説明

シラノール官能ポリマーを含む組成物および関連親水性コーティングフィルム

開示されるのは、シラノール官能基を含むポリマーを含むコーティング組成物である。また開示されるのは、このような組成物でコートされた基体、このような組成物で基体をコーティングする方法、および基体に自己清掃性質を与える方法である。本発明は、シラノール官能基を含むポリマーであって、該シラノール官能基が該ポリマー上に該ポリマーに少なくとも300のシラノール値を与えるに十分な量で存在するポリマーを含む、低固形分水性コーティング組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、シラノール官能基を含むポリマーを含むコーティング組成物に関する。本発明はまた、このような組成物でコートされた基体、このような組成物で基体をコーティングする方法、および基体に自己清掃性質を与える方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
親水性性質を示すコーティング組成物は、しばしば、よごれ止め、清掃容易さ、自己清掃性、および/またはくもり止めの諸性質を示すコートされた面が所望される場合のような特定のコーティング適用に所望される。このようなコーティングは、例えば、アウトドア環境に曝される面への付与のために特に有用であり得る。ビルディング構造、自動車、およびアウトドアに曝されるその他の物品は、とりわけ、汚物、油、ちり、および粘土のような種々の汚染物質と接触するようになる可能性が高い。その上に堆積された親水性コーティングをもつ面は自己清掃性であり得る。なぜなら、このコーティングは、上記面が水と接触するようになるとき(例えば、雨が降っている間)、上記汚染物質を洗浄する能力を有するからである。
【0003】
これらおよびその他の利点を考慮して、種々の親水性コーティング組成物が提案されている。これらコーティングの多くは、二酸化チタンのような光触媒材料の作用によってそれらの親水性を達成する。このような材料の使用は、しかし、少なくとも特定の適用では問題であり得る。例えば、このような材料を、自動車用途で用いられる代表的なコーティング組成物のような有機フィルム上に付与されるとき、この光触媒材料は、有機フィルムと接触し得る。光触媒材料の光触媒作用によって−OHフリーラジカルが生成されるので、下にある有機フィルムは分解を受ける。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
結果として、親水性性質を示し、そしてそれ故、自己清掃性質を示す薄いコーティングフィルムを生成し得るコーティング組成物を提供することが有利であり得る。さらに、このような性質を生成するために光触媒材料の使用に必ずしも依存しないような組成物を提供することが所望され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
特定の局面では、本発明は、シラノール官能基を含むポリマーであって、このシラノール官能基がポリマー上にこのポリマーに少なくとも300のシラノール値を与えるに十分な量で存在するポリマーを含む、低固形分水性コーティング組成物に関する。
【0006】
本発明はまた、このような組成物から堆積されたコーティングフィルムで少なくとも部分的にコートされた基体、およびこのような組成物で基体をコートする方法に関する。
【0007】
別の局面では、本発明は、シラノール基を含むポリマーを含むコーティングフィルムであって、このシラノール基がコーティングフィルムを親水性にするに十分な量でポリマー上に存在する、コーティングフィルムに関する。
【0008】
なお別の局面では、本発明は、基体の少なくとも一部分に自己清掃性質を与える方法に関する。これらの方法は、(i)この基体に、シラノール基を含むポリマーを含む低固形分の水性コーティング組成物を付与する工程、および(ii)この組成物を、得られるコーティングフィルムが親水性であるように硬化させる工程を包含する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
以下の詳細な説明の目的について、本発明は、明示して反対であると特定される場合を除いて、種々の代替の改変例および工程順序をとり得ることが理解されるべきである。さらに、任意の操作実施例において、またはそうでないことが示される場合を除いて、明細書および請求項で用いられる成分の量を表すすべての数は、すべての例において用語「約」によって修飾されているとして理解されるべきである。従って、反対であることが示されなければ、以下の明細書および添付の請求項で提示される数字のパラメーターは、本発明によって得られるべき所望の性質に依存して変動し得る近似値である。少なくとも、そして請求項の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各々の数字のパラメーターは、少なくとも、報告された意味のある桁の数を考慮し、そして通常の丸め技法によって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を提示する数字の範囲およびパラメーターは近似であるにもかかわらず、特定の実施例で提示される数字の値は、可能な限り正確に報告される。任意の数字の値は、しかし、それらの個々の試験測定で見出される標準偏差から余儀なく生じる特定の誤差を固有に含む。
【0010】
また、本明細書中に記載される任意の数の範囲は、その中に包含されるすべての小範囲を含むことが意図されることを理解されるべきである。例えば、「1〜10」の範囲は、記載された最小値1と記載された最大値10との間(そしてそれらを含む)すべての小範囲を含むことが意図され、すなわち、1に等しいかまたは1より大きい最小値および10に等しいかまたは10より小さい最大値を有する。
【0011】
本出願では、他であることが特定して陳述されなければ、単数の使用は複数を含み、そして複数は単数を包含する。さらに、本出願では、「または」の使用は、「および/または」が特定の事例では明示して用いられているかもしれないけれども、他であることが特定して陳述されていなければ「および/または」を意味する。
【0012】
示されるように、本発明の特定の実施形態は、「低固形分」コーティング組成物に関する。本明細書で用いられるとき、この用語「低固形分」は、組成物の総重量を基に15重量%を超えないような、25重量%未満の総有機樹脂固形分含量を有する組成物をいう。特定の実施形態では、本発明の低固形分組成物は、この組成物の総重量を基に、1〜3重量%のような、1〜10重量%の総有機樹脂固形分含量を有する。
【0013】
本発明の特定の実施形態は、「水性」コーティング組成物に関する。本明細書で用いられるとき、この用語「水性コーティング組成物」は、この組成物のための溶媒またはキャリア流体が、加水分解に際し、このポリマーが少なくとも300のシラノール値を有するように、この組成物中のポリマー上に存在するシラン基を加水分解するに十分な量の水を含むことを意味する。特定の実施形態では、このような水性組成物中の溶媒またはキャリア流体は、主に、またはもっぱら水を含む。例えば、特定の実施形態では、このキャリア流体は、少なくとも50重量%の水、またはいくつかの場合には少なくとも80%の水であり、またはなおその他の事例では、上記キャリア流体は本質的に水のみからなる。
