説明

ショーケース

【課題】簡単な構成で、商品陳列用の棚を任意の位置に簡単に移動できるショーケースを提供する。
【解決手段】ショーケース1は、室温が調温可能な商品収納室4と、商品収納室4内に配設された棚5と、商品収納室4内にて棚5を昇降可能に保持する棚昇降装置6とを備えるショーケース1において、棚昇降装置6は、商品収納室4の幅方向に離間して配設され、商品収納室4の上下方向に延び、且つ互いに平行な一対の支柱38と、各支柱38にそれぞれ割り当てて設けられた昇降機構40であって、棚5を支持する昇降体41を含み、この昇降体41をその支柱38に沿って無段階に昇降可能としたラック・ピニオン機構と、各昇降体41の昇降を連動させる連結軸42と、支柱38に対し、昇降体41の下降を阻止した状態で昇降体41を保持するロック機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショーケースに係わり、より詳しくは、商品陳列用の棚を上下方向にスライドさせることができるショーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストア等の店舗内に設置され、商品を冷蔵又は温蔵しながら陳列するショーケースとしては、例えば、特許文献1に示されるショーケースなど各種提案されている。
従来公知のショーケースは、冷蔵室14内に複数段の棚30a、30b、30cを備え、これら棚は取り外し自在に架設されている。これらの棚30a、30b、30cは、ケース本体の両側に立設された支持柱31a、31bに支持されている。具体的には、これら支持柱31には棚30を係止するために、上下方向に間隔を存して係合孔32がそれぞれ形成され、そして、棚30の支持に使用する係合孔32を選択することで、棚30の高さ位置や上下の棚30の間隔を適宜変更できるようになっている。つまり、棚30aの高さ位置の変更は、棚30aを支持柱より取り外し、異なる高さ位置の係合孔に棚30aを係止させることにより行う。
【特許文献1】特開平7−103643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来公知のショーケースにおいて、棚の高さ位置を変更する場合、その都度支持柱から棚を外さなければならない。また、商品が棚に載ったままの状態では、棚を外すのが大変であるので、棚の高さ位置変更に際しては、商品を棚から下ろす必要がある。このように棚の高さ位置を変更する作業はとても煩雑である。また、棚を係止する係合孔は上下に間隔を存して配置されているため、棚の高さ位置を細かく調整するにはあまり向いていない。このため、陳列する商品によっては、棚と棚との間に適当な間隔を確保できない場合がある。更に、棚を固定する際、左右で段違いの係合孔に棚を係止させてしまい易く、棚が傾く不具合が生じる場合もある。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で、商品陳列用の棚を任意の位置に簡単に移動できるショーケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明のショーケースは、室温が調温可能な商品収納室と、前記商品収納室内に配設された棚と、前記商品収納室内にて前記棚を昇降可能に保持する棚昇降装置とを備えるショーケースにおいて、前記棚昇降装置は、前記商品収納室の幅方向に離間して配設され、前記商品収納室の上下方向に延び、且つ互いに平行な複数の支柱と、前記各支柱の少なくとも2つに割り当てて設けられた昇降手段であって、前記棚を支持する昇降体を含み、この昇降体をその支柱に沿って無段階に昇降可能とした昇降手段と、前記各昇降体の昇降を連動させる連動部材と、前記支柱に対し、前記昇降体の下降を阻止した状態で前記昇降体を保持する保持手段とを備えているものである(請求項1)。
【0006】
請求項1のショーケースによれば、棚は昇降体とともに支柱に沿って移動し、しかも棚を保持する各昇降体は連動部材により連動して昇降する。そして、保持手段により昇降体は下降することを阻止された状態で保持されるので、棚を所望位置にて保持することができる。
また、本発明のショーケースは、請求項1に記載のショーケースにおいて、前記昇降手段は、前記昇降体が下降する方向に対して前記昇降体に制動力を発生させる制動器を更に含むことを特徴とする(請求項2)。
【0007】
