説明

ショートアーク型放電ランプ

【課題】ランプの破裂の危険性を低減させたショートアーク型放電ランプを提供する。
【解決手段】ショートアーク型放電ランプは球状部と該球状部の中心を通る軸線に沿って対向して配置された2つのシール管部とを備える。各シール管部において、該シール管部と前記球状部との接続位置から前記口金までの間の該シール管部の外周面上の所定の位置までの長さをL1(mm)、該所定の位置から前記第1の集電円盤の前記第1のシール部材に対向する面の位置までの長さをL2(mm)、該シール管の前記L1の長さに対応する部分の最大厚さをt(mm)とすると、
L1≧30mm、2mm≦L2≦20mm、3mm≦t≦6mmの
すべての条件式を満たす必要がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体露光装置等に用いられるショートアーク型放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧水銀ランプ、高圧ナトリウムランプ、メタルハライドランプ及びセラミックメタルハライドランプのような高輝度放電ランプ(HIDランプ:High Intensity Discharge Lamp)は、電極間の放電を利用して発光する。このため、白熱電球と比べて、光束が大きく大規模な空間の照明に適し、エネルギー効率が良いといった種々の特徴を備えている。
【0003】
特に、アーク長が短く高照度の光を放射するショートアーク型放電ランプは、半導体、液晶、プリント基板等の製造工程における露光用光源のような光応用分野の光源として利用されており、中心発光波長が365nmのi線ランプや436nmのg線ランプが知られている。
【0004】
ショートアーク型放電ランプの多くは、石英管の発光管封体の中央が球形状で、両端が細く絞られていて管形状に形成されている。中央の球形状の部分の内部には陰極及び陽極が対向して配置され、細く絞られたガラス管内には封止部を介して電極マウントが固定されている。陰極及び陽極の電極芯棒はそれを経由して外部のリード線に接続されている。
【0005】
特に、半導体露光装置に用いられるショートアーク型放電ランプは、露光工程で、長時間にわたり、高照度を維持することや安定したビーム効率を維持することが求められている。このため、ショートアーク型放電ランプは、投入電力が大きく、点灯時には、ランプ内の温度と圧力とがかなり高くなる。また、ランプを高照度化するための一方法として、水銀や希ガスをより多く封入して紫外域のランプ発光効率が高められている。そのため、電極芯棒を支持する電極マウントを発光管封体に溶着する際に、電極マウントを構成する円筒体の端部と発光管封体との間の一部に間隙が形成されることにより、点灯時に、それらの間に熱応力が生じたりクラックが発生したりすることがある。このため、そのような位置を起点として、ランプが破裂する可能性が高いという問題がある。
【0006】
中でも、液晶・プリント基板露光装置に用いられるg線ランプにおいては、電圧、照度などの諸特性を満たすため、水銀を多く追加する必要がある。そのため、ランプが点灯した際には、ランプ内の温度が800Kから1200Kで、内部圧力が2.0MPaから3.0MPaになり、ランプ容器の強度にばらつきがあったり、又は上記以外の部分の強度が不足していたりすると、その強度が不足している部分からランプ容器の破裂に至ることがある。
【0007】
g線ランプは液晶露光装置の高価な光学系に組み込んで使用されるため、ランプの破裂に伴い、その高価な光学系を破損することになり、また、ランプ内には水銀が封入されていてランプの破裂により水銀が外部に飛散することになるため、ランプの破裂の回避が強く要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−198947号公報
【特許文献2】特開2006−286343号公報
【特許文献3】特開2005−243484号公報 特許文献1は、円板部材及び円板箔の外径に所定の関係を持たせることによって封止管の破裂を防ぐように構成した放電ランプを開示する。
【0009】
特許文献2は、シール用ガラス部材の凹部の縁幅、溝の深さ、軸方向の全長に所定の関係を持たせることによって点灯時の破裂を防止するように構成したショートアーク放電ランプを開示する。
【0010】
特許文献3は、リード棒を保持する管状体の端部から封止用ガラス体の放電空間側の端部までの距離、封止用ガラス体の径方向のガラス肉厚及び枝管部を構成するガラス管の径方向のガラス肉厚に所定の関係を持たせることによって、ランプ点灯時に枝管部の折れ等の不具合が起こらないように構成したショートアーク放電ランプを開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
