説明

シラン変性されたフィラーから物質を抽出するための方法および装置

【課題】シラン変性されたフィラーから物質を抽出するための方法および装置を提供する。
【解決手段】 − 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− 圧縮された気体を圧力容器中で半径方向でフィラーに通過させ、かつ/または
− シラン変性されたフィラーから抽出された物質を適切な吸収剤により圧縮された気体から除去する。
【効果】シラン変性されたフィラーから効果的に物質を抽出することができ、これと同時に、フィラー堆積床を通過する圧縮された気体の高い処理量が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシラン変性されたフィラーから物質を抽出するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シラン変性されたフィラーを製造するためには、たとえばプラスチック工業またはゴム工業において使用されるような2つの基本的な変法が公知である。
【0003】
たとえばフィラーにより強化されたゴムコンパウンドの原料コンパウンドを製造する際に、有機変性されたアルコキシシランY−R−Si(R′(OR″)3−xを、変性すべきフィラーへ液状で供給することが公知である(US3,997,356)。
【0004】
さらに、有機変性されたアルコキシシランおよびフィラーからなる、予め形成された物理的な混合物を経由して、強化作用のあるフィラー/シランの混合物の供給を実施することが公知である(DE3314742、US4,076,550)。
【0005】
アルコキシシランとフィラーとからなる、この後処理されていない混合物の欠点は、貯蔵安定性に欠け、かつこのことによって生成物の特性安定性がしばしば得られないことである。貯蔵の時間的経過において連続的に少量のアルコールが加水分解およびアルコキシシランの縮合により放出される。このことにより物質的な組成が変化し、かつフィラー/シランの混合物の後の性能が変化する。
【0006】
EP1,256,604から、少なくとも1種のバイオポリマー、バイオオリゴマーの酸化物もしくはケイ酸塩フィラーを、圧縮された気体中で少なくとも1種のシランと反応させるための方法が公知である。この方法では圧縮された気体の高い処理量が所望される。というのも、このことにより必要とされる抽出時間の短縮もしくは時間単位あたりに抽出される物質量の向上が可能であるからである。
【0007】
抽出すべきフィラーはEP1,256,604では軸方向で圧縮された気体により貫流されるか、または圧力容器中で撹拌される。実施例からは、超臨界COによる変性すべきフィラーの達成可能な軸方向の貫流は、使用されるフィラーの粒径分布および使用されるオートクレーブ容器の長さに著しく依存することが明らかである。
【0008】
経済的な理由から、加圧式オートクレーブは多くの場合、細長い容器として設計されている。これは特に大きな製造装置に該当する。この場合、このことは製造規模では変性すべきフィラーに関して高すぎるかさ高さを生じる。
【0009】
公知の方法の欠点は、圧縮される気体の所望の高い処理量の場合、抽出の際に気体入口と気体出口との間で生じる差圧が高すぎ、これは装置部分(特に抽出物を保持する焼結プレート)を損なう可能性がある。さらに、流路を形成する危険が生じ、このことは堆積物の不規則な貫流およびこのことによりフィラーの不規則な抽出という結果を伴う。差圧を小さく維持するために、圧縮された気体の処理量がわずかであるにすぎない場合、このことは長い抽出時間につながる。実地では特に微粒子状、粉末状のフィラーの場合、圧縮された気体の不十分な処理量が実現されるにすぎない。このことは工業的な規模では、時間ひいてはコストに関して最適な利用にとって妨げとなる。
【0010】
EP1,357,156から、ダストの少ない、マイクロビーズ状もしくはマイクロ顆粒状の、シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーを圧縮された気体中で製造するための方法が公知である。公知の方法の欠点は実験装置の構成部材として記載されている、圧縮された気体がその中で放圧される分離器が、満足のいく技術的な解決手段ではないことである。分離器は、圧縮された気体中に含有されている、フィラーから抽出された物質の、できる限り効率的かつ完全な分離を保証するという課題を、満足のいく程度に満たさない。圧縮された気体中に含有されている物質、たとえばアルコキシシランから遊離したアルコールは不完全に分離されるにすぎない。さらに、抽出物および気体流の分離が存在しないことにより、抽出の過程において、圧縮された気体が再汚染される。その結果、たとえばエタノールのような物質は、分離器を通って、および分離器から輸送され、かつ圧力装置の別の部分、たとえば緩衝容器中に蓄積する。
【0011】
緩衝容器中に存在する、圧縮された、もしくは液状の気体中で、分離器を通って、および分離器から輸送される物質の溶液平衡が調節されうる。
【0012】
続いて加圧式オートクレーブに緩衝容器からふたたび供給された圧縮気体は物質不含、たとえばエタノール不含ではなく、このことによって抽出容器中の圧縮された気体の吸収能(負荷能)が低減する。引き続きここから、加圧式オートクレーブ中で圧縮された気体のわずかな物質吸収が結論される。従って圧縮された気体の、たとえばエタノールによる低減された負荷能は、加圧式オートクレーブ中でのシラン変性されたフィラーからのエタノールの除去のための、延長された抽出時間という結果を生じる。これは工業的な規模では時間ひいてはコストを最適化する利用にとって妨げとなる。
【特許文献1】US3,997,356
【特許文献2】DE3314742
【特許文献3】US4,076,550
【特許文献4】EP1,256,604
【特許文献5】EP1,357,156
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、シラン変性されたフィラーからの、物質の効果的な抽出のための方法を提供することであり、この方法によりフィラー堆積床を通過する圧縮された気体の高い処理量が、フィラー固定床の効果的な抽出を同時に行いながら可能となる。
【0014】
本発明のもう1つの課題は、シラン変性されたフィラーの抽出の際に、輸送媒体として役立つ圧縮された気体からの物質の効果的な分離である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題は本発明により、
− 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− 圧縮された気体を圧力容器中で半径方向でフィラーに通過させ、かつ/または
− シラン変性されたフィラーから抽出された物質を適切な吸収剤により圧縮された気体から除去する
ことを特徴とする、少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法により解決される。
【0016】
本発明による方法の1実施態様では、
− 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− 圧縮された気体を圧力容器中で半径方向でフィラーに通過させることができる。
【0017】
本発明による方法のもう1つの実施態様では、
− 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− シラン変性されたフィラーから抽出される物質を適切な吸収剤により、圧縮された気体から除去することができる。
【0018】
本発明による方法のもう1つの実施態様では、
− 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− 圧縮された気体を圧力容器中で半径方向でフィラーに通過させ、かつ
− シラン変性されたフィラーから抽出される物質を適切な吸収剤により、圧縮された気体から除去することができる。
【0019】
圧縮された気体の、閉鎖された装置中の循環流は、圧縮された気体中に溶解している物質を除去するために、吸収装置により補う場合に実現することができる。
【0020】
圧縮され、物質が負荷された圧縮された気体は少なくとも1つの吸収装置を通過することができる。
【0021】
本発明による方法は有利には、圧縮された気体が堆積物を半径方向に貫流し、かつその際、フィラーからの物質の抽出が引き続き、物質の吸収と組み合わされる、均一な条件下で実施することができる。
【0022】
均一な条件とは、圧力の変動が目標値から±50バール以上、有利には±25以上、特に有利には±10以上、とりわけ有利には±5以上とはならない全ての方法を意味しうる。
