説明

ショウガ画分の調製方法およびヒトCYP酵素を阻害するためのその使用

本発明は、ショウガ画分の製造方法、該方法により調製された画分、および、ヒトシトクロムP450(CYP)酵素(特にシトクロムP450 3A4、CYP3A4)を阻害して活性物質の経口生物学的利用能および薬物動態に正の影響を与えるための、それ単独または薬剤と組み合わせてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショウガ画分を調製する方法、該方法により調製された画分、および、ヒトシトクロムP450(CYP)酵素(特にシトクロムP450 3A4、CYP3A4)を阻害して活性物質の経口生物学的利用能および薬物動態に正の影響を与えるための、それ単独または薬剤と組み合わせてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
シトクロムP450(CYP)酵素は薬物代謝において中心的な役割を果たす。それらは主として肝臓で存在が見られるが、腸壁、肺、腎臓および他の肝外臓器においても見られる。経口投与された活性物質は、いわゆる“初回通過効果”の結果、低い生物学的利用能を示し得る;例えば、体循環に到達する前に腸壁または肝臓において代謝に供されるような活性物質などである。
初回通過代謝を阻害すると、経口投与された活性物質の生物学的利用能の著しい上昇を達成することができる(Gibbs, Megan A. and Hosea, Natalie A.: Factors affecting the clinical development of cytochrome P450 3A substrates; Clin. Pharmacokinet. 2003; 42(11), 969-984)。投与された活性物質よりも高い生物学的利用能が得られる活性物質-活性物質相互作用の多くの例はこの効果に基づく。そのようなケースでは、活性物質の初回通過代謝が、同時に投与された別の活性物質により阻害される。
【0003】
初回通過代謝を阻害することによって、活性物質の生物学的利用能を向上させることに加えて、生物学的利用能の変動性(絶対的な生物学的利用能が低下するに従って増加することが知られる)を著しく低減することができる。生物学的利用能の変動性を低減することによって、過剰に高い薬物レベル(望まない副作用のリスク)または過剰に低い薬物レベル(治療失敗のリスク)に曝される可能性が低くなるため、経口薬剤治療の治療有効性が決定的に向上される。
そのような効果は、薬物治療に特定の利点を有し得る。例えば、HIV 薬剤ロピナビルは、CYP3A4による初回通過代謝のため、生物学的利用能が不十分である。仮にそれがCYP3A4の強力な阻害剤であるリトナビルとの多剤混合薬で投与された場合、ロピナビルについてはるかに高い経口生物学的利用能が達成される。
【0004】
しかしながら、貧弱な経口生物学的利用能を有する活性物質を、別の活性物質または活性物質類似物質と組み合わせて、初回通過効果を低減することの可能性は限られている。これは主に付加的な活性物質の作用の態様に起因する。したがって、例えば、倫理上の問題のため、HIV-非感染患者に抗-リトナビル活性物質(HIV 感染症に適用される)を同時に与えて過剰に低い心臓血管用薬剤の生物学的利用能を向上させることはできない。許可された活性物質であっても、活性物質を代謝する酵素を阻害する目的のためには許可されない。
代わりに、この点については薬物添加物が有用であり得る。例えば、グレープフルーツ果汁のいくつかの成分はCYP3A4および腸壁内の薬物トランスポーターの強力な阻害剤である。先行技術には、薬剤をグレープフルーツ果汁と組み合わせることが、経口投与された活性物質(例えばシンバスタチン、シクロスポリンA、テルフェナジンなど)の薬物動態、安全性および効果に対して劇的な効果を有すること示す例が数多く含まれる(Ameer, Barbara and Weintraub, Randy A.: Drug interactions with grapefruit juice; Clin. Pharmacokinet. 1997; 33(2):103-121)。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の説明
ショウガ(Zingiber officinalis)は、世界の多くの部分において伝統的な食品成分であり、さらに様々な用途のための植物製剤としても使用される。例えば、粉末化したショウガの根は病気を予防するための調製品として入手可能である。
それは、非蒸気揮発性のピリッとした、または辛味性(hot)の画分と共に揮発性精油画分を含む、約5〜8%の粘性液体バルサム(オレオレジン)を含む。