すなわち、特許文献1では、内側金属リングの外径と円板箔の外径との差を考慮すること、又は、内側金属リングと封止管の肉厚との比と点灯時の発光管内の圧力とを考慮することによって封止管の破裂を防ぐことが図られており、ランプの破裂の起点となる個所の検討が限定されている。
【0012】
特許文献2では、シール用ガラス部材の凹部の深さ及び全長との関係からランプの破裂防止をしようとするもので、この文献もランプの破裂の起点となる個所の検討が限定されている。
【0013】
また、特許文献3では、特に、封止用ガラス体及び枝管部のガラス管のそれぞれの肉厚を考慮することによってシール部の破断や枝管部の折れ等を防ごうとうするもので、この文献もランプの破裂の起点となる個所の検討が限定されている。
【0014】
以上の観点から、上記の特許文献によってランプの破裂の危険性が低くなったとはいえ、ランプの破裂の起点となる個所をより確実に把握しそれらを適切に改良することによって、より確実にランプの破裂の危険性を下げることが要望されている。
【0015】
また、上記の特許文献とは異なる態様によってランプの破裂の危険性を下げることが要望されている。
【0016】
さらに、より簡易な構造によって確実にランプの破裂の危険性を下げることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
そこで、本発明に係るショートアーク型放電ランプは、球状部と、該球状部の中心を通る軸線に沿って対向して配置した2つのシール管部とを備える発光管封体と、前記球状部の内部に、所定距離離隔させて対向して配置した陰極及び陽極と、該陰極及び陽極からそれぞれ前記2つのシール管部まで延在する電極芯棒とを備え、各シール管部内に、第1のシール部材、第1の集電円盤、第2のシール部材、第2の集電円盤及び第3のシール部材が、該シール管部の中心軸線方向に沿って前記球状部から離れる方向に連続して配置され、各シール管部の外側端部に口金が固定され、前記第1の集電円盤と前記第2の集電円盤とが前記第2のシール部材の外周面上に配置された干渉箔によって電気的に接続され、各シール管部内において、1つの前記電極芯棒が、前記第1のシール部材を該シール管部の中心軸線方向に沿って貫通してそれに保持されるとともに前記第1の集電円盤に電気的に接続され、また、外部の電源に接続されるリード線が、前記口金を通って該シール管部の中心軸線方向に沿って前記球状部に向かって前記第3のシール部材及び前記第2の集電円盤を貫通してそれらに保持されるとともに該第2の集電円盤に電気的に接続される、2kWから25kWのランプ電力のショートアーク型放電ランプであって、各シール管部において、該シール管部と前記球状部との接続位置から前記口金までの間の該シール管部の外周面上の所定の位置までの長さをL1(mm)、該所定の位置から前記第1の集電円盤の前記第1のシール部材に対向する面の位置までの長さをL2(mm)、該シール管の前記L1の長さに対応する部分の最大厚さをt(mm)とすると、L1≧30mm、2mm≦L2≦20mm、3mm≦t≦6mmのすべての条件式を満たすことを特徴とする。
【0018】
そのショートアーク型放電ランプにおいて、点灯時に前記発光管封体の前記球状部内の圧力が2.0MPaから3.0MPaとなることがある。
【0019】
そのショートアーク型放電ランプにおいて、前記tは、3.5mmから5.0mmの範囲であってもよい。
【0020】
そのショートアーク型放電ランプにおいて、該ショートアーク型放電ランプのランプ電力は、5〜16kWであってもよい。
【0021】
そのショートアーク型放電ランプにおいて、各シール管部が多重管部から構成されている場合に、シール管部の前記L1の長さに対応する部分の合計厚さの最大厚さをt(mm)としてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、ランプの破裂の起点となる個所をより確実に把握してそれらを適切に改良することによって、より確実にランプの破裂の危険性を下げるショートアーク型放電ランプを提供することができる。
【0023】
また、本発明によると、新たな態様によってランプの破裂の危険性を下げるショートアーク型放電ランプを提供することができる。
【0024】
さらに、本発明によると、より簡易な方法によって確実にランプの破裂の危険性を下げるショートアーク型放電ランプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るショートアーク型放電ランプの概略構成を示すための簡略化した断面図である。
【図2】図2は、図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部の拡大断面図である。
