説明

ショウジョウバエ由来生理活性ペプチド

【課題】害虫駆除薬又は医薬として有用なショウジョウバエ由来の新規生理活性ペプチドの提供。
【解決手段】特定な配列のアミノ酸配列からなるペプチド又はペプチドアミド、当該アミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個のアミノ酸残基が置換等がされたアミノ酸配列からなり、変異前のペプチド又はペプチドアミドと同等のIDA−1Rに対する結合活性を有する変異ペプチド又はペプチドアミド、及び上記と異なる、特定な配列のアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換等がされたアミノ酸配列からなり、変異前のペプチド又はペプチドアミドと同等のIDA−2Rに対する結合活性を有する変異ペプチド又はペプチドアミドからなる群より選ばれる、単離されたペプチド又はペプチドアミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショウジョウバエ由来生理活性ペプチドに関し、害虫駆除薬または医薬の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのGタンパク質共役型受容体(GPCR)に対するリガンド、特に生理活性ペプチドは、幅広い生理現象に関わっていることから医薬品としての応用が進められている。しかし、ショウジョウバエを含む昆虫では未知の生理活性ペプチドの探索はあまり行われていなかった。昆虫における生理活性ペプチドとその受容体に関する最近の知見として、脂質動員ホルモン(AKH)の受容体の発見(非特許文献1)、GPCRとβ−2−アレスチン2との相互作用に基づく、ショウジョウバエ神経ペプチド受容体の同定(非特許文献2)などが知られている。
【0003】
オーファンGPCRに対する内在性リガンドの探索は活発に行われているが、近年、哺乳類での新たな発見に関する報告は減少している。一例として、オーファンGPCRとして知られていた成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)の内在性リガンドとして、ラットおよびヒトのグレリン(Ghrelin)が報告された(非特許文献3)。グレリンは、医薬品への応用開発が進められている。本発明者らは、最近、ネコのグレリンを同定した(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】PNAS, 2002, Vol.99, pp.3446-3451
【非特許文献2】Journal of Biological Chemistry, 2003, Vol.278, pp.52172-52178
【非特許文献3】Nature, 1999, Vol.402, pp.656-660
【非特許文献4】Domestic Animal Endocrinology, 2007, Vol.32, pp.93-105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
天然に存在する生理活性物質は、これまでに医薬品の有効成分、生活必需品の成分として利用され、人類の健康増進に大いに貢献してきた。したがって、新規生理活性物質の探索は、新規有効成分医薬品ばかりではなく新規効能医薬品の候補を提供するためにも重要であるが、哺乳類での未知の生理活性ペプチドリガンドの発見は減少している。したがって、本発明の目的は、新規生理活性ペプチドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ショウジョウバエオーファンGPCRとして、哺乳類オーファン受容体であるbombesin receptor subtype-3(BRS-3)受容体に類似しているCG14593(IDA−1R)およびCG30106(IDA−2R)に着目し、内在性リガンドを探索した。その結果、CG14593(IDA−1R)およびCG30106(IDA−2R)に対する内在性リガンドをそれぞれ単離し、当該リガンドと相同なアミノ酸配列を有するペプチドが様々な昆虫においても存在することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明は、以下のものを提供する:
〔1〕 (1)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(3)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−1Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド、および
(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−2Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド
からなる群より選ばれる、単離されたペプチドまたはペプチドアミド。
〔2〕 (1)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(3)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−1Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド、および
(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−2Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド
からなる群より選ばれるペプチドまたはペプチドアミドからなる、IDA−1RまたはIDA−2Rに対するリガンド。
〔3〕 前記〔1〕記載のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する、昆虫の摂食抑制剤。
〔4〕 前記〔1〕記載のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する、害虫駆除剤。
〔5〕 前記〔1〕記載のペプチドまたはペプチドアミドに結合する抗体。
〔6〕 前記〔1〕記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
〔7〕 idalin-1および/またはidalin-2の発現を特異的に阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤。
〔8〕 下記いずれかの二本鎖RNAを含有する、前記〔7〕記載の成長促進剤:
配列番号5の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号7の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。
〔9〕 IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤。
〔10〕 IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を調節する物質が、以下の(i)〜(iii)のいずれかである、前記〔9〕記載の成長促進剤:
(i)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする遺伝子のアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸またはターゲッティングベクター、
(ii)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rに対する抗体、当該抗体をコードする核酸、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rのドミナントネガティブ変異体または当該変異体をコードする核酸、または
(iii)(i)もしくは(ii)の核酸を含む発現ベクター。
〔11〕 RNAi誘導性核酸が下記いずれかの二本鎖RNAである、前記〔10〕記載の成長促進剤:
配列番号34の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号36の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の単離されたペプチドまたはペプチドアミドは、ショウジョウバエオーファンGPCRであるCG14593(IDA−1R)またはCG30106(IDA−2R)に結合するリガンドであり、それぞれidalin-1またはidalin-2ファミリーを構成する。idalin-1およびidalin-2は、多くの昆虫で高度に保存されていた。idalin-1の過剰発現ショウジョウバエは摂食が抑制され、幼虫の発育、成虫への羽化率が低い。idalin-1の作用をブロックしたハエは、摂食量が増加する。ショウジョウバエを絶食させると、idalin-1の発現量が減少する。以上の点から、idalin-1およびidalin-2は昆虫における摂食抑制ペプチドであり、害虫の発育阻害剤としての利用が期待される。また、idalin-1およびidalin-2は、昆虫にのみ作用するので哺乳類には安全である。さらに、idalin-1およびidalin-2は、ペプチドであるので分解されやすく環境への負荷が少ない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】脊椎動物Bombesin/Gastrin Releasing Peptide receptorファミリーに属する遺伝子ならびにショウジョウバエGPCRのCG14593(IDA−1R)およびCG30106(IDA−2R)の系統樹である。
【図2】ショウジョウバエペプチド抽出物からゲル濾過で展開したサンプルをCG14593(IDA−1R)過剰発現CHO細胞に添加し、細胞内カルシウム上昇活性を示す(黒棒)グラフである。
【図3】CG14593(IDA−1R)に対する最終精製を示すチャートである。
【図4】CG14593(IDA−1R)に対する最終精製物をアミノ酸シークエンス、質量分析により解析した結果から導き出されたアミノ酸配列、CG14375(idalin-1)を示す。2位のシステインと9位のシステインとの間には分子内ジスルフィド結合を有する。
