説明

ショックアブソーバの取付構造

【課題】簡易な構成で、ショックアブソーバの取付部位における支持板材を容易に厚板化できて強度及び剛性を高めることができるとともに、支持板材を構成する層間の隙間の発生を抑制することができるショックアブソーバの取付構造を提供する。
【解決手段】インナパネル12の下面には板状のリインフォースメントパネル18が接合され、該リインフォースメントパネル18の下面には当て板22が接合されている。インナパネル12の開口縁には、3つの係止爪16が開口部15に臨むように突出形成されている。リインフォースメントパネル18の上面には補助プレート20が配置され、3つの係止爪16に圧接状態で係止されている。3つの係止爪16は、周方向に均等間隔で配置されている。前記リインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20の合計の厚みは、補助プレート20の厚みで調整可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のリヤサスペンション機構を構成するショックアブソーバの上端部をインナパネルに取付けるためのショックアブソーバの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ワンボックス車等のリヤサスペンションにおけるショックアブソーバは、その上端部がインナパネルに連結されている。すなわち、リヤホイールを覆うリヤホイールハウスは、インナパネルとアウタパネルとで構成され、アウタパネルの外縁が車体外板の下縁部に連結されている。インナパネルには、ショックアブソーバの上端部を連結する取付部が設けられている。このインナパネルは車体の重量を軽減するために薄板で形成されていることから、前記取付部の強度や剛性が不足するおそれがある。そのため、インナパネルには板状のリインフォースメントパネルがスポット溶接により複数箇所にて接合されている。
【0003】
この種のショックアブソーバの取付構造が特許文献1に開示されている。この取付構造では、インナパネルにショックアブソーバ取付面部が形成されるとともに、インナパネルの下面に板状のリインフォースメントパネルがスポット溶接により接合され、さらにその下面に当て板がスポット溶接により接合されている。この取付構造によれば、小型の当て板を追加するだけで重量増加を極力抑え、強度や剛性を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4466363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インナパネルに対するショックアブソーバ上端部の取付部位では、悪路走行時等においてショックアブソーバの上端部から繰り返し作用する衝撃荷重に耐え得るように十分な厚みと強度が必要である。加えて、そのような衝撃荷重に耐え得る構造を簡易にし、容易に製作できることが求められている。
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載されている従来構成においては、インナパネルにリインフォースメントパネルが溶接され、そのリインフォースメントパネルに当て板が溶接されて固定される構成であることから、ショックアブソーバの取付部位における支持板材の厚みや強度の設定が容易ではないという欠点があった。すなわち、リインフォースメントパネルの板厚を厚く設定するとショックアブソーバの取付部位以外の部分で重量増加を招き、当て板の板厚を厚く設定し、リインフォースメントパネルの板厚を薄く設定するとショックアブソーバの取付部位以外の部分で強度不足を来たすおそれがある。従って、インナパネルに対するショックアブソーバの取付部位において、リインフォースメントパネル、当て板等の支持板材全体の板厚調整が難しく、延いては支持板材の強度や剛性を高めることが容易ではないという問題があった。
【0007】
その上、インナパネル、リインフォースメントパネル及び当て板には反り等のばらつきがあって、インナパネルとリインフォースメントパネルとの間及びリインフォースメントパネルと当て板との間には隙間が生ずる。さらに、インナパネルとリインフォースメントパネルとの間及びリインフォースメントパネルと当て板との間はスポット溶接により接合されていることから、スポット溶接がなされていない箇所においては隙間が生ずるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的とするところは、簡易な構成で、ショックアブソーバの取付部位における支持板材を容易に厚板化できて強度及び剛性を高めることができるとともに、支持板材を構成する層間の隙間の発生を抑制することができるショックアブソーバの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のショックアブソーバの取付構造は、自動車のサスペンション機構を構成するショックアブソーバの上端部をホイールハウスに取付けるためのショックアブソーバの取付構造において、前記ホイールハウスは、開口部が形成されたインナパネルと、前記開口部を塞ぐようにインナパネルの下面に接合されたリインフォースメントパネルと、前記開口部においてリインフォースメントパネルの上面に配置された補助プレートとを備え、リインフォースメントパネル及び補助プレートにはショックアブソーバの上端部が挿通される挿通孔が形成され、インナパネルには補助プレートに係合して補助プレートをリインフォースメントパネルに押付ける押付部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明