【0014】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、シラノール官能基を含むポリマーを含む水性分散物の形態である。本明細書で用いられるとき、この用語「水性懸濁物」は、有機成分が水を含む連続相全体に分配される粒子として分散された相にある組成物をいう。本明細書で用いられるとき、この用語「有機成分」は、上記水性分散物中に存在するすべての有機種を包含することが意味され、任意のポリマー、および任意の有機溶媒を含む。
【0015】
本明細書で用いられるとき、用語「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を含むことが意味される。示されるように、本発明の特定の実施形態は、300〜1600、またはいくつかの場合には400〜800、またはなおその他の場合には500〜800のような、少なくとも300のシラノール値をポリマーに与えるに十分な量でこのポリマー上に存在しているシラノール官能基を含むポリマーを含む組成物に関する。本発明の目的には、この用語「シラノール値」は、1つのKOH分子が1つのシラノール基をカリウム塩に変換すると仮定して、1グラムのポリマー中に存在するすべてのシラノール基をカリウム塩に理論的に変換するために必要なKOH(ミリグラム)の計算量をいう。本明細書中の実施例は、本発明の目的のためにポリマーの「シラノール値」を決定するための適正な方法を例示する。
【0016】
本発明の組成物の特定の実施形態では、上記ポリマーは、アクリルポリマーを含む。本明細書で用いられるとき、この用語「アクリル」ポリマーは、1つ以上のエチレン性不飽和重合可能材料の重合から生じる当業者に周知であるようなポリマーをいう。本発明における使用のために適切なアクリルポリマーは、当業者によって理解されるような、任意の種々の方法によって作製され得る。特定の実施形態では、このようなアクリルポリマーは、それらの少なくとも1つがシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料である、異なる不飽和重合可能材料の付加重合によって作製される。このような重合の結果は、加水分解可能なシラン官能基を含むアクリルポリマーである。加水分解可能なシラン基の例は、制限されないで、構造Si−X(ここで、nは1〜3までの範囲の値を有する整数であり、そしてXは塩素、臭素、ヨウ素、アルコキシエステル、および/またはアシロキシエステルからなる群から選択される)を有する基を含む。
【0017】
このようなアクリルポリマーを調製することにおける使用に適切なシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料の例は、制限されずに、エチレン性不飽和アルコキシシランおよびエチレン性不飽和アシルオキシシランを含み、そのより詳細な例は、γ−アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよびγ−アクリルオキシプロピルトリエトキシシランのようなアクリルアトアルコキシシラン、およびγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランおよびγ−メタクリルオキシプロピルトリス−(2−メトキシエトキシ)シランのようなメタクリルアトアルコキシシラン;例えば、アクリルアトアセトキシシラン、メタクリルアトアセトキシシランを含むアシルオキシシラン、およびアクリルアトプロピルトリアセトキシシランおよびメタクリルアトプロピルトリアセトキシシランのようなエチレン性不飽和アセトキシシランを含む。特定の実施形態では、付加重合に際し、得られる加水分解可能なシリル基のSi原子が、ポリマーのバックボーンから少なくとも2原子だけ分離されているアクリルポリマーを生じるモノマーを利用することが所望され得る。
【0018】
特定の実施形態では、総モノマー混合物中で用いられるシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料の量は、先に示されたように、水性媒体中での加水分解に際し、300〜1600、またはいくつかの場合には400〜800、またはなおその他の場合には500〜800のような少なくとも300のシラノール値をポリマーに与えるに十分な量でアクリルポリマー上に存在しているシラノール官能基に変換されるシラン基を含むアクリルポリマーの産生を生じるように選択される。特定の実施形態では、最終ポリマーにおける所望のシラノール含量を達成するために、このようなシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料の量は、このアクリルポリマーを調製するために用いられた総モノマー組み合わせの重量を基づく重量%で、少なくとも70重量%のような、少なくとも50重量%を含む。
【0019】
特定の実施形態では、本発明における使用のために適切なアクリルポリマーは、1つ以上の前述のシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料と、アクリルポリマーに酸官能性を与えるカルボン酸基またはその無水物を含むエチレン性不飽和重合可能材料との反応産物である。適切なエチレン性不飽和酸および/またはその無水物の例は、制限されないで、アクリル酸、ホスセン酸ビニル、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、イタコン酸無水物、エチレン性不飽和スルホン酸および/またはスルホエチルメタクリレートのような無水物、および1つのカルボン酸基がアルコールでエステル化されたマレイン酸水素ブチルおよびフマル酸水素エチルのうなマレイン酸とフマル酸のハーフエステルを含む。エチレン性不飽和カルボン酸および/または無水物は、特定の実施形態で用いられる。特定の実施形態では、このような酸および/または無水物官能エチレン性不飽和重合可能材料は、20〜80のような400までの酸値を有するアクリルポリマーを生じるに十分な量で利用される。本発明の目的には、この用語「酸値」は、試験材料の1グラム中の酸を中和するために必要なKOHのミリグラムの数をいい、そしてASTM D1639に記載される方法に従って測定され得る。特定の実施形態では、このような酸および/または無水物官能エチレン性不飽和重合可能材料の量は、上記アクリルポリマーを調製するために用いられる総モノマー組み合わせの重量を基に、10重量%までのような、50重量%までからの範囲である。
【0020】