【図5】CG14593(IDA−1R)に結合するリガンドidalin-1の前駆体CG14375のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。idalin-1が由来する領域を下線にて示す。(1)配列番号1、(2)配列番号2、(3)配列番号3、(注)C末端アミド化のためのアミドドナーとしてのグリシン。それぞれの配列は最終精製後、質量分析にて確認した。また、配列1〜3についてC末端アミド化がされていない物も確認した。
【図6】idalin-1をジチオスレイトール(DTT)にて還元し、S−S結合が切れた物をHPLCで回収したチャートを示す。
【図7】ショウジョウバエペプチド抽出物からゲル濾過で展開したサンプルをCG30106(IDA−2R)過剰発現CHO細胞に添加し、細胞内カルシウム上昇活性を示す(黒棒)グラフである。
【図8】CG30106(IDA−2R)に対する最終精製を示すチャートである。
【図9】CG30106(IDA−2R)に対する最終精製物をアミノ酸シークエンス、質量分析により解析した結果から導き出されたアミノ酸配列、CG14358(idalin-2)を示す。2位のシステインと9位のシステインとの間には分子内ジスルフィド結合を有する。
【図10】CG30106(IDA−2R)に結合するリガンドidalin-2の前駆体CG14358のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を示す。idalin-2が由来する領域を下線にて示す。配列番号4、(注)C末端アミド化のためのアミドドナーとしてのグリシン。
【図11】idalin-2をジチオスレイトール(DTT)にて還元し、S−S結合が切れた物をHPLCで回収したチャートを示す。
【図12A】IDA−1R(CG14593)とidalin-1(CG14375:配列番号1)またはidalin-2(CG14358:配列番号4)との結合試験の結果を示す。IDA−1R過剰発現CHO細胞での細胞内カルシウムの変化を示す。
【図12B】IDA−2R(CG30106)とidalin-1(CG14375:配列番号1)またはidalin-2(CG14358:配列番号4)との結合試験の結果を示す。IDA−2R過剰発現CHO細胞での細胞内カルシウムの変化を示す。
【図13】リアルタイムPCRによるショウジョウバエ(オス、メス)の頭部と身体におけるidalin-1、idalin-2、IDA−1R、IDA−2RのmRNAの発現量の解析結果を示す。
【図14】ラジオイムノアッセイによるidalin-1 C末端側認識特異抗体の抗体価チェックの結果を示す。
【図15】ラジオイムノアッセイによるidalin-1 C末端側認識特異抗体のスタンダードチェックの結果を示す。
【図16】ラジオイムノアッセイによるidalin-1トランスジェニックハエとRNAiハエにおけるidalin-1の含量を示す。
【図17】idalin-1トランスジェニックハエ(図17A、B)とコントロールハエ(図17C、D)の幼虫の壁を登る行動を比較した図である。
【図18】コントロールハエにおいて絶食後のidalin-1、idalin-2 mRNAの発現量をリアルタイムPCRにて解析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において、アミノ酸、(ポリ)ペプチド、(ポリ)ヌクレオチドなどの略号による表示は、IUPAC−IUBの規定〔IUPAC-IUB Communication on Biological Nomenclature, Eur. J. Biochem., 138: 9 (1984)〕、「塩基配列またはアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(日本国特許庁編)、および当該分野における慣用記号に従う。
【0011】
本明細書において「ポリヌクレオチド」または「遺伝子」とは、2本鎖DNAのみならず、それを構成するセンス鎖およびアンチセンス鎖といった各1本鎖DNAならびにRNAを包含する趣旨で用いられる。また、その長さによって特に制限されるものではない。したがって、本明細書においてポリヌクレオチドとは、特に言及しない限り、ゲノムDNAを含む2本鎖DNAおよびcDNAを含む1本鎖DNA(正鎖)および該正鎖と相補的な配列を有する1本鎖DNA(相補鎖)、ならびにこれらの断片のいずれもが含まれる。また当該「ポリヌクレオチド」には、特定の塩基配列(配列番号:5または7)で示される「ポリヌクレオチド」だけでなく、これらによりコードされるポリ(ペプチド)と生物学的機能が同等であるポリ(ペプチド)(例えば同族体(ホモログやスプライスバリアントなど)、変異体および誘導体)をコードする「ポリヌクレオチド」が包含される。かかる同族体、変異体または誘導体をコードする「ポリヌクレオチド」としては、具体的には、ストリンジェントな条件下で、前記の配列番号:5または7で示されるいずれかの特定塩基配列の相補配列とハイブリダイズする塩基配列からなる「ポリヌクレオチド」を挙げることができる。なお、ここでストリンジェントな条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques Methods in Enzymology, Vol. 152, Academic Press, San Diego CA) に教示されるように、核酸の融解温度(Tm)に基づいて決定することができる。例えばハイブリダイズ後の洗浄条件として、通常「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度の条件を挙げることができる。相補鎖はかかる条件で洗浄しても対象とする正鎖とハイブリダイズ状態を維持するものであることが好ましい。特に制限されないが、より厳しいハイブリダイズ条件として「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度、さらに厳しいハイブリダイズ条件として「0.1×SSC、0.1%SDS、65℃」程度の洗浄条件を挙げることができる。
【0012】
例えばショウジョウバエ由来のポリ(ペプチド)のホモログをコードするポリヌクレオチドとしては、当該ポリ(ペプチド)をコードするショウジョウバエ遺伝子に対応する蚊、カイコ、ハチなどの昆虫を始めとする他生物種の遺伝子が例示でき、これらの遺伝子(ホモログ)は、HomoloGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/HomoloGene/)により同定することができる。具体的には、特定のショウジョウバエの塩基配列をBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:5873-5877, 1993、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)にかけて一致する(Scoreが最も高く、E-valueが0でかつIdentityが100%を示す)配列のアクセッション番号を取得する。そのアクセッション番号をUniGene(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/UniGene/)に入力して得られたUniGene Cluster ID(Hs.で示す番号)をHomoloGeneに入力する。結果として得られた他の生物種の遺伝子とショウジョウバエ遺伝子との遺伝子ホモログの相関を示したリストから、特定の塩基配列で示されるショウジョウバエ遺伝子に対応する遺伝子(ホモログ)として他の生物種の遺伝子を選抜することができる。
なお、ポリヌクレオチドまたは遺伝子は、機能領域の別を問うものではなく、例えば発現制御領域、コード領域、エキソンまたはイントロンを含むことができる。
【0013】
単離された本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、本発明者らにより見出された下記(1)idalin-1および(2)idalin-2(これらは、ショウジョウバエに由来するものである)、ならびにそれらと同等の活性を有する変異ペプチドまたは変異ペプチドアミド(3)および(4)から構成されるペプチド群である。本発明においては、ペプチドまたはペプチドアミドのいずれも本発明の目的に使用することができる。本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、図7に示すように、2つのシステイン残基が分子内ジスルフィド結合している。特に明記しない限り、本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、ジスルフィド結合を有するものである。
【0014】
(1)idalin-1:
QAYGHVYGGH−NH(配列番号1)
KKGQAYGHVYGGH−NH(配列番号2)
AQQSQAKKGQAYGHVYGGH−NH(配列番号3)
上記アミノ酸配列のそれぞれについて、C末端はアミド化されていてもいなくてもよい。以下、idalin-1を代表して、配列番号1で表されるペプチドアミドをidalin-1と称する場合がある。
【0015】
(2)idalin-2:
LEYGHSWGAH−NH(配列番号4)
上記アミノ酸配列のC末端はアミド化されていてもいなくてもよい。以下、idalin-2を代表して、配列番号4で表されるペプチドアミドをidalin-2と称する場合がある。
【0016】
(3)idalin-1の変異ペプチドまたは変異ペプチドアミド
配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個(好ましくは1〜3個)のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであっても、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−1Rに対する結合活性を有する限り本発明のペプチドまたはペプチドアミドに含まれる。