【0023】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーからの抽出された物質の分離は、圧縮された気体中に存在する物質を吸収により気体流から不可逆的に除去することにより改善することができる。
【0024】
技術的な実施は異なった形および方法で行うことができる。詳細においては場合により逸脱するが、本発明に関連する共通の概念の全ての実施態様を手短に詳細に説明もしくは定義する:
軸方向の貫流とは、円筒形に設計された圧力容器の対称な回転軸に対して平行な貫流であると理解することができる。
【0025】
半径方向の貫流とは、円筒形に設計された反応容器の対称な回転軸に対して横向きの貫流であると理解することができる。
【0026】
軸方向の貫流とは、圧縮された気体が、圧縮された気体の流れの方向に対して垂直なフィラーの層厚さよりも大きい、シラン変性されたフィラーの層厚さを貫流することであると理解することができる。
【0027】
半径方向の貫流とは、圧縮された気体が、圧縮された気体の流れの方向に対して垂直なフィラーの層厚さよりも小さい、シラン変性されたフィラーの層厚さを貫流することであると理解することができる。
【0028】
吸収とは、吸着、吸収または化学吸着であると理解することができる。
【0029】
吸収剤とは、該吸収剤と接触する物質を選択的に、もしくは非選択的に吸収する、人工もしくは天然由来の全ての物質または材料であると理解することができる。吸収は、物質または材料相互の物理的な相互作用を含んでいても、化学的な反応を含んでいてよい。
【0030】
たとえば吸着のための、圧縮された気体からの物質の分離を、ゼオライトまたは活性炭のような材料上または材料中で行うことができる。
【0031】
圧縮された気体はたとえば圧力容器中の吸着剤として役立つ吸収層を通過させることができる。吸収剤層として、ゼオライト、活性炭、ケイ酸、水、シリカゲルまたはその他の、高表面積の多孔質の物質または材料を使用することができる。
【0032】
たとえば吸収は圧縮された気体から水を用いて物質を洗浄することにより行うことができる。洗浄は加圧下または大気圧で行うことができる。圧縮された気体からの物質の洗浄は1〜2000バール、有利には1〜300バール、特に有利には10〜150バール、とりわけ有利には10〜120バールの圧力で行うことができる。
【0033】
圧縮された気体によりシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーから抽出された物質の洗浄は、有利には抽出プロセスに引き続き行うことができる。
【0034】
圧縮された気体はたとえば、吸収剤として役立つ流体に対して向流で、充填体もしくはその他の装置により変更された圧力容器を通過させることができる。
【0035】
有利には圧縮された気体は下から、および流体を向流で上から塔へ、もしくは適切に実施された圧力容器へ導入することができる。
【0036】
洗浄された気体は上部でふたたび圧力容器から排出することができ、その一方で、下部では吸収剤の液体および抽出された物質を圧力容器から排出することができる。
【0037】
液体は連続的もしくは不連続的に、スクラバーとして使用される容器から取り出すことができる(図1〜7)。
【0038】
プロセス中で、スクラバーとして機能する少なくとも1つの圧力容器に洗浄液を少なくとも1回貫流させることができる(図4)。
【0039】
圧縮された気体からの物質の吸収は、圧縮された気体からの物質の吸着と組み合わせることができる(図4+5+7)。
【0040】
圧縮された気体を用いた抽出の際に省略することができない圧力容器中で、少なくとも2つの付加的な装置を使用することができる。第一の装置はフィラーが充填された空間を仕切るために使用され、かつ同時に気体透過性であってもよい。第二の装置は圧縮された気体の供給のために使用することができる。第三の装置はシラン変性され、かつ抽出されたフィラーを圧力容器から除去するために使用され、かつ有利には圧力容器の底部および/または第一の装置の底部に存在することができる。
【0041】
本発明のもう1つの対象は、本発明による方法を実施するための装置であり、該装置は、気体透過性の内部容器を少なくとも1つ有する少なくとも1つの圧力容器、ふるいまたはフィラーを収容するためのインサートおよび少なくとも1つの、フィラー堆積床中に存在する気体入口および気体出口からなり、かつ半径方向に設置された、フィラー堆積床からの気体入口もしくは気体出口を有することを特徴とする。該装置は、内側から外側へと半径方向に、または外側から内側へと半径方向に設計された気体の貫流方向を可能にすることができる。
【0042】
第一の装置は、そのジャケットがたとえば多孔板からなる第二の容器からなっていてよい。この第一の装置は「ふるい」または「シュラウド」とよぶことができる。該シュラウドは多孔板またはスリット付の板ふるい(Spaltsiev)、液体透過性の多孔質の物質、液体透過性の織布、液体透過性の膜、液体透過性のポリマーまたは適切な機械的な装置、たとえばスリット付の板ふるい、障害物または類似のものからなっていてよい。第一の装置は外側の圧力容器中で適切に使用されるか、または固定されていてもよく、つまりたとえば固定、支持または懸架されていてよい。
【0043】
第一の装置(シュラウド、ふるい)の中心、ひいては本来の圧力容器の中心において、同軸で第二の装置が配置されていてもよい。これはたとえば中空管(「中心管」)または類似のものからなっていてよく、その際、端部は閉じているが、しかしジャケットは圧縮された気体に対して透過性である。第二の装置は外側の圧力容器または第一の装置中で適切に使用されるか、または固定されている、つまりたとえば固定、支持、ネジ止め、溶接または懸架されていてもよい。
【0044】
第三の装置は第一の装置の底部もしくは加圧式オートクレーブの底部に存在していてよい。これは、抽出されるシラン変性されたフィラーの排出のための抽出方法の後で使用することができる。これは機械的に、加圧により、または減圧により行うことができる。フィラーは加圧により耐圧性の中間容器中で搬送することができる(圧力搬送)。フィラーは減圧により真空シールされた中間容器中で吸引することができる(吸引搬送)。
【0045】
フィラーは圧力容器中の開口部により、第一および第二の装置(たとえばシュラウドまたは中心管)の間の中間の空間(「環状の空間」)中に充填することができる。その際、上部からの、たとえば圧力容器の蓋の開口部を介した充填は有利である。
【0046】
第二の装置(たとえば軸方向の中心管)への気体の供給は上から、または下から行うことができる。
【0047】
図8〜11は、本発明による方法をその中で実施することができる、高圧抽出装置の構成の変法および組合せを記載する。
【0048】
圧縮された気体は、圧力容器の中心に設置された、軸方向の中心管へ供給し、かつ次いで開口部、孔または類似のものを介して、半径方向で堆積物中へ流出し、ここから外側へ流れる。圧力容器中に存在するシュラウドの、フィラーと境界を接する内壁は有利には、圧縮された気体を通過させることができ、かつ同時にフィラーを保持することができる(図12〜18)。このために、材料をこのために適切な、相応して設計された装置、たとえば孔、スリット、ミクロ孔、マクロ孔、穿孔、障害物または類似のものを備えていてよい。
【0049】
本方法は、変性されたフィラーから物質を抽出する間、シラン/フィラーの混合のための連続的もしくは不連続的な撹拌もしくはローラー装置なしても使用することができる。
【0050】
オートクレーブまたは圧力容器は、変性されたフィラーから物質を抽出する間、シラン/フィラーの混合物のための連続的もしくは不連続的な撹拌もしくはローラー装置を有していなくてもよい。撹拌もしくはローラー装置はたとえばピストン型撹拌機、ブレード型撹拌機、ビーム型撹拌機、穿孔ビーム型撹拌機、交叉ビーム型撹拌機、馬蹄型撹拌機、グリッド型撹拌機、パドル型ローラー、プロペラ撹拌機、スクリュー撹拌機、タービン撹拌機、ディスク型撹拌機、遊星型撹拌機またはインペラー撹拌機であってよい。
【0051】
圧縮された気体は堆積物を半径方向に貫流するか、もしくは堆積物に半径方向で供給するか、もしくは堆積物をふたたび半径方向で離れることができる。シラン変性されたフィラーからの物質の、満足のいく抽出速度を達成するために、圧縮された気体が半径方向で内側から外側に向かって、または半径方向で外側から内側に向かってフィラーを貫流することは重要ではない。
【0052】
半径方向の運転に関して、プラント中での実地において、流れの方向が内側から外側へ流れることが有利であることが判明した(図12〜14+19)。フィラー粒子が外側へわずかにドリフトすることが観察されうるので、フリースペースおよび保護スペースが中心管の周囲に生じる。シュラウドの内側端部におけるフィラーの圧縮は可能であるが、しかしこれは観察されない。