請求項2のショーケースによれば、制動器が、昇降体が急激に下降することに対して抗する。
本発明のショーケースは、具体的には、前記昇降手段は、前記昇降体の昇降を可能にするラック・ピニオン機構を含み、前記連動部材は、前記ラック・ピニオン機構のピニオン間を連結する連結軸であることが好ましい(請求項3)。このような昇降手段は、ラック・ピニオン機構を含んでいるので、支柱に沿ってスムーズに昇降することができる。また、各昇降体のピニオンは連結軸で連結されているので、各昇降体は同期して昇降する。
【0008】
また、前記昇降手段は、前記昇降体と前記ピニオンとの間に設けられ、前記昇降体が下降する方向に対し前記昇降体に制動力を発生させる制動器を更に含むことが好ましい(請求項4)。このような制動器は、ピニオンに直結して制動力を発生させることができる。
そして、前記保持手段は、前記支柱に対して前記昇降体をロック可能なロック機構であって、前記ロック機構は、前記昇降体と協働して前記支柱を挟み込み可能に配設された挟込み板と、前記挟込み板及び前記昇降体に前記支柱を挟み込む押圧力を発生させる押圧レバーとを備えていることが好ましい(請求項5)。このようなロック機構は、昇降体と挟み込み板で支柱を挟み込むことができ、そのため、昇降体を支柱上の任意の位置にて保持することができる。
【0009】
一方、前記押圧レバーはカムレバーからなり、このカムレバーはその回動により前記押圧力を発生するカムを有することが好ましい(請求項6)。このようなカムレバーは、カム軸が偏心しているので、レバー操作によりカムを回動させることで前記押圧力を容易に発生させることができる。
また、前記制動器は、前記ピニオンと同軸に配設されたロータリダンパであることが好ましい(請求項7)。このようなロータリダンパは、内部のシリコーンオイルの粘性抵抗によりピニオンに対し制動力を作用させ、結果的に棚板が商品等の重さで下方に急激に移動することに抗する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1乃至請求項7に記載の本発明によれば、商品陳列用の棚を支柱に沿って昇降させることができ、棚の位置変更に際し、棚を取り外す必要が無く、棚の位置調整が容易となる。また、連動部材の働きにより、棚の左右の高さが段違いになることは有効に防止される。
請求項2に記載の本発明によれば、昇降体に対して制動力を発生させる制動器を備えているため、保持手段を解除して昇降体が移動可能となった場合でも、昇降体が急激に移動することは抑えられる。このため、棚に載置された商品の重さで棚板が下方へ急激に移動することは防止される。
【0011】
請求項3に記載の本発明によれば、棚板の水平状態を保ちながらスムーズに移動させる構造を比較的シンプルな構成により得られ、棚のスライド機能を有するショーケースの製造コスト削減に寄与する。
請求項4に記載の本発明によれば、昇降体が急激に下降することを抑制する構造を比較的シンプルな構成により得られ、棚のスライド機能を有するショーケースの製造コスト削減に寄与する。
【0012】
請求項5に記載の本発明によれば、昇降体を所望位置にて無段階に位置決め固定することができるので、棚の位置を細かく調整することができる。
請求項6に記載の本発明によれば、押圧レバーとしてカムレバーを採用しているので、ロックとロック解除の操作を簡単に行え、棚の移動操作が容易となる。
請求項7に記載の本発明によれば、制動器としてロータリダンパを採用しているので、簡単な構成で棚が下方に急激に移動することを抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係るショーケースの実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、一実施例のショーケース1を示す。
このショーケース1は、ケース本体2と、このケース本体2内に確保され、商品を収納する縦長の商品収納室4と、商品収納室4内に設置され、商品が陳列される棚5と、この棚5の高さ位置を可変すべく棚5を上下方向に移動可能とする棚昇降装置6と、図示しない温度調節装置とを備えている。
【0014】
温度調節装置は、凝縮器、圧縮機、蒸発器等からなる冷凍回路を含んだ冷凍ユニット、この冷凍ユニットの作動を制御し、商品収納室4内の温度、排水状況等の管理を行う電装ユニット等を備え、商品収納室4内は、この温度調節装置により所望温度に調節されている。