ここで「同等のIDA−1Rに対する結合活性を有する」とは、実施例4に示す受容体結合試験において、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等の結合親和性を有することをいう。同等の結合親和性としては、10−11〜10−6M程度の結合親和性が例示される。
【0017】
「アミノ酸残基の置換」としては、例えば保存的アミノ酸置換があげられる。保存的アミノ酸置換とは、特定のアミノ酸を、そのアミノ酸の側鎖と同様の性質の側鎖を有するアミノ酸で置換することをいう。具体的には、保存的アミノ酸置換では、特定のアミノ酸は、そのアミノ酸と同じグループに属する他のアミノ酸により置換される。同様の性質の側鎖を有するアミノ酸のグループは、当該分野で公知である。例えば、このようなアミノ酸のグループとしては、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、中性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)があげられる。また、中性側鎖を有するアミノ酸は、さらに、極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン)、および非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)に分類することもできる。また、他のグループとして、例えば、芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン)、水酸基(アルコール性水酸基、フェノール性水酸基)を含む側鎖を有するアミノ酸(例えば、セリン、トレオニン、チロシン)などもあげることができる。また、ヒスチジンとメチオニンとの置換、グルタミン酸とセリンとの置換などもあげられる。
【0018】
「アミノ酸残基の欠失」としては、例えば、各配列番号で表されるアミノ酸配列の中から、システイン残基を除く任意のアミノ酸残基を選択して欠失させることがあげられる。
【0019】
「アミノ酸残基の付加」としては、各配列番号で表されるアミノ酸配列のN末端またはC末端側に、1〜5個のアミノ酸残基を付加させることがあげられる。
【0020】
idalin-1の変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドの好適な具体例は、表1にリストされている。
【0021】
(4)idalin-2の変異ペプチドまたは変異ペプチドアミド
配列番号4で表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列であっても、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−2Rに対する結合活性を有する限り、本発明のペプチドまたはペプチドアミドに含まれる。
ここで「同等のIDA−2Rに対する結合活性を有する」とは、実施例4ならびに図12AおよびBに示す受容体結合試験において、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等の結合親和性を有することをいう。同等の結合親和性としては、10−11〜10−6M程度の結合親和性が例示される。
【0022】
「アミノ酸残基の置換」、「アミノ酸残基の欠失」および「アミノ酸残基の付加」は、上記(3)で説明した通りである。
【0023】
idalin-2の変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドの好適な具体例は、表2にリストされている。
【0024】
上記アミノ酸はL体、D体およびDL体を包含するものであるが、通常、L体であることが好ましい。本発明のペプチドは、通常のペプチド合成法によって合成され本発明に供することができるが、製造方法、合成方法、調達方法等については、特に限定されない。本発明のペプチドは、通常のペプチド合成装置を用いることにより、当業者であれば容易に合成することができる。また、本発明のペプチドアミドも常法によりペプチドのC末端をアミド化することにより、当業者であれば容易に合成することができる。
【0025】
本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、上述したような結合親和性を有することより、IDA−1R(CG14593、GenBank Accession No. NM_136355、idalin-1受容体とも称する)またはIDA−2R(CG30106、GenBank Accession No. NM_137397、idalin-2受容体とも称する)に対するリガンドとして有用である。
【0026】
(5)摂食抑制剤
本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、IDA−1RまたはIDA−2Rに対するリガンドであり、当該受容体に結合することによって、昆虫の摂食行動を抑制することができる。本発明は、本発明のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する昆虫の摂食抑制剤を提供する。摂食抑制剤は、ペプチドまたはペプチドアミドのいずれか1種であっても2種以上であってもよい。2種以上含有する場合、その種類は特に限定されない。ペプチドまたはペプチドアミドの配合量は、適宜設定すればよいが、通常、摂食抑制剤中、0.01〜99.5重量%である。
【0027】
本発明の摂食抑制剤は、昆虫を誘引するための誘引剤を含んでいてもよい。前記誘引剤としては、特に制限されないが、例えば、ビール酵母、蛹粉、酒かす、オキアミパウダー、卵黄、キャベツパウダー、キャロットパウダー、チキンエキスパウダー、シーズニングオイル、ストロベリーパウダー、ピーチパウダー、マッシュルームエキス、魚粉、牛(豚)肉粉等が挙げられる。誘引剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。誘引剤の配合量は、適宜設定すればよいが、通常、摂食抑制剤中、0.01〜50重量%である。
【0028】
本発明の摂食抑制剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、上記以外の成分を配合することができる。例えば、フェニル−β−ナフリルアミン、α−ナフリルアミン、N,N−ジ−第三ブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−第三ブチル−フェノール、2,4−ジ−メチル−6−第三ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の酸化防止剤;黄色2号、黄色4号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、青色1号、青色2号、緑色201号、緑色202号等の色素;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン類等の粘度調整剤;リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;水、エタノール、トウモロコシ油、ゴマ油等の溶剤;香料;などを配合することができる。
【0029】
(6)害虫駆除剤
本発明は、本発明のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する害虫駆除剤を提供する。害虫駆除剤は、ペプチドまたはペプチドアミドのいずれか1種であっても2種以上であってもよい。2種以上含有する場合、その種類は特に限定されない。ペプチドまたはペプチドアミドの配合量は、適宜設定すればよいが、通常、害虫駆除剤中、0.01〜99.5重量%である。
【0030】
本発明の害虫駆除剤は、昆虫を誘引するための誘引剤を含んでいてもよい。前記誘引剤としては、特に制限されないが、例えば、ビール酵母、蛹粉、酒かす、オキアミパウダー、卵黄、キャベツパウダー、キャロットパウダー、チキンエキスパウダー、シーズニングオイル、ストロベリーパウダー、ピーチパウダー、マッシュルームエキス、魚粉、牛(豚)肉粉等が挙げられる。誘引剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。誘引剤の配合量は、適宜設定すればよいが、通常、摂食抑制剤中、0.01〜50重量%である。
【0031】
本発明の害虫駆除剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、上記以外の成分を配合することができる。例えば、フェニル−β−ナフリルアミン、α−ナフリルアミン、N,N−ジ−第三ブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−第三ブチル−フェノール、2,4−ジ−メチル−6−第三ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の酸化防止剤;黄色2号、黄色4号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、青色1号、青色2号、緑色201号、緑色202号等の色素;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン類等の粘度調整剤;安息香酸デナトニウム、トウガラシ粉末等の誤食防止剤;リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;水、エタノール、トウモロコシ油、ゴマ油等の溶剤;香料;などを配合することができる。
【0032】
本発明の摂食抑制剤または害虫駆除剤は、単独で、または昆虫の餌と混合し、昆虫の生態系を考慮して、昆虫がアクセス可能な態様で昆虫に与えることができる。あるいは、害虫駆除剤は、積極的に昆虫の体内に導入することも好ましい。
【0033】
(7)抗体
本発明は、本発明のペプチドまたはペプチドアミドに結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、本発明のペプチドまたはペプチドアミドの検出手段、本発明のペプチドまたはペプチドアミドの阻害作用を通じて昆虫の食欲の増進作用が期待される。本発明の「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、またはFabフラグメントやFab発現ライブラリーによって生成されるフラグメントなどのように抗原結合性を有する前記抗体の一部が包含される。