淡黄色の精油はオレオレジンの約20〜25% を構成する。精油の組成は、その起源によって相当のばらつきがある。それは、主成分としてビサボレン型のセスキテルペン炭化水素、特に (-)-α-ジンギベレン、さらには (-)-β-セスキフェランドレン、(-)-β-ビサボレン、(+)-ar-クルクメンおよび非環式α-ファルネセンを含む (Deutsche Apothekerzeitung 1997, 137(47), 40-46)。
オレオレジンの約25%を構成する辛味性画分の主要成分は、ジンゲロールの同種のシリーズを構成する(HagerROM 2002: Zingiberis rhizoma, Springer Verlag, Heidelberg)。
【0006】
驚いたことに、様々な活性物質および他の化合物によるCYPの阻害のインビトロ試験により、本発明の抽出方法により得られたショウガ画分を使用することによって様々なヒト CYPの強力な阻害を達成し得ることを示した。
この画分は、市販の全ショウガ抽出物(いわゆるオレオレジン)および第1抽出ステップで分離されるショウガ精油の高揮発性画分(IC50 約23μg/ml)の両方と比較して、より高い阻害能力(IC50 1μg/ml 未満の範囲)を示す。
ここで得られた画分はヘキサンに難溶性であり、この特徴に関して、CYP3A4を阻害することが既に示されている精油の画分(US 5,665,386)と異なる。
本発明の方法は、商業的に入手可能なオレオレジンから出発し、かつ、有機および水性溶媒を使用するいくつかの抽出工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
したがって、本発明の第一の目的は、以下の工程を含む、精油を分離してショウガ画分を単離する方法である:
(a) オレオレジンを無極性有機溶媒で抽出する工程;
(b) 工程(a)からの合わせた残渣を温水で抽出し、上清を廃棄する工程。
このようにして得られた残渣は、CYP3A4に対して0.9μg/mLのIC50 値を有する。この値は、実験セクションに説明する実験におけるヒト肝ミクロソームを使用して達成される。
好ましい実施態様において、このようにして得られた残渣は、以下の工程を含む方法によりさらに精製される:
(c) 工程(b)からの合わせた残渣を温アルコールで抽出する工程、および
(d) 工程(c)からの合わせた上清を濃縮する工程。
工程(d)で得られた画分は、アルコール、好ましくはメタノールまたはエタノールに溶解し得、そして場合により例えば固相抽出およびステップワイズ溶出によりさらに分画してもよい。
【0008】
本発明において、工程(a)において使用し得る非極性溶媒としては、低沸点アルカン溶媒(例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ペンタンまたはシクロヘキサンなど)、石油化学蒸留物(petrochemical distillates)、プロペラントおよび溶剤(例えば、ペトロール、灯油、石油エーテル、石油など)および他の低沸点、揮発性および非極性溶媒(例えばジエチルエーテル、tert-ブチル-メチルエーテル、テトラヒドロキシフラン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなど)が挙げられ、ここで好ましくはヘキサンが使用される。
工程(c)および(e)で使用されるアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノールおよび他の位置異性体のブタノール、n-ペンタノールおよび他の位置異性体のペンタノールより選択し得、同一でも異なっていてもよい。好ましくはメタノールが使用される。各工程について、抽出剤は、使用したオレオレジンを基準として4〜10 mL/g、好ましくは 4 〜7 mL/gの量で使用される。
水性抽出は、好ましくは50〜80℃、特に好ましくは65〜75℃の温度で実施される。
この方法の代替法として、抽出を適当な水性有機酸で実施してもよいし、あるいは、有機溶媒による液体-液体抽出の代わりに、適当な非極性吸着剤による固相抽出を実施してもよい。
工程(a)、(b)および(c)で実施される抽出は1回または数回実施してもよく、ある工程の様々な抽出からの所望の生成物を含む相を合わせることができる。好ましくは、各工程において3回の抽出が実施され、そして、生成物を含む相が合わされる。合わされた相をその後さらに処理する。
【0009】
本発明の第2の目的は、本発明の方法の1つにより得られる、本発明のショウガ画分である。
下記一般式
【化1】