商品収納室4は、後壁8と、ルーフ10と、基台12及び左右の側壁14,14により区画され、その前面にて開口されている。なお、後壁8、ルーフ10、基台12及び左右の側壁14はケース本体2を構成する。
【0015】
詳しくは、後壁8はその内面が矩形状の背面板16より形成され、この背面板16はその上部が下部よりもケース本体2の後方側に位置すべく僅かに傾斜している。ルーフ10及び基台12もまたそれらの下面及び上面が矩形状の天井板及び底板18により形成されている。これら天井板及び底板18は背面壁16とともに断熱材からなるのに対し、側壁14は、商品収納室4内に陳列された商品がケース本体2の脇からも見えるように、例えば、透明なガラス板が用いられている。
【0016】
なお、基台12内には前述した温度調節装置が配設され、そして、後壁8及びルーフ10には温度調整装置からの冷気の供給を受け、この冷気を商品収納室4内に導くための冷気ダクトが延びている。
棚5は、商品が載せられる矩形状の棚板5aを備え、この棚板5aは金属あるいはガラスから形成されている。なお、図1中では、説明の都合上、棚板5aは一点鎖線で示している。棚板5aは、その両側部にて支持アーム20,20により支持されている。ここで、支持アーム20は、金属製の板材からなり、L字状の横断面を有する。
【0017】
より詳しくは、図2に示すように、支持アーム20は、棚板5の下面を受ける棚受け面22を有した水平部と、この水平部から垂下した垂下部24とを有し、棚受け面22には複数ずつの孔32が先端部及び基端部にそれぞれ形成されている。更に、支持アーム20、即ち、垂下部24の基端には下向きの係止フック26が後方に突設されているともに、垂下部24の基端からは角度調節フック30が下方に向けて延びている。この角度調節フック30は支持アーム20の後方に向けて折曲された先端部を有し、この先端部の下縁に2個の切欠凹所28が形成されている。
【0018】
なお、上述の支持アーム20には、左側用と右側用がある。左側用の支持アーム20Lは、アームの基端部から先端部をみた際に棚受け面22の左側縁から垂下部24が垂下し、これに対し、右側用の支持アーム20Rは、棚受け面22の右側縁から垂下部24が垂下している。それ故、図1に示すように、左側用の支持アーム20Lと右側用の支持アーム20Rは、対をなして商品陳列用の棚板5aを支持する。つまり、棚板5aは、左側用支持アーム20Lと右側用の支持アーム20Rと間に掛け渡されている。
【0019】
ここで、左右の支持アーム20L,20Rの先端部同士は前縁リム34により相互に連結され、また、支持アーム20L,20Rの基端部同士は後縁リム36により相互に連結されている。これら前縁リム34及び後縁リム36は水平に延び、棚板5aの前縁部と後縁部をそれぞれ保持する。なお、前縁リム34及び後縁リム36は、両端に貫通孔をそれぞれ有しており、これら貫通孔は前述した棚受け面22の対応する孔32に合致する。それ故、これら貫通孔及び孔32にボルトを挿通し、ナットを締め付けることにより、前縁リム34及び後縁リム36は両支持アーム20L,20Rに固定されている。
【0020】
前述した棚昇降装置6は、図1に示すように、左右一対の支柱38,38を備え、これら支柱38,38は商品収納室4の背面板16の両側に配置され、後壁8の一部を構成する。
より詳しくは、各支柱38は、L字形の横断面を有する前側柱材48を含み、この前側柱材48は、背面板16に隣接し且つ背面板16と略面一となる外面48aを提供する正面壁51と、ケース本体2の側方を向いた外面48bを提供する側面壁52とを有する。
【0021】
更に、図3に示されるように、各支柱38は裏側柱材60を含んでおり、この裏側柱材60もまた前側柱材48と同様なL字形の横断面を有する。即ち、裏側柱材60は、前側柱材48の正面壁51に対して離間対向した後面壁59と、前側柱材48の側面壁52に平行な側面壁61とを有し、この側面壁61は前側柱材48の側面壁52の内面に部分的に重ね合わされた状態で、例えば溶接により結合されている。
【0022】
それ故、各支柱38は、正面壁51、側面壁52及び後面壁59からなる周壁を有し、この周壁は側面壁52と対向する側にて開放されている。そして、一対の支柱38は周壁の開放側を互いに対向させて配置されている。
なお、支柱38は横断面がU字形状の一体成形品であってもよい。
