説明

シュープレス用ベルト

【課題】優れた耐摩耗性、耐屈曲疲労性を備えるシュープレス用ベルトの提供。
【解決手段】補強繊維基材6とポリウレタン層2a、2b、2cとが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られるウレタンプレポリマーと、脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤および脂肪族トリオール化合物の混合物を硬化させて得られるポリウレタン層が含有されていることを特徴とする製紙用シュープレス用ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用シュープレスに利用されるシュープレス用ベルト、特に、クローズドタイプのシュープレスに利用されるシュープレス用ベルトに関する。更に詳しくは、特定の組成のポリウレタンからなる樹脂層を有し、耐摩耗性、耐クラック性、耐屈曲疲労性等の機械的特性に優れた製紙用シュープレス用ベルトである。
【背景技術】
【0002】
シュープレス工程では、図3に示すように、プレスロール1とシュー5との間に、ループ状のシュープレス用ベルト2を介在させたシュープレス機構を用い、プレスロール1とシュー5とで形成されるプレス部において、搬送フェルト3と湿紙4を通過させて脱水を行なっている。
【0003】
また、シュープレス用ベルト2は、図2に示すように、ポリウレタン層に封入(埋設)された補強繊維基材6の両面にポリウレタン外周層21,ポリウレタン内周層22を設けて構成され、更にプレスロール側のポリウレタン外周層21の表面には多数の凹溝24が形成されており、上記のプレス時に湿紙4から絞り出された水を凹溝24に保持し、更には保持した水をベルト自身の回転によりプレス部の外に移送するようになっている。そのため、プレスロール側のポリウレタン外周層21に設けられた凸部25は、プレスロール1による垂直方向の押圧力や、シュープレス領域におけるシュープレス用ベルトの摩擦、屈曲疲労に対して耐摩耗性、耐クラック性、耐屈曲疲労性等の機械的特性を改善することが要求されている。
【0004】
このような理由から、シュープレス用ベルト2のポリウレタン外周層21を形成する樹脂材料として、耐クラック性に優れるポリウレタンが広く使用されている。
【0005】
例えば、補強繊維基材とポリウレタンとが一体化してなり、前記ポリウレタンが外周層および内周層とで構成され、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン中に埋設された製紙用ベルトにおいて、外周層を構成するポリウレタンは、トリレン−ジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(三井化学株式会社製ハイプレンL:商品名)と、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤とを、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、1<H/NCO<1.15となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて得られるJIS A硬度が89〜94度のポリウレタンで、内周層を構成するポリウレタンは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミン65部とポリテトラメチレングリコール(PTMG)35部を含有する混合硬化剤とを、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、0.85≦H/NCO<1となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタンから形成されているシュープレス用ベルトが提案されている(特許文献1および特許文献2参照)。
【0006】
また、補強繊維基材とポリウレタンとが一体化してなり、前記ポリウレタンが外周層および内周層で構成され、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン中に埋設された製紙用ベルトにおいて、外周層および内周層を構成するポリウレタンは、トリレン−ジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(三井化学株式会社製ハイプレンL:商品名)と、ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤とを、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が0.97となる割合で、前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて形成したJIS A硬度が94〜95度のポリウレタンから形成されているシュープレス用ベルトが提案されている(特許文献3参照)。
【0007】
さらに、補強繊維基材とポリウレタンとが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン中に埋設されてなるシュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタンが、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有し、かつ、トリレン−ジイソシアネート(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、ジメチルチオトルエンジアミン(ETHACURE300)または4,4’−メチレンビス−(2−クロロアニリン){MOCA}より選ばれた硬化剤とを0.9≦H/NCO≦1.10となる割合で、前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて形成したJIS A硬度が93〜96度であるシュープレス用ベルト、および、前記ポリウレタンが、JIS A硬度90〜93度で、かつ、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有するポリウレタンと、JIS A硬度98度で、かつ、非反応性ポリジメチルシロキサン液状物を含有しないポリウレタンとの混合物とでジメチルチオトルエンジアミン硬化剤とを0.9≦H/NCO≦1.10となる割合で、前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて形成したJIS A硬度90〜93度のシュープレス用ベルトが提案されている(特許文献4参照)。
【0008】
【特許文献1】特許第3,698,984号公報
【特許文献2】特開2005−120571号公報
【特許文献3】特開2005−307421号公報
【特許文献4】特開2006−144139号公報
【0009】
前記特許文献1乃至4の実施例に記載されるシュープレス用ベルトは、試験片の両端がクランプハンドにより挟持され、クランプハンドが、連動して左右方向に往復移動可能に構成され、試験片における評価面が回転ロール側に向けられ、プレスシューが前記回転ロール方向に移動することにより試験片が加圧される耐クラック性を調べる装置を使用し、この装置により試験片に張力3kg/cm、圧力36kg/cm2、を掛けながら往復速度40cm/秒でクラックが生じるまでの往復回数を測定したところ、100万回を越えてもクラックは発生しないという優れたものであった。
【0010】
しかし、近年、紙の生産性向上に起因した運転速度の高速化やシュープレス用ベルトの幅が約10mと拡大、プレス部の高圧化等に伴い、シュープレス用ベルトの使用環境は極めて苛酷なものとなってきており、上記したような各種特性のより一層の改善が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、より優れた耐摩耗性、耐クラック性、耐屈曲疲労性等の機械的特性を備えるシュープレス用ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン層として下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタン層が含有されていることを特徴とする、製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【0013】