特定の実施形態では、本発明における使用のために適切なアクリルポリマーは、1つ以上の前述のシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料と、酸官能性よりはむしろアクリルポリマーにアミン官能性を与えるアミノ官能エチレン性不飽和重合可能材料との反応産物である。適切なアミン官能性エチレン性不飽和重合可能材料の例は、制限されないで、p−ジメチルアミノメチルスチレン、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、p−ジメチルアミノエチルスチレン;ジメチルアミノメチルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジメチルアミノメチルメタクリルアミド;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドを含む。特定の実施形態では、このようなアミノ官能エチレン性不飽和重合可能材料は、10〜80のような、400までのアミン値を有するアクリルポリマーを生じるに十分な量で利用される。特定の実施形態では、このような材料の量は、上記アクリルポリマーを調製するために用いられる総モノマー組み合わせの重量を基に、10重量%までのような、50重量%までを含む。本発明の目的には、この用語「アミン値」は、試験材料の1グラム中の滴定可能なアミンのミリ当量の数×56.1をいう。Siggia、Sidney「Quantitative Organic Analysis via Functional Groups」、John Wiley&Sons、New York、NY 1979を参照のこと。
【0021】
特定の実施形態では、上記に列挙された酸またはアミン官能材料に加え、またはそれに代わり、本発明における使用のために適するアクリルポリマーは、得られるアクリルポリマーを水分散性にし得る非イオン性の重合可能材料の反応産物であり得る。この目的のために適切な材料は、例えば、(メタ)アクリロアルコキシエチレングリコールのような(メタ)アクリロアルコキシポリアルキレン、および/または、例えば、メトキシポリエチレングリコールおよび/またはブトキシポリエチレングリコールのようなそのエーテルを含む。このような材料は、市販され入手可能であり、そして例えば、SartomerからのMPEG 350 MAおよびDow ChemicalからのTONETMシリーズの材料を含む。特定の実施形態では、このような材料の量は、上記アクリルポリマーを調製するために用いられる総モノマー組み合わせの重量を基に、10重量%までのような、50重量%までを含む。
【0022】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態に存在するアクリルポリマーはまた、実質的に、またはいくつかの場合には完全に酸、アミン、シラン、および/または水酸基を含まないエチレン性不飽和重合可能材料(単数または複数)から作製される。本発明のコーティング組成物の特定の実施形態で利用されるアクリルポリマーを調製することにおける使用のために適切であるこのような材料の例は、エステル化基中に1〜6の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、またはアリールアクリレートおよびメタクリレートのようなビニルモノマーである。詳細な例は、メチルメタクリレートおよびn−ブチルメタクリレートを含む。その他の適切な材料は、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、およびシクロヘキシルメタクリレートを含む。しばしば含まれる芳香族ビニルモノマーはスチレンである。用いられ得るその他の材料は、モノオレフィンおよびジオレフィン炭化水素のようなエチレン性不飽和材料、有機酸および無機酸の不飽和エステル、不飽和酸、ニトリル、および不飽和酸のアミドおよびエステルである。このようなモノマーの例は、制限されずに、1,3−ブタジエン、アクリルアミド、アクリロニトリル、α−メチルスチレン、α−メチルクロロスチレン、酪酸ビニル、酢酸ビニル、塩化アリル、ジビニルベンゼン、イタコン酸ジアリル、シアヌール酸トリアリル、およびそれらの混合物を含む。特定の実施形態では、酸、アミノ、シラン、および/または水酸基を含まないエチレン性不飽和重合可能材料(単数または複数)の量は、アクリルポリマーを調製するために用いられる総モノマー組み合わせの重量を基に、30重量%までのような50重量%までを含む。
【0023】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態で利用されるアクリルポリマーは、(a)70〜90重量%のような、50〜98重量%のシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料(単数または複数);(b)3〜6重量%のような、1〜10重量%の酸のカルボン酸基またはその無水物を含むエチレン性不飽和重合可能材料、および(c)10〜30重量%のような、1〜49重量%のアミン、酸、シラン、および/または水酸基を含まないエチレン性不飽和重合可能材料(単数または複数)を含む不飽和重合可能材料の組み合わせから合成される。
【0024】
特定の実施形態では、上記アクリルポリマーは、αα’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(メチルブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)のようなアゾ化合物;ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドおよびt−アミルペルオキシ−2−エチルヘキサノエートのようなペルオキシド;過酢酸三級ブチル;過安息香酸三級ブチル;過炭酸イソプロピル;過酸化炭酸ブチルイソプロピル;および類似の化合物のような重合開始剤の存在下、エチレン性不飽和重合可能材料(単数または複数)の溶液重合によって形成される。採用される開始剤の量は、かなり変動され得;しかし、大部分の事例では、採用される共重合可能なモノマーの総重量を基に、0.1〜10重量%の開始剤を利用することが所望される。鎖改変剤または鎖移動剤がこの重合混合物に添加され得る。ドデシルメルカプタン、三級ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンのようなメルカプタン、および3−メルカプトプロピルトリメトキシシランのようなメルカプトアルキルトリアルコキシシラン、およびシクロペンタジエン、酢酸アリル、カルバミン酸アリル、およびメルカプトエタノールのような鎖移動剤がこの目的のために用いられ得る。
【0025】