のショックアブソーバの取付構造は、請求項1に係る発明において、前記押付部は、補助プレートに対して弾性的に係合するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明のショックアブソーバの取付構造は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記押付部は、インナパネルの一部又は別部品で構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明のショックアブソーバの取付構造は、請求項1から請求項3のいずれか一項に係る発明において、前記押付部は、リインフォースメントパネルに沿って補助プレートを差し込み可能な差込口を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明のショックアブソーバの取付構造は、請求項1から請求項4のいずれか一項に係る発明において、前記押付部は、インナパネルからその開口部に臨む複数の係止爪で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のショックアブソーバの取付構造においては、ホイールハウスは開口部が形成されたインナパネルと、前記開口部を塞ぐようにインナパネルの下面に接合されたリインフォースメントパネルと、前記開口部においてリインフォースメントパネルの上面に配置された補助プレートとを備えている。そして、リインフォースメントパネル及び補助プレートにはショックアブソーバの上端部が挿通される挿通孔が形成され、インナパネルには補助プレートに係合して補助プレートをリインフォースメントパネルに押付ける押付部が設けられている。
【0015】
このため、インナパネルにリインフォースメントパネルを接合後、リインフォースメントパネル上に所定厚みの補助プレートを配置して押付部でリインフォースメントパネルに押付けるという簡単な構成で、ショックアブソーバの取付部位を形成することができる。そして、そのショックアブソーバの取付部位では、リインフォースメントパネルに加えて肉厚調整の容易な補助プレートにより支持板材の厚板化を図ることができる。
【0016】
また、補助プレートは押付部でリインフォースメントパネルに押圧されていることから、その押圧力により補助プレートがリインフォースメントパネルに密着され、補助プレートとリインフォースメントパネルとの間の隙間の発生が抑えられる。
【0017】
従って、本発明のショックアブソーバの取付構造によれば、簡易な構成で、ショックアブソーバの取付部位における支持板材を容易に厚板化できて強度及び剛性を高めることができるとともに、支持板材を構成する層間の隙間の発生を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態におけるショックアブソーバの取付構造を示す概略縦断面図。
【図2】ショックアブソーバの取付構造を含むインナパネルを車内側から見た状態を示す要部斜視図。
【図3】ショックアブソーバの取付構造部位を拡大して示す要部斜視図。
【図4】インナパネルにリインフォースメントパネルを溶接接合するとともに、リインフォースメントパネルに当て板を溶接接合した状態を示す断面図。
【図5】図4の状態から補助プレートをリインフォースメントパネル上に重合して係止片の方向へ挿入する状態を示す断面図。
【図6】補助プレートと3つの係止爪との関係を示す要部平面図。
【図7】(a)及び(b)は係止爪の別例を示す部分断面図。
【図8】押付部の別例を示す部分平面図。
【図9】(a)は係止爪の別例を示す部分断面図及び(b)は押付部の別例を示す部分断面図。
【図10】ショックアブソーバの取付部位における当て板を省略した状態の別例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図6に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に示すように、ワンボックス車等の自動車におけるリヤホイールハウス11は、車内側のインナパネル12と図示しない車外側のアウタパネルとにより、リヤホイール13を収容するアーチ状に形成されている。前記インナパネル12は重量を軽減するために例えば1.2〜1.5mm程度の板厚の薄い鋼板等の金属板で形成されている。
【0020】
このインナパネル12には、リヤサスペンション機構を構成するショックアブソーバ14の上端部をインナパネル12に連結するための開口部15が形成されている。図3及び図6に示すように、インナパネル12の開口縁12aには、3つの係止爪16が開口部15の周方向に等間隔で開口部15に臨むように突出形成されている。
【0021】
図1に示すように、この係止爪16はインナパネル12の開口縁12aの一部から一定高さまで立ち上がってさらに開口部15の中心側へ延びるように形成され、弾性力(撓み性)を有している。該係止爪16の中間位置には下に凸の円弧部17が形成され、係止爪16に係入される補助プレート20を押圧できるようになっている。すなわち、係止爪16には後述するリインフォースメントパネル18との間に補助プレート20が挿入される係入空間19が形成され、平面円環状をなす補助プレート20が係止爪16の係入空間19に嵌り込み、係止爪16の円弧部17が補助プレート20をリインフォースメントパネル18に押付けるようになっている。
【0022】