【0053】
外側から内側への気体の案内(図15〜18)は、内側から外側への気体の案内に対して理論的に利点を有する。抽出が終了した後の圧力容器からの、たとえば上向きもしくは下向きの吸引による、シラン変性されたフィラーの単純な搬出はこのことによって促進されうる。
【0054】
図12には圧縮された気体を下から供給する本発明による変法が記載されている。この配置はたとえば、中心の気体導入管が底部に固定され、かつ持続的に機械的に固定することができるという利点を有する。図面では、中心管の長さが本発明によるこの実施態様の場合、フィラーの充填高さおよび気体透過性に設計されたシュラウドの高さにより調節されるべきであることを表示している。
【0055】
図13には圧縮した気体を上から供給する本発明による変法が記載されている。この配置はたとえば、第一の装置および加圧式オートクレーブの底部で、変性されたフィラーのための搬出補助手段を設置する際に高められた自由度が生じるという利点を有する。
【0056】
図14には圧縮した気体を上から供給する本発明による変法が記載されている。この配置はたとえば、加圧式オートクレーブの底部において変性されたフィラーのための搬出補助手段を設置する際に高められた自由度が生じるという利点を有する。側面の運動力による中心管の機械的な負荷は、図12による本発明による実施態様と比較して問題が少ない。というのも、中心管が下部および上部で固定されるからである。
【0057】
本発明の技術的な実施態様は異なった形および方法で行うことができる。本発明の技術的な実施態様は技術的、材料技術的もしくは方法技術的な詳細において変化することができる。
【0058】
本発明による方法は少なくとも1つの加圧式オートクレーブ中で、または少なくとも2つの直列もしくは並列に接続された圧力容器中で実施することができる。
【0059】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、少なくとも1種の酸化物もしくはケイ酸塩フィラーを、圧力および/または温度により圧縮された気体中で少なくとも1種のシランと反応させることにより得られる。
【0060】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、少なくとも1種のマイクロビーズ化された、造粒された、もしくは粉末状の酸化物もしくはケイ酸塩フィラーを、圧縮された気体中で少なくとも1種のシランと反応させることにより得ることができる。
【0061】
シランとしてアルコキシシランを使用することができる。アルコキシシランとして有機変性アルコキシシラン、部分的に加水分解された、有機変性アルコキシシラン、完全に加水分解された有機変性アルコキシシランまたはこれらの混合物を使用することができる。
【0062】
シラン変性された、酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、0〜50質量%、有利には0〜30質量%、特に有利には0〜15質量%の物理的および化学的に結合した物質の含有率を有していてよい。
【0063】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、物理的および化学的に結合した物質としてたとえば有機変性アルコキシシラン、部分的に加水分解された、有機変性アルコキシシラン、完全に加水分解された、有機変性アルコキシシラン、アルコール、アミン、水、元素の硫黄、カルボン酸、シリコーンオリゴマーもしくはシリコーン油またはアルカリ金属の硫酸塩を含有していてよい。
【0064】
シラン変性された、酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、圧縮された気体による抽出の後で、施与されたシラン中に含有されている、加水分解により放出可能なアルコールの100モル%未満、有利には75モル%未満、特に有利には30モル%未満、とりわけ有利には15モル%未満の、アルコキシシランに由来するアルコールの化学的もしくは物理的に結合した残留含有率を有していてよい。
【0065】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、シランを0.1〜50質量%、有利には0.1〜25.0質量%、特に有利には0.1〜15質量%含有していてよい。
【0066】
シランは化学的および/または物理的にフィラーの表面に結合されていてよい。
【0067】
シランとして、一般式(I)
Z−A−S−A−Z (I)
[式中、
xは、1〜14、有利には1〜8、特に有利には2〜6の数であり、
Zは同時にSiXであり、かつ
、X、Xはそれぞれ相互に無関係に、水素(−H)、ハロゲン(−Cl、−Br、−I)またはヒドロキシ(−OH)、線状、分枝鎖状もしくは環状の、1〜18個の炭素原子(C〜C18)を有する、有利にはC〜C10を有する炭化水素鎖、有利にはメチル−、エチル−、プロピル−またはブチル−、アルキル酸−(C2x+1)−C(=O)O−、アルケニル酸置換基、たとえばアセトキシ−CH−(C=O)O−、置換されたアルキル−もしくはアルケニル酸置換基、たとえばオキシマト−R′C=NO−、5〜12個の炭素原子を有するシクロアルカン基、ベンジル基またはハロゲン−もしくはアルキル置換されたフェニル基、線状もしくは分枝鎖状の炭化水素鎖を有するアルコキシ基、有利には(C〜C24)−アルコキシ、特に有利にはメトキシ−(CHO−)、エトキシ−(CO−)、プロポキシ−(CO−)またはブトキシ−(CO−)ならびにドデシルオキシ−(C1225O−)、テトラデシルオキシ−(C1429O−)、ヘキサデシルオキシ−(C1633O−)およびオクタデシルオキシ−(C1837O−)、C〜C50原子を有する線状もしくは分枝鎖状のポリエーテル鎖を有するアルコキシ基、たとえば式−O−(CH−CH−O−)−アルキル、−O−(C(CH)H−CH−O−)−アルキルまたは−O−(CH−C(CH)H−O−)−アルキルのもの、その際、z=1〜15、有利にはz=1〜10、特に有利にはz=2〜8であり、かつアルキル=C〜C30、有利にはC〜C20、特に有利にはC〜C18であり、分枝鎖状および/または非分枝鎖状、(C12)−原子を有するシクロアルコキシ基、ハロゲン置換もしくはアルキル置換されたフェノキシ基またはベンジルオキシ基を表してよく、
Aは線状もしくは分枝鎖状の、飽和もしくは不飽和の脂肪族、芳香族もしくは混合された脂肪族/芳香族の二価のC〜C30、有利にはC〜C、炭化水素鎖、有利にはC〜C、特に有利には(−CH−)、(−CH−)、(−CH−)、(−CH(CH)−CH−)または(−CH−CH(CH)−)である]の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物の混合物を使用することができる。
【0068】
Aは線状もしくは分枝鎖状であってよく、かつ飽和もしくは不飽和の結合を有していてよい。Aは水素置換基の代わりに、種々の置換基、たとえば−CN、ハロゲン、たとえば−Cl、−Brまたは−F、アルコール官能基−OH、アルコキシド−OR′もしくは−O−(C=O)−R′(R′=アルキル、アリール)を有していてもよい。Aは、有利にはCH、CHCH、CHCHCH、CHCH(CH)、CHCHCHCH、CHCHCH(CH)、CHCH(CH)CH、CHCHCHCHCH、CHCH(CH)CHCH、CHCHCH(CH)CH、CH(CH)CHCH(CH)またはCHCH(CH)CH(CH)であってよい。
【0069】
一般式(I)のシランとしてたとえば次の化合物を使用することができる:
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
式IのシランとしてDE10122269.6に記載されているような化合物も使用することができる。
【0074】
シランとして、一般式(II)
Si−A−S−SiR (II)
[式中、
、X、XおよびAは、相互に無関係に式(I)においてと同じ意味を有し、
、R、Rは、それぞれ相互に無関係であり、かつ(C〜C16)アルキル、有利には(C〜C)アルキル、特に有利にはメチル−およびエチル−、(C〜C16)アルコキシ、有利には(C〜C)アルコキシ、特に有利にはメトキシおよびエトキシ、(C〜C16)ハロアルキル、アリール、(C〜C16)アラルキル、−H、ハロゲンまたはXSi−A−S−を意味する]の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物の混合物を使用することができる。
【0075】
一般式(II)のシランとして、たとえば次の化合物を使用することができる:
【0076】
【表4】