【0010】
(式中、
n は、1、2 または 3 の数を表し、
R1 は、H、CH3 を表し、
R2 は、H、CH3 を表し、
R3 は、H、OH、OCH3 を表し、
R4 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表し、かつ、
R5 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表す)
の少なくとも1つの化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーの1つを含むショウガ画分が好ましい。
【0011】
以下は、上記一般式 I〜VIの特に好ましい化合物として挙げるものである:
【化2】




【0012】
【化3】

そのエナンチオマーまたはジアステレオマー。
【0013】
一般式I〜VIの化合物は、本発明によって得られたショウガ画分から同定された。このショウガ画分をより詳細に特徴付け、その成分を明らかにするために、個別の成分の精製画分を単離する目的でそれを適切にさらに精製した。
これを行うために、本発明により得られたショウガ画分を C18 相上で、固相抽出によりさらに精製した。固相抽出の溶出液を乾燥させ、セミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でさらに詳細に調べた。これは、5〜10 mg という相当に小さなアリコットをセミ分取 HPLC システムにインジェクトすることにより行われた。その後、HPLC カラムの溶出液を60〜65の個別の画分に回収し、そして、このように得られた各画分の、様々な P450 テスト反応に対する阻害効果を調べた。これらの調査の結果は、より高い阻害能力のはっきりとした領域(ピーク)を明確に示した。
個別の画分の成分の化学構造を明確にするため、選択されたサンプルをさらに精製し、HPLCで繰り返し濃縮し、そして質量分析およびNMR分光法により解析した。
本発明により同定された化合物(1)〜(12)は、既に文献に十分に説明された、ショウガの非揮発性辛味性画分の典型的な成分である。ジンゲロールの様々な修飾産物およびその様々な類縁体に加えて、ショウガの既知の主成分である [8]-ジンゲロール (12)、さらには、最も多い量で存在する主成分である[6]-ジンゲロールの分解産物である [6]-ショウガオール (9) もまた発見された。
これにより、説明した方法により調製されたショウガ画分は非揮発性辛味性画分に由来するものであり、また、CYP 酵素の阻害は、ジンゲロール型の成分およびその構造修飾体および分解産物によりもたらされることが確認された。
【0014】
本発明の第3の目的は、シトクロム P450 酵素、特に シトクロム P450 3A4、1A2、2C19 および 2C9 を阻害するための医薬組成物を調製するための、本発明のショウガ画分およびそれから単離された1または2以上の一般式 (I)〜(VI)の化合物の使用である。また好ましくは、シトクロム P450 1A2、P450 2C19 および P450 2C9 が阻害される。
本発明の第4の目的は、シトクロム P450 1A2、2C9 および 2C19 を阻害するための医薬組成物を調製するための、1または2以上の下記一般式























【0015】
【化4】

【0016】
(式中、
n は、1、2 または 3 の数を表し、
R1 は、H、CH3 を表し、
R2 は、H、CH3 を表し、
R3 は、H、OH、OCH3 を表し、
R4 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表し、かつ
R5 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表す)
の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーの使用である。
【0017】
以下の一般式I〜IVの化合物が、特に好ましいものであると言及される:
【化5】











