シューホールドダウン装置
【課題】ドラムブレーキの制動時および解除時におけるシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れを従来に比較して好適に抑制するシューホールドダウン装置を提供する。
【解決手段】基端部66cのテーパー面66dは、ブッシュ68によってバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されずブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接され、そのテーパー状の当接面68jと当接する当接面積が従来のバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと当接していた当接面積に比較して大きくなるので、その基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力の集中が好適に抑えられそのテーパー面66dとブッシュ68の当接面68jとの圧力が低くなる。そのため、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるテーパー面66dの削れが従来に比較して好適に抑制される。
【解決手段】基端部66cのテーパー面66dは、ブッシュ68によってバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されずブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接され、そのテーパー状の当接面68jと当接する当接面積が従来のバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと当接していた当接面積に比較して大きくなるので、その基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力の集中が好適に抑えられそのテーパー面66dとブッシュ68の当接面68jとの圧力が低くなる。そのため、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるテーパー面66dの削れが従来に比較して好適に抑制される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にそのドラムブレーキのシューホールドダウン装置の性能を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1、2に示すようなドラムブレーキ用のシューホールドダウン装置が知られている。このようなシューホールドダウン装置は、(a) シューホールドダウンスプリングと、(b) そのシューホールドダウンスプリングに間接的に掛け止められる先端部とそのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴のそのバッキングプレートの裏側に配設されるそのバッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、(c) そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面をそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧するものである。また、上記のようなシューホールドダウン装置は、ドラムブレーキの制動時において上記ブレーキシューが拡開すると上記シューホールドダウンピンが傾いてその先端部がそのブレーキシューと共にブレーキドラムの内周面に接近する方向に移動し、その後のドラムブレーキの解除時において上記ブレーキシューがブレーキドラムの内周面から離間すると上記シューホールドダウンピンの先端部もそのブレーキシューと共にブレーキドラムの内周面から離間する方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−97728号公報
【特許文献2】実開昭62−204045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなシューホールドダウン装置は、図16、図17(a) に示すように、シューホールドダウンピン100の基端部100aのテーパー面100bとバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bとの接触する接触面積が非常に小さく例えばバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bの角が直角である場合にはシューホールドダウンピン100のテーパー面100bとバッキングプレート110の周縁部110bとの接触が線接触となり上記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力がその接触部分に集中し易く圧力が非常に高くなる。そのため、ドラムブレーキの制動および解除の繰り返しに伴って、上記シューホールドダウンピンの先端部が上記ブレーキシューと共に移動して、図17(a) に示すようにシューホールドダウンピン100の基端部100aのテーパー面100bが上記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力によりバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bの当接された状態でその周縁部110b上を摺動させられると、そのテーパー面100bの一部がバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bによって容易に削れられてしまうという問題があった。
【0005】
シューホールドダウンピン100のテーパー面100bの一部が容易に削れられることによって、例えば、基端部100aのテーパー面100bに防錆用のメッキが施されている場合そのメッキが容易に剥がされシューホールドダウンピン100が腐食し易くなることや、ドラムブレーキの作動回数が増えると図17(b) に示すように基端部100aのテーパー面100bの一部に断面がバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bと略同様の摺動痕100cが形成され易く、ドラムブレーキの作動時および解除時においてその摺動痕100cがバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bを乗り越えたりすると異音が発生する等の問題が発生する。
【0006】
これに対して、取付穴110aの周縁部110bによるテーパー面100bの摺動痕100cの形成を抑えるためにそのシューホールドダウンピン100の硬度を上げる目的で表面処理例えは軟窒化、浸炭等を施すことが考えられるが、シューホールドダウンピン100に上記表面処理を行うとシューホールドダウンピン100の製造コストが上がることやシューホールドダウンピン100に防錆用のメッキが電着され難くなる等の問題が発生する。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドラムブレーキの制動時および解除時におけるシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れを従来に比較して好適に抑制するシューホールドダウン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) シューホールドダウンスプリングと、(b) そのシューホールドダウンスプリングに直接的或いは間接的に掛け止められる先端部とそのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴のそのバッキングプレートの裏側に配設されるそのバッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、(c) そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面をそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧するシューホールドダウン装置であって、(d) 前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、その貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、その座板部の貫通穴の周縁部からそのバッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、(e) 前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されていることにある。
【0009】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、(b) 前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部からそのバッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出してその取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられていることにある。
【0010】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接してその爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられていることにある。
【0011】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されていることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(d) 前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、その貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、その座板部の貫通穴の周縁部からそのバッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、(e) 前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されている。そのため、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面は、前記ブッシュによって前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接されずそのブッシュのテーパー状の当接面と当接され、そのブッシュのテーパー状の当接面と当接する当接面積が従来の前記バッキングプレートの取付穴の周縁部と当接していた当接面積に比較して大きくなるので、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面における前記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力の集中が好適に抑えられ前記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力による前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と前記ブッシュの当接面との圧力が低くなる。これにより、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れが従来に比較して好適に抑制される。