【0077】
シランとして、一般式(III)
Si−Alk (III)
[式中、
、XおよびXは、それぞれ相互に無関係に式(I)においてと同じ意味を有し、かつ
Alkは直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の(C〜C18)アルキル、たとえばメチル−、エチル−、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、イソプロピルまたはt−ブチル、(C〜C)アルコキシ、たとえばメトキシ−、エトキシ−、プロポキシ−、ブトキシ−、イソプロポキシ−、イソブトキシ−、t−ブトキシ−またはペントキシ、ハロゲン、たとえばフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、ヒドロキシ、チオール、ニトリル、(C〜C)ハロアルキル、−NO、(C〜C)チオアルキル、−NH、−NHR、−NR、NH(SiX)、アルケニル、アリル−、ビニル−、アリールまたは(C〜C16)アラルキルである]の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物の混合物を使用することができる。
【0078】
アルケニル−の名称のもとには、1つもしくは複数の炭素二重結合を有していてよいビニル基ならびに直鎖状、分枝鎖状もしくは環状の断片をまとめることができる。
【0079】
環状のアルキル−もしくはアルケニル断片のもとには、単環式ならびに二環式または多環式の構造、ならびにアルキル置換基、たとえばノルボルニル−、ノルボルネニル−、エチルノルボルニル−、エチルノルボルネニル−、エチルシクロヘキシル−、エチルシクロヘキセニル−またはシクロヘキシルシクロヘキシル−基を有する環状の構造をまとめることができる。
【0080】
アリールとは、場合により(C〜C)アルキル−、(C〜C)アルコキシ−、ハロゲン−、ヒドロキシ−により、もしくはヘテロ原子、たとえばNROR、PR、SHまたはSRにより置換されているフェニル、ビフェニルまたはその他のベンゼノイド化合物であると理解することができる。
【0081】
一般式(III)のシランとして、たとえば次の化合物を使用することができる:
【0082】
【表5】