特定の実施形態では、上記アクリルポリマーを調製するためのモノマーの混合物のための重合反応は、例えば、米国特許第2,978,437号;同第3,079,434号および同第3,307,963号に詳細に示されるような付加ポリマー技術分野で周知である従来の溶液重合手順を利用する有機溶媒媒体中で実施され得、これら特許の関連する開示は、本明細書中に参考として援用される。これらモノマーの重合で利用され得る有機溶媒は、例えば、アルコール、ケトン、芳香族炭化水素またはこれらの混合物のような、アクリルまたはビニルポリマーを調製することでしばしば採用される有機溶媒のいずれかを実質的に含む。採用され得る上記のタイプの有機溶媒の例は、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、およびブタノールを含む2〜4の炭素原子を含む低級アルカノールのようなアルコール;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエステル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、およびジプロピレングリコールモノエチルエーテルのようなエーテルアルコール;メチルエチルケトン、メチルN−ブチルケトン、およびメチルイソブチルケトン、およびメチルイソブチルケトンのようなケトン;酢酸ブチルのようなエステル;およびキシレン、トルエン、およびナフサのような芳香族炭化水素である。
【0026】
特定の実施形態では、上記エチレン性不飽和成分の重合は、50℃〜150℃、またはいくつかの場合には、80℃〜120℃のような0℃〜150℃で行われる。
【0027】
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、先に記載のアクリルポリマーを含む水性分散物を形成することにより作製される。このような水性分散物を作製する適切な、しかし制限的でない方法は、本明細書中の実施例に提示される。特定の実施形態では、上記アクリルポリマーを含む水性分散物は、最初、酸官能アクリルポリマーを(上記に記載されるような)有機溶媒中に調製すること、そして次に、このアクリルポリマー上の酸基を、このポリマーを水と接触する間またはその前にアミンのようなアルカリ材料で中和することによって調製される。この目的のために用いられ得る適切なアミンは、制限されないで、アルカノール、アルキル、およびアリール鎖中に2〜18の炭素原子を含む、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン、アルキルアルカノールアミン、およびアリールアルカノールアミンを含む。詳細な例は、N−エチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンを含む。また適切なのは、トリアルキルアミン、ジアミンおよび混合アルキル−アリールアミンのような水酸基を含まないアミンであり、そして置換基がヒドロキシル以外である置換アミンもまた用いられ得る。これらアミンの詳細な例は、トリエチルアミン、メチルエチルアミン、2−メチルプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジココアミン、ジフェニルアミン、N−メチルアニリン、ジイソプロピルアミン、メチルフェニルアミンおよびジシクロヘキシルアミンである。また、モルホリン、ピペリジン、N−メチルピペラジンおよびN−ヒドロキシエチルピペラジンのような環構造をもつアミンが用いられ得る。アンモニアがまた用いられ得、そして本出願の目的にはアミンであると考えられる。
【0028】
認識されるように、上記ポリマーがカチオン性、すなわち、それが上記のようなアミン官能性を含む場合には、本発明のコーティング組成物の実施形態は、本明細書中の実施例に記載される方法に従ってこのようなポリマーを含む水性分散物を形成することによって作製され得る。特定の実施形態では、このような水性分散物は、最初、アミノ官能ポリマーを有機溶媒中に調製すること、そして次にアミノ基を、このポリマーが水と接触している間またはその前に酸性材料で中和することによって調製される。
【0029】
特定の実施形態では、水性分散物の連続相は専ら水を含む。いくつかの実施形態では、しかし、有機溶媒がこの水性分散物中に(分散された相の一部として)存在し得、例えば、分散されるべきポリマー(単数または複数)の粘度を低下することを支援する。例えば、特定の実施形態では、上記水性分散物は、この水性分散物の総重量を基にする重量%で、25重量%まで、またはいくつかの場合には15重量%までのような、50重量%までの有機溶媒を含む。上記水性分散物の有機成分中に取り込まれ得る適切な溶媒の例は、エタノールおよび/またはイソプロパノールのようなアルコール、キシレン、メチルアミルケトン、メチルイソアミルケトン、および/またはメチルイソブチルケトンのようなケトン、および/またはn−ブチルアセテート、t−ブチルアセテート、および/またはブチルカルビトールアセテートのようなアセテートである。特定の実施形態では、上記連続相は、低固形分コーティング組成物を生じるに十分な量で存在する。
【0030】
いくつかの場合には、上記に記載のシラノール官能基を含むポリマーは、組成物中に存在する唯一のポリマー材料であり得るが、その他の場合には、このようなポリマーは、その他のポリマー材料と組み合わせて存在し得る。本発明の特定の実施形態では、それ故、上記シラノール官能基を含むポリマーは、組成物中の有機樹脂固形分の総重量を基にする重量%で、少なくとも50重量%のような、少なくとも25重量%の量で存在する。
【0031】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物はまた、光触媒材料を含む。本明細書で用いられるとき、この用語「光触媒材料」は、紫外線または可視光照射のような照射への曝露およびその吸収の際に、光励起可能である材料をいう。本発明の特定の実施形態では、この光触媒材料は、酸化亜鉛、酸化錫、酸化鉄、三酸化ジビスマス、三酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、二酸化チタン(鋭錐石、板チタン石、および/または金紅石)、またはこれらの混合物のような金属酸化物を含む。本発明の特定の実施形態では、この光触媒材料の少なくとも一部分は、3〜35ナノメートル、またはなおその他の実施形態では7〜20ナノメートルのような、1〜100ナノメートルの平均結晶直径を有する粒子の形態で組成物中に存在する。
【0032】
本発明の特定の実施形態では、上記光触媒材料は、チアニアゾルのような、水中に分散された光触媒材料の粒子を含むゾルの形態で提供される。このようなゾルは、市場で容易に入手可能である。本発明における使用のために適切であるこのような材料の例は、制限されないで、Millennium Chemicalsから入手可能なS5−300AおよびS5−33B、ならびにIshihara Sangyo Corporationから入手可能なSTS−01、STS−02、およびSTS−21、ならびにShowa Denko Corporationから入手可能なNTB−1、NTB−13およびNTB−200を含む。
【0033】
本発明の特定の実施形態では、上記組成物中に存在する光触媒材料の量は、組成物の総重量を基にする重量%で、0.1〜0.75重量%のような、0.05〜5重量%の範囲である。
【0034】