【0013】
請求項2に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(a) 前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、(b) 前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部からそのバッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出してその取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられているため、前記バッキングプレートの取付穴に前記ブッシュを嵌め入れるとそのブッシュの爪部がそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に係合するので、前記ブッシュの前記バッキングプレートの取付穴からの脱落が好適に防止される。また、前記ブッシュの当接面が前記シューホールドダウンピンの硬度より低い弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れが好適に防止される。
【0014】
請求項3に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接してその爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられているため、前記ブッシュの円筒部を前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れようとすると前記爪部の傾斜面が前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接されてその爪部が縮径し、前記ブッシュの円筒部を前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられると前記爪部が前記バッキングプレートの取付穴を挿通して前記爪部の弾性復帰力によってその爪部が前記バッキングプレートの取付穴の径方向に突き出してその取付穴の周縁部に係合する。これにより、前記ブッシュを前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れることにより前記ブッシュを容易に前記バッキングプレートに取り付けられる。
【0015】
請求項4に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されているため、そのブッシュの当接面が摩擦係数の小さいフッ素樹脂で構成され、そのブッシュの当接面と前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面との摩擦が小さくなるので、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの先端部の移動が滑らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例のシューホールドダウン装置が組み付けてあるデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図2のIII-III視面図である。
【図4】図2のIV-IV視面図である。
【図5】図4のV-V視断面図である。
【図6】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図7】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図8】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図9】ドラムブレーキの制動時および解除時におけるシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面のブッシュの当接面上の摺動を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図2に対応するものである。
【図11】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図4に対応するものである。
【図12】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図5に対応するものである。
【図13】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図2に対応するものである。
【図14】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図4に対応するものである。
【図15】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図5に対応するものである。
【図16】従来のシューホールドダウン装置の構成を説明する断面図である。
【図17】従来のシューホールドダウン装置において、ドラムブレーキの制動時および解除時にシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面がバッキングプレートの取付穴の周縁部上を摺動する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の2点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0019】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0020】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられたアンカー26と、そのアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。
【0021】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ38,40と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム42,44と、それらシューリム42,44の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング46,48とを備えてそれぞれ構成されている。また、ブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー50の基端部50aがピン52により回動可能に連結されており、ブレーキレバー50の基端部50aであってピン52に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ38と共に係合させられている。また、ブレーキレバー50の先端部50bには、パーキングブレーキケーブル54が連結されている。
【0022】
一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ38,40の長手方向の中央付近にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置56,58によって拡開可能にバッキングプレート18に設けられている。シューホールドダウン装置56および58は相互に同様に構成されているので、以下においては一方のシューホールドダウン装置であるシューホールドダウン装置58を用いて説明する。
【0023】
シューホールドダウン装置58は、図2に示すように、ばね材から成る断面円形の線材が複数回巻回されたシューホールドダウンスプリング60と、そのシューホールドダウンスプリング60の両端にそれぞれ当接する略円板状の一対の円板部材62,64と、バッキングプレート18の所定位置に円形状に貫通された取付穴18aと、シューホールドダウンスプリング60に円板部材62を介して掛け止められる一端部とシューホールドダウンスプリング60、一対の円板部材62,64に貫通された貫通穴62a,64a、シューウェブ40に切り欠かれた切欠40aを通りバッキングプレート18の取付穴18aに掛け止められる他端部とを有するシューホールドダウンピン66と、バッキングプレート18の取付穴18aに嵌め着けられたブッシュ68とによって構成され、シューホールドダウンスプリング60がシューウェブ40からバッキングプレート18方向に圧縮されることによって発生する弾性復帰力を円板部材62、シューホールドダウンピン66、ブッシュ68を介してバッキングプレート18に伝達することによってブレーキシュー24をバッキングプレート18側に常時押圧させる。
【0024】
シューホールドダウンピン66は、図2に示すように、バッキングプレート18からシューウェブ40方向に伸びる略円柱状の軸部66aと、その軸部66aのバッキングプレート18の表面18b側の端部をヘディング加工することによって略円柱状の軸部66aの径よりも小さい厚みと略円柱状の軸部66aの径よりも大きい幅寸法Aを有した略半円板形状の先端係合部(先端部)66bと、軸部66aのバッキングプレート18の裏面18c側の端部に設けられたバッキングプレート18の取付穴18aの径より大きいテーパー形状の基端部66cとが鉄鋼により一体に構成されている。また、シューホールドダウンピン66の基端部66cには、シューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によりブッシュ68をバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接させるテーパー状のテーパー面66dが備えられている。
【0025】
図3に示すように、一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aは、シューホールドダウンピン66の軸心C方向において先端係合部66bと略同様な形状を成しているため、その軸心C方向において先端係合部66bの形状と貫通穴62a,64aの形状とが一致するように位置決めされるとシューホールドダウンピン66の先端係合部66bが一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aを挿通可能となり、その先端係合部66bが円板部材62の貫通穴62aから突出している状態で一対の円板部材62,64をシューホールドダウンピン66の軸心Cまわりに90度回転させるとその先端係合部66bが円板部材62に掛け止められる。
【0026】
図4、図5に示すように、ブッシュ68は、シューホールドダウンピン66の基端部66cよりも小径の貫通穴68aを中央に有しその貫通穴68aにシューホールドダウンピン66の軸部66aおよび先端係合部66bを挿通させる円板状の座板部68bと、その座板部68bの貫通穴68aの周縁部からバッキングプレート18の取付穴18aを通り表面18b側に突き出す円筒形状の円筒部68cと、その円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部68dとが弾性変形可能な合成樹脂、たとえば、フッ素樹脂で射出成形により一体に成形されることによって構成されている。
【0027】