請求項2の発明は、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン層として下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタン層が含有されていることを特徴とする、製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物およびハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルより選ばれた硬化剤(B11)を60〜99.8モル%、分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B12)を0.1〜15モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【0014】
請求項3の発明は、前記(B)成分の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物(B11)が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールより選ばれた脂肪族ジオール化合物であり、活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)がトリメチロールプロパン、プロパントリオール(グリセリン)、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオールより選ばれた脂肪族トリオール化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【0015】
請求項4の発明は、前記(B)成分の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物(B12)が、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、3,5−ジメチルチオトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジメチルチオトルエン−2,6−ジアミン、4,4’−ビス(2−クロロアニリン)、4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン、N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレン−ビス(2,3−ジクロロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、ポリ(テトラメチレンオキシド)−ジ−p−アミノベンゾエート、フェニレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびキシレンジアミンより選ばれた二官能の有機ジアミン化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【0016】
請求項5の発明は、前記(B)成分の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物(B12)が、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサンおよびメラミンより選ばれた三官能以上の有機ポリアミン化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【0017】
請求項6の発明は、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層で形成された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン外周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン内周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【0018】
請求項7の発明は、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層、ポリウレタン中間層およびポリウレタン内周層で形成され、前記ポリウレタン中間層の両側には前記ポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層が積層された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン外周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン中間層およびポリウレタン内周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成され、補強繊維基材は、前記ポリウレタン中間層に埋設されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【0019】
請求項8の発明は、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層で形成された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン内周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン外周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルトを提供するものである。
【発明の効果】
【0020】
湿紙側に対向するシュープレス用ベルトのポリウレタン外周層のウレタンプレポリマー(A)として、p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)を使用し、活性水素基(H)を有する硬化剤(B)として、分子量が62〜1,000の脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤との混合物をポリウレタン層の主成分とすることで、脂肪族トリオール化合物の効果により、耐摩耗性に優れるポリウレタンを得ることができ、かつ、耐クラック性、耐屈曲疲労性の優れた機械的特性を備える製紙用シュープレス用ベルトが得られる。そのため、本発明のシュープレス用ベルトの耐久性は、現在使用されているシュープレス用ベルトの耐久性(通常2〜3ヶ月程度)よりも1.5倍以上の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
図1は本発明のシュープレス用ベルトの断面図で、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設されている。図1(a)はポリウレタン層が単一なもの、図1(b)はポリウレタン層が外周層(2a)と内周層(2b)の2層のもの、および図1(c)はポリウレタン層が外周層(2a)、中間層(2c)と内周層(2b)の3層のものを示す。
【0022】
いずれのシュープレス用ベルトにおいても、湿紙側に対向するシュープレス用ベルトのポリウレタン外周層(2a)は、(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤とを、前記硬化剤(B)の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマー(A)のイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が0.88≦H/NCO≦1.12となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を70〜140℃で2〜20時間加熱硬化させて得られるJIS A硬度が92〜100のポリウレタンが好ましい。
【0023】