【0083】
シランとして、一般式(IV)または(V)
[[(ROC(=O))−(G)−Y−S]−G−(SiX (IV)
[(XSi)−G]−[Y−[S−G−SiX (V)
[式中、
Yは、多価の種(Q)D(=E)を表し、
その際、次のことが該当する:
pは0〜5、rは1〜3、zは0〜2、qは0〜6、aは0〜7、bは1〜3、jは0〜1、あるいは、p=1の場合、しばしば0であってよく、cは1〜6、有利には1〜4、sは1〜3、kは1〜2であるが、ただしその前提として、
(1)(D)が炭素、硫黄またはスルホニルである場合、a+b=2であり、k=1であり、
(2)(D)がリン原子である場合、c≧1およびb=1である限り、a+b=3であり、その際、a=c+1であり、
(3)(D)がリン原子である場合、k=2であり、
Yは多価の種(Q)D(=E)であり、有利には
【0084】
【表6】

であり、これらの基のそれぞれにおいて、原子(D)は二重にヘテロ原子(E)と結合しており、これはふたたび硫黄原子(S)と結合しており、該原子は基(G)によりケイ素原子(Si)と結合しており、
Rは相互に無関係にH、直鎖状、環状もしくは分枝鎖状のアルキル鎖、有利には(C〜C18)アルキル、特に有利には(C〜C)アルキルを表し、
場合によりアルキル鎖は不飽和の割合、たとえば二重結合(アルケン)、三重結合(アルキン)またはアルキル芳香族化合物(アラルキル)または芳香族を有していてよく、かつ式(II)においてと同じ意味を有し、
Gは残りの置換基とは無関係に水素、(C〜C18)を有する直鎖状、環状もしくは分枝鎖状のアルキル鎖を表し、場合によりアルキル鎖は不飽和の割合、たとえば二重結合(アルケン)、三重結合(アルキン)またはアルキル芳香族(アラルキル)または芳香族を有していてよく、
式(IV)中でp=0の場合、Gは有利には水素(H)であり、
Gは、Y断片によりα,β−不飽和チオカルボニル断片が生じるように結合したα,β−不飽和断片の構造に相応せず、
、XおよびXはそれぞれ相互に無関係に式(I)においてと同様の意味を有する]の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物の混合物を使用することができる。
【0085】
0〜2の指数pが有利であり、その際、X、XまたはXはRO−、たとえばRC(=O)O−である。p=0、X、XもしくはX=エトキシ−およびG=C〜C12を有するアルキル骨格もしくは置換されたアルキル骨格を有する断片が特に有利である。
【0086】
(Q)D(=E)中で、Qは酸素、硫黄または(−NR−)、Dは炭素、硫黄、リンまたはスルホニル、Eは酸素、硫黄または(=NR)であってよい。
【0087】
式(IV)および(V)中の官能基(−YS−)に関しては次のものが有利な例であり得る:
チオカルボキシレートエステル−C(=O)−S−、ジチオカルボキシレート−C(=S)−S−、チオカーボネートエステル−O−C(=O)−S−、ジチオカーボネートエステル−S−C(=O)−S−および−O−C(=S)−S−、トリチオカーボネートエステル−S−C(=S)−S−、ジチオカルバメートエステル−N−C(=S)−S−、チオスルホネートエステル−S(=O)−S−、チオスルフェートエステル−O−S(=O)−S−、チオスルファメートエステル(−N−)S(=O)−S−、チオスルフィネートエステル−C−S(=O)−S−、チオスルフィットエステル−O−S(=O)−S−、チオスルフィメートエステルN−S(=O)−S−、チオホスフェートエステルP(=O)(O−)(S−)、ジチオホスフェートエステルP(=O)(O−)(S−)またはP(=S)(O−)(S−)、トリチオホスフェートエステルP(=O)(S−)またはP(=S)(O−)(S−)、テトラチオホスフェートエステルP(=S)(S−)、チオホスファメートエステル−P(=O)(−N−)(S−)、ジチオホスファメートエステル−P(=S)(−N−)(S−)、チオリンアミデートエステル(−N−)P(=O)(O−)(S−)、ジチオリンアミデートエステル(−N−)P(=O)(S−)または(−N−)P(=S)(O−)(S−)またはトリチオリンアミデートエステル(−N−)P(=S)(S−)
【0088】
一般式(IV)または(V)のシランとしてたとえば次の化合物を使用することができる:
2−トリエトキシシリル−1−エチルチオアセテート、
2−トリメトキシシリル−1−エチルチオアセテート、
2−(メチルジメトキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
3−トリメトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
トリエトキシシリルメチルチオアセテート、
トリメトキシシリルメチルチオアセテート、
トリイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、
メチルジエトキシシリルメチルチオアセテート、
メチルジメトキシシリルメチルチオアセテート、
メチルジイソシアネートプロポキシシリルメチルチオアセテート、
ジメチルエトキシシリルメチルチオアセテート、
ジメチルメトキシシリルメチルチオアセテート、
ジメチルイソプロポキシシリルメチルチオアセテート、
2−トリイソプロポキシシリル−1−エチルチオアセテート、
2−(メチルジエトキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
2−(メチルジイソシアネートプロポキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
2−(ジメチルエトキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
2−(ジメチルメトキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
2−(ジメチルイソプロポキシシリル)−1−エチルチオアセテート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
3−トリイソプロポキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
3−メチルジエトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
3−メチルジメトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
3−メチルジイソプロポキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−4−チオアセチルシクロヘキサン、
1−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−3−チオアセチルシクロヘキサン、
2−トリエトキシシリル−5−チオアセチルノルボルネン、
2−トリエトキシシリル−4−チオアセチルノルボルネン、
2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−5−チオアセチルノルボルネン、
2−(2−トリエトキシシリル−1−エチル)−4−チオアセチルノルボルネン、
1−(1−オキソ−2−チア−5−トリエトキシシリルフェニル)安息香酸、
6−トリエトキシシリル−1−ヘキシルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−5−ヘキシルチオアセテート、
8−トリエトキシシリル−1−オクチルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−7−オクチルチオアセテート、
6−トリエトキシシリル−1−ヘキシルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−5−オクチルチオアセテート、
8−トリメトキシシリル−1−オクチルチオアセテート、
1−トリメトキシシリル−7−オクチルチオアセテート、
10−トリエトキシシリル−1−デシルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−9−デシルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−2−ブチルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−3−ブチルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−3−メチル−2−ブチルチオアセテート、
1−トリエトキシシリル−3−メチル−3−ブチルチオアセテート、
3−トリメトキシシリル−1−プロピルチオオクトエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオパルミテート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオオクトエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオテトラデカノエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオヘキサデカノエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオオクタデカノエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオベンゾエート、
3−トリエトキシシリル−1−プロピルチオ−2−エチルヘキサノエート、
3−メチルジアセトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
3−トリアセトキシシリル−1−プロピルチオアセテート、
2−メチルジアセトキシシリル−1−エチルチオアセテート、
2−トリアセトキシシリル−1−エチルチオアセテート、
1−メチルジアセトキシシリル−1−エチルチオアセテートまたは
1−トリアセトキシシリル−1−エチルチオアセテート。
【0089】
式IVおよびVのシランとしてたとえばEP0958298またはWO9909036に記載されているような化合物を使用することができる。
【0090】
シランとして一般式(VI)
Si−A−Sub (VI)
[式中、X、X、XおよびAは、そのつど相互に無関係に、式(I)に記載した意味を有し、かつSubは、−SH、−NH、−NH(A−SiX)、−N(A−SiX、O−C(O)−CMe=CH
【0091】
【化1】