また、図4、図5に示すように、ブッシュ68の爪部68dは、ブッシュ68の円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその円筒部68cの外周方向に連なるように複数個本実施例では12個突き出されており、その爪部68dには、バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合する係合面68eと、その爪部68dの外周面がテーパー状の傾斜面68fと、その爪部68dとブッシュ68の円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部とを連結する連結部68gとが一体に備えられている。また、図4、図5に示すように、ブッシュ68の座板部68bのバッキングプレート18側の面68hとブッシュ68の爪部68dの係合面68eとの間の距離B1は、バッキングプレート18の板厚Dと同じ或いは僅かに大きく設定され、その爪部68dの傾斜面68fにおけるその傾斜面68fの最小径B2はバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより小さく且つその傾斜面68fの最大径B3はその取付穴18aの径Eより大きくなるように設定されている。
【0028】
このため、図6に示すように、ブッシュ68をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ68の円筒部68cを取付穴18a内に嵌め入れようと矢印F方向に押圧すると、ブッシュ68の爪部68dの傾斜面68fが取付穴18aの周縁部18dに当接しその爪部68dが縮径させられてブッシュ68の円筒部68cが取付穴18a内に嵌め入れられる。そして、座板部68bのバッキングプレート18側の面68hがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接するまで更に矢印F方向に押圧すると、ブッシュ68の爪部68dがその弾性復帰力によってバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその爪部68dの係合面68eと取付穴18aの周縁部18dとが係合してバッキングプレート18にブッシュ68が取り付けられる。
【0029】
ブッシュ68の貫通穴68aの内周面には、シューホールドダウンピン66の基端部66cの径Gより小さくそのシューホールドダウンピン66の先端係合部66bの幅寸法Aより大きい径B4を有しシューホールドダウンピン66の軸部66aを遊動可能に挿通させる円柱形状の挿通面68iと、その挿通面68iから座板部68bの開口部に向かうにつれて貫通穴68aの径が大きくなるテーパー状の当接面68jとが備えられており、シューホールドダウンピン66の基端部66cがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によりその基端部66cのテーパー面66dをその貫通穴68aの当接面68jに当接させて、ブッシュ68の座板部68bのバッキングプレート18側の面68hとバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dとが当接させられる。また、基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の貫通穴68aの当接面68jに当接されている際そのテーパー面66dと当接面68jとは面接触し、シューホールドダウン装置58にブッシュ68がなく基端部66cのテーパー面66dが角が直角の取付穴18aの周縁部18dに線接触するに比較してその基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力による圧力が小さくなる。
【0030】
ここで、バッキングプレート18すなわちドラムブレーキ10に上記ブッシュ68を備えるシューホールドダウン装置58を組み付ける組付作業を図6乃至図8を用いて説明する。
【0031】
先ず、作業者は、図6に示すように、ブッシュ68を矢印F方向に押圧してバッキングプレート18の取付穴18aにそのブッシュ68の円筒部68cをたとえば圧入によって嵌め入れブッシュ68をバッキングプレート18に取り付ける。ブッシュ68がバッキングプレート18に取り付けられるとそのブッシュ68の爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合し作業者がブッシュ68を支えなくてもブッシュ68のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が防止される。
【0032】
次に、作業者は、図7に示すように、シューホールドダウンピン66の先端係合部66bをブッシュ68の貫通穴68aに挿通させてその基端部66cのテーパー面66dをブッシュ68の当接面68jに当接させシューホールドダウンピン66をバッキングプレート18から自立させる。そして、その状態のままでシューホールドダウンピン66の先端係合部66bからシューウェブ40の切欠40aを通し、一対の円板部材62,64およびシューホールドダウンスプリング60をそのシューホールドダウンピン66の軸心C方向において一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aの形状とシューホールドダウンピン66の先端係合部66bの形状とが一致するように位置決めしてシューホールドダウンピン66に通す。
【0033】
最後に、作業者は、図8に示すように、図示されていない治具を用いてシューホールドダウンピン66の先端係合部66bを円板部材62の貫通穴62aから突出するように押圧した状態で一対の円板部材62,64およびシューホールドダウンスプリング60をシューホールドダウンピン66の軸心C回りに回転させて、シューホールドダウン装置56がドラムブレーキ10に組み付ける。
【0034】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによりパーキングブレーキケーブル54を介してブレーキレバー50の先端部50bがバッキングプレート18の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー24がストラット32に押されて外周側へ移動させられると共にブレーキシュー22がピン52に押されて外周側へ移動させられて、一対のブレーキシュー22,24が拡開され制動力が発生させられる。
【0035】
図9に示すように、シューホールドダウンピン66の基端部66cは、ドラムブレーキ10の制動時においてブレーキシュー24が拡開するとシューホールドダウンピン66が傾いてその基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の当接面68j上を摺動する。その後のドラムブレーキ10の解除時においてブレーキシュー24がブレーキドラム14の内周面16から離間するとシューホールドダウンピン66が直立状態に戻りその基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の当接面68j上を摺動する。
【0036】
本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、バッキングプレート18の取付穴18aには、シューホールドダウンピン66の基端部66cよりも小径の貫通穴68aを有し、その貫通穴68aにシューホールドピン66の軸部66aを遊動可能に貫通させる座板部68bと、その座板部68bの貫通穴68aの周縁部からそのバッキングプレート18の表面18b側に突き出して取付穴18aに嵌め着けられる円筒部68cとを一体に有するブッシュ68が備えられており、ブッシュ68の貫通穴68aの内周面の端部には、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dと当接するテーパー状の当接面68jが形成されている。そのため、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dは、ブッシュ68によってバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されずそのブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接され、そのブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接する当接面積が従来の角が直角の取付穴18の周縁部18dと当接していた当接面積に比較して大きくなるので、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力の集中が好適に抑えられシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとブッシュ68の当接面68jとの圧力が低くなる。これにより、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dの削れが従来に比較して好適に抑制される。
【0037】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、ブッシュ68は、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、ブッシュ68には、その円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部からそのバッキングプレート18の取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部68dが径方向に連なるように一体に備えられているため、バッキングプレート18の取付穴18aにブッシュ68を嵌め入れるとそのブッシュ68の爪部68dがそのバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに係合するので、ブッシュ68のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が好適に防止される。また、ブッシュ68の当接面68jがシューホールドダウンピン66が構成される鉄鋼の硬度より低い弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dの削れが好適に防止される。また、ブッシュ68の当接面68jが弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によってブッシュ68の当接面68jに当接するとその当接面68jが弾性変形しその当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとが当接する当接面積が好適に大きくなる。また、ブッシュ68の当接面68jが弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によってブッシュ68の当接面68jに当接するとその当接面68jが弾性変形し、その当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとの隙間がなくなるので、バッキングプレート18の取付穴18aから浸入する水等の異物の浸入を好適に防止することができる。