補強繊維基材6としては、前記特許文献1〜特許文献4に記載された織布は勿論のこと、他の文献に記載された補強繊維基材も使用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維の5,000dtexマルチフィラメント糸の撚糸を緯糸、550dtexのマルチフィラメントを経糸として、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がポリウレタン接着により接合されてなる格子状素材である。繊維素材としては、ポリエチレンテレフタレートの代わりに、アラミド繊維、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6等のポリアミド繊維を使用しても良い。また、経糸と緯糸で素材の異なる繊維を使用しても良いし、経糸と緯糸の太さを800dtexおよび7,000dtex等と異なって使用してもよい。
【0024】
シュープレス用ベルトの外周層(2a)を形成するポリウレタンは、前述したように、下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とを硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が0.88≦H/NCO≦1.12となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタン層である。
【0025】
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
【0026】
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【0027】
前記ウレタンプレポリマー(A)原料の(a)成分のポリイソシアネート化合物として、主成分のp−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)およびトリレン−ジイソシアネート(TDI)より選ばれたポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物中の55〜100モル%、好ましくは75モル%以上で使用できる。PPDI、MDIおよびTDI以外のポリイソシアネート化合物は45モル%未満、好ましくは25モル%未満で併用できる。
【0028】
前記ウレタンプレポリマー(A)原料の(b)成分のポリオール化合物として、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれた高分子量のポリオール化合物は、ポリオール化合物中の65〜100モル%、好ましくは85モル%以上で使用できる。これら以外のポリオール化合物としては、ポリエチレンアジペート(PEA)、ポリカプロラクトンジオール(PCL)などが35モル%未満、好ましくは15モル%未満で併用できる。
【0029】
前記硬化剤(B)の主成分としては、分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)が75〜99.9モル%、好ましくは80〜99.5モル%用いられる。硬化剤従属成分としては分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)が25〜0.1モル%、好ましくは20〜0.5モル%用いられる。脂肪族トリオール化合物(B2)が0.1モル%未満ではポリウレタンの耐摩耗性向上が低く、25モル%より多いと市販品と比べて耐屈曲性の向上が低い。
【0030】
シュープレス用ベルトのポリウレタンは、図1(a)に示すように本発明のポリウレタンを単独で用いてもよいし、図1(b)、図1(c)に示すように積層構造の一部として用いてもよい。
【0031】
例えば、図1(b)に示すシュープレス用ベルトのように、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタンがポリウレタン外周層(2a)およびポリウレタン内周層(2b)で形成された製紙用ベルトにおいて、前記ポリウレタン外周層(2a)は、下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とを、硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が0.88≦H/NCO≦1.12となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を70〜140℃で2〜20時間加熱硬化させて得られるJIS A硬度が92〜100度のポリウレタンである。
【0032】
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
【0033】
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【0034】
なお、硬化剤(B1)成分は、分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物およびハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルより選ばれた硬化剤(B11)を60〜99.8モル%、分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B12)を0.1〜15モル%と併用して使用してもよい。
【0035】
前記ポリウレタン内周層(2b)を形成するポリウレタンは、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた硬化剤とを、硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、0.93<H/NCO<1.05となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を70〜140℃で2〜20時間加熱硬化させて得られるJIS A硬度が92〜100度のポリウレタンである。
【0036】
さらには、図1(c)に示すシュープレス用ベルトのように、補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層(2a)、ポリウレタン中間層(2c)およびポリウレタン内周層(2b)で形成された製紙用ベルトにおいて、ポリウレタン外周層(2a)を形成するポリウレタンは、前述のウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とを、前記硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が0.88≦H/NCO≦1.12となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を加熱硬化させて得られるJIS A硬度が92〜100度のポリウレタンである。ポリウレタン内周層(2b)およびポリウレタン中間層(2c)を形成するポリウレタンは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリテトラメチレングリコールとを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤とを硬化剤の活性水素基(H)と前記ウレタンプレポリマーのイソシアネート基(NCO)との当量比(H/NCO)の値が、0.93<H/NCO<1.05となる割合で前記ウレタンプレポリマーと前記硬化剤とが混合された組成物を70〜140℃で2〜20時間加熱硬化させて得られるJIS A硬度が92〜100度のポリウレタンである。
【0037】
製紙用シュープレス用ベルトを製造するには、例えば、離型剤を表面に塗布したマンドレルに、マンドレルを回転させながらポリウレタン内周層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物をマンドレル表面に0.8〜3.5mmの厚みにポリウレタン内周層が形成されるように塗布し、前記混合物塗布層を70〜140℃に昇温し、0.5〜1時間かけて前硬化させる。その上から補強繊維基材を配置し、次に中間層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を0.5〜2mm塗布し、基布に含浸させると共に前記ポリウレタン内周層と接着させ、前記混合物塗布層を50〜120℃で0.5〜1時間かけて前硬化して補強繊維基材で補強されたポリウレタン中間層を形成する。しかる後に、前記マンドレルを回転させながらポリウレタン外周層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を前記中間層表面に1.5〜4mmの厚みのポリウレタン外周層が形成されるように塗布・含浸させ、前記混合物塗布層を70〜140℃で2〜20時間かけて加熱硬化させる。しかる後、必要によりポリウレタン外周層に図2に示す溝を彫刻する。ポリウレタン外周層への溝の彫刻は、ポリウレタン層の加熱硬化途中で溝深さの高さ突起を表面に備える加熱エンボスロールを硬化中のポリウレタン外周層に圧接して刻んでもよい。なお、マンドレルは加熱装置を備える。
