)の無水DMF(30mL)中溶液を、NaH(1.47g、36.8mmol、鉱油中60%)の無水DMF(30mL)中懸濁液に、0℃で添加した。反応物を室温で30分攪拌した後、0℃に冷却し、BnBr(3.95mL、33.1mmol)を添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、次いで、氷浴中、MeOH(1.5mL)で反応停止した。水(20mL)および氷冷した水性HCl(1M、100mL)を添加し、次いで、CHCl(200mL)で抽出した。層を分離し、有機相を、水(200mL)、氷冷した飽和水性NaHCO(100mL)および食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。EtOAc/ヘプタン(1:4)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、6(6.36g、78%)を得た。
【0065】
化合物7の調製
KOtBu(1.57g、14.0mmol)を、室温で、DMSO(40mL)中の化合物6(6.3g、5.59mmol)の溶液に加えた。スラリーを、予熱した油浴中で2時間、100℃まで加熱した。反応物を室温に冷却した後、CHCl(150ML)および水(100mL)を加えた。層を分離し、水相をCHCl(2×150mL)で抽出した。合わせた有機物を、水(3×100mL)および次いで食塩水(100mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮して残渣とした(6.4g)。これをアセトン(40mL)および水(4mL)に溶解し、HgO(黄色;3.3g、15.1mmol)を添加し、次いで、HgCl(無水;3.3g、12.3mmol)のアセトン(40mL)中溶液および水(4mL)を滴下した。30分後、混合物をCeliteのパッドを通して濾過し、濾液を濃縮した。残渣を、CHCl(200mL)と飽和水性NaI(30mL)との間に分配した。有機層を、水(100mL)および次いで食塩水で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。EtOAc/ヘプタン(1:4)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、7(4.35g、72%)を黄色油状物として得た。
【0066】
化合物8の調製
パート1:Br(Pで蒸留、0.39mL、7.59mmol)を、B4−3(4.03g、6.9mmol)の無水CHCl(10mL)中溶液に、0℃で滴下した。反応物を氷浴中で40分攪拌した後、シクロヘキサン(1mL)を、色が持続的な黄色に変化するまで加えた。
【0067】
パート2:化合物7(3.75g、3.45mmol)を無水CHCl(25mL)に溶解し、次いで、EtNBr(窒素下、200℃で2時間乾燥、1.45g、6.9mmol)、無水DMF(15mL)およびモレキュラーシーブ(4Å粉末、乾燥;4g)を添加した。この混合物を室温で30分攪拌した後、パート1からの溶液を添加した。反応物を室温で60時間攪拌し、次いで、EtOAc(50mL)で希釈し、Celiteのパッドを通して濾過した。濾液を、水性Na(10%、50mL)、水(30mL)および次いで食塩水(30mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、濃縮した。EtOAc/ヘプタン(1:3)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、8(3.94g、71%)を泡状物として得た。
【0068】
グリコミメティック1の調製
8(3.9g、2.42mmol)およびPd(OH)/C(20重量%、50%水分;2g)のメタノール(150mL)、1,4−ジオキサン(15mL)および酢酸(5mL)中懸濁液を、60psiで、室温で20時間水素付加した。混合物を、Celiteのパッドを通して濾過し、濾液を濃縮した。CHCl/MeOH/HO(10:9:1)で溶出するシリカゲル上でのクロマトグラフィー精製により、グリコミメティック1(1.05g、70%)を白色固体として得た。
【0069】
実施例2
グリコミメティックの合成(化合物XXVIII)
化学構造を、図3A〜3Bに図示する。
【0070】
中間体XVIVの合成:化合物XVIII(0.8g)のアセトニトリル(10mL)中溶液に、ベンズアルデヒドジメチルアセタール(0.5g)およびp−トルエンスルホン酸(0.2mg)を添加し、混合物を、室温で6時間攪拌する。トリエチルアミン(0.2mL)を添加し、反応混合物を、室温で5分攪拌する。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、中間体XVIVを得る。
【0071】
中間体XXVの合成:化合物XVIV(0.5g)のジメチルホルムアミド(5mL)中溶液に、水素化ナトリウム(0.1g、油中60%懸濁液)を攪拌しながら添加する。臭化ベンジル(0.2mL)を上記反応混合物に滴下し、室温で16時間攪拌する。メタノール(0.5mL)を撹拌しながら添加し、反応混合物を濃縮して乾燥させる。ジクロロメタン(50mL)を添加し、有機層を、冷1N HCl、冷炭酸水素ナトリウム溶液および冷水で連続的に洗浄する。有機層を乾燥(硫酸ナトリウム)させ、濾過し、濃縮して乾燥させる。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXVを得る。