インナパネル12の下面には、該インナパネル12を補強する板状のリインフォースメントパネル18が複数の溶接箇所SW1におけるスポット溶接により常法に従って接合されている。このリインフォースメントパネル18は、例えば2.0〜2.5mm程度の板厚を有する鋼板等の金属板で形成されている。前記リインフォースメントパネル18の下面には、ショックアブソーバ14の取付部位21におけるリインフォースメントパネル18を補強する当て板22が複数の溶接箇所SW2でスポット溶接により常法に従って接合されている。この当て板22は、例えば2.5〜3.0mm程度の板厚を有する鋼板等の金属板で形成されている。
【0023】
リインフォースメントパネル18の上面には、ショックアブソーバ14の取付部位21におけるリインフォースメントパネル18及び当て板22をさらに補強する補助プレート20が配置されるように構成されている。この補助プレート20は、例えば2.0〜3.0mm程度の板厚を有する鋼板等の金属板で平面円環状に形成されている。インナパネル12の開口部15において、リインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20にはショックアブソーバ14の上端部が挿通される挿通孔18a,20a,22aがそれぞれ貫通形成されている。
【0024】
前記補助プレート20は、リインフォースメントパネル18上に重合されるように配置され、その外周縁が前記インナパネル12の係止爪16の係入空間19に入り込んで係止され、係止爪16の弾性力でリインフォースメントパネル18に圧接されるようになっている。この補助プレート20は、3つの係止爪16に対して一方向から差し込み可能に構成されている。すなわち、図6に示すように、補助プレート20を挿入する入り口側に位置する2つの係止爪16は長く形成され、それらの係止爪16間の空隙部が差込口36となり、補助プレート20が差し込まれるようになっている。そして、補助プレート20が図6の二点鎖線に示す位置から実線に示す位置へ一方向から真直ぐに挿入できるように構成されている。
【0025】
この場合、3つの係止爪16が周方向に均等間隔で配置されているため、補助プレート20がリインフォースメントパネル18に均等に押圧され、補助プレート20とリインフォースメントパネル18との間に隙間が生じないようになっている。前記リインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20により、ショックアブソーバ14の取付部位21における支持板材が構成されている。
【0026】
前記ショックアブソーバ14の取付部位21における強度及び剛性は、主にリインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20の合計の厚みにより定められることから、その合計厚みを厚くすれば強度及び剛性を高めることはできるが、その分重量が増加して好ましくない。本実施形態では、補助プレート20をリインフォースメントパネル18上に重合させて係止爪16に係止するように構成したことから、インナパネル12、リインフォースメントパネル18及び当て板22を薄板で構成し、補助プレート20の厚みにより取付部位21における支持板材の合計厚みが調整可能に構成されている。
【0027】
続いて、インナパネル12に対するショックアブソーバ14の取付構造について説明する。
図1に示すように、ショックアブソーバ14上端部の中心位置には支持軸23が突出形成され、その外周には保持環24が嵌合されるとともに、該保持環24より上部には雄ねじ部25が螺刻されている。前記保持環24の下部位置及び上部位置には、防振ゴム等のゴム材料で形成された下部ゴムブッシュ26及び上部ゴムブッシュ27を保持する下部保持座28及び上部保持座29が配設されている。上部ゴムブッシュ27の下部位置には上部ゴムブッシュ27を受ける受座30が配置され、該受座30は補助プレート20上に支持されるようになっている。前記下部ゴムブッシュ26は下部保持座28と当て板22との間に介装され、上部ゴムブッシュ27は受座30と上部保持座29との間に介装されている。
【0028】
前記支持軸23の雄ねじ部25にはナット部材31の雌ねじ部32が螺合され、上部保持座29を押圧してショックアブソーバ14をリインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20よりなる支持板材に組付けるようになっている。その組付け部分の外部を覆うキャップ33は、その下端部の取着部34が受座30に係合して被せられるようになっている。前記下部ゴムブッシュ26及び上部ゴムブッシュ27により、ショックアブソーバ14の上端部がインナパネル12に弾性的に支持されるようになっている。
【0029】
次に、以上のように構成された実施形態のショックアブソーバ14の取付構造について作用を説明する。
さて、インナパネル12にリインフォースメントパネル18を接合する場合には、図4に示すように、インナパネル12に対してリインフォースメントパネル18をスポット溶接により複数の溶接箇所SW1で溶接して接合する。同様に、リインフォースメントパネル18に対して当て板22をスポット溶接により複数の溶接箇所SW2で溶接して接合する。このようにして、インナパネル12にリインフォースメントパネル18及び当て板22が接合され、一体化される。
【0030】
次いで、図5に示すように、ショックアブソーバ14の取付部位21におけるリインフォースメントパネル18上に、補助プレート20を重合するようにして一方向から係止爪16の係入空間19に向けて挿入する。このとき、図6に示すように、補助プレート20挿入側の2つの係止爪16は他の1つの係止爪16より長く形成されていることから、補助プレート20を一方向から支障なく挿入して係止爪16に円滑に係止させることができる。補助プレート20が3つの係止爪16に係止された状態では、補助プレート20は係止爪16の円弧部17に押圧されるとともに、係止爪16の弾性力によってリインフォースメントパネル18に押し付けられる。