【0018】
【化6】

およびそのエナンチオマーおよびジアステレオマー。
【0019】
本発明の第5の目的は、ヒト シトクロム P450 (CYP) 酵素、特にシトクロム P450 3A4、1A2、2C19 および 2C9 を阻害して活性物質の経口生物学的利用能および薬物動態に正の影響を与えるための医薬組成物を調製するための、医薬組成物と組み合わせての本発明のショウガ画分ならびにそれから単離された1または2以上の一般式(I)〜(VI)の化合物の使用である。また好ましくは、シトクロム P450 1A2、2C19 および 2C9 が阻害される。
【0020】
多くの活性物質は低い経口生物学的利用能を有し、それはいわゆる初回通過代謝により引き起こされる。これは、経口投与された活性物質が、血流中をその標的臓器に移動することができる前に小腸または肝臓において代謝分解することである。
前述の活性物質(すなわち薬剤の薬理的に活性な成分)は、最も広い意味で心臓血管系に作用する薬剤から選択し得、以下を含む:血液の組成(例えば血中脂質)に影響するように作用する物質; 中枢神経系に作用する薬剤; 代謝系疾患(例えば糖尿病)を治療するための薬剤); 最も広い意味において炎症性症状を治療するための薬剤; 免疫系に影響するための薬剤; 細菌、原生動物、多細胞寄生生物、ウィルス、真菌(fungi)またはプリオンによる感染症を治療するための薬剤; 様々な器官(特に脳)における退化プロセスを停止または緩和するための薬剤、および癌を治療するための薬剤。
“薬剤”の用語は、ヒトまたは動物の体に投与することによって、
1. 疾患、軽い病気、怪我または病理的疾患を治療、緩和、予防または検出すること;
2. 体または精神状態の性質、状態または機能を明らかにすること;
3. ヒトまたは動物の体により生産された活性物質または体液を置き換えること;
4. 体とは異質の無害な病原体、寄生生物または物質を防ぐ、排除するまたは分解(render)すること、あるいは、
5. 体または精神状態の性質、状態または機能に影響を及ぼすこと、
を意図する物質および物質製剤を意味する。
このケースにおけるシトクロム P450 (CYP) 酵素は、現在の科学知識に基づいて薬剤の代謝に関与するシトクロム P450 モノオキシゲナーゼのファミリーからの酵素である。具体的には、これらはすべて、CYP1A、CYP1B、CYP2A、CYP2B、CYP2C、CYP2D、CYP2E、CYP2F、CYP2J、CYP3A、CYP4A のファミリーのP450 酵素である。
【0021】
本発明の第6の目的は、経口投与用の医薬化合物の生物学的利用能を向上させるための医薬組成物の製造方法に関し、ここで、前記方法は、そのような治療が必要な人に前記医薬化合物を請求項8から10のいずれか1項記載のショウガ画分と共に経口投与することを含み、ショウガ画分は医薬化合物の生物学的利用能を、医薬化合物をそれ単独での投与と比較して向上させるのに必要な量で投与される。
前記医薬化合物は、シトクロム P450 酵素、好ましくは P450 3A4、1A2、2C9 および 2C19 により代謝されることを特徴とする。
本発明の第7の目的は、本発明によって得ることができるショウガ画分または一般式 I〜VIの少なくとも1つの化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む医薬製剤に関し、それは活性物質の経口生物学的利用能および薬物動態を向上させるための1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤と一緒であってもよい。
【0022】
好ましくは、この種の医薬組成物は、互いに物理的に分離されていてもよい2以上の構成物からなり、以下を含む:
(a) 本発明のショウガ画分および1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤からなる第1の構成物; および
(b) シトクロム P450 酵素により代謝される医薬化合物および1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を含む第2の構成物。
好ましい医薬組成物においては、第1の構成物は、少なくとも1の一般式 I〜VIの化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。
より好ましい医薬組成物においては、第1の構成物は、少なくとも1の式(1)〜(12)の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーからなる。
第2の構成物に含まれる医薬組成物は、好ましくは酵素 シトクロム P450 1A2、3A4、2C9 および 2C19 により代謝される。
医薬的に許容される担体および/または希釈剤として、トウモロコシデンプン、ラクトース、グルコース、微結晶性セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、水/エタノール、水/グリセロール、水/ソルビトール、水/ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、セチルステアリルアルコール、カルボキシメチルセルロースまたは脂肪質物質(たとえば固形脂肪など)あるいはその適切な混合物を、錠剤、コート錠、カプセル剤、散剤、懸濁剤、液剤、定量エアゾール剤または座剤などの従来型の生薬製剤に、通常の方法により導入することができる。
【実施例】
【0023】
実験セクション
10 g のオレオレジン (Eramex Aromatics GmbH) を50 mL ヘキサンで3回抽出し、上清(有機相)を廃棄した。残渣を集め、70℃に温めた40 mL の水で3回抽出した。再び上清を廃棄し、集めた残渣を70℃に温めた40 mL のメタノールで3回抽出した。残渣を廃棄した。得られた上清をロータリーエバポレーションにより濃縮し、再びメタノールに溶解した。
ダイアグラム 1 は、本発明のショウガ画分のオレオレジンの抽出プロセス(精油が分離される)の概略を示す。
【0024】
【化7】