また、各支柱38は、その前側柱材48の正面壁51にガイド孔54及び差込み孔56をそれぞれ有する。図1から明らかなようにガイド孔54及び差込み孔56は、前側柱材48の長手方向に沿って、互いに平行に延びている。
【0023】
このガイド孔54及び差込み孔56は同一の長さを有するが、ガイド孔54の開口幅は差込み孔56の開口幅よりも広い。
図1から明らかなように、前述した左右の支持アーム20は対応する側の支柱38の昇降機構40にそれぞれ備えられ、これら昇降機構40は支持アーム20を介して棚板5aの昇降を可能にする。ここで、各支柱38の昇降機構40は左右対称であるものの、同一の構成を有しているので、以下には一方の側の昇降機構40に着目して、その詳細を説明する。
【0024】
昇降機構40は昇降体41を備えている。本実施例の場合、図3に示すように、昇降体41はバックサポート62及びフロントサポート82からなり、これらサポート62,82は支柱38の前側柱材48を挟み込むように配設されている。
バックサポート62は横断面がL字状をなす金属製の板材からなり、支柱38内に配置されている。より詳しくは、バックサポート62は、前側柱材48の正面壁51にその内側から摺動自在に当接されたバックプレート66と、このバックプレート66に直交するブラケット68とからなる。ここで、バックプレート66に対してブラケット68が延びる方向をバックプレート66の裏面側、その反対側をバックプレート66の表面側とする。
【0025】
図5から明らかなように、バックプレート66は、ガイド孔54に摺動自在に嵌合する凸部70と、差込み孔56に合致する上部係合孔72及び下部係合孔74とを有し、これら係合孔72,74は上下に離間して配置されている。凸部70は、バックプレート66の表面側に台形状に突出しており、バックプレート66の上下方向にその全長に亘って延びている。
【0026】
また、凸部70の中央部には、貫通孔76が設けられている。
一方、ブラケット68は、矩形状をなしており、ブラケット68の中央の上部及び下部には、貫通孔78,78が設けられている。これら貫通孔78,78はロータリダンパ46の取り付けに使用される。即ち、図4から明らかなようにロータリダンパ46は、円柱状のダンパ本体45を備え、このダンパ本体45はその基端部に取付フランジ47を有する。取付フランジ47には、一対の貫通孔47aが形成されており、これら貫通孔47aはブラケット68の対応する貫通孔78と互いに合致可能に配置されている。それ故、これら貫通孔47a,78にボルトを通してナットを締め付けることにより、ロータリダンパ46はブラケット68の外面、つまり、支柱38の開放側を向いた面に固定されている。
【0027】
ロータリダンパ46は、ダンパ本体45内に回動自在に配設されたロータを有しており、このダンパ本体45内にはシリコーンオイルが充填されている。ロータリダンパ46は、ロータが回転することにより発生するシリコーンオイルの粘性抵抗で制動対象物に制動力を発生する機能を有する。本実施例においては、一方向に対してのみに制動力を発生させる一方向性のロータリダンパが採用されている。つまり、ロータリダンパ46は一方向には制動力を発生させるが、他方向には制動力を発生させない。
【0028】
図3から明らかなように、ロータリダンパ46からはロータの回転軸49が突出し、この回転軸49にピニオン64が取り付けられている。このピニオン64はラック50に噛み合っており、このラック50は支柱38内を上下方向に延びている。即ち、ラック50は支柱38内において、その裏側柱材60の後面壁59に取り付けられている。
それ故、昇降体41、即ち、そのバックサポート62が昇降されるとき、ピニオン64はラック50に噛み合いながら回転し、バックサポート62とともにラック50に沿って昇降する。ここで、ピニオン64の回転はロータリダンパ46に伝達されるが、ロータリダンパ46はバックサポート62が下降する際のピニオン64の回転方向のみに前述した制動力を発生させる。この結果、ロータリダンパ46の制動力に打ち勝つ押し下げ力がバックサポート62に加えられない限り、パックサポート62は下降せず、その高さ位置に保持される。
【0029】
更に、ピニオン64はピニオン軸80を有し、このピニオン軸80は、ピニオン64からロータリダンパ46とは反対側に突出している。そして、左右一対の支柱38における昇降体41、即ち、これら昇降体41のピニオン64はピニオン軸80同士が水平な連結軸42を介して相互に連結されている。連結軸42は、金属製の断面U字状の長尺な棒材であり、その両端部に対応する側のピニオン軸80をそれぞれ嵌め込んで、これらピニオン軸80にねじ止め固定されている。