【0031】
さらに、3つの係止爪16は周方向に等間隔で配置されていることから、補助プレート20は3つの係止爪16により全体が均等に押圧される。従って、補助プレート20がリインフォースメントパネル18に密着され、補助プレート20とリインフォースメントパネル18との間の隙間の発生が抑えられる。また、リインフォースメントパネル18と当て板22が平坦性に欠けて隙間が形成される場合やリインフォースメントパネル18に当て板22がスポット溶接されていない部分で隙間が生ずる場合でも、リインフォースメントパネル18と当て板22が密着して隙間の形成を防ぐことができる。
【0032】
上記のようにしてインナパネル12にリインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20が一体化された状態で、インナパネル12の開口部15にショックアブソーバ14の取付部位21にショックアブソーバ14の取付が可能となる。この状態で、ショックアブソーバ14の支持軸23に保持環24を外嵌し、下部ゴムブッシュ26が下部保持座28に保持された状態で支持軸23を挿通孔18a,20a,22aに下方から挿通する。次いで、上部ゴムブッシュ27を受座30と上部保持座29で保持した状態で保持環24に嵌挿する。続いて、ナット部材31を支持軸23の上方から嵌挿してその雌ねじ部32を支持軸23の雄ねじ部25に螺合させて締付ける。最後に、取付部位21を覆うようにキャップ33を、その下端部の取着部34が受座30に係合するように取付ける。このような手順によりショックアブソーバ14を取付部位21に取付けることができる。
【0033】
以上詳述した実施形態により発揮される効果を以下にまとめて説明する。
(1)この実施形態のショックアブソーバ14の取付構造においては、インナパネル12の下面にリインフォースメントパネル18が接合され、該リインフォースメントパネル18の下面に当て板22が接合され、かつリインフォースメントパネル18の上面に補助プレート20が配置されている。さらに、インナパネル12から3つの係止爪16がインナパネル12の開口部15に臨むように突出形成され、補助プレート20が3つの係止爪16に係止されるように構成されている。
【0034】
このため、リインフォースメントパネル18に当て板22を接合後、リインフォースメントパネル18上に所定厚みの補助プレート20を配置し、3つの係止爪16に係止するという簡単な構成で、ショックアブソーバ14の取付部位21を形成することができる。そして、そのショックアブソーバ14の取付部位21では、リインフォースメントパネル18及び当て板22に加えて肉厚調整の容易な補助プレート20で支持板材の厚板化を図ることができる。言い換えれば、補助プレート20の厚み分だけ、リインフォースメントパネル18及び当て板22の薄板化を図ることができる。
【0035】
また、補助プレート20は3つの係止爪16でリインフォースメントパネル18に押付けられていることから、支持板材の層間の隙間すなわち補助プレート20とリインフォースメントパネル18との間の隙間の発生が抑えられると同時に、リインフォースメントパネル18と当て板22との間の隙間の発生が抑えられる。
【0036】
従って、本実施形態のショックアブソーバ14の取付構造によれば、簡易な構成で、ショックアブソーバ14の取付部位21における支持板材を容易に厚板化できて強度及び剛性を高めることができる。加えて、リインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20の相互間における隙間の発生を抑制することができるという効果を発揮することができる。
(2)前記押付部としての係止爪16は、補助プレート20に対して弾性的に係合するように構成されている。このため、補助プレート20は、3つの係止爪16の弾性力でリインフォースメントパネル18に圧接され、補助プレート20をリインフォースメントパネル18に対して強固に組付けることができる。しかも、補助プレート20とリインフォースメントパネル18との間の隙間及びリインフォースメントパネル18と当て板22との間の隙間の発生を一層抑制することができる。
(3)また、係止爪16は、インナパネル12の一部として開口縁12aから開口部15に臨むように突出形成されている。従って、係止爪16をインナパネル12とは別部品とした場合に比べて部品点数を少なくすることができるとともに、また溶接等の接合工程も省略することができる。
(4)さらに、係止爪16は、リインフォースメントパネル18に沿って補助プレート20を差し込み可能な差込口36を備えている。このため、補助プレート20をその差込口36から差し込んで係止爪16に容易かつ速やかに係入することができる。
(5)前記押付部は、インナパネル12の開口縁12aからその開口部15に臨む複数の係止爪16で構成されている。そのため、押付部を簡易に構成できるとともに、弾性力を十分に発揮でき、補助プレート20を有効に押圧することができる。
(6)前記3つの係止爪16は周方向に均等間隔で配置されている。従って、補助プレート20全体を係止爪16で均等に押圧することができ、補助プレート20とリインフォースメントパネル18との間における隙間の発生を極力抑制できるとともに、リインフォースメントパネル18と当て板22との間における隙間の発生も極力抑制でき、面間精度を向上させることができる。