【0072】
中間体XXVIの合成:XXV(0.4g)のTHF(5mL)中冷溶液に、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(0.1g)を添加する。HClのエーテル中冷溶液を、泡立ちが止まるまで(pH2〜3)滴下する。反応混合物を、エーテル(50mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの冷水溶液および冷水で連続的に洗浄する。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXVIを得る。
【0073】
中間体XXVIIの合成:化合物XXVI(0.1g)のジクロロメタン−DMF(2mL)中溶液に、モレキュラーシーブ(4A、0.1g)および臭化テトラエチルアンモニウム(0.05g)を添加し、反応混合物を、アルゴン下、室温で1時間攪拌する。この反応混合物に、化合物XVI(0.1g)を添加し、反応混合物を、アルゴン下、室温で48時間攪拌する。反応混合物を、ジクロロメタン(10mL)で希釈し、冷飽和炭酸水素ナトリウム溶液および水で連続的に洗浄し、次いで、乾燥(硫酸ナトリウム)させ、濾過し、濃縮して乾燥させる。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXVIIを得る。
【0074】
化合物XXVIIIの合成:化合物XXVII(0.06g)のジオキサン−水(5mL、6:1)中溶液に、酢酸(10滴)および10%Pd−C(0.06g)を添加する。反応混合物を、水素下で20時間、激しく攪拌する。反応混合物を、Celiteのベッドを通して濾過し、溶媒を留去する。残渣をセファデックスG−10のカラムを通して精製し、化合物XXVIIIを得る。
【0075】
実施例3
グリコミメティックの合成(化合物XXXIII)
化学構造を、図3A〜3Bに図示する。
【0076】
中間体XXIXの合成:化合物XVIII(2g)のピリジン(20mL)中溶液に、tert−ブチル−ジメチルシリルクロリド(0.6g)を添加し、溶液を室温で16時間攪拌する。溶媒を留去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXIXを得る。
【0077】
中間体XXXの合成:化合物XXIX(1g)のα,α−ジメトキシプロパン(10mL)中懸濁液に、カンファースルホン酸(0.2g)を添加し、反応混合物を室温で16時間攪拌する。トリエチルアミン(0.2mL)を添加し、溶媒を留去する。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXXを得る。
【0078】
中間体XXXIの合成:化合物XXX(0.8g)を、実施例2に記載した方法と同様の方法で、化合物XVI(0.8g)と反応させて、化合物XXXIを得る。
【0079】
中間体XXXIIの合成:化合物XXXI(0.5g)のアセトニトリル(5mL)中溶液に、トリエチルアミン(0.1mL)、およびHSiF(0.5mL、35%)のアセトニトリル(1mL)中溶液を添加する。2時間後、反応混合物をジクロロメタン(50mL)で希釈し、炭酸水素ナトリウムの冷飽和溶液および冷水で洗浄し、次いで乾燥(硫酸ナトリウム)させ、濾過し、濃縮して乾燥させる。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル)により精製して、化合物XXXIIを得る。
【0080】
化合物XXXIIIの合成:化合物XXXII(0.2g)の水中60%酢酸溶液を、60℃で1時間加熱する。溶媒を留去し、粗製精製物を、ジオキサン−水(5mL、6:1)に溶解する。酢酸(10滴)を添加し、次いで、10%Pd−Cを添加する。懸濁液を水素下で24時間振盪し、濾過し(Celteベッド)、濃縮して乾燥させる。残渣を、セファデックスG−10のカラムを通して精製し、化合物XXXIIIを得る。
【0081】
実施例4
グリコミメティックの合成(化合物XXXVII)
化学構造を、図3A〜3Bに図示する。
【0082】
中間体XXXIVの合成:XXIX(1g)のDMF溶液を、実施例2に記載した方法と同様の方法で、NaH(0.14g)および臭化ベンジル(0.4mL)で処理し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル)で精製して、化合物XXXIVを得る。
【0083】
中間体XXXVの合成:化合物XXXIV(1g)を、実施例3に記載した方法と同様の方法で、HSiFで処理して、化合物XXXVを得る。
中間体XXXVIの合成:中間体XXXV(0.5g)を、実施例2に記載した方法と同様の方法で、中間体XVI(0.4g)と反応させて、化合物XXXVIを得る。
【0084】
化合物XXXVIIの合成:中間体XXXVI(0.3g)を、実施例2に記載した方法と同様の方法で水素付加し、セファデックスG−10により精製して、化合物XXXVIIを得る。
【0085】
実施例5
PA−ILアンタゴニスト活性のアッセイ