【0034】
前記抗体は、自体公知の方法により製造することができる。以下、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を例にとって、説明する。
ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体は、例えば免疫原(本発明のペプチドまたはペプチドアミド)を、必要に応じてフロイントアジュバント(Freund’s Adjuvant)と共に、哺乳動物、例えばポリクローナル抗体の場合、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ブタ、ヤギ、ウマまたはウシなど、好ましくはマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ウマまたはウサギに免疫する。モノクローナル抗体の場合は、同様の方法で、マウス、ラット、ハムスターなどに免疫する。
【0035】
本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、そのまま免疫原として用いることも可能であるが、分子量1万以上の高分子化合物との複合体として免疫することが望ましい。従って、免疫原として使用するとき、本発明のペプチドは、自体公知の方法により高分子化合物(例、タンパク質(以下、キャリアタンパク質と記載する場合がある)など)との複合体としてもよい。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるペプチドを上記記載の方法に従って合成し、牛血清アルブミン(BSA)、ウサギ血清アルブミン(RSA)、オボアルブミン(OVA)、スカシ貝ヘモシアニン(KLH)、チログロブリン(TG)、免疫グロブリン等のキャリアタンパク質との複合体を形成させる。当該複合体は、その後好ましい免疫原として用いることができる。
【0036】
前記ペプチドとキャリアタンパク質との複合体を形成させるなどの目的で、本発明のペプチドには1〜2個、好ましくは1個のアミノ酸を付加することが出来る。付加されるアミノ酸の位置はペプチドのいずれの位置でもよく、特に限定されないが、ペプチドのN末端またはC末端が好ましい。
【0037】
複合体の形成においては、本発明のペプチドの抗原性を維持することができる限り、限定なく公知の方法を適用することができる。例えば、本発明のペプチドにシステイン残基を導入し、当該システインの側鎖であるSH基を介して前記高分子化合物(キャリアタンパク質)のアミノ基と結合させることもできる(MBS法)。また、タンパク質のリジン残基のεアミノ基や、αアミノ基などのアミノ基同士を結合させることもできる(グルタルアルデヒド法)。
【0038】
ポリクローナル抗体は、具体的には下記のようにして製造することができる。すなわち、免疫原をマウス、ラット、ハムスター、モルモット、ヤギ、ウマまたはウサギ、好ましくはヤギ、ウマまたはウサギ、より好ましくはウサギの皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内あるいは腹腔内に1〜数回注射することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜5回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物から血清を取得する。
【0039】
血清そのものをポリクローナル抗体として用いることも可能であるが、限外ろ過、硫安分画、ユーグロブリン沈澱法、カプロイン酸法、カプリル酸法、イオン交換クロマトグラフィー(DEAEまたはDE52等)、抗イムノグロブリンカラムもしくはプロテインA/Gカラム、免疫原を架橋させたカラム等を用いたアフィニティカラムクロマトグラフィーにより、該抗体を単離および/または精製し、得られた精製抗体を用いることも可能である。
【0040】
モノクローナル抗体の製造方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。まず上記免疫感作動物から得た該抗体産生細胞と自己抗体産生能のない骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)からハイブリドーマを調製し、該ハイブリドーマをクローン化する。すなわち、ハイブリドーマの培養上清を検体として、免疫学的手法により、哺乳動物の免疫に用いた本発明のペプチドに対する特異的親和性を示しかつキャリアタンパク質と交差反応性を示さないモノクローナル抗体を産生するクローンを選択する。次いで、当該ハイブリドーマの培養上清などから、自体公知の方法によって抗体を製造することができる。
【0041】
具体的には、下記のようにしてモノクローナル抗体を製造することができる。すなわち、免疫原を、マウス、ラットまたはハムスターの皮下内、筋肉内、静脈内、フッドパッド内もしくは腹腔内に1〜数回注射するか、または移植することにより免疫感作を施す。通常、初回免疫から約1〜14日毎に1〜4回免疫を行って、最終免疫より約1〜5日後に免疫感作された該哺乳動物の脾臓などから抗体産生細胞を取得する。
【0042】
モノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマ(融合細胞)の調製は、ケーラーおよびミルシュタインらの方法(Nature,Vol.256,アポトーシス.495-497,1975)ならびにそれらに準じる修飾方法に従って行うことができる。すなわち、前述の如く免疫感作された哺乳動物から取得される脾臓、リンパ節、骨髄または扁桃等、好ましくは脾臓に含まれる抗体産生細胞と、好ましくはマウス、ラット、モルモット、ハムスターまたはウサギ等の哺乳動物、より好ましくはマウスまたはラット由来の自己抗体産生能のないミエローマ細胞との細胞融合により、ハイブリドーマを得る。
【0043】
細胞融合に用いられるミエローマ細胞としては、例えばマウス由来ミエローマP3/X63−AG8.653(653;ATCC No.CRL1580)、P3/NSI/1−Ag4−1(NS−1)、P3/X63−Ag8.U1(P3U1)、SP2/0−Ag14(Sp2/0、Sp2)、PAI、F0またはBW5147、ラット由来ミエローマ210RCY3−Ag.2.3.が挙げられる。
【0044】
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのスクリーニングは、得られたハイブリドーマを、例えばマイクロタイタープレート内で培養し、増殖の見られたウェルの培養上清の、前述の免疫感作で用いた本発明のペプチドに対する反応性および前記上清のキャリアタンパク質に対する反応性を、例えばELISA等の免疫測定法によって測定し、比較することによって行うことができる。
【0045】
スクリーニングによりクローン化されたハイブリドーマは、培地(例えば、10%牛胎仔血清を含むDMEM)を用いて培養される。そして、その培養液の遠心上清をモノクローナル抗体溶液とすることができる。また、該ハイブリドーマを、該ハイブリドーマに由来する動物の腹腔に注入することにより、動物に腹水を生成させ、該動物から得られた腹水をモノクローナル抗体溶液とすることができる。モノクローナル抗体は、上述のポリクローナル抗体と同様の方法で、単離および/または精製されることが好ましい。
【0046】
(8)ポリヌクレオチド
本発明は、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを提供する。本発明のポリペプチドは、具体的には、idalin-1またはidalin-2の前駆体をコードする配列番号5または7で表される塩基配列全長からなるものであってもよく、その一部からなるものであってもよい。
【0047】
(9)成長促進剤
idalin-1およびidalin-2は、摂食抑制作用を有する生理活性ペプチドであり、生体内でのidalin-1および/またはidalin-2の発現を特異的に阻害する物質は、昆虫の食欲を増進し、成長を促進させる作用を有することが期待される。本発明は、idalin-1および/またはidalin-2の発現を特異的に阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤を提供する。
【0048】
本発明の成長促進剤に有効成分として含まれるidalin-1の発現を特異的に阻害する物質は、idalin-1の前駆体(例えば、配列番号5および6)の転写過程に作用してその発現を特異的に阻害する物質であれば特に限定されるものではない。また、本発明の成長促進剤に有効成分として含まれるidalin-2の発現を特異的に阻害する物質は、idalin-2の前駆体(例えば、配列番号7および8)の転写過程に作用してその発現を特異的に阻害する物質であれば特に限定されるものではない。かかる阻害物質としては、RNAi誘導性核酸、アンチセンス核酸もしくはリボザイムまたはそれらの発現ベクターが挙げられる。
【0049】
前記RNAi誘導性核酸とは、細胞内に導入されることにより、RNA干渉を誘導し得るポリヌクレオチドをいい、好ましくはRNAまたはRNAとDNAのキメラ分子である。RNA干渉とは、mRNAと同一の塩基配列(またはその部分配列)を含む2本鎖構造のRNAが、当該mRNAの発現を抑制する効果をいう。このRNAi効果を得るには、例えば、少なくとも19の連続する標的mRNAと同一の塩基配列(またはその部分配列)を有する2本鎖構造のRNAを用いることが好ましい。ただし、idalin-1またはidalin-2の発現阻害作用を有していれば数塩基置換されているものであってもよく、19塩基長よりも短いRNAであってもよい。2本鎖構造は、センス鎖とアンチセンス鎖の異なるストランドで構成されていてもよいし、一つのRNAのステムループ構造によって与えられる2本鎖(shRNA)であってもよい。RNAi誘導性核酸としては、例えばsiRNA、miRNAなどが挙げられる。
【0050】
