説明

ショーケース

【課題】電気機器を扉に設ける場合にも、給電のために本体から扉に渡る配線の必要のないショーケースを提供する。
【解決手段】ショーケースSは、本体1内に構成された陳列室3の前面開口を、透視可能な扉4により開閉自在に閉塞して成る。扉4に設けられたLED照明装置38と、本体4に設けられた送電側コイル37と、扉4に設けられ、当該扉4が陳列室3の開口を閉じた状態で送電側コイル37に電磁結合され、LED照明装置38に供給するための電力を誘導する受電側コイル39とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陳列室の前面開口を透視可能な扉にて開閉自在に閉塞して成るショーケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種ショーケースは、本体内に構成した陳列室内に飲料や食品等の商品を収納して陳列し、陳列室内は冷凍装置により所定温度に冷却すると共に、陳列室の前面開口は透視可能なガラス扉にて開閉自在に閉塞している。
【0003】
また、商品の販売効果を向上させるために、この種ショーケースには天面上に例えば商品の広告を行うための電飾看板が設けられる。この看板は透光性の樹脂板等に商品名や商品の写真、イラスト等の広告を印刷したものであり、後方から蛍光灯等の照明装置によって照明を当てることで広告を浮き上がらせ、顧客に対して商品をアピールするものであった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−43972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では前記公報の如く電飾看板は本体に設けられていたが、このような電飾看板等の電気機器を扉に設ける場合、電気機器に給電するための配線を本体から扉に渡って設けなければならなくなり、扉の組み付け作業等が煩雑となる問題があった。また、扉は開閉されるものであるため、本体と電気機器との間で断線が発生する危険性もあった。
【0006】
本発明は、係る従来の技術的課題を解決するために成されたものであり、電気機器を扉に設ける場合にも、給電のために本体から扉に渡る配線の必要のないショーケースを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のショーケースは、本体内に構成された陳列室の前面開口を、透視可能な扉により開閉自在に閉塞して成るものであって、扉に設けられた電気機器と、本体に設けられた送電側コイルと、扉に設けられ、当該扉が陳列室の開口を閉じた状態で送電側コイルに電磁結合され、電気機器に供給するための電力を誘導する受電側コイルとを備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明のショーケースは、上記発明において受電側コイルは、扉に設けられて電気機器に給電するための充電池に充電する電力を誘導することを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明のショーケースは、上記各発明において電気機器は、照明装置、或いは、電飾看板又は画像を表示するディスプレイから成る広告装置であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明のショーケースは、上記各発明において送電側コイルは、本体の天面上に設けられており、受電側コイルは扉より上方に延在して設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明のショーケースは、上記発明において受電側コイルは、扉に交換可能に取り付けられ、当該扉より上方に延在する扉装飾カバーに設けられていることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明のショーケースは、請求項4又は請求項5の発明において陳列室内を所定温度に冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、本体内に構成された陳列室の前面開口を、透視可能な扉により開閉自在に閉塞して成るショーケースにおいて、扉に電気機器が設けられており、本体には送電側コイルを設け、扉には更に、当該扉が陳列室の開口を閉じた状態で送電側コイルに電磁結合され、電気機器に供給するための電力を誘導する受電側コイルを設けたので、扉に設けられた電気機器に本体側から電力を供給しながら、当該電気機器のための扉と本体間の配線を廃止することができるようになり、扉の組み付け作業性を改善し、また、断線故障の発生も防止することが可能となる。
【0014】