または−SCNである]の有機ケイ素化合物または有機ケイ素化合物の混合物を使用することができる。
【0092】
一般式(VI)のシランとしてたとえば次の化合物を使用することができる:
【0093】
【表7】

【0094】
【表8】

または上記のシランの混合物。
【0095】
シランとしてオリゴマー、つまりオリゴシロキサンおよびポリシロキサン、または一般式(I)〜(VI)のシランのコオリゴマーまたはこれらの混合物を使用することができる。シロキサンは一般式(I)〜(VI)の相応するシラン化合物を水の添加および当業者にこの分野で公知の添加剤の添加によりオリゴマー化またはコオリゴマー化することにより得られる。
【0096】
オリゴマーのシランはたとえばEP652245B1、EP0700951B1、EP0978525A2およびDE19929021A1に記載されている。
【0097】
シラン変性されたフィラーから物質を抽出するためのシランとは本発明の意味ではシランの混合物であるとも理解することができ、たとえば一般式(I)〜(VI)のシランの混合物または一般式(I)〜(VI)のシランのオリゴマーもしくはポリマーのシロキサンの混合物または一般式(I)〜(VI)のシランと一般式(I)〜(VI)のシランのオリゴマーもしくはポリマーのシロキサンの混合物との混合物である。
【0098】
未処理の酸化物もしくはケイ酸塩フィラーとはたとえばマイクロビーズ化されたか、顆粒状もしくは粉末状の天然および/または合成フィラーまたはマイクロビーズ化されたか、顆粒状もしくは粉末状の天然および/または合成のフィラーの混合物であると理解することができる。
【0099】
圧縮された気体により物質が抽出されるシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは主として粉末状、ビーズ状、球状、円形および/または均質に成形されていてよい。
【0100】
シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーはゴムと相容性であってよく、かつこの使用のために必要な微粉度およびポリマーマトリックス中での強化作用を有していてもよい。
【0101】
ケイ酸塩フィラーとして、ケイ酸塩、たとえばカオリン、雲母、ケイ藻土、タルク、ウォラストナイトまたは粘土または特にガラス球、粉砕されたガラス粉砕物(ガラス粉)、ガラス繊維またはガラス織布の形のケイ酸塩を使用することができる。
【0102】
酸化物フィラーとして全ての種類の金属酸化物、たとえば酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムまたはアルミニウム三水和物、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化マグネシウムまたは遷移金属酸化物、たとえば二酸化チタンを使用することができる。
【0103】
酸化物もしくはケイ酸塩フィラーとしてさらに、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸塩、ゼオライト、1〜1000m/g、有利には300m/gまでのBET表面積を有する沈降法もしくは熱分解法によるケイ酸を使用することができる。
【0104】
たとえばDegussa AG社から市販されている沈降ケイ酸Ultrasil7000、Ultrasil7005、VN2またはVN3、ならびにPPG,Industries Inc.社から市販されているケイ酸Hi−Sil(R)170G、Hi−NSil(R)190G、Hi−Sil(R)195G、Hi−Sil(R)210、Hi−Sil(R)233、Hi−Sil(R)243LD、Hi−Sil(R)315またはHi−Sil(R)EZおよびRhodia社から市販されている製品Zeosil 115GR、Zeosil 125GR、Zeosil 165GR、Zeosil 175GR、Zeosil 195GR、Zeosil 215GR、Zeosil 1115MP、Zeosil 1135MP、Zeosil 1165MP、Zeosil 1165MPSまたはZeosil 1205MPを使用することができる。
【0105】
たとえばDegussa AG社から市販されている、アエロシルシリーズの熱分解法ケイ酸またはチタン、亜鉛またはその他の遷移金属の熱分解法による酸化物を使用することができる。
【0106】
たとえばCabot社から市販されている、Cabosilシリーズの熱分解法ケイ酸を使用することができる。
【0107】
その他の製造元からの、上記のケイ酸または酸化物と類似の特性もしくは製品特性を有するか、または類似の、比較可能な分析データ(比BET表面積、CTAB表面積、BET/CTAB比、シアーズ数、ビーズフラクションもしくは粒径分布、形状の要因、円形状の要因およびDBP値)を有する酸化物もしくはケイ酸塩フィラーもまた、シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーの製造および抽出のために問題なく使用することができる。
【0108】
圧縮された気体として、標準温度および圧力条件下で気体状であり、かつシラン/フィラー混合物のための反応マトリックスとして適切である化合物を使用することができる。たとえば二酸化炭素、ヘリウム、窒素、一酸化二窒素、五フッ化硫黄、1〜5個の炭素原子を有する気体状のアルカン(たとえばメタン、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、ネオペンタン)、2〜4個の炭素原子を有する気体状のアルケン(たとえばエチレン、プロピレン、ブテン)、気体状のアルキン(たとえばアセチレン、プロピンおよびブチン−1)、気体状のジエン(たとえばプロパジエン)、気体状のフルオロ炭化水素、クロロ−および/またはフルオロクロロ炭化水素(たとえばフロン、CKC、HCFC)または現行法に基づいて使用される代替物質またはアンモニア、ならびにこれらの物質の混合物を使用することができる。
【0109】
有利には圧縮された気体として二酸化炭素を使用することができる。というのも、これは非毒性であり、非燃焼性であり、反応性が低く、かつ安価であるからである。さらに必要とされる超臨界条件もしくはほぼ臨界的な条件を容易に達成することができる。というのも、臨界圧力もしくは臨界温度はわずか73バールおよび31℃だからである。
【0110】
圧縮された気体はたとえばE.Stahl、K.W.Quirin,D.Gerardの”Verdichtete Gase zur Extaktion und Raffination(抽出および精製のための圧縮ガス)”、Springer−Verlag、1988年により定義することができる。圧縮された気体は超臨界ガス、臨界ガスまたは液状の状態のガスであってよい。
【0111】
超臨界ガス、臨界ガスおよび液状の状態のガスはたとえばP.G.JessopおよびW.Leitnerの”Chemical Synthesis using Suprecritical Fluids(超臨界流体を使用した化学合成)”、Wiley−VCH Verlag、1999年に記載されている。
【0112】
圧縮された気体は、標準条件下では気体状で存在するので、有利にはフィラーの閉鎖されたシラン化の後で容易に該フィラーから分離することができ、かつ特に二酸化炭素の場合はさらに、自然の炭素循環中で吸収されるか、または容易に再循環することができるために、環境にとって危険な可能性はほとんどない。
【0113】
圧縮された気体は、その中に処理すべき材料が存在する、気密に閉鎖された空間または容器中で加圧することができる。この方法の間、圧力を、一般に大気圧から出発して本発明による方法の作業圧力まで高めることができる。
【0114】
使用されるシランは圧縮された気体中に溶解しないか、部分的に、もしくは完全に溶解して存在していてよい。
【0115】
酸化物もしくはケイ酸塩フィラーおよびシランをまず混合もしくは接触させ、かつ次いで圧縮された状態で存在する気体と混合もしくは接触させることができる。
【0116】
酸化物もしくはケイ酸塩フィラーをまず圧縮された状態で存在する気体と混合するか、もしくは接触させ、かつ次いでシランと混合するか、もしくは接触させることができる。
【0117】
シランをまず圧縮された状態で存在する気体と混合するか、もしくは接触させ、次いで相応する酸化物もしくはケイ酸塩フィラーと混合するか、もしくは接触させることができる。
【0118】
「接触させる」とは、前記の材料が、浸漬、湿潤もしくは被覆されているか、溶解して、もしくは溶解しないで存在しているか、懸濁または吸着もしくは吸収されて存在していることと理解することができる。
【0119】
「接触させる」ことは、たとえばその中へ変性されていないフィラー、シラン成分および潜在的に圧縮された状態へ変換することが可能な気体が適切に導入される容器または気密に閉鎖された空間中で行うことができる。
【0120】
均質に混合されたシラン成分およびフィラー成分と潜在的に圧縮された状態へ変換することが可能な気体との接触はたとえば、その中へフィラーとシランとからなる混合物を適切に導入することができる容器または気密に密閉された空間中で生じることができる。
【0121】
「接触を生じる」とは有利には、酸化物もしくはケイ酸塩フィラーが完全に浸漬されているように、または酸化物もしくはケイ酸塩フィラーの全ての外側および内側の表面が圧縮された気体と接触しているように、前記の材料を抽出媒体中へ浸漬させ、かつ該媒体により濡らし、かつ被覆することであると理解することができる。
【0122】
シラン変性されたフィラーから物質を抽出するための本発明による方法の場合、作業圧力ともよばれる圧力は、一般に1〜2000バール、有利には1〜300バール、特に有利には1〜200バール、とりわけ有利には1〜150バールであってよい。
【0123】
本方法を実施することができる温度(作業温度)は、0〜300℃、有利には0〜200℃、特に有利には0〜130℃であってよい。
【0124】
抽出は高温反応/高圧反応もしくは高圧抽出のために典型的な圧力容器中で実施することができる。
【0125】
圧力は抽出の間、720分まで、有利には1〜360分、特に有利には1〜180分の時間にわたり、異なった圧力レベルで一定に維持することができ、かつフィラーはこの時間の間、圧縮された気体中に浸漬し、かつ該気体を貫流させるか、または流通させることができる。
【0126】
酸化物もしくはケイ酸塩フィラーおよび/またはシランには、圧縮された気体による抽出の前に添加剤を添加することができる。
【0127】
シラン変性された、酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは圧縮された気体による抽出の間、付加的な添加剤と接触させることができる。
【0128】
圧縮された気体による酸化物もしくはケイ酸塩フィラーの抽出の間、圧縮された気体の供給流または排出流にシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーを貫流させ、付加的に添加剤を導入することができる。
【0129】
添加剤としてアンモニア、二酸化硫黄、水、短鎖もしくは長鎖のポリエーテルまたはポリエーテルアルコール、たとえばジエチレングリコール、トリエチレングリコールまたはその他のポリエチレングリコールあるいはまたポリエチレングリコールアルキルエーテル[HO−(CH−CH−O)′−アルキル](x′=1〜15であり、>100g/モルの分子量を有する)、>50g/モルの分子量を有する短鎖もしくは長鎖のアミン、乳化剤または短鎖もしくは長鎖のシリコーン油、たとえば>100g/モルの分子量あるいはまた繰り返し単位D>2を有するシリコーン油、または上記の化合物の混合物を使用することができる。シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーは抽出の間、圧縮された気体または圧縮された気体混合物に加えて、その他の物質と接触させることができる。
【0130】
抽出に引き続き、シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーは、圧縮された気体および添加された添加剤または添加された添加剤の一部の、最終生成物からの分離を伴った真空処理工程または放圧工程を実施することができる。
【0131】
真空処理工程または放圧工程は180分までの時間、有利には1分〜120分、特に有利には1分〜60分、実施することができる。
【0132】
真空処理工程または放圧工程は−50℃〜300℃、有利には1〜200℃、特に有利には1〜150℃の温度で、およびとりわけ有利には1〜130℃の温度で実施することができる。
【0133】
圧縮された気体により処理される、シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは付加的な圧縮工程または加工工程を行うことができる。
【0134】
圧縮された気体により処理される、シラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、着色剤、塗料、印刷インキ、被覆、コーティング、接着剤および潤滑剤、化粧品、歯磨きペースト、建築助剤中で、または加硫可能なゴムまたはシリコーンまたはプラスチック中でのフィラーとして使用することができる。
【0135】
本発明による方法により製造されるシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩フィラーは、公知のシラン変性されたフィラー、たとえばケイ酸上のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン(Degussa社のVP Coupsil 8108)に対してより高い貯蔵安定性ひいてはより高い性能安定性という利点を有する。さらに本発明による方法により製造されたフィラーは、潜在的に放出可能なアルコール、一般にエタノールの比較的少ない含有率を有する。貯蔵の際に、放出される揮発性有機成分(VOC)はより少ない。
【実施例】
【0136】
1.比較例1〜9(COを返送しない試験)
以下に記載する第1〜2表の比較例は、50lのオートクレーブ容量を有する固体のための高圧抽出装置中で実施する。
【0137】
そのつど8kgの沈降ケイ酸Ultrasil 7005(Degussa AG社;分析的な特性値:ISO5794/添付書類DによるBET=185m/g、CTAB表面積=173m/g、乾燥減量=5.5質量%(DIN ISO787−2)をRuberg混合機中で、Si 266(Degussa AG社;平均鎖長2.25を有するビス[トリエトキシシリルプロピル]ジスルファン)580gと物理的に混合する。
【0138】
物理的に前処理したケイ酸は、焼結プレートにより上部および下部が閉鎖されたインサート容器(容量35l)中に充填する。完全に充填したインサート容器は、高圧抽出装置のオートクレーブ中で使用する(固定床)。オートクレーブは高圧膜ポンプにより加圧し、かつ第1〜2表に記載された圧力、温度および時間で、高圧ポンプから搬送される二酸化炭素により貫流される。圧力の変動を回避することが試みられる。第1〜2表に記載された水量がオートクレーブの入口の前のCO流に供給される。
【0139】
高圧抽出装置のオートクレーブを貫流させた後に、エタノールで負荷された二酸化炭素を分離器に供給し、該分離器中で圧力を低下させながら(および温度を低下させながら)二酸化炭素を気体状の状態へ変換し、その際、流体(水、エタノール)中の含有物質の溶解度は低下し、かつこれらはこのことによりほぼ分離される。
【0140】
分離器の後で、気体状の二酸化炭素を冷却器を介して凝縮させ、かつ圧力容器に供給し、該容器中に二酸化炭素が残留する。循環運転は実施されず、常に清浄な、エタノールを含有していないCOを別の貯蔵タンクから、上記の高圧膜ポンプにより搬送し、圧縮し、かつシラン変性されたケイ酸の抽出のために使用する。
【0141】
【表9】