RNAi誘導性核酸は、転写抑制活性が強いという観点から、siRNAが好ましい。idalin-1またはidalin-2に対するsiRNAは、idalin-1またはidalin-2のmRNAの任意の部分を標的とすることができる。idalin-1またはidalin-2に対するsiRNA分子は、RNAi効果を誘導できる限り特に制限されないが、例えば19〜27塩基長、好ましくは21〜25塩基長である。idalin-1またはidalin-2に対するsiRNAは、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二重鎖である。具体的には、idalin-1に対するsiRNAは、配列番号5の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである。idalin-2に対するsiRNAは、配列番号7の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖からなるものである。idalin-1またはidalin-2に対するsiRNAは、センス鎖、アンチセンス鎖の一方または双方の5’末端または3’末端においてオーバーハング(overhang)を有していてもよい。オーバーハングは、センス鎖および/またはアンチセンス鎖の末端における1〜数個(例、1、2または3個)の塩基の付加により形成されるものである。siRNAの設計方法は、当業者に公知であり、siRNAの様々な設計ソフトウエアまたはアルゴリズムを用いて、上記塩基配列から適切なsiRNAの塩基配列を選択することができる。
【0051】
RNAi誘導性核酸は、RNAを構成する天然のヌクレオチドから構成されていてもよいが、ヌクレアーゼ耐性の向上もしくは安定化、相補鎖核酸とのアフィニティーの向上または細胞透過性を高めるために、ヌクレオチドに修飾を施したヌクレオチド誘導体を一部含んでいてもよい。ヌクレオチド誘導体としては、例えば糖部修飾ヌクレオチド、リン酸ジエステル結合修飾ヌクレオチド、塩基修飾ヌクレオチド、ならびに糖部、リン酸ジエステル結合および塩基の少なくとも一つが修飾されたヌクレオチド等があげられる。
【0052】
idalin-1に対するアンチセンス核酸またはidalin-2に対するアンチセンス核酸は、idalin-1またはidalin-2の前駆体の転写産物(mRNAまたは初期転写産物)を発現する細胞の生理的条件下で該転写産物とハイブリダイズし得る塩基配列からなり、且つハイブリダイズした状態で該転写産物にコードされるポリペプチドの翻訳を阻害し得るポリヌクレオチドをいう。アンチセンス核酸の種類はDNAであってもRNAであってもよいし、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。アンチセンス核酸は、天然型のリン酸ジエステル結合を有するものであっても、分解酵素に安定なチオリン酸型(リン酸結合のP=OをP=Sに置換)や2’−O−メチル型等の修飾ヌクレオチドであってもよい。アンチセンス核酸の設計に重要な他の要素として、水溶性および細胞膜透過性を高めること等が挙げられるが、これらはリポソームやマイクロスフェアを使用するなどの剤形の工夫によっても克服できる。アンチセンス核酸の長さは、idalin-1またはidalin-2の前駆体の転写産物(例、配列番号5または配列番号7の塩基配列に対応するmRNA)と特異的にハイブリダイズし得る限り特に制限はなく、短いもので約15塩基程度、長いもので転写産物の全配列に相補的な配列を含むような配列であってもよい。合成の容易さや抗原性の問題等から、例えば約15塩基以上、好ましくは約15〜約30塩基、より好ましくは約18塩基〜約30塩基からなるオリゴヌクレオチドが例示される。さらに、アンチセンス核酸は、idalin-1またはidalin-2の転写産物とハイブリダイズして翻訳を阻害するだけでなく、二本鎖DNAと結合して三重鎖(トリプレックス)を形成し、mRNAへの転写を阻害し得るものであってもよい。
【0053】
本明細書において、「相補的である」とは、塩基配列間で約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、更に好ましくは約95%以上、最も好ましくは100%の相補性を有することをいう。本明細書における塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
【0054】
前記「リボザイム」とは核酸を切断する酵素活性を有するRNAをいうが、最近では当該酵素活性部位の塩基配列を有するオリゴDNAも同様に核酸切断活性を有することが明らかになっているので、本明細書では配列特異的な核酸切断活性を有する限りDNAをも包含する概念として用いる。具体的には、リボザイムは、idalin-1またはidalin-2をコードするmRNAまたは初期転写産物を、コード領域の内部(初期転写産物の場合はイントロン部分を含む)で特異的に切断し得る。リボザイムとして最も汎用性の高いものとしては、ウイロイドやウイルソイド等の感染性RNAに見られるセルフスプライシングRNAがあり、ハンマーヘッド型やヘアピン型等が知られている。ハンマーヘッド型は約40塩基程度で酵素活性を発揮し、ハンマーヘッド構造をとる部分に隣接する両端の数塩基ずつ(合わせて約10塩基程度)をmRNAの所望の切断部位と相補的な配列にすることにより、標的mRNAのみを特異的に切断することが可能である。さらに、リボザイムを、それをコードするDNAを含む発現ベクターの形態で使用する場合には、転写産物の細胞質への移行を促進するために、tRNAを改変した配列をさらに連結したハイブリッドリボザイムとすることもできる(Nucleic Acids Res., 29(13): 2780-2788 (2001))。
【0055】
idalin-1およびidalin-2特異的阻害物質は、発現ベクターとしても提供され得る。かかる発現ベクターは、idalin-1およびidalin-2特異的阻害物質をコードするポリヌクレオチド、および当該ポリヌクレオチドに機能可能に連結されたプロモーターを含む。
【0056】
前記プロモーターは、その制御下にある発現対象の核酸の種類により適宜選択され得るが、基本的には昆虫細胞で機能するプロモーターであれば限定なく使用することができ、例えば、ショウジョウバエ熱ショックタンパク質プロモーター、前記熱ショックタンパク質プロモーターと酵母GAL4−UASシステムとを組み合わせたプロモーター、ショウジョウバエアクチンプロモーター等が挙げられる。
【0057】
好適には、本発明の昆虫の成長促進剤は、下記いずれかの二本鎖RNAを含む:
配列番号5の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号7の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。
【0058】
本発明の成長促進剤は、含まれる成分および目的に応じて配合量を適宜設定することができる。通常、成長促進剤中、0.01〜99.5重量%である。
【0059】
本発明の成長促進剤は、昆虫を誘引するための誘引剤を含んでいてもよい。前記誘引剤としては、特に制限されないが、例えば、ビール酵母、蛹粉、酒かす、オキアミパウダー、卵黄、キャベツパウダー、キャロットパウダー、チキンエキスパウダー、シーズニングオイル、ストロベリーパウダー、ピーチパウダー、マッシュルームエキス、魚粉、牛(豚)肉粉等が挙げられる。誘引剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。誘引剤の配合量は、適宜設定すればよいが、通常、成長促進剤中、0.01〜50重量%である。
【0060】
本発明の成長促進剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに必要に応じて、上記以外の成分を配合することができる。例えば、フェニル−β−ナフリルアミン、α−ナフリルアミン、N,N−ジ−第三ブチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−第三ブチル−p−クレゾール(BHT)、2,6−第三ブチル−フェノール、2,4−ジ−メチル−6−第三ブチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等の酸化防止剤;黄色2号、黄色4号、赤色2号、赤色3号、赤色102号、青色1号、青色2号、緑色201号、緑色202号等の色素;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カラギーナン、キサンタンガム、デンプン類等の粘度調整剤;リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等のpH調整剤;水、エタノール、トウモロコシ油、ゴマ油等の溶剤;香料;などを配合することができる。
【0061】
本発明の成長促進剤は、単独で、または昆虫の餌と混合し、昆虫の生態系を考慮して、昆虫がアクセス可能な態様で昆虫に与えることができる。
【0062】
生体内でのidalin-1および/またはidalin-2の作用は、それらの受容体への結合を介して発揮されるものであるから、該受容体の発現または機能を特異的に阻害する物質も、昆虫の食欲を増進し、成長を促進させる作用を有することが期待される。本発明は、IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤を提供する。
【0063】
IDA−1RおよびIDA−2Rは、上述したように、idalin-1受容体およびidalin-2受容体とも称し、それらの塩基配列およびアミノ酸配列は、公知である。例えば、ショウショウバエ由来のIDA−1R(CG14593)の塩基配列およびアミノ酸配列はGenBank Accession No. NM_136355として登録され、それぞれ配列番号34および配列番号35で示す。例えば、ショウショウバエ由来のIDA−2R(CG30106)の塩基配列およびアミノ酸配列はGenBank Accession No. NM_137397として登録され、それぞれ配列番号36および配列番号37で示す。上述したように、IDA−1RおよびIDA−2Rは、ホモログなどを含む概念であり、ショウショウバエ由来のIDA−1RおよびIDA−2Rに対するホモログは、Homologeneにより同定することができる。