(7)前記リインフォースメントパネル18、当て板22及び補助プレート20の合計の厚みは、補助プレート20の厚みで調整可能に構成されている。このため、組付けの容易な補助プレート20の厚みを適宜調整することにより、合計厚みを効率良く設定することができる。
【0037】
なお、前記各実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 図7(a)に示すように、係止爪16をインナパネル12の開口縁12aからクランク状に延出して断面横L字状に形成することができる。また、図7(b)に示すように、係止爪16を、図7(a)に示す形状の係止爪16の先端縁が上方へ湾曲した湾曲部16aを有するように形成することもできる。この場合、係止爪16の湾曲部16aの案内作用により、補助プレート20を係止爪16の係入空間19へ円滑に係入することができる。
【0038】
・ 図8に示すように、押付部を円弧状押付部35とし、その差込口36を補助プレート20が差込可能に構成することもできる。この場合、円弧状押付部35は、前記係止爪16に比べて補助プレート20を広い範囲に亘って効果的に押圧することができる。
【0039】
・ 図9(a)に示すように、係止爪16をインナパネル12とは別部品で構成し、インナパネル12に溶接等の手段で接合することもできる。また、図9(b)に示すように、係止爪16と補助プレート20との間に押付部を構成するゴム部材等の弾性部材37を介装し、補助プレート20を押圧するように構成することも可能である。
【0040】
・ 図10に示すように、前記実施形態において、当て板22を省略することもできる。この場合、ショックアブソーバ14の取付部位21における構成を簡易にすることができるとともに、溶接等の接合工程を省略することができる。
【0041】
・ 前記係止爪16を、補助プレート20が一方向から挿入できるように4つ以上設け、補助プレート20を安定した状態で係止できるように構成することもできる。
・ 前記当て板22を延長形成し、インナパネル12、リインフォースメントパネル18及び当て板22を、スポット溶接により同時に接合して一体化することも可能である。
【0042】
・ 前記押付部として補助プレート20に加えて調整用補助プレートを用意し、補助プレート20を係止爪16に係止した後、その上に調整用補助プレートを挿入して係止爪16に係止して補助プレート20をリインフォースメントパネル18に押し付けるように構成することもできる。
【0043】
・ 前記押付部として、図7(a)に示すような係止爪16において、係入空間19が係止爪16の開口部側より基端部側が上下方向に狭くなるように係止爪16をテーパ状に形成することができる。この場合、補助プレート20を係止爪16の係入空間19へ係入したとき、補助プレート20をリインフォースメントパネル18に押し付ける力を生じさせることができる。
【0044】
・ 本発明のショックアブソーバ14の取付構造を、フロントホイールハウスのインナパネル12にショックアブソーバ14を取付ける構造に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
11…リヤホイールハウス、12…インナパネル、12a…開口縁、14…ショックアブソーバ、15…開口部、16…押付部としての係止爪、18…リインフォースメントパネル、18a…挿通孔、20…補助プレート、20a…挿通孔、22a…挿通孔、35…円弧状押付部、36…差込口、37…押付部としての弾性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のサスペンション機構を構成するショックアブソーバの上端部をホイールハウスに取付けるためのショックアブソーバの取付構造において、
前記ホイールハウスは、開口部が形成されたインナパネルと、前記開口部を塞ぐようにインナパネルの下面に接合されたリインフォースメントパネルと、前記開口部においてリインフォースメントパネルの上面に配置された補助プレートとを備え、リインフォースメントパネル及び補助プレートにはショックアブソーバの上端部が挿通される挿通孔が形成され、インナパネルには補助プレートに係合して補助プレートをリインフォースメントパネルに押付ける押付部が設けられていることを特徴とするショックアブソーバの取付構造。
【請求項2】
前記押付部は、補助プレートに対して弾性的に係合するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のショックアブソーバの取付構造。
【請求項3】
前記押付部は、インナパネルの一部又は別部品で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のショックアブソーバの取付構造。
【請求項4】
前記押付部は、リインフォースメントパネルに沿って補助プレートを差し込み可能な差込口を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のショックアブソーバの取付構造。
【請求項5】
前記押付部は、インナパネルの開口縁からその開口部に臨む複数の係止爪で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のショックアブソーバの取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−43474(P2013−43474A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180678(P2011−180678)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】