また、請求項2の発明の如く扉に充電池を設け、受電側コイルが誘導する電力で充電池を充電すると共に、充電池から扉に設けられた電気機器に給電を行うようにすれば、より安定した給電が実現できるようになると共に、扉が開放されている間も、充電池の電力が残存する期間、電気機器に給電を行うことができるようになるものである。
【0015】
また、請求項3の発明の如く電気機器として、照明装置、或いは、電飾看板又は画像を表示するディスプレイから成る広告装置を扉に設ければ、商品の広告/販売効果を著しく向上させることができるようになる。
【0016】
また、請求項4の発明の如く送電側コイルを本体の天面上に設け、受電側コイルを扉より上方に延在して設ければ、本体の側方や下方に設ける場合に比してショーケースそのものの外観も良好となる。また、送電側コイルは陳列室外に位置することになるので、請求項6の如く冷却装置によって陳列室内を所定温度に冷却する所謂低温ショーケースであっても、送電側コイルから発生する熱が陳列室内の冷却効果に悪影響を及ぼすことが無い。
【0017】
また、請求項5の発明の如く扉装飾カバーを扉に交換可能に取り付ければ、扉装飾カバーを交換することで既存のショーケースの外観を極めて容易に変更することができるようになることに加え、この扉装飾カバーに受電側コイルを設けて扉より上方に延在させることにより、扉装飾カバーにて各コイルを隠蔽することができるようになるものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した一実施例のショーケースの斜視図である。
【図2】図1の状態から各装飾カバーを取り外した状態のショーケースの斜視図である。
【図3】図1のショーケースの分解斜視図である。
【図4】図1のショーケースの縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。実施例のショーケースSは、飲料や食品等の商品を冷却しながら陳列販売するための所謂低温ショーケースであり、本体1を構成する縦長矩形状の断熱箱体2内に前面が開口した陳列室3が構成されている。この陳列室3の開口は、例えば向かって右側(一側)上下を回動自在に本体1に枢支された扉4により開閉自在に閉塞されている。
【0020】
この扉4は周囲の金属製扉枠(サッシュ)6と、この扉枠6の内方に嵌め込まれた複層透明ガラス板7とから成り、このガラス板7を通して外部より陳列室3内部が透視可能とされている。また、扉4の向かって左側(非枢支側)の扉枠6には、扉4を開閉するための把手5が設けられている。
【0021】
断熱箱体2の下側(陳列室3の外側)である本体1の下部には機械室8が構成されており、この機械室8内に冷却装置Rの冷媒回路を構成する図示しない圧縮機や凝縮器9、図示しない凝縮器用送風機等が設置されている。尚、機械室8は前面が開口している。
【0022】
一方、陳列室3内には商品陳列用の棚11が複数段架設されている。また、断熱箱体2内の背面及び底面には、間隔を存して仕切板12及び13が設けられており、各仕切板12及び13と断熱箱体2との間に、相互に連通した背面ダクト14及び底面ダクト16が構成され、陳列室3はこれら仕切板12及び13の内側に構成されたかたちとされている。
【0023】
また、背面の仕切板12の上端と断熱箱体2間は背面ダクト14に連通した冷気吹出口17、底面の仕切板13の前端と断熱箱体2間は底面ダクト16に連通した冷気吸込口18とされている。断熱箱体2の底壁には相互に前後に位置する連通孔19、21が貫通形成されており、連通孔19と21間において仕切板13から垂下する隔壁13Aにより、底面ダクト16は前後に仕切られている。
【0024】
更に、断熱箱体2の底壁には、連通孔19、21に対応して断熱性の冷却箱22が外側から取り付けられ、機械室8内に位置している。この冷却箱22内には冷却装置Rの冷媒回路を構成する冷却器23と冷気循環用送風機24が収納されており、冷却器23によって冷却箱22内は連通孔19側と連通孔21側とに区画されている。これにより、陳列室3−冷気吸込口18−底面ダクト16−連通孔19−冷気循環用送風機24(冷却箱22内)−冷却器23(冷却箱22内)−連通孔21−底面ダクト16−背面ダクト14−冷気吹出口17−陳列室3と渡る一連の冷気通路が構成されている。
【0025】
そして、実施例では本体1の左右側面及び天面、機械室8の前面及び扉4の外面に、何れも硬質合成樹脂から成る側面装飾カバー26、27、天面装飾カバー28、機械室装飾カバー29及び扉装飾カバー31がそれぞれ取り付けられている。この場合、側面装飾カバー26、27は本体1の左右側面を覆うように本体1に交換可能(ネジ止め)に取り付けられ、天面装飾カバー28は本体1の天面を覆うように本体1に交換可能(ネジ止め)に取り付けられている。また、機械室装飾カバー28は機械室8の前面開口を開閉可能に閉じるように本体1に着脱自在(交換可能)に取り付けられており、これら装飾カバー26〜28は本体1の一部を構成する。