【0064】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を阻害する物質は、以下の(i)〜(iii)のいずれかであることが好ましい。
(i)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする遺伝子のアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸またはターゲッティングベクター、
(ii)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rに対する抗体、当該抗体をコードする核酸、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rのドミナントネガティブ変異体または当該変異体をコードする核酸、または
(iii)(i)もしくは(ii)の核酸を含む発現ベクター。
【0065】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現を阻害する物質がアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸などの核酸分子である場合、本発明の成長促進剤は、当該核酸分子をコードする発現ベクターを有効成分とすることもできる。当該発現ベクターは、通常、上記の核酸分子をコードするオリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドが、投与対象である昆虫細胞内でプロモーター活性を発揮し得るプロモーターに機能的に連結されている。アンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸およびその発現ベクターについては、idalin-1およびidalin-2の発現を阻害する物質において説明した通りである。
【0066】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現を阻害する物質の別の態様は、ターゲティングベクターである。本発明で用いられるターゲティングベクターは、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする遺伝子の相同組換えを誘導し得る遺伝子に相同な第一のポリヌクレオチドおよび第二のポリヌクレオチド、並びに選択マーカーを含む。第一および第二のポリヌクレオチドは、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする遺伝子を含むゲノムDNAに対して、相同組換えを生じるのに十分な程度の配列同一性および長さを有するポリヌクレオチドである。第一および第二のポリヌクレオチドは、当該遺伝子を含むゲノムDNAにおいて、第一および第二のポリヌクレオチドに対して相同な2つの領域の間に存在するゲノムDNA部分領域が欠失すると、当該遺伝子の機能的欠損がもたらされるように選択される。選択マーカーとしては、ポジティブ選択マーカー(例えば、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(BPH)遺伝子、ブラスティシジンSデアミナーゼ遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子)、ネガティブ選択マーカー(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子、ジフテリア毒素Aフラグメント(DTA)遺伝子)などが挙げられる。ターゲティングベクターは、ポジティブ選択マーカー、ネガティブ選択マーカーのいずれか一方、または両方を含むことができる。ターゲティングベクターはまた、2以上のリコンビナーゼ標的配列(例えば、バクテリオファージP1由来のCre/loxPシステムで用いられるloxP配列、酵母由来のFLP/FRTシステムで用いられるFRT配列)を含んでいてもよい。
【0067】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの機能を阻害する物質の一態様は、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rに対する抗体、当該抗体をコードする核酸(プロモーター活性を有する核酸に機能可能に連結されたもの)、または当該核酸を含む発現ベクターである。当該抗体は、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rを認識するものであれば特に制限されず、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の免疫学的手法により作製することができる。また、当該抗体は、抗体のフラグメント(例えば、Fab、F(ab’))、組換え抗体(例えば、単鎖抗体)であってもよい。
【0068】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの機能を阻害する物質の別の一態様は、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rのドミナントネガティブ変異体、当該変異体をコードする核酸(プロモーター活性を有する核酸に機能可能に連結されたもの)、当該核酸を含む発現ベクター、低分子有機化合物などが例示される。
【0069】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rのドミナントネガティブ変異体とは、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rに対する変異の導入によりその活性が低減したものをいう。当該ドミナントネガティブ変異体は、天然のIDA−1Rおよび/またはIDA−2Rと競合することで間接的にその活性を阻害することができる。当該ドミナントネガティブ変異体は、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする核酸に変異を導入することによって作製することができる。その変異としては、例えば、ミリストイル化部位、DNA結合部位並びにこれらの部位以外の部位における、当該部位が担う機能の低下をもたらすようなアミノ酸の変異(例えば、1以上のアミノ酸の欠失、置換、付加)が挙げられる。当該変異は、PCRや公知のキットを用いる自体公知の方法により導入することができる。
【0070】
好適には、本発明の昆虫の成長促進剤の有効成分はRNAi誘導性核酸であり、下記いずれかの二本鎖RNAを含む:
配列番号34の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号36の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。
【0071】
本発明の摂食抑制剤もしくは害虫駆除剤または成長促進剤は、目的に応じて昆虫を適宜選択して投与することができる。摂食抑制剤は、害虫を対象とすることが好ましく、成長促進剤は、益虫を対象とすることが好ましい。
【0072】
本発明が対象とする害虫及びダニ類として、鱗翅目害虫、例えばアオムシ、ハスモンヨトウ、アワノメイガ、コナガ、ニカメイチュウ、コブノメイガ、ドクガ等;半翅目害虫、例えば、ツマグロヨコバイ、トビイロウンカ、ヒメトビウンカ、ヤノネカイガラムシ、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ニセダイコンアブラムシ、アオカメムシ、オンシツコナジラミ、シラミ、トコジラミ、コロモジラミ、サシガメ等;鞘翅目害虫、例えば、アズキゾウムシ、コクゾウムシ、ニジュウヤホシテントウ、ヒメコガネ、コロラドポテトビートル、イネミズゾウムシ、マツノゴマダラカミキリ、キクイムシ、ハネカクシ等;直翅目害虫、例えば、チャバネゴキブリ、クロゴキブリ、ワモンゴキブリ、ケラ、バッタ、ヤマトシロアリ、イエシロアリ等;双翅目害虫、例えば、イエバエ、キンバエ、クロバエ、サシバエ、サシチョウバエ、メルラアブ、ツェツェバエ、アブ、ブユ、ヌカカ、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、アカイエカ、シナハマダラカ、コガタアカイエカ、イエカ、ヤブカ、ヌマカ等;ダニ類、例えば、イエダニ、マダニ、ツツガムシ、ヒメダニ、ヒゼンダニ、チリダニ、コナダニ等をあげることができる。
【0073】
本発明が対象とする益虫として、ミツバチ、カイコ、カブトムシなどをあげることができる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれらに限定されるものではない。
【0075】
実施例1:細胞培養、トランスフェクション、GPCR発現細胞株の調製
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、CHO培地(10%ウシ胎仔血清(FBS)を補足したMEM−alpha、これらの試薬は、Gibco製のものを使用した)中で維持した。
【0076】
脊椎動物Bombesin/Gastrin Releasing Peptide receptorファミリー(図1を参照)に関連するショウジョウバエGPCRのCG14593およびCG30106のcDNAクローニングは、reverse transcriptase(RT−)PCR法を用いて行った。ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の成虫の全長cDNAを、以下のプライマーセット:
CG14593(NM_136355)
5’-cacctgagacatcttgcccaggag-3’(配列番号26)
5’-gtgtttcggtacctccatttat-3’(配列番号27)
CG30106(NM_137397)
5’-caccaaatcgagcggactcagtacat-3’(配列番号28)
5’-gtggcctgtaattcctgtaaactc-3’(配列番号29)
を用いて増幅した。PCRの条件は、以下の通りであった:
PCR反応液(Takara)
10xPyrobest buffer II 5μl
dNTP mix 4μl
primer S (1μM) 5μl