本発明の特定の実施形態では、しかし、上記コーティング組成物は、光触媒材料を実質的に含まないか、またはいくつかの場合には、全く含まない。本明細書で用いられるとき、この用語「実質的に含まない」は、論議される材料が存在していたとしても副次的な不純物として存在することを意味する。換言すれば、この材料は、組成物の性質に影響しない。本明細書で用いられるとき、用語「全く含まない」は、この材料が全く存在しないことを意味する。
【0035】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物はまた、非ポリマーシラノール含有材料を含む。本明細書で用いられるとき、この用語「非ポリマーシラノール含有材料」は、シラノール官能基は含むが、有機ポリマーバックボーンを欠く材料をいう。特定の実施形態では、例えば、このような非ポリマーシラノール含有材料は、本質的に完全に加水分解される有機ケイ酸塩(オルガノシリケート)を含む。本明細書で用いられるとき、この用語「有機ケイ酸塩」は、酸素原子を通じてケイ素原子に結合された有機基を含む化合物をいう。適切な有機ケイ酸塩は、制限されないで、酸素原子を通じてケイ素原子に結合され4つの有機基を含むオルガノキシシラン、およびケイ素原子によって構成されるシロキサン主鎖((Si−O))を有するオルガノキシシロキサンを含む。このような材料、およびそれらの製造ための方法は、米国特許第6,599,976号のカラム3、57行〜カラム10、58行に記載され、この引用部分は、本明細書中に参考として援用される。本質的に完全に加水分解される有機ケイ酸塩であり、そして本発明の組成物における使用のために適切である市販され入手可能な材料の非制限的な例は、Mitsubishi Chemical Corporation、東京、日本から入手可能なケイ酸塩MSH−200、MSH−400、およびMSH−500、ならびにDainippon Shikizai、東京、日本から入手可能なShinsui Flow MS−1200である。本発明の特定の実施形態では、上記組成物は、組成物の総固形分重量を基にする重量%で、20〜80重量%のような80重量%まで本質的に完全に加水分解される有機ケイ酸塩を含む。
【0036】
特定の実施形態では、上記非ポリマーシラノール含有材料は、シラノール表面活性基を含むシリカ粒子を含む。このような材料の例は、カルシウムイオン交換シリカ、コロイド状シリカ、合成無定形シリカ、およびそれらの混合物を含む。適切なカルシウムイオン交換シリカは、W.R.Grace&Co.からSHIELDEX(登録商標)AC3として市販され入手可能なである。適切なコロイド状シリカは、Nissan Chemical Industries、Ltd.から商標名SNOWTEX(登録商標)の下、そしてNayacol Nano Technologies Inc.から商標名NexSilTMの下で入手可能である。適切な無定形シリカは、W.R.Grace&Co.から商標名SYLOID(登録商標)の下で入手可能である。用いられるとき、このような粒子は、本発明の組成物中に、組成物の総固形重量を基にする重量%で、20〜80重量%のような、80重量%までの量でしばしば含まれる。
【0037】
特定の実施形態では、非ポリマーシラノール含有材料は、オルトケイ酸(HSiO)メタケイ酸(HSiO)のようなケイ酸、および/または、制限されないで二ケイ酸(HSi)および/またはピロケイ酸(HSi)のようなそれらの縮合産物を含む。用いられるとき、上記ケイ酸は、本発明の組成物中に、組成物の総固形重量を基にする重量%で、20〜80重量%のような、80重量%までの量でしばしば含まれる。
【0038】
特定の実施形態では、特に上記組成物が、有機コーティングでコートされた基体のようなコートされた基体上に付与されることが所望されるとき、本発明のコーティング組成物は、界面活性剤を含む。本発明における使用に適切な表面活性剤の例は、制限なくして、米国特許第6,610,777号のカラム37、22行〜カラム38、60行、および米国特許第6,657,001号のカラム38、46行〜カラム40、39行で同定される材料を含み、この特許の両方の引用部分は、本明細書中に参考として援用される。
【0039】
本発明の特定の実施形態では、上記組成物中に存在する界面活性剤の量は、組成物の総固形重量を基にする重量%で、0.01〜5重量%、またはその他の実施形態では0.1〜3重量%のような、0.01〜10重量%の範囲である。
【0040】
本発明のコーティング組成物は、その他の成分を含み得る。このようなその他の成分の例は、種々の充填剤、可塑剤、染料、色素、臭気剤、苦味剤、抗酸化剤、抗カビ剤、抗真菌剤、揺変性のような流れ制御剤(flow control agent)などを含む。
【0041】
特定の実施形態では、本発明の組成物はまた、ポリマー上のシラノール基と反応するシラノール基以外の官能基を有する材料を含む架橋剤を含み得る。適切な材料は、例えば、チタン酸塩、金属塩、プロピレングリコール、エチレングリコール、トリメチルプロパン、およびペンタエリトリトール、および/またはヒドロキシ官能ポリマーのような特定の有機アルコールを含み得る。触媒もまた、本発明の組成物に含まれ得、例えば、シラノール基の互いとの自己縮合、および/またはシラノール基の前述の架橋剤との反応を加速する。この目的のために適切な材料は、制限されずに、酸、塩基、および錫複合体を含む。
【0042】
特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、基体の少なくとも一部分に付与され、そして乾燥および/または硬化される。コートされ得る適切な基体は、本開示を考慮すれば当業者に明らかであるような任意の基体を含み、種々の金属、プラスチック、先にコートされた基体、木材、ガラスなどを含む。上記コーティング組成物の基体への付与は、ワイピング、浸漬、噴霧、ローリング、ブラッシングなどのような任意の適切な手段によって達成され得る。
【0043】
基体への付与の後、組成物は乾燥および/または硬化される。本明細書中で用いられるとき、この用語「硬化」は、組成物中の少なくともいくつかの架橋可能な成分が、少なくとも部分的に架橋されることを意味する。特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、基体への付与に際し、周囲条件で硬化される。本明細書で用いられるとき、この用語「周囲条件」は、周囲環境の状態(例えば、温度、湿度、およびこの基体が位置される部屋の圧力またはアウトドア環境)をいう。硬化プロセスの間に、任意のある理論に拘束されのではないが、本発明者らは、シラノール基の一部分が自己縮合(すなわち、互いと架橋)し、基体上でフィルムを硬化し、その一方、その他のシラノール基は自己縮合せず、そしてこの硬化したフィルムの表面で剥き出ると考える。
【0044】