【0030】
上述した連結軸42は、左右のピニオン64を互いに連動して回転させるので、左右の昇降体41は同期して昇降をする。
一方、昇降体41のフロントサポート82は、図6から明らかなように矩形状の金属製の板材からなり、支柱38における前側柱材48の正面壁51をバックサポート62との間にて挟み込むようにして配置され、そして、これらバックサポート62及びフロントサポート82は前述した支持アーム20を介して相互に結合されている。即ち、支持アーム20はバックサポート62及びフロントサポート82に取り付けられている。
【0031】
詳しくは、図6に示されているようにフロントサポート82はその上下部に差込み孔86,86を有し、これら差込み孔86,86は、パックサポート62におけるバックプレート66の上部係合孔72及び下部係合孔74のそれぞれと対応した位置に配置されている。
それ故、支持アーム20は、係止フック26及び角度調節フック30をフロントサポート82の差込み孔86及びバックサポート62の上部係合孔72及び下部係合孔74を通じてそれぞれ差込み、そして、これら上部係合孔72の下端に係止フック26を係合させる一方、下部係合孔74の下端に角度調節フック30の一方の切欠凹所28を係合させることで、バックサポート62及びフロントサポート82に対して取り付けられている。なお、角度調節フック30は2つの切欠凹所28を備えているので、下部係合孔74との係合をなす切欠凹所28を選択することで、支柱38に対する支持アーム20の取り付け角度、つまり、棚板5aの設置角度を選択することができる。
【0032】
更に、棚昇降装置6は、昇降体41の昇降をロックするロック機構44を備え、このロック機構44の詳細は図3に示されている。
ロック機構44は取り付けロッド92を含み、この取り付けロッド92は昇降体41の前面側から支柱38に向けて昇降体41を貫通する。具体的には、取り付けロッド92はフロントサポート82の貫通孔及びバックサポート62における凸部70の貫通孔76(図5)をそれぞれ貫通し、支柱38内に位置した内端部を有する。この内端部は雄ねじ部として形成され、支柱38内にて挟持プレート96を更に貫通し、この挟持プレート96にナット98を介して取り付けられている。
【0033】
一方、取り付けロッド92の外端部には、カムレバー84が取り付けられている。より詳しくは、図6から明らかなように、カムレバー84はその上端部が円筒状のカム88として形成され、このカム88からは一体にしてレバー部90が延びている。カム88はその内部に偏心したカム軸84aを有し、このカム軸84aの軸線は取り付けロッド92の軸線に直交する水平面内にある。また、カム88の外周面にはその一部に凹所(図示しない)が形成され、この凹所に取り付けロッド92の外端部が受け入れられている。カム軸84aは取り付けロッド92の外端部を貫通し、この外端部に回転自在に支持されている。
【0034】
更に、カム88とフロントサポート82との間には取り付けロッド92を囲むようにして2枚の皿ばね94が配置されており、これら皿ばね94は互い逆向きにして重ね合わされ、フロントサポート82からカム88を離間させる方向に付勢する。それ故、ここでの付勢力は、カム軸84aを介して取り付けロッド92をカム88側に引き出すように働くことから、前述した挟持プレート96はバックサポート62に押し付けられた状態となる。
【0035】
上述したカムレバー84によれば、そのレバー部90を操作して、カム88をそのカム軸84aを中心に回動させると、カム88に対してカム軸84aが偏心していることから、カム88の外周面、即ち、そのカム面とフロントサポート82との間の間隔が変化する。それ故、この間隔を減少させる方向にカム88が回動されれば、カム88は皿ばね94の圧縮を伴い、挟持プレート96との間にて昇降体41を挟み付け、そのフロントサポート82を支柱38の前側柱材48に押圧する。これにより、昇降体41はフロントサポート82とバックサポート62との間にて前側柱材48を挟み込んだクランプ状態となり、その昇降がロックされる。逆に、レバー部90の操作により、前記間隔が増加する方向にカム88が回動されれば、前記クランプ状態、つまり、昇降体41のロックが解除される。