AS (1μM) 5μl
Pyobest 0.25μl
HO 29.75μl
cDNA 1μl
全量 50μl
温度条件
94℃ 2minを1 cycleの後、
98℃ 10sec、55℃ 30sec、および72℃ 2minを30 cyclesし、
72℃ 3minを1 cycleし、4℃に冷却した。
得られた増幅産物(CG14593 1534bp、CG30106 1596bp)をpcDNA3.2/V5/GW/D-TOPO発現ベクター(Invitrogen)にクローニングし、シークエンシングにより配列を確認した。
【0077】
発現ベクターCG14593−pcDNA3.2/V5/GW/D-TOPOおよび30106−pcDNA3.2/V5/GW/D-TOPOのCHO細胞へのトランスフェクションは、トランスフェクション試薬としてFugene6(Boehringer Mannheim)を用いて、販売業者の指示書に従って行った。抗生物質による選択(1mg/ml G418)およびクローン選択の後、CG14593発現CHO細胞株およびCGCG30106発現CHO細胞株をそれぞれ得た。以下、各細胞株をCHO−CG14593およびCHO−CG30106と称する。
【0078】
実施例2:ショウジョウバエidalin-1およびidalin-2の精製
ショウジョウバエの成虫(350g)を10倍容量の脱イオン水を加えて10分間煮沸し、0℃まで冷却した。酢酸を添加し(最終pH3.0)、Kinematica polytronでホモジナイズした後、ホモジネートを遠心分離し、上清を分離してエバポレーターにて3分の1量まで濃縮した。次に2倍量のアセトンを加え、一晩4℃にて攪拌後、遠心し上清をグラスフィルターにて濾過した。エバポレーターにてアセトン除去後、SepPak C18カートリッジ(Waters)を用いて脱塩、濃縮し、0.1%トリフルオロ酢酸でリンスした後、0.1%トリフルオロ酢酸中60%アセトニトリルで各カートリッジから溶出した。溶出液を凍結乾燥させ、出発材料として用いた。前記凍結乾燥物を1M酢酸に溶解し、SP−SephadexC−25(H型)カラムに吸着させ、1M酢酸で平衡化した。1M酢酸、2Mピリジンおよび2Mピリジン−酢酸(pH5.0)での連続溶出により、SP−I、SP−IIおよびSP−IIIの各フラクションを得た。
【0079】
次に、凍結乾燥した塩基性ペプチドフラクションSP−IIIを、SephadexG−50ゲルろ過カラムにかけ、分画した。各フラクションのリガンド活性を以下のように調べた。
CHO−CG14593およびCHO−CG30106は、各細胞表面にGPCRであるCG14593またはCG30106が発現し、当該受容体にリガンドが結合すると、細胞内カルシウム濃度が上昇することが期待されるので、細胞内カルシウム濃度の変化を測定することによって、各受容体に結合するリガンド活性を追跡した。
CHO−CG14593およびCHO−CG30106をCHO培地中で維持し、上記で分画したフラクションの一部を各培地に添加し、当該細胞における細胞内カルシウムイオン濃度([Ca2+]i)の変化を、蛍光イメージングプレートリーダー(FLEX)システム(Molecular Devices)を用いて既報(Nature, 1999; 402: pp.656-660)に準じて測定した。すなわち、アッセイの12〜15時間前にCHO−CG14593またはCHO−CG30106細胞(5×10細胞)を96ウェルの黒壁マイクロプレート(Corning)に播種した。細胞をFLEX Calcium 4 Assay Kit(Molecular Devices)100μlとともに1時間インキュベートした後、蛍光イメージングプレートリーダー(FLEX)に供し、サンプル(フラクション)が蛍光の変化を誘導するか否かを測定した。最大[Ca2+]iの変化を三連で決定した。結果をそれぞれ図2、7に示す。カルシウムイオン濃度の上昇したフラクションを活性フラクションとしてさらなる精製に供した。
【0080】
プールした活性フラクションを、TSK−GEL CM−25Wカラム(Tosoh)を用いるカルボキシメチル(CM)イオン交換高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。HPLCの条件は、以下の通りである。
溶離液:10%アセトニトリル中、ギ酸アンモニウム10mM−0.6Mの直線勾配
溶出速度:1ml/分(16−136分)
各フラクションについて上述のようにFLEXシステムで細胞内カルシウムイオン濃度の変化を測定し、活性フラクションをプールし、さらに以下の精製に供した。
【0081】
プールした活性フラクションを、μBondasphereC18カラム(Waters)を用いる逆相(RP)−HPLCに供した。HPLCの条件は、以下の通りである。
溶離液:0.1%トリフルオロ酢酸中(TFA)、10−60%アセトニトリルの直線勾配
溶出速度:1ml/分(80分)
【0082】
さらに、活性フラクションをChemcosorb 3ODS−Hカラム(Chemco)を用いるRP−HPLCに供した。HPLCの条件は、以下の通りである。
溶離液:0.1%トリフルオロ酢酸中(TFA)、10−60%アセトニトリルの直線勾配
溶出速度:0.2ml/分(80分)
結果を図3、8に示す。
吸収ピークに相当するフラクションを集め、各フラクションの一部をFLEXシステムにより測定した。約20pmolの主要活性フラクションの最終精製ペプチドを、プロテインシークエンサー(モデル494、Applied Biosystems)で解析した。また、約1pmolの各活性フラクションを用いて、マトリックス支援レーザー脱着−イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析計およびVoyager−DE PRO instrument(Applied Biosystems)により分子量を決定した。
【0083】
その結果、CG14593に結合するリガンドとしてidalin-1、およびCG30106に結合するリガンドとしてidalin-2を単離し、精製することに成功した。得られたペプチドリガンドの配列を以下に示す。
【0084】
idalin-1:
GCQAYGHVCYGGH-NH2 (配列番号1、図5の(1)以下下線で示す領域)
KKGCQAYGHVCYGGH-NH2 (配列番号2、図5の(2)以下下線で示す領域)
AQQSQAKKGCQAYGHVCYGGH-NH2 (配列番号3、図5の(3)以下下線で示す領域)
idalin-2:
SCLEYGHSCWGAH-NH2 (配列番号4、図10の下線で示す領域)
【0085】
idalin-1として、上記3種のペプチドが単離され、C末端のアミド体と非アミド体の両方が得られた。また、上記ペプチド中に存在する2つのシステインは、分子内ジスルフィド結合を有していた。idalin-1をジチオスレイトール(DTT)にて還元し、S−S結合が切れた物をHPLCで回収したチャートを図6に示す。S−S結合が還元されたペプチドを、後述する実施例4で受容体との結合アッセイをしても活性がなかった。このことから、S−S結合が活性に必要であることがわかった。以下の解析は、配列番号1で示されるペプチドアミドをidalin-1の代表として用いた(図4)。
【0086】
idalin-2も、C末端のアミド体と非アミド体の両方が得られた。また、上記ペプチド中に存在する2つのシステインは、分子内ジスルフィド結合を有していた(図8)。idalin-2をジチオスレイトール(DTT)にて還元し、S−S結合が切れた物をHPLCで回収したチャートを図11に示す。S−S結合が還元されたペプチドを、後述する実施例4で受容体との結合アッセイをしても活性がなかった。このことから、S−S結合が活性に必要であることがわかった。
得られたidalin-1およびidalin-2のアミノ酸配列に基づいて、他の昆虫のゲノムデータベースを探索し、他の昆虫種に存在するidalin-1様ペプチドおよびidalin-2様ペプチドをアラインした。結果を表1および表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
実施例3:idalin-1およびidalin-2の前駆体のクローニング
idalin-1およびidalin-2の前駆体は、既にデータベース上で公開されており:
idalin-1前駆体CG14375(NM_142028)および
idalin-2前駆体CG14358(NM_001104314)、
公開されている塩基配列に基づいてプライマーを設計し、クローニングした。
idalin-1の前駆体の塩基配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号5および6に示し、idalin-2の前駆体の塩基配列およびアミノ酸配列をそれぞれ配列番号7および8に示す。
【0090】
実施例4:idalin-1およびidalin-2と受容体との結合実験
合成idalin-1およびidalin-2は、ペプチド研究所(大阪)にて合成し、FLEX buffer(kit含有)のHank’s BSS(20mM HEPES)にて溶解した。以下、実施例2に記載の方法と同様にして、表3に示すペプチドと受容体との結合試験を実施した。結果を表3および図12A、Bに示す。
【0091】
【表3】

【0092】
実施例5:idalin-1トランスジェニックハエの作出および解析
以下のプライマーセットを準備した:
D,CG14375-S1NotI
idalin-1
5’-ATTGCGGCCGCcaccagccaagtgcaagtatc-3’(配列番号30)
D,CG14375-AS1XbaI
5’-ATTTCTAGAcggtttttaatgtacgttgtgg-3’(配列番号31)
idalin-2
5’-ATTGCGGCCGCcgtgcagcttgcgaaataata-3’(配列番号32)
5’-ATTTCTAGActtctggcttagctagcgtgttatc-3’(配列番号33)。
sense primer にNotIで、並びにanitsense primerにXbaIで制限酵素サイトをつけ、LA taqを用いてショウジョウバエ成虫cDNAをテンプレートにしてPCRを行った。バンドを切り出して精製し、DNA Ligation Kit Ver.2.1 (TaKaRa)にてpUASTベクターにライゲーションした。大腸菌にて増幅後、プラスミドを精製した。精製済みプラスミドを、