【0026】
この場合、機械室装飾カバー29には開口29Aが形成され、この開口29Aに対応して機械室装飾カバー29には、ルーバ32とメッシュ部33とを一体に備えたフィルタ35が着脱可能に取り付けられている。尚、図3の34は凝縮器9の前側に対応した開口を有するグリル板であり、前記凝縮器用送風機の運転により開口29Aからフィルタ35を経て吸引された外気を、効率的良く凝縮器9に通風させる機能を奏する。
【0027】
また、天面装飾カバー28内の前面には、本体1の天面上に位置して送電側コイル(金属コイル)37が取り付けられている。この送電側コイル37の配線は本体1の天面装飾カバー28内、若しくは、機械室8内に設置された電源に接続されて給電される。
【0028】
また、扉装飾カバー31は扉4の外面を覆うように扉枠6に交換可能(ネジ止め)に取り付けられている。この場合、扉装飾カバー31は扉枠6を前方から間隔を存して隠蔽する透視不能な枠装飾部31Aと、その内方でガラス板7の前方に間隔を存して位置する透視可能なガラス装飾部31Bとから成る。
【0029】
そして、ガラス装飾部31Bの平断面は、中央が前方に突出して両端部が後退した湾曲形状とされ、前方から陳列室3内を見た場合に商品陳列がより立体的に見えるように配慮されている。このようにショーケースSの本体1及び扉4に各装飾カバー26〜29、31を交換可能に取り付けているので、設置場所や使用目的、陳列商品に応じてそれらを交換することで、既存のショーケースSの意匠を容易に変更することができるようになり、販売効果の著しい改善を図ることができるようになる。
【0030】
ここで、実施例では扉装飾カバー31の枠装飾部31Aが扉4よりも上方に延在し、その上側の左右辺が天面装飾カバー28の前側に位置しており、この枠装飾部31Aの上部(上側の左右辺)の前部に、本発明における電気機器の一例としてのLED照明装置38が設けられている。尚、LED照明装置38の前面には所定の広告文字やイラストが印刷された透光性の広告部材38Aが取り付けられている。この広告部材38Aもガラス装飾部31Bと同様に前面が湾曲しており、ガラス装飾部31Bの上部は係る広告部材38Aの前面まで覆っている。
【0031】
このLED照明装置38の後側に位置する扉装飾カバー31(枠装飾部31A)内には、充電池36が設けられており、更に、この充電池36の後側の扉装飾カバー31(枠装飾部31Aの上側の左右辺)の後面には、受電側コイル(金属コイル)39が取り付けられている。この受電側コイル39は扉4が陳列室3の前面開口を閉じた状態で天面装飾カバー28前面の送電側コイル37の前側に位置し、電磁結合される。
【0032】
この電磁結合により、送電側コイル37に通電されたときに発生する磁力で受電側コイル39には電力が誘導される。受電側コイル39は充電池36及びLED照明装置38に接続されており、扉4が閉じた状態では受電側コイル39に誘導された電力が直接LED照明装置38に供給されると共に、この誘導電力は充電池36にも供給されて充電が行われる。LED照明装置38は充電池36にも接続されており、扉4が開放されて受電側コイル39が送電側コイル37から離間し、電力が誘導されなくなった状態では、充電池36から放電された電力がLED照明装置38に供給される構成とされている。
【0033】
以上の構成で、冷却装置R及び各送風機が運転されると、冷却器23と熱交換した冷気は冷気循環用送風機24により連通孔21から底面ダクト16に入り、背面ダクト14を上昇して冷気吹出口17から陳列室3内に吹き出される。この陳列室3内を循環して各棚11上の商品を冷却した冷気は、冷気吸込口18から吸い込まれ、底面ダクト16を経て連通孔19から再び冷気循環用送風機24に吸い込まれる。これにより、陳列室3内に陳列された商品は所定の温度に冷却される。
【0034】
また、前記凝縮器用送風機も運転され、機械室装飾カバー29の開口29Aからは外気が吸引される。吸引された外気はフィルタ35のメッシュ部33にて塵埃を除去され、且つ、ルーバ32にて風向が決められた後、凝縮器9及び機械室8内の圧縮機等に通風されてそれらを空冷する。
【0035】
一方、送電側コイル37も通電される。扉4が閉じた状態で、この送電側コイル37から生じた磁力線は扉4の扉装飾カバー31に設けられた受電側コイル39を通過するので、この受電側コイル39には電力が誘導される。この誘導された電力は前述した如くLED照明装置38に供給され、LED照明装置38は点灯する。そして、広告部材38Aを後側から照らし出す。これにより、LED照明装置38に無接点で電力を供給し、広告部材38Aによる商品の販売効果を向上させることができるようになると共に、充電池36にも充電が行われる。