【0038】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、爪部68dには、ブッシュ68の円筒部68cがバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れられる際バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接してその爪部68dを縮径させるテーパー状の傾斜面68fが備えられているため、ブッシュ68の円筒部62cをバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れようとすると爪部68の傾斜面68fがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されてその爪部68dが縮径し、ブッシュ68の円筒部68cをバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れられると爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aを挿通して爪部68dの弾性復帰力によってその爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する。これにより、ブッシュ68をバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れることによりそのブッシュ68を容易にバッキングプレート18に取り付けられる。
【0039】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、ブッシュ68は、フッ素樹脂で一体成形されているため、そのブッシュ68の当接面68iが摩擦係数の小さいフッ素樹脂で構成され、そのブッシュ68の当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとの摩擦が小さくなるので、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン68の先端係合部68bの移動が滑らかになる。
【実施例2】
【0040】
また、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施例のシューホールドダウン装置は、実施例1のブッシュ68と異なるブッシュ70を備える以外は実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様であって、図10乃至図12はそのブッシュ70を説明する図であり、前述の実施例1の図2、図4、図5に対応するものである。
【0042】
図10乃至図12に示すように、ブッシュ70は、実施例1の貫通穴68aと同様の貫通穴70aを有する実施例1の座板部68bと同様の座板部70bと、実施例1の円筒部68cと同様の円筒部70cと、その円筒部70cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部70dとが弾性変形可能なフッ素樹脂で一体に成形されることによって構成される。
【0043】
また、図10乃至図12に示すように、爪部70dは、ブッシュ70の円筒部70cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその円筒部70cの外周方向に連続して一体に突き出されており、その爪部70dには、バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合する係合面70eと、その爪部70dの外周面がテーパー状の傾斜面70fとが一体に備えられている。また、図10乃至図12に示すように、座板部70bのバッキングプレート18側の面70gと爪部70dの係合面70eとの間の距離B’1は、バッキングプレート18の板厚Dと同じ或いは僅かに大きく設定され、爪部70dの傾斜面70fにおけるその傾斜面70fの最小径B’2はバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより小さく且つその傾斜面70fの最大径B’3はその取付穴18aの径Eより大きくなるように設定されている。
【0044】
そのため、実施例1と略同様にブッシュ70をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ70の円筒部70cを取付穴18a内に嵌め入れようと押圧すると、ブッシュ70の爪部70dの傾斜面70fが取付穴18aの周縁部18dに当接しその爪部70dが縮径させられてブッシュ70の円筒部70cが取付穴18a内に嵌め入れられる。そして、座板部70bのバッキングプレート18側の面70gがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接するまで更に押圧すると、ブッシュ70の爪部70dがその弾性復帰力によってバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその爪部70dの係合面70eと取付穴18aの周縁部18dとが係合してバッキングプレート18にブッシュ70が取り付けられる。
【0045】
また、ブッシュ70の貫通穴70aの内周面には、実施例1の挿通面68iおよび当接面68jと同様の挿通面70hおよび当接面70iとが備えられているため、実施例2のシューホールドダウン装置には実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様の効果が備えられている。
【実施例3】
【0046】
本実施例のシューホールドダウン装置は、実施例1のブッシュ68と異なるブッシュ72を備える点以外は実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様であり、図13乃至図15はそのブッシュ72を説明する図である。
【0047】
図13乃至図15に示すように、ブッシュ72は、実施例1の貫通穴68aと同様の貫通穴72aを有する実施例1の座板部68bと同様の座板部72bと、その座板部72bの貫通穴70aの周縁部からバッキングプレート18の取付穴18aを通り表面18b側に突き出す円筒形状の円筒部72cとが弾性変形可能なフッ素樹脂で一体に成形されることによって構成される。
【0048】
また、図10乃至図12に示すように、ブッシュ72の円筒部72cは、その円筒部72cの外径寸法Hがバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより僅かに大きく設定されている。
【0049】
そのため、ブッシュ72をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ72の円筒部72cを取付穴18a内に嵌め入れようと押圧すなわち圧入すると、その円筒部72cが取付穴18a内に嵌め着けられブッシュ72がバッキングプレート18に取り付けられる。
【0050】
また、ブッシュ72の貫通穴72aの内周面には、実施例1の挿通面68iおよび当接面68jと同様の挿通面72eおよび当接面72fとが備えられているため、実施例3のシューホールドダウン装置には実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様の効果が備えられている。また、本実施例では、ブッシュ72に爪部が備えられてなくブッシュ72の形状が実施例1のブッシュ68に比較して簡素化するためブッシュ72の製造コストを安価にすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0052】
たとえば、本実施例のシューホールドダウン装置58において、シューホールドダウンピン66の先端係合部66bは円板部材62を介して間接的にシューホールドダウンスプリング60に掛け止められていたが、そのコイル状のシューホールドダウンスプリング60の代わりに板ばね型のシューホールドダウンスプリングを使用することによって、円板部材62なしでシューホールドダウンピン66の先端係合部66bを直接的にその板ばね型のシューホールドダウンスプリングに掛け止めることができる。そのため、シューホールドダウン装置58の部品点数を減少させることができる。
【0053】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58において、ブッシュ68,70,72はフッ素樹脂で一体成形されたが必ずしもフッ素樹脂が使用される必要はなく、例えば耐久性、潤滑性のあるシリコーンゴム等のゴム系材料や樹脂が使用されても良い。さらには、上記材料で構成されたものに比較して効果が低いもののシューホールドダウンピン66と同様の鉄鋼によってブッシュが構成されても一定の効果がでる。
【0054】
また、本実施例のシューホールドダウン装置において、爪部が備えられていないブッシュ72は、その円筒部72cがバッキングプレート18の取付穴18aに圧入するためその円筒部72cの外径寸法Hが取付穴18aの径Eより大きく設定されていたが、その円筒部72cの外径寸法Hが取付穴18aの径Eより小さく設定されても良い。すなわち、シューホールドダウン装置がバッキングプレート18に取り付けられるとシューホルドダウンピン66の基端部66cによってブッシュ72は常時バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接され、ブッシュ72のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が防止されるので、ブッシュ72の円筒部72cの外径寸法Hを取付穴18aの径Eより小さく設定しても良い。
【0055】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
18:バッキングプレート
18a:取付穴
18d:周縁部
22,24:ブレーキシュー
56,58:シューホールドダウン装置
60:シューホールドダウンスプリング
66:シューホールドダウンピン
66b:先端係合部(先端部)
66c:基端部
66d:テーパー面
68,70,72:ブッシュ
68a,70a,72a:貫通穴
68b,70b,72b:座板部
68c,70c,72c:円筒部
68d,70d:爪部
68f,70f:傾斜面
68j,70i,72f:当接面
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にそのドラムブレーキのシューホールドダウン装置の性能を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特許文献1、2に示すようなドラムブレーキ用のシューホールドダウン装置が知られている。このようなシューホールドダウン装置は、(a) シューホールドダウンスプリングと、(b) そのシューホールドダウンスプリングに間接的に掛け止められる先端部とそのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴のそのバッキングプレートの裏側に配設されるそのバッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、(c) そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面をそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧するものである。また、上記のようなシューホールドダウン装置は、ドラムブレーキの制動時において上記ブレーキシューが拡開すると上記シューホールドダウンピンが傾いてその先端部がそのブレーキシューと共にブレーキドラムの内周面に接近する方向に移動し、その後のドラムブレーキの解除時において上記ブレーキシューがブレーキドラムの内周面から離間すると上記シューホールドダウンピンの先端部もそのブレーキシューと共にブレーキドラムの内周面から離間する方向に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭63−97728号公報