Genetic Services Inc.(MA,USA)(http://www.geneticservices.com/index.htm)に送付し、トランスジェニックハエの作出を依頼した。卵にインジェクション後、生まれたショウジョウバエをw1118と掛け合わせて得られたハエをライン化した。このトランスジェニックハエ(ホモ)を、全ての神経細胞で酵母GAL4タンパク質が発現するelav-GAL4系統のトランスジェニックハエ(ホモ)と交配して生まれてきた第一世代のトランスジェニックハエ(それぞれのトランスジーンについてヘテロ)を実験に使用した。このハエでは、idalin-1が全ての神経細胞で過剰に発現している。
【0093】
idalin-1トランスジェニックハエ(ヘテロ)では、コントロールのハエ(elav-GAL4のみを持つヘテロのトランスジェニックハエ)に比べて、孵化しない率が75%、さなぎにならない率が72%に低下しており、全体として卵から羽化する率はコントロールの半分以下であった。
【0094】
次に、交配中のハエを、水で軽く湿らせた濾紙(Whatman 3MM paper)を内壁に付着するように設置した飼育用プラスチックバイアルで2日間産卵させ、その5日後に濾紙を取り出して、サナギの形成位置を観察した。
【0095】
結果を図17に示す。idalin-1トランスジェニックハエ(ヘテロ)の幼虫は、コントロールのハエ(図17C、D)に比べて、バイアルの壁に沿わせた紙(水で湿らせたもの)を登る数が有意に少なかった(図17A、B)。また、idalin-1トランスジェニックハエ(ヘテロ)の幼虫は、摂食行動がコントロールに比べて有意に減少し、餌から動こうとしなかった。トランスジェニックハエではサナギがほとんど餌近辺の下部に集中しており、濾紙を上方に登っていないことがわかる。
【0096】
実施例6:IDA−1R受容体遺伝子破壊系統の解析
IDA−1R遺伝子内に、Pエレメントが挿入されたトランスジェニックハエ系統(w[1118]; Mi{ET1}CG14593[MB03316])をBloomington Drosophila Stock Centerより取り寄せ(Bloomington Stock Number:23531)、解析に用いた。この系統でIDA−1R遺伝子が挿入破壊されていることは、RT-PCRでIDA−1R遺伝子の発現が強く減少していることで確認した。
【0097】
IDA−1R遺伝子破壊系統のハエとコントロールのハエ(遺伝子挿入破壊のないw[1118]系統のハエ)の幼虫に対して、色素入りの餌を与え、摂食量を吸光度で測定し、比較した。その結果、IDA−1R遺伝子破壊系統では、コントロールに比べて摂食量が1.6倍に増加した。
【0098】
実施例7:リアルタイムPCRによるショウジョウバエのidalin-1、idalin-2、IDA−1R、IDA−2RのmRNAの発現量の解析
リアルタイムPCRによるショウジョウバエ(オス、メス)の頭部と身体におけるidalin-1、idalin-2、IDA−1R、IDA−2RのmRNAの発現量の解析結果を図13に示す。その結果、前記mRNAは、中枢および末梢に広く分布しているので、摂食行動のみならず様々な生理作用に関与している可能性がある。
【0099】
次に、コントロール(野生型)ハエにおいて絶食後のidalin-1、idalin-2 mRNAの発現量をリアルタイムPCRにて解析した。結果を図18に示す。idalin-1の発現量は、絶食により有意に抑制されることがわかる。
【0100】
実施例8:idalin-1 C末端側認識特異抗体
idalin-1 C末端側を抗原としてウサギを免疫してポリクローナル抗体を作製し、抗体価および特異性を検討した。ラジオイムノアッセイによるidalin-1 C末端側認識特異抗体の抗体価チェックの結果を図14に示す。また、ラジオイムノアッセイによるidalin-1 C末端側認識特異抗体のスタンダードチェックの結果を図15に示す。その結果、該抗体は、抗体価が656100単位であり、idalin-1に特異的に結合しidalin-2には結合しないことが確認された。
【0101】
次に、前記抗体を用いて、ラジオイムノアッセイによるidalin-1トランスジェニックハエとRNAiハエにおけるidalin-1の含量を調べた。結果を図16に示す。野生型(wild)と比べて、トランスジェニック(TG)では約10倍に増加し、RNAiではidalin-1がほとんど検出されなかった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のペプチドまたはペプチドアミドは、害虫の駆除および益虫の繁殖に貢献することができる。また、哺乳動物の新規医薬成分の候補ともなりうる。
以上、本発明の具体的な態様のいくつかを詳細に説明したが、当業者であれば示された特定の態様には、本発明の教示と利点から実質的に逸脱しない範囲で様々な修正と変更をなすことは可能である。従って、そのような修正及び変更も、すべて後記の特許請求の範囲で請求される本発明の精神と範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(3)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−1Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド、および
(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−2Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド
からなる群より選ばれる、単離されたペプチドまたはペプチドアミド。
【請求項2】
(1)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(2)配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるペプチドまたはペプチドアミド、
(3)配列番号1〜3のいずれかで表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜5個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−1Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド、および
(4)配列番号4で表されるアミノ酸配列において、システイン残基を除く1〜3個のアミノ酸残基が置換、欠失または付加されたアミノ酸配列からなる変異ペプチドまたは変異ペプチドアミドであって、変異前のペプチドまたはペプチドアミドと同等のショウジョウバエIDA−2Rに対する結合活性を有するペプチドまたはペプチドアミド
からなる群より選ばれるペプチドまたはペプチドアミドからなる、IDA−1RまたはIDA−2Rに対するリガンド。
【請求項3】
請求項1記載のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する、昆虫の摂食抑制剤。
【請求項4】
請求項1記載のペプチドまたはペプチドアミドを少なくとも1種含有する、害虫駆除剤。
【請求項5】
請求項1記載のペプチドまたはペプチドアミドに結合する抗体。
【請求項6】
請求項1記載のペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
idalin-1および/またはidalin-2の発現を特異的に阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤。
【請求項8】
下記いずれかの二本鎖RNAを含有する、請求項7記載の成長促進剤:
配列番号5の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号7の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。
【請求項9】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を阻害する物質を含有する、昆虫の成長促進剤。
【請求項10】
IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rの発現または機能を調節する物質が、以下の(i)〜(iii)のいずれかである、請求項9記載の成長促進剤:
(i)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rをコードする遺伝子のアンチセンス核酸、リボザイム、RNAi誘導性核酸、デコイ核酸またはターゲッティングベクター、
(ii)IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rに対する抗体、当該抗体をコードする核酸、当該IDA−1Rおよび/またはIDA−2Rのドミナントネガティブ変異体または当該変異体をコードする核酸、または
(iii)(i)もしくは(ii)の核酸を含む発現ベクター。
【請求項11】
RNAi誘導性核酸が下記いずれかの二本鎖RNAである、請求項10記載の成長促進剤:
配列番号34の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ;または
配列番号36の塩基配列に対応するmRNAにおける19〜25個の連続する塩基配列を含むセンス鎖と、その相補配列を含むアンチセンス鎖の組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−177128(P2011−177128A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45816(P2010−45816)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(599045903)学校法人 久留米大学 (72)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】