【図3A】図3Aは、図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部の内径が19mmである場合に、肉厚の大きさが異なるシール管の耐圧試験の測定値を示す表である。
【図3B】図3Bは、図3Aに示す表をグラフに表したものである。
【図4A】図4Aは、図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部の内径が25mmである場合に、肉厚の大きさが異なるシール管の耐圧試験の測定値を示す表である。
【図4B】図4Bは、図4Aに示す表をグラフに表したものである。
【図5】図5は、図1に示すショートアーク型放電ランプの別の実施形態に係るものを示す拡大断面図である。
【図6A】図6Aは、図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部が異なる実施形態に係るものを示す拡大断面図である。
【図6B】図6Bは、図6Aに示すショートアーク型放電ランプのシール管部の別の実施形態に係るものを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係るショートアーク型放電ランプを説明する。なお、全図において、各部材の厚さ、長さ、形状、部材同士の間隔、隙間等は、理解の容易のために、適宜、拡大・縮小・変形・簡略化等をしている。図の説明の際の上下・左右の表現は、その図を鉛直面内に置いた状態でのその図面の面に沿った方向を表すものとする。
【0027】
[ショートアーク型放電ランプの概略構造]
図1は、本発明の一実施形態に係るショートアーク型放電ランプ10の概略構造を示すための簡略化した一部断面図である。ここでは、例えば、ショートアーク型放電ランプ10は2kWから25kWのランプ電力を有するものとする。
【0028】
ショートアーク型放電ランプ10は、中心波長が436nmの発光長の光を出力する、いわゆるg線ランプであり、球状部とその中心を通る軸線に沿って対向した2つのシール管部7とからなる発光管封体1を備える。球状部の内部には、陽極2及び陰極3が対向して配置され、対向した2つのシール管部7には、発光管封体1の内部と外気とを遮断するために電極マウント9が固定されている。陽極2と陰極3との先端部間の距離は、3〜30mmの範囲内の例えば7mmである。
【0029】
詳しくは後述するが、電極マウント9の球状部側の端部には、陽極2及び陰極3に接続された電極芯棒5が固定され、反対側の端部には、外部の電源に接続されたリード線6が連結されている。そのように電極マウント9は、電極芯棒5及びリード線6を保持するとともに、外気と発光管封体1との間を遮断するように気密に封じる。
【0030】
電極芯棒5には、発光管封体1の封入後もその中に残った不純物や点灯時に発生する不純物を除去するためにゲッター材11が取り付けられている。
【0031】
また、ランプの製造時に、図1のチップオフ4の位置に取り付けられていた排気管から発光管封体内に、水銀を封入するとともに、少なくともアルゴン、クリプトン、キセノンなどの不活性ガスを単独またはそれらの混合ガスの形で封入する。
【0032】
発光管封体1の球状部の外径は、発光出力の大きさに応じて変わり、50mmから300mmの範囲内の例えば90mmで、球状部の軸線方向の長さは70mmから300mmの範囲内の例えば100mmである。発光管封体1内には、3mg/cm3から50mg/cm3の範囲から選択された例えば40mg/cm3の水銀と、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)及びクリプトン(Kr)の中の少なくとも1つの希ガスとが封入されている。ただし、1つの希ガスに代えて、混合ガス、例えばKr及びArの混合ガスを用いてもよい。希ガスの封入圧は、封入されたガスの種類によっても異なるが、概略0.05MPaから0.4MPaの範囲内の例えば0.2MPaである。ランプ点灯時には、発光管封体1内の圧力は2.0MPaから3.0MPa程度になる。
【0033】
[シール管部の概略構造]
陰極側及び陽極側のシール管部7は同様の構造であるため、以下は、一方の側の、例えば、陽極側のシール管部7について説明する。
【0034】
図2は、図1に示すショートアーク型放電ランプ10のシール管部7の拡大断面図である。図2に示すように、シール管部7の内部には、電極マウント9が溶着されていて発光管封体1の気密性が保たれている。溶着の方法については後述する。
【0035】
電極マウント9は、石英ガラス円筒体の第1のシール部材21、第2のシール部材22及び第3のシール部材23を備える。第1のシール部材21は、球状部とシール管部7との連結位置Aから、球状部から離れる方向に向かって約10mm離れた位置からシール管部7の内面に溶着されている。そのように約10mmの空間が設けられているのは、シール管部7内に第1のシール部材21等を含む電極マウント9を溶着するために、シール管部7をバーナ等で加熱する際に、その熱が球状部に伝わってその球状部が変形することを防ぐためである。第1のシール部材21には貫通孔が形成されており、その貫通孔には、電極芯棒5が挿入されて第1のシール部材21に固定されている。