先に示されたように、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、組成物の総重量を基に、1重量%程度の低さの非常に低い固形分含量を有し得る。結果として、本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、極度に薄いフィルムの形態で基体に付与され得ることが見出された。特に、本発明の特定の実施形態によれば、上記組成物は、0.05ミル(1.3マイクロメートル)を超えないような、0.5ミル(12.7マイクロメートル)を超えない乾燥フィルム厚みを有する薄いフィルムの形態で基体に付与される。
【0045】
本発明者らによって、本発明のコーティング組成物のいくつかの実施形態が、好ましい付与および外観性質を有するコーティングフィルムを生成することが見出された。本明細書で用いられるとき、用語「コーティングフィルム」は、基体上に堆積される乾燥および/または硬化されたコーティングをいい、このようなフィルムは、しばしば、しかし必ずしも必要ではないが、連続フィルムである。このようなコーティングはまた、その表面で親水性の性質を示す。材料の親水性を評価するための1つの方法は、水のコーティングとの接触角を測定することである。このような接触角は、本明細書中の実施例に記載される方法によって測定され得る。特定の実施形態では、本発明のコーティング組成物は、フィルムの形成後24時間まで測定されるとき、このようなコーティングの不在下でこの基体表面が示す水との接触角より小さい接触角を示す基体上の乾燥フィルムを生成する。特定の実施形態では、このような接触角は、コーティングの不在下で基体表面が示す接触角より、少なくとも30%、いくつかの場合には少なくとも50%、またはなおその他の場合には少なくとも75%小さい。
【0046】
明らかであるように、それ故、本発明はまた、上記コーティングフィルムを親水性にするに十分な量で存在するシラノール基を含むポリマーを含むコーティングフィルムに関する。本明細書で用いられるとき、用語「親水性」は、コーティングフィルムが、このフィルムの形成後24時間まで測定されたとき、このようなコーティングフィルムの不在下で基体表面が示す水との接触角より小さい接触角を示すことを意味し、このような減少は、少なくとも30%または、いくつかの場合には、少なくとも50%、または、なおその他の場合には、少なくとも75%であり得る。
【0047】
また明らかであるように、本発明はまた、基体の少なくとも一部分に自己清掃性質を与えるための方法に関する。この方法は、(i)この基体に、シラノール基を含むポリマーを含む低固形分の水性コーティング組成物を付与する工程、および(ii)この組成物を、得られるコーティングフィルムが親水性であるように硬化させる工程を包含する。
【0048】
特定の実施形態では、このような方法はまた、本発明の低固形分の水性コーティング組成物の付与の前に、アルカリクリーナーで上記基体を清掃する工程を包含する。このようなクリーナーのpHは、しばしば10を超える。
【0049】
特定の実施形態では、任意の清掃の後、および本発明のコーティング組成物の付与の前に、前処理または「サイズコート」が基体に付与され得る。このような材料は、上記基体の有機溶媒ワイプ、例えば、イソプロパノールまたは2つ以上の異なるアルコールの混合物を含み得る。いくつかの場合には、この前処理は、接着促進性ポリマー溶液および/または「つなぎ−コート」の薄いファルムの付与を含み得る。なおその他の場合には、この前処理は、コートされた基体の最終外観を改良し得るポリマー溶液を含む。
【0050】
本発明のコーティング組成物の特定の実施形態は、塵または汚れに連続的に曝されるコーティング基体における使用のために特に価値があることが示された。少なくともいくつかの場合には、本発明の組成物で少なくとも部分的にコートされた基体は、それへの塵および/または汚れの減少した粘着またはケーキングを示すことが見出された。1つの例示の適用は、自動車ホイールリムをコートするための上記組成物の使用を含む。一旦、ホイールが作動から、特にブレーキの塵から汚くなると、多くの場合には、この塵は、こすり洗い、拭き取り、またはきつい洗浄剤の付与の必要性なくして水でホイールをすすぐことにより実質的に除去され得ることが見出された。従って、基体を、本発明の組成物でコーティングすることにより清掃時間は多くの場合に低減される。
【0051】
本発明を例示するのは以下の実施例であるが、本発明をそれらの詳細に制限すると考えるべきではない。その他であることが示されなければ、以下の実施例、および明細書全体における全ての部および%は重量である。
【実施例】
【0052】
(実施例1〜7:アクリルポリマーの調製)
実施例1〜7の各々については、表1を参照のこと。反応フラスコには、撹拌機、熱電対、窒素入口および凝縮器が装備された。チャージAが次いで添加され、そして窒素雰囲気下で還流温度(75℃〜80℃)まで加熱して撹拌された。還流するエタノールに、チャージBおよびチャージCが3時間に亘って同時に添加された。この反応混合物を2時間還流条件で保持した。チャージDを次いで30分の期間に亘って添加した。この反応混合物は2時間の間還流条件で保持され、そして次に30℃まで冷却された。
【0053】
【表1】

(実施例8〜14:コーティング組成物の調製)
(実施例8)
30.0グラムの実施例1の組成物、1.0グラムのジメチルエタノールアミンおよび120グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌下10分間に亘り添加した。次いで、この混合物30分間撹拌した。得られる混合物は、4.5%重量の固形分含量、および9.13のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、531.3の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。
【0054】
本発明の目的には、ポリマーに対するシラノール値(100%固形分ベース)は、以下のように算出する:組成物中のモノマー+開始剤の総重量が決定される。実施例1については、この重量は76.4グラムであった。用いられたシラン含有材料のモル数が決定される。実施例1については、Silquest A−174の0.213モルが用いられ、これは、52.9グラムのSilquest A−174を248(Silquest A−174の分子量)で除することによって算出された。ポリマー中の加水分解可能なエステル基の当量数が次いで決定される。実施例1については、この値は、0.639であることが決定され、これは、Silquest A−174のモル数を3(各Silquest A−174分子上には3つのエステル基が存在する)で乗じることにより算出された。ポリマーについてのシラノールエステル当量重量が次いで決定される。実施例1については、この値は119.6であり、これは、76.4を0.639で除することによって算出された。シラノール値を算出する目的には、各加水分解可能なエステル基は、1つのメタノール分子を放出し、そして放出された各メタノール分子の重量損失は、モル当たり14グラムであると仮定され得る。シラノール当量重量は、次いで、このシラノールエステル当量重量から14を差し引くことによって決定される。実施例1については、これは、105.6であり、119.6から14を差し引くことによって算出された。シラノール値が次いで、ミリグラムでKOHの分子量である56,100を、シラノール当量重量で除することにより決定される。実施例1については、これは、531.3であると決定され、これは、56,100を105.6で除することにより算出された。