【0025】
このようにして得られたショウガ画分を、その後、C18 相上での固相抽出によりさらに精製した。固相抽出の溶出液を乾燥させ、そしてセミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりさらに分析した。ここでは、5〜10 mgの少量のアリコットをセミ分取 HPLC システムにインジェクトした。その後、HPLC カラムの溶出液を60 から 65 の個別の画分に回収し、得られた各画分の様々な P450 テスト反応に対する阻害効果を調べた。これらの解析の結果(図1〜4)は、より高い阻害能力のはっきりとした領域(ピーク)を明確に示した。
【0026】
ヒト肝ミクロソームでの実験
テスト(A):
(エリスロマイシン N-脱メチル化は、CYP 3A4 の特異的試験反応に使用される。)
ショウガ画分または抽出プロセスの様々な画分のCYPの阻害を調べた。これは、100μg のヒト肝ミクロソームを、0.01〜100μg のショウガ画分および7.34μg (10 nmol) のエリスロマイシンと共に、pH 7.4でNADPHの存在下でインキュベートすることを含む。CYP 活性の阻害は、ショウガ画分を含まない対照インキュベーション(溶媒濃度同じ)との比較により評価される。
【0027】
テスト B:
(フェナセチン O-脱エチル化は、CYP 1A2 の特異的試験反応に使用される。)
ショウガ画分または抽出プロセスの様々な画分のCYPの阻害を調べた。これは、125 mg のヒト肝ミクロソームを、0.01〜100 mg のショウガ画分および5 nmol フェナセチンと共に、pH 7.4でNADPHの存在下(1 mM)で、総容積250μlでインキュベートすることを含む。CYP 活性の阻害は、ショウガ画分を含まない対照インキュベーション(溶媒濃度同じ)との比較により評価される。
【0028】
テスト C:
(S-メフェニトイン 4'-ヒドロキシル化は、CYP 2C19 の特異的試験反応に使用される。)
ショウガ画分または抽出プロセスの様々な画分のCYPの阻害を調べた。これは、125 mg のヒト肝ミクロソームを、0.01〜100 mg のショウガ画分および12.5 nmol S-メフェニトインと共に、pH 7.4でNADPHの存在下(1 mM)で、総容積250μlでインキュベートすることを含む。CYP 活性の阻害は、ショウガ画分を含まない対照インキュベーション(溶媒濃度同じ)との比較により評価される。
【0029】
テスト D:
(トルブタミド ヒドロキシル化は、CYP 2C9 の特異的試験反応に使用される。)
ショウガ画分または抽出プロセスの様々な画分のCYPの阻害を調べた。これは、125 mg のヒト肝ミクロソームを、0.01〜100 mg のショウガ画分および37.5 nmol トルブタミドと共に、pH 7.4でNADPHの存在下(1 mM)で、総容積250μlでインキュベートすることを含む。CYP 活性の阻害は、ショウガ画分を含まない対照インキュベーション(溶媒濃度同じ)との比較により評価される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ショウガ抽出物のHPLC分離および溶出HPLC画分のCYP3A4阻害効果の測定(回収時間:1分)を示す。
【図2】ショウガ抽出物のHPLC分離および溶出HPLC画分のCYP1A2阻害効果の測定(回収時間:1分)を示す。
【図3】ショウガ抽出物のHPLC分離および溶出HPLC画分のCYP2C19阻害効果の測定(回収時間:1分)を示す。
【図4】ショウガ抽出物のHPLC分離および溶出HPLC画分のCYP2C9阻害効果の測定(回収時間:1分)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、精油を分離してショウガ画分を単離する方法:
(a) オレオレジンを非極性有機溶媒で抽出する工程;
(b) 工程(a)からの合わせた残渣を温水で抽出し、上清を廃棄する工程。
【請求項2】
工程(b)からの合わせた残渣が、以下の工程を含む方法によりさらに精製される、請求項1記載の方法:
(c) 温アルコールで抽出する工程、および
(d) 工程(c)からの合わせた上清を濃縮する工程。
【請求項3】
工程(a)において、非極性溶媒として、低沸点アルカン溶媒、石油化学蒸留物、プロペラントまたは他の低沸点、揮発性および非極性溶媒が使用される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において、非極性溶媒としてヘキサンが使用される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程(c)において、アルコールとして、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-プロパノール、n-ブタノールおよび他の位置異性体のブタノール、n-ペンタノールおよび他の位置異性体のペンタノールが使用される、請求項2記載の方法。
【請求項6】
工程(c)において、アルコールとしてメタノールが使用される、請求項2記載の方法。
【請求項7】
工程(a)、(b)および(c)に使用される抽出剤が、各工程について、使用したオレオレジンを基準として4〜10 mL/gの量で使用される、請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項記載の方法により得ることができるショウガ画分。
【請求項9】
下記一般式
【化1】