【0036】
第1のシール部材21と第2のシール部材22との間には、第1の集電円盤31が介装されており、第1の集電円盤31には、第1のシール部材21を貫通した電極芯棒5の端部が連結されている。これにより、電極芯棒5が第1の集電円盤31に電気的に接続される。なお、電極芯棒5の端部は、さらに第1の集電円盤31を貫通して第2のシール部材22に接続されるように構成される場合もある。
【0037】
また、第2のシール部材22と第3のシール部材23との間には、第2の集電円盤32が介装されている。第3のシール部材23には貫通孔が形成されており、その貫通孔にはリード線6が挿入されていて第3のシール部材23に固定されている。また、その貫通したリード線6の端部は、第2の集電円盤32を貫通して第2のシール部材22の端部に挿入されて固定されている。これにより、リード線6は、電気的に第2の集電円盤32に接続されて、第2のシール部材22に保持されている。ただし、リード線6の端部は、第2の集電円盤32を貫通せずにそれに電気的に接続されるだけもよい。
【0038】
第1の集電円盤31の円周面と、第1の集電円盤31の両端面に接する第1のシール部材21及び第2のシール部材22の円周面とは、モリブデン製の干渉箔15によって覆われている。また、第2のシール部材22の外周面上には、軸線方向に沿って、複数の短冊状のモリブデン製のシール箔25(図1、図2で実線と破線のハッチングで示す)が、間隔を置いて配置されている。これにより、電気的接続箔である干渉箔15及びシール箔25によって、第1の集電円盤31と第2の集電円盤32とが電気的に接続されることになり、その結果、電極芯棒5とリード線6とが電気的に接続されることになる。
【0039】
図2に破線で示すように、口金28がシール管部7の端部に取り付けられている。口金28にはリード線6が接続されていて口金28を経由してリード線6に外部の電源から電力が供給される。
【0040】
また、図2に示すように、球状部1とシール管部7とが連結されている位置を位置Aとし、その位置Aから口金28に向かって所定の長さL1だけ離れたシール管部7上の位置を位置Bとし、その位置Bから球状部に向かって長さL2だけ離れた第1の集電円盤31の球状部側の面が接する位置を位置Cと表す。また、長さL1の部分のシール管部7の最大厚さを厚さt又は肉厚tとする。
【0041】
後述する図6A及び図6Bに示す実施形態のように、シール管部が多重管から構成されている場合には、内側のシール管部は球状部1に連結されていないためそのシール管部上での位置Aを特定できない場合がある。しかし、多重管から構成されたシール管は外側のシール管と内側のシール管とが互いに強く接着しており挙動を共にする一体構造のものであるため、少なくとも位置Bと位置Cの位置は外側のシール管と内側のシール管とで同じになる。また、ここで問題にする発光管の破壊事象も、外側のシール管と内側のシール管とで同じ位置で起こる。このため、長さL1及びL2は、外側のシール管上において規定すればよい。なお、内側のシール管上における位置Aとは、最も外側のシール管部上における位置A、位置B及び位置Cにおいて、最も外側のシール管部と直交する3つの面を仮定した時、それらの面と、内側のシール管部を発光管中心側へ延長した線とが交わる位置である。
【0042】
図2においては、口金28の端部位置が位置Bにあるように描いているが、その端部は常にその位置にあるのではなく、図2に示す位置に位置Bは特定されるものではない。ただし、口金28の内径が一般的には特定されているため、位置Bが口金28の端部位置を越えてそれよりも外側に(リード線6側に)位置することはない。
【0043】
ここで、シール管部7内に電極マウント9を固定する概略の方法を説明する。まず、電極マウント9を用意し、電極マウント9をその外径よりも大きな内径を有するシール管部となる発光管封体1の筒状部の中に挿入する。その際に、上記のとおり、電極マウント9の球状部側に面する第1のシール部材21の端面を位置Aから10mm程度口金方向に離して置く。次に、シール管部となる筒状部の端部を火炎バーナで加熱して封じ発光管封体1内を前出の排気管により減圧する。その減圧した状態で、電極マウント9を挿入したシール管部となる筒状部の位置を火炎バーナで加熱する。その加熱により、シール管部となる筒状部が溶融して収縮して電極マウント9の外周面に密着する。これにより、電極マウント9とその筒状部とが密着してシール管部7を形成する。
【0044】
[実施例1]