【0038】
その他に製紙用シュープレス用ベルトを製造する方法としては、例えば、離型剤を表面に塗布したマンドレルにポリウレタン内周層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を0.8〜3mmの厚みのポリウレタン層が形成されるよう塗布し、70〜140℃で0.5〜2時間かけて前硬化させ、ついで、硬化したポリウレタン層外面に補強繊維基材を配置した後、中間層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を、0.5〜2mm塗布し、基布に含浸させると共に内周層と接着させ、前記混合物塗布層を50〜120℃で0.5〜1時間かけて予備硬化し補強繊維基材で補強されたポリウレタン中間層を形成させる。次に、外周層を形成するウレタンプレポリマー(A)と硬化剤(B)の混合物を2〜4mmの厚みのポリウレタン外周層が形成されるよう塗布し、70〜140℃で4〜16時間かけて後硬化させる。ついで、ポリウレタン外周層面に切削バイトで溝を切削加工したのち、サンドペーパーまたはポリウレタン研磨布でポリウレタン外周面を研磨する方法がある。
【0039】
その他に製紙用シュープレス用ベルトを製造する方法としては、例えば、マンドレルの代わりに2本ロールを用いた方法もある。2本のロールの間にエンドレスの補強用繊維織物基材を展張し、先ず、補強用繊維織物基材の表面から、ウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を塗布し、補強用繊維織物基材に含浸させ、50〜120℃で0.5〜3時間前硬化した後、製品のポリウレタン内周層を形成するウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を0.5〜3mmの厚みのポリウレタン内周層が形成されるよう塗布し、70〜140℃で2〜12時間かけて硬化させ、その表面をサンドペーパーまたは研磨布で研磨し、製品のポリウレタン内周層と補強用繊維織物基材とが接着した一体構造物を作る。ついで、この半製品を反転させ、2本ロールに掛けて展張させる。ついで展張した半製品の表面から、ウレタンプレポリマーと硬化剤の混合物を塗布し、補強用繊維織物基材に含浸させ、さらにその表面にウレタンプレポリマー(A)と硬化剤(B)との混合物を、1.5〜4mmの厚みになるように塗布し、70〜140℃で2〜20時間かけて硬化させる。硬化終了後所定の厚みに表面層を研磨し、切削バイトで溝を切削加工し外周層を形成する。
【実施例】
【0040】
以下に、シュープレス用ベルトを形成するポリウレタンの物性を評価するため、ポリウレタン試験片を製造する。
【0041】
参考例1
p−フェニレン−ジイソシアネ−ト(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、97モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.95)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度98.1度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0042】
参考例2
4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は8.85%、100℃における粘度は400cps、予熱温度80℃)、および、97モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.90)し、この混合物を115℃に予熱した金型に注入し、115℃に加熱し、同温度で1時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、115℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度92.2度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0043】
参考例3
2,4−トリレン−ジイソシアネートと2,6−トリレン−ジイソシアネートとの混合物(TDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は6.02%、80℃における粘度は400cps、予熱温度66℃)、および、97モル%の3,5−ジメチルチオトルエンジアミン(ETHACURE300)と3モル%のグリセリン(Glycerin)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.95)し、この混合物を100℃に予熱した金型に注入し、100℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、100℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度95.0度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0044】
参考例4
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度127℃)、および、97モル%のハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテル(HQEE)と3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.95)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度98.2度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0045】
参考例5
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、80モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と20モル%のグリセリン(Glycerin)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.98)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度98.1度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0046】
参考例6
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリカーボネートジオール(PCD)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は3.51%、100℃における粘度は2,500cps、予熱温度100℃)、および、93モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)と7モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.90)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度94.9度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0047】
参考例7