【0036】
ここで、LED照明装置38を扉4側に設けた場合、従来では給電するための配線を本体1と扉4間に渡って設けなければならない。その場合は、扉4のヒンジ内を通して配線することになるので、扉4の本体1への組み付け作業が極めて面倒になると共に、扉4の開閉によって断線する危険性も大きい。
【0037】
しかしながら、前述した如く本発明では、扉4にLED照明装置38と受電側コイル39を設け、扉4が陳列室3の開口を閉じた状態で受電側コイル39と電磁結合される送電側コイル37を本体1に設けているので、LED照明装置38を無接点給電で点灯させながら、当該LED照明装置38のための前述の如き扉4と本体1間の配線を廃止することができるようになり、扉4の組み付け作業性を改善し、また、断線故障の発生も防止することが可能となる。
【0038】
また、受電側コイル39の誘導電力により充電池36も充電され、この充電池36の放電によってLED照明装置38に電力を供給できるので、蓄電池36に電力が残存している間は扉4を開いた状態でもLED照明装置38を点灯させることができる。
【0039】
また、実施例では送電側コイル37を本体1の天面上に設け、受電側コイル39を扉4より上方に延在して設けているので、本体1の側方や下方に設ける場合に比してショーケースSそのものの外観も良好となる。また、送電側コイル37は陳列室3外に位置することになるので、送電側コイル37から発生する熱が冷却装置Rによる陳列室3内の冷却効果に悪影響を及ぼすことも無い。
【0040】
また、実施例では扉装飾カバー31を扉4に交換可能に取り付けているので、扉装飾カバー31を交換することで既存のショーケースSの外観を極めて容易に変更することができるようになることに加え、この扉装飾カバー31に受電側コイル39を設けて扉4より上方に延在させることにより、扉装飾カバー31にて各コイル37、39を隠蔽することができるようになる。
【0041】
尚、実施例では扉4に設けられる電気機器としてLED照明装置を用いたが、請求項1及び請求項2の発明ではそれに限らず、蛍光灯等の照明装置の他、電飾看板又は画像を表示する液晶ディスプレイ等から成る広告装置であっても良い。それにより、商品の広告/販売効果を著しく向上させることができるようになる。更に、電気機器としては扉4に設けられる結露防止ヒータ等も考えられる。
【0042】
また、実施例では装飾カバーを本体1や扉4に取り付けたが、係る装飾カバーを用いずに、電気機器や受電側コイル39を扉4に直接取り付けて上方に延在させるものであっても本発明は有効である。
【符号の説明】
【0043】
S ショーケース
R 冷却装置
1 本体
2 断熱箱体
3 陳列室
4 扉
11 棚
23 冷却器
28 天面装飾カバー
31 扉装飾カバー
31A 枠装飾部
36 充電池
37 送電側コイル
38 LED照明装置
38A 広告部材
39 受電側コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体内に構成された陳列室の前面開口を、透視可能な扉により開閉自在に閉塞して成るショーケースにおいて、
前記扉に設けられた電気機器と、
前記本体に設けられた送電側コイルと、
前記扉に設けられ、当該扉が前記陳列室の開口を閉じた状態で前記送電側コイルに電磁結合され、前記電気機器に供給するための電力を誘導する受電側コイルとを備えたことを特徴とするショーケース。
【請求項2】
前記受電側コイルは、前記扉に設けられて前記電気機器に給電するための充電池に充電する電力を誘導することを特徴とする請求項1に記載のショーケース。
【請求項3】
前記電気機器は、照明装置、或いは、電飾看板又は画像を表示するディスプレイから成る広告装置であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のショーケース。
【請求項4】
前記送電側コイルは、前記本体の天面上に設けられており、前記受電側コイルは前記扉より上方に延在して設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちの何れかに記載のショーケース。
【請求項5】
前記受電側コイルは、前記扉に交換可能に取り付けられ、当該扉より上方に延在する扉装飾カバーに設けられていることを特徴とする請求項4に記載のショーケース。
【請求項6】
前記陳列室内を所定温度に冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のショーケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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