【特許文献2】実開昭62−204045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなシューホールドダウン装置は、図16、図17(a) に示すように、シューホールドダウンピン100の基端部100aのテーパー面100bとバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bとの接触する接触面積が非常に小さく例えばバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bの角が直角である場合にはシューホールドダウンピン100のテーパー面100bとバッキングプレート110の周縁部110bとの接触が線接触となり上記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力がその接触部分に集中し易く圧力が非常に高くなる。そのため、ドラムブレーキの制動および解除の繰り返しに伴って、上記シューホールドダウンピンの先端部が上記ブレーキシューと共に移動して、図17(a) に示すようにシューホールドダウンピン100の基端部100aのテーパー面100bが上記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力によりバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bの当接された状態でその周縁部110b上を摺動させられると、そのテーパー面100bの一部がバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bによって容易に削れられてしまうという問題があった。
【0005】
シューホールドダウンピン100のテーパー面100bの一部が容易に削れられることによって、例えば、基端部100aのテーパー面100bに防錆用のメッキが施されている場合そのメッキが容易に剥がされシューホールドダウンピン100が腐食し易くなることや、ドラムブレーキの作動回数が増えると図17(b) に示すように基端部100aのテーパー面100bの一部に断面がバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bと略同様の摺動痕100cが形成され易く、ドラムブレーキの作動時および解除時においてその摺動痕100cがバッキングプレート110の取付穴110aの周縁部110bを乗り越えたりすると異音が発生する等の問題が発生する。
【0006】
これに対して、取付穴110aの周縁部110bによるテーパー面100bの摺動痕100cの形成を抑えるためにそのシューホールドダウンピン100の硬度を上げる目的で表面処理例えは軟窒化、浸炭等を施すことが考えられるが、シューホールドダウンピン100に上記表面処理を行うとシューホールドダウンピン100の製造コストが上がることやシューホールドダウンピン100に防錆用のメッキが電着され難くなる等の問題が発生する。
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドラムブレーキの制動時および解除時におけるシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れを従来に比較して好適に抑制するシューホールドダウン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) シューホールドダウンスプリングと、(b) そのシューホールドダウンスプリングに直接的或いは間接的に掛け止められる先端部とそのシューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴のそのバッキングプレートの裏側に配設されるそのバッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、(c) そのシューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いてそのシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面をそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させてそのブレーキシューをそのバッキングプレート側に押圧するシューホールドダウン装置であって、(d) 前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、その貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、その座板部の貫通穴の周縁部からそのバッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、(e) 前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されていることにある。
【0009】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、(b) 前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部からそのバッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出してその取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられていることにある。
【0010】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項2に係る発明において、前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接してその爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられていることにある。
【0011】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されていることにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(d) 前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、その貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、その座板部の貫通穴の周縁部からそのバッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、(e) 前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されている。そのため、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面は、前記ブッシュによって前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接されずそのブッシュのテーパー状の当接面と当接され、そのブッシュのテーパー状の当接面と当接する当接面積が従来の前記バッキングプレートの取付穴の周縁部と当接していた当接面積に比較して大きくなるので、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面における前記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力の集中が好適に抑えられ前記シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力による前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と前記ブッシュの当接面との圧力が低くなる。これにより、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れが従来に比較して好適に抑制される。
【0013】
請求項2に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、(a) 前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、(b) 前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部からそのバッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出してその取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられているため、前記バッキングプレートの取付穴に前記ブッシュを嵌め入れるとそのブッシュの爪部がそのバッキングプレートの取付穴の周縁部に係合するので、前記ブッシュの前記バッキングプレートの取付穴からの脱落が好適に防止される。また、前記ブッシュの当接面が前記シューホールドダウンピンの硬度より低い弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面の削れが好適に防止される。
【0014】
請求項3に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接してその爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられているため、前記ブッシュの円筒部を前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れようとすると前記爪部の傾斜面が前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接されてその爪部が縮径し、前記ブッシュの円筒部を前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられると前記爪部が前記バッキングプレートの取付穴を挿通して前記爪部の弾性復帰力によってその爪部が前記バッキングプレートの取付穴の径方向に突き出してその取付穴の周縁部に係合する。これにより、前記ブッシュを前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れることにより前記ブッシュを容易に前記バッキングプレートに取り付けられる。
【0015】
請求項4に係る発明のシューホールドダウン装置によれば、前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されているため、そのブッシュの当接面が摩擦係数の小さいフッ素樹脂で構成され、そのブッシュの当接面と前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面との摩擦が小さくなるので、ドラムブレーキの制動時および解除時における前記シューホールドダウンピンの先端部の移動が滑らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施例のシューホールドダウン装置が組み付けてあるデュオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図である。
【図3】図2のIII-III視面図である。
【図4】図2のIV-IV視面図である。
【図5】図4のV-V視断面図である。
【図6】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図7】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図8】ドラムブレーキにシューホールドダウン装置を組み付ける組付作業を説明する図である。
【図9】ドラムブレーキの制動時および解除時におけるシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面のブッシュの当接面上の摺動を示す図である。
【図10】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図2に対応するものである。
【図11】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図4に対応するものである。
【図12】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図5に対応するものである。
【図13】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図2に対応するものである。
【図14】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図4に対応するものである。
【図15】本発明の他の実施例のブッシュを示す図であり、図5に対応するものである。
【図16】従来のシューホールドダウン装置の構成を説明する断面図である。
【図17】従来のシューホールドダウン装置において、ドラムブレーキの制動時および解除時にシューホールドダウンピンの基端部のテーパー面がバッキングプレートの取付穴の周縁部上を摺動する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のパーキングブレーキ用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の2点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0019】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、上記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0020】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられたアンカー26と、そのアンカー26と一対のブレーキシュー22,24との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,30と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられてアジャストホイール34aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置34と、それら下端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置34を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング36とが備えられている。
【0021】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の板面と略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ38,40と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム42,44と、それらシューリム42,44の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング46,48とを備えてそれぞれ構成されている。また、ブレーキシュー22の一端部には、平板状のブレーキレバー50の基端部50aがピン52により回動可能に連結されており、ブレーキレバー50の基端部50aであってピン52に近い部分は、ストラット32のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面32aにシューウェブ38と共に係合させられている。また、ブレーキレバー50の先端部50bには、パーキングブレーキケーブル54が連結されている。
【0022】
一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ38,40の長手方向の中央付近にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置56,58によって拡開可能にバッキングプレート18に設けられている。シューホールドダウン装置56および58は相互に同様に構成されているので、以下においては一方のシューホールドダウン装置であるシューホールドダウン装置58を用いて説明する。
【0023】
シューホールドダウン装置58は、図2に示すように、ばね材から成る断面円形の線材が複数回巻回されたシューホールドダウンスプリング60と、そのシューホールドダウンスプリング60の両端にそれぞれ当接する略円板状の一対の円板部材62,64と、バッキングプレート18の所定位置に円形状に貫通された取付穴18aと、シューホールドダウンスプリング60に円板部材62を介して掛け止められる一端部とシューホールドダウンスプリング60、一対の円板部材62,64に貫通された貫通穴62a,64a、シューウェブ40に切り欠かれた切欠40aを通りバッキングプレート18の取付穴18aに掛け止められる他端部とを有するシューホールドダウンピン66と、バッキングプレート18の取付穴18aに嵌め着けられたブッシュ68とによって構成され、シューホールドダウンスプリング60がシューウェブ40からバッキングプレート18方向に圧縮されることによって発生する弾性復帰力を円板部材62、シューホールドダウンピン66、ブッシュ68を介してバッキングプレート18に伝達することによってブレーキシュー24をバッキングプレート18側に常時押圧させる。
【0024】
シューホールドダウンピン66は、図2に示すように、バッキングプレート18からシューウェブ40方向に伸びる略円柱状の軸部66aと、その軸部66aのバッキングプレート18の表面18b側の端部をヘディング加工することによって略円柱状の軸部66aの径よりも小さい厚みと略円柱状の軸部66aの径よりも大きい幅寸法Aを有した略半円板形状の先端係合部(先端部)66bと、軸部66aのバッキングプレート18の裏面18c側の端部に設けられたバッキングプレート18の取付穴18aの径より大きいテーパー形状の基端部66cとが鉄鋼により一体に構成されている。また、シューホールドダウンピン66の基端部66cには、シューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によりブッシュ68をバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接させるテーパー状のテーパー面66dが備えられている。
【0025】
図3に示すように、一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aは、シューホールドダウンピン66の軸心C方向において先端係合部66bと略同様な形状を成しているため、その軸心C方向において先端係合部66bの形状と貫通穴62a,64aの形状とが一致するように位置決めされるとシューホールドダウンピン66の先端係合部66bが一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aを挿通可能となり、その先端係合部66bが円板部材62の貫通穴62aから突出している状態で一対の円板部材62,64をシューホールドダウンピン66の軸心Cまわりに90度回転させるとその先端係合部66bが円板部材62に掛け止められる。
【0026】
図4、図5に示すように、ブッシュ68は、シューホールドダウンピン66の基端部66cよりも小径の貫通穴68aを中央に有しその貫通穴68aにシューホールドダウンピン66の軸部66aおよび先端係合部66bを挿通させる円板状の座板部68bと、その座板部68bの貫通穴68aの周縁部からバッキングプレート18の取付穴18aを通り表面18b側に突き出す円筒形状の円筒部68cと、その円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部68dとが弾性変形可能な合成樹脂、たとえば、フッ素樹脂で射出成形により一体に成形されることによって構成されている。
【0027】
また、図4、図5に示すように、ブッシュ68の爪部68dは、ブッシュ68の円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその円筒部68cの外周方向に連なるように複数個本実施例では12個突き出されており、その爪部68dには、バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合する係合面68eと、その爪部68dの外周面がテーパー状の傾斜面68fと、その爪部68dとブッシュ68の円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部とを連結する連結部68gとが一体に備えられている。また、図4、図5に示すように、ブッシュ68の座板部68bのバッキングプレート18側の面68hとブッシュ68の爪部68dの係合面68eとの間の距離B1は、バッキングプレート18の板厚Dと同じ或いは僅かに大きく設定され、その爪部68dの傾斜面68fにおけるその傾斜面68fの最小径B2はバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより小さく且つその傾斜面68fの最大径B3はその取付穴18aの径Eより大きくなるように設定されている。
【0028】
このため、図6に示すように、ブッシュ68をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ68の円筒部68cを取付穴18a内に嵌め入れようと矢印F方向に押圧すると、ブッシュ68の爪部68dの傾斜面68fが取付穴18aの周縁部18dに当接しその爪部68dが縮径させられてブッシュ68の円筒部68cが取付穴18a内に嵌め入れられる。そして、座板部68bのバッキングプレート18側の面68hがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接するまで更に矢印F方向に押圧すると、ブッシュ68の爪部68dがその弾性復帰力によってバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその爪部68dの係合面68eと取付穴18aの周縁部18dとが係合してバッキングプレート18にブッシュ68が取り付けられる。
【0029】
ブッシュ68の貫通穴68aの内周面には、シューホールドダウンピン66の基端部66cの径Gより小さくそのシューホールドダウンピン66の先端係合部66bの幅寸法Aより大きい径B4を有しシューホールドダウンピン66の軸部66aを遊動可能に挿通させる円柱形状の挿通面68iと、その挿通面68iから座板部68bの開口部に向かうにつれて貫通穴68aの径が大きくなるテーパー状の当接面68jとが備えられており、シューホールドダウンピン66の基端部66cがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によりその基端部66cのテーパー面66dをその貫通穴68aの当接面68jに当接させて、ブッシュ68の座板部68bのバッキングプレート18側の面68hとバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dとが当接させられる。また、基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の貫通穴68aの当接面68jに当接されている際そのテーパー面66dと当接面68jとは面接触し、シューホールドダウン装置58にブッシュ68がなく基端部66cのテーパー面66dが角が直角の取付穴18aの周縁部18dに線接触するに比較してその基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力による圧力が小さくなる。