ショートアーク型放電ランプ10においては、シール管部7上において、その内面が、第1のシール部材21の球状部側の面と接する位置と、第1の集電円盤31の外周面と接する位置とが、点灯時においてランプの破裂の起点となる傾向が強い。例えば、本実施形態に係るショートアーク型放電ランプ10のランプ電力が5kWである場合には、点灯後約10分経過すると、ランプ内の温度は800Kから1200K程度になる。その時に、点灯時のランプ内部圧力が高くなり、それらの位置が破裂の起点となってランプが破裂する傾向がある。
【0045】
本実施形態に係るショートアーク型放電ランプ10のランプ電力が5kWの場合には、上記のとおり、位置Aから第1の集電円盤31の球状部側の面の接するシール管部7上の位置までは、約10mmであり、第1の集電円盤31の軸線方向の長さは約2mmである。そのため、長さL1は約12mm以上の大きさが必要である。また、長さL2は第1の集電円盤31の外周面の軸線方向に沿った長さを少なくとも含む大きさである。
【0046】
ここで、ショートアーク型放電ランプ10の耐圧試験を行った結果を図3A及び図3Bに示す。この耐圧試験では、ランプ電力が5kWのショートアーク型放電ランプ10を用いた。また、シール管部7の内径は19mmとし、そのシール管部7においてL2を含むL1の部分の最大厚さtを2.5mmから0.5mmごとに6.5mmまで増加させた9種類のショートアーク型放電ランプ10について試験を行った。シール管部の内径は、電極マウント9の外径と等しいものとする。
【0047】
試験の方法としては、シール管部7の最大厚さtの異なるショートアーク型放電ランプ10ごとに、その球状部の圧力を例えば2.0MPaから徐々に上昇させて、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)、又はその第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置でのひび割れ(「ネック割れ」)が生じたときに加えた圧力値を測定した。「ネック抜け」は、割れた面が鏡面のようにきれいに割れることによってネック部分(シール管部)が抜けたように、シール管部が電極マウントごと一体的に離脱する破壊である。これは、熱的歪みによりもたらされると考えられる。ただし、破壊は急速には進まない。「ネック割れ」は、不定的、不規則的な割れ方で、一気に破壊が進む。
【0048】
実験の結果、陰極又は陽極のいずれかの側のシール管部において破損が生じた。その際の測定値を図3Aに示す。
【0049】
図3Aに示すように、シール管部7の厚さが2.5mmの場合には、球状部に、2.79MPa、3.01MPa、3.22MPa、2.92MPa、2.64MPa及び3.21MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じた。
【0050】
また、シール管部7の厚さが3.0mmの場合には、球状部に、3.65MPa、3.17MPa及び3.53MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じ、3.92MPa、3.36MPa、3.50MPa、3.55MPa及び3.31MPaの圧力の時に、シール管部7において、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)が生じた。
【0051】
シール管部7の厚さが3.5mmの場合には、球状部に、3.99MPa及び3.78MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じ、4.60MPa、3.62MPa、4.10MPa、3.60MPa及び3.91MPaの圧力の時に、シール管部7において、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)が生じた。
【0052】
シール管部7の厚さが4.0mmの場合には、球状部に、3.83MPa、3.59MPa及び4.84MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じ、3.97MPa、4.53MPa、4.27MPa及び4.60MPaの圧力の時に、シール管部7において、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)が生じ、3.93MPaの圧力の時に、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置でのひび割れ(「ネック割れ」)が生じた。
【0053】
以下、シール管部7の厚さが4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mmの場合についても、「ハイドMo割れ」、「ネック抜け」、「ネック割れ」がそれぞれ発生する圧力は図3Aに示す通りであった。