【0055】
(実施例9)
30グラムの実施例2の組成物に、0.6グラムのジメチルエタノールアミンおよび10.0グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌下1分間に亘って添加した。この混合物を4分間撹拌し、そして110グラムの水を5分間に亘り添加した。次に、この混合物を30分間撹拌した。得られる混合物は、3.9重量%の固形分含量および8.6のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、369.1の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。シラノール値は、実施例8に記載される手順を用いて算出された。
【0056】
(実施例10)
30.9グラムの実施例3の組成物に、1.0グラムのジメチルエタノールアミンおよび120グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌下10分間に亘って添加した。次に、この混合物を30分間撹拌した。得られる混合物は、4.0重量%の固形分含量および9.2のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、705.0の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。シラノール値は、実施例8に記載される手順を用いて算出された。
【0057】
(実施例11)
15グラムの実施例4の組成物に、0.4グラムの酢酸および10.0グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌下1分間に亘って添加した。この混合物を2分間撹拌し、そして50グラムの水を5分間に亘り添加した。次いで、この混合物を30分間撹拌した。得られる混合物は、4.1重量%の固形分含量および4.6のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、529.6の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。シラノール値は、実施例8に記載される手順を用いて算出された。
【0058】
(実施例12)
100グラムの実施例5の組成物に、14.43グラムの10%ジメチルエタノールアミン溶液および15.58グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌して2分間に亘って添加した。次に、5分の経過に亘り、270.01グラムの脱イオン水を撹拌して添加した。次いで、この混合物をさらに23分間撹拌した。得られる混合物は、5.0重量%の固形分含量および7.9のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、577.3の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。シラノール値は、実施例8に記載される手順を用いて算出された。
【0059】
(実施例13)
20グラムの実施例6の組成物に、2.89グラムの10%ジメチルエタノールアミン溶液および27.09グラムの脱イオン水の混合物を、撹拌して2分間に亘って添加した。次に、5分の経過に亘り、350.02グラムの脱イオン水を撹拌して添加した。次いで、この混合物をさらに23分間撹拌した。得られる混合物は、1重量%の固形分含量および7.7のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、423.5の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた。シラノール値は、実施例8に記載される手順を用いて算出された。
【0060】
(実施例14)
995.8グラムの水、89.9グラムのエタノール、3.0グラムのAEROSOL OT −75(Cytec Industries Inc.、Kalamazoo、MI)から入手可能なジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、15.4グラムのBYK−348(Byk−Chemie、Wesel Germanyから入手可能なポリエーテル改変ジメチルポリシロキサン)、23.1グラムのBYK 020(Byk−Chemie、Wesel Germanyから入手可能な改変されたポリシロキサンコポリマー)、15.4グラムのSURFYNOL 465 (Air Products and Chemicals Inc.Allentown、PAから入手可能な非イオン性界面活性剤)、および10.7グラムのジメチルエタノールアミン、375.8グラムの実施例7の組成物を15分間に亘って添加した。次いで、この混合物を30分間撹拌した。得られる混合物は、6.5重量%の固形分含量および9.1のpHを有していた。加水分解されたポリマーは、508.3の算出シラノール値(100%固形分ベース)を有していた(実施例8に記載される手順を用いて算出された)。この混合物を等量の水で希釈し、実施例20に記載されるようにスプレーした。
【0061】
(実施例15〜18:試験基体)
実施例8〜11の組成物は、各々、クリアコートされたアルミニウム試験パネル(PPG Industries Inc.によって供給されるエポキシ−酸粉末クリアコート)に、約2ミリリットルの組成物をペーパータオルに付与し、そしてこのクリアコート表面上の溶液を拭き取ることによって付与された。この材料のフィルムがパネル上に堆積された。この材料は、親水性について試験する前に、その場で周囲条件で4時間乾燥させた。親水性を決定するために、処理されたパネルを流水の流れに5秒間45゜の角度で浸し、そして取り出した。この試験パネルを次いで90゜の角度にセットし、ここで、水は、連続的シートの形態で基体を濡らし続けた。この試験は、任意の表面処理なしに同様のパネル上で繰り返された。この場合には、水は、このパネルを急速に転がるビーズを形成することが観察された。
【0062】
(実施例19:表面処理接触角実験)