【0030】
ここで、バッキングプレート18すなわちドラムブレーキ10に上記ブッシュ68を備えるシューホールドダウン装置58を組み付ける組付作業を図6乃至図8を用いて説明する。
【0031】
先ず、作業者は、図6に示すように、ブッシュ68を矢印F方向に押圧してバッキングプレート18の取付穴18aにそのブッシュ68の円筒部68cをたとえば圧入によって嵌め入れブッシュ68をバッキングプレート18に取り付ける。ブッシュ68がバッキングプレート18に取り付けられるとそのブッシュ68の爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合し作業者がブッシュ68を支えなくてもブッシュ68のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が防止される。
【0032】
次に、作業者は、図7に示すように、シューホールドダウンピン66の先端係合部66bをブッシュ68の貫通穴68aに挿通させてその基端部66cのテーパー面66dをブッシュ68の当接面68jに当接させシューホールドダウンピン66をバッキングプレート18から自立させる。そして、その状態のままでシューホールドダウンピン66の先端係合部66bからシューウェブ40の切欠40aを通し、一対の円板部材62,64およびシューホールドダウンスプリング60をそのシューホールドダウンピン66の軸心C方向において一対の円板部材62,64の貫通穴62a,64aの形状とシューホールドダウンピン66の先端係合部66bの形状とが一致するように位置決めしてシューホールドダウンピン66に通す。
【0033】
最後に、作業者は、図8に示すように、図示されていない治具を用いてシューホールドダウンピン66の先端係合部66bを円板部材62の貫通穴62aから突出するように押圧した状態で一対の円板部材62,64およびシューホールドダウンスプリング60をシューホールドダウンピン66の軸心C回りに回転させて、シューホールドダウン装置56がドラムブレーキ10に組み付ける。
【0034】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないパーキングブレーキ操作装置が操作されることによりパーキングブレーキケーブル54を介してブレーキレバー50の先端部50bがバッキングプレート18の中心側へ回動させられると、ブレーキシュー24がストラット32に押されて外周側へ移動させられると共にブレーキシュー22がピン52に押されて外周側へ移動させられて、一対のブレーキシュー22,24が拡開され制動力が発生させられる。
【0035】
図9に示すように、シューホールドダウンピン66の基端部66cは、ドラムブレーキ10の制動時においてブレーキシュー24が拡開するとシューホールドダウンピン66が傾いてその基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の当接面68j上を摺動する。その後のドラムブレーキ10の解除時においてブレーキシュー24がブレーキドラム14の内周面16から離間するとシューホールドダウンピン66が直立状態に戻りその基端部66cのテーパー面66dがブッシュ68の当接面68j上を摺動する。
【0036】
本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、バッキングプレート18の取付穴18aには、シューホールドダウンピン66の基端部66cよりも小径の貫通穴68aを有し、その貫通穴68aにシューホールドピン66の軸部66aを遊動可能に貫通させる座板部68bと、その座板部68bの貫通穴68aの周縁部からそのバッキングプレート18の表面18b側に突き出して取付穴18aに嵌め着けられる円筒部68cとを一体に有するブッシュ68が備えられており、ブッシュ68の貫通穴68aの内周面の端部には、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dと当接するテーパー状の当接面68jが形成されている。そのため、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dは、ブッシュ68によってバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されずそのブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接され、そのブッシュ68のテーパー状の当接面68jと当接する当接面積が従来の角が直角の取付穴18の周縁部18dと当接していた当接面積に比較して大きくなるので、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dにおけるシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力の集中が好適に抑えられシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとブッシュ68の当接面68jとの圧力が低くなる。これにより、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dの削れが従来に比較して好適に抑制される。
【0037】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、ブッシュ68は、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、ブッシュ68には、その円筒部68cのバッキングプレート18の表面18b側の端部からそのバッキングプレート18の取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部68dが径方向に連なるように一体に備えられているため、バッキングプレート18の取付穴18aにブッシュ68を嵌め入れるとそのブッシュ68の爪部68dがそのバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに係合するので、ブッシュ68のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が好適に防止される。また、ブッシュ68の当接面68jがシューホールドダウンピン66が構成される鉄鋼の硬度より低い弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dの削れが好適に防止される。また、ブッシュ68の当接面68jが弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によってブッシュ68の当接面68jに当接するとその当接面68jが弾性変形しその当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとが当接する当接面積が好適に大きくなる。また、ブッシュ68の当接面68jが弾性変形可能な合成樹脂で構成されることにより、シューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dがシューホールドダウンスプリング60の弾性復帰力によってブッシュ68の当接面68jに当接するとその当接面68jが弾性変形し、その当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとの隙間がなくなるので、バッキングプレート18の取付穴18aから浸入する水等の異物の浸入を好適に防止することができる。
【0038】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、爪部68dには、ブッシュ68の円筒部68cがバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れられる際バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接してその爪部68dを縮径させるテーパー状の傾斜面68fが備えられているため、ブッシュ68の円筒部62cをバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れようとすると爪部68の傾斜面68fがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接されてその爪部68dが縮径し、ブッシュ68の円筒部68cをバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れられると爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aを挿通して爪部68dの弾性復帰力によってその爪部68dがバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する。これにより、ブッシュ68をバッキングプレート18の取付穴18aに嵌め入れることによりそのブッシュ68を容易にバッキングプレート18に取り付けられる。
【0039】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58によれば、ブッシュ68は、フッ素樹脂で一体成形されているため、そのブッシュ68の当接面68iが摩擦係数の小さいフッ素樹脂で構成され、そのブッシュ68の当接面68jとシューホールドダウンピン66の基端部66cのテーパー面66dとの摩擦が小さくなるので、ドラムブレーキ10の制動時および解除時におけるシューホールドダウンピン68の先端係合部68bの移動が滑らかになる。
【実施例2】
【0040】
また、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の他の実施例において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0041】
本実施例のシューホールドダウン装置は、実施例1のブッシュ68と異なるブッシュ70を備える以外は実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様であって、図10乃至図12はそのブッシュ70を説明する図であり、前述の実施例1の図2、図4、図5に対応するものである。
【0042】
図10乃至図12に示すように、ブッシュ70は、実施例1の貫通穴68aと同様の貫通穴70aを有する実施例1の座板部68bと同様の座板部70bと、実施例1の円筒部68cと同様の円筒部70cと、その円筒部70cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその取付穴18aより外周側に突き出してその取付穴18aの周縁部18dに係合する爪部70dとが弾性変形可能なフッ素樹脂で一体に成形されることによって構成される。
【0043】
また、図10乃至図12に示すように、爪部70dは、ブッシュ70の円筒部70cのバッキングプレート18の表面18b側の端部から取付穴18aの径方向にその円筒部70cの外周方向に連続して一体に突き出されており、その爪部70dには、バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dと係合する係合面70eと、その爪部70dの外周面がテーパー状の傾斜面70fとが一体に備えられている。また、図10乃至図12に示すように、座板部70bのバッキングプレート18側の面70gと爪部70dの係合面70eとの間の距離B’1は、バッキングプレート18の板厚Dと同じ或いは僅かに大きく設定され、爪部70dの傾斜面70fにおけるその傾斜面70fの最小径B’2はバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより小さく且つその傾斜面70fの最大径B’3はその取付穴18aの径Eより大きくなるように設定されている。