【0036】
なお、本実施例においては、図6に示すように、レバー部90が下側に位置する場合にロック状態となり、逆にレバー部90を上側に操作した場合にアンロック状態になるように設定している。
本実施例におけるショーケース1においては、前述したように前縁リム34と後縁リム36により連結された左右一対の支持アーム20に棚板5aが載置され、この棚板5aは左右の支持アーム20に固定された状態、つまり、支持アーム20を介して左右の昇降体41に保持された状態にある。
【0037】
この後、前述したようにカムレバー84の操作により、左右の昇降体41のロックを解除し、これら昇降体41を支持アーム20及び棚板5aとともに支柱38に沿って所望高さ位置に昇降させ、次いでカムレバー84のレバー部90を下方に倒して左右の昇降体41をロックし、この状態で、棚板5a上に商品が載せられる。
次に、棚板5aの高さ位置を変更する必要が生じた場合は、カムレバー84のレバー部90を上側に操作し、左右の昇降体41のロックを解除する。このとき、棚板5aの上には商品が載せられた状態であり、商品や棚板5a等の重さで棚板5aには下降する力が働く。しかしながら、本実施例の昇降体41は、ロータリダンパ46を備えているので、昇降体41が下降しようとしても制動力が働く。このため、昇降体41のロックが解除されても、棚板5aが急激に降下することはない。よって、本実施例のショーケース1においては、棚板5aの高さ調整に際し、棚板5aから商品をおろす必要がない。
【0038】
作業者は、ロックが解除された昇降体41を棚板5aとともに任意の高さ位置に昇降させる。このとき、昇降体41を下降させる場合、ロータリダンパ46の制動力がかかっているが、この制動力は、シリコーンオイルの粘性抵抗により発生するものなので、遅いスピードでの昇降体41、即ち、棚板5aの下降は可能である。逆に、昇降体41を上昇させる場合、ロータリダンパ46は制動力を発生しないので、作業者は昇降体41を介して棚板5aを楽に上昇させることができる。そして、所望の高さ位置にて棚板5aを止めても、ロータリダンパ46の制動力により棚板5aが急激に下降することはない。この高さ位置で作業者は、カムレバー84のレバー部90を下に倒し昇降体41をロック状態にすれば、棚板5aは調整後の高さ位置に保持される。
【0039】
また、左右の昇降体41はこれらのピニオン64が連結軸42により相互に連結されているので、各ピニオン64は同期して回転する。このため、左右の昇降体41は連動して昇降するので、左右の昇降体41の高さ位置にずれが生じることはなく、棚板5aはその高さ調整に拘わらず、水平状態に維持される。
更に、昇降体41は、ラック50とピニオン64との噛み合いにより昇降するので、棚板5aの高さ位置を無段階で調節することが可能である。
【0040】
以上のように、本発明におけるショーケース1においては、昇降体41に支持アーム20が取り付けられているので、棚板5aの昇降に際し、昇降体41を昇降させることにより棚板5aの高さ位置を変更することができる。このため、棚板5aを支持アーム20ごと取り外して昇降させる必要がない。また、棚板5aを移動させるための操作入力は、棚板5aの基端部にあるので、棚板5a及び支持アーム20の構成をシンプルにすることができる。
【0041】
本発明は上述した一実施例に制約されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本実施例では、棚板5aが一段の態様について説明したが、棚板5aは複数段設ける態様としても構わない。この場合、昇降体41、連結軸42、ロック機構44などは棚板5aの段数に応じて設けられる。
また、本実施例においては、ロック機構44にカムレバーを採用したが、この態様の他、支柱38のガイド孔56に沿って昇降自在で且つ任意の高さ位置にて支柱38に固定可能な可動ストッパを設け、この可動ストッパにて昇降体41を下方から支持するようにしてもよい。
【0042】
更に、本実施例におけるショーケース1は、昇降体41を備えた支柱38を左右一対備えているが、これら支柱38間に更に、昇降体41を備えた別の支柱38を配置すれば、棚板5aはその両端部と中央の3カ所にて支持アーム20に支持され、棚板5aの支持がより安定して可能となる。また、支柱38が増えることにより、ガイド手段が増えるので棚板5aの昇降がよりスムーズになる。特に、この態様の場合、横長のショーケースに対応が可能である。また、本発明のショーケースは、昇降機構40付きの支柱38を更に多く備えるものであっても構わない。なお、この場合、複数の支柱の少なくとも2つに昇降体が割り当てて設けられていればよく、複数の支柱の全てに昇降体を割り当てなくてもよい。