【0054】
図3Aの値をプロットして表したのが図3Bである。黒丸が「ハイドMo割れ」を表し、白抜き四角形が「ネック抜け」を表し、菱形が「ネック割れ」を表す。
【0055】
図3Bに示すように、各シール管部の厚さグループごとに比較するとハイドMo割れ等が生じた圧力値の傾向として、シール管部の最大肉厚tの値が大きくなるにつれて耐圧強度が高まっていることがわかる。
【0056】
シール管部7の各厚さにおける最大耐圧強度と、隣り合う最大耐圧強度の比率との関係を表1として示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示すように、隣り合うシール管肉厚t同士の間での最大耐圧強度の比率を見てみると、シール管肉厚tが2.5mmから5.0mmまでにおいては、シール管肉厚tの小さい場合の最大耐圧強度に対するtの大きな場合の最大耐圧強度の比が、1.04から1.28の範囲にあることから、シール管肉厚tが大きくなるにつれて最大耐圧強度が線形的に高まっていることが数値上からも確認することができる。
【0059】
すなわち、この実験からは、シール管部のL2の部分を含むL1の厚さを厚くすると、耐圧強度が高まることが分かった。ただし、シール管部の厚さが厚くなりすぎると、上記のとおり、シール管部を形成する際に、バーナの熱が管壁全体に伝わりにくくなり、シール管部の融解形成が困難になる。また、露光装置に取り付けする場合の取付スペースの大きさの制限からシール管部の外径の大きさには制限がある。さらに、シール管部が太すぎるとシール部全体の温度が均一でなくなり部分的な温度差が生じ、そのため、熱応力が発生して破裂の懸念が生じる。また、シール部の熱ロスが大きくなり、電圧や照度等の諸特性について適切な値が得られなくなる。これらの観点と、ランプ点灯時に発光管封体1内の圧力が3.0MPa程度になるという点とを考慮すると、図3Bにおいて破線で示した耐圧強度の3.0MPaを超える耐圧強度を示したショートアーク型放電ランプ10のシール管部の肉厚tは3mmから6mmまでの間の値であることが望ましいと考える。
【0060】
[実施例2]
次に、シール管部7の内径、つまり、電極マウント9の外径が25mmのショートアーク型放電ランプ10の耐圧試験を行った結果を図4Aに示す。この耐圧試験でも、ランプ電力が5kWのショートアーク型放電ランプ10を用いた。また、シール管部7においてL2を含むL1の部分の最大厚さtを2.5mmから0.5mmごとに6.5mmまで増加させた9種類のショートアーク型放電ランプ10について試験を行った。
【0061】
試験の方法としては、シール管部7の最大厚さtの異なるショートアーク型放電ランプ10ごとに、その球状部の圧力を例えば2.0MPaから徐々に上昇させて、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)、又はその第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置でのひび割れ(「ネック割れ」)が生じたときに加えた圧力値を測定した。
【0062】
実験の結果、陽極側又は陰極側のいずれかにおいて破損が生じた。その際の測定値を図4Aに示す。
【0063】
図4Aに示すように、シール管部7の厚さが2.5mmの場合には、球状部に、2.65MPa、3.06MPa、2.77MPa及び3.05MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じ、2.99MPa、2.46MPa及び3.52MPaの圧力の時に、シール管部7において、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)が生じ、2.53MPaの圧力の時に、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置でのひび割れ(「ネック割れ」)が生じた。
【0064】
シール管部7の厚さが3.0mmの場合には、球状部に、3.47MPa、3.21MPa及び3.35MPaの圧力を加えた時に、シール管部7において、第1の集電円盤31の外周面が接する位置の割れ(「ハイドMo割れ」)が生じ、3.73MPa、3.84MPa、3.32MPa及び3.37MPaの圧力の時に、シール管部7において、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置の割れ(「ネック抜け」)が生じ、3.51MPaの圧力の時に、第1のシール部材21の球状部側の面が接する位置でのひび割れ(「ネック割れ」)が生じた。
【0065】
以下、シール管部7の厚さが3.5mm、4.0mm、4.5mm、5.0mm、5.5mm、6.0mm、6.5mmの場合についても、「ハイドMo割れ」、「ネック抜け」、「ネック割れ」がそれぞれ発生する圧力は図4Aに示す通りであった。