実施例8、12および13の組成物を、上記クリアコートされたアルミニウム試験パネルに付与し、そしてその場で一晩、周囲条件で乾燥させた。これらパネルを、次いで、VCA 2500 XE Video Contact Angle Systemを用いて接触角について試験した。試験標本はまた、以下の手順のようにブレーキ塵抵抗(brake dust resistance)試験のために調製された:機械旋盤を、標準的な車のローターを保持するように変更した。試験パネルを、このローターから1インチのアルミニウムブロックカラー上に垂直に取り付けた。熱発生を低減するように半分にカットされた標準的なブレーキパッドを、3回の10分間の使用時間の間、943ポンド/インチの率のばね(1インチの220/1000に圧縮)を用いて回転ローター(654rpm)に付与した。各10分間隔の後、パッドとローターを冷却のために3分間離し、そしてパッドのグレージングを防いだ。最終結果は、約0.0150gのブレーキ塵蓄積とともに黒くなった試験パネルを提供した。これらのパネルを次いで標準的なガーデンホースの水圧ですすいだ。以下の表は、これらの結果を示す。
【0063】
【表2】

(表面処理自動車ホイール)
実施例14の組成物を、ポンプエアロゾルアプリケーターを用いて粉末でクリアコートされたアルミニウム試験パネルに噴霧して付与し、そして試験前に一晩周囲条件で乾燥させた。水との接触角を5.8゜であると測定し、そしてシミュレーションされたブレーキ塵抵抗試験は、水でのすすぎの後、ブレーキ塵フィルムが保持されない優れた結果を生成
した。表面処理のない同様の試験パネルは、85゜の水との接触角を有することが見出された。上記材料はまた、2001 OLDSMOBILE ALEROの右前ホイールの1/2に噴霧して付与され、そして乗り物を点検に戻す前にその場で乾燥させた。600マイルの点検の後、このホイールをガーデンホースからの激しいスプレーですすぎ、そしてこのホイールの処理部分と非処理部分を違いについて観察した。このホイールの非処理部分は、機械的撹拌なくしては除去されなかったブレーキ塵残渣が既に収集されていたことが観察された。このホイールの処理部分は、同じガーデンホースですすいだ後、顕著により少ないブレーキ塵残渣を有することが観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール官能基を含むポリマーであって、該シラノール官能基が該ポリマー上に該ポリマーに少なくとも300のシラノール値を与えるに十分な量で存在するポリマーを含む、低固形分水性コーティング組成物。
【請求項2】
前記組成物が、該組成物の総重量を基に、1〜10重量%の樹脂固形分容量を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記シラノール官能基が、前記ポリマー上に前記ポリマーに400〜800のシラノール値を与えるに十分な量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、シラノール官能基を含むポリマーを含む水性懸濁物の形態である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが、アクリルポリマーを含むシラノール官能基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アクリルポリマーが:(i)シラン含有エチレン性不飽和重合可能材料、(ii)酸および/または無水物基を含むエチレン性不飽和重合可能材料、および(iii)酸、アミン、シラン、および/または水酸基を実質的に含まないエチレン性不飽和重合可能材料を含む不飽和重合可能材料の組み合わせから合成される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アクリルポリマーが:(i)50〜98重量%のシラン含有エチレン性不飽和重合可能材料、(ii)1〜10重量%の酸および/または無水物基を含むエチレン性不飽和重合可能材料、および(iii)1〜49重量%の酸、アミン、シラン、および/または水酸基を実質的に含まないエチレン性不飽和重合可能材料を含む不飽和重合可能材料の組み合わせから合成され、ここで、該重量%が該アクリルポリマーを調製するために用いられる総モノマー組み合わせの重量に基づく、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シラノール官能基を含むポリマーが、前記組成物中の有機樹脂固形分の総重量を基に少なくとも25重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
非ポリマー性シラノール含有材料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記非ポリマー性シラノール含有材料が、本質的に完全に加水分解された有機ケイ酸塩、ケイ酸、および/またはシリカ粒子を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記界面活性剤が、前記組成物の総重量を基に0.01〜10重量%の範囲の量で存在する、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物で少なくとも部分的にコートされた基体。
【請求項14】
前記基体が、自動車のホイールリムである、請求項13に記載の基体。
【請求項15】
基体の少なくとも一部分コートする方法であって:
請求項1に記載の組成物を該基体に付与する工程、および
該組成物を硬化する工程、を包含する、方法。
【請求項16】
前記硬化が、周囲条件で起こる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
シラノール基を含むポリマーを含むコーティングフィルムであって、該シラノール基が該コーティングフィルムを親水性にするに十分な量で存在する、コーティングフィルム。
【請求項18】
前記コーティングフィルムが、前記基質が該コーティングフィルムの不在下で示す水との接触角より少なくとも30%より少ない接触角を示す、請求項17に記載のコーティングフィルム。
【請求項19】
前記コーティングフィルムが、前記基質が該コーティングフィルムの不在下で示す水との接触角より少なくとも50%より少ない接触角を示す、請求項18に記載のコーティングフィルム。
【請求項20】
基体の少なくとも一部分に自己清掃性質を与える方法であって:
(a)該基体に、シラノール基を含むポリマーを含む低固形分の水性コーティング組成物を付与する工程、および
(b)該組成物を、得られるコーティングフィルムが親水性であるように硬化させる工程、を包含する、方法。
【請求項21】
前記低固形分の水性コーティング組成物を付与する工程の前に、前記基体に前処理を付与する工程をさらに包含する、請求項20に記載の方法。

【公表番号】特表2009−512761(P2009−512761A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536814(P2008−536814)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/040973
【国際公開番号】WO2007/053326
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】