【0043】
また、本実施例においては、一方向に対してのみに制動力を発生させる一方向性のロータリダンパが採用したが、本発明はこの態様に限定されるものではなく、両方向に対して制動力を発生させるロータリダンパを採用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例に係るショーケースを示す斜視図である。
【図2】実施例に係るアームを示す斜視図である。
【図3】実施例に係る棚昇降装置の概略構成図である。
【図4】実施例に係る棚昇降装置の構成を一部省略して後方側よりみた斜視図である。
【図5】実施例に係る昇降体のバックサポートを示す斜視図である。
【図6】実施例に係る棚昇降装置の構成を一部省略して前方側よりみた斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
2 ケース本体
4 商品収納室
5 棚
5a 棚板
6 棚昇降装置
8 後壁
10 ルーフ
12 基台
14 側壁
16 背面板
18 底面板
20 支持アーム
22 棚受け面
24 垂下部
26 係止フック
28 切欠凹所
30 角度調節フック
32 孔
34 前縁リム
36 後縁リム
38 支柱
40 昇降機構(昇降手段)
41 昇降体
42 連結軸
44 ロック機構
46 ロータリダンパ
48 前側柱材
50 ラック
54 ガイド孔
56 差込み孔
60 裏側柱材
62 バックサポート
64 ピニオン
66 バックプレート
68 ブラケット
82 フロントサポート
84 カムレバー
96 挟持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温が調温可能な商品収納室と、前記商品収納室内に配設された棚と、前記商品収納室内にて前記棚を昇降可能に保持する棚昇降装置とを備えるショーケースにおいて、
前記棚昇降装置は、
前記商品収納室の幅方向に離間して配設され、前記商品収納室の上下方向に延び、且つ互いに平行な複数の支柱と、
前記各支柱の少なくとも2つに割り当てて設けられた昇降手段であって、前記棚を支持する昇降体を含み、この昇降体をその支柱に沿って無段階に昇降可能とした昇降手段と、
前記各昇降体の昇降を連動させる連動部材と、
前記支柱に対し、前記昇降体の下降を阻止した状態で前記昇降体を保持する保持手段と
を備えていることを特徴とするショーケース。
【請求項2】
前記昇降手段は、前記昇降体が下降する方向に対して前記昇降体に制動力を発生させる制動器を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記昇降体の昇降を可能にするラック・ピニオン機構を含み、
前記連動部材は、前記ラック・ピニオン機構のピニオン間を連結する連結軸である
ことを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項4】
前記昇降手段は、前記昇降体と前記ピニオンとの間に設けられ、前記昇降体が下降する方向に対し前記昇降体に制動力を発生させる制動器を更に含む、請求項3に記載のショーケース。
【請求項5】
前記保持手段は、前記支柱に対して前記昇降体をロック可能なロック機構であって、
前記ロック機構は、
前記昇降体と協働して前記支柱を挟み込み可能に配設された挟込み板と、
前記挟込み板及び前記昇降体に前記支柱を挟み込む押圧力を発生させる押圧レバーと
を備えていることを特徴とする請求項4に記載のショーケース。
【請求項6】
前記押圧レバーはカムレバーからなり、このカムレバーはその回動により前記押圧力を発生するカムを有することを特徴とする請求項5に記載のショーケース。
【請求項7】
前記制動器は、前記ピニオンと同軸に配設されたロータリダンパであることを特徴とする請求項4〜6の何れかに記載のショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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