【0044】
そのため、実施例1と略同様にブッシュ70をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ70の円筒部70cを取付穴18a内に嵌め入れようと押圧すると、ブッシュ70の爪部70dの傾斜面70fが取付穴18aの周縁部18dに当接しその爪部70dが縮径させられてブッシュ70の円筒部70cが取付穴18a内に嵌め入れられる。そして、座板部70bのバッキングプレート18側の面70gがバッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接するまで更に押圧すると、ブッシュ70の爪部70dがその弾性復帰力によってバッキングプレート18の取付穴18aの径方向に突き出してその爪部70dの係合面70eと取付穴18aの周縁部18dとが係合してバッキングプレート18にブッシュ70が取り付けられる。
【0045】
また、ブッシュ70の貫通穴70aの内周面には、実施例1の挿通面68iおよび当接面68jと同様の挿通面70hおよび当接面70iとが備えられているため、実施例2のシューホールドダウン装置には実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様の効果が備えられている。
【実施例3】
【0046】
本実施例のシューホールドダウン装置は、実施例1のブッシュ68と異なるブッシュ72を備える点以外は実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様であり、図13乃至図15はそのブッシュ72を説明する図である。
【0047】
図13乃至図15に示すように、ブッシュ72は、実施例1の貫通穴68aと同様の貫通穴72aを有する実施例1の座板部68bと同様の座板部72bと、その座板部72bの貫通穴70aの周縁部からバッキングプレート18の取付穴18aを通り表面18b側に突き出す円筒形状の円筒部72cとが弾性変形可能なフッ素樹脂で一体に成形されることによって構成される。
【0048】
また、図10乃至図12に示すように、ブッシュ72の円筒部72cは、その円筒部72cの外径寸法Hがバッキングプレート18の取付穴18aの径Eより僅かに大きく設定されている。
【0049】
そのため、ブッシュ72をバッキングプレート18に取り付けるためにそのブッシュ72の円筒部72cを取付穴18a内に嵌め入れようと押圧すなわち圧入すると、その円筒部72cが取付穴18a内に嵌め着けられブッシュ72がバッキングプレート18に取り付けられる。
【0050】
また、ブッシュ72の貫通穴72aの内周面には、実施例1の挿通面68iおよび当接面68jと同様の挿通面72eおよび当接面72fとが備えられているため、実施例3のシューホールドダウン装置には実施例1のシューホールドダウン装置58と略同様の効果が備えられている。また、本実施例では、ブッシュ72に爪部が備えられてなくブッシュ72の形状が実施例1のブッシュ68に比較して簡素化するためブッシュ72の製造コストを安価にすることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0052】
たとえば、本実施例のシューホールドダウン装置58において、シューホールドダウンピン66の先端係合部66bは円板部材62を介して間接的にシューホールドダウンスプリング60に掛け止められていたが、そのコイル状のシューホールドダウンスプリング60の代わりに板ばね型のシューホールドダウンスプリングを使用することによって、円板部材62なしでシューホールドダウンピン66の先端係合部66bを直接的にその板ばね型のシューホールドダウンスプリングに掛け止めることができる。そのため、シューホールドダウン装置58の部品点数を減少させることができる。
【0053】
また、本実施例のシューホールドダウン装置58において、ブッシュ68,70,72はフッ素樹脂で一体成形されたが必ずしもフッ素樹脂が使用される必要はなく、例えば耐久性、潤滑性のあるシリコーンゴム等のゴム系材料や樹脂が使用されても良い。さらには、上記材料で構成されたものに比較して効果が低いもののシューホールドダウンピン66と同様の鉄鋼によってブッシュが構成されても一定の効果がでる。
【0054】
また、本実施例のシューホールドダウン装置において、爪部が備えられていないブッシュ72は、その円筒部72cがバッキングプレート18の取付穴18aに圧入するためその円筒部72cの外径寸法Hが取付穴18aの径Eより大きく設定されていたが、その円筒部72cの外径寸法Hが取付穴18aの径Eより小さく設定されても良い。すなわち、シューホールドダウン装置がバッキングプレート18に取り付けられるとシューホルドダウンピン66の基端部66cによってブッシュ72は常時バッキングプレート18の取付穴18aの周縁部18dに当接され、ブッシュ72のバッキングプレート18の取付穴18aからの脱落が防止されるので、ブッシュ72の円筒部72cの外径寸法Hを取付穴18aの径Eより小さく設定しても良い。
【0055】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
18:バッキングプレート
18a:取付穴
18d:周縁部
22,24:ブレーキシュー
56,58:シューホールドダウン装置
60:シューホールドダウンスプリング
66:シューホールドダウンピン
66b:先端係合部(先端部)
66c:基端部
66d:テーパー面
68,70,72:ブッシュ
68a,70a,72a:貫通穴
68b,70b,72b:座板部
68c,70c,72c:円筒部
68d,70d:爪部
68f,70f:傾斜面
68j,70i,72f:当接面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューホールドダウンスプリングと、該シューホールドダウンスプリングに直接的或いは間接的に掛け止められる先端部と該シューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴の該バッキングプレートの裏側に配設される該バッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、該シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いて該シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面を該バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させて該ブレーキシューを該バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウン装置であって、
前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、該貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、該座板部の貫通穴の周縁部から該バッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、
前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されていることを特徴とするシューホールドダウン装置。
【請求項2】
前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、
前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部から該バッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出して該取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられていることを特徴とする請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項3】
前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接して該爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられていることを特徴とする請求項2のシューホールドダウン装置。
【請求項4】
前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至3にいずれか1のシューホールドダウン装置。
【請求項1】
シューホールドダウンスプリングと、該シューホールドダウンスプリングに直接的或いは間接的に掛け止められる先端部と該シューホールドダウンスプリングとブレーキシューとを通りバッキングプレートの所定位置に貫通された取付穴の該バッキングプレートの裏側に配設される該バッキングプレートの取付穴より大きいテーパ状の基端部とを有するシューホールドダウンピンとを備え、該シューホールドダウンスプリングの弾性復帰力を用いて該シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面を該バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接させて該ブレーキシューを該バッキングプレート側に押圧するシューホールドダウン装置であって、
前記バッキングプレートの取付穴には、前記シューホールドダウンピンの基端部よりも小径の貫通穴を有し、該貫通穴に前記シューホールドピンを遊動可能に貫通させる座板部と、該座板部の貫通穴の周縁部から該バッキングプレート側に突き出して前記取付穴に嵌め着けられる円筒部とを一体に有するブッシュが備えられており、
前記ブッシュの貫通穴の内周面の端部には、前記シューホールドダウンピンの基端部のテーパー面と当接するテーパー状の当接面が形成されていることを特徴とするシューホールドダウン装置。
【請求項2】
前記ブッシュは、弾性変形可能な合成樹脂で構成されており、
前記ブッシュには、前記円筒部の前記バッキングプレートの表側の端部から該バッキングプレートの取付穴の径方向にその取付穴より外周側に突き出して該取付穴の周縁部に係合する爪部が径方向に連なるように一体に備えられていることを特徴とする請求項1のシューホールドダウン装置。
【請求項3】
前記爪部には、前記ブッシュの円筒部が前記バッキングプレートの取付穴に嵌め入れられる際前記バッキングプレートの取付穴の周縁部に当接して該爪部を縮径させるテーパー状の傾斜面が備えられていることを特徴とする請求項2のシューホールドダウン装置。
【請求項4】
前記ブッシュは、フッ素樹脂で一体成形されていることを特徴とする請求項1乃至3にいずれか1のシューホールドダウン装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−256934(P2011−256934A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131440(P2010−131440)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】
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