【0142】
【表10】

【0143】
2.比較例10〜11(EP1256604A2;例AおよびB):
比較例10(EP1256604A2による例A)
Ultrasil VN3 1500gをドラムミキサ(高さ7cmを有する4つのバッフル)中に充填する。ドラムを18゜の傾斜状態の回転状態で20回転/分回転させる。55分以内に、Si69(8phf)120gを市販のハンドスプレーポンプによりドラムカバー中の6cmの穿孔を通過させて噴霧する。引き続き5分間のドラムの後運転時間を維持する。
【0144】
Si69により前被覆したケイ酸130gを引き続き、70℃に予熱されている、高圧抽出オートクレーブの600mlのインサート容器中へ充填する。圧力をCOのポンプ供給により徐々に150バールに高める。15分間放置した後、温度をオートクレーブのジャケット加熱により100℃に高める。100℃および200バールで該系を一時間、一定に維持する。次いで圧力を徐々に80バールに低下させる。80バールおよび100℃で、25分間、CO 1.2kgで抽出する。最終的に300バールおよび80℃で、CO 0.5kgを用いて30分間、抽出する。引き続き該系を放圧し、かつ変性されたフィラーを取り出す。
【0145】
比較例11(EP1256604A2による例B):
Ultrasil VN3 2000gを換気棚中、105℃で2時間乾燥させる。乾燥させたUltrasil VN3 1500gをドラムミキサ(高さ7cmを有する4のバッフル)中に充填する。ドラムを18゜の傾斜状態の回転状態で20回転/分で回転させる。55分以内にSi69(8phf)120gを市販のハンドスプレーポンプを用いてドラムカバーの6cmの穿孔を通して噴霧する。引き続き、5分のドラムの後運転時間を維持する。
【0146】
Si69で前被覆したケイ酸130gを引き続き、70℃に予熱されている、高圧抽出オートクレーブの600mlのインサート容器中に充填する。圧力をCOのポンプ供給により徐々に150バールに高める。15分間放置した後、温度をオートクレーブのジャケット加熱により100℃に上昇させる。100℃および200バールで、該系を1時間、一定に維持する。次いで圧力を徐々に80バールに低下させる。80バールおよび100℃で、CO 1.2kgを用いて25分間抽出する。最終的に300バールおよび80℃でCO 0.5kgを用いて30分間、抽出する。引き続き該系を放圧し、かつ変性されたフィラーを取り出す。分析結果は第3表に記載されている。
【0147】
【表11】

【0148】
3.比較例12〜17(EP1357156A2による;例16〜21):
EP1357156A2からの比較例:
以下に記載する試験を、50lのオートクレーブ容量を有する固体のための高圧抽出装置中で実施する。
【0149】
そのつど沈降ケイ酸Ultrasil 7005(Degussa AG社;分析による特性値:ISO 5794/添付書類DによるBET=185m/g、CTAB表面積=173m/g、乾燥減量=5.5質量%(DIN ISO787−2))8kgをRuberg混合機中で、Si69(Degussa AG社;ビス(トリエトキシシリルプロピルテトラスルファン))640gにより物理的に前被覆し、かつ混合する。引き続きいくつかの試験において付加的な量の水をケイ酸とシランとの混合物上に噴霧する(比較例13+14および16+17)。
【0150】
物理的にSi69により前被覆したケイ酸を、焼結プレートにより上部および下部が閉鎖されているインサート容器(容積35l)中に充填する。完全に充填したインサート容器を高圧抽出装置のオートクレーブ中で使用する(固定床)。オートクレーブを高圧膜ポンプを用いて加圧し、かつ第4+5表に記載されている圧力および温度により一定の時間、高圧ポンプにより搬送される、定義された量の二酸化炭素を貫流させる。一次反応とは、フィラー上でのシランの化学的および/または物理的固定であると理解する。抽出とは、シランの部分的/完全な加水分解およびアルコールの除去であると理解する。記載の例では水0.2質量%(使用されるCOの質量に対する)をオートクレーブの入口の前のCO流に供給する。負荷された二酸化炭素は固定床抽出器の後で分離器に供給され、該分離器中で圧力を低下させながら、かつ/または温度を高めながら気体状の状態へ変換し、その際、流体の含有物質のため(たとえば抽出されたエタノール)の溶解度は低下し、かつ該物質はこのことによりほぼ分離される。分離器の後で気体状の二酸化炭素を冷却器により凝縮させ、かつ緩衝容器に供給し、ここから出発してこれをふたたび高圧ポンプから吸引し、かつ抽出のために使用することができる(循環法)。
【0151】
【表12】

【0152】
【表13】

【0153】
第6表には比較例12〜17の分析結果がまとめられている。
【0154】
【表14】

【0155】
例1〜17:
以下に記載する、本発明による実施例(第7〜8表)は、50lのオートクレーブ容量を有する固体のための高圧抽出装置中で実施される。
【0156】
そのつど8kgの沈降ケイ酸Ultrasil 7005(Degussa AG社;分析的な特性値:ISO5794/添付書類DによるBET=185m/g、CTAB表面積=173m/g、乾燥減量=5.5質量%(DIN ISO787−2))をRubergミキサー中でSi 266(Degussa AG社;平均鎖長2.25を有するビス[トリエトキシシリルプロピル]ジスルファン)580gと物理的に混合する。
【0157】
物理的に前処理したケイ酸を、焼結プレートにより上部および下部を閉鎖するインサート容器(容量35l)中に充填する。完全に充填したインサート容器を高圧抽出装置のオートクレーブ中で使用する(固定床)。オートクレーブを高圧膜ポンプを用いて加圧し、かつ第7〜8表に記載されている圧力、温度および時間で、高圧ポンプから搬送される記載の量の二酸化炭素を貫流させる。その際、圧力の変動を回避することを試みる。第7〜8表に記載されている水量をオートクレーブの入口の前のCO流に供給する。
【0158】
負荷した二酸化炭素を固定床抽出器の後で高圧スクラバーに供給し、該スクラバー中で第7〜8表に記載されている量で水(吸収剤)と接触させる。高圧スクラバーは、充填体により変更されている圧力容器からなる。高圧スクラバーに新鮮な水を上から供給し、その一方で二酸化炭素を下からスクラバーに導入する。エタノールが負荷された水は高圧スクラバーの下から取り出す。水(吸収剤)は連続的に、または不連続的にスクラバー中に充填するか、または該スクラバーから取り出す。
【0159】
高圧スクラバーの後で、二酸化炭素を分離器に供給し、該分離器中で圧力を低下させながら二酸化炭素を気体状の状態に変換し、その際、流体の含有物質のための溶解度は低下し、かつ該物質はこのことによりほぼ分離される。
【0160】
分離器の後で、気体状の二酸化炭素を冷却器により凝縮させ、かつ緩衝容器に供給し、ここから出発してこれをふたたび高圧ポンプから吸引し、かつ抽出のために使用する(循環法)。
【0161】
【表15】