(式中、
n は、1、2 または 3 の数を表し、
R1 は、H、CH3 を表し、
R2 は、H、CH3 を表し、
R3 は、H、OH、OCH3 を表し、
R4 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表し、かつ、
R5 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表す)
の少なくとも1つの化合物を含む、請求項8記載のショウガ画分。
【請求項10】
以下の少なくとも1つの化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む、請求項8または9記載のショウガ画分。
【化2】

【化3】

【請求項11】
シトクロム P450 酵素を阻害するための医薬組成物を調製するための、請求項8から10のいずれか1項記載のショウガ画分の使用。
【請求項12】
ヒト シトクロム P450 酵素を阻害するための医薬組成物を調製するための、請求項9または10記載の1または2以上の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーの使用。
【請求項13】
シトクロム P450 3A4、1A2、2C19 および 2C9 が阻害される、請求項11または12記載の使用。
【請求項14】
シトクロム P450 1A2、2C9 および 2C19 が阻害される、請求項11または12記載の使用。
【請求項15】
シトクロム P450 1A2、2C9 および 2C19 を阻害するための医薬組成物を調製するための、下記一般式
【化4】

(式中、
n は、1、2 または 3 の数を表し、
R1 は、H、CH3 を表し、
R2 は、H、CH3 を表し、
R3 は、H、OH、OCH3 を表し、
R4 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表し、かつ、
R5 は、H、O、OH、OCH3、OC(O)CH3 を表す)
の化合物の1または2以上、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーの使用。
【請求項16】
一般式I〜IVの化合物が以下より選択される、請求項15記載の使用:
【化5】

【化6】

そのエナンチオマーまたはジアステレオマー。
【請求項17】
ヒト シトクロム P450 (CYP) 酵素を阻害するための医薬組成物を調製するための、医薬組成物と組み合わせての請求項8から10のいずれか1項記載のショウガ画分の使用。
【請求項18】
ヒト シトクロム P450 酵素を阻害するための医薬組成物を調製するための、医薬組成物と組み合わせての1または2以上の請求項9または10記載の化合物の使用。
【請求項19】
酵素が、シトクロム P450 3A4、1A2、2C19 または 2C9 である、請求項17または18記載の使用。
【請求項20】
酵素が、シトクロム P450 1A2、2C19 または 2C9 である、請求項17または18記載の使用。
【請求項21】
経口投与用の医薬化合物の生物学的利用能を向上させるための医薬組成物の製造方法であって、そのような治療が必要な人に、前記医薬化合物を請求項8から10のいずれか1項記載のショウガ画分と共に経口投与することを含み、ここで、ショウガ画分は医薬化合物の生物学的利用能を、医薬化合物をそれ単独での投与と比較して向上させるのに必要な量で投与される前記製造方法。
【請求項22】
医薬化合物がシトクロム P450 3A4 酵素により代謝される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
医薬化合物がシトクロム P450 1A2 酵素により代謝される、請求項21記載の方法。
【請求項24】
医薬化合物がシトクロム P450 2C9 酵素により代謝される、請求項21記載の方法。
【請求項25】
医薬化合物がシトクロム P450 2C19 酵素により代謝される、請求項21記載の方法。
【請求項26】
少なくとも1つの一般式I〜VIの化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む医薬製剤であって、1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤と一緒であってもよい、前記医薬製剤。
【請求項27】
少なくとも1つの式(1)〜(12)の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む医薬製剤であって、1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤と一緒であってもよい、前記医薬製剤。
【請求項28】
互いに物理的に分離されていてもよい2以上の構成物からなる医薬組成物であって、以下を含む前記医薬組成物:
(a) 請求項8から10のいずれか1項記載のショウガ画分および1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤からなる第1の構成物; および
(b) シトクロム P450 酵素により代謝される医薬化合物および1または2以上の医薬的に許容される担体および/または希釈剤を含む医薬組成物を含む第2の構成物。
【請求項29】
第1の構成物が、少なくとも1つの請求項9または10記載の化合物、そのエナンチオマーまたはジアステレオマーを含む、請求項28記載の医薬組成物。
【請求項30】
第2の構成物の医薬化合物が、酵素 シトクロム P450 1A2、3A4、2C9 および 2C19 により代謝される、請求項28または29記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−511566(P2008−511566A)
【公表日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528710(P2007−528710)
【出願日】平成17年8月20日(2005.8.20)
【国際出願番号】PCT/EP2005/009020
【国際公開番号】WO2006/024414
【国際公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】