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、93モル%の1,2−エチレングリコール(1,2−EG)と7モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.93)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度97.4度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0048】
参考例8
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、64モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、30モル%の分子量1000のポリエーテルグリコール(PEG)および6モル%のグリセリン(Glycerin)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.90)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度95.6度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0049】
参考例9
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、94モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、3モル%の3,5−ジエチルトルエンジアミン(ETHACURE100)および3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.93)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度98.1度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0050】
参考例10
p−フェニレン−ジイソシアネート(PPDI)とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とを反応させて得られたウレタンプレポリマー(NCO%は5.51%、55℃における粘度は1,800cps、予熱温度66℃)、および、90モル%の1,4−ブタンジオール(1,4−BD)、3モル%のポリ(テトラメチレンオキシド)−ジ−p−アミノベンゾエート(ELASMER1000P)および7モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物を混合(H/NCO当量比は0.94)し、この混合物を127℃に予熱した金型に注入し、127℃に加熱し、同温度で0.5時間かけて前硬化させたのち金型から上金型を外し、更に、127℃で16時間かけて後硬化させ、JIS A硬度98.0度の硬化したポリウレタンシートを得た。このシートより試験片(厚み3.4mm)を作製した。
【0051】
参考例11〜12(比較用)
表1に示すウレタンプレポリマーと硬化剤から同表に示す成型条件で、参考例1と同様にしてポリウレタンシート試験片(厚み3.4mm)を製造した。なお、表中における硬化剤の配合量とは、ウレタンプレポリマー100重量部に対する硬化剤の重量部数である。
【0052】
得られた試験片について、硬度、摩耗量、クラック進展性の物性を評価した。得られた物性を表1に示す。
【0053】
摩耗試験は、特開2006−144139号公報の図4に示す装置を用い、試験片をプレスボードの下部に取り付け、その下の面(測定対象面)に、外周に摩擦子を備える回転ロールを押し付けながら回転させた。このとき、回転ロールによる圧力を9.6kg/cm、回転ロールの回転速度100m/分とし、20分間回転させた。回転後に、ベルトサンプルの厚み減少量(摩耗量)を測定した。
【0054】
屈曲試験には図4に示される、JIS−K−6260(2005年度)に定義されるデマチャ式屈曲試験に類似する試験機を用いて20℃、相対湿度52%の雰囲気下、次の条件でクラック進展性の試験を行った。試験片61のサイズは巾25mm、長さ185mm(つかみ代片側20mm含む)、つかみ具62間の長さ150mm、厚さ3.4mm中央に半径1.5mmの半円形の凹み61aをつけたものとした。往復運動は、つかみ具間最大距離100mm、最小距離35mm、運動距離65mm、往復速度360往復/分とした。切り込みは試験片の中央部に巾方向に約2mmの長さのものを入れた。左右のつかみ具は、往復方向に対してそれぞれ45°の角度をなすように設定した。この条件で屈曲を繰り返し、所定のストローク回数ごとに亀裂の長さを測定した。ここで言うストローク回数とは試験時間に往復速度を乗じた値である。尚、亀裂の長さが初期の切り込み長さ測定値(約2mm)から15mmを超えた時点で試験を終了し、ストローク回数と亀裂長さの近似曲線を引き、亀裂長さが15mmの時のストローク回数を読み取り、成長した亀裂長さ(亀裂長さ15mm−初期の切り込み長さ測定値)をその時のストローク回数で除した値をクラック進展性とした。
【0055】
【表1】



【0056】
表1より、参考例1から参考例11の試験片は、先行文献に記載のある製品(比較例1)の試験片に比べて耐クラック進展性が良好な上に耐摩耗性も大幅に優れる。また、従来技術品(比較例2)に比べて耐摩耗性と耐クラック進展性の両方の優れた機械的特性を備えるポリウレタンであることが確認できる。
【0057】
次に、前記参考例1から11に用いたポリウレタンを用い、補強繊維基材をポリウレタンに埋設させた製紙用シュープレス用ベルトを製造する実施例を記述する。
【0058】
実施例1
工程1:適宜駆動手段により回転可能な直径1500mmのマンドレルの磨かれた表面に離型剤(KS−61:信越化学工業株式会社製)を塗布した。次に、マンドレルを回転させながら、参考例1で用いたウレタンプレポリマー(PPDI/PTMG系プレポリマー)と97モル%の1,4−ブタンジオ−ル(三菱化学株式会社製)および3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物とを、H/NCO当量比が0.95となるように混合したポリウレタン樹脂混合物を、回転中のマンドレル上に、マンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成型用ノズルによって、スパイラルに1.4mm厚みに塗布し(以後、スパイラルコートと表記する)ポリウレタン樹脂層を形成した。マンドレルを回転させたまま室温(30℃)で40分間放置し、さらに、マンドレルに付属している加熱装置によってポリウレタン樹脂混合物を127℃で30分間加熱し前硬化させてシュー側ポリウレタン内周層を作製した。
【0059】
工程2:ポリエチレンテレフタレート繊維の5,000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を緯糸、ポリエチレンテレフタレート繊維の550dtexのマルチフィラメント糸を経糸として、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がウレタン系樹脂接着により接合されてなる格子状素材(経糸密度は1本/cm、緯糸密度は4本/cm)を用意した。複数枚物の格子状素材を、緯糸がマンドレルの軸方向に沿い、シュー側層の外周に隙間無く一層配置した。そして、この格子状素材の外周に、ポリエチレンテレフタレ−ト繊維の6,700dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmピッチで巻き付けて、糸巻層を形成した。その後、格子状素材と糸巻層の隙間を塞ぐ程度に前記ポリウレタン樹脂混合物を中間層として約1.6mm塗布し一体化して、補強繊維基体ポリウレタン中間層を形成した。
【0060】
工程3:中間層の上から、前記シュー側層に用いたポリウレタン樹脂混合物と同じポリウレタン樹脂混合物を、スパイラルコートにて約2.5mm厚に含浸コートし、室温で40分間放置し、127℃で16時間加熱して後硬化させて湿紙側層(ポリウレタン外周層)を作製した。湿紙側層の表面を研磨して全厚が5.2mm厚になるようにしてから、回転刃でベルトのMD方向に凹溝(溝幅0.8mm、深さ0.8mm、ピッチ幅2.54mm)を多数形成してシュープレス用ベルトを得た。
【0061】
実施例2