【0066】
図4Aの値をプロットして表したのが図4Bである。黒丸が「ハイドMo割れ」を表し、白抜き四角形が「ネック抜け」を表し、菱形が「ネック割れ」を表す。
【0067】
図4Bに示すように、各シール管部の厚さグループごとに比較するとハイドMo割れ等が生じた圧力値の傾向として、シール管部の最大肉厚tの値が大きくなるにつれて耐圧強度が高まっていることがわかる。最大肉厚tが6.0mmに近づくと耐圧強度はやや右下がりになっているが、耐圧強度の値がシール管部の最大厚さtに対し線形的に増加する傾向にあるということができる。
【0068】
シール管部7の各厚さにおける最大耐圧強度と、隣り合う最大耐圧強度の比率との関係を表2として示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表2に示すように、隣り合うシール管肉厚t同士の間での最大耐圧強度の比率を見てみると、シール管肉厚tが2.5mmから5.5mmまでにおいては、シール管肉厚tの小さい場合の最大耐圧強度に対するtの大きな場合の最大耐圧強度の比が、0.94から1.20の範囲にあることから、シール管肉厚tが大きくなるにつれて最大耐圧強度が概略線形的に高まっていることが数値上からも確認することができる。
【0071】
すなわち、この実験からは、シール管部7の内径が25mmであっても、実施例1のようにシール管部7の内径が19mmの場合と同様に、シール管部のL2の部分を含むL1の厚さを厚くすると、耐圧強度が高まることが分かった。ただし、シール管部の厚さが厚くなりすぎると、実施例1と同様に、シール管部を形成する際に、バーナの熱が管壁全体に伝わりにくくなり、シール管部の融解形成が困難になる。また、露光装置に取り付けする場合の取付スペースの大きさの制限からシール管部の外径の大きさには制限がある。さらに、シール管部が太すぎるとシール部全体の温度が均一でなくなり部分的な温度差が生じ、そのため、熱応力が発生して破裂の懸念が生じる。また、シール部の熱ロスが大きくなり、電圧や照度等の諸特性についての適切な値が得られなくなる。これらの点と、ランプ点灯時に発光管封体1内の圧力が3.0MPa程度になるという点とを考慮すると、実施例2の場合にも、図4Bにおいて破線で示した耐圧強度の3.0MPaを超える耐圧強度を示したショートアーク型放電ランプ10のシール管部の肉厚tは3mmから6mmまでの間の値であることが望ましいと考える。
【0072】
[他の実施形態]
図5は、図1に示すショートアーク型放電ランプの別の実施形態に係るものを示す拡大断面図である。図5の実施形態では、シール部材21−1の発光管封体1側の面に凹部Hが形成されていて、その凹部の中央に電極芯棒5が貫入されている。また、シール部材21−1の発光管封体1側の周縁がシール管部7の内周面に溶着されている。
【0073】
この実施形態でも、図1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
図6Aは、図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部の異なる実施形態に係るものを示す拡大断面図である。図1に示すショートアーク型放電ランプのシール管部は一重管であるが、図6Aに示す実施形態はシール管が二重管である。つまり、図6Aの実施形態では、シール管部は、シール管部7とその内周に溶着された円筒型のシール管部60との二重管からなり、シール管部7及びシール管部60は上記のとおり一体構造である。ただし、二重管に限定されるものではなく多重管であってもよい。その場合でもシール管部は一体構造となる。
【0075】
図6Bは、図6Aに示すショートアーク型放電ランプのシール管部が異なるものを示す。図6Bの実施形態は、図6Aの実施形態と同様にシール管部が二重管であり、シール管部7及びシール管部62は一体構造である。ただし、図6Aの実施形態では、内側のシール管部60の発光管封体1側の端部60aがまっすぐであるのに対し、図6Bの実施形態では、内側のシール管部62の発光管封体1側の端部62aが内側に曲がっている点でそれらの実施形態は異なる。
【0076】
図6A及び図6Bにおいては、シール管部60,62はそれぞれ一体構造となっている。そのため、それらの内側のシール管部の発光管封体1側の端部60a,62aは、発光管封体1側に連結されていないが、シール管部60,62の延長線と外側のシール管部7における位置Aと直交する直線又は面とが交差する位置が対応する位置Aとなる。シール管部60,62と、シール管部7における位置B及び位置Cと直交する直線又は面とが交差する位置は、それぞれ、対応する位置B及び位置Cとなる。
【0077】