【0162】
【表16】

【0163】
COを返送しない比較例(第1〜2表;比較例3)のエタノール含有率に関して得られた結果を、第7+8表の本発明による例と比較すると、高圧スクラバーは意外にも、本事例ではエタノールを抽出ガスから除去するために効果的な方法であることが判明した。CO循環流へCOを返送しない比較例は、この場合、超臨界CO(sc−CO)中に含有されているエタノールに関して100%の洗浄効率を有するスクラバーに相応するか、もしくはシミュレートする。
【0164】
比較例10および11もしくは12〜17(sc−COがフィラー固定床を通過して搬送される循環法)において得られるエタノール含有率に関する結果と、本発明による例1〜17とを比較すると、本発明による方法を利用することにより、
− 変性されたフィラーのより少ないエタノール含有率による、もしくは
− 変性すべきフィラーのより短い、相対的な抽出時間による
改善が明らかとなる。
【0165】
例18〜25:
以下に記載する第9+10表の試験は、6500lのオートクレーブ容量を有する固体のための高圧抽出装置中で実施される。高圧抽出装置の構成は図20に概略が記載されている。高圧抽出装置中の高圧オートクレーブの構成は図12に概略が記載されている。
【0166】
ケイ酸Ultrasil 7005を用いた実施例
そのつど1300kgの沈降ケイ酸Ultrasil 7005(Degussa AG社;分析的な特性値:ISO 5794/添付書類DによるBET=185m/g、CTAB表面積=173m/g、乾燥減量=5.5質量%(DIN ISO787−2)をミキサー中でSi69(Degussa AG社;ビス[トリエトキシシリルプロピル]テトラスルファン)104kgまたはSi266(Degussa AG社;ビス−[トリエトキシシリルプロピル]ジスルファン)94kgと物理的に混合する。フィラーおよびシランの物理的な混合に引き続き、第9+10表に記載されている量の水を均一に分散させる。
【0167】
ケイ酸Ultrasil7000(粉末)を用いた例
そのつど1410kgの沈降法による粉末状の、圧縮されてないケイ酸Ultrasil7000(Degussa AG;CTAB表面積(pH9)155m/g;乾燥減量5.5%(DIN ISO787−2)1410kgを、ミキサー中でSi69(Degussa AG社;ビス−[トリエトキシシリルプロピル]テトラスルファン)112kgまたはSi266(Degussa AG社;ビス−[トリエトキシシリルプロピル]ジスルファン)102kgと物理的に混合する。フィラーおよびシランの物理的な混合に引き続き第9+10表に記載されている量の水を均一に分散させる。
【0168】
このように物理的に変性されたケイ酸を高圧抽出装置のオートクレーブ中に充填し、かつ第9+10表に記載されている条件により圧縮された二酸化炭素(sc−CO)により処理し、かつ抽出する。
【0169】
オートクレーブを通過した後、抽出された物質により負荷された抽出ガス(CO)を分離器に移し、該分離器中で抽出された物質の一部を抽出ガスから分離する。抽出ガスをその後、ふたたび液化し、かつ貯蔵容器へ移す。貯蔵容器中には、第9+10表に記載されている量の水が吸収剤として存在している。連行されたエタノールの吸収後にCOを、貯蔵容器中に存在する水により、プロセスにふたたび供給し、かつこうして循環運転法を使用する。
【0170】
【表17】

【0171】
【表18】

【0172】
試料の採取および試料の分析は、製造された変性フィラーを充填した後のドラムごとに1回行う(第11表)。
【0173】
【表19】

【0174】
COを返送しない比較例(第1〜2表;比較例3)のエタノール含有率に関して得られた結果を、第9+10表の本発明による実施例と比較すると、吸収剤(水)を単に使用することは意外にも、本事例では、変性されたフィラー上でのエタノール含有率の低減を達成するために効果的な方法であることが確認される。吸収剤の使用は、抽出のために使用され、かつ循環法において利用されるCOを同様に循環させて利用し、かつCOを返送しない比較例におけるように、別々に回収しないにもかかわらず、比較例10〜17に対して改善(変性されたフィラー上の残留エタノール量の低減)をもたらす。
【0175】
比較例10および11もしくは12〜17(sc−COをフィラー固定床を通過させて搬送する循環法)において得られるエタノール含有率に関する結果を、本発明による例18〜25と比較すると、本発明による方法を利用することにより、
− 変性されたフィラーの、より少ないエタノール含有率によって、もしくは
− 変性すべきフィラーの、より短い相対的な抽出時間によって
改善が明らかとなる。
【0176】
シラン変性されたフィラーの特徴付けのための分析法は次のものである:
試料の含水率は次のように測定する:
シラン化されたケイ酸10gをミルで15秒間粉砕し、かつ引き続き含水率を公知の、当業者に周知の規則によりカール・フィッシャーの滴定(Metrohm社、720KFS Titrino)およびMerckから得られるカール・フィッシャーの滴定用化学薬品No.1.09241、No.1.09243およびNo.1.06664(酒石酸二ナトリウム二水和物)によって測定する。
【0177】
Hunsche等のKautschuk、Gummi、Kunststoffe 51(1998)525に記載される作業規定に準拠してフィラー上に存在する残留アルコール(エタノール)を次のとおりに測定する:
充填後に密閉キャップを有するガラスアンプル中で、本発明によるフィラー1gにジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)10mlおよび0.5モル/lのHSO 0.3mlを添加する。混合物をガラスアンプル中、60℃で20分、水浴中で混合する。引き続き迅速に25℃に温度処理した混合物にデカン10mlを添加する。次いで混合された有機相から相応する量をHPLC分析(Jasco Autosampler851−AS、ポンプJasco PU980、RI検出器7515Aを有するHPLC装置;TiOカラム、250×4.5mm、5μm、YMC;移動相:シクロヘキサンを含有するDEGMBE;温度25℃)のためにエタノールに取り出す。
【図面の簡単な説明】
【0178】
【図1】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図2】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図3】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図4】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図5】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図6】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図7】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図8】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図9】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図10】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図11】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図12】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図13】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図14】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図15】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図16】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図17】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図18】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図19】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。
【図20】本発明による方法を実施するための装置の略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法において、
− 抽出剤として、圧力および/または温度により圧縮された少なくとも1種の気体を使用し、かつ
− 圧縮された気体を圧力容器中で半径方向でフィラーに通過させ、かつ/または
− シラン変性されたフィラーから抽出された物質を適切な吸収剤により圧縮された気体から除去する
ことを特徴とする、少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項2】
吸収剤として、活性炭、ゼオライト、ケイ酸、シリカゲルまたは水を使用する、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項3】
圧縮され、物質が負荷された気体を少なくとも1つの吸収装置に通過させる、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項4】
シラン変性されたフィラーが、圧縮された気体による抽出後に、施与されたシラン中に含有されている、加水分解により遊離可能なアルコールの量の75モル%未満の残留含有率を有する、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項5】
圧縮された気体として、二酸化炭素、ヘリウム、窒素、一酸化二窒素、六フッ化硫黄、1〜5個の炭素原子を有する気体状のアルカン、2〜4個の炭素原子を有する気体状のアルケン、気体状のアルキン、気体状のジエン、気体状のフルオロ炭化水素、クロロ−および/またはフルオロクロロ炭化水素またはこれらの代替物質またはアンモニア、ならびに前記の気体の混合物を使用する、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項6】
圧力が1〜300バールである、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項7】
抽出を0〜200℃の温度で行う、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項8】
抽出の間の圧力を、720分までの時間にわたり、異なった圧力レベルで一定に維持し、かつフィラーをこの時間の間、圧縮された気体中に浸漬し、かつ該気体を貫流させる、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項9】
物質の抽出を均一な条件下で実施する、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項10】
シラン変性された酸化物またはケイ酸塩のフィラーを圧縮された気体中での反応の間、付加的な添加剤と接触させる、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項11】
添加剤として、アンモニア、水、二酸化硫黄、短鎖もしくは長鎖のポリエーテルまたは短鎖もしくは長鎖のアミン、乳化剤あるいはまた短鎖もしくは長鎖のシリコーン油を使用する、請求項10記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項12】
少なくとも1つの加圧式オートクレーブ中で、または直列もしくは並列に接続された少なくとも2つの圧力容器中で実施する、請求項1記載の少なくとも1種のシラン変性された酸化物もしくはケイ酸塩のフィラーから物質を抽出するための方法。
【請求項13】
気体透過性の少なくとも1つの内部容器、フィラーを収容するためのふるいまたはインサートを有する少なくとも1つの圧力容器およびフィラー堆積床中に存在する少なくとも1つの気体入口および気体出口からなり、かつ半径方向に設置された、気体入口もしくはフィラー堆積床からの気体出口を有する、請求項1記載の方法を実施するための装置。
【請求項14】
内側から外側へ向かって半径方向に、または外側から内側に向かって半径方向に設計された気体の貫流方向が可能である、請求項13記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−28007(P2006−28007A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−187449(P2005−187449)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(501073862)デグサ アクチエンゲゼルシャフト (837)
【Fターム(参考)】