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例2で用いたポリウレタン樹脂混合物(MDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ルとTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比は0.90)を用い、硬化条件を前硬化115℃で60分、後硬化115℃で16時間と変更する他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0062】
実施例3
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例3で用いたポリウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーと、ETHACURE300とグリセリンの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比は0.95)を用い、硬化条件を前硬化100℃で30分、後硬化100℃で16時間と変更する他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0063】
実施例4
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例4で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、HQEEとTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比は0.95)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0064】
実施例5
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例5で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ルとグリセリンの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.98)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0065】
実施例6
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例6で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PCD系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ルとTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.90)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0066】
実施例7
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例7で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,2−エチレングリコールとTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.93)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0067】
実施例8
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例8で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ル、PEGおよびグリセリンの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.90)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0068】
実施例9
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例9で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ル、ETHACURE100およびTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.93)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0069】
実施例10
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例10で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ル、ELASMER1000PおよびTMPの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.94)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0070】
実施例11
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例11で用いたポリウレタン樹脂混合物(PPDI/PTMG系プレポリマーと、1,4−ブタンジオ−ル、フェニレンジアミン(PDA)およびグリセリンの混合硬化剤のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.95)を用いる他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0071】
比較例1
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例11で用いたポリウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーとETHACURE300のポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.95)を用い、硬化条件を前硬化100℃で30分、後硬化100℃で16時間と変更する他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0072】
比較例2
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物の代わりに参考例12で用いたポリウレタン樹脂混合物(MDI/PTMG系プレポリマーと1,4−ブタンジオールのポリウレタン樹脂組成物、H/NCO当量比0.95)を用い、硬化条件を前硬化115℃、1時間、後硬化115℃、16時間と変更する他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0073】
得られたこれらのシュープレス用ベルトについて、摩耗試験、屈曲疲労試験を行った。摩耗試験は、溝切り後のベルトサンプルで評価した。溝切り後のベルトサンプルは、平板状のシートサンプルよりも摩耗量が大きくなる傾向にあるため、試験条件は以下のように設定した。摩耗試験は、特開2006−144139号公報の図4示す装置を用い、ベルトサンプルをプレスボードの下部に取り付け、その下の面(測定対象面)に、外周に摩擦子を備える回転ロールを押し付けながら回転させた。このとき、回転ロールによる圧力を6.6kg/cm、回転ロールの回転速度100m/分とし、45秒間回転させた。回転後に、ベルトサンプルの厚み減少量(摩耗量)を測定した。結果を表2に示す。摩耗量(5点の平均)は、実施例1が0.093mm、実施例2が0.199mm、実施例3が0.164mm、実施例4が0.169mm、実施例5が0.145mm、実施例6が0.191mm、実施例7が0.199mm、実施例8が0.216mm、実施例9が0.201mm、実施例10が0.163mm、実施例11が0.186mm、比較例1が0.269mm、比較例2が2.230mmであった。
【0074】