図6A及び図6Bに示すようにシール管部が二重管構造を取る実施形態においても、外側のシール管部についてその肉厚tが3mmから6mmまでの間にあると、図1の実施形態と同様の効果を得ることができる。その場合には、内側のシール管の厚さの大小の相違を考慮することなく外側のシール管部の厚さのみを考慮すればよい。また、多重管構造を取る複数のシール管が一体としてのシール管構造としての機能を発揮するようにしてもよい。その場合には、外側のシール管部及び内側のシール管部のそれぞれの肉厚が3mmから6mmまでの間にない場合でも合計の厚さがその範囲に入ることによって、図1の実施形態と同様の効果を得ることが可能になる。
【0078】
以上、本発明の一実施形態に係るショートアーク型放電ランプについて説明したが、本発明は上記の実施形態に拘束されるものではなく、当業者が容易になしえる追加、削除、改変等は、本発明に含まれるものであり、また、本発明の技術的範囲は、添付の特許請求の範囲の記載によって定められることを承知されたい。例えば、シール管部のL1の長さにわたる部分の厚さtは一定でなく、徐々に厚みが増加又は減少するようにしてもよい。また、第1から第3のシール部材を石英ガラスから作ることができるがオゾンレス石英等他の適切な材料を用いてもよい。それらのシール部材の材質を異ならせてもよい。第1シール部材はガラス以外の例えばモリブデン製の材料でも良い。また、水銀を封入せずにキセノンガスのみを封入したショートアーク型キセノンランプにおいても上記の実施形態に係る手法が適用できる。
【符号の説明】
【0079】
1・・・発光管封体
2・・・陽極
3・・・陰極
5・・・電極芯棒
6・・・リード線
7・・・シール管部
9・・・電極マウント
10・・・ショートアーク型放電ランプ
11・・・ゲッター材
15・・・干渉箔
25・・・シール箔
21・・・第1のシール部材
22・・・第2のシール部材
23・・・第3のシール部材
31・・・第1の集電円盤
32・・・第2の集電円盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状部と、該球状部の中心を通る軸線に沿って対向して配置した2つのシール管部とを備える発光管封体と、
前記球状部の内部に、所定距離離隔させて対向して配置した陰極及び陽極と、
該陰極及び陽極からそれぞれ前記2つのシール管部まで延在する電極芯棒とを備え、
各シール管部内に、第1のシール部材、第1の集電円盤、第2のシール部材、第2の集電円盤及び第3のシール部材が、該シール管部の中心軸線方向に沿って前記球状部から離れる方向に連続して配置され、各シール管部の外側端部に口金が固定され、前記第1の集電円盤と前記第2の集電円盤とが前記第2のシール部材の外周面上に配置された電気的接続箔によって電気的に接続され、
各シール管部内において、1つの前記電極芯棒が、前記第1のシール部材を該シール管部の中心軸線方向に沿って貫通してそれに保持されるとともに前記第1の集電円盤に電気的に接続され、また、外部の電源に接続されるリード線が、前記口金を通って該シール管部の中心軸線方向に沿って前記球状部に向かって前記第3のシール部材及び前記第2の集電円盤を貫通してそれらに保持されるとともに該第2の集電円盤に電気的に接続される、2kWから25kWのランプ電力のショートアーク型放電ランプであって、
各シール管部において、該シール管部と前記球状部との接続位置から前記口金までの間の該シール管部の外周面上の所定の位置までの長さをL1(mm)、該所定の位置から前記第1の集電円盤の前記第1のシール部材に対向する面の位置までの長さをL2(mm)、該シール管の前記L1の長さに対応する部分の最大厚さをt(mm)とすると、
L1≧30mm、2mm≦L2≦20mm、3mm≦t≦6mmの
すべての条件式を満たす、ショートアーク型放電ランプ。
【請求項2】
請求項1のショートアーク型放電ランプにおいて、点灯時に前記発光管封体の前記球状部内の圧力が2.0MPaから3.0MPaである、ショートアーク型放電ランプ。
【請求項3】
請求項1又は2のショートアーク型放電ランプにおいて、前記tは、3.5mmから5.0mmの範囲である、ショートアーク型放電ランプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかのショートアーク型放電ランプにおいて、該ショートアーク型放電ランプのランプ電力は、5〜16kWである、ショートアーク型放電ランプ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかのショートアーク型放電ランプにおいて、各シール管部が多重管部から構成されている場合に、該シール管部の前記L1の長さに対応する部分の合計厚さの最大厚さをt(mm)とする、ショートアーク型放電ランプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate