シュープレス用ベルト
【課題】シューの幅方向両側のシューエッジ当接部領域のベルト部分の剛性を部分的に高めて、ベルトの曲げ応力と耐クラック性を向上させて、曲げ変形を抑制しクラックの発生を防止して、耐久性を向上させるシュープレス用ベルトを提供する。
【解決手段】シュープレス用ベルト4は、プレスロールとシュー3との間に配置されて回転走行する。このベルトは、シューに接触するシュー側層21と、シュー側層の外周に設けられた基体層22と、基体層の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。基体層は一対の補強用基材11を有し、一対の補強用基材は、シューの幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域に、経方向に周回して配置されている。
【解決手段】シュープレス用ベルト4は、プレスロールとシュー3との間に配置されて回転走行する。このベルトは、シューに接触するシュー側層21と、シュー側層の外周に設けられた基体層22と、基体層の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。基体層は一対の補強用基材11を有し、一対の補強用基材は、シューの幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域に、経方向に周回して配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用のシュープレス機構に使用されるシュープレス用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、ワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートとを備えている。これらワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。
プレスパートにはプレス装置が配置され、このプレス装置は、湿紙の搬送方向に沿って直列に並んで配置された複数のプレス機構を備えている。
抄紙機において、湿紙は、ワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートにそれぞれ配設され吸水性フェルトからなる湿紙搬送用ベルトに次々と受け渡されながら搬送される。湿紙は、プレスパートのプレス機構で水分を搾り出され(搾水され)、その後、ドライヤーパートで乾燥される。
【0003】
プレス機構には、ロールプレス機構とシュープレス機構とがある。ロールプレス機構は、湿紙を挟持した湿紙搬送用ベルトをロールとロールとで挟みながら加圧する機構である。シュープレス機構は、湿紙を挟持した湿紙搬送用ベルトをプレスロールとシューとで挟みながら加圧する機構である。
シュープレス機構は、ロールプレス機構と比較して、プレスの加圧部(ニップ)のプレスゾーンを広く取れることから、加圧時間が長くなって搾水性に優れているという利点を有しているので、近年は多く採用されている。
【0004】
本出願人は、特許文献1(特開2005−307421号公報)で、シュープレス機構に使用されるシュープレス用ベルトを提案している。このシュープレス用ベルトは、基体層と湿紙側層とシュー側層とを有し、シュープレス機構のプレスロールとシューとの間に配置されて回転走行する無端環状のベルトである。
【特許文献1】特開2005−307421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシュープレス用ベルトやその他一般的なシュープレス用ベルトは、シュープレス機構のプレスロールとシューとの間に配置され、ベルトのシュー当接面が、シューの上面に接触しながら経方向(MD方向:回転方向)に走行する。
シュープレス用ベルトの幅方向(CMD方向)の寸法(ベルト緯寸法)は、シューの幅方向の寸法(シュー緯寸法)より大きい。そして、シュープレス用ベルトの走行は、プレスロールの駆動に伴い湿紙搬送用ベルトを介して動力が伝達されるいわゆる「つれ回り」であるため、シュープレス用ベルトには、加圧部を移動するときにせん断応力(一種の曲げ応力)が働くことになる。
そのため、この加圧部での曲げ変形が長時間に渡って繰り返されても、疲労によりシュープレス用ベルトにクラック(特に、経方向のクラック)が発生しないような技術が求められていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域のベルト部分の剛性を部分的に高めることにより、ベルトの曲げ応力と耐クラック性を向上させて、曲げ変形を抑制するとともにクラックの発生を防止して、ベルトの耐久性を向上させることができるシュープレス用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、シュープレス機構のプレスロールとその下方または上方のシューとの間に配置されて回転走行するシュープレス用ベルトであって、このシュープレス用ベルトは、前記シューに接触するシュー側層と、このシュー側層の外周に設けられた基体層と、この基体層の外周に形成された湿紙側層とを備え、前記基体層は一対の補強用基材を有し、この一対の補強用基材は、前記シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域に経方向に周回して配置されている。
たとえば、前記補強用基材は、前記基体層の外周および内周の一方または両方に配置されている。
前記補強用基材は、前記シュープレス用ベルトにおける前記シューエッジ部と当接するシューエッジ当接部領域のみに配置されているか、または、このシューエッジ当接部領域と、前記シュープレス用ベルトの緯方向端部を含む端部領域との両方に配置されているのが好ましい。
前記湿紙側層の表面には経方向に複数の凹溝が形成され、この凹溝は断面曲面状に形成されているのが好ましい。
なお、前記複数の凹溝は、前記シューの幅方向両側の前記シューエッジ当接部領域以外に形成されている場合であってもよい。
前記補強用基材は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材により構成され、前記基体層は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材からなる本体部と、前記格子状部材からなる前記補強用基材と、前記格子状部材の外周または内周に配置され糸が螺旋状に巻回された糸巻層とを有しているのが好ましい。
また、前記格子状部材は前記緯糸が前記経糸よりも摩耗しにくくなっているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるシュープレス用ベルトは、上述のように構成したので、シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域のベルト部分の剛性が部分的に高くなって、ベルトの曲げ応力と耐クラック性が向上し、曲げ変形を抑制するとともにクラックの発生を防止して、ベルトの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかるシュープレス用ベルトについて説明する。
図1ないし図17は本発明を説明するための図で、図1は、シュープレス機構の概略構成を示す斜視図である。図2ないし図11は本発明の一実施形態を示す図で、図2は、シュープレス機構の概略断面図、図3は、図2のIII部拡大図で、シュープレス用ベルトの断面図である。
図1ないし図3に示すように、シュープレス機構1は、プレスロール2と、プレスロール2の下方(または、上方)に設けられたシュー3とを備えている。シュープレス用ベルト4(以下、ベルト4と記載)が、プレスロール2とシュー3との間に配置されて回転走行する。複数のシュープレス機構1を、湿紙5の搬送方向に沿って直列に並べて配置することにより、抄紙機のプレスパートが構成される。
【0010】
シュープレス機構1には無端環状のベルト4が使用されており、このベルト4は、プレスロール2とシュー3との間を走行する。シュープレス機構1としては、ベルト4が複数のロールに巻き付けられるオープンタイプのシュープレス機構と、ベルト4が中空の案内シェルに案内支持されたプレススリーブタイプのシュープレス機構とがある。
吸水性フェルトからなる湿紙搬送用ベルト6とこれに支持された湿紙5は、ほぼ同一速度で同一方向に搬送され、加圧部(ニップ)8において、ベルト4上に位置した状態でプレスロール2とシュー3とにより加圧される。その結果、湿紙5中の水分が搾水され、この水分は、湿紙搬送用ベルト6に吸収されるとともに水分の一部はベルト4の凹溝24内を流れて排出される。
プレススリーブタイプのシュープレス機構に使用されるベルト4は、オープンタイプのシュープレス機構に使用されるベルトと比較して、抄速や加圧部8のニップ圧およびニップ回数の増加などの使用条件が過酷になるので、ユーザーからは、ベルト4の耐久性の向上が強く求められている。
【0011】
ベルト4は、加圧部8において、シュー3の上面7と湿紙5を支持する湿紙搬送用ベルト6との間に位置して、経方向(MD方向)に走行する。ベルト4の幅方向(緯方向:CMD方向)の寸法(ベルト緯寸法W1)は、シュー3の幅方向(緯方向)の寸法(シュー緯寸法W2)より大きい。
したがって、ベルト4は、その両側の緯方向端部9が外側に延びた状態におかれ、緯方向の一方側のシューエッジ部10から他方側のシューエッジ部10までの間で、シュー3の上面7と接触する。
その結果、ベルト4は、その中央部の中央領域Eと、中央領域Eより外側に位置する一対のシューエッジ当接部領域E1と、一対の端部領域E2とに区分することができる。端部領域E2は、シューエッジ当接部領域E1より外側に位置して、ベルト4の緯方向端部9を含んでいる。
中央領域E1では、ベルト4はシュー3の上面7と接触する。シューエッジ当接部領域E1内にシューエッジ部10が位置している。したがって、この領域E1におけるベルト4は、シューエッジ部10より中央側ではシュー3の上面7と接触するが、シューエッジ部10より外側では接触しない。端部領域E2にはシュー3がないので、この領域E2ではベルト4はシュー3とは接触しない。
【0012】
ベルト4は、シュー3に接触するシュー側層21と、シュー側層21の外周に設けられた基体層22と、基体層22の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。湿紙側層25の表面23には、経方向(MD方向)に排水用の複数の凹溝24が形成されている。なお、湿紙側層25には、凹溝が形成されていない場合であってもよい。
基体層22は一対の補強用基材11を有している。一対の補強用基材11は、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(本実施形態では、シューエッジ当接部領域E1) に、経方向(MD方向)に周回して配置されている。
ベルト4に一対の補強用基材11を設けたので、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1)のベルト部分の剛性が部分的に高くなる。
したがって、ベルト4は、曲げ応力が向上して曲げ変形が抑制され、且つ、耐クラック性が向上してクラック(特に、経方向のクラック)の発生を防止し、これにより、ベルト4の耐久性を向上させることができる。
【0013】
補強用基材11は、基体層22の外周(プレスロール2側)および内周(シュー3側)の一方または両方(本実施形態では、外周)に配置されている。本実施形態のように、補強用基材11は、基体層22の外周に配置する方が好ましい。
すなわち、基体層22の外周に湿紙側層25を形成する際に、予め補強用基材11が基体層22を周回して巻き付け支持した状態におかれるので、基体層22の外周に湿紙側層25をより安定して形成することができる。反面、シューエッジ部10と当接するシューエッジ当接部領域E1内の湿紙側層25に複数の凹溝24を形成する場合には、その溝底と補強用基材11との間隔が狭くなるので、耐クラック性のためには当該領域E1内の凹溝深さは中央領域Eの凹溝深さよりも浅く形成する場合がある。
補強用基材11は、ベルト4における、シューエッジ部10と当接するシューエッジ当接部領域E1のみに配置されている。これにより、ベルト4のシューエッジ当接部領域E1のベルト部分の剛性が部分的に高くなるので、ベルト4の曲げ応力と耐クラック性が向上する。
【0014】
なお、変形例として、補強用基材11を基体層22の内周に配置すれば、シューエッジ当接部領域E1内の凹溝と、中央領域E内の凹溝とを、同じ凹溝深さで形成することができる。
他の変形例として、補強用基材11を基体層22の外周と内周の両方に配置すれば、シューの幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応するシューエッジ当接部領域E1のベルト部分の剛性が部分的にさらに高まるので、ベルト4の曲げ応力と耐クラック性をさらに向上させることができる。
【0015】
図4は、ベルト4に設けられる格子状部材30の部分拡大図である。
図3,図4に示すように、補強用基材11は、複数の経糸31aと複数の緯糸31bが格子状に組み合わされた格子状部材30により構成されている。格子状部材30において、複数の経糸31aと複数の緯糸31bは、格子状に上下に重なり且つ交差部31cで接合されているが織物の構造にはなっていない。
取付け前の格子状部材30としては、好ましくは、0.5m〜1.0m幅の有端帯状体がロール状に巻かれた状態のものを使用し、取付け時には、ロール状部材から有端帯状の格子状部材30を真っ直ぐに引き出して、マンドレルMの軸線方向に沿って複数枚並べて配置する。
基体層22は、格子状部材30からなる本体部27と、格子状基材30からなる補強用基材11と、格子状部材30の外周に配置され糸32が螺旋状に巻回された糸巻層33とを備えている。
【0016】
補強用基材11と本体部27には無端織物を使用してもよいが、本実施形態では、格子状部材30を使用するとともに、経糸31aと緯糸31bとの交差部31cが接合されている。これにより、ベルト4の使用時に、格子状部材30の交差部31cに応力が集中してもクラックが生じにくくなって、耐クラック性が向上する。
また、交差部31cが接合されているので、ベルト4の製造時に格子状部材30を取付ける際に、経糸31aと緯糸31bの位置ずれがなくなり、格子状部材30を容易に取付けることができ、作業性がよい。
格子状部材30は、緯糸31bが経糸31aよりも摩耗しにくくなっている。ベルト4を長時間使用すると、格子状部材30の交差部31cの接合が剥がれてしまって経糸31aと緯糸31bの間で摩擦が起きる。そこで、緯糸31bを経糸31aよりも摩耗しにくくしたので、緯糸31bが早期に摩耗することがなくなり、ベルト4の強度と緯方向の寸法安定性が向上する。
【0017】
図5は、ベルト4の製造手順を示す説明図で、図5(F)は、図5(E)のF部拡大図である。図6は、シュー側層21を形成する工程1を示す図で、図6(A),(B)はそれぞれ側面図,斜視図である。
図7は、基体層22を設ける工程2を示す図で、工程2のうち、格子状部材30を配置する工程を示す斜視図である。図8は、工程2のうち、補強用基材11を設ける工程を示す斜視図である。
図9は、工程2のうち、糸巻層33を形成する工程を示す斜視図、図10は、工程2のうち、糸巻層33の形成後に接合を行う工程を示す斜視図、図11は、ベルト4をマンドレルMから分離する工程を示す正面図である。
【0018】
ベルト4を製造するには、マンドレルMを使用し、シュー側層21,基体層22,湿紙側層25の順に形成していく。
まず最初に、図5(A),図6に示すように、工程1において、表面の磨かれたマンドレルMの表面に、シュー側層21を形成する。この場合、予め、マンドレルMの表面に剥離剤を塗っておくか、または剥離シートを貼っておくとよい。シュー側層21は、塗布機(たとえば、ドクターバー,コーターバーなど)Tを用いて、0.5〜2.0mm程度の厚さで形成される。
マンドレルMの表面を磨いておけば、シュー3(図1)に強く接触した状態で常時滑走するベルト4のシュー側層21の平滑性を確保することができ、また、製造工程を経た後のベルト4を、マンドレルMから容易に離脱させることができる。なお、マンドレルMに加熱装置を設けて、シュー側層21を構成する樹脂の硬化を促進できるようにするのが好ましい。
【0019】
次に、図5(B)〜(D),図7ないし図10に示す工程2で、シュー側層21の外周に基体層22を設ける。そのために、図5(B),図7に示すように、格子状部材30(図4)をシュー側層21の外周に取付ける。
格子状部材30の交差部31cは、樹脂接着や溶融処理などにより接合されている。格子状部材30の緯糸31bは、経糸31aよりも摩耗しにくい材質のものが好ましい。
そのため、経糸31aとしては、たとえば、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、木綿などの天然繊維、または合成繊維などの素材からなる撚糸または紡績糸などの種々の糸が挙げられる。合成繊維としては、たとえば、ポリエステル綿,ポリエステルのマルチフィラメント,アクリル綿,アクリルのマルチフィラメントなどが挙げられる。
緯糸31bとしては、たとえば、ナイロン,PET(ポリエチレンテレフタラート),芳香族ポリアミド,芳香族ポリイミド,高強度ポリエチレンなどの高いモジュラス,高弾性率の合成繊維,ポリエステルのマルチフィラメントの撚糸、または、ポリエステル綿からなる紡績糸などが挙げられる。
格子状部材30の格子の強度は50〜250kg/cmの範囲が好ましく、また、1%モジュラスは5〜40kg/cmの範囲であるのが好ましい。
【0020】
図5(B),図7に示すように、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、マンドレルM上のシュー側層21の外周に配置して、基体層22の本体部27を形成する。
複数枚物の格子状部材30を配置する場合には、たとえば、上述のように0.5m〜1.0m幅の有端帯状体がロール状に巻かれた状態の部材を使用する。取付け時には、このロール状部材から有端帯状の格子状部材30を真っ直ぐに引き出し、ベルト4の幅寸法に対応する所定長さ(ベルト4の幅と同じ長さ寸法)になるように順次切断して、複数枚物の格子状部材30を得る。
次いで、ベルト4の強度を向上させるために、帯状の各格子状部材30の緯糸31bがマンドレルMの軸線方向に沿い、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が互いに重なり合うように(図7)、シュー側層21の外周に配置するのが好ましい。
なお、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が、互いに離隔する場合、または互いに当接する場合であってもよい。また、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、シュー側層21の外周に螺旋状に巻き付けてもよい。その場合は、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が互いに重なり合うように配置すれば、ベルト4の強度が向上するので好ましい。
格子状部材30をシュー側層21の外周に配置する際には、シュー側層21が完全に硬化する前に、マンドレルMを少しづつ回転させ、緯糸31bがマンドレルMの軸線方向に沿うように配置する。
【0021】
次に、図5(C),図8に示すように、基体層22の本体部27の外周に格子状部材30を周回するように重ねて、一対の補強用基材11を設ける。補強用基材11は、シューエッジ当接部領域E1(図2)内に配置される。補強用基材11には、基体層22の本体部27用と同じ(または、異なる)格子状部材30が使用されている。本体部27の格子状部材30と、補強用基材11の格子状部材30とが異なる例としては、たとえば、両方の格子状部材30において、互いのメッシュが異なる第1のケース、経糸31a同士の太さが異なる第2のケース、緯糸31b同士の太さが異なる第3のケース、第1のケースないし第3のケースのうち二以上のケースが組合わさった場合などがある。
補強用基材11を設けるために、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、その緯糸31bがマンドレルMの軸線方向を向くように、基体層22の本体部27の外周で且つシューエッジ当接部領域E1内の所定位置に周回して配置する。ベルト4の強度を向上させるために、複数枚物の補強用基材11を、シューエッジ当接部領域E1に経方向に複数回周回して設ける。
こうして、一対の補強用基材11を、シューエッジ当接部領域E1に経方向に延びて周回して重ねて配置する。
【0022】
次に、図5(D),図9に示すように、マンドレルMを回転させながら、糸供給装置に設けられた一つまたは複数のボビン34から糸32を引き出して、糸32を格子状部材30の外周に螺旋状に巻回して、糸巻層33を形成する。
糸供給装置は、ボビン34を移動させるための移動装置を備えている。この移動装置は、ボビン34から引き出される糸32を螺旋状に巻き付けて糸巻層33を形成しながら、この作業に連動して、ボビン34をマンドレルMの軸線方向に沿って移動させる。
【0023】
糸巻層33の糸32の素材としては、たとえば、ナイロン,PET,芳香族ポリアミド,芳香族ポリイミド,高強度ポリエチレンなどの高強力,高モジュラス,高弾性率の合成繊維からなる、モノフィラメント糸,マルチフィラメント糸またはこれらの撚糸などが挙げられる。
糸32の素材が、ナイロンまたはPETのマルチフィラメント(7,000dtex(デシテックス))の場合には、糸32を、10本/5cm〜50本/5cmの範囲で螺旋状に巻回するのが好ましい。糸32の素材が、芳香族ポリアミドからなるマルチフィラメント(3,000dtex)の場合には、糸32を、15本/5cm〜60本/5cmの範囲で螺旋状に巻回するのが好ましい。また、糸32の強度は、100kg/cm〜300kg/cmの範囲であるのが好ましい。
こうして、シュー側層21の外周全体に設けられ、格子状部材30からなる本体部27と、格子状部材30からなる補強用基材11と、格子状部材30の外周に配置された糸巻層33とを有する基体層22が構成される。
基体層22の本体部27と補強用基材11を形成している格子状部材30の外周全体を、糸巻層33が締付けるので、格子状部材30が安定した状態でシュー側層21の外周全体に位置決め保持され、また、ベルト4の経方向(MD方向)の強度が向上する。
【0024】
本発明では、格子状部材30をシュー側層21の全周に取付ける手順と、格子状部材30を所定領域に経方向に周回して取付けて一対の補強用基材11を形成する手順は、どちらを先に行う場合であってもよく、また、各格子状部材30は、単層(一層)であっても複数層であってもよい。
格子状部材30が複数層の場合には、格子状部材自体の幅方向の端部同士を互いに重ねた部分(または、この端部同士が互いに離隔する部分若しくは互いに当接する部分)が、複数層に渡って同じ場所にならないように配慮するのが好ましい。こうすれば、基体層22に不要な起伏が生じない。
【0025】
こうして、図9,図10に示すように、格子状部材30の外周全体に糸巻層33を形成して基体層22を構成する。その後、マンドレルMを回転させながら、基体層22を覆うように樹脂を塗る。この樹脂は、基体層22の格子状部材30と糸巻層33の各隙間に行き渡って隙間を塞いで目止めできる粘度を有する樹脂であるのが好ましい。
【0026】
上述の実施形態では、シュー側層21の外周に単層の格子状部材30を配置して本体部27を形成し、この本体部27の外周の一部に、一対の補強用基材11を構成する格子状部材30を配置し、さらに外周全体に糸巻層33を設けている。なお、下記(1)〜(4)で示す各種方法、または、後述する変形例,実施例の手順で基体層を構成する場合であってもよい。
たとえば、(1)まず、糸巻層33を形成し、その後、外周全体に格子状部材30を取付けて本体部27を形成し、一対の補強用基材11を構成する格子状部材30を、所定領域に経方向に周回して配置する方法がある。
(2)外周全体に取付けて本体部27を構成する格子状部材30を一層または複数層設け、また、補強用基材11を構成する格子状部材30を一層または複数層設ける方法がある。
(3)まず、糸巻層33を形成し、次に、格子状部材30を全周に配置して本体部27を形成し、格子状部材30を所定領域に経方向に周回して配置して補強用基材11を形成し、その後、糸巻層33を形成する方法がある。
(4)まず、格子状部材30を全周に配置して本体部27を形成し、次に、糸巻層33を形成し、その後、所定領域に格子状部材30を経方向に周回して配置して補強用基材11を形成し、最後に糸巻層33を形成する方法がある。
【0027】
基体層22を形成した後、図5(E),(F),図10に示すように、湿紙側層25(図3)を形成するとともに、断面矩形の複数の凹溝24を形成する工程3に移行する。
糸巻層33の外周に湿紙側層25を形成するための樹脂を、基体層22を通過させて含浸させる。すると、湿紙側層25の樹脂がシュー側層21の外周面に到達するので、シュー側層21,湿紙側層25および基体層22が接合して一体化する。湿紙側層25を形成する際には、ドクターバー35を用いて所定厚みの樹脂からなる湿紙側層25とする。なお、必要に応じてプライマや接着剤などを用いて、シュー側層21と湿紙側層25との接合性を向上させるのが好ましい。
シュー側層21および湿紙側層25の素材としては、ポリウレタン樹脂が好適であるが、ゴム,エラストマなども挙げられる。ポリウレタン樹脂としては、その物性面から熱硬化性ウレタン樹脂が好適であり、硬度が80〜98度(JIS−A)の範囲の樹脂が選択される。また、シュー側層21の硬度と湿紙側層25の硬度は、同じでも異なっていてもよい。
次に、樹脂を加熱硬化させたのち表面を研磨し、その後、湿紙側層25の表面23に経方向に複数の凹溝24を形成する。このようにして、ベルト4がマンドレルMの表面に形成される。
【0028】
その後、図11に示すように、治具36を用いてベルト4をマンドレルMから分離する。なお、予め、マンドレルMの表面に剥離剤を塗っておくか、または剥離シートを貼っておけば、ベルト4をマンドレルMから容易に分離することができる。
この場合、ベルト4の一方の端部を、マンドレルMより大きな径を有する治具36のリングに固定し、マンドレルMからリングを分離できるようにしておく。このようにすれば、ベルト4をマンドレルMから容易に分離することができる。
【0029】
次に、本実施形態における各種変形例について、図12ないし図15を参照して説明する。
図12は、第1の変形例にかかるシュープレス用ベルト4aの断面図で、図3相当図、図13は、第2の変形例にかかるシュープレス用ベルト4bを使用したシュープレス機構1aの概略断面図で、図2相当図、図14は、第3の変形例にかかるシュープレス用ベルト4cの断面図で、図3相当図、図15は、第4の変形例にかかるシュープレス用ベルト4dの断面図で、図3相当図である。
なお、前記実施形態と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0030】
図12ないし図15において、第1〜第4の変形例にかかるシュープレス用ベルト4a〜4dは、シュープレス機構のプレスロール2とその下方(または、上方)のシュー3との間に配置されて回転走行する。シュープレス用ベルト4a〜4dは、シュー3に接触するシュー側層21と、シュー側層21の外周に設けられた基体層22(または、22a)と、この基体層22(または、22a)の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。湿紙側層25の表面には、経方向(MD方向)に排水用の複数の凹溝24が形成されている。
基体層22(または、22a)は、一対の補強用基材11(または、11a)を有している。この一対の補強用基材11(または、11a)は、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域に、経方向に周回して配置されている。これにより、前記実施形態と同じ作用効果を奏する。
シュープレス用ベルト4a〜4dにおいて、補強用基材11,11aは格子状部材30により構成されている。基体層22(または、22a)は、格子状部材30からなる本体部27と、格子状部材30からなる補強用基材11(または、11a)と、格子状部材30の外周(または、内周)に配置され糸32が螺旋状に巻回された糸巻層33とを有している。これにより、前記実施例と同じ作用効果を奏する。
【0031】
図12に示すシュープレス用ベルト4aにおいて、基体層22aを構成する補強用基材11は、基体層22aの内周に配置されている。シュー側層21を形成した後、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1)に、経方向に格子状部材30をシュー側層21の外周に周回して取付けて、補強用基材11を形成する。
すなわち、シュー側層21の全周に基体層22aの本体部27を形成するための格子状部材30を取付ける前に、他の格子状部材30を周回して取付けることにより補強用基材11を形成することができる。これにより、シューエッジ当接部領域E1内の凹溝24と、中央領域E内の凹溝24とを、同じ凹溝深さで形成することができる。
【0032】
図13に示すシュープレス機構1aに使用されるシュープレス用ベルト4bにおいて、基体層22に含まれる補強用基材11aは、所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1と、シュープレス用ベルト4bの緯方向端部9を含む端部領域E2の両方の領域)に配置されている。
このようにすれば、シューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方の領域で、シュープレス用ベルト4bの剛性が高くなる。
したがって、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10より外側に延びている部分のシュープレス用ベルト4bの曲げ応力と耐クラック性がさらに向上して、曲げ変形をより効果的に抑制でき、且つクラックの発生も防止できる。
【0033】
図14に示すシュープレス用ベルト4cにおいて、湿紙側層25の表面23に経方向に形成されている複数の凹溝24は、断面曲面状(たとえば、円弧状)に形成されている。
凹溝の内周面にエッジ部があれば、このエッジ部に曲げ応力が集中してクラックが発生しやすくなる。ところが、この変形例では、シューエッジ部10の近傍に位置する凹溝24の内周面にはエッジ部がないので、シュープレス用ベルト4cがせん断応力を受けて曲げ変形しても、凹溝24の内周面に曲げ応力が集中することがなくなり、耐クラック性がさらに向上する。
シュープレス用ベルト4cでは、シューエッジ部10の近傍に位置する凹溝24を断面曲面状に形成しているが、すべての凹溝24を断面曲面状にした場合であってもよい。
【0034】
図15に示すシュープレス用ベルト4dにおいて、シュー3の幅方向両側のシューエッジ当接部領域E1以外に、複数の凹溝24が形成されている。
シュープレス用ベルト4dは、プレスロール2の駆動による「つれ回り」のためシューエッジ部10の近傍で曲げ変形が最も大きくなる。そこで、このシュープレス用ベルト4dは、シューエッジ部10の近傍では凹溝24が形成されていない。したがって、シューエッジ部10の近傍では凹溝にクラックが発生することがなく、且つ剛性も向上することになり、シュープレス用ベルト4dの耐久性がより向上する。
なお、シューエッジ部10の近傍の領域には凹溝24が形成されていないが、この領域には湿紙が配置されないので、水の排出機能に悪影響は少なく、シュープレス機構の搾水性に関しては問題とならない。
【実施例】
【0035】
前記構成による本発明のシュープレス用ベルトについて、以下に示す具体的な実施例1〜実施例5および比較例1を得た。
(実施例1)
工程1:駆動手段により回転可能な直径1,500mmのマンドレルの磨かれた表面に、予め、剥離剤(KS−61:信越化学工業製)を適宜塗布した。次に、マンドレルを回転させながら、ドクターバーを用いてマンドレルの表面に熱硬化性ウレタン樹脂を1mm厚みに塗布し、マンドレルを回転させたまま室温で10分間放置した。
ここで、熱硬化性ウレタン樹脂は、TDI系プレポリマー(タケネートL2395[武田製薬製])と、DMTDAを含有する硬化剤(ETHACURE300[アルベマール社製])とを、H/NCO当量比が0.97となるように混合したものである。なお、ETHACURE300は、3,5−ジメチルチオ2,4−トルンジアミンと、3,5−ジメチルチオ2,6−トルンジアミンとの混合物である。
次に、マンドレルに付属している加熱装置によって、熱硬化性ウレタン樹脂を70℃で30分間加熱し硬化させて、シュー側層を形成した。
【0036】
工程2:PET繊維の5,000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を緯糸とし、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を経糸とし、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされてなる格子状部材(緯糸密度は4本/cm、経糸密度は1本/cm)を準備した。
複数枚物の格子状部材を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、シュー側層の外周全体に1層配置して、基体層の本体部を形成した。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1のみに、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。
引続き、この格子状部材の外周に、PET繊維の7,000dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmのピッチで巻き付けて、糸巻層を形成した。その後、樹脂が基体層の格子状部材と糸巻層の隙間にゆきわたって隙間を塞ぐ程度に樹脂を塗ることにより隙間を目止めして、基体層を形成した。
【0037】
工程3:基体層を構成する糸巻層の上から、シュー側層に用いた樹脂と同じ熱硬化性ウレタン樹脂を、5.5mm厚に含浸コートし、100℃で5時間加熱硬化させて湿紙側層を形成した。
その後、この湿紙側層の表面を研磨してベルトの全厚みが略5.0mmになるようにし、次いで、回転刃で、断面矩形の凹溝をベルトの経方向(MD方向)に形成することにより、本発明のシュープレス用ベルトを得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1の工程2において、複数枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、シュー側層の外周全体に1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方に、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、補強用基材が形成される。引続き、この補強用基材の外周に、実施例1の工程2と同様にして糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
なお、実施例2の工程2で、複数枚物の格子状部材を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が重なり合う程度に、シュー側層の外周に2層配置して、基体層の本体部を形成してもよい。
【0039】
(実施例3)
実施例1の工程2において、シュー側層の外周に糸を螺旋状に巻回した後、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、1枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1のみに、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。引続き、この補強用基材の外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
【0040】
(実施例4)
実施例1の工程2において、シュー側層の外周に糸を螺旋状に巻回して、糸巻層を形成する。次いで、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、1枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方に、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。引続き、その外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
【0041】
(実施例5)
実施例1の工程3において、ほぼ矩形で溝底が断面円弧状の凹溝を、ベルトの経方向(MD方向)に回転刃で形成することにより、本実施例にかかるシュープレス用ベルトを得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1の工程2において、複数枚物の格子状部材をシュー側層の外周に配置した。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、格子状部材をシュー側層の外周に1層配置した。引続き、その外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。したがって、この比較例1のシュープレス用ベルトには、補強用基材は形成されていない。
【0043】
下記の表1は、実施例1〜実施例5,比較例1において、シュープレス用ベルトの耐クラック性,曲げ応力などを示している。
[物性の評価]
上述のようにして得られたシュープレス用べルトのサンプルの物性を測定して、表1に示すデータを得た。なお、サンプルとしては、シューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の境界部分が、サンプルのほぼ中央に配置するように矩形にサンプリングを行い、この矩形サンプルを物性測定の対象物とした。耐クラック性および曲げ応力(剛性)の測定方法は、下記のとおりである。
【0044】
(1)耐クラック性
図16は、耐クラック性(表1に記載)と摩耗性(表2に記載)を調べるための実験装置の概略図である。
この実験装置を用いて耐クラック性を測定する場合、シュープレス用ベルトのサンプルSとしては、シュープレス用ベルトを横横断方向(凹溝と直角に交わる方向)に切取り、このサンプルSの両端部を、クランプハンド51,51(図16)で固定した。
サンプルSは、回転ロール52とプレスシュー53に挟まれており、サンプルSの外周面が回転ロール52に接するようになっている。プレスシュー53を回転ロール52の方向に矢印Gに示すように移動させることにより、サンプルSは36kg/cm2の圧力で加圧される。
サンプルSの両端部がクランプハンド51,51でそれぞれ挟持された状態で、クランプハンド51,51が、互いに連動して矢印Bに示すように左右方向に往復移動する。サンプルSに掛けられる張力は3kg/cmで、往復速度は40cm/秒である。
サンプルSの往復運動中に、そのシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方が回転ロール52に接するように、サンプルSの長さが調整されている。
この実験装置により、サンプルSが往復運動を繰り返し、サンプルSの凹溝底部とその縁部にクラックが生じるまでの往復回数を測定した。その後、サンプルSの外周面の凹溝間に位置する凸部表面について、ヘアクラックの発生状況を観察した。
【0045】
(2)曲げ応力(剛性の評価)
図17は、曲げ応力を調べるための実験装置の概略図である。この実験装置を用いて曲げ応力を測定し、剛性の評価を行なった。
シュープレス用ベルトの厚み方向の曲げ応力(シューエッジ当接部領域でベルトが変形される力)については、図17に示すような3点曲げ測定により測定した。シュープレス用ベルトのサンプルSは、その凹溝が紙面垂直方向に複数形成され、凹溝と直交する方向を、図17の左右方向としている。
試験条件は下記の通りである。
・サンプルSのサイズ:150mm×25mm
・支点間距離L:50mm
・中央部押込速度V:50mm/min
【0046】
【表1】
【0047】
表1から分かるように、実施例1〜実施例5にかかるサンプルSは、比較例1にかかるサンプルと比較して、耐クラック性と曲げ応力が向上している。
【0048】
本発明では、補強用基材を含む基体層に格子状部材30が使用されている。この格子状部材30の摩耗性を実験装置(図16)で測定し、その結果を表2に示す。
図16に示す実験装置では、サンプルSにはプレスシュー53側に強い屈曲が与えられるので、格子状部材の緯糸と経糸の交差部には屈曲による応力が生じる。一方、サンプルSにおいて、回転ロール52側には、格子状部材と糸巻層があるが、屈曲による応力はそれほど大きくない。したがって、この実験装置で、格子状部材の緯糸と経糸の交差部における摩耗の程度を調べることができる。
この実験装置により、実施例1a〜実施例3a,比較例1aに関して、往復移動回数50万回まで実験し、実験後のサンプルSの経方向および緯方向の切断強力を測定することにより、サンプルSの格子状部材の摩耗性を観察した。なお、サンプルSに掛けられる張力は3kg/cm,圧力は36kg/cm2,移動速度は40cm/秒である。
実施例1a〜実施例3a,比較例1aの切断強力と格子状部材の摩耗性を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、実施例1a〜実施例3aでは、格子状部材における緯糸が経糸よりも摩耗しにくくなっているので、比較例1aと比較して、特に緯糸の耐摩耗性が優れていることが分かる。
実施例1a〜実施例3aの格子状部材では、緯糸と交差している経糸の方が摩耗しやすい糸なので、実験中にサンプルSが屈曲して緯糸と経糸の交差部に摩擦が生じた場合に、経糸が優先的に摩耗する。その結果、緯糸の損傷を少なくすることができ、緯糸の切断強力が維持されて、シュープレス用ベルトの緯方向(CMD方向)の寸法安定性が保持される。
【0051】
以上説明したように、基体層に格子状部材30を使用した場合には、この格子状部材30は、織られていないので織物と比較して剛性が低くて柔らかい。そのため、基体層に格子状部材30が使用されたシュープレス用ベルトは、プレスロール2の駆動によるつれ回りのため曲がりやすい。特に、シューエッジ当接部領域E1のベルト部分での曲げ変形が最も大きい。
そこで、本発明のシュープレス用ベルト4,4a〜4dでは、補強用基材11,11aを、シューエッジ当接部領域E1のみに、または、シューエッジ当接部領域E1とその外方の端部領域E2の両方に配置して、基体層22,22aを構成している。
これにより、基体層22,22aにおいて、最も曲げ変形の起こりやすい部分(すなわち、シューエッジ当接部領域E1のベルト部分)の剛性が部分的に高められる。
その結果、シュープレス用ベルト4,4a〜4dの曲げ応力が向上して、曲げ変形が抑制されるとともに、耐クラック性が向上してクラックの発生を防止し、シュープレス用ベルト4,4a〜4dの耐久性を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態(変形例,実施例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のシュープレス用ベルトは、抄紙機を構成するシュープレス機構、特にプレススリーブタイプのシュープレス機構に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1ないし図17は本発明を説明するための図で、図1は、シュープレス機構の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2ないし図11は本発明の一実施形態を示す図で、図2は、シュープレス機構の概略断面図である。
【図3】図2のIII部拡大図で、シュープレス用ベルトの断面図である。
【図4】シュープレス用ベルトに設けられる格子状部材の部分拡大図である。
【図5】シュープレス用ベルトの製造手順を示す説明図である。
【図6】シュー側層を形成する工程1を示す図で、図6(A),(B)は、それぞれ側面図,斜視図である。
【図7】基体層を設ける工程2を示す図で、工程2のうち、格子状部材を配置する工程を示す斜視図である。
【図8】工程2のうち、補強用基材を設ける工程を示す斜視図である。
【図9】工程2のうち、糸巻層を形成する工程を示す斜視図である。
【図10】工程2のうち、糸巻層の形成後に接合を行う工程を示す斜視図である。
【図11】シュープレス用ベルトをマンドレルから分離する工程を示す正面図である。
【図12】第1の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図13】第2の変形例にかかるシュープレス用ベルトを使用したシュープレス機構の概略断面図で、図2相当図である。
【図14】第3の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図15】第4の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図16】耐クラック性と摩耗性を調べるための実験装置の概略図である。
【図17】曲げ応力を調べるための実験装置の概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1a シュープレス機構
2 プレスロール
3 シュー
4,4a〜4d シュープレス用ベルト
9 緯方向端部
10 シューエッジ部
11,11a 補強用基材
21 シュー側層
22,22a 基体層
24 凹溝
25 湿紙側層
27 本体部
30 格子状部材
31a 経糸
31b 緯糸
31c 交差部
32 糸
33 糸巻層
E1 所定領域(シューエッジ当接部領域)
E2 所定領域(端部領域)
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙用のシュープレス機構に使用されるシュープレス用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
紙の原料から水分を除去する抄紙機は、ワイヤーパートとプレスパートとドライヤーパートとを備えている。これらワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートは、湿紙の搬送方向に沿ってこの順番に配置されている。
プレスパートにはプレス装置が配置され、このプレス装置は、湿紙の搬送方向に沿って直列に並んで配置された複数のプレス機構を備えている。
抄紙機において、湿紙は、ワイヤーパート,プレスパートおよびドライヤーパートにそれぞれ配設され吸水性フェルトからなる湿紙搬送用ベルトに次々と受け渡されながら搬送される。湿紙は、プレスパートのプレス機構で水分を搾り出され(搾水され)、その後、ドライヤーパートで乾燥される。
【0003】
プレス機構には、ロールプレス機構とシュープレス機構とがある。ロールプレス機構は、湿紙を挟持した湿紙搬送用ベルトをロールとロールとで挟みながら加圧する機構である。シュープレス機構は、湿紙を挟持した湿紙搬送用ベルトをプレスロールとシューとで挟みながら加圧する機構である。
シュープレス機構は、ロールプレス機構と比較して、プレスの加圧部(ニップ)のプレスゾーンを広く取れることから、加圧時間が長くなって搾水性に優れているという利点を有しているので、近年は多く採用されている。
【0004】
本出願人は、特許文献1(特開2005−307421号公報)で、シュープレス機構に使用されるシュープレス用ベルトを提案している。このシュープレス用ベルトは、基体層と湿紙側層とシュー側層とを有し、シュープレス機構のプレスロールとシューとの間に配置されて回転走行する無端環状のベルトである。
【特許文献1】特開2005−307421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のシュープレス用ベルトやその他一般的なシュープレス用ベルトは、シュープレス機構のプレスロールとシューとの間に配置され、ベルトのシュー当接面が、シューの上面に接触しながら経方向(MD方向:回転方向)に走行する。
シュープレス用ベルトの幅方向(CMD方向)の寸法(ベルト緯寸法)は、シューの幅方向の寸法(シュー緯寸法)より大きい。そして、シュープレス用ベルトの走行は、プレスロールの駆動に伴い湿紙搬送用ベルトを介して動力が伝達されるいわゆる「つれ回り」であるため、シュープレス用ベルトには、加圧部を移動するときにせん断応力(一種の曲げ応力)が働くことになる。
そのため、この加圧部での曲げ変形が長時間に渡って繰り返されても、疲労によりシュープレス用ベルトにクラック(特に、経方向のクラック)が発生しないような技術が求められていた。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域のベルト部分の剛性を部分的に高めることにより、ベルトの曲げ応力と耐クラック性を向上させて、曲げ変形を抑制するとともにクラックの発生を防止して、ベルトの耐久性を向上させることができるシュープレス用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明は、シュープレス機構のプレスロールとその下方または上方のシューとの間に配置されて回転走行するシュープレス用ベルトであって、このシュープレス用ベルトは、前記シューに接触するシュー側層と、このシュー側層の外周に設けられた基体層と、この基体層の外周に形成された湿紙側層とを備え、前記基体層は一対の補強用基材を有し、この一対の補強用基材は、前記シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域に経方向に周回して配置されている。
たとえば、前記補強用基材は、前記基体層の外周および内周の一方または両方に配置されている。
前記補強用基材は、前記シュープレス用ベルトにおける前記シューエッジ部と当接するシューエッジ当接部領域のみに配置されているか、または、このシューエッジ当接部領域と、前記シュープレス用ベルトの緯方向端部を含む端部領域との両方に配置されているのが好ましい。
前記湿紙側層の表面には経方向に複数の凹溝が形成され、この凹溝は断面曲面状に形成されているのが好ましい。
なお、前記複数の凹溝は、前記シューの幅方向両側の前記シューエッジ当接部領域以外に形成されている場合であってもよい。
前記補強用基材は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材により構成され、前記基体層は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材からなる本体部と、前記格子状部材からなる前記補強用基材と、前記格子状部材の外周または内周に配置され糸が螺旋状に巻回された糸巻層とを有しているのが好ましい。
また、前記格子状部材は前記緯糸が前記経糸よりも摩耗しにくくなっているのが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明にかかるシュープレス用ベルトは、上述のように構成したので、シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域のベルト部分の剛性が部分的に高くなって、ベルトの曲げ応力と耐クラック性が向上し、曲げ変形を抑制するとともにクラックの発生を防止して、ベルトの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明にかかるシュープレス用ベルトについて説明する。
図1ないし図17は本発明を説明するための図で、図1は、シュープレス機構の概略構成を示す斜視図である。図2ないし図11は本発明の一実施形態を示す図で、図2は、シュープレス機構の概略断面図、図3は、図2のIII部拡大図で、シュープレス用ベルトの断面図である。
図1ないし図3に示すように、シュープレス機構1は、プレスロール2と、プレスロール2の下方(または、上方)に設けられたシュー3とを備えている。シュープレス用ベルト4(以下、ベルト4と記載)が、プレスロール2とシュー3との間に配置されて回転走行する。複数のシュープレス機構1を、湿紙5の搬送方向に沿って直列に並べて配置することにより、抄紙機のプレスパートが構成される。
【0010】
シュープレス機構1には無端環状のベルト4が使用されており、このベルト4は、プレスロール2とシュー3との間を走行する。シュープレス機構1としては、ベルト4が複数のロールに巻き付けられるオープンタイプのシュープレス機構と、ベルト4が中空の案内シェルに案内支持されたプレススリーブタイプのシュープレス機構とがある。
吸水性フェルトからなる湿紙搬送用ベルト6とこれに支持された湿紙5は、ほぼ同一速度で同一方向に搬送され、加圧部(ニップ)8において、ベルト4上に位置した状態でプレスロール2とシュー3とにより加圧される。その結果、湿紙5中の水分が搾水され、この水分は、湿紙搬送用ベルト6に吸収されるとともに水分の一部はベルト4の凹溝24内を流れて排出される。
プレススリーブタイプのシュープレス機構に使用されるベルト4は、オープンタイプのシュープレス機構に使用されるベルトと比較して、抄速や加圧部8のニップ圧およびニップ回数の増加などの使用条件が過酷になるので、ユーザーからは、ベルト4の耐久性の向上が強く求められている。
【0011】
ベルト4は、加圧部8において、シュー3の上面7と湿紙5を支持する湿紙搬送用ベルト6との間に位置して、経方向(MD方向)に走行する。ベルト4の幅方向(緯方向:CMD方向)の寸法(ベルト緯寸法W1)は、シュー3の幅方向(緯方向)の寸法(シュー緯寸法W2)より大きい。
したがって、ベルト4は、その両側の緯方向端部9が外側に延びた状態におかれ、緯方向の一方側のシューエッジ部10から他方側のシューエッジ部10までの間で、シュー3の上面7と接触する。
その結果、ベルト4は、その中央部の中央領域Eと、中央領域Eより外側に位置する一対のシューエッジ当接部領域E1と、一対の端部領域E2とに区分することができる。端部領域E2は、シューエッジ当接部領域E1より外側に位置して、ベルト4の緯方向端部9を含んでいる。
中央領域E1では、ベルト4はシュー3の上面7と接触する。シューエッジ当接部領域E1内にシューエッジ部10が位置している。したがって、この領域E1におけるベルト4は、シューエッジ部10より中央側ではシュー3の上面7と接触するが、シューエッジ部10より外側では接触しない。端部領域E2にはシュー3がないので、この領域E2ではベルト4はシュー3とは接触しない。
【0012】
ベルト4は、シュー3に接触するシュー側層21と、シュー側層21の外周に設けられた基体層22と、基体層22の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。湿紙側層25の表面23には、経方向(MD方向)に排水用の複数の凹溝24が形成されている。なお、湿紙側層25には、凹溝が形成されていない場合であってもよい。
基体層22は一対の補強用基材11を有している。一対の補強用基材11は、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(本実施形態では、シューエッジ当接部領域E1) に、経方向(MD方向)に周回して配置されている。
ベルト4に一対の補強用基材11を設けたので、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1)のベルト部分の剛性が部分的に高くなる。
したがって、ベルト4は、曲げ応力が向上して曲げ変形が抑制され、且つ、耐クラック性が向上してクラック(特に、経方向のクラック)の発生を防止し、これにより、ベルト4の耐久性を向上させることができる。
【0013】
補強用基材11は、基体層22の外周(プレスロール2側)および内周(シュー3側)の一方または両方(本実施形態では、外周)に配置されている。本実施形態のように、補強用基材11は、基体層22の外周に配置する方が好ましい。
すなわち、基体層22の外周に湿紙側層25を形成する際に、予め補強用基材11が基体層22を周回して巻き付け支持した状態におかれるので、基体層22の外周に湿紙側層25をより安定して形成することができる。反面、シューエッジ部10と当接するシューエッジ当接部領域E1内の湿紙側層25に複数の凹溝24を形成する場合には、その溝底と補強用基材11との間隔が狭くなるので、耐クラック性のためには当該領域E1内の凹溝深さは中央領域Eの凹溝深さよりも浅く形成する場合がある。
補強用基材11は、ベルト4における、シューエッジ部10と当接するシューエッジ当接部領域E1のみに配置されている。これにより、ベルト4のシューエッジ当接部領域E1のベルト部分の剛性が部分的に高くなるので、ベルト4の曲げ応力と耐クラック性が向上する。
【0014】
なお、変形例として、補強用基材11を基体層22の内周に配置すれば、シューエッジ当接部領域E1内の凹溝と、中央領域E内の凹溝とを、同じ凹溝深さで形成することができる。
他の変形例として、補強用基材11を基体層22の外周と内周の両方に配置すれば、シューの幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応するシューエッジ当接部領域E1のベルト部分の剛性が部分的にさらに高まるので、ベルト4の曲げ応力と耐クラック性をさらに向上させることができる。
【0015】
図4は、ベルト4に設けられる格子状部材30の部分拡大図である。
図3,図4に示すように、補強用基材11は、複数の経糸31aと複数の緯糸31bが格子状に組み合わされた格子状部材30により構成されている。格子状部材30において、複数の経糸31aと複数の緯糸31bは、格子状に上下に重なり且つ交差部31cで接合されているが織物の構造にはなっていない。
取付け前の格子状部材30としては、好ましくは、0.5m〜1.0m幅の有端帯状体がロール状に巻かれた状態のものを使用し、取付け時には、ロール状部材から有端帯状の格子状部材30を真っ直ぐに引き出して、マンドレルMの軸線方向に沿って複数枚並べて配置する。
基体層22は、格子状部材30からなる本体部27と、格子状基材30からなる補強用基材11と、格子状部材30の外周に配置され糸32が螺旋状に巻回された糸巻層33とを備えている。
【0016】
補強用基材11と本体部27には無端織物を使用してもよいが、本実施形態では、格子状部材30を使用するとともに、経糸31aと緯糸31bとの交差部31cが接合されている。これにより、ベルト4の使用時に、格子状部材30の交差部31cに応力が集中してもクラックが生じにくくなって、耐クラック性が向上する。
また、交差部31cが接合されているので、ベルト4の製造時に格子状部材30を取付ける際に、経糸31aと緯糸31bの位置ずれがなくなり、格子状部材30を容易に取付けることができ、作業性がよい。
格子状部材30は、緯糸31bが経糸31aよりも摩耗しにくくなっている。ベルト4を長時間使用すると、格子状部材30の交差部31cの接合が剥がれてしまって経糸31aと緯糸31bの間で摩擦が起きる。そこで、緯糸31bを経糸31aよりも摩耗しにくくしたので、緯糸31bが早期に摩耗することがなくなり、ベルト4の強度と緯方向の寸法安定性が向上する。
【0017】
図5は、ベルト4の製造手順を示す説明図で、図5(F)は、図5(E)のF部拡大図である。図6は、シュー側層21を形成する工程1を示す図で、図6(A),(B)はそれぞれ側面図,斜視図である。
図7は、基体層22を設ける工程2を示す図で、工程2のうち、格子状部材30を配置する工程を示す斜視図である。図8は、工程2のうち、補強用基材11を設ける工程を示す斜視図である。
図9は、工程2のうち、糸巻層33を形成する工程を示す斜視図、図10は、工程2のうち、糸巻層33の形成後に接合を行う工程を示す斜視図、図11は、ベルト4をマンドレルMから分離する工程を示す正面図である。
【0018】
ベルト4を製造するには、マンドレルMを使用し、シュー側層21,基体層22,湿紙側層25の順に形成していく。
まず最初に、図5(A),図6に示すように、工程1において、表面の磨かれたマンドレルMの表面に、シュー側層21を形成する。この場合、予め、マンドレルMの表面に剥離剤を塗っておくか、または剥離シートを貼っておくとよい。シュー側層21は、塗布機(たとえば、ドクターバー,コーターバーなど)Tを用いて、0.5〜2.0mm程度の厚さで形成される。
マンドレルMの表面を磨いておけば、シュー3(図1)に強く接触した状態で常時滑走するベルト4のシュー側層21の平滑性を確保することができ、また、製造工程を経た後のベルト4を、マンドレルMから容易に離脱させることができる。なお、マンドレルMに加熱装置を設けて、シュー側層21を構成する樹脂の硬化を促進できるようにするのが好ましい。
【0019】
次に、図5(B)〜(D),図7ないし図10に示す工程2で、シュー側層21の外周に基体層22を設ける。そのために、図5(B),図7に示すように、格子状部材30(図4)をシュー側層21の外周に取付ける。
格子状部材30の交差部31cは、樹脂接着や溶融処理などにより接合されている。格子状部材30の緯糸31bは、経糸31aよりも摩耗しにくい材質のものが好ましい。
そのため、経糸31aとしては、たとえば、炭素繊維やガラス繊維などの無機繊維、木綿などの天然繊維、または合成繊維などの素材からなる撚糸または紡績糸などの種々の糸が挙げられる。合成繊維としては、たとえば、ポリエステル綿,ポリエステルのマルチフィラメント,アクリル綿,アクリルのマルチフィラメントなどが挙げられる。
緯糸31bとしては、たとえば、ナイロン,PET(ポリエチレンテレフタラート),芳香族ポリアミド,芳香族ポリイミド,高強度ポリエチレンなどの高いモジュラス,高弾性率の合成繊維,ポリエステルのマルチフィラメントの撚糸、または、ポリエステル綿からなる紡績糸などが挙げられる。
格子状部材30の格子の強度は50〜250kg/cmの範囲が好ましく、また、1%モジュラスは5〜40kg/cmの範囲であるのが好ましい。
【0020】
図5(B),図7に示すように、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、マンドレルM上のシュー側層21の外周に配置して、基体層22の本体部27を形成する。
複数枚物の格子状部材30を配置する場合には、たとえば、上述のように0.5m〜1.0m幅の有端帯状体がロール状に巻かれた状態の部材を使用する。取付け時には、このロール状部材から有端帯状の格子状部材30を真っ直ぐに引き出し、ベルト4の幅寸法に対応する所定長さ(ベルト4の幅と同じ長さ寸法)になるように順次切断して、複数枚物の格子状部材30を得る。
次いで、ベルト4の強度を向上させるために、帯状の各格子状部材30の緯糸31bがマンドレルMの軸線方向に沿い、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が互いに重なり合うように(図7)、シュー側層21の外周に配置するのが好ましい。
なお、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が、互いに離隔する場合、または互いに当接する場合であってもよい。また、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、シュー側層21の外周に螺旋状に巻き付けてもよい。その場合は、格子状部材30自体の幅方向の端部同士が互いに重なり合うように配置すれば、ベルト4の強度が向上するので好ましい。
格子状部材30をシュー側層21の外周に配置する際には、シュー側層21が完全に硬化する前に、マンドレルMを少しづつ回転させ、緯糸31bがマンドレルMの軸線方向に沿うように配置する。
【0021】
次に、図5(C),図8に示すように、基体層22の本体部27の外周に格子状部材30を周回するように重ねて、一対の補強用基材11を設ける。補強用基材11は、シューエッジ当接部領域E1(図2)内に配置される。補強用基材11には、基体層22の本体部27用と同じ(または、異なる)格子状部材30が使用されている。本体部27の格子状部材30と、補強用基材11の格子状部材30とが異なる例としては、たとえば、両方の格子状部材30において、互いのメッシュが異なる第1のケース、経糸31a同士の太さが異なる第2のケース、緯糸31b同士の太さが異なる第3のケース、第1のケースないし第3のケースのうち二以上のケースが組合わさった場合などがある。
補強用基材11を設けるために、一枚物または複数枚物の格子状部材30を、その緯糸31bがマンドレルMの軸線方向を向くように、基体層22の本体部27の外周で且つシューエッジ当接部領域E1内の所定位置に周回して配置する。ベルト4の強度を向上させるために、複数枚物の補強用基材11を、シューエッジ当接部領域E1に経方向に複数回周回して設ける。
こうして、一対の補強用基材11を、シューエッジ当接部領域E1に経方向に延びて周回して重ねて配置する。
【0022】
次に、図5(D),図9に示すように、マンドレルMを回転させながら、糸供給装置に設けられた一つまたは複数のボビン34から糸32を引き出して、糸32を格子状部材30の外周に螺旋状に巻回して、糸巻層33を形成する。
糸供給装置は、ボビン34を移動させるための移動装置を備えている。この移動装置は、ボビン34から引き出される糸32を螺旋状に巻き付けて糸巻層33を形成しながら、この作業に連動して、ボビン34をマンドレルMの軸線方向に沿って移動させる。
【0023】
糸巻層33の糸32の素材としては、たとえば、ナイロン,PET,芳香族ポリアミド,芳香族ポリイミド,高強度ポリエチレンなどの高強力,高モジュラス,高弾性率の合成繊維からなる、モノフィラメント糸,マルチフィラメント糸またはこれらの撚糸などが挙げられる。
糸32の素材が、ナイロンまたはPETのマルチフィラメント(7,000dtex(デシテックス))の場合には、糸32を、10本/5cm〜50本/5cmの範囲で螺旋状に巻回するのが好ましい。糸32の素材が、芳香族ポリアミドからなるマルチフィラメント(3,000dtex)の場合には、糸32を、15本/5cm〜60本/5cmの範囲で螺旋状に巻回するのが好ましい。また、糸32の強度は、100kg/cm〜300kg/cmの範囲であるのが好ましい。
こうして、シュー側層21の外周全体に設けられ、格子状部材30からなる本体部27と、格子状部材30からなる補強用基材11と、格子状部材30の外周に配置された糸巻層33とを有する基体層22が構成される。
基体層22の本体部27と補強用基材11を形成している格子状部材30の外周全体を、糸巻層33が締付けるので、格子状部材30が安定した状態でシュー側層21の外周全体に位置決め保持され、また、ベルト4の経方向(MD方向)の強度が向上する。
【0024】
本発明では、格子状部材30をシュー側層21の全周に取付ける手順と、格子状部材30を所定領域に経方向に周回して取付けて一対の補強用基材11を形成する手順は、どちらを先に行う場合であってもよく、また、各格子状部材30は、単層(一層)であっても複数層であってもよい。
格子状部材30が複数層の場合には、格子状部材自体の幅方向の端部同士を互いに重ねた部分(または、この端部同士が互いに離隔する部分若しくは互いに当接する部分)が、複数層に渡って同じ場所にならないように配慮するのが好ましい。こうすれば、基体層22に不要な起伏が生じない。
【0025】
こうして、図9,図10に示すように、格子状部材30の外周全体に糸巻層33を形成して基体層22を構成する。その後、マンドレルMを回転させながら、基体層22を覆うように樹脂を塗る。この樹脂は、基体層22の格子状部材30と糸巻層33の各隙間に行き渡って隙間を塞いで目止めできる粘度を有する樹脂であるのが好ましい。
【0026】
上述の実施形態では、シュー側層21の外周に単層の格子状部材30を配置して本体部27を形成し、この本体部27の外周の一部に、一対の補強用基材11を構成する格子状部材30を配置し、さらに外周全体に糸巻層33を設けている。なお、下記(1)〜(4)で示す各種方法、または、後述する変形例,実施例の手順で基体層を構成する場合であってもよい。
たとえば、(1)まず、糸巻層33を形成し、その後、外周全体に格子状部材30を取付けて本体部27を形成し、一対の補強用基材11を構成する格子状部材30を、所定領域に経方向に周回して配置する方法がある。
(2)外周全体に取付けて本体部27を構成する格子状部材30を一層または複数層設け、また、補強用基材11を構成する格子状部材30を一層または複数層設ける方法がある。
(3)まず、糸巻層33を形成し、次に、格子状部材30を全周に配置して本体部27を形成し、格子状部材30を所定領域に経方向に周回して配置して補強用基材11を形成し、その後、糸巻層33を形成する方法がある。
(4)まず、格子状部材30を全周に配置して本体部27を形成し、次に、糸巻層33を形成し、その後、所定領域に格子状部材30を経方向に周回して配置して補強用基材11を形成し、最後に糸巻層33を形成する方法がある。
【0027】
基体層22を形成した後、図5(E),(F),図10に示すように、湿紙側層25(図3)を形成するとともに、断面矩形の複数の凹溝24を形成する工程3に移行する。
糸巻層33の外周に湿紙側層25を形成するための樹脂を、基体層22を通過させて含浸させる。すると、湿紙側層25の樹脂がシュー側層21の外周面に到達するので、シュー側層21,湿紙側層25および基体層22が接合して一体化する。湿紙側層25を形成する際には、ドクターバー35を用いて所定厚みの樹脂からなる湿紙側層25とする。なお、必要に応じてプライマや接着剤などを用いて、シュー側層21と湿紙側層25との接合性を向上させるのが好ましい。
シュー側層21および湿紙側層25の素材としては、ポリウレタン樹脂が好適であるが、ゴム,エラストマなども挙げられる。ポリウレタン樹脂としては、その物性面から熱硬化性ウレタン樹脂が好適であり、硬度が80〜98度(JIS−A)の範囲の樹脂が選択される。また、シュー側層21の硬度と湿紙側層25の硬度は、同じでも異なっていてもよい。
次に、樹脂を加熱硬化させたのち表面を研磨し、その後、湿紙側層25の表面23に経方向に複数の凹溝24を形成する。このようにして、ベルト4がマンドレルMの表面に形成される。
【0028】
その後、図11に示すように、治具36を用いてベルト4をマンドレルMから分離する。なお、予め、マンドレルMの表面に剥離剤を塗っておくか、または剥離シートを貼っておけば、ベルト4をマンドレルMから容易に分離することができる。
この場合、ベルト4の一方の端部を、マンドレルMより大きな径を有する治具36のリングに固定し、マンドレルMからリングを分離できるようにしておく。このようにすれば、ベルト4をマンドレルMから容易に分離することができる。
【0029】
次に、本実施形態における各種変形例について、図12ないし図15を参照して説明する。
図12は、第1の変形例にかかるシュープレス用ベルト4aの断面図で、図3相当図、図13は、第2の変形例にかかるシュープレス用ベルト4bを使用したシュープレス機構1aの概略断面図で、図2相当図、図14は、第3の変形例にかかるシュープレス用ベルト4cの断面図で、図3相当図、図15は、第4の変形例にかかるシュープレス用ベルト4dの断面図で、図3相当図である。
なお、前記実施形態と同一または相当部分には同一符号を付してその説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
【0030】
図12ないし図15において、第1〜第4の変形例にかかるシュープレス用ベルト4a〜4dは、シュープレス機構のプレスロール2とその下方(または、上方)のシュー3との間に配置されて回転走行する。シュープレス用ベルト4a〜4dは、シュー3に接触するシュー側層21と、シュー側層21の外周に設けられた基体層22(または、22a)と、この基体層22(または、22a)の外周に形成された湿紙側層25とを備えている。湿紙側層25の表面には、経方向(MD方向)に排水用の複数の凹溝24が形成されている。
基体層22(または、22a)は、一対の補強用基材11(または、11a)を有している。この一対の補強用基材11(または、11a)は、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域に、経方向に周回して配置されている。これにより、前記実施形態と同じ作用効果を奏する。
シュープレス用ベルト4a〜4dにおいて、補強用基材11,11aは格子状部材30により構成されている。基体層22(または、22a)は、格子状部材30からなる本体部27と、格子状部材30からなる補強用基材11(または、11a)と、格子状部材30の外周(または、内周)に配置され糸32が螺旋状に巻回された糸巻層33とを有している。これにより、前記実施例と同じ作用効果を奏する。
【0031】
図12に示すシュープレス用ベルト4aにおいて、基体層22aを構成する補強用基材11は、基体層22aの内周に配置されている。シュー側層21を形成した後、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10にそれぞれ対応する所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1)に、経方向に格子状部材30をシュー側層21の外周に周回して取付けて、補強用基材11を形成する。
すなわち、シュー側層21の全周に基体層22aの本体部27を形成するための格子状部材30を取付ける前に、他の格子状部材30を周回して取付けることにより補強用基材11を形成することができる。これにより、シューエッジ当接部領域E1内の凹溝24と、中央領域E内の凹溝24とを、同じ凹溝深さで形成することができる。
【0032】
図13に示すシュープレス機構1aに使用されるシュープレス用ベルト4bにおいて、基体層22に含まれる補強用基材11aは、所定領域(ここでは、シューエッジ当接部領域E1と、シュープレス用ベルト4bの緯方向端部9を含む端部領域E2の両方の領域)に配置されている。
このようにすれば、シューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方の領域で、シュープレス用ベルト4bの剛性が高くなる。
したがって、シュー3の幅方向両側のシューエッジ部10より外側に延びている部分のシュープレス用ベルト4bの曲げ応力と耐クラック性がさらに向上して、曲げ変形をより効果的に抑制でき、且つクラックの発生も防止できる。
【0033】
図14に示すシュープレス用ベルト4cにおいて、湿紙側層25の表面23に経方向に形成されている複数の凹溝24は、断面曲面状(たとえば、円弧状)に形成されている。
凹溝の内周面にエッジ部があれば、このエッジ部に曲げ応力が集中してクラックが発生しやすくなる。ところが、この変形例では、シューエッジ部10の近傍に位置する凹溝24の内周面にはエッジ部がないので、シュープレス用ベルト4cがせん断応力を受けて曲げ変形しても、凹溝24の内周面に曲げ応力が集中することがなくなり、耐クラック性がさらに向上する。
シュープレス用ベルト4cでは、シューエッジ部10の近傍に位置する凹溝24を断面曲面状に形成しているが、すべての凹溝24を断面曲面状にした場合であってもよい。
【0034】
図15に示すシュープレス用ベルト4dにおいて、シュー3の幅方向両側のシューエッジ当接部領域E1以外に、複数の凹溝24が形成されている。
シュープレス用ベルト4dは、プレスロール2の駆動による「つれ回り」のためシューエッジ部10の近傍で曲げ変形が最も大きくなる。そこで、このシュープレス用ベルト4dは、シューエッジ部10の近傍では凹溝24が形成されていない。したがって、シューエッジ部10の近傍では凹溝にクラックが発生することがなく、且つ剛性も向上することになり、シュープレス用ベルト4dの耐久性がより向上する。
なお、シューエッジ部10の近傍の領域には凹溝24が形成されていないが、この領域には湿紙が配置されないので、水の排出機能に悪影響は少なく、シュープレス機構の搾水性に関しては問題とならない。
【実施例】
【0035】
前記構成による本発明のシュープレス用ベルトについて、以下に示す具体的な実施例1〜実施例5および比較例1を得た。
(実施例1)
工程1:駆動手段により回転可能な直径1,500mmのマンドレルの磨かれた表面に、予め、剥離剤(KS−61:信越化学工業製)を適宜塗布した。次に、マンドレルを回転させながら、ドクターバーを用いてマンドレルの表面に熱硬化性ウレタン樹脂を1mm厚みに塗布し、マンドレルを回転させたまま室温で10分間放置した。
ここで、熱硬化性ウレタン樹脂は、TDI系プレポリマー(タケネートL2395[武田製薬製])と、DMTDAを含有する硬化剤(ETHACURE300[アルベマール社製])とを、H/NCO当量比が0.97となるように混合したものである。なお、ETHACURE300は、3,5−ジメチルチオ2,4−トルンジアミンと、3,5−ジメチルチオ2,6−トルンジアミンとの混合物である。
次に、マンドレルに付属している加熱装置によって、熱硬化性ウレタン樹脂を70℃で30分間加熱し硬化させて、シュー側層を形成した。
【0036】
工程2:PET繊維の5,000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を緯糸とし、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を経糸とし、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされてなる格子状部材(緯糸密度は4本/cm、経糸密度は1本/cm)を準備した。
複数枚物の格子状部材を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、シュー側層の外周全体に1層配置して、基体層の本体部を形成した。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1のみに、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。
引続き、この格子状部材の外周に、PET繊維の7,000dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmのピッチで巻き付けて、糸巻層を形成した。その後、樹脂が基体層の格子状部材と糸巻層の隙間にゆきわたって隙間を塞ぐ程度に樹脂を塗ることにより隙間を目止めして、基体層を形成した。
【0037】
工程3:基体層を構成する糸巻層の上から、シュー側層に用いた樹脂と同じ熱硬化性ウレタン樹脂を、5.5mm厚に含浸コートし、100℃で5時間加熱硬化させて湿紙側層を形成した。
その後、この湿紙側層の表面を研磨してベルトの全厚みが略5.0mmになるようにし、次いで、回転刃で、断面矩形の凹溝をベルトの経方向(MD方向)に形成することにより、本発明のシュープレス用ベルトを得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1の工程2において、複数枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、シュー側層の外周全体に1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方に、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、補強用基材が形成される。引続き、この補強用基材の外周に、実施例1の工程2と同様にして糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
なお、実施例2の工程2で、複数枚物の格子状部材を、緯糸がマンドレルの軸線方向に沿い、格子状部材自体の幅方向の端部同士が重なり合う程度に、シュー側層の外周に2層配置して、基体層の本体部を形成してもよい。
【0039】
(実施例3)
実施例1の工程2において、シュー側層の外周に糸を螺旋状に巻回した後、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、1枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1のみに、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。引続き、この補強用基材の外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
【0040】
(実施例4)
実施例1の工程2において、シュー側層の外周に糸を螺旋状に巻回して、糸巻層を形成する。次いで、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、1枚物の格子状部材(実施例1の工程2における、基体層の本体部用の格子状部材と同じ素材)を1層配置した。これにより、基体層の本体部が形成される。
次に、この格子状部材の外周に、さらに格子状部材を配置して補強用基材を形成した。この補強用基材に使用される格子状部材は、基体層の本体部に使用される格子状部材とは異なった構成を有している。すなわち、補強用基材の格子状部材において、緯糸と経糸は、PET繊維の500dtexのマルチフィラメント糸の撚糸である。そして、経糸が緯糸で挟まれ、経糸と緯糸の交差部がウレタン系樹脂接着により目止めされており、緯糸密度と経糸密度がそれぞれ4.5本/cmである。
この格子状部材を経方向に2回周回させた。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、シュープレス用ベルトにおけるシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方に、格子状部材をマンドレルの回転方向に巻き付けて2層配置した。これにより、基体層の補強用基材が形成される。引続き、その外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。
【0041】
(実施例5)
実施例1の工程3において、ほぼ矩形で溝底が断面円弧状の凹溝を、ベルトの経方向(MD方向)に回転刃で形成することにより、本実施例にかかるシュープレス用ベルトを得た。
【0042】
(比較例1)
実施例1の工程2において、複数枚物の格子状部材をシュー側層の外周に配置した。すなわち、格子状部材の緯糸がマンドレルの軸線方向に沿うようにし、格子状部材自体の幅方向の端部同士が互いに当接するように、格子状部材をシュー側層の外周に1層配置した。引続き、その外周に糸巻層を形成することにより、基体層が形成される。したがって、この比較例1のシュープレス用ベルトには、補強用基材は形成されていない。
【0043】
下記の表1は、実施例1〜実施例5,比較例1において、シュープレス用ベルトの耐クラック性,曲げ応力などを示している。
[物性の評価]
上述のようにして得られたシュープレス用べルトのサンプルの物性を測定して、表1に示すデータを得た。なお、サンプルとしては、シューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の境界部分が、サンプルのほぼ中央に配置するように矩形にサンプリングを行い、この矩形サンプルを物性測定の対象物とした。耐クラック性および曲げ応力(剛性)の測定方法は、下記のとおりである。
【0044】
(1)耐クラック性
図16は、耐クラック性(表1に記載)と摩耗性(表2に記載)を調べるための実験装置の概略図である。
この実験装置を用いて耐クラック性を測定する場合、シュープレス用ベルトのサンプルSとしては、シュープレス用ベルトを横横断方向(凹溝と直角に交わる方向)に切取り、このサンプルSの両端部を、クランプハンド51,51(図16)で固定した。
サンプルSは、回転ロール52とプレスシュー53に挟まれており、サンプルSの外周面が回転ロール52に接するようになっている。プレスシュー53を回転ロール52の方向に矢印Gに示すように移動させることにより、サンプルSは36kg/cm2の圧力で加圧される。
サンプルSの両端部がクランプハンド51,51でそれぞれ挟持された状態で、クランプハンド51,51が、互いに連動して矢印Bに示すように左右方向に往復移動する。サンプルSに掛けられる張力は3kg/cmで、往復速度は40cm/秒である。
サンプルSの往復運動中に、そのシューエッジ当接部領域E1と端部領域E2の両方が回転ロール52に接するように、サンプルSの長さが調整されている。
この実験装置により、サンプルSが往復運動を繰り返し、サンプルSの凹溝底部とその縁部にクラックが生じるまでの往復回数を測定した。その後、サンプルSの外周面の凹溝間に位置する凸部表面について、ヘアクラックの発生状況を観察した。
【0045】
(2)曲げ応力(剛性の評価)
図17は、曲げ応力を調べるための実験装置の概略図である。この実験装置を用いて曲げ応力を測定し、剛性の評価を行なった。
シュープレス用ベルトの厚み方向の曲げ応力(シューエッジ当接部領域でベルトが変形される力)については、図17に示すような3点曲げ測定により測定した。シュープレス用ベルトのサンプルSは、その凹溝が紙面垂直方向に複数形成され、凹溝と直交する方向を、図17の左右方向としている。
試験条件は下記の通りである。
・サンプルSのサイズ:150mm×25mm
・支点間距離L:50mm
・中央部押込速度V:50mm/min
【0046】
【表1】
【0047】
表1から分かるように、実施例1〜実施例5にかかるサンプルSは、比較例1にかかるサンプルと比較して、耐クラック性と曲げ応力が向上している。
【0048】
本発明では、補強用基材を含む基体層に格子状部材30が使用されている。この格子状部材30の摩耗性を実験装置(図16)で測定し、その結果を表2に示す。
図16に示す実験装置では、サンプルSにはプレスシュー53側に強い屈曲が与えられるので、格子状部材の緯糸と経糸の交差部には屈曲による応力が生じる。一方、サンプルSにおいて、回転ロール52側には、格子状部材と糸巻層があるが、屈曲による応力はそれほど大きくない。したがって、この実験装置で、格子状部材の緯糸と経糸の交差部における摩耗の程度を調べることができる。
この実験装置により、実施例1a〜実施例3a,比較例1aに関して、往復移動回数50万回まで実験し、実験後のサンプルSの経方向および緯方向の切断強力を測定することにより、サンプルSの格子状部材の摩耗性を観察した。なお、サンプルSに掛けられる張力は3kg/cm,圧力は36kg/cm2,移動速度は40cm/秒である。
実施例1a〜実施例3a,比較例1aの切断強力と格子状部材の摩耗性を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示すように、実施例1a〜実施例3aでは、格子状部材における緯糸が経糸よりも摩耗しにくくなっているので、比較例1aと比較して、特に緯糸の耐摩耗性が優れていることが分かる。
実施例1a〜実施例3aの格子状部材では、緯糸と交差している経糸の方が摩耗しやすい糸なので、実験中にサンプルSが屈曲して緯糸と経糸の交差部に摩擦が生じた場合に、経糸が優先的に摩耗する。その結果、緯糸の損傷を少なくすることができ、緯糸の切断強力が維持されて、シュープレス用ベルトの緯方向(CMD方向)の寸法安定性が保持される。
【0051】
以上説明したように、基体層に格子状部材30を使用した場合には、この格子状部材30は、織られていないので織物と比較して剛性が低くて柔らかい。そのため、基体層に格子状部材30が使用されたシュープレス用ベルトは、プレスロール2の駆動によるつれ回りのため曲がりやすい。特に、シューエッジ当接部領域E1のベルト部分での曲げ変形が最も大きい。
そこで、本発明のシュープレス用ベルト4,4a〜4dでは、補強用基材11,11aを、シューエッジ当接部領域E1のみに、または、シューエッジ当接部領域E1とその外方の端部領域E2の両方に配置して、基体層22,22aを構成している。
これにより、基体層22,22aにおいて、最も曲げ変形の起こりやすい部分(すなわち、シューエッジ当接部領域E1のベルト部分)の剛性が部分的に高められる。
その結果、シュープレス用ベルト4,4a〜4dの曲げ応力が向上して、曲げ変形が抑制されるとともに、耐クラック性が向上してクラックの発生を防止し、シュープレス用ベルト4,4a〜4dの耐久性を向上させることができる。
【0052】
以上、本発明の実施形態(変形例,実施例を含む。以下同じ)を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明のシュープレス用ベルトは、抄紙機を構成するシュープレス機構、特にプレススリーブタイプのシュープレス機構に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1ないし図17は本発明を説明するための図で、図1は、シュープレス機構の概略構成を示す斜視図である。
【図2】図2ないし図11は本発明の一実施形態を示す図で、図2は、シュープレス機構の概略断面図である。
【図3】図2のIII部拡大図で、シュープレス用ベルトの断面図である。
【図4】シュープレス用ベルトに設けられる格子状部材の部分拡大図である。
【図5】シュープレス用ベルトの製造手順を示す説明図である。
【図6】シュー側層を形成する工程1を示す図で、図6(A),(B)は、それぞれ側面図,斜視図である。
【図7】基体層を設ける工程2を示す図で、工程2のうち、格子状部材を配置する工程を示す斜視図である。
【図8】工程2のうち、補強用基材を設ける工程を示す斜視図である。
【図9】工程2のうち、糸巻層を形成する工程を示す斜視図である。
【図10】工程2のうち、糸巻層の形成後に接合を行う工程を示す斜視図である。
【図11】シュープレス用ベルトをマンドレルから分離する工程を示す正面図である。
【図12】第1の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図13】第2の変形例にかかるシュープレス用ベルトを使用したシュープレス機構の概略断面図で、図2相当図である。
【図14】第3の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図15】第4の変形例にかかるシュープレス用ベルトの断面図で、図3相当図である。
【図16】耐クラック性と摩耗性を調べるための実験装置の概略図である。
【図17】曲げ応力を調べるための実験装置の概略図である。
【符号の説明】
【0055】
1,1a シュープレス機構
2 プレスロール
3 シュー
4,4a〜4d シュープレス用ベルト
9 緯方向端部
10 シューエッジ部
11,11a 補強用基材
21 シュー側層
22,22a 基体層
24 凹溝
25 湿紙側層
27 本体部
30 格子状部材
31a 経糸
31b 緯糸
31c 交差部
32 糸
33 糸巻層
E1 所定領域(シューエッジ当接部領域)
E2 所定領域(端部領域)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シュープレス機構のプレスロールとその下方または上方のシューとの間に配置されて回転走行するシュープレス用ベルトであって、
このシュープレス用ベルトは、前記シューに接触するシュー側層と、このシュー側層の外周に設けられた基体層と、この基体層の外周に形成された湿紙側層とを備え、
前記基体層は一対の補強用基材を有し、この一対の補強用基材は、前記シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域に経方向に周回して配置されていることを特徴とするシュープレス用ベルト。
【請求項2】
前記補強用基材は、前記基体層の外周および内周の一方または両方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項3】
前記補強用基材は、前記シュープレス用ベルトにおける前記シューエッジ部と当接するシューエッジ当接部領域のみに配置されているか、または、このシューエッジ当接部領域と、前記シュープレス用ベルトの緯方向端部を含む端部領域との両方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項4】
前記湿紙側層の表面には経方向に複数の凹溝が形成され、この凹溝は断面曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項5】
前記複数の凹溝は、前記シューの幅方向両側の前記シューエッジ当接部領域以外に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項6】
前記補強用基材は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材により構成され、
前記基体層は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材からなる本体部と、前記格子状部材からなる前記補強用基材と、前記格子状部材の外周または内周に配置され糸が螺旋状に巻回された糸巻層とを有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの項に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項7】
前記格子状部材は前記緯糸が前記経糸よりも摩耗しにくくなっていることを特徴とする請求項6に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項1】
シュープレス機構のプレスロールとその下方または上方のシューとの間に配置されて回転走行するシュープレス用ベルトであって、
このシュープレス用ベルトは、前記シューに接触するシュー側層と、このシュー側層の外周に設けられた基体層と、この基体層の外周に形成された湿紙側層とを備え、
前記基体層は一対の補強用基材を有し、この一対の補強用基材は、前記シューの幅方向両側のシューエッジ部にそれぞれ対応する所定領域に経方向に周回して配置されていることを特徴とするシュープレス用ベルト。
【請求項2】
前記補強用基材は、前記基体層の外周および内周の一方または両方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項3】
前記補強用基材は、前記シュープレス用ベルトにおける前記シューエッジ部と当接するシューエッジ当接部領域のみに配置されているか、または、このシューエッジ当接部領域と、前記シュープレス用ベルトの緯方向端部を含む端部領域との両方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項4】
前記湿紙側層の表面には経方向に複数の凹溝が形成され、この凹溝は断面曲面状に形成されていることを特徴とする請求項1,2または3に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項5】
前記複数の凹溝は、前記シューの幅方向両側の前記シューエッジ当接部領域以外に形成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかの項に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項6】
前記補強用基材は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材により構成され、
前記基体層は、経糸と緯糸により格子状をなし且つ交差部で接合された格子状部材からなる本体部と、前記格子状部材からなる前記補強用基材と、前記格子状部材の外周または内周に配置され糸が螺旋状に巻回された糸巻層とを有していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかの項に記載のシュープレス用ベルト。
【請求項7】
前記格子状部材は前記緯糸が前記経糸よりも摩耗しにくくなっていることを特徴とする請求項6に記載のシュープレス用ベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2007−321314(P2007−321314A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155612(P2006−155612)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】
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