屈曲疲労試験は、溝切り後のベルトサンプルで評価した。屈曲疲労試験は、図5に示す装置を用いて20℃, 相対湿度52%の雰囲気下、次の条件でクラック発生の試験を行った。試験片71のサイズは巾60mm、つかみ具間長さ70mmとした。下部のつかみ具72aに円弧状の往復運動を与えることにより、上部つかみ具72bおよび試験片も円弧状に往復し、下部つかみ具の先端で試験片が屈曲され疲労されるようにした。円弧の中心から下部つかみ具の先端までの距離は168mm、下部つかみ具の移動距離は161mm、往復速度162往復/分とした。上部つかみ具の重さは400gとした。この条件で屈曲を繰り返し、クラックが発生するまでの屈曲回数を測定した。結果を表2に示す。屈曲回数は、実施例1が70万回で割れず、実施例2が70万回で割れず、実施例3が25万回で使用不能、実施例4が65万回で使用不能、実施例5が25万回で使用不能、実施例6が25万回で使用不能、実施例7が70万回で割れず、実施例8が70万回で使用不能、実施例9が70万回で割れず、実施例10が60万回で使用不能、実施例11が70万回で割れず、比較例1が20万回で使用不能、比較例2が70万回で割れなかった。
【0075】
【表2】



【0076】
表2より、実施例1から実施例11のシュープレス用ベルトは耐屈曲疲労性と耐摩耗性の両方に優れ、従来技術のシュープレス用ベルトまたは特許文献1,2に記載のシュープレス用ベルト(比較例1および比較例2)のおよそ1.2〜3倍の耐摩耗性能を有することが理解され、シュープレス用ベルトの耐久性能が格段と向上していることが理解される。
【0077】
実施例12
工程1:適宜駆動手段により回転可能な直径1500mmのマンドレルの磨かれた表面に離型剤(KS−61:信越化学工業株式会社製)を塗布した。次に、マンドレルを回転させながら、参考例1で用いたウレタンプレポリマー(PDDI/PTMG系プレポリマー)と97モル%の1,4−ブタンジオ−ル(三菱化学株式会社製)および3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物とを、H/NCO当量比が0.95となるように混合したポリウレタン樹脂混合物を、回転中のマンドレル上に、マンドレルの回転軸に対して平行に移動可能な注入成型用ノズルによって、スパイラルに1.4mm厚みに塗布して(以降、スパイラルコートと表記する)ポリウレタン樹脂層を形成した。マンドレルを回転させたまま室温(30℃)で40分間放置し、さらに、マンドレルに付属している加熱装置によってポリウレタン樹脂混合物を127℃で30分間加熱し前硬化させてシュー側ポリウレタン内周層を作製した。
【0078】
工程2:ポリエチレンテレフタレート繊維の5,000dtexのマルチフィラメント糸の撚糸を緯糸、ポリエチレンテレフタレート繊維の550dtexのマルチフィラメント糸を経糸として、経糸が緯糸で挟まれ、緯糸と経糸の交差部がウレタン系樹脂接着により接合されてなる格子状素材(経糸密度は1本/cm、緯糸密度は4本/cm)を用意した。複数枚物の格子状素材を、緯糸がマンドレルの軸方向に沿い、シュー側層の外周に隙間無く一層配置した。そして、この格子状素材の外周に、ポリエチレンテレフタレート繊維の6,700dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmピッチで巻き付けて、糸巻層を形成した。その後、格子状素材と糸巻層の隙間を塞ぐ程度に、参考例7で用いたウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーとETHACURE300の混合物)を中間層として約1.6mm塗布し一体化して、補強繊維基体を形成した。
【0079】
工程3:糸巻層の上から、前記シュー側層に用いたポリウレタン樹脂混合物と同じポリウレタン樹脂混合物を、スパイラルコートにて約2.5mm厚に含浸コートし、室温で40分間放置し、127℃で16時間加熱して後硬化させて湿紙側層(ポリウレタン外周層)を作製した。湿紙側層の表面を研磨して全厚が5.2mm厚になるようにしてから、回転刃でベルトのMD方向に凹溝(溝幅0.8mm、深さ0.8mm、ピッチ幅2.54mm)を多数形成してシュープレス用ベルトを得た。
【0080】
実施例13
実施例1において、参考例1のポリウレタン樹脂混合物を、ベルトの外周層及び中間層(繊維基体含浸層)に用い、内周層に参考例7で用いたウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーとETHACURE300の混合物)を用い、硬化条件を前硬化100℃、30分、後硬化100℃、16時間に変更する他は同様にしてシュープレス用ベルトを得た。
【0081】
実施例14
工程1:適宜駆動手段により回転可能な直径1500mmのマンドレルの磨かれた表面に離型剤(KS−61:信越化学工業株式会社製)を塗布した。次に、マンドレルを回転させながら、マンドレル表面にスパイラルコートにて参考例7のポリウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーとETHACURE300の混合物)を、1.4mm厚みに塗布し、マンドレルを回転させたまま室温で40分間放置し、さらに、マンドレルに付属している加熱装置によって樹脂を100℃で30分間加熱し前硬化させた。
【0082】
工程2:ポリエチレンテレフタレート繊維の800dtexのモノフィラメント糸を経糸とし、ポリエチレンテレフタレート繊維の4,500dtexのマルチフィラメント糸を緯糸として一重組織で製織してなる織物片(緯メッシュ30本/5cm、経メッシュ40本/5cm)を用意した。複数枚物の織物片を、緯糸がマンドレルの軸方向に沿い、シュー側層の外周に隙間無く一層配置した。そして、この織物片の外周に、ポリエチレンテレフタレート繊維の7,000dtexのマルチフィラメント糸を螺旋状に30本/5cmピッチで巻き付けて、糸巻層を形成した。その後、織物片と糸巻層の隙間を塞ぐ程度に参考例7で用いたポリウレタン樹脂混合物(TDI/PTMG系プレポリマーとETHACURE300の混合物)を中間層として、ドクターバーを用いて厚さ1.6mmに塗り一体化して、補強繊維基体を形成した。
【0083】
工程3:糸巻層の上から参考例1で用いたウレタンプレポリマー(PDDI/PTMG系プレポリマー)と97モル%の1,4−ブタンジオ−ル(三菱化学株式会社製)および3モル%のトリメチロールプロパン(TMP)よりなる硬化剤混合物とを、H/NCO当量比が0.95となるように混合したポリウレタン樹脂混合物を、スパイラルコートにて約2.5mm厚に塗布し、127℃で16時間加熱して後硬化させた。湿紙側層の表面を研磨して全厚が5.2mm厚になるようにしてから、回転刃でベルトのMD方向に凹溝(溝幅0.8mm、深さ0.8mm、ピッチ幅2.54mm)を多数形成してシュープレス用ベルトを得た。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のシュープレス用ベルトは、既存品のものと比較して耐摩耗性、耐クラック性、耐屈曲疲労性に優れ、既存製品の製紙用シュープレス用ベルトの1.5倍以上の使用に耐えることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】シュープレス用ベルトの断面図である。
【図2】シュープレス用ベルトの断面図である。(公知)
【図3】湿紙の脱水装置の断面図である。(公知)
【図4】デマチャ式類似屈曲試験を説明する図である。(公知)
【図5】屈曲疲労試験を説明する図である。(公知)
【符号の説明】
【0086】
1 プレスロール
2 エンドレスシュープレス用ベルト
3 フェルト
4 湿紙
5 シュー
6 補強繊維基材
2a 外周層
2b 内周層
21 外周層
22 内周層
24 凹溝
25 凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン層として下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタン層が含有されていることを特徴とする、製紙用シュープレス用ベルト。
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物、ハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルおよび分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B1)を75〜99.9モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【請求項2】
補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン層として下記ウレタンプレポリマー(A)と活性水素基(H)を有する硬化剤(B)とが混合された組成物を硬化させて得られるポリウレタン層が含有されていることを特徴とする、製紙用シュープレス用ベルト。
(A)p−フェニレン−ジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)およびトリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物を55〜100モル%含有するポリイソシアネート化合物(a)と、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物(b)とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー、
(B)分子量が62〜1,000の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物およびハイドロキノンビス−βヒドロキシルエチルエーテルより選ばれた硬化剤(B11)を60〜99.8モル%、分子量が108〜1,300の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物より選ばれた硬化剤(B12)を0.1〜15モル%、および分子量が92〜134の活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)を25〜0.1モル%含有する硬化剤。
【請求項3】
前記(B)成分の活性水素基(H)を有する脂肪族ジオール化合物(B11)が、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリブチレングリコールより選ばれた脂肪族ジオール化合物であり、活性水素基(H)を有する脂肪族トリオール化合物(B2)がトリメチロールプロパン、プロパントリオール(グリセリン)、ブタントリオール、ペンタントリオール、ヘキサントリオール、シクロペンタントリオール、シクロヘキサントリオールより選ばれた脂肪族トリオール化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。
【請求項4】
前記(B)成分の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物(B12)が、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、3,5−ジメチルチオトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジメチルチオトルエン−2,6−ジアミン、4,4’−ビス(2−クロロアニリン)、4,4’−ビス(sec−ブチルアミノ)−ジフェニルメタン、N,N’−ジアルキルジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンジアニリン、4,4’−メチレン−ビス(2,3−ジクロロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−エチル−6−メチルアニリン)、トリメチレン−ビス(4−アミノベンゾエート)、ポリ(テトラメチレンオキシド)−ジ−p−アミノベンゾエート、フェニレンジアミン、ポリエーテルジアミン、イソホロンジアミン、4,4’−メチレンビス(2−メチルシクロヘキサン−1−アミン)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサンアミン)、ビス(アミノメチル)シクロヘキサンおよびキシレンジアミンより選ばれた二官能の有機ジアミン化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。
【請求項5】
前記(B)成分の活性水素基(H)を有する有機ポリアミン化合物(B12)が、イミノビスプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、アミノエチルエタノールアミン、トリ(メチルアミノ)ヘキサンおよびメラミンより選ばれた三官能以上の有機ポリアミン化合物であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。
【請求項6】
補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層で形成された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン外周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン内周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。
【請求項7】
補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層、ポリウレタン中間層およびポリウレタン内周層で形成され、前記ポリウレタン中間層の両側には前記ポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層が積層された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン外周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン中間層およびポリウレタン内周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成され、補強繊維基材は、前記ポリウレタン中間層に埋設されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。
【請求項8】
補強繊維基材とポリウレタン層とが一体化してなり、前記補強繊維基材が前記ポリウレタン層中に埋設され、前記ポリウレタン層がポリウレタン外周層およびポリウレタン内周層で形成された製紙用シュープレス用ベルトにおいて、前記ポリウレタン内周層は、請求項1または請求項2に記載のポリウレタン層で形成され、前記ポリウレタン外周層は、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)とポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびポリカーボネートジオールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミン、3,5−ジメチルチオトルエンジアミンおよび1,4−ブタンジオールより選ばれた硬化剤を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層、または、2,4−トリレン−ジイソシアネートおよび2,6−トリレン−ジイソシアネートより選ばれたポリイソシアネート化合物とポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールより選ばれたポリオール化合物とを反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと、3,5−ジエチルトルエンジアミンおよび3,5−ジメチルチオトルエンジアミンより選ばれた有機ジアミン化合物を含む組成物を硬化させて得られるポリウレタン層から形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の製紙用シュープレス用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−185427(P2009−185427A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28971(P2008−28971)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000180597)イチカワ株式会社 (99)
【Fターム(参考)】