マイクロタイタープレート(プレート1)のウェルを、37℃で2時間インキュベーションすることにより、PA−IL(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)で被覆する。次いで、ウェルを、1:1v/vでStabilcoat(Surmodics、Eden Prairie、MN)と混合したTBS−Ca(50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM CaCl、pH7.4)中で希釈した1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加することにより、2時間にわたってブロックする。第2の低結合丸底マイクロタイタープレート(プレート2)中、試験アンタゴニストを、TBS−Ca/Stabilcoat(60μl/ウェル)中の1%BSAで連続的に希釈する。ストレプトアビジン−HRP(KPL Labs,Gaithersburg,MD)と混合した、予め形成したα−ガラクトース−PAA−ビオチン(GlycoTech Corp,Gaithersburg,MD)の結合体を、プレート2(2μg/mLの60μl/ウェル)の各ウェルに添加する。次いで、プレート1をTBS−Caで洗浄し、100μl/ウェルをプレート2からプレート1に移す。室温で2時間のインキュベーション後、プレート1を洗浄し、100μlのTMB試薬(KPL Labs,Gaithersburg,MD)を各ウェルに加える。室温で5分のインキュベーション後、反応を、100μl/ウェルの1M HPOを添加することにより停止し、450nmでの光の吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0086】
実施例6
PA−IILアンタゴニスト活性のアッセイ
マイクロタイタープレート(プレート1)のウェルを、37℃で2時間インキュベーションすることにより、PA−IIL(Dr.Wimmerova,Masaryk University,Brno,チェコ共和国)で被覆する。次いで、ウェルを、1:1 v/vでStabilcoat(Surmodics,Eden Prairie,MN)と混合したTBS−Ca(50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM
CaCl pH7.4)中で希釈した1%ウシ血清アルブミン(BSA)を添加することにより、2時間にわたってブロックする。第2の低結合丸底マイクロタイタープレート(プレート2)中、試験アンタゴニストを、TBS−Ca/Stabilcoat(60μl/ウェル)中の1%ウシ血清アルブミンで連続的に希釈する。ストレプトアビジン−HRP(KPL Labs,Gaithersburg,MD)と混合した、予め形成したフコース−PAA−ビオチン(GlycoTech Corp,Gaithersburg,MD)の結合体を、プレート2(2μg/mLの60μl/ウェル)の各ウェルに添加する。次いで、プレート1をTBS−Caで洗浄し、100μl/ウェルをプレート2からプレート1に移す。室温で2時間のインキュベーション後、プレート1を洗浄し、100μlのTMB試薬(KPL Labs,Gaithersburg,MD)を各ウェルに加える。室温で5分のインキュベーション後、反応を、100μl/ウェルの1M HPOを添加して停止し、450nmでの光の吸光度を、マイクロタイタープレートリーダーにより決定する。
【0087】
実施例7
頬細胞に結合したPA−IまたはPA−IIレクチンの阻害アッセイ
頬の内側を擦ることにより頬細胞を得、2mlのリン酸緩衝食塩水中に集める。細胞を400gで7分間遠心分離して、細胞ペレットを生成する。上清を捨てる。冷TBS−Ca(50mM TrisHCl、150mM NaCl、2mM CaCl pH7.4)に再懸濁して、細胞の濃度を10細胞/mLにする。0.1mLアリコートを各管に添加する。ビオチン標識化PA−IまたはPA−IIを管に添加する(5μl/ウェルの1.0mg/mLレクチン)。阻害剤を管に添加する(所望の濃度で5μl)。氷上で30分インキュベートする。400μlの冷TBS−Caを各管に添加し、400gで7分遠心分離することにより、細胞を1回洗浄する。上清を捨てる。細胞を、100μlの冷TBS−Caに再懸濁する。ストレプトアビジン−FITC(1mg/mLの2μl/管、KPL Labs,Gaithersburg,MD)を添加する。30分間氷上でインキュベートする。細胞を、400μlの冷TBS−Caを各管に添加し、400gで7分間遠心分離することにより1回洗浄する。上清を捨てる。細胞を、500μlの冷TBS−Caに再懸濁する。フローサイトメーターで分析する。
【0088】
上記より、例示を目的として本発明の特定の実施態様が本明細書中に記載されてきたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、多様な改変がなされ得ることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図9−3】
image rotate


【公開番号】特開2013−49718(P2013−49718A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−267339(P2012−267339)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2008−526154(P2008−526154)の分割
【原出願日】平成18年8月8日(2006.8.8)
【出願人】(506167421)